Coolier - 新生・東方創想話

少女を喰らう

2011/08/21 12:53:56
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 一つ御話を致しましょう。
 境界を操る妖怪と、一人の人間の少女。
 そんな二人を中心とした醜く儚い、人喰いの物語を。
 この御話を聞いた後、どう感じるかは皆様次第。
 笑うもよし。
 憤慨するもよし。
 涙を流すのもよし。
 ただ、一つだけ望ませて頂くなら。
 この御話を聞いた後、皆様の彼女達に対する見方が、ほんの少しだけ変わっている事を。

 ああ、しかしご注意を。
 この御話、私が直接拝見した部分だけでなく、一部伝聞や推測で組み立てられた部分も御座いますので。
 その点は聴衆の皆々様、平に、平にご容赦を―――――











――――――――少女を喰らう―――――――――











 さてさて、物語はまず一人の女性がとある里を訪れる所から始まります。
 女性の名前は八雲紫。
 我々の世界……幻想郷を見守る賢者にして、境界を操る大妖怪でございます。
 この妖怪、世界を誰よりも大切に思っているのは間違いないのですが、困った事にちょっとしたきらいがございまして。
 自身が妖怪だと言う事もございまして、少々妖怪贔屓が過ぎるのです。
 今回の行動も、その悪癖が影響しての物でした。

 彼女が訪れたのは、高名な退魔師の収める人間の里でした。
 こちらの村長でもある退魔師、彼はとても高位の霊力を持つ男です。
 残念な事に、この太平の世界においても、人間達に悪事を働く妖は耐えません。
 彼はそんな存在達から人々を守ろうと、数多くの妖を屠りました。
 老若男女、それこそやり過ぎだと思う程に徹底的に。
 八雲紫はそれが許せなかったのです。
 別に斃された妖怪達に懇意している者がいたと言う訳ではありませんが。
 自分の所属する妖怪と言う枠を、『悪』とする彼らが単純に気にいらなかったのでございます。

「さて、今日は何処かしら」

 とは言え彼女、別に直談判に来た訳でも、彼らを皆殺しにしようとした訳でもございません。
 彼女の目的は、もっと別の所にありました。

「あ、スキマ妖怪さん!」

 それはこの少女。
 大きなリボンと黒髪の愛らしい、他ならぬ妖殺しの村長の一人娘でした。
 大妖怪の前だと言うのに、少女はまるで怖がる様子を見せません。
 妖怪を退治する対象とみなす彼らの中で、彼女だけは人と妖怪を公平な目でみていたのです。
 八雲紫は、そんな彼女に強い興味をもったのでございます。

「大きい声出さないの。私と会っているなんてバレたら、お父様に酷く叱られるわよ」
「ご、ごめんなさい……またスキマ妖怪さんに会えたのが嬉しくて……」

 少女の本当にすまなさそうな言葉に、妖怪は思わず頬が綻んでしまいます。
 何せ、彼女ときたら大妖怪である八雲紫の事も、まるでお友達のように慕うのですから。
 人間に忌み嫌われる事の多い妖怪にとっては、酷く貴重な存在だったのです。
 それこそ里人達の目をかいくぐってでも、会いに来る価値がある程に。
 彼女と共にいると、八雲紫もまた非常に愉快な気持ちになる事が出来たのでございます。
 妖怪である自分に向けられる根拠のない信頼。
 まるで友人や母親に対して送られるような無償の好意。


 ―――――踏みにじってやる。


 スキマ妖怪の心の中で、どす黒い獣が騒ぎ立てます。
 自分の事を他の誰よりも信頼させ、好意を抱かせた上で。
 信じた者に裏切られる屈辱を嘲笑いながら、彼女を喰らい尽くしてやる。
 果たして自分の本性を目の当たりにした時、彼女はどのような表情を浮かべるのだろう。
 大切な一人娘の命を奪われた人間は、どのような声で嘆くのだろう。
 そう遠くは無い未来に訪れるであろう光景を思い浮かべ、スキマ妖怪はとても楽しそうに嗤います。
 それこそが妖怪を虚仮にした彼らに対する、八雲紫の皮肉でございました。
 妖怪を忌み嫌った人々のせいで、妖怪を愛した少女がその命を落とす。
 中々に愉快な光景じゃあないか、八雲紫は酷く歪んだ趣向に唇を歪めました。

「どうしたの、スキマ妖怪さん?」
「いいえ、何でも無いのよ。それより、今日は何して遊ぶ?」
「うーん、えっとね」

 嗚呼、悲しきかな。
 無垢な少女が目の前の妖怪の歪んだ本質に気付く様子は微塵もございません。
 ましてや、近い将来自分の身に迫る絶望など。
 そのような物、まるで認知していない少女は、ただただ自分と遊んでくれる優しい『スキマ妖怪さん』に向けて。
 無邪気に、愚かなまでに無邪気にその手を伸ばします。

「じゃあ、鬼ごっこ!」
「悪くないわね。でもここじゃあ場所が狭いから」

 スキマ妖怪は伸ばされた手を掴み、彼女専用の遊び場へと少女を案内します。
 誘われた先開かれるのは、妖怪と少女が幾度と無く遊びあった空間の狭間。
 境界を操る彼女だからこそ達する事の出来る、無限に広がる黒の荒野でございます。
 始めはおっかなびっくりであった少女も、ここ最近はすっかり慣れた物。
 嬉しそうにはしゃぎながら、黒の荒野を駆け巡ります。
 
「こらこら、まだ鬼を決めて無いでしょうに」
「スキマ妖怪さんが鬼ー。だって妖怪だもん!」
「やれやれ、仕方ないわね」

 妖怪即ち鬼と言う訳ではないのだけど。
 そう訂正も入れるのも面倒に感じた八雲紫は、少女の言う通り鬼を引き受けました。
 考えてみれば鬼とは敗者を攫い、場合によっては喰らってしまう種族。
 何とも自分にぴったりの称号ではないか、とスキマ妖怪は感心したように小さく頷きます。
 無論、少女にはそのような意図は一切なく、ただ単純に彼女に追いかけて欲しかっただけですが。

「ぎゃおー、食べちゃうわよー」
「きゃー、怖いー!」

 本当に今食べてしまおうか、などと心の中で嘲笑いながら。
 少女の楽しげな悲鳴に、手がやける物だ、と妖怪は溜息を吐くのでした。
 これは、妖怪が少女を喰らう、およそ一年前の御話。
















 さて、少しばかり時が経ちまして。
 妖怪と少女は未だに逢瀬を続けておりました。
 一方は愚かな少女の将来に、更なる絶望を与える為に。
 一方は優しい妖怪さんと共に、今を純粋に楽しむ為に。
 まるで噛み合わない目的を持ちながら、二人は互いに共に過ごす一時を楽しんでいたのでございます。

「……ねぇ、スキマ妖怪さん」
「何かしら」

 この日、少女は珍しく沈んだ様子でした。
 誰もいない屋敷の縁側で二人、腰を掛けながら弱々しく言葉を紡ぎます。
 八雲紫としては彼女の機嫌などどうでも良かったのですが、これも更なる信頼を勝ち取るため。
 出来る限りの親身を装いながら、少女の言葉に耳を傾けます。

「どうしてみんな、妖怪を怖がるのかな」

 少女の言葉にスキマ妖怪は、そう言えば、と自身の頭の片隅にある記憶を探ります。
 彼女の式の話では、何でも先日彼の退魔師によって、とある妖怪の一族が皆殺しにされたとか。
 この程度、世界からすれば些細な出来事でしたし、自身に実害がある訳でもありません。
 八雲紫としては無視を決め込んでいた訳ですが……。
 成程、恐らく少女にとってはこれが退魔の仕事を目の当たりにする、初めての機会だったのでしょう。
 自身の父親による、妖怪達の殲滅の様が余りにも凄惨で、幼い彼女にとって衝撃だったようでございます。
 何だくだらない、と。
 スキマ妖怪は呆れたように溜息を吐きながらも、それでも少女の質問に応えます。

「妖怪は人を襲うもの。力で劣る人間が恐れるのは当然だわ」
「でも、スキマ妖怪さんみたいに良い妖怪だっているのに」
「私はこれでも悪い妖怪よ?」

 人間から見れば、ね……と心の中で皮肉を言いながら、少女の瞳を覗きこみます。
 いつもならば「そんな事は無い」と否定をされる所ですが、どうやらこの日に限ってはその元気も無いようで。
 スキマ妖怪の瞳に対しても、逃げるように視線を下へと向けてしまいます。
 つまらない、スキマ妖怪は心底思いました。
 彼女としましては、始めから落ち込んでいる相手を喰らっても、何も面白くないのです。 
 自身に対する信頼と好意、そして希望。
 溢れんばかりのそれら全てを、自分の手でブチ壊しにしてこそ、真なる美食を味わえると言う物だと。
 少なくとも、彼女はそう考えていたのですから。

「ほら、そんな情けない顔をしないの」

 楽しみにしていた料理の鮮度を保つために。
 何と言う偽善だろうと嗤いながら、スキマ妖怪は優しい声で少女を励まします。
  
「貴女、この里の跡を継ぐのでしょう? 退魔師の跡取りが妖怪の死に心を痛めてどうするのよ」
 
 そこに込められているのはあくまで少女を慰める為の、スキマ妖怪の詭弁。
 けれど妖怪が口にした言葉自体は、紛れもない事実でございました。
 果たしてそれは一族の血か、はたまた世界の因果か。
 皮肉にも少女は非常に強い退魔の才を持って生まれてしまったのです。
 妖怪を慕う彼女に、類稀なる妖怪を屠る才能。
 まこと、世界とは数奇な物だ、と妖怪は苦笑してしまいます。

「でも」
「?」
「私、退魔師なんかになりたくない。私の手で妖怪を消し去りたくなんて無いよ……」

 嗚呼、なんと健気な少女でしょう。
 目の前の妖怪を優しい存在だと信じて疑わない彼女は、その妖怪の手に自分の手を重ねながら。
 恐らくは父親相手にすら語った事のない、自分の本心を曝け出してしまいます。
 ひょっとしたら彼女はスキマ妖怪に、今は亡き母の面影を重ねて居たのかもしれません。

「人間も妖怪も、みんな仲良く暮らしていければいいのに」

 ふざけた夢物語を。
 妖怪と人間の共存など、出来る筈がないではないか。
 スキマ妖怪はそう言葉にしそうになって、慌てて口を塞ぎました。
 そんな事を彼女が口にすれば、少女は確実に泣き出してしまうでしょうから。
 悪態は心中で吐くに止め、苛立つ気持ちを表に出さないように注意します。
 果たして何と言ってやれば、彼女は笑顔になるのだろうか。
 人間と繋がりの薄かった八雲紫には見当もつきませんでしたが。
 何時までも落ち込んだままの少女を見て居られなくなった彼女は、呆れたように言葉を紡ぎます。

「だったら、貴女がそうすればいいじゃない」
「え?」

 言葉の意味が理解できなかったのか。
 少女は素っ頓狂な声をあげながら、八雲紫の顔を覗見上げました。
 
「貴女が先頭に立って、人々の考え方を変えればいい。人間と妖怪が共存出来る場所を作りだしてしまえばいい」

 つらつらと。
 まるで簡単な事のように八雲紫は言葉を紡ぎます。
 否、彼女は別に簡単だと思って口にしている訳ではありません。
 現状が不満ならば、変えるのは自分であるべきだ、と少女に教えていたのです。
 いずれ腹の中に入る相手にこんな事を言っても無駄だと頭では理解しつつも。
 それでも、自分でも気付かない内に衝動に駆られたように、言葉を紡いでしまったのでございます。
 ……少々あてられたか。
 らしくない自身の行動に、スキマ妖怪は自嘲めいた溜息を吐いてしまいます。
 対して少女は、しばらく呆気にとられたようにきょとんとしておりましたが。
 八雲紫の言葉を理解すると、ほんの少しだけ希望が見えたように、淀んでいたその瞳を僅かに輝かせました。

「出来るのかな、そんな事?」
「さぁ? でも為そうとしなければ、何事も成らない物よ」
「……うん」

 何処か照れたような少女の返事。
 あれだけ落ち込んでいた癖に、こうも簡単に機嫌が直るのですから子供とは現金な物です。

「人と妖怪が共存できる場所……」

 彼女が本当にその実現に向けて行動をするのかどうか。
 そんな事、スキマ妖怪にとってはどうでもいい問題でした。
 どの道、彼女が人と妖怪の共存を実現させる事はあり得ない。
 その前に、他ならぬ八雲紫によって、彼女は食べられてしまうのですから。
 それでも八雲紫は、純粋に……ただ純粋に。
 目の前の少女の表情が色を取り戻した。
 その事実に、自分でも気付かない程僅かに……本当に僅かに、安堵していたのでございます。
 これは、妖怪が少女を喰らう、およそ三月前の御話。

























 少女の信頼を裏切った上で、彼女を喰らう。
 そんなスキマ妖怪の企てが水泡に帰す事になったのは、それから二月程の時が経った頃でした。
 宵闇に満たされた森の中。
 二人肩を並べて美しい満月を見上げている最中、少女はゆっくりとその言葉を紡ぎました。

「私、博麗の巫女になるんだって」

 歓喜とも憤怒とも悲哀とも楽観とも取れない。 
 様々な感情がないまぜになった、少女の言葉。
 それが耳に入った瞬間には、八雲紫は弾かれたように少女の方向に振りかえっていました。
 少女の口から放たれた信じられない言霊に、自身の耳を疑います。

「今、なんて……?」
「だから、私が次の博麗の巫女になるんだって」

 どうやら聞き間違いでは無かった様子。
 スキマ妖怪は思わず強い目眩を覚えてしまいます。

「貴女、自分の言葉が何を意味するかわかっているの?」

 博麗の巫女。
 世界の根底に深く携わる八雲紫にとって、それは強く馴染みのある言葉でした。
 幻想郷が存在する為に必要な、大結界を司る管理者。
 人と妖の中心に立ち、両者間のバランスを保つ裁定者。
 そんな名実共に世界の要である存在に、少女は選ばれたと言うのです。
 これはタチの悪い冗談か。 
 私が動揺する姿を見て、面白がっているのだろうか。
 八雲紫は混乱する頭で、少女の言葉が偽りである可能性を探しました。
 もう一人の結界を司る存在である彼女からしてみれば、それは余りに信じれらない事態だったのです。

 しかし、スキマ妖怪の疑念を振り払うように、少女はゆっくりと首を縦に振りました。
 その瞳は何処までも真摯で、真剣で。
 こういう表情をした彼女が偽りを口にする事は無い。
 その事実を知っていた八雲紫は、彼女の言葉が真であると認めざるをえませんでした。
 途方も無い諦観が彼女を包み込み、はぁ、と大きな溜息を吐いて脱力してしまいます。

「ど、どうしたの? スキマ妖怪さん?」

 心配そうな少女の声も、スキマ妖怪には届きません。
 少女が博麗の巫女に就任すると言う事。
 それ即ち、八雲紫が少女に対して手を出せなくなると言う事を意味していました。
 何せ相手は世界の管理者。
 その存在を失うと言う事は、世界を危機に晒すと言う事に他なりません。
 ましてや、そんな存在を自身の一存で喰らうなど。
 世界を愛する八雲紫にとって、そんな行動が取れる筈がありませんでした。
 彼女にとっては今まで少女に取り入ってきた労力も、全てが灰燼に帰したのでございます。
 悔しくないと言えば、嘘になりましょう。
 しかしその事に激昂するにはスキマ妖怪は賢すぎました。
 博麗の巫女の選別……それが生まれ持っての才覚に大きく左右される事。
 そしてそれが世界にとって必要不可欠な事だと、彼女は十二分に理解していたのでございます。

「貴女は、それでいいの?」
「え?」

 ならば彼女は?
 青天の霹靂で、そんな重要なポストに任命された彼女は何を思うのだろう。
 ふと、スキマ妖怪は疑問を抱きました。
 確かに任命されてしまえば、それは最早少女の意思ではどうにもならない事。
 そんな事は少女も理解しているでしょう。

「貴女は、勝手に博麗の巫女にされて、それでいいの?」

 ならば彼女は単なる諦観だけで、博麗の巫女へと就任するのだろうか。
 自分と同じ、仕方ないと言う理性だけで自分を納得させているのだろうか。
 相手はもう、獲物にすらならなくなった少女です。
 他の人間達同様に、無関心に捨ておけばいいのですが……。
 それでもスキマ妖怪は不思議と、彼女が今、どんな想いで居るのかを知りたいと思ってしまったのです。

「……本当は、凄く怖い」

 対して少女は。
 妖怪の疑問を受けた少女は下を俯くと、先程よりもトーンを落として言葉を紡ぎます。
 よく見ると、その姿は微かに震えているではありませんか。
 無理もありません。
 先日まで普通の少女であった筈の彼女が、ある日突然博麗の巫女に選ばれたのですから。

「お父さん達と離れて、一人で暮らさないといけないし。結界の管理って言っても何をすればいいのか分からないし。人間と妖怪のバランスを保つなんて、私なんかに務まるのか不安だし……。怖くて怖くて逃げ出したいくらい」

 静かな声で次々と不安を曝け出す、少女の言葉。
 口にしながらも彼女はずっと、下を向きながら弱々しくその肩を震わせています。
 博麗の巫女となるには頼りない、そう思われても仕方ないでしょう。
 しかし、スキマ妖怪は確かに気付いていました。 
 一聞すると弱みばかりの彼女の声が、決して絶望に彩られた物では無かった事に。

「でもね、ほんの少しだけ、嬉しくもあるんだ」
「嬉しい?」

 少女は顔をあげると、ゆっくりと、穏やかにその口を開きます。
 その身体は未だに恐怖に震えていたけれど。
 しかし、その表情には僅かな希望の色が灯っているように見えました。
 野心や虚栄心と無縁な彼女にとって、博麗の巫女など重荷にしかならない筈だが。
 果たして何が彼女にこんな顔をさせるのか。
 スキマ妖怪は首を捻ります。

「博麗の巫女になる事の、何が嬉しいのかしら」
「人と妖怪が共存できる場所」
「!」

 それはあの日、少女を励ます為に他ならぬスキマ妖怪の口にした言葉。
 口にした彼女自身、既に忘れてしまっていたような戯言でした。
 けれども少女は。
 この無垢な少女だけは、その言葉をずっと心の中で育み続けて来たのでございます。

「博麗の巫女になれば……私が世界の中心人物になれば。もしかしたら幻想郷全部を、人と妖怪の共存できる場所に出来るかなぁって思ったんだ」

 淀みの無い少女の言葉に、スキマ妖怪は一瞬呆気に取られてしまいます。

「そんな事、出来ると思ってるの?」
「わからない。でも、為そうとしなければ、何事も成らない物だから」

 ぷっ、と。
 スキマ妖怪は思わず吹き出してしまいました。
 全く、人間の子供とは何処まで純粋なのだろう。
 いや、それともやはりこの少女が特別なのだろうか。
 何せ自分が適当に口にした夢物語を、ここまで真剣に考える事が出来るのだから。
 余りにもおかしすぎて、八雲紫は腹を抱えて笑い続けます。
 今度はその様子を目の当たりにした、少女が唖然。
 自分の言った事はそんなにおかしかったのかと、しどろもどろする始末です。
 いや、スキマ妖怪からすれば、おかしい事この上なかった訳ですが。
 ともかく、ひとしきり笑い終えた彼女は、目の前でわたわたと慌てる少女の瞳を、ただただおかしそうに覗き込みます。

「それで? 具体的な方法はあるの?」
「う」

 ほら、見た事か。
 結局彼女は子供らしく、叶いもしない夢を見ているだけなのだ。
 これから世界の要になると言うのに、純粋にも程があると言う物である。
 言葉に詰まって下を俯く少女の姿に、八雲紫は笑いを堪えるのに必死でした。

「方法は、巫女になってから考えるもん」

 先程の凛々しい姿は何処へやら。
 少女は拗ねたようにスキマ妖怪から目を逸らしてしまいます。
 その様子はとてもいじらしく、そして愛らしく。
 スキマ妖怪はいつの間にか頬が綻んでいる自分に気付きました。
 先程までは、彼女に手を出せなくなった事を残念に思っていた筈なのに。
 今では不思議と、彼女が博麗の巫女となる事に抵抗を感じなくなっています。
 ひょっとしたらスキマ妖怪は心の何処かで、この少女が人と妖の間に立つ事を望んでしまったのかもしれません。
 
「そう。それなら頑張ってね、博麗の巫女さん」
「……呼び方は今まで通りでいいよ」

 すっかり拗ねてしまった少女の頭を、スキマ妖怪はぐしぐしとかき混ぜます。
 嗚呼、やはりこの子は本当に面白い。
 人と妖怪の共存する世界、作れる物なら作ってみるがいい。
 果たして彼女は自分の前に横たわる現実に、何処まで立ち向かえるだろう。
 その何処までも透き通った瞳は、何時まで輝きを保てるだろう。
 私はそうして彼女が苦しむさまを、ずっと隣で見る事が出来る。
 そして、彼女の夢が潰えた時。
 妖に傷つけられ、人に罵られ、傷ついた彼女を、ただ一人私が嘲笑ってやるのだ。
 誰が彼女のもとを去ろうとも、ただ一人私は 彼女の隣で嗤い続けてやるのだ。
 スキマ妖怪の心はまるで、少女に初めて出会った時のように歓喜で満ちておりました。
 それは少女を喰らう事を諦めざるを得なかった妖怪の、精一杯の強がりだったのかも知れません。
 これは、妖怪が少女を喰らうおよそ一月前の御話。














 


 


 少女の父親が死んだ。
 八雲紫が自らの式からその報せ聞いたのは、少女が新たな巫女として神社へと旅立つ予定の前日でした。
 話としては珍しい物ではございません。
 退魔師に皆殺しにされた妖怪一族の生き残りが、家族の仇を討たんと娘を人質に退魔師の命を奪った。
 悲願を成就した妖怪のもまた、駆けつけた人間達によって完膚なきまでに滅された。
 ただそれだけの御話。
 美談とも言えない、世に溢れ溢れた因果応報と言う物でしょう。
 しかし普段ならば斬って捨てるそんな話は、この時ばかりはスキマ妖怪に強い衝撃を与えました。
 余計な事を、と八雲紫は苛立たしげな様子で舌を鳴らします。
 そこまで憎い相手を、簡単に殺してしまって如何すると言うのだ。
 娘を喰らい、財を喰らい、彼の全てを喰らい。
 絶望と後悔を存分に味あわせてから最後に残った命を奪ってこそ、最高の道楽だと言うのに。
 あの退魔師に深い怨嗟を刻ませるのは、私の愉しみだったと言うのに。
 普段は冷徹な彼女も、この時ばかりは怒りを隠そうともせずに歯を食いしばります。

 果たしてその激昂は、本当に退魔師を先に仕留められた故の物だったのでしょうか。
 今となっても私には判断する事は出来ませんが。
 報せを聞き終わった彼女はすぐさま、身支度も忘れ彼の少女のもとへと向かったのでございます。

「こんばんは」
 
 月明かりも差し込まない真暗な部屋に、八雲紫の声だけが響き渡ります。
 その部屋は何一つ生物が存在しないかと間違う程、不気味に静かで。
 しかし、夜目の効くスキマ妖怪の瞳は確かに、少女の後姿を捉えていました。

「怪我は無かった?」

 スキマ妖怪は背中に声を賭けますが、少女の反応はございません。
 まるで人形であるが如く、その場に座ったままぴくりとも動きません。
 無理も無いか。
 スキマ妖怪は諦めたように、その双眸をゆっくりと閉じました。
 妖怪に親を殺されたのです、同じ妖怪である八雲紫を忌むのはむしろ当然なこと。
 人と妖怪の共存を夢見た少女は、その道を歩み出す直前に妖に裏切られたのでございます。
 それは、八雲紫からすれば、遅かれ早かれ起きるであろうと予測のついていた出来事。
 嘲笑ってやろうとも思いましたが、不思議とそんな気分にはなれませんでした。
 彼女の胸に去来するは、果てなき哀しみと憤り。
 どうしてこんな気持ちになるのか、自分でも理解が出来ません。
 八雲紫にわかるのは、この場に自分が存在する事が、如何に場違いであるかと言う事だけ。
 何処か後ろ髪を引かれる思いを振り切り、彼女の側から立ち去ろうと背を向け―――――

 その時、彼女は声を聞いたのでございます。


「スキマ妖、怪さん……っ」


 刹那。
 スキマ妖怪は彼女を抱きしめていました。
 何故このような行動をしたのか、自分ですらわからぬ程無意識の内に。
 震える彼女の背後から、何処までも優しく暖かく。
 包み込むように、抱きしめていたのでございます。
 ……少女も、堪えていたのでしょう。
 八雲紫の温もりを感じるや否や、ぼろぼろとその瞳から大粒の涙を零し始めました。

「ごめんなさい……。私っ、私……っ」
「いいのよ、辛かったわね」
「ひっく、うぅぁ……っ」

 無遠慮なまでの少女の慟哭。
 静寂のみが支配していた世界に、大袈裟な位に鳴り響きます。
 こんな大きな声を聞かれたら、人が来てしまうかもしれない。
 否、それ以前に退魔師が命を落とした今、彼女に拘る理由は何もない。
 八雲紫はその事を重々承知していながらも。
 ただただ唇を噛み締めながら、少女の悲しみを吐き出させ続けたのでございます。





「どうすれば、良かったのかな……」

 半刻ほど、泣き続けたでしょうか。
 少しだけ、ほんの少しだけ落ち着きを取り戻した少女は弱々しく口を開きました。
 対する八雲紫は、未だ背後から少女を抱きしめたまま。
 嗚咽の混じる少女の言葉に、ただただ耳を傾けます。

「あの子が私を人質に取ろうとした時……私、あの子を倒す事だって出来た」

 あの子、と言うのは少女を人質にとり、父親の命を奪った妖怪の事でしょう。
 少女は父親が亡くなった時の事を想い浮かべながら、言葉を紡ぎます。
 
「だって全然子供だった。力だって全然小さかった。身体だって震えて、ぼろぼろ泣いてて……退治しようと思えば、出来ない相手じゃ無かったっ」
「でも、貴女はそうはしなかった」
「私が、躊躇ったから……っ。退治する事を迷ったから、お父さんは……っ」

 そこまで口にすると、少女は再び瞳から涙を零します。
 家族を殺された恨みだけで、退魔師の里に乗り込んだ無謀な妖怪の子供。
 結果的にその妖の事を捨ておけなかった、少女の甘さが父親の命を奪ったのです。
 深い深い自責の念に、少女は押しつぶされそうになっているのでしょう。
 スキマ妖怪が少女を抱きしめる腕に、自然と力がこもります。
 それでも、少女の震えは止まる所を知りません。

「私、何もわからないよ……。自分がどうすればいいのかも、どうすればよかったのかも、全部全部っ……」

 震える唇で次々と、今まで抑えて来た感情の渦を吐き出します。

「わかっちゃうんだもん、あの子の気持ちが……! だって、私だって憎いよ……! お父さんを殺したあの子が憎い。あの子の一族が憎い。妖怪が憎い……!あの子だって……ううん、あの子はきっともっと憎かったんだ……。家族を殺したお父さんが、一族が、人間が……っ。ずっとずっと憎かったんだ……っ」

 理屈でも、理論でもなく。
 ただひたすら感情のままに、少女は慟哭を続けます。
 その姿に、スキマ妖怪はようやく彼女の心情を、ほんの少しだけ理解した様な気がしました。
 そうか、この子は。
 妖怪に親を殺されたにも関わらず。
 その妖怪の心までも想ってしまって、ずっと苦しんでいるのか。
 抑えきれない程の憎しみと怒りを、何処にぶつけていいかもわからずに泣いているのか。

「妖怪が、嫌い?」

 スキマ妖怪が口にするのは、小さな小さな問いかけ。
 その答えは、始めからわかりきっていると言うのに。
 嫌いだったら、少女はこうも苦しむ筈が無いと言うのに。
 卑劣な女だ。
 応えのわかりきっている質問をしてしまった事に、八雲紫は自分自身を嗤います。
 そんな彼女の予想通り、とでも言うべきでしょうか。
 少女はゆっくりと弱々しく、けれど確かに首を横に振りました。

「私はっ、スキマ妖怪さんが好きで、妖怪が好きで……。妖怪みんなと仲良く暮らしたくて……っ。なのに、なのにっ……」
「好きだから、辛いのね」
「うん、……うんっ……」
 
 誰よりも妖怪が好きだから、彼女は誰も恨めない。
 ただただ、自分を責め続けて、ただただ一人で傷ついて行く。
 駄目だ。
 この子を博麗の巫女になどしてはいけない。
 彼女は優しすぎる。
 哀しいまでに人も妖も愛し過ぎている。
 博麗の巫女は人と妖のバランスを保つ者。
 それは即ち、両者にとって誰よりも無慈悲な存在であると言う事。
 世界の均衡の為に、時には殺生すらをも良しとしなければいけない。
 常に両者の軋轢と怨嗟の渦中に立ち、無感情に断罪せねばならない。
 そんな存在に、この少女がなれる筈があるだろうか。

 壊れてしまうだろう。 
 人も妖も、その全てを守ろうとして……愛そうとして。
 自分自身の感情、周囲からの偏見、圧し掛かる役割、義務。
 自身の前に広がる矛盾と現実の余りの大きさに、必ず崩壊してしまうだろう。
 スキマ妖怪の脳裏に去来するのは、底が見えない程の絶望。
 近い将来、間違いなく実現してしまうであろう、少女の未来の姿でした。
 壊れるとわかっていて、少女を博麗の巫女へと送りだす。
 それは最早、少女に近付き過ぎた八雲紫にとって、出来る事では無かったのです。
 とは言え、果たして彼女に何が出来ましょうか。
 博麗の巫女の選定をやり直させる事など、如何な八雲紫と言えど出来ぬ事。
 ましてや彼女を連れて逃げだすなどもっての他。
 博麗の巫女とは最早、人間や妖の意思を超えた、世界の理と言って然るべき物なのですから。
 
 嗚呼、何と自分は愚かなのだろう。
 今更になって、目の前の少女の存在を大切に思ってしまうなんて。
 失うとわかっているのに、求めずには居られないなんて。
 どうしてだ……どうして私はこうなってしまったのだ。
 私はただ、彼女を喰らいたくて―――――



 喰らう?
 刹那、スキマ妖怪の頭に一つの可能性が思い浮かびました。
 それはまるで、神からの啓示であるが如く。
 或いは、悪魔の囁きであるが如く。
 願う事すら出来なかった少女を救う可能性が、確かに彼女の前に降り立ったのです。
 八雲紫の脳裏に浮かんだ、たった一つの冴えたやり方。
 それは酷く残酷で、救いの無い手段。
 けれど、今の自分が少女にしてやれる最善であると、彼女の賢明な頭脳は叫びます。
 迷いなど、微塵もありませんでした。
 彼女は酷く自分勝手で……そして無慈悲でしたから。
 ゆっくりとその双眸を閉じると、前で未だ震える少女の頭を、慈しむように撫であげます。 
 少女も、スキマ妖怪の纏う空気が変わった事に気付いたのか。
 嗚咽をもらしながらも、恐る恐る八雲紫の方向へと振り返りました。

「もう、大丈夫よ」

 その先に在ったのは、まるで慈愛の女神のような笑顔。
 およそ妖怪とは思えない、温もりに満ちた表情でございました。
 けれど、何故でしょう。
 少女の瞳には、その笑顔がとても悲しい物にに映ったのです。
 ひょっとしたら少女は深層心理のさらに奥深くか……本能で気付いていたのかもしれません。
 これからスキマ妖怪が口にするのが、他ならぬ別れの言葉である事に。

 少女のすがるような視線に応えるように、スキマ妖怪はその双眸を閉じました。
 想いを馳せるは、これまで少女共に歩んだ何とも不可思議な日々。
 互いにまるで目的の違う……すれ違っているようで、文句無しに楽しかった時間を思い描く度に胸が軋む音が聞こえます。
 けれど、彼女は笑います。
 まるで母が子を安心させるように。
 この一時を、せめて永久に心に刻むように。
 愛おしい愛おしい少女に向かって、ただただ優しく笑いかけながら。
 八雲紫はついに、その言葉を紡いだのでございます。


「私が、貴女を食べてあげる」


 何処までも優しく、そして残酷に。

「貴女の中に在る余計な物、全部、私が喰らうから……貴女は生まれ変われるから。だから、もう何も悲しまなくていいの」
 
 そう。
 父親も、父を殺した妖怪も、里人達も。
 そして―――――スキマ妖怪の事も。
 少女の中に存在する『余計な物』を全てを喰らって、まっさらな少女に戻す。
 彼女を何処までも公平な…、何者にも縛られない、空を飛ぶ巫女へと変質させる。
 それこそがスキマ妖怪なりの、少女の救済法でした。
 少女を傷つけず、博麗の巫女の存在も守るたった一つの冴えたやり方でした。
 それはまさに、少女を喰らうと言って過言の無い残虐非道の行為。
 彼女の言う『余計な物』を全て無くしてしまえば、それは最早少女とは別人となってしまうでしょう。
 果たしてそれは、将来、絶望的な現実によって彼女が壊れてしまう事と、何か違うと言うのでしょうか。

 少なくとも、スキマ妖怪にとっては違ったのでございます。
 ここで『余計な物』を全て失くしてしまえば、これから先、少女は傷つかずに済むのですから。
 彼女の短い人生を、悔恨と悲哀の中で過ごさないで済むのですから。
 だからこそスキマ妖怪は、自分のエゴ以外の何物でもないと知りながら、それを為すのです。
 彼女は本当に……酷く自分勝手な女でしたから。

「スキマ、妖怪さん?」

 少女は未だ、八雲紫の言葉の意味が理解できていない様子。
 目をぱちくりとさせ、不安そうな顔で目の前の妖怪の顔を覗き込んでいます。
 嗚呼、なんと滑稽な顔だろう。
 私は他ならぬ、少女を喰らう、この時の為に彼女に近付いて来たのだ。
 その瞬間の彼女の顔を嗤ってやりたくて、彼女に取り入って来たのだ。
 ならば、大嗤いしてやらなければ。
 悲願の達成に歓喜してやらなければ、少女が余りにも浮かばれないではないか。
 嗤え……嗤うのだ八雲紫。
 そう、彼女は自分に言い聞かせて。
 言い聞かせながら、ぼろぼろと涙をこぼして。

「さようなら、霊夢」

 その少女を見事、喰らってみせたのでした。
 













 次の日、少女は無事博麗の巫女として就任しました。
 少女の父である退魔師が一人亡くなった事など、幻想郷全体から見れば取るに足らぬ事。
 その程度では、博麗の巫女就任の日程がずらされる事は無いのです。
 懸念されたのは少女の精神面ですが、どうやらそれは取り越し苦労に終わった様子。
 父の死の影響などまるでなかったかのように、少女は巫女として立派に振舞っていると聞きます。
 
 しかし、里では噂も囁かれております。
 曰く、少女はあの日から、まるで別人のように無感情になってしまった。
 曰く、あんなにも表情豊かだった少女は、巫女になってから笑わなくなった。
 どうやら里人達も少女の変質には気付いている様子。
 もっとも彼らは、父の死或いは博麗の巫女への就任こそが、少女変貌の原因だと思っているようですが。
 まぁ、それも無理は無いでしょう。
 あの晩、彼女の身に起きた事を知っているのは、それこそスキマ妖怪ただ一人。
 里人は愚か、誰一人彼女が妖怪に喰われた事を存じている者は居ないのですから。
 ああ、いえ……もう一人だけいましたね。

「紫様」

 それは八雲紫の式神、八雲藍。
 何を隠そう、スキマ妖怪から分け与えられた力で、此度の顛末をずっと見守っていた者でございます。
 スキマ妖怪と深い、深い繋がりを持ち、誰よりも彼女の心境を理解している妖孤。
 勿論、此度の主の選択を、傲慢で自分勝手だと理解した上で全面的に支持しております。

「何時まで、そうしているのですか」

 支持していたからこそ、居た堪れないのです。
 一人の人間を傷つけないない為に、自身が深く傷ついてしまった主の姿を見るのが忍びないのです。
 それこそ一年前の八雲紫ならば、少女一人を喰らった所で眉一つ動かさなかったでしょう。
 むしろ喰われた相手を嘲笑いながら、皮肉たっぷりに「ごちそうさま」などと言っていたに違いありません。
 ところが、今の主の姿はどうでしょう。
 まるで生気のない虚ろな瞳に、食事もロクに通さない喉。
 その長く美しい金髪は、手入れをしないせいでぼさぼさに荒れ果てています。
 これではまるで、あの超然とした八雲紫とは別人のようではありませんか。
 八雲藍は主をここまで弱くしてしまった少女の事を、少しだけ恨めしく思っていました。
 けれど、八雲紫の影からずっと見守ってきた少女に、少なからず情が移っていたのもまた事実で。
 主にも少女にも、別々の新たな道を幸せに歩んで欲しいと、心の底から願っておりました。

「あの子はもう、貴女の事を覚えてはいないでしょう」

 願いながらも、式神は厳しい現実を突きつけます。
 反応の無い主の心に向けて、無数の矢を放ちます。

「けれど貴女は忘れられない。また彼女と共に歩む日々を、来はしないと知りながら求めてしまっている」

 何時までも、既に失った日を引きずっていて欲しくなかったから。
 現実を受け入れ、それを乗り越えた上で、彼女に生気を取り戻して欲しかったから。
 小さな小さな主の背中に向けて、ゆっくりと言葉を紡ぎます。

「決着を、つけてきては如何です」

 死刑宣告を受けてこいと。
 一度全てを砕かれて、少女を断ち切ってこいと。
 そうしなければ、八雲紫は先に進む事は出来ないと八雲藍は思ったのです。
 出過ぎた真似だとは百も承知。
 それでも彼女は、自分の願いを伝えずには居られませんでした。
 
 しかし、そんな八雲藍の願いも虚しく。
 世界に響き渡った彼女の声は徐々に小さくなり……やがて静寂へと変わりました。
 その間にも言葉の投げかけられたスキマ妖怪の背中は、ピクリとも動きません。
 どうやら自分の言葉は主には届かなかったようだ。
 ぐっと唇を噛み締めながら、八雲紫に背を向けると、部屋の外へと歩みを勧めます。
 結局の所、彼女は式神。
 主が耳をかさないと決めたのならば、それに従わざるを得ないのです。
 そうして部屋の外へと出た八雲藍が、障子を閉めようと振り返った時。

「あ……」

 八雲紫の姿は、既にそこにはありませんでした。
 まるで始めからここにいなかったかのように。
 スキマ妖怪の姿だけが、部屋の中から姿を消していたのです。
 果たして彼女が自身の能力を使って、何処に向かったのか。
 そんな事は式神にとって、最早考えるまでもありませんでした。 
 ……さぁ、豪勢な食事と暖かいお風呂の用意をしなければ。
 式神は空を仰ぎ見ると、万全の準備を整えようと台所へ向かいます。
 主がボロボロになって帰って来た時、その悲しみを全て受け止めてやれるように。
 
















 式神の想いなど、八雲紫はとうに理解しておりました。
 そして恐らく、自分にとってそれが最善であると言う事も。
 あの日から、彼女はずっと自室に閉じこもっていました。
 再びあの少女と笑い合える日を夢見ながら。
 だからこそ、少女のもとを訪れる事が出来ませんでした。
 変わってしまった彼女と出会ってしまえば、その夢が壊れてしまいそうだったから。
 彼女と出会わなければ、夢を見る事だけは許されるから。
 けれども、今日この日。
 八雲紫はとうとう、夢に決着をつけようと思えたのです。

 少女の新たな住処、博麗神社の鳥居の影にスキマ妖怪は佇みます。
 視線の先に居るのは境内でせっせと掃除する『博麗』霊夢。
 独特の巫女服を着ている以外には、あの日と何一つ変わらない少女の姿で御座います。

「?」

 自分に向けられる熱視線に気付いたのか。
 巫女は鳥居へと向かってつかつかと歩を勧めます。
 どくん、と妖怪の心が跳ねました。
 希望を断つ為にここに来たにも関わらず、いざ対面となると足の震えが止まりません。
 私は何時の間に、ここまで弱くなってしまったのか。
 そう自分の情けなさに顔をしかめる、八雲紫を嘲笑うかのように。
 少女は鳥居の影に姿を隠す、八雲紫の目の前に無遠慮に踊り出ます。

 その時でした。

「! 貴女……」

 スキマ妖怪の顔を見るや否や。
 少女は信じられない物を見たかのように、目を見開きました。
 その目が、あの日と同じ少女の目が……間違いなくスキマ妖怪を捉えています。
 
「あ……」

 スキマ妖怪の声から情けない声が漏れ出ます。
 まさか彼女は。
 まさか彼女は、私の事を覚えて……。
 ありもしないと思っていた可能性に、八雲紫は胸を震わせます。
 どうかその可能性が実現して欲しいと、切望しながら。
 スキマ妖怪は唇を噛み締めながら、少女の次の言葉を待ち続けます。 
 そんな永遠のように長い一瞬の中、少女の口にした言葉は―――――




「妖怪が神社に何の用?」

 八雲紫の夢を、希望を完膚なきまでに打ち砕きました。
 憎悪でも、嫌悪でもなく。
 ただ淡々とした無感情な言葉が、スキマ妖怪の胸を抉ります。
 そして、彼女はようやく実感したのです。
 弾けるような笑顔で『スキマ妖怪さん』と彼女の事を呼んでくれた少女は、もう何処にも居ないと言う事を。
 他ならぬ自分が喰らってしまったと言う事を。

 嗚呼、ここに来てよかった。
 八雲紫は、不思議と晴れやかな気持ちで笑みを浮かべました。

「ただの参拝客よ」
「ふぅん」

 おかげで、ようやく諦めを付ける事が出来た。
 幻想を抱くのを止めて、現実に戻る事が出来る。
 スキマ妖怪は自分の弱さに止めを刺してくれた少女に感謝しながら、視線を送ります。

「何?」
「いいえ、別に」
「余り見られると、掃除し辛いんだけど」
「そうね。……それじゃあ、頑張って」

 激励を無視するように、少女はスキマ妖怪から背を向けると社の方へと歩き出します。
 スキマ妖怪もまた後ろを振り返り、二人は互いに、互いの姿が見えない状態となりました。

「ひょっとして、私と会った事、ある?」

 そんな時、背後から聞こえてくるのは少女の疑問。
 純粋でもなく、悪戯っぽくもなく、ただただ薄く境内へと響き渡ります。
 あの時と同じ……けれども確かに違う少女の声を聞きながら。
 スキマ妖怪は背を向けたまま、ゆっくりと空を仰ぎ見ました。
 上を見て居ないと、何かが零れてしまいそうだったから。

「食べた事はあったかもしれないわね」
「は?」

 少女の訳がわからないと言うような声を聞きながら、スキマ妖怪はその双眸を閉じました。
 思えば、何と虚しい巡り合わせだったのだろう、彼女と私は。
 スキマ妖怪は自嘲めいた笑みを、その表情へと浮かべます。
 瞼を閉じれば今も鮮明に思い出せる。
 あの日、鬼に捕まるまいと楽しげに走っていた少女の笑顔が。
 妖怪の死に様に心を痛めて泣いていた、少女の泣き顔が。
 私に食べられる直前、訳も分からず私を見つめていた少女の困惑顔が。
 全て、全てまるで昨日の出来事のようだ。
 もし。
 もし……彼女が再び妖怪と共にある事を選び。
 そして、再び私と巡り合う事があるのならば。
 今度は心から、人と妖の共存を願おう。
 今度は私から、手を繋ぎに行こう。
 
 そんな、途方もない願いを胸に抱きながら。
 スキマ妖怪は、別れの挨拶を口するべく、少女の向かった社の方向へと振り返ると
 一筋の滴を零しながら、けれども笑顔でその頭を下げました。

「ごちそうさまでした」

 そこにはもう、彼女の愛した少女はいませんでした。








―――――――――――――








 さて、如何でしたでしょうか。
 此度の御話は、これにて了でございます。
 果たして皆様は、彼女達に何を思ったでしょう。
 何て愚かな者達だと嘲笑なりましたか。
 何て自分方位な妖怪だと憤慨なさりましたか。
 何て不憫な少女だとお嘆きになりましたか。
 遠慮なさる事はありません。
 先程も申しました通り、この御話から何を感じるかは皆様次第なのですから。
 ただ、私としては純粋に伝えたかった。
 他でもない今日この日、この御話を誰かに知って欲しい気分だったのでございます。
 本音を言えば、もう少しこの後の事も語りたかったのですが……
 どうやら、私もそろそろ主のもとへ馳せ参じなければならぬようですので。
 この続きは又の機会にと致しましょう。

 ああ、どうか皆さんはお構いなく。
 私が消え去った後はくつろぐもよし、帰るもよし。
 貴方達の思うがままに行動して頂いて構いません。
 ただ、もし貴方達に少しばかりの時間の猶予があるならば。
 数奇な運命が引き寄せた少女達、その遊戯を見て行っては如何でしょう。
 我が主へと続く空間は開けたままにしておきますので。
 もし興味のある御方は、こちらの裂け目を覗いてみて下さい。
 ……ほら、あちらにおわします、背の高い金髪の女性が私の主です。




「あなたみたいな物騒な人間が居たら、おちおち寝ても居られないの」
「全然、起きてこなかったじゃない」
「今は起きているの」




 え?
 もう一人の巫女服の少女は誰かって?
 これは異な事を。
 貴方達はもう、答えを知っているのではないですか?
 誰よりも感情豊かな、その少女を知っているのではないですか?
 
「そんなことより、あなた……」
「はい?」
「博麗神社のおめでたい人じゃないかしら」

 嗚呼、長かった。
 これまで数え切れぬほどの時を生きてきたと言うのに。
 あの少女が心から笑えるようになるまでの……。
 ここに辿り着くまでの数年は、まるで永劫のように長く感じました。
 私はずっと、主とあの少女が再会する日を待ち望んでいたのですから。
 きっと、主は私以上。
 永い眠りにつきながら、ずっとずっとこの日を待ちわびていたに違いありません。
 ほら、御覧下さい。
 あの少女を前にした、主の何と楽しげな事か!
 彼女達はこれから、あの時続けられなかった遊びを再開するのです。
 それもあの時は違います。
 何せ主は、人と妖が共存する世界と、その為の術を手に入れたのですから。
 そして今宵対峙するのは、他ならぬその術を、スペルカードルールを考案した博麗の巫女!
 楽しみに思わない者など、居る筈がございましょうか。
 かく言う私も、ああも幸せそうな主の姿を見るのは本当に久方ぶりで―――――
 
 ……失礼、思わずまくしたててしまいました。
 年甲斐も無く、興奮するといけませんね。
 それ程までに今日は、私にとって喜ばしい日なのです。
 どうか、ご容赦のほどを。

 ともかく、私はこれにて失礼致します。
 どうか皆々様、こちらで対峙する捕食者と獲物。
 その数年越しの再会、そして再び始まる彼女達二人の歩みを。
 存分に、存分にお楽しみください。

 それが、彼女達を影から見守って来た私からの、ささやかな願いでございます。
D「俺の魂が叫んでる―――――ゆかれいむをくれと!」
V「悪いが俺の魂はこう言っている」

V「I need more AYAREIMU!」
手負い
rikibeam@yahoo.co.jp
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コメント



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上手く感想が出てこない
けどすばらしかった
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最後に救われた気分になれました
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いい作品でした
7.100奇声を発する程度の能力削除
これは素晴らしいお話でした
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少女が霊夢なのはすぐにわかりましたが、そう来ますか
最後のは妖々夢での会話ですね。お見事
9.100名前が無い程度の能力削除
切なかったけど良かった…
最後で救われた
10.100名前が無い程度の能力削除
最後の会話が妖々夢のものである事は他の方のコメントで気付いたのですが……これは本当にうまい。

過去の繋がりは消え失せてしまったけど、これから作り上げていく新しい繋がりで紫も霊夢も救われる。
ビターエンドも時には良いものですね。素晴らしい作品をありがとう。
12.100名前が無い程度の能力削除
GOOD
14.100名前が無い程度の能力削除
これはよい語り部藍様ですね
15.100名前が無い程度の能力削除
電車の中で泣きそうになりました。いつもお話を読んだ後には「ごちそうさま」と言いますが、この話にはそれでも感謝の言葉がたりません。
17.100名前が無い程度の能力削除
感動した!
でも隠れたあとがきで台無しだよ!
18.100名前が無い程度の能力削除
駄目だ。うまく言葉にできない。
と、とにかく感動したんだよ。
25.90名前が無い程度の能力削除
語り部のパートが少し寒かったけどそれ以外は概ね良いね。
上手いこと過去と現在が繋がってて素敵だ
27.100名前が無い程度の能力削除
良かった
29.100名前が無い程度の能力削除
性的に喰うと思っていたのに……
31.100とーなす削除
いい話だった。
「ごちそうさまでした」。この言葉に、どれほどの思いがこめられているのか想像すると、もうね。
35.100名前が無い程度の能力削除
心動かされるお話でした。
37.100ほっしー削除
喰らうというのはそっちの喰らうだったとは…
いや、非常に哀愁漂う作品でした。
38.100名前が無い程度の能力削除
うん
40.100名前が無い程度の能力削除
b
43.100名前が無い程度の能力削除
紫も救われるなぁこれは…。

霊夢は一度まっさらな状態になってなお、
人と妖怪が共存できる状況を作り上げたんだから…。

しかし後書きww
44.100名前が無い程度の能力削除
後書きwww最高だー!!語りは藍様だったのか。
45.100クー削除
うまく言葉で表すことが出来ませんが、とても胸に来る作品でした。
今なら以前とはまた違う気持ちで妖々夢Exをプレイ出来そうです。

良い話をありがとうございました。
46.100名前が無い程度の能力削除
これ程までに悲しい「ごちそうさま」は初めてでした。でも救いがあって良かった。
どう転んでも、泣いたことに変わりは無かったでしょうけど!

それにしても後書き自重w
さぁ、感動を台無しにした罪はAYAREIMUで償ってもらおうか(何様
47.100名前が無い程度の能力削除
ごちそうさまでした。

あと三回くらい100点を入れたいくらいでした。
54.100名前が無い程度の能力削除
昔の話かなと思ってたら、やられました。
でも、夢が叶って本当に良かったねえ…

後書き?知らんなぁ!
61.100名前が無い程度の能力削除
人を食ったら腹は満ちた。けれど心は欠けた。そんな人食い妖怪としての紫を心情がよく伝わりました。…後書き? 何かあったの?(棒)
64.無評価名前が無い程度の能力削除
成したい事を成せる力があった、というのは紫にとって幸運であったのか不幸であったのか。
当初の思いとは違う形の幸せを得られたのでは、と思います。

後書きの元ネタはデビルメイクライかな?w
65.30名前が無い程度の能力削除
うーん。
棘のある言葉は控えめにしておきたいのだけど、この手のシリアスな話になるとどーにも設定が気に掛かるというか。

もっと数百年前とか、或いは結界が組まれる以前の話か、と思っていたけど、現在霊夢ということなら腑に落ちて来ないものが多いです。

斬った張ったの時代ならともかく、現代の幻想郷は殺すだとか復讐の連鎖だとかは無く平和ボケした時代、それがは百年続いていたハズですよね。なのにそこを良くある話だとか、そうやって取り入れてしまうのは、霊夢を無理やり孤児にするための都合の良い設定に感じます。
何をしたのか知りませんが、一族をぶっ潰されるなんてのは相当に物騒な話だし、そのたび仕返しに襲われるなんてのもまた物騒な話。人里そんな簡単に襲われていーの?妖怪の賢者達の庇護とかどーなってんの? などと考えてしまいます。


そしてその妖怪の賢者さんに至っては、ちょっと小物すぎでしょうよ。人と妖怪の理想郷を作った本人が誰とも知らん妖怪が退治されてるからって八つ当たりはどうだろうか。それもかなり悪質なやり方で。むしろ妖怪への畏れとそれに伴う人間の退治が成り立ってるのならスペルカードルールいらねーべってくらいに理想的状況なんではないでしょうか(ちっと厳つい幻想郷ではありますが)。


と、飲み込めない点が(些細なものを含め)数あって、どうにも「泣かせてやる」って感情が先行しすぎて熟慮が足りていない作品、と感じてしまい、どうにも感情移入が出来ませんでした。

点数が良かったもので、期待した分の反動も大きく厳しめの採点ですが、次回作に期待にしております。
69.90名前が無い程度の能力削除
いい
70.70名前がない程度の能力削除
もう……喰ったさ……
ハラァ……いっぱいだ……
72.80名前が無い程度の能力削除
ハッピーエンド、でいいのかな?
いいよね?
きっとそうだ!

率直な感想として、ちょっとネタに引きずられた感があるなーとは思いました。
せっかくの良いネタなので、もう少し煮詰めて長篇に仕立て直したものも読んでみたいですが。

そして、あwとwがwきw
これは次回作に濃厚なあやれいむを期待していいんですか!?いいんですね!
76.90名前が無い程度の能力削除
とっても好みな文章の書き方。

でも、何か引っかかるんだよね。
この手のストーリーに読み飽きちゃったからかもしれないけど。
77.90名前が無い程度の能力削除
紫の立場と巫女の関係性と、妖々夢phの差を埋めるいいお話でした。
あとがきw
85.100名前が無い程度の能力削除
こういう切ない話は、なかなかないので良かったです。
86.100名前が無い程度の能力削除
よかった。雰囲気作りが上手い。
88.50名前が無い程度の能力削除
ちゃんと纏まってはいるけど…。

紫は大結界の管理者なのに、もう一方の管理者である巫女の選定にノータッチなの?とか、
幻想郷の管理に何百年という単位で携わり、ずっと人間と妖怪の関係を俯瞰して見ていた紫がそんな感情的な理由で復讐を企てるとは思えないとか、
その方法も非効率で、もっと残酷かつ手軽な方法なんていくらでもあるだろ!とか、
そもそもストーリーも語り口もありきたり、とか。
気になる点もかなりありました。
90.100名前が無い程度の能力削除
移ろうは人妖の心!みたいな感動が。
最後まで引き込まれたと思ったら後書きwwそちらも出会えますよう願いますw
91.50名前が無い程度の能力削除
コメント見て何故か腑に落ちない、なんでだろ、と思った事が書かれてた。つまりその辺だけ。

霊夢さん転生してるならもしかしたらとは思ったけど


私的にはギリ可ってところ
92.100名前が無い程度の能力削除
良いぜおい!これなぁ!…なぁ良いなぁこれなぁおい!良いぜ!これ!!


語りが藍って時点で配役が上手い!
一回絶望を経験してもっと他に選択が無かったのかと思うんだけれども実は最善の方向に行っててちゃんと望みの幸せを感じてるってのがもう…なぁ!良いな!人生って無駄がねぇなぁ!本当な!書いてくれてありがとう!感動した!100点もってけ!
95.100名前が無い程度の能力削除
やっと辿り着いた笑顔、そんな一言がよぎります。
よかったです。
96.100名前が無い程度の能力削除
うん、とても良かった。
藍様素敵。
99.90コチドリ削除
最後までエゴイスティックだった紫様。
最後まで選択しなかった霊夢。
そして最後まで傍観者でしかなかった藍。

得てして世の流れはそんなものなのだろうし、彼女達に対して負の感情は一切湧かないのだけど、
もうちょっとなんとかならんかったのか、という思いも正直捨てきれず。

ラスト。ハッピーエンドは良いものだ。けどこうも思う。
それまで描写されてきた世界の理をわずか数年で覆すほどに、命名決闘法はパワーを持つのか? と。
ま、これは「そういうものだ」と素直に受け取るのが吉なのでしょう。
説得力を持たせようと考えたら、時には昔の他作品並みのドラマ性が必要になってくる気がしますし。

なんだかんだ駄弁を連ねましたけど、やっぱ好きだわこのお話。

「ごちそうさまでした」

良い殺し文句だ。
100.無評価コチドリ削除
これも所謂一つのエゴと言っていいのでしょうね

>彼女が訪れたのは、高名な退魔師の収める人間の里でした →退魔師の治める
>残念な事に、この太平の世界においても、人間達に悪事を働く妖は耐えません →絶えません
>まるで友人や母親に対して送られるような無償の好意 →微妙ですけど個人的には〝贈られる〟かな
>妖怪の疑問を受けた少女は下を俯くと →〝俯く〟自体に下を向くという意味があるのでちょっと違和感
>スキマ妖怪は背中に声を賭けますが、少女の反応はございません →声を掛けますが
>妖怪に親を殺されたにも関わらず →にも拘らず
>希望を断つ為にここに来たにも関わらず →同上
>少女の瞳には、その笑顔がとても悲しい物にに映ったのです →悲しい物に映った?
>想いを馳せるは、これまで少女共に歩んだ何とも不可思議な日々 →少女と共に?
>ぐっと唇を噛み締めながら、八雲紫に背を向けると、部屋の外へと歩みを勧めます →歩みを進め
>巫女は鳥居へと向かってつかつかと歩を勧めます →同上
101.100名前が無い程度の能力削除
他の人の感想で言われてたように、読み返すと不自然な点がいくつかある。
でも、それが気にならないくらい物語に力があった。終わり方も好き。

ゆかれいむでもあやれいむでも、次のお話を楽しみにしてます。
102.100名前が無い程度の能力削除
纏まりがあってよい物語でした
113.90名前が無い程度の能力削除
真剣な顔でCP談義してる兄弟想像して吹いた
117.80名前が無い程度の能力削除
素晴らしい!最初から最後まであっという間によんでしまったさ。
らんしゃまのこの昔話語り口調は大好きです。口調だけでなく、段落の切り方も読みやすかった。
つっこみどころは他の人がいってくれていますので、省略。ありがとう…らんしゃま!
119.100名前が無い程度の能力削除
とても良かったです
123.100名前が無い程度の能力削除
ああ……
129.90名前が無い程度の能力削除
切ない…

巫女の選定に紫が関わっていない等の疑問がありますが…二人の葛藤や藍のもどかしさを感じることができました。

もし巫女が優しい少女を思い出すことがあったら……乗り越えれるか興味あります。


手負いさんのシリアス作品恒例の後書きで吹いたwwww蒼赤兄弟の名シーン爆破ごちそうさまですwwww
137.100幻想削除
みんなー!!
手負いさんが本気になったぞー!!逃げろーーー!!

しかし幻想はあとがきに囲まれてしまったwww
145.100名前が無い程度の能力削除
ごちそうさまでした
146.100名前が無い程度の能力削除
最後の会話が良かった…
今後原作やる度に思い出す事になりそう
148.100名前が無い程度の能力削除
いいねぇ
159.100非現実世界に棲む者削除
ああ、切なくて哀しいお話だ。
最後の紫の中の霊夢は夢から現へと変化したんでしょうね。
そう考えると「夢と現の呪」の弾幕は紫の中の霊夢を表しているんじゃないと思います。

夢って儚いですね...