Coolier - 新生・東方創想話

フランちゃんご乱心らすとっ

2011/08/18 04:17:10
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この物語はシリーズ物ですので、前作である「フランちゃんご乱心」「フランちゃんご乱心にっ」「フランちゃんご乱心さんっ」を先に読んでいただけると幸いです。




狂気の月は落ち
輝く太陽が昇る
その光は
雨の止んだ紅魔館にも等しく降り注ぎ
悪魔の従者が動きだす
二人の悪魔を起こすために




コンコン
「お嬢様、妹様、ご起床の時間です。入りますよ」
咲夜の声が聞こえる。
正直全然寝足りないけれど、一応返事をする。
「はぁい、どうぞ~」
「妹様、もう起きていらしたのですね。お着替えはこちらに用意してありますので、昼食までに着替えておいてくださいね」
「うん。わかった」
着替えねぇ……めんどくさいなぁ。まだ眠いのに。
ここまで眠いのには理由があった。
昨日の夜たくさん力を使ったこと、もあるがそうではない。
お姉様の寝相が恐ろしく悪いのだ。
昨日、一緒にお風呂に入って、一緒にベッドに入ったまでは良かった。
それはなかなかドキドキして、なんだかうきうきしてたさ。
だがいざ寝てみればどうだ。
この暑いのに、抱きついてきて寝苦しいし、かと思えばベッドから蹴り出されそうになるし。
お世辞にも快眠とは言えなかったのだ。
それに昼から起きるというのも変な気分だ。
お姉様の生活リズムはよくわからん。
「お嬢様、お昼ですよ。起きてください」
「うー……あと五年……」
その上寝起きまで悪いのか……この姉は……
「お嬢様、今お起きになられませんと、昼食のプリンは美鈴に食べさせますよ」
「う、起きる……おはよう咲夜、フラン」
プリンで起きるのか……美鈴に食べさせるよって……そうだ美鈴、美鈴は大丈夫なんだろうか。
「おはようございますお嬢様」
「おはよ。それより咲夜、美鈴は大丈夫なの?はやく謝りたいって思うんだけど」
「美鈴はそれはもう元気に門番をしていますよ」
ああ……良かった。あとでちゃんと謝りに行こう。
「さ、フラン。お着替えしましょ」
お姉様が私の服を脱がそうとする。
「ちょ、ちょ、いいって、自分でできるから!」
「遠慮しなくていいのよフラン。ほらほら」
「うー……」
お姉様がそこまで言うなら、まあ一応やってもらおう。
そんなに悪い気はしないし。
……なんか、ボタンはずしてもらうのすごい恥ずかしいな……
「お姉様……やっぱり自分で……」
「んふふー、大丈夫大丈夫。もう終わるから」
気づいたらズボンをもう脱がされていた。恐るべし。
「お嬢様、こちらがお着替えです」
「ん。さあフラン。今日はドレスよ。私とお揃い!」
「ふえ……?なんでドレス?いつものじゃなくて?」
「言ってなかったかしら。今日は博霊神社に行くのよ」
言ってないよ……絶対言ってない。
お姉様はいつもそんな感じだよね……
あきれたという目で見ながら、
「まあ……いいけど。どうして?」
「あら。友達のところに行くのに理由なんていらないわ」
いや相手の都合とかいろいろあるとは思うけど。
でも友達か……友達なのか……?
そんなこんなしているうちに私のお着替えは終わっていた。
いざ終わるとちょっとなごり惜しい……いや。
次の瞬間にはお姉様のお着替えも終わっていた。
お姉様……その様子だといつも咲夜に着替えさせてもらってるんだね……
この姉は、なんというかいつまでも幼いなぁ、と思った。
「昼食がもうできていますが、お食べになられますか?」
「うん。すぐ食べる。フランはどうする?」
「いっしょでいいよ」
「それではすぐお持ちしますので」
正直どこに食卓があるのかよく知らないので、お姉様についていく。
「今日のお昼は何かしら♪あ、プリンって言ってたわね」
お姉様は、はたして食べ物と遊びのことしか考えていないのだろうか。
「ご機嫌だねお姉様」
「当然よ。フランと一緒に食べるなんて、いつぶりかしら」
な……む……恥ずかしいことをスラスラとよく言うな。
「妹と食べるだけで何言ってるんだか……」
とても大きな食卓だ。いったい何人座れるんだろうか。
「お持ちしました。昼食はプリンと、いちご牛乳になります」
「わぁい♪」
お姉様ってこんなだっけ……なんかイメージと違う……もっとこう……もういいや……
今日から、知らなかったお姉様も、知らなかった世界も、知っていくのだから。
それにしても、プリンおいしそうだな。いつも思うけど、咲夜の作るプリンは、もうプリンではない。
これをプリンと呼んでしまっては、他のプリンが泣いて言うだろう。プリンの座を返せ、と。
我ながらよくわからない例えになってしまったが、咲夜の作るもののおいしさは凄まじい。ほっぺたを毎日落っことさなければならない。
「いただきます」
「ぱく!」
「こらお嬢様。だめですよ、ちゃんといただきますしないと。妹様を見習ってください」
「はぁい……」
なんかもうかわいいなお姉様。
羽がシュンとなってる。お姉様って感情が羽に出るんだ……
「おいしぃ!」
「ありがとうございます。作った甲斐がありました」
「ふふ、咲夜は私の自慢のメイド、当然よ」
「なんでお姉様が威張るの……」
昼食を終えた私たちは、さっそく神社に行くことにした。
「それじゃあ神社に行くわよ!咲夜、あれを」
あれ?
「はい。こちらですね」
「うん。フラン、外を出歩くには忌まわしき日光を避ける必要があるわ。そこでこれ、日傘。これがあなたの日傘よ」
日傘か。そんなものが必要なんて、なんかめんどうだな。
……この日傘、私の名前が彫ってある。
使ってもいないのに、すこし古ぼけていて、昨日今日用意したものではないことが見てとれる。
(お姉様……私の日傘、用意してくれていたんだ……昔から)
「ありがとう。大事にするね」
「ん、それじゃいくわよ」
素直にうれしかった。用意してくれていたことが。外に出るための用意を、してくれていたことが。
「あ、待ってお姉様。先に美鈴に謝ってから行きたいの」
「わかったわ。ここで待ってるから、行ってらっしゃい」
美鈴は門番をしてるんだっけ。
私はもらったばかりの日傘を広げ、門へと向かった。
……寝てる。
門番が寝ているのは……それはいいのか?
そこは知らないけれど、謝らずに出かけてしまうのは心苦しかったので起こすことにした。
「めいり~ん?起きて~」
ゆさ、ゆさ。
揺すってみるが起きない。
ほんとにそれでいいのか門番。
ええい、こうなればあれだ!本で見たやつ!
「美鈴。起きないと、キス……しちゃうぞ?」
「喜んで」
「起きてるんじゃない!!!」
「しまったぁ……つい言葉が……」
「はぁ……ついじゃないよ……ってそうじゃなくて。ごめんね、美鈴。痛かったよね。ほんとうに、ごめんなさい」
「ふふ、いいんですよ、妹様。私はあなたの笑顔さえあれば、なんだって大丈夫です。だから、笑ってください、ね?」
やさしいなぁ……甘えてばかりじゃだめだというのはわかってるけど、それでも美鈴の前だと笑顔になれちゃう。
「ありがとう、美鈴。私ね、これからいろいろ見て来るの!たくさん知らないこと知ったり、やりたいことやったり、お姉様と一緒に。今度は、美鈴が連れてってくれる?」
「はい。よろこんで」
うれしさで、もう跳ねまわりたい気分だよ。
「やった!それじゃ行ってくるね!」
「行ってらっしゃ~い!」
ってどこに行けばいいかわからないし、何よりお姉様を置いていっちゃってるよ。
危ない危ない。
お姉様は紅茶を飲みながら待っていた。
「あれ、もういいの?仲直りできた?」
「うん。美鈴が今度お外に連れてってくれるって」
「そう、よかったわね。それじゃ、神社にいきましょ。咲夜、紅茶おいしかったわ」
「ありがとうございます。それでは、気をつけて行ってらっしゃいませ」
飛び立って、紅魔館を後にした。
神社ってどこにあるんだろう、遠いのかな。
それにしても、お外って広いなぁ。
「うわぁ……あれが森で、あれが川で、あれがたいよぉぉおぉぉおおおおおおおおおおお!!!」
目が……目が……
「うわ!フランだめ!太陽は直接見ちゃだめよ!」
……いやぁお外はすごいなぁ。いろんなものがめずらしくて、まぶしくて、まぶしすぎて目が焦げちゃったよ。
「……ふぅ、神社ってどの辺にあるの?」
「結構奥まったところにあるからねぇ。でもそんなに遠くじゃないわ」
たしかにそんなに遠くじゃないな。もう着いてしまった。
悪魔の感覚でいうすぐ、だから人間だとどう思うかは知らないけれど。
境内に掃除をしている紅白の巫女、博霊霊夢がいたので、私達は降り立った。
「こんにちは霊夢。遊びに来たわよ」
「招いてもいないのに来るなんてあんたほんとに吸血鬼?ってあら?フランじゃない。いらっしゃい」
はぅ……急に話しかけられると、なんか緊張する……
「あ、お……おじゃまします……」
「あはは、そんなに緊張しなくていいのよ。友達の家なんだから、そんなに畏まらなくて大丈夫」
そんなものなのかな。……っていうか今私を、友達って……友達か……えへへ……
「あら霊夢。私とフランじゃずいぶん対応が違うじゃない」
「友達は歓迎するけど、弾幕でふすまをやぶっちゃう吸血鬼なんてねぇ……?」
そんなことしたのか……
「な!だからあれはごめんって!」
「ふふ、それで、今日はまたどうしたの?」
「ふふふ、今日はある計画があって来たの」
計画?絶対今考え付いただろ、私聞いてないし。
「計画?またなにか悪だくみ?退治するわよ」
「違う違う。今日はパーティー。博霊神社で今までにない、大きな宴会を開こうと思ってね!」
そうだったのかー。そんな計画がねー。
「……えぇ?別にパーティーなら紅魔館でもいいじゃない。どうしてここで?」
「それには理由があるけれど、まあいいじゃないそんなもの」
いやよくないでしょ。
「よくないわよ。準備も片付けも、私がしないといけないじゃない」
「いいえ、そんなことはさせないわ。紅魔館のメイド総動員でやらせるから!」
「あのメイド妖精……」
霊夢が嫌そうな目をする。
「う……たしかに使えないかもしれないけど……でもお願い!霊夢……ね?」
どうしてそこまでここで宴会を開きたいんだろう。この姉はいつもよくわからん。
「……その上目遣いは反則……はぁ、わかったわよ」
「祭りあるところに私あり!楽しいことは全部おまかせ!霧雨魔理沙参上!」
陽気な声とともに魔理沙がやってきた。いやふってきた。
「おおフラン、久しぶりだな。かわいい服着て、今日は宴会参加か?」
か……かわい……かわいっ……
どうしてそんな恥ずかしいことを言えちゃうかなみんな。
でも、私も参加していいのかな……宴会。
「お、お姉様……?私も参加していいのかな……?」
「何言ってるの、当然よ」
当然なのか。そりゃよかった。
「そっかそっか、しっかり楽しめよ!」
「うん!」
なんか、私も仲間っていうか、一員っていうか、友達みたいで、いいな。
いや、友達みたいじゃない。友達なんだ。これからはきっと、もっと。
「盛り上がってるとこ悪いけど、レミリア。もうそろそろ夕刻よ?準備、間に合うの?」
「間に合うわよ、絶対に」
どこからそんな自信が……
そんなことを思っていたら、咲夜が現れた。
なんでいちいち時を止めて来るかな……普通に来てくれないとびっくりしていつか死んじゃうよ。
死因:びっくり
笑えない。
「お嬢様、ご命令通り、紅魔館の者全員を連れてまいりました」
全員。全員ってどれくらいいるんだろう。
「さすが咲夜は用意いいわね……」
「あら、霊夢。これくらいメイドとしては当然よ」
そうなのか……メイドって大変な職業だなぁ。
「それにしてもよく全員なんて連れて来られたな。あのパチュリーまで動かすなんて」
「……私が絶対に館から出ないみたいな口ぶりじゃない」
魔理沙の後ろにはパチュリーが立っていた。彼女は魔法で気配を消していたんじゃないかとさえ思えるほど存在感が薄い。いや案外本当に消していたのかもしれないが。
「うわ!!!脅かすなよパチュリー!」
「いや、脅かそうとなんてしてないんだけど……」
ちょっとシュンとするパチュリー。……素なんだね。
たくさんのメイド妖精が美鈴を先頭に長い階段を上ってきた。
「さあ皆のもの!今日は大きな大きな宴会よ!しっかり準備なさい!」
「「「はい!!!」」」
たくさんの返事とともに、メイド妖精たちは準備をはじめた。
「うわぁ……圧巻ねぇ……これだけいれば確かに間に合いそうね」
たしかに凄い量だなぁ。
すると風が、ひゅおっと舞ったかと思うと、鴉天狗が現れた。
「あやややや。これはまたネタになりそうなことをしていますねぇ。さっそく号外を配らなくては!」
と思うともう消えていた。忙しないなぁ。
「宴会、酒!酒あるところにゃ私ありってね」
なんか角が二つ生えた鬼も出てきた。
「萃香、はじまる前に酒を飲み干す、なんてやめてよ」
「ぶー。れいむは私がそんなことする奴に見えるのかい?」
「このあいだやったばかりだから言っているの」
宴会の前に酒を飲み干すって……どれだけ飲んだんだろうか。
「あら~。おいしそうなことやってるじゃない」
「だめですよ幽々子様。宴会前に全部食べ物を食べたりしちゃ」
白いふわふわしたのが来た。あれは幽霊ってやつか。というか食べ物全部って……幽霊は食いしんぼうね。
「はわぁ……いっぱい集まるんだねえ……」
「まぁ幻想郷の奴らはみんな、祭りごとが大好きだからなぁ」
私の独り言に魔理沙が答えた。
「へぇ……それにしてもいろんな人がいるんだねぇ」
「到底数え切れねえな」
集まって来るるのは妖怪が多いみたいだけどね。というかほぼ妖怪。
「そうだフラン。まだ宴会まで時間があるし、少し幻想郷を見て回らないか?」
「うん、いいよ。どこに連れてってくれるの?」
「それは行ってみてのお楽しみってやつだ」
つまり、特に何も決めてないのね。
まあいいや、幻想郷を見て回るの、楽しそう。
それに……魔理沙とふたりっきり……いや。
「よし。じゃあ乗れ!」
そういって魔理沙は箒の後ろを指さす。
「え?い、いや、私飛べるし」
「いいんだよ。そのほうが、気分でるぜ?」
なんの気分よ。
「わ、わかった……じゃあ」
箒に乗った。魔理沙が近い……!
「おいおい、しっかりつかまってないと落っこちるぜ?」
つ、つかまるって……もっと近づいちゃうじゃん……なんかすごい恥ずかしくて心臓が……
「う、うん……」
魔理沙の腰に手をまわして、しっかりつかむ。
ひゃー……やばい……この心臓の音、魔理沙に聞こえちゃってるかな?恥ずかしくて心臓飛びでそう……
「よし、行くぜ?快速全速ひとっ飛びってな!」
「え?ちょ、魔理沙どんだけスピード出す、ひゃぁああああああああああああああああああ」
思ったよりも速かった。思った三倍速かった。
「はっはっは!どうだ!私の自慢のスピードだぜ!」
速ければいいってものじゃないでしょう。
「いや、速いけど、観光にはちっとも向いてなくない!?」
「じゃあ観光はどうでもいい!このスピードを楽しもうじゃないか!いっくぜぇぇぇぇええええ!」
もう当初の目的無視して本気だしにきたよこの人!
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁあああ」
すごい速い。人間に可能なのか、っていうか人間は耐えられるのかこれ。
「お、文だ。やっぱはえぇなぁ。あいつを抜くのが私のとりあえずの目標だ」
あの鴉天狗あんな速かったんだ……
「ひゅぃ」
急に魔理沙が止まったので、いや正確にはスピードを極端に緩めたので、変な声がでた。
「ど、どうしたの?魔理沙。急にゆっくりになって。まだ神社じゃないよ?」
「ん、ああ。このまま神社に着いちゃったら、フランとのふたりっきりの時間が短くなっちゃうと思ってな」
「んにゃっ!」
思わず変な声出しちゃったよ。また出しちゃったよ。
どうしてそんな……そんなこと普通に言えちゃうかな……うれしいけど……
「魔理沙は……楽しい?私と、飛んでて……」
「ああ、楽しいぜ。楽しい時は思いっきり楽しみ、辛い時はふっとばす。そうやって楽しく生きて、いくんだぜ」
そっか……楽しい、か。
「そっか……私も、楽しいよ。魔理沙」
「それはよかった」
私が楽しくて、魔理沙も楽しくて。
そうやって共感してるのが、繋がってるのが、とてもうれしかった。
「魔理沙……私と、その、友達になってくれる……かな?」
ほんとうの、友達に。
私が、私の意志で作った友達に。
「なぁに言ってんだ。お前はもうとっくに、友達だよ」
そういって魔理沙が、私のおでこにキスをした。
「ふあ……」
もう限界だった。
恥ずかしさとかバクバクドキドキとか、もうなんか全部限界だった。
グッバイ、もう悔いはないです……
「ふにゃ……」
「お、おいフラン!?どうした!?しっかりしろ!?」
……
「それで?どうして魔理沙はフランをお姫様だっこしてるのかしら?」
「いや、急に気絶しちまってよ……いったいどうしたんだか。吸血鬼はなんかあるのか?」
(((またやったか……)))
「いや、吸血鬼に急に気絶するような特技はないわ……」
……
はっ!
目を覚ますと、私は誰かに膝枕されていた。というか魔理沙の膝だった。
「お、目が覚めたか?」
「魔理沙……ここは?」
「神社。お前気絶しちゃうから、びっくりしたぜ」
そっか。私気絶して神社着いちゃったんだ……残念。
「そっか……ごめんね」
「なに、気にするな。それよりもう宴会ははじまってる、行くぞ!」
そんなに気絶してたのか私。
「うん。行こ!魔理沙!」
「よし、今日は飲むぜ!」
宴会にはすごい数が集まっていた。
各自自由に、飲みたい者と、飲み、騒ぎ、踊り。
「わら、フラン、起きたのね。しっかりと楽しみなさい。楽しいことはとことん楽しまなければらめよ!」
お姉様……もうだいぶん酔ってるわね……
「しゃくやー!お酒のもー!しゃくやー?うぅ……どこぉ……?」
しかもお姉様は酔うと寂しがり屋が強まるようだ。それにしても咲夜がお姉様の呼びかけに答えないなんてめずらしい。
「まぁまぁお姉様。咲夜も飲みたい人がいるんでしょ。私もいるし、一緒に飲みましょ?」
「ぅ……そうね。たまにはメイドにも休養を与えなければね」
やっぱりお姉様は咲夜が大事なんだなぁ。
「なんか……すごいね。こんなにも楽しもうって人が、たくさんいて。みんなで楽しんでる。今日はいい一日だったな。記念日だね」
夢は夢で、現実は現実で。
夢と現実が反転した日。
お外が、いや世界が。
私の中で変わった日。
「そうね。でもそんな記念日もすぐ忘れていっちゃうわ。これから毎日、もっと楽しくすごしていける。そうでしょ?フラン」
「……そうだねお姉様。きっと、いや絶対。毎日が輝いてるよ」
壊さない。壊したくない。守りたい。
そんな毎日が、やってくるんだね。
そして私はお酒を口に入れた。

「……にがっ!!!」







雨の止んだ紅魔館
静かな静かな紅魔館
お留守番はもういない
悪魔の住まう紅魔館には

そして誰もいなくなった
「へへへ……どうやら紅魔館がもぬけの殻ってのは本当みたいだな」
「いまのうちに忍び込んで思い知らせてやろうぜ」
悪魔の館に迫る二人の妖怪。
それは悪魔が吸血鬼である故に持つ力を、妬み、嫉み、羨んだ妖怪である。
「マジでここの吸血鬼は調子乗ってるからな。わからせてやらねえと」
「そうだそうだ!よし、まず何からすっかな」
「まずこの邪魔な門をぶっこわそうぜ」
静かな静かな紅魔館。
誰もいない、はずだった。
「いらっしゃいませ。紅魔館へようこそ。申し訳ございませんが、お嬢様はご不在のためお引き取り願えますか」
瀟洒なメイドがそこにいた。
「ひ、ひぃ……あ、ああ、悪魔の犬だぁ!」
「こ、ここ、こここ殺せ!俺たちがこんな奴に負けるわけねぇ!!!」
「止めて止まった時の中で、あなた達の時計は壊れてしまう」

                                  メイド秘技「殺人ドール」

「さようなら」

「おー?咲夜どこいってたの?急に消えちゃって」
「いえ、ガスの元栓しめたかな?って思って見に行って来たの」
「あー、ありますよねぇ。私外の世界ではカギ閉めたっけ?テレビ切ったっけ?ってよくやりました」
「え?ガスの元栓ってしめなきゃいけないものなの?」
「ま……魔理沙……」


静かな静かな紅魔館
悪魔の住まう紅魔館には
そして誰もいなくなった
ただ骸を残して






フランちゃん大好き!でもレミリアの方がもっと好きです。
後悔はふきとばされました。
四作も読んでいただいた方、ありがとうございました。
今回でフランちゃんご乱心、は終わりですが、また別の作品を
暇を作って書きたいです。
ds
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コメント



0.560簡易評価
3.100稲荷寿司削除
今までで一番良かったです。
所々のギャグもいい感じでスパイスとして効いてて、全体としてほんわかした感じが正に私の中の幻想郷とマッチしていた感じでした。
何はともあれ、完結お疲れ様でした。
4.80奇声を発する程度の能力削除
>博霊霊夢
>博霊神社
博麗
ドタバタ感があり面白く読めました