Coolier - 新生・東方創想話

どうしてだっけ

2011/09/07 16:09:14
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「はー…暑い…」

紅魔館の近くにある大きな湖のほとりに座る少女の姿がひとつ。緑の髪をサイドポニーにしている。背中には薄い羽根が二枚。
固有の名前は無いが、力の強い妖精であるため大妖精と呼ばれる。親しみをこめれば大ちゃんだ。

「暑いな~まだまだ夏か~」

そう言いながら、両足を湖の中に入れてじゃぶじゃぶと動かしている。水しぶきが心地いい。
暦の上では夏はとっくに終わりっているが、それは人間の用いる暦の話であって、妖精には関係ない。
日が差しているうちはまだ暑い。暑ければ夏、寒ければ冬なのだ。

「お~い、大ちゃ~ん」

彼女を呼んで、ふよふよ飛びながら近づいてくる影がひとつ。青髪で氷のような羽。

「あ、チルノちゃん!」
「うわっ!」

チルノ大妖精の隣に着地するや否や、大妖精はチルノに抱きついた。

「う~ん、ひんやりしてて気持ちいい…」
「大ちゃんはいっつもこうだなあ…」

ほおずりする大妖精と、少し呆れる氷精。
普通の人間ならばひんやり程度では済まない。凍傷は間違いなしである。
しかし大妖精は力の強い妖精なので、夏場には丁度気持ちいいぐらいだ。流石に冬はきついが。

「は~気持ちよかった…で、今日はどうしたの?」

ほおずりを終えて、そう尋ねる。
ただ、本当はチルノがやってきた理由など大体分かっている。付き合いは長いのだ。

「これから里の人間たちにいたずらしに行くけど、大ちゃんもくる?」

大妖精の思った通りである。
妖精は好奇心旺盛でいたずら好きである。ただ、臆病なので里までいたずらしに行くことはあんまりない。異変の影響でテンションが上がった時くらいである。
一方チルノは妖精の中でも力が強い。普段彼女が言う「あたい最強!」も妖精たちの中ではあながち間違いではない。そういった自信から、人間の里にも堂々と乗り込む。
大妖精もまた同じである。いたずら好きで、妖精の中では力も強い。答えは決まっている。

「うん!いくいく!」

青い妖精と緑の妖精は、その場から飛び立った。










人間の里に向かって、青と緑の影が寄り添うように飛んでいる。
正確には、緑が青に寄り添っていると言った方が正しいだろうか。

「チルノちゃんの周りはひんやりしてて気持ちいいね」
「そうなのかな~自分ではよくわかんないや。でも大ちゃんがうれしそうだからいっか」
「…ホントはそれだけじゃないんだけどね」
「何か言った?」
「な、何でもないよ」

しまった声に出ちゃった、と大妖精は慌ててごまかす。
隠してはいるが、大妖精はチルノに対して友達以上の感情を抱いている。先ほどチルノに抱きついていたのだって、下心が無かったと言ったら嘘になる。
そういうことに疎いチルノには全く気づかれていないのは、うれしいやら悲しいやら。
ただ、そのことについて大妖精には気になることがひとつある。

(…わたしってどうしてチルノちゃんが好きなんだっけ?)

前述の通りチルノとの付き合いは長い。はじめの頃はただの友達だったのに、気づいたら好きになってしまっていた。一体いつ、どうして好きになったのだろうか。
差はあるが、妖精はみな頭が弱い。記憶力もあんまりない。大妖精は妖精の中ではまあまあであるが、やはり妖精である。

(…まあいっか、この気持ちに違いはないし)

少々もやもやするが、大妖精はいつもこうして深く考えないようにしている。深く考えるのは苦手だ。

そして、いつもこれに続いて出てくる疑問がある。

(チルノちゃんってどうして夏に元気なんだろう?)

妖精は自然の結晶であり、その影響を受けやすい。氷精であるチルノは、本来ならば冬こそ元気で、夏は元気が無いはずだ。
しかし現実はその逆。夏に元気で、冬は元気が無いわけではないがあんまり楽しそうでない。妖精としては不自然で、疑問に思う事自体はおかしくない。
ただ、何故この疑問がいつも、何故チルノのことが好きなのかと考えた後に浮かんでくるのか、それも良く分かっていない。

(何で夏が好きなんだっけ…確か前に聞いたことがあるような気がするけど…)

どうしても思い出せない。もう一度聞いてみようかと思ったことはあるが
「忘れちゃったの?大ちゃんってばバカだな~」
と言われそうな気がするのでやめておく。大妖精も、チルノにバカと言われるのは悔しい。理由はご察しください。

「大ちゃん、人間の里が見えてきたよ!」
「え!?…あ、ホントだ」

考え込んでいるうちに人間の里まで到着していたようだ。急に声をかけられて思わず声をあげてしまった。

「そんじゃ、レッツいたずら~!」
「ま、待って~!」

チルノがスピードをあげ、大妖精はそれを追いかける。











夏の暑い時期、チルノと大妖精がやるいたずらは決まっている。
チルノが作った氷を、そこらへんにいる人間の服の背中に入れる。そうすると

「つ、冷て~!?」

服の中から氷を取り出そうと必死にもがく。しかしもがけばもがくほど焦ってしまい取り出せない。

「あはははは!バカみたいに踊ってる~!」
「あははははは!」

その様子を見て、二人は大笑いする。何度やっても面白い。以前昼寝している博麗の巫女にもお見舞いしてやったことがある。その後どうなったかはいわずもがな。

「こ、このバカ妖精!」

ようやく氷を取り出し、二人に向かって声をあげるが

「へっへ~んだ、悔しかったらここまでおいで~!」
「あっかんべ~!」

チルノと大妖精は空を飛んでいるため、一般人にはどうすることもできないのである。
相手が手を出せないことをいいことに、調子に乗る二人。
ただ、お調子者の二人は忘れていた。この里には人々を守る教師がいたことを。

「おい!お前たち!」
「げ!?」
「こ、この声は…」

突然後ろから怒鳴られて、恐る恐る振り返る。この声は間違いない、里にいたずらしに来る度にたちはだかる…

「ゲイね!」
「慧音だ!変な間違え方をするな!」
「あだ!」
「ち、チルノちゃん!」

ごんっと鈍い音。チルノに頭突きがお見舞いされたのだ。
チルノはおでこをおさえながら

「いった~、なにすんのさ!」
「なにすんのさ、じゃないだろう。まったく、性懲りもなく何度も何度も」

妖精二人がやってくる、いたずらする、慧音が叱る。このお決まりのパターンは何度も繰り返されている。
いたずら好きの妖精は、追い返されたってすぐにまたやってくる。失敗したことなど一回寝ればころっと忘れてしまうのだ。

「うっさいこの石頭!変な帽子!牛女!」
「―ごんっ!ごんっ!」
「おう!」
「あわ!」

今度は鈍い音が二つ。チルノと大妖精に一発ずつ頭突きがお見舞いされた。

「貴様ら!今日という今日は許さんぞ!1時間正座のお仕置きだ!」
「いてててて…」
「な、何で私まで…」

二人は涙目になりながらおでこをおさえる。
流石に牛女は頭に来たらしい。頭突きの威力がいつもの3倍増しだ。
鬼気迫る慧音に、大妖精はこれ以上里にいるのはもう無理だと判断した。

「チルノちゃん、逃げるよ!」
「あ、こら待て!」

慧音は急いで二人を捕まえようとするが時すでに遅し。大妖精がチルノに抱きついて、一緒にワープしてしまった。
一回のワープでの移動距離はたかが知れているが、何回も繰り返せばどんどん遠くに移動できる。

「むう…逃がしたか…」

見る見るうちに小さくなってゆく二つの影を見ながら、悔しがる慧音だった。










「う~あの牛女め…いてて…」
「痛かったね…」

ワープを繰り返し、湖まで逃げてきた。もう安全である。
ずきずき痛むおでこをさすりながら、二人はぶつぶつ話していた。

「もう、チルノちゃんがそんなこと言うからわたしまで頭突きされちゃったじゃない」
「何さ!あたいのせいだっての!?」
「そうだよ!チルノちゃんが牛女なんて言ったからいつも以上に怒っちゃったんじゃない!」
「何を~!」

大妖精の一言から喧嘩が始まってしまった。妖精は回りくどい言い方はしないので、口喧嘩になると結構ずけずけとものを言う。

「そんなことより、何で逃げたのさ!あれから慧音をぎったんぎったんにしてやろうと思ってたのに!」
「出来るわけないでしょ!頭突きでくらくらしてたくせに!」
「出来るもん!最強だもん!」

ああ、なんで好きになっちゃったんだろう、口喧嘩をしながら大妖精はそう思った。
妖精は我が強く、わがままで無鉄砲だ。特にチルノは最強という自負からか、無鉄砲さが際立つ。
それに巻き込まれて苦労した経験など、ごまんとある。その度に喧嘩もしてきた。
しかし

(…どうしても嫌いになれない。嫌いになりたくない)

喧嘩しながらもそう思う。目の前でぎゃーぎゃー騒ぐこの妖精を、嫌いになったことなど一度もない。記憶力に自信は無いが、それだけははっきりと言える気がした。

大妖精にとって何だかちぐはぐな喧嘩は続き、お互いに相手への悪口がこれ以上はなかなか出てこなくなったころ、近くの茂みから誰かが出てきた。

「二人とも何してるの?」









「あ、ルーミア…」
「ルーミアちゃん…」

茂みから出てきたのは、金髪に赤いリボンの少女、ルーミアだった。
彼女はじっと目の前の妖精を見て

「大きい声出してたけど、また喧嘩?」
「それがね、聞いてよルーミア!」
「それがね、聞いてよルーミアちゃん!」
「うわわ!」

二人同時に迫ってきて思わずたじろぐルーミア。
二人いっぺんには聞けないよ、と言うと、チルノと大妖精は少しゆっくりと話し始めた。

「へーそーなのかー」

大体の顛末は理解したようである。
要は人間の里でいたずらして慧音に怒られた。その時のお互いを非難しあっていた。そういうことである。

「そーなのかー、じゃないわよまったく。この弱虫臆病ヘタレ緑妖精があの時逃げなければ」
「何よ!大馬鹿無鉄砲勘違い青妖精があんな悪口言わなければよかったのよ!」

喧嘩の際に出した悪口を適当につなげて、再び罵りあう。
そんな二人をよそにルーミアはというと

「ぷっ、くくくくく…」

何故か必死に笑いをこらえていた。
それに気づいたチルノと大妖精は、きょとんとした顔でルーミアを見る。

「どうしたのルーミア?」
「ルーミアちゃん何で笑ってるの?」
「だって…弱虫臆病ヘタレ緑妖精に大馬鹿無鉄砲勘違い青妖精って…くくく…」

何やら二人の表現がつぼにはまってしまったようである。
二人の問に笑うのを耐えながら答えるルーミアであったが、流石に我慢の限界のようで

「ぷっ、くっ、あははははは!」

ついには大笑いしてしまった。
そんなルーミアの様子に、二人の妖精はお互いの顔を見あって

「「ぷぷっ、あはははははは!」」

さっきの怒りはどこへやら、ルーミアの笑いにつられてしまって二人も一緒に大笑い。
そしてその後はあっという間に仲直り。良くも悪くも妖精は単純なのだ。










「ふう…そういえばチルノー」
「どうしたの?」

ひとしきり笑い終わったころ、ルーミアはチルノに尋ねた。

「チルノって氷の妖精なのに冬より夏の方が楽しそうだね。何で?」
「!?」

大妖精は驚いた。これは聞きたくてもなかなか聞き出せないでいた大妖精の疑問。それをルーミアがたまたま聞いてくれた。
答えが気になる大妖精は、じっとチルノの顔を見る。

「簡単なことよ。だって―――――」

(ああそうか、そうだったんだ…だからわたしはチルノちゃんのことが…)

にっこり笑いながら答えるチルノを見て、全て思い出した。
あれはずいぶん昔、まだ二人が友達になってそれほど経っていなかったころ…










『チルノちゃんって夏でも元気だよね~』
『それがどうしたの?』

友達になってから数回目の夏。大妖精はチルノにそう言った。
最初の夏、氷の妖精であるチルノは力が弱まってなかなか遊べないだろう、大妖精はそう思っていた。しかしそんなことは無かった。次の夏も、その次の夏も。
どちらかというと冬よりも夏の方がずっと活き活きしているぐらいだ。

『それがどうしたのって、すごい事なんだよ!わたしなんかやっぱり冬は調子でないし』
『あたいも冬は調子上がんないな~』
『へ?どうして?』

驚いた。氷精であるチルノは冬の方が好きだとばかり思っていた。

『簡単なことよ。だって夏は楽しいけど冬はつまんないもん』
『…え?』

どういうことなのか、大妖精は訳が分からなかった。
妖精は自然に左右されやすいんじゃないのか、だったら冬がつまんないってどういうことなのか。
不思議そうな顔をする大妖精にチルノは説明を続けた。

『寒い冬に誰かを寒がらせてもあんまり効果ないけど、暑い夏にいきなり寒がらせるとすごくびっくりするもん。だから夏の方が楽しい!』
『な、なるほど…』

にっこり笑ってそう答えるチルノに、大妖精は何故だか納得してしまった。
そしてそれと同時に

(なんだか、憧れちゃうな…)

妖精は自然に左右されやすい、好奇心旺盛でいたずら好きな存在。
氷精が冬より夏の方が好きなのは妖精らしくないけど、その理由はいたずら好きの心を満たすためという妖精らしいもの。チルノは実に妖精らしい理由で、妖精の型を破っていたのだ。

そんな型破りなところに、大妖精は惹かれた。
妖精の心を動かすのは、それに対する者の心のあり方。チルノのまっすぐで豪快な心に、魅力を感じたのだ。

(チルノちゃん…すごい…)

心に根付いた憧れの気持ちは、次の夏、その次の夏と経るごとに次第に強まり、いつしか恋心へと変わっていた。
その内に、最初の憧れという感情が薄まり、恋心だけが強く残るという事になった。
そうして、恋心を抱いたきっかけを忘れてしまっていた。










(だから、何でチルノちゃんが好きなんだろうって考えると、一緒にそのことも気になったんだ…)

夏が好きな理由を高々とルーミアに話すチルノを見て、ようやく分かった。
好きになったきっかけは憧れの心から。そして憧れを抱くきっかけは、妖精らしい理由で妖精らしくない夏好きの氷精というチルノの豪快さ。
全てがつながった。

「えへへ、チールノちゃん♪」
「うわっ!急にどうしたの?」

話し続けるチルノに、大妖精は抱きついた。そしてにっこり笑って

「チルノちゃんだーい好き!」

その言葉に、最初はきょとんとするチルノだが、こちらもすぐににっこり笑って

「あたいも大ちゃんのこと大好き!」

そう答えた。

(ああ…たぶん違うんだろうけどなあ)

どういう「大好き」なのか、おそらく大妖精とチルノには違いがあるだろう。
でも大妖精にはまだそれで十分だった。今はとりあえず

「チルノちゃん、すりすり~ひんやり~」
「くすぐったいなあ、もう」

チルノちゃんに思いっきり抱きつこう、そう考える大妖精だった。



「そーなのかー」

一体何が分かったのか、一人おいてけぼりにされたルーミアはそうつぶやいた。
大チルっぽいお話。
大さん(わたしは基本的に大妖精のことを大さんと呼びます。なんとなく)がチルノに片想いしているような構図。ありがちですが、やっぱりこの構図が好きです。
何で大さんはチルノに惚れちゃったのか、そんな妄想でした。

では、読んでくださってありがとうございました。

追記
ご評価、コメントありがとうございます。
「ゲイね!」が思いのほか好評のようで驚きました。妖精だから憶え間違いしてもしょうがないですよね。でも慧音先生は女性なんだから、この間違え方はひどいでしょうね。

おしとやかでチルノの保護者な大さんも好きですが、原作妖精のような大さんも好きです。
というかおしとやかなキャラ書けません。書ける人はすごいなあ…

誤字指摘ありがとうございます。凡ミスしてました、すいません。
トローロン
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コメント



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1.無評価名前が無い程度の能力削除
>熱い
暑い
2.90奇声を発する程度の能力削除
ゲイねwww
二人の仲の良さが伝わってきて良かったです
4.100名前が無い程度の能力削除
この二人を見ていると幸せな気分になれます。
5.100名前が無い程度の能力削除
ゲイね!
これは新しい
9.100名前が無い程度の能力削除
大チルというだけで高評価もらえるなんて思うんじゃねぇぞ!!


可愛いよぉぉ、大ちゃんチルノちゃん可愛いよぅ!!
11.100名前が無い程度の能力削除
この二人は良いなぁ
チルノの冬は好きじゃない、というのは確かに妖精らしくないですね
15.80名前が無い程度の能力削除
記憶に間違いが無ければ、確か公式設定でもチルノはあまり冬が好きじゃないんだっけ。

いたずら好きな大妖精とか、公式設定を踏襲したのがgood
28.100名前が無い程度の能力削除
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