Coolier - 新生・東方創想話

早苗の憧憬

2011/09/08 11:06:14
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 掃除をする振りに疲れた霊夢が休憩のために縁側でお茶を飲んでいると、ふと境内の方から近づいてくる人影に気付く。
「霊夢さん霊夢さん!」
「何よ早苗、騒がしいわね」
 その人影は早苗だった。幻想郷の外の世界から神社ごと引っ越してきた巫女である彼女は、同じ巫女である霊夢に何かと懐いていた。
「今、お暇だったりします?」
「見ての通りよ、今はお茶を飲むのに忙しいわ」
 どことなく面倒くさそうにそういって、霊夢はお茶を一口すする。
「じゃあ明日! 明日は暇ですか?」
「忙しくなかったらね」
 霊夢はそんな返答にならないことを言った。
「もう、霊夢さん。私は珍しく真剣なんですよ?」
「珍しくって、それを自分で言うのね……」
 呆れたような声でそう言った霊夢は、やれやれといった雰囲気で早苗を置いて部屋の奥の方へと下がっていった。
「あれ? 霊夢さん? 霊夢さーん?」
 早苗は霊夢に放置されたと思い、不安になってそう呼びかけた。
「もう、何よ? はい、あんたの分の湯飲み」
「え、あっ、ありがとうございます」
 そういって早苗は霊夢からお茶の入った湯のみを受け取った。
「それで? 珍しく真剣なあんたが私に何の用よ?」
 単刀直入に本題へと入る霊夢。
 しかし。
「あっ、このお茶おいしいですね!」
 早苗は聞いていなかった。
「……あんた、ちょっとたたいてもいいかしら?」
「え、どうしてですか?」
 そういって不思議そうな顔をする早苗をみて、霊夢は一瞬本当に「かつおのたたきみたいにしてやろうか」と心の中で思った。
「……まあいいわ。それで、私に何か用があるんでしょ?」
「ああ、そうでした。……私、今日は霊夢さんにお願いがあって来たんです」
「お願い?」
 その言葉を聞いて霊夢はどことなく嫌そうに顔をしかめる。それはその響きにどうにも面倒くさそうな雰囲気を感じたからであった。
「そうです。あの、私――」
 早苗はそこで一度言葉を切り、ぐいっとその顔を霊夢に近づけてから続ける。

「――私、霊夢さんに巫女を教えて欲しいんです!」

「……は?」
 早苗の言葉の意味がよく分からず、霊夢はそんな間の抜けた声をあげてしまう。
 ――巫女を教えるというのは、つまり、どういうことだろう。
 霊夢はそんなことを考えながら、しかしその答えが出るよりも早く、反射的に口を開いていた。
「嫌よ、面倒くさい」
「えー、そんなつれないこと言わないでくださいよぅ」
 そういってさらにぐいっと身を寄せて近づいてくる早苗に、霊夢はたじろぐようにして、座ったままの体勢で少し後ずさりをする。
「ちょ、ちょっとあんた近いって。そもそも何よ、巫女を教えるって? 大体そういうのはあんたの方が詳しいんじゃないの? ほら、最初会ったときも言ってたじゃない、えっと確か――」
 そういって霊夢は過去の早苗の発言を思い出そうとする。そうして思い出したことを、霊夢はそのまま口に出した。
「神を祀る人間が――」
「わーわーわー!」
 すると突然早苗が大声を出して霊夢の言葉を遮ろうとする。
「巫女が神になる――」
「やーめーてー!」
 気付けば息を荒げた早苗の顔は羞恥の色に染まっていた。
「何よ、全部あんたが前に言ったことじゃない。ほら、『風祝の力を持たぬものにはわからんだろう』とか」
「それは言ってません!」
「そうだっけ? ……でもあんた、確かにあの時私に言ったわよね?」
「言ったって、何をですか?」
 早苗は自分が言ったことを覚えていないのか、それともどの言葉のことを言われているのかが分からないのか、不可解な面持ちで小首をかしげる。
「私には巫女としての覚悟が足りないって、そう言ったじゃない」
 そう、どこか不機嫌そうに霊夢は言った。
 そんな霊夢の様子を見て、早苗は一つの可能性に思い当たる。
「もしかして、霊夢さん――」
「……何よ?」
「それを言われたこと、根に持ってます?」
「なっ、べ、別にそんなことないわよ」
 霊夢はそう言ったが、しかし早苗には霊夢が根に持っているようにしか思えなかった。
「根に持っているならそのことは謝りますから、だからどうか霊夢さんお願いします!」
 そういって早苗は頭を下げる。
 しかし霊夢はどうにも気乗りしない表情で、早苗に言う。
「というかそれ以前にね、私がそれを根に持っていようがいまいが、そもそも私には商売敵のあんたに何かを教える義理なんてないのよ」
「それは……」
 確かに霊夢の言う通りだと早苗は思う。霊夢からすれば早苗は突然現れた商売敵に他ならない。外の世界からいきなりやってきて、この博麗神社の信仰を奪おうとしたことは偽りなき事実なのだから。
 早苗はその事実を、決して忘れていたわけではない。
 だから早苗自身も今回のお願いは虫のいい話だとは思っていた。早苗が自分の都合しか考えていないと言われれば、それを否定することは出来ない。しかしそれでも早苗にとっては、霊夢以外に頼れる人はいなかったのだ。
 そうして早苗が俯いたまま黙り込んでいるのを、霊夢はお茶を飲みながら横目で何度かちらちらと心配そうに見た。そしてそんな早苗を見かねたのか、ため息を一つついてから霊夢は口を開いた。
「……本当に珍しく真剣に悩んでるみたいじゃない、一体どうしたのよ? 大体あんた、今まであっちの神社ではしっかりと巫女出来てたでしょ?」
 霊夢は尋ねる。
「………………」
 しかし早苗は答えない。
「言いたくない、か。……それで、何も訊かずに私に巫女を教えろって言うのね」
 そういってから、霊夢は呆れたように嘆息する。
 しかし早苗はただ沈黙するしか出来なかった。何故なら霊夢の言っていることは全て正しかったのだ。
 それはやはり虫のいい話だと、そう早苗は思う。いくら細かいことにこだわらない霊夢とはいえ、そんな早苗の頼みごとを快諾してくれるはずもない。
 けれど、霊夢は言う。
「で、具体的に私は何を教えればいいの?」
 そう霊夢に尋ねられて、俯いていた早苗は驚いたように顔を上げた。
「え、霊夢さんそれって……」
「だから、あんたのお願いを聞いてあげるって言ってるのよ」
「でも、どうして――」
 早苗は何一つ理由も語らず、ただ霊夢に虫のいい頼みごとをした。そんなことは霊夢も分かっているはずなのに。
 ――どうして霊夢は引き受ける気になったのだろうか。
 早苗の「どうして」はつまり、そういうことだった。
「別に、たいした理由じゃないんでしょ? 本当に切羽詰ってるなら言いたくないとか言っていられないだろうし。本当に大変な理由があるなら、あんたはもっとなりふり構わず協力を求めるはずなのよね」
 ――だったら別に、言いたくないことをわざわざ訊く必要もない。
 そんなことを霊夢は言った。
「……たとえそうだとしても、それでも霊夢さんにとっては割に合わない話じゃないですか」
「あんたねぇ……あんたは私にお願いを聞いて欲しいの? 聞いて欲しくないの?」
「それは、聞いてもらいたいですけど……」
「だったら別にいいじゃない。それに私は、割に合わない頼みごとっていうのにはもう慣れっこなのよ……どこかのスキマ妖怪のせいでね」
 そういって霊夢は冗談めかして笑う。
 しかしそんな霊夢を見て、早苗はどこか複雑な気持ちになった。
 霊夢は明らかに早苗に気を使っている。そんな霊夢の優しさに、今は甘えるしか出来ない自分の弱さ――そしてそれこそが、早苗と霊夢の差なのだと痛感する。
 けれど今は仕方のないことだと、早苗は思考を前向きに切り替えた。
 今のままではいけない。そう思ったからこそ早苗はこうして霊夢を訪ねたのだから。
「霊夢さん……ありがとうございます」
「礼は終わってからでいいわよ。それで? 私は何を教えればいいの?」
 霊夢はそっけなくそう言ってから早苗に尋ねた。
 だから早苗は一瞬考えて、それから口を開く。
「私は立派な巫女になりたいんです」
「そうね。『巫女を教えて』なんてお願いをするくらいなんだからそれは分かるわ。だからもっと具体的に、私は一体何を教えればいいのよ?」
「えっと、ですから、その………………」
 早苗は困った様子で、慌てて次の言葉を探すが――。
「――そういえば具体的なことは何も考えていませんでした」
 その口から出たのはそんな言葉だった。
 だから霊夢は、そんな早苗を冷ややかな目で見て言った。
「……あんた、やっぱりたたいていいかしら?」



「霊夢さーん……本当にやるんですか?」
「何よ、元々はあんたが言い出したことじゃない」
「それはそうですけど……」
「まあ別に私は、あんたがやらないっていうならそれでも全然構わないけど」
「や、やります! やりますから霊夢さん、どうか私を見捨てないでください!」
「見捨てるって、そんな大げさな……」
 そういって呆れたように肩をすくめる霊夢。
 早苗と霊夢の二人は、妖怪の山を少し登った所にある小さな滝の前まで来ていた。
 霊夢によって白装束に着替えさせられた早苗はその滝を見上げた。
 そして今から自分がそれに打たれるのだと思うと、どうにも少し足がすくんでしまうのである。
 そんな早苗を見るに見かねて霊夢は言う。
「冷たいのは最初だけよ。慣れればたいしたことないわ。むしろ気持ちいいくらいね」
「そうなんですか。では……えいっ」
 早苗はそう気合を入れて一気に水へと入っていく。膝下くらいまでが冷えた水に包まれて、まるで足の先から凍り付いてしまったかのような錯覚に陥る。
「ひゃっ」
 そのあまりの冷たさに間の抜けた声を上げて、早苗はその場で立ち止まってしまう。
「ほら、滝はまだまだ向こうよ」
 霊夢の急かすような言葉を聞いて、早苗はようやくゆっくりと歩き出す。
 流れてくる水に逆らうように、足を少しずつ前へと進めていく。
 しばらくして、ようやく滝の下までたどり着いた早苗は、大きな声で霊夢に尋ねる。
「霊夢さーん。それで私は、滝に打たれながら何をすればいいんですか?」
「別に何もしなくていいわよ。むしろ何も考えずただ滝に打たれることね……いや、やっぱり適当に祝詞でも唱えておきなさい」
 霊夢は思いつきのような雰囲気でそんなことを言った。
 しかし早苗はそれを素直に聞き、目を閉じて滝に打たれながら祝詞を唱え始める。
 最初は順調に祝詞を唱えている早苗だったが、しかしすぐにその祝詞が乱れるだろうことを霊夢は予測していた。
 滝から落ちてくる水が早苗の全身を濡らしている。濡れた白装束は身体にぴったりと張り付き、早苗の体温をじわじわと奪っていく。足の先は凍ったように冷えて、すでに感覚がなくなっていた。そして何より小さな滝とはいえ、その衝撃は早苗の予想以上に大きかった。
 早苗は水の衝撃に時折顔を歪め、そして冷え切った身体を震わせながら、ただひたすらに祝詞を唱え続ける。しかし、その祝詞は徐々に途切れがちになっていった。
「ほら、しっかりしなさい。まだ入ってから二十秒しか経ってないわよ」
 そんな霊夢の声が聞こえた。早苗が思っていたより、ずっと時間の進み方はゆっくりだった。
 早苗は気を取り直して、また祝詞を流れるように唱え始める。
 ふと、柔らかな風が吹いた。
 それが木々を揺らす音と、滝の水が落ちる音。そして早苗の祝詞を聞きながら、霊夢はどこか満足そうに早苗のことを見ていた。



 それからしばらくして、滝行を終えた早苗は水からあがって開口一番に言った。
「霊夢しゃーん、寒いですぅ」
「はいはい、よく頑張りました。じゃあ身体拭いてあげるから、さっさとその白装束は脱いじゃいなさいよ」
「え、いいですよ、自分で拭きますから」
「そう? じゃあ、はい」
 そういって霊夢は手に持っていた身体を拭くための大きな手ぬぐいを早苗に渡した。
「ありがとうございます」
 礼を言って手ぬぐいを受け取る早苗だったが、しかし一向に着替えようとはしなかった。
「ん、どうしたのよ。早く着替えないと風邪引くわよ?」
 首を傾げながらそう霊夢は尋ねた。
「それはそうなんですけど……あの、霊夢さん。少しあっち向いててもらえますか?」
 早苗は少し恥ずかしそうにそんなことを言った。
「別に女同士だし、私は気にしないわよ?」
「私が気にするんです!」
 霊夢のからかうような言葉に、早苗は生真面目に返事をした。
 そうして霊夢が向こうを向いたのを確認してから、早苗は濡れた白装束を脱ぎ始めた。
 濡れた白装束が身体に張り付いていたが、しかし早苗はそれを勢いよく脱ぎ捨てるようにした。
 そして水に濡れた色白の肌があらわになる。
 本来は透き通るような透明を思わせるその肌だが、今は身体が冷え切っていることを表すように青白く変色していた。
 早苗は肌の表面に浮かぶ水滴を、その手に持った手ぬぐいで丁寧に拭いていく。
 何度か手ぬぐいを絞るようにして全身を満遍なく拭き終わると、あらかじめ用意してあった普段の巫女装束に着替える。
 そうして着替えが終わったことを霊夢に告げると、霊夢はゆっくりと振り返った。
「さて、と。それじゃあ帰ろうか」
 霊夢がそう提案したことで、早苗は少し困惑したような顔をする。
「え、あの、霊夢さん……?」
「ん、何よ?」
「これで終わり、なんですか?」
「そうだけど……?」
 不思議そうな顔をして首を傾げる霊夢。
 そんな霊夢に、早苗は尋ねる。
「霊夢さん。それで私、何か変わりましたか?」
「いや、別に普段どおりね」
 霊夢は淡々とそう返事をする。
 それを聞いて、早苗は自分自身に焦りのような感情が芽生えてくるのを感じた。
「だったらダメじゃないですか」
「そんなことないわよ。大体ね、人間がそんなすぐに変われるはずないじゃない」
「それはそうですけど……」
「だからゆっくりと、のんびりやっていけばいいのよ。大事なのは毎日続けていくことね」
 霊夢の言うことは正しいと早苗も思う。けれど、そう思っていても、この焦りはなかなか消えてはくれなかった。
 その焦りの正体を早苗は知っていた。確かに知っていたけれど、だからといってそれはどうすることも出来ないものだった。
「……この際だからあんたにははっきり言っておくけど、大切なことほど簡単なやり方なんて存在しないものよ。だから私があんたに教えられるのもこういった地道なやり方だけ。それが辛いと思うなら修行なんてやらなくてもいいと私は思うわ。その辛さと今のままでいる辛さ、どっちが大きいかなんて、それこそあんたにしか分からないことだからね」
 霊夢はそんな優しさとも厳しさとも取れる言葉を早苗に告げる。
 そして早苗は考える。この焦りを胸に地道な努力を重ねていくのは、確かに辛い。けれどこのままの自分でい続けることの方が、もっと辛かった。
 それにここでやめても、きっと早苗はまた同じことを繰り返すだろう。いつかまた、今と同じように変わろうとして修行を始めようとするに違いない。
 それならば――。
「――私、やります。せっかく私の無理な頼みごとに霊夢さんが協力してくれているのに、ここでやめたら勿体無いじゃないですか。それに――」
「……それに?」
「これからの人生の中で、今の私が一番若いんですよ。……あ、今私いいこと言いました? ねえ霊夢さん、今の聞いてました?」
「聞いてたわよ。そうね、若い若いー」
 霊夢は面倒臭そうな顔で、そう早苗をあしらうように言った。
「もう、霊夢さん。私は今珍しく燃えてるんですから、そんな水をさす感じじゃなくてもっとこう盛り上げる感じでお願いしますよぅ」
「……燃えていて暑苦しいから消火してるのよ」
 そう言って霊夢は疲れたようなため息を一つつくと、そのまま何も言わずにふよふよと空に浮かび上がって神社を目指し始める。
 早苗もそれに遅れないように飛び上がり、そのまま二人は帰途についた。



 神社に帰るとまず霊夢は風呂を沸かし、身体の冷えている早苗をそこに放り込む。
 その間に霊夢は手際よく夕食の準備を進めていた。
 そうして夕食時になって、ふと気になったことを霊夢は尋ねる。
「そういえばあんた、自分の神社に戻らなくていいの?」
 最初から泊まる気満々で寝間着まで持参していた早苗に対して、それはあまりにも今更な質問だとも思ったが、それでも尋ねないわけにはいかなかった。
「大丈夫です。しばらく暇をもらいますってちゃんと書置きしてきましたから」
「書置きって……どうせそんなことだろうと思ったけどね」
 そんな早苗の行動を世間一般の常識では家出というのだが、果たして早苗はそれを理解しているのだろうか。
 そう思いながら霊夢は早苗の方を見るが――。
「あ、この煮物おいしいですね!」
 ――絶対に理解していない。
 霊夢は心の中でそう断言した。
 後で神奈子にこっそりと連絡でもしておくかと、そんなことを霊夢が考えていると――。
「……霊夢さん」
「ん、何?」
「私がここで巫女の修行をしていることは誰にも言わないで下さいね。特に、神奈子様や諏訪子様には」
 びくりと、一瞬霊夢の心臓が跳ねる。
 どうして霊夢の考えていることを見透かされたのかは分からない。もしかしたら霊夢が考えているときに偶然それを早苗が言っただけなのかも知れない。
 ただ一つ分かるのは、早苗が今ここにいる理由はおそらく神奈子や諏訪子にさえ言いたくない理由なのだろう、ということだった。
「……分かったわ」
 ただ霊夢はそう返事をした。
 霊夢は早苗がどうしてここを訪ねてきたのか、その理由はたいしたことのない理由だと思っている。それが「霊夢にとっては」たいしたことのない理由だと思うからこそ興味も沸かない。だから霊夢は早苗に関して、深く詮索するようなことはしなかった。
 しかしそれが霊夢にとってたいしたことのない理由であっても、それが同じように早苗にとってたいした理由ではないなんてことは、おそらくないだろう。霊夢には価値の分からないものであっても、それを軽く扱うことは許されない。
 そのことは霊夢も理解していた。だから早苗がそれを言いたくないというなら尊重しようと思った。それを神奈子たちに知られたくないと早苗が思うならば、それをわざわざ教えたりするつもりは霊夢にはなかった。
 ――神奈子たちは心配しているかも知れないが、まあそれは早苗が全部悪いのだ。
 だから霊夢はそんなことを考えると、次の瞬間にはもう目の前の食事についてだけ考えることにした。
 ふと霊夢は美味しそうにご飯を頬張る早苗を見やる。その幸せそうな表情からは、悩んでいるような素振りは感じられない。
 しかしそんな早苗が心の奥深くには大きな悩みを抱えていることを霊夢は知っていた。
 それがどんなものなのか、他人にあまり興味のない霊夢は知りたいと思わない。
 けれどあわよくば、そんな早苗の悩みが早く解消されればいいと、そんなことを霊夢は思うのであった。
 ――でないと、食費がかさんで仕方がないのだ。



 それから数日が過ぎた。
 早苗は毎日滝に打たれ、霊夢はそれをただ静かに見守るだけだった。
 最初の頃は早く終わって欲しいと、そんな雑念ばかりが沸いていた早苗だったが、今ではそんな雑念とは無縁になっていた。
 水に入って冷たいという感覚は最初だけで、すぐに慣れる。
 滝から落ちてくる水の衝撃も苦しいという感覚はすでになく、感じるのはただ水が流れていくという自然そのものの流れだった。
 そうして自然と一体化したような感覚の中で、早苗はふと昔のことを思い出す。
 早苗は昔にも、このような感覚を経験したことがあった。
 それはまだ早苗が幼かった頃、一子相伝の奇跡を呼ぶ秘術を修めたときのことだ。
 あの頃の早苗も今と同じように、毎日苦行とも言えるような修行をこなしていた。ただ、ひたすらに周囲が求めるとおりに、言われるがまま早苗はそれを行っていた。
 けれど今は違う。
 今はただ自分の意志のみでこうして滝に打たれているのだ。
 外の人間の世界を捨てて幻想郷に来た早苗。正直なところ早苗はこの幻想郷に来ることを楽しみに思っていた。
 けれど実際は、この幻想郷という世界は早苗の思っているような世界ではなかった。
 幻想郷では早苗は決して特別な存在などではない。ここでの早苗は、外の世界で言われていたような現人神などではなかった。ただ、普通の人間としてここに在る。
 そんな自分を最初は早苗も受け入れようと思っていた。あるがままを受け入れ、幻想郷の住人として普通に生きる。そんな生き方も、きっと悪くはないのだと思っていた。
 けれどあるとき早苗は、心のどこかで普通であり続けることを拒否している自分に気付いた。今のままただ有象無象として生きることを、早苗の本心は受け入れることが出来ずにいたのだ。
 だからこそ早苗は誰に望まれるでもなく、ただ自分の意志のみでこうして滝に打たれている。
 それは「変わりたい」という一心だった。
 自分の弱さを受け入れ、醜さを受け入れ、そしてそれらをさらけ出しながらも前に進もうとする。それは決して格好のいいものではないだろう。むしろ恥ずかしいことだとさえ早苗は思っていた。
 だから早苗にとって努力というものは、あるいは「恥」なのかも知れない。
 弱みをさらけ出しながらただ醜く足掻く。どんなに美化されようとも、努力の本質とは結局そこにあるのだから。
 現実をあるがままに受け入れた方が、もしかすると利口な生き方なのかも知れない。
 しかしそう思いながらも早苗は利口であることよりも、恥をしのんで生きることを選んだ。
 たとえそれが恥だとしても、自分の弱さを嘆き、そして悲しむよりはずっといい。



 そうしてまた今日の滝行も終わった。この修行は身体が冷えるため、あまり長時間やっても身体を壊すことに繋がる。無理をして身体を壊してしまっては、一番重要である毎日続けることが出来なくなって逆効果なのだと、霊夢はそう言った。
 けれど早苗は、また今日も何も掴めず終わってしまったことに焦りを感じていた。
 この修行を繰り返した中で経験した、自然と一体化するような感覚には確かに覚えがある。その感覚の向こう側にあるものを掴むことが出来れば、きっと昔と同じように自分は変われるのだと、そんな確信が早苗にはあった。
 もう少しでそれに手が届きそうな――そんな雰囲気を感じた始めたとき、ちょうどその日の修行は終わってしまう。この数日はそれの繰り返しだった。
 そんな繰り返しの中で、早苗の焦燥感は増していくばかりだった。
 もう少しだけ長く修行を続けさせて欲しいと、早苗はそんなことを霊夢に頼んでみたが、やはり霊夢はそれを認めようとはしなかった。滝行は本人が思っている以上に、その水の衝撃と温度に体力を奪われているものなのだと霊夢は早苗に説明した。
 早苗としても霊夢に無理なお願いを聞いてもらった手前、そう言われてしまえば素直に引き下がるしかない。
 けれど、この日の夜――それは起こった。



 小さく虫の音が聞こえるだけの、静かな夜だった。
 霊夢もとっくに寝静まっただろう、そんな時間――しかし早苗は眠ることが出来ずにいた。
 様々なことが早苗の頭を駆け巡り、気付けば目が冴えてしまい眠れなくなっていた。
 修行は明日も続くのだから、早く眠らなければいけない。
 そう思う一方で、こんな風に悠長に眠っている時間さえもったいないと、そんなことを思う早苗もいた。
 目が冴えて眠れないことと、その焦り。
 そして気付くと早苗は寝床を抜け出して白装束に着替えると、そのまま神社を飛び出していた。
 早苗が目指す先は当然、修行の舞台であるあの滝だった。



 滝にたどり着くと、ふと早苗の心に罪悪感のようなものが芽生えてくる。
 それは、霊夢の教えを守らずに霊夢の目を盗んでここに来たという、その裏切りに関する感情だった。
「霊夢さん……ごめんなさい」
 ここにいない霊夢に対して謝罪を口にする早苗。
 けれど早苗はもう、ここに来てしまったのだ。それはいけないことだと思いながらも、結局止まることは出来なかった。
 だから早苗は、ゆっくりと滝の方へと向かう。
 水に片足をつけると、一瞬全身が凍りついたような感覚に襲われた。
 気温の下がる夜、当然水温も日中よりかなり低い。
 しかし早苗は気力を振り絞ってもう片方の足も水につけると、そのままゆっくりと滝の方へと歩き出した。そうして滝の下まで来て、あとは今までと同じように滝に打たれるようにする。
 早苗の全身に、水の衝撃と冷たさが降りかかった。
 それはまるで全身が凍るような冷たさだった。
 けれど早苗は、冷たいのは最初だけで、すぐに慣れると心の中で思う。
 今までも辛いのは最初だけで、すぐに霊夢の言うように気持ちよささえ感じるようになったのだから。そうして雑念が無くなり、やがて自然と一体になったかのように、ただ水の流れだけを感じる――はずだった。
 しかし、今は夜だった。
 今までの日中の修行とは、状況が何もかも異なっている。
 そのことに早苗は気付いていなかった。
 早苗はいつまで経っても水の冷たさに慣れることは出来ず、逆に冷たいという感覚がどんどんと強まっていく。
 ――冷たい。
 ――寒い。
 心の中ではそうした雑念が一向に消えようとせず、そして身体は震えが止まらなくなり、やがて歯がカタカタと音を立て始める。しかし早苗はそれを我慢して、滝に打たれ続けた。
 ――つめたい。
 ――さむい。
 そうして早苗はようやく気付いた。それは雑念などではなく、本能として人間の身体が早苗に伝える危険信号なのだと。
 ――このままでは凍死するかも知れない。
 早苗はそう思って、ようやく滝から出ようと考える。
 しかし。
 ――早苗の身体は本当に凍りついたかのように全く動くことが出来なかった。
「ダメ……早く…………出ない、と……」
 震えた声で、早苗はそう呟く。
 しかし焦る心とは裏腹に、早苗の身体は一向に動こうとはしなかった。
 そして突然、早苗の足が力を失ってしまう。
 膝から崩れ落ちるようにして、早苗の下半身全てが水に浸かった。
 ――ツメタイ。
 ――サムイ。
 そうしてある一つの思考を最後に、早苗の意識は途絶えた。

 ――霊夢さん、ごめんなさい。





















 ――夢を見ていた。
 早苗は少し前から、現実に起きたある出来事の夢を繰り返し見るようになった。
 それは今まで順調に集まっていた守矢神社の信仰が徐々に集まりづらくなり、逆に少しずつ人々の信仰が離れていくようになった頃の話である。
 そんな状況の中で、早苗は今まで以上にはりきって信仰を集めようと尽力していた。
 しかしその早苗の頑張りも空しく、人々の反応はあまり色の良いものとは言えなかった。そしてそんな早苗を見た、一人の人間が思わず洩らした一言。

「頑張っているのは分かるんだけどね」

 たったそれだけの言葉を残して、夢はいつもそこで終わる。
 現実に、ただ一度だけ言われた、ただそれだけの言葉。
 しかしそれを聞いてから、早苗は自分のしていることが分からなくなった。
 自分は一体何をしていたのか。何をしようとして、どんなことを頑張っていたのか。
 自分のどこが間違っていたのか。そして一体何が正しいのか。
 早苗には何もかもが分からなくなっていた。
 そうして自分さえも信じることが出来なくなり、自信を喪失した早苗を見た神奈子と諏訪子は、早苗を慰めるように言った。
「早苗が悪いわけじゃない」
「早苗は頑張っているじゃない」
 けれど神奈子たちのそんな言葉さえ、そのときの早苗には逆効果となった。
 悪いわけじゃないなら、どうして信仰が離れていくのだろうか。
 頑張っているけれど、だからといってそれが一体何になるというのだろうか。
 どうにも早苗はそんなことばかりを考えてしまう。
 自分の巫女としてのあり方の、一体どこに問題があるのだろうか。
 誰かに言われるがままに奇跡の秘術を修め、その力を使い人々の信仰を一身に集めていた早苗。人でありながら、あたかも神のように崇められた、現人神。
 そういった特別な存在として扱われることに早苗は慣れていた。というよりも、そう扱われることが幼き頃より早苗にとっては当たり前のことだった。
 しかし、幻想郷では違った。
 外の世界の常識では考えられない早苗の持つ奇跡の秘術さえ、幻想郷ではよくあることだった。
 外の世界での不思議が、幻想郷では常識に過ぎない。
 ここでは早苗は特別ではない。早苗の持つ力は特別なものなどでは決してなかった。
 最初は物珍しさで集まった信仰も、今では維持することすら困難なのだ。
 その事実は、巫女としての力不足を早苗に痛感させるには充分だった。
 早苗は今まで、自身の持つ奇跡の力に頼りきっていた。それこそが早苗にとって、唯一無二の武器だった。
 だからこそ、早苗はその武器が通用しないこの幻想郷という世界では無力だった。
 外の世界と同じような、そんな巫女としてのあり方では、きっと信仰を集めるには不十分なのだ。
 だから早苗は変わろうと思った。
 早苗は立派な、幻想郷の巫女になろうと決心したのだ。
 それは誰に望まれたわけでも強制されたわけでもなく、ひとえに早苗自身の意志によるものだった。
 しかし――。



 早苗が目を覚ますと、外は夕暮れ時だった。
 そこは今では見慣れた、博麗神社の客間の一室。早苗はそこに敷かれた布団の中で、どうやら今まで眠っていたらしい。
 外から入ってくる、洪水のような夕焼けの赤が眩しかった。
 早苗は自分がどうしてこんな時間まで眠っていたのか、その理由をどうにも思い出せずにいた。
「確か私は――」
 早苗は自分の記憶を辿るようにして手がかりを探す。
 しかしその思考は、唐突に表れた影によって遮られた。
 早苗はその影の方向を見上げるように見やる――影の主は霊夢だった。
 霊夢は無表情のまま、ゆっくりと早苗に歩み寄る。
 そして――。

 ――パシン。

 無言のまま、霊夢は早苗の頬を叩いた。
 その痛みで、早苗は自分がどうしてここで眠っていたのかを思い出す。
 ――ああ、そうだ。
 早苗は自分が霊夢の教えに背き、そして夜にこっそりと抜け出して一人で修行をしようとしたことを思い出した。そうして夜の水の冷たさに体が動かなくなり、それこそ死んでもおかしくない状況に陥った。そんな早苗を助けたのが、早苗の不在に気付いた霊夢だった。
 その霊夢に叩かれた頬が、赤く熱を持つ。その頬を押さえながら、早苗は霊夢の表情を窺う。
 霊夢の表情は、部屋に入ってきたときから変わらずの、無表情だった。
 けれど早苗には、その表情が必死に感情を押し殺しているように見えた。
 霊夢は表情を変えないまま、静かに口を開く。
「どうしてあんなことをしたのよ」
 そう尋ねる霊夢の声は震えるような、そんな声だった。
 どうしてあんなことをしたのか。
 そんなことは決まっている。決まっているというのに、それでも霊夢はそれを尋ねた。
 おそらく霊夢は本当に分かっていないのだ。
 だから――早苗の気持ちなんて、きっと霊夢には理解出来ないのだ。
 そして早苗は言ってしまう。決して言うまいと心に誓っていたはずの、その言葉を。
「……どうせ言ったって、分かりませんよ」
「……何がよ」
「何でも器用にこなせる霊夢さんなんかには、私の気持ちなんて分かりませんよ!」
 大声で、早苗はそう言った。そう、言ってしまった。
 そしてそれを言ってしまったことで、心の枷が外れてしまったのだろうか。
 堰を切ったように、早苗の口から言いたくなかった言葉がどんどんと溢れてくる。
「霊夢さんは、自分に裏切られたことなんてないんです。特別だと信じていた自分の力が、本当はただの何でもないものだったなんて、そんな経験がないんです。自分がどうしようもなく無力だなんて、そんなことを痛感したことがないんです。だから霊夢さんには私の気持ちを理解することなんて無理です。私に共感なんて出来るはずがない。霊夢さんみたいに特別な人間には、そうじゃない人間のことなんて何一つ想像することさえ出来ないんですよ!」
「……別に、私は特別な人間なんかじゃないわ」
「ほら、それです。それなんですよ。霊夢さんには想像出来ないんです。霊夢さんみたいな力のある人がそうやって謙遜みたいなことをして、それで力のない私みたいな人間がどんなに惨めな思いをするのか、全然想像出来てないんです! 私がこの数日の間、どんな気持ちで修行をしていたのか、だから霊夢さんには分からない。分かるはずが、ないんですよ……っ!」
「………………」
 霊夢は何を言うべきか分からずに沈黙していた。
 早苗はなおも続ける。
「……どうして霊夢さんみたいな人が、特別な力を持っていて、みんなに愛されて、全然分からない! 私と霊夢さんの、一体何が違うって言うんですか!」
「……全くね。そんなこと、私にも分からないわ。私はただ生きたいように、好きなように生きていたら、こうなっていたのよ」
「何ですかそれ、自慢ですか」
「自慢じゃ、ないわね……」
 霊夢はただそれだけを言って、あとは沈黙するだけだった。
 早苗もそこで口を閉じ、結果として静寂が場を支配する。
 そうした中で少し冷静になって、唐突に早苗は自己嫌悪に苛まれた。
 こんな醜い感情が自分の中にあったこと。そして何より、自分のわがままに協力してくれて、その上心配までしてくれた霊夢に、その感情をやつ当たりのようにぶつけてしまったこと。
 ――ああ、自分はどこまで最低なのだろう。
 早苗がそう思うと、自然と涙が溢れてきた。
 ――どうして自分はこんなにもダメなのだろう。霊夢はあんなにも立派だというのに。
 そうなのだ。早苗はただ、霊夢のことが羨ましかったのだ。
 突然訪ねてきた早苗の無理な頼みごとを、嫌な顔をしながらも結局は引き受けてくれた霊夢の心の広さが。
 他人に興味がないと言いながら、他人を尊重し、思いやり、時に厳しく諭すことの出来る霊夢の優しさが。
 ――どうして自分には、それが無いのだろうか。
 早苗が変わりたい一心で修行をしながら思っていたこと。
 それは、霊夢のような立派な巫女になりたい、ということだった。
 つまり霊夢とは、早苗にとっての憧憬だったのだ。
 それを自分で理解していたからこそ、早苗は自分が言ってしまった言葉が許せなかった。
「……霊夢さん、ごめんなさい。私は今最低なことを言いました。私は一人で勝手に焦って、霊夢さんの教えに背いて、それで霊夢さんに心配をかけて……元々は私から霊夢さんに頼んだことなのに。霊夢さんは何も悪くないのに、全部私が悪いだけなのに……やつ当たりで霊夢さんに酷いことを言って、傷つけて。……どうして私ってこうなんでしょう。どうして私は、霊夢さんみたいになれないんでしょうか……」
 早苗は涙を流しながら、言ってしまったことを後悔するように言った。
 しかしそれを聞いた霊夢は、何でもないような雰囲気で尋ねる。
「ねえ、あんたは私みたいになりたいの? それとも立派な巫女になりたいの?」
「え、それは――」
 早苗はずっと変わりたいと思っていた。霊夢のような立派な巫女になりたいと思っていた。早苗にとっては、立派な巫女といえば霊夢のことだった。
 だから早苗はその二つを個別に考えたことがなかった。
「あんたは自分の無力さを克服しようとして修行していたのよね。無力な自分に存在意義は見出せなかったから、だから変わろうとした。そういうあんたの考え方は、悪くないと思う。少なくとも私は好きよ。……でもね、一番大切なことを見失ったらダメなのよ」
「一番、大切なこと……?」
「もしあんたが私みたいに――私と同じ人間になれたとする。それで確かにあんたは変われたことになるのかも知れない。けどね、この世界に同じ人間は二人も必要ないのよ。そうなると結局あんたはまた自分の存在意義を見出せなくなる。それじゃあせっかく変わったっていうのに、何の意味も無いじゃない」
 それこそが霊夢のいう一番大切なことだった。
 一番大切な目的を見失っては、早苗の努力も全て水の泡と消える。
 早苗は考える。自分が本当に欲しいものは何であるのか。
「だからあんたはあんたのまま、私とは別の道で立派な巫女を目指しなさい。誰かの歩いた道は確かに歩きやすいけど、そうして楽してばかりじゃ本当に欲しいものは手に入らないわよ?」
 霊夢はそう、優しい声で早苗に言った。
 ――やはり、霊夢には敵わない。
 早苗はそんなことを思った。けれどそれは、あくまでも「今はまだ」ということだった。
「ねえ、霊夢さん――」
「ん、何よ?」
「私、立派な巫女になれますか?」
 早苗はそんなことを尋ねた。
 霊夢は答える。
「さあね。……でも私は、八百屋にサンマは頼まないのよ」
 霊夢は出来ないと思うことをやれとは言わないのだと、そう遠まわしに言った。
 早苗が変われると思ったからこそ、霊夢は早苗の頼みごとを聞いたのだ。
 早苗もそのことに気付いて、だから言った。
「霊夢さん……ありがとうございます」
 感謝の気持ちを、心から込めて。
 それを聞いた霊夢は――。
「礼は終わってからでいいって言ったでしょ?」
 ――と、やはりそっけなく言うのであった。
初めましての方は初めまして、鈴木々々(すずききき)です。
さて、困りました。自分はどうにもこのあとがきというものが苦手なようです。
何か作中では書けないような、しょうもないことを書けばいいのでしょうか。
そういえば今回はタイトルに悩みました。
最初は「霊夢のパーフェクト巫女さん教室」にしようと思ってました。嘘です。
タイトルに悩んだというところから嘘です。
意味も無くしょうもない嘘をついたことで、自分という人間の矮小さを自覚してしまいました。泣きたい。
とまあ、これくらいで終わっておこうかと思います。楽しんでいただけたなら幸いです。
鈴木々々
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コメント



0.1760簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
その矮小な人間のしょうもない嘘で噴いてしまいました、泣きたい。
良い作品だったと思います。霊夢と早苗、二人のキャラクターの対比が巧く表れていて、最後まで楽しめました。
感性が自分と近いようで、自分でもこう書くと思うような展開に、手前味噌ながら楽に読み進められました。
続編も見てみたいかな、と思ってみたり。
4.90奇声を発する程度の能力削除
頑張り屋さんな早苗さん可愛いよ
11.90名前が無い程度の能力削除
いいところで終わってしまった。
続きに期待
17.90名前が無い程度の能力削除
この作品にも、あなたのこれからにも期待です。