Coolier - 新生・東方創想話

絶対大丈夫だよ!!いくら飲んでも朝が来るよ!!

2011/08/16 14:35:42
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Fire……Fire……. 銃が砲撃中だと信号を返してくる。

反動は無い、その巨躯にたがわず重量もない。こいつは地上の人間に言わせれば、両手で抱える重みらしい。

排夾された薬莢が月光を受けて星のように輝く。銃身が回転し、閃光が明滅する。

ここには決して存在しえない仮想の敵を次々に粉々にする。

吐き出される弾丸はここでの日常のように、ぶれる事も消える事もない。


年に一度の大掃除。弾倉内の転送装置を介して貯蔵期限を過ぎた古い弾薬を消費する。暴発の危険性を回避しているのだ。
「………」
自然と欠伸が漏れる。轟くのはコンクリートブロックが砕ける音をと規則的な駆動系の唸りだけ。
ただ消費するだけの単純作業は眠気を誘う。ずっと繋がっている発射音も退屈極まりない。
昔はこんなことは無かった。此方に来て随分平和ボケしたようだ。
……精進せねば。星座でも探して気でも紛らわそうと空を見た。

視界に映るはまんまるお月さま。

しかし、私が想いを馳せた世界は、童謡の優しい世界ではなかった。







私は弾丸だ。

弾丸はただ、標的に向かって進むのみ。

代わりは幾らでもいる。その中の一人にすぎなかった。

敵を殺せ。

私たちは背中を押された。

振り返ると、そいつ等の骸が転がっていて、見回せば破壊の爪痕と……やはり骸が転がっている。

私はただそれらの上を飛び去る。

「ご苦労だった。君の戦果は見事としか言いようがない。引き続き愚かな地上帰依主義者共の粛清を続けたまえ」

何も感じなかった。ライフリングにより回転し、音速で飛び去る弾丸にそんな時間は無かったのだ。

私の標的はもっと遠くにあった。

光学照準機から網膜に投影されるガイドラインの先には蒼い……穢れが浮かんでいた。穢れているのに丸い、完全な、完結しているカタチをしている。

神はどのような皮肉を籠められたのだろうか。

穢れは銀色に鈍く輝く子らを静謐なこの地に放った。星の海に円筒状の輸送艇が隊列を組んで浮かびあがっていた。

地球人の偵察部隊、開戦は間近だ。

彼らは脆弱な肉体を鉛の皮で覆い、機械で出来た足で踏み荒らした。ここは我等の物だと。

「被検体01000。任務だ……地上の愚民どもに我らの優秀さを見せつけてやるのだ」

敵を殺せ。

私は背中を押された。

そして皆殺しにした。

揺らめく旗の周りには腕を硬く折り曲げた骸と彼らの武器が転がるだけだった。赤く汚らしい水玉が宙を漂う。

表情は鏡面に遮られていて確認できない。

波長を飛ばして状況を確認する。

……反応有り。

振り返った。

白い巨躯が拳を振り上げる。

裂薬の爆発力が上乗せされ妖怪並みとなった打撃が、私の幻影を吹き飛ばす。

トリガーに軽く指を乗せる。

Fire……Fire…….銃が砲撃中だと信号を返してくる。

反動は無い。

銃身が回転し、閃光が明滅する。

無数の積層装甲板、アクチュエーター、炭素筋繊維……次々に残骸が宙を舞う。やがてそこに赤いものが混ざると標的は動かなくなった。

恍惚…………瞳を狂気に輝かせる。口が緩んで仕方がない。

「穢れた地球人め、ここは我等の物だ」
蒼い穢れに向かって宣言する。嗜虐的な心が鎌首をもたげた。

そうだ、見せしめにこいつの死に顔を輸送艇の観測装置に張り付けてやろう。

これは開戦前の狼煙だ。

バイザーを叩き割り獲物を確認する。二重構造になっていたらしい。鏡面が砕け、透過性の高い下層部が露わになる。

子供だった。

嗚呼、やつらの貧相な機械では十分な装備と一緒に大人は運べなかったようだ。



なんでだろう……今更屠ってきた標的どもの苦悶の表情がフラッシュバックする。





こいつ等は弾丸だ。穢され汚らしく死んだ弾丸だ。

そして、私も弾丸だった。






後頭部にぶつけられた陰陽玉によって現実に引き戻される。

咄嗟に振り返る。

「ちょ、おいっ、危ない!!!!」

白黒の魔法使いが巫女を抱えて急上昇して回避する。

竹が何本か吹き飛ぶ。あわててトリガーから指を離した。

弾倉内残弾数……一。カウンターが信号を送ってきた。

巫女と白黒の魔法使いが宙に浮かんでいた。

「……何?」
思わぬ来客に首を傾げる。波長から生体情報を読み取り、ダウンロードしたカルテと照らし合わせる。
はて、病人ではないようだが……。

「れいせん……きょうはぁ、じきぃきゃらぁけであつまってぇのみかいって約束でしょ?」
相当飲んだらしく変な抑揚のついた声で霊夢が怒鳴ってきた。……ああ、思い出した。
「それ、蔵の整理が結構かかりそうだからって……二日前に断りましたよ?」
「いや、それがな……飲み始めたら急に「ヤダ、ヤダ!! 紫も早苗もアリスも妖夢も幽々子もチルノもレミリアも咲夜もいるのに鈴仙が居ないなんてヤダ!!」とか駄々コネはじめてな」
魔理沙が呆れながら事情を話した。彼女は付き添いだそうだ。
「弾幕ごっこよ!! 勝ったら大人しくそんな辛気臭いことやめて一緒に騒ぎなさい!!」
霊夢が玉串でビッシと此方を指さす。今の彼女の瞳には渦巻き模様が似合うんじゃないかな。
「そういうわけだ。……すまないが適当に付き合ってくれ」
魔理沙が申し訳なさそうに軽く頭を垂れた。
「…………」
観念して「師匠、ごめんなさい。蔵の掃除終わりませんでした」と通信を飛ばしておく。……嗚呼、明日が怖いな。
地面を蹴った。空に舞い上がる。弾倉内の管理データを書き換えて弾幕ごっこの用意をする。
「うにゃ? 道具使うなんてめずらしいわね?」
巫女が眠そうな目で睨みつけてくる。
「はは……片づけに戻ったら確実に帰ってこれなくなるので……」
乾いた笑みがこぼれる。二週間分の仕事等を他の因幡に通信しておく。「ps.おやつのニンジンのキープよろしく」と。

巫女が動いた。

無数の針と札が飛翔する。

Fire……Fire…….

弾丸が追撃する。

誰も死なないお飯事。

給弾するのは非殺傷弾。

追撃しきれなかった針が前に垂れたウサ耳を掠める。

結果の見えている戦いにうんざりしながらスペルカードを展開した。

「 懶惰「生神停止」 」

私は弾丸だ。

直進出来なかった出来そこないの不良品だ。

直進するのはかつての幻影のみ。今の私はただ逸れるのみ。

背中を押されて振り返って見ても誰もいない。

辺りを見回しても、在るのはただの幻影だ。

「 「最も凶悪なびっくり巫女玉 Ver. Armageddon」 」
霊夢がスペル宣言をする。破壊不能なサイズの陰陽玉が弾幕を蹴散らしながら飛来する。
回避が間に合わなかったので銃で殴りつけた。バラバラになった銃と一緒に陰陽玉が落下した。さして高度も取ってなかったので盛大に舞い上った土埃に視界を遮られる。
波長で巫女の位置を確認する。分身し、煙の中へ飛び込んだ。腿のケースからスタンロッドを振りぬくが、手ごたえがない。

「 夢符「封魔陣」 」

背後に回った霊夢が至近距離で攻性結界を放つ。防御できなかった私に直撃する。雷撃に撃たれたような苦痛が襲った。

墜落。

衝突した瞬間、簡易結界を張りながら転がって衝撃を逃がす。

仰向けに横になり空を見る。

月を背に勝ち誇って胸を張る巫女が浮いていた。

「参りました……」
予定通りの敗北宣言。霊夢が降りてきて手を貸す。
起き上がり、手で服やスカートを叩いてゴミを落とす。
「さぁ、飲みに行くわよ」
酒臭い息を吐きながら霊夢がわたしの襟を掴んで引っ張る。
「ああ、そうらぁ……」
霊夢は突然手を離しとてとてと駆け出しバルカン砲だった鉄の山を漁る。銃弾を拾い上げた。
「何してるんですか?」
河童ならまだしも巫女はこいつに用は無い筈だ。思わず問いかける。
「”願掛け弾”よ。次回は咲夜も自機に成れるよう、今日はあんたも一緒に騒ぎなさい」
なんでもここ一発、願いを叶えたいとき弾丸の形をした物を持って行くと、そのパワーで願いが叶えられるというい伝えがあるらしい。
「あんたは弾兎なんだから……ものすごく縁起がいいに違いないわ」
霊夢は狩人の瞳で全身を舐める様に見つめてくる。玉ですよ。いや、タマには違いないけどけど……。
「私よりてゐを連れていくべきじゃ……」
「てぇうぃならもう向こうでジョッキを傾けてるわよ?」
あの野郎……居ないと思っていたら…………いいもん、私もサボってやる。
霊夢にぐいぐい引っ張られながら離陸した。魔理沙が苦笑しながら後に続いく。





今日の宴会は博麗神社ではなかった。人里にある小さな飲み屋だった。

「SATURDAY NIGHT GARDEN ―幻想郷店―」看板にはそう書かれていた。

暖簾を潜ると、そこは戦場であった。
「いらっしゃいませぇぇぇぇぇぇ!!!!!! 儀式「とりあえずピッチャー二つで」 」
スペル宣言と共にピッチャーが二つ運ばれてきた。直接中身を突っ込まれる。なんだこの店……早くも来るんじゃなかったと後悔した。霊夢の肩に掴まりながら千鳥足で予約席へと歩いて行く。テーブル席だ。椅子が引っくり返っている。
「みんな、つれてきたわよ~。あ、おっちゃん ”おどり食い「ダンシングオニオンフライ」” ね」
霊夢がオーダーを出す。カウンターの親父が腰の入った動作でメニューカードを掲げる。

刹那、オニオンフライが乱舞した。

空間を踊りまわるオニオンフライは吸い込まれるようにテーブルの皿に盛りつけられる。
口に運んでみると衣がカリッとしていてジュウシイな玉ねぎのほんのりとした甘味が広がる。絶妙に効いた塩が味を引き締めた。
「うどんさんだ……げへへへへ」
酔った妖夢が抱きついてきた。グラスにはまだまだビールが残っている。スカートの中に潜り込もうとする半霊を押し返す。妖夢が恍惚に表情を蕩けさせる。汗とかなんか色んな液体がブレザーを湿らせる。上海人形が上で引っくり返っているが気にせずピザに手を伸ばす。髪の毛の感触がした。口直しに妖夢のビールを引っ手繰って飲み干す。半分以上減っていたが気にしない。てゐがミニ賽銭箱でカンパを募っている。チルノがおもちゃの硬貨を入れて巫女に半殺しにされてた。空中を乱舞しているオニオンフライに手を伸ばす。魔理沙がくっ付いていたが構わずそのままもそもそと齧る。うめぇー、そして痛い。上海人形の槍が私の胸を貫いていたが妖怪だから気にしない。傷は直ぐに塞がった。レミリアが即席のブラッディーマリーを飲み干す。え、わたしの血美味しいの? 艶っぽい瞳にキュンとなる。胸が苦しい。銀のナイフが刺さってほんとに苦しい。反撃しようと指を向けるが霊夢がディープキスしていたのでやめる。「ばん」と鉄砲を撃つ真似をして手を引っ込めた。
「おーだーですぅ。”度数96「スピリタスの大銀河」 ”!!!!!!」
ちびちびオレンジ色のカクテルを啜っていた早苗が声を張り上げる。運ばれてきたジョッキの中身をペロリと飲み干すと妖夢いじりに戻った。
「半霊もちもちですぅ」
早苗は半霊を捕まえて甘噛みする。妖夢はのけ反るとサラダに顔を突っ込んでそれっきり動かなくなった。
「あっははははははははははは……」
やばい、横隔膜が震え笑いが止まらない。レミリアが血をペロペロと子犬みたいに舐めてきてくすぐったい。
「 光物「ブリリアント〆サバ」 」
テーブルにおつまみが追加される。サバ? 幻想郷に海はないんじゃ……。などと考えようとしたが早苗にスピリタスを突っ込まれて中断される。
睨みあいながら二人でサバを平らげた。ホタテが来たがそれも平らげた。幽々子にひん剥かれそうになるが早苗がおでんで後頭部を強打して事なきを得る。
「えへへ……わたして、良い子ですよね?」
へらへらしながらやってきた早苗に取り敢えず抱き付いた。現人神の香りがする。

「貴女の罪の匂い……堪らないわ」
後ろからレミリアが首筋を舐めまわしながら囁きかける。

世界が真っ赤に染まり、気づいたら早苗を突き飛ばし吸血鬼を殴りつけていた。

起き上がりながらとても愉快そうに笑っている。

「妖怪は人間を襲うものよ? あなたは生まれ持った義務を遂行しただけ。寧ろそれは誇るべき善行よ?」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

回し蹴りをするが逆に組み伏せられた。ビールをピッチャーで注ぎ込まれてなんだかどうでもよくなった。拘束を解かれよろよろと立ちあがるが、直ぐにへたりこむ。

ぽけーとしていると早苗に抱きしめられた。

「戦争だったんです。……それは仕方のないことだったんですよ」
視界が滲む。口を開くが上手く喋れない。「おい、そこの悪魔!! もうピッチャーから手を離せ!!」とレミリアに視線で訴えるが空になるまで無視された。

「神は貴女の罪を許します」
早苗が頭を撫でてくる。

「悪魔は貴女を認めるわ」
レミリアがほっぺにキスする。

……みっともなく大声でわんわん泣いた。

上海人形と霊夢にドロップキックをお見舞される。早苗も一緒に倒れる。

「泣くな糞虫があぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! てめぇは悲しむな!!!! てめぇが倒した戦士達の魂を汚す気かぁ?! あああん?」 

呪い人形みたいな顔した上海に滅茶苦茶怒られた。頭に付いたチーズがぼたぼた垂れている。痛い、耳を引っ張るな!!

「笑えぇぇ!! 何のためにわたしは幻想郷守ってると思うのよぉぉぉ? あんたみたいな悲しそうな奴は全員わたしの敵だあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

鬼巫女にどつかれた。頼むから二人とも本気で蹴るのやめて!! 痛あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
「 奇跡「ミラクルフルーツ」 」
切れた現人神のスペル宣言。二人とも盛大に吹っ飛んだ。起き上がった霊夢は早苗を強引に席に着かせ飲み比べを宣言した。上海はピクリとも動かない。肩を掴まれる。魔理沙が吐きながら喋る。
「うぇぷっ、もう飲めないぜぇ。代わってくれ……おヴぇぇぇぇぇぇぇ」
店員が俊足で黄色い水たまりを片づけ、すかさず入れ違いでやってきたアリスが介抱する。
魔理沙のやってきた方向を振り返ると……椅子に座るスキマ妖怪が手招きしていた。
観念して向かいの席に座る。
「 空餌「中毒性のあるエサ」 」
スペル宣言して徐にその辺のジョッキに残っていた酒をミックスして差し出してきた。
飲んでみるとアルコールとはまた違った気持ちよさが身体を包んだ。これはイイ。
「どうかしら? 幻想郷は?」
自白剤でも入っていたのかしら? 口が勝手に開く。
「うん、とっても酷でぇところれす。こんな汚らしくてひでぇところみたことないです。……ここのやつらぁ、神民裁判にかけられたぁらあ、全員即刻銃殺れすよぉ。ああ、けどみんな殺しても死なないんでしたっけ? ……じゃあいみねーや。アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ………………………………月面至上主義者どもざまぁみろぉ」
残りの分を飲み干す。液体は虹色に輝いていた。身体に悪そう。
「さぁうゐこうですよぉ? まさに桃源郷でえぇすよぉ」
げらげら笑う紫に更に液体を注ぎ込まれる。どんどん気分が高揚する。
背中を押される。振り返ると師匠がもたれ掛かっていた。
「へぇ、え? ししょうらぁ自機じゃないでしょ?!」
「いいのよ……次で自機になるから」
ぐでんぐでんになった師匠はピッチャーを傾けながら抱きついている。人のこと言えないが物凄く酒臭い。
「 酔生夢死「空飛ぶ呑んべぇのレムリア」 」
新しい料理がテーブルに運ばれるがここからじゃ見えない。うう……瞼が重いな。
辺りを見渡すと各々が色々なものに溺れ惨憺たる様相を呈していた。いつの間にかやってきていた姫様が霊夢と洋服を交換するためにあられもない姿になっていた。スピリタスの中に誤ってカメラを突っ込んだ文がチルノを舐めながら泣いている。早苗が魔理沙を掛け金代わりにアリスと飲み比べていた。咲夜が楼観剣で西瓜を両断した。レミリアがそれを美味しそうにスプーンで掬って食べる。幽々子はサバを食べていた。魔理沙は贅沢に椅子を二つも使って眠っている。











私は弾丸だ。


直進出来なかった出来そこないの不良品だ。



だが、喜劇にはそういう間抜けな弾丸が必要なのだ。



捨てる神あれば拾う神あり。




「幻想郷さいこぉー……」
私は腕を枕にして意識を手放した。









翌日、目覚めると……なぜか師匠と床を共にしていて咲夜とアリスに殺されかけた。

自分でも何を言っているのかさっぱり解らない。

……二秒先の波長を読めなかったら死んでいたであろう。



幻想郷怖えぇ……。

肝を冷やしながら片づけと少し遅い朝食の準備を始めたのであった。










「てゐ」
縁側に腰掛けて小兎と戯れている少女に声を掛けた。
ちょっぴり高そうなペレットをあげている。
「鈴仙、今日の朝はいつもに増して過激だったね」
「うん、死ぬかと思った……」
兎を避けて隣に腰掛ける。紙袋からニンジンを取り出し差し出す。
「お、気が効くじゃん」
もう一本取り出して黙って一緒に齧る。可もなく不可もない程度の温度の風が葉擦れの音を立てる。
「ありがとう」
ポツリと呟いた。
「さぁ? なんのことやら」
てゐがニンジンを咥えながらペレットを撒く。白い絨毯がもこもこ動く。
「なんとなく、てゐにお礼を言いたくなったのよ」
「ふーん………槍でも降るのかねぇ……」
小兎が耳にぶら下がってきた。遊ぶな……丁寧に引き剥がす。
「私は巫女と儲け話をしただけさ。後は何もしてないよ」
てゐが頭の上にペレットを置いた。白いもこもこする波に飲み込まれる。誰だ、執拗に下半身に纏わりつくの!!
何とか頭を出して新鮮な空気を吸う。すると、そこに狙いすませたかのように金盥が降ってくる。直撃して視界がぶれる。
ぶれた視界にケラケラ笑いながら駆けていくてゐが映った。……小兎に高周波を浴びせる。驚いた小兎たちが散り散りになって逃げていく。
「待てえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
立ち上がり波長で体調を整えてゐを追いかける。

踏んずけた床板が回転し顔面に直撃する。

天井から墨汁が降ってくる。

摩擦0の床の上で転んだ。

設置型テイザーガンの電流が私を眠りに誘う。

暴走した掃除ロボットが追突する。

自動警備システムの非殺傷レーザーを浴びトイレに駆け込む。

トイレから出るとてゐが舌を出して挑発してきた。

掴みかかるが素早い身のこなしで回避され、すれ違いざまにパイをぶつけられる。

「……」
取り敢えずハンカチで顔を拭いた。
「……」
まだ汚れが取れなかったからもう一回拭いた。
「……」
なんか濡れてる感じがしたからもう一回拭いた。

てゐがオロオロしながら周りをうろちょろしてたから捕まえた。そのまま床に正座させて説教した。

弛みきった表情が無性に気に入らなかったのでそのまま二時間程怒鳴っていた。

「…………優曇華?」
そしたら師匠に仕事しろと怒られた。




「……私、幸せかな?」

薬を売りに行く準備をしながら……なんとなく囁いた。




答えはてゐのパイだった。
座薬出すの忘れてた。
orosiwasabi
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コメント



0.590簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
えっ
4.80奇声を発する程度の能力削除
何か凄い
5.80名前が無い程度の能力削除
すげえ

何だかわからんがとにかくすげえ
6.100名前が無い程度の能力削除
うむ、これは言いたい事を全て飲み込んで「何かすげえ」の一言で片付けてしまう方が良いのでは無いかと思えてくるな。
でもそれだけだと伝わるかどうか不安。そうですね、自分がこの類の、なんか良く分からないけど勢いがあって、それでいて何かしら意味もありそうな作品を評価する際、重要視しているのは安定感なのです。
妙な浮つきがあったりとか、下手な不自然さが出たりとか。それを勢いの中に隠せなかった時、この類の作品は価値を激減します。
その点で見ればこの作品は十分に形を伴っていると言えるのではないでしょうか。
深い部分に関してはあまり言及しません。ただ、楽しめたとだけ。
7.100名前が無い程度の能力削除
えっ


てゐのパイ……ちっぱい?
8.100名前が無い程度の能力削除
うん。これは。すげえ
11.90名前が無い程度の能力削除
何だろう。何かすごい勢いで素敵です。
12.100過剰削除
なんだろう
生まれて初めて幻想郷がいい場所なんだと思えた気がする
いや、別に「大好きなあの子に会えるよ!」とか「風3、4面の背景綺麗すぎる!」とか思って、その世界に憧れた事はある
けれど、なんていうんだろう。本当の意味で"いい"所というのか
自らを弾丸と暗示してそうあろうとし、胸が苦しくなるような戦争とうどんげの過去の描写の後
統制のなくてぐちゃぐちゃに見えて、どうしようもなく楽しくて心地よい描写によって描かれた幻想郷の宴会とうどんげの今を見て
「ああ、幻想郷はなんていい所なんだろう」
と思えた
構成はわりとありがちだとおもう。これは一重に作者の実力に違いない
まるで心理描写とシンクロするように楽しくなっていく情景描写が、うどんげにより深く感情移入させてくれる
だからこそ、最後のうどんげの言葉と、てゐの返事がぐっときた
素晴らしい。この文章は好きすぎる
13.60名前が無い程度の能力削除
甘粕・バーレイ・天治が創想話に降臨したと聞いて。
16.70名前が無い程度の能力削除
黄昏酒場と聞いて
20.100名前が無い程度の能力削除
勢いがすごかったです
21.100名前が無い程度の能力削除
酔っ払い的にこの文章は何も間違っていない
23.90名前が無い程度の能力削除
爽快です。実に爽快。
でも飲みすぎはイカン。
25.80幻想削除
タグに黄昏酒場入れたいですねww
むりむりに詰め込んでいるのになんでこんなに読みやすいんだろう・・・・