Coolier - 新生・東方創想話

天狗は人々の日常を写す

2011/07/15 05:03:03
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「おーい、文ー!」
 それは行くあてもなくふらふらと飛んでいたときだった。
 ふらふらといってもそれなりにスピードを出しているので、こんなときに聞こえてくる声の主は自ずと限られてくる。
「どうしました、魔理沙さん?」
 そう、この人は霧雨魔理沙さん。白黒の服をまとったかわいい女の子である。
 魔法の森に住む魔法使いらしいけど、どこからどう見てもただの人間なんですよね…。
 そういえば昔髪がピンク色だったって聞いたことがあるけど…どうなんだろ。
 まぁ泥棒したり泥棒したり泥棒したり、話題には事欠かない人物ですが…。
「ん?私に何か用か?」
 おや?どう考えてもこの人が声をかけてきたんですが…聞き違えかな?
「いえ、私を呼ぶ声が聞こえたような気がして」
「あぁ、それは私だぜ」
 だったら何故とぼけるんですか…まぁいいです。
「…で、どうしたんですか?」
「いやぁ私も暇だったからさ、ちょっと声をかけてみただけだぜ」
「…も?」
 それはちょっと聞き捨てならないですねーまるで私がやることなくてふらふら彷徨ってるみたいじゃないですか…
「ん、違うのか?…ならいいんだ、また今度な」
 そういって彼女は私に背を向け飛んでいく。
 …これは何かあるでしょ。明らかに何か隠しているでしょう!
 彼女が何を言おうとしたのか、何を伝えようとしたのか。
 これは聞き出さざるを得ませんね…追いかけなければ!


「魔理沙さーん!」
「私に何か用か?」
「い、いえ、大した用があるわけではないのですが…」
「そうか。じゃあな!」
「!?」
 あー違う、違うんだってば!用がないときは用があって用があるときは用がない…ってあれ…?
 と、とにかく!
「ちょっと待ってください!」
「一体何なんだ?私は忙しいんだ」
「さっき暇だって言ったのは誰でしたっけ」
「む」
「まぁいいです。さっき私に何を言おうとしていたんですか?」
「何のことだ?私にはさっぱりわからないぜ」
 さすが魔理沙さん。まず正直には教えない。
 だけど、何で嘘をつくのだろう。癖と言ってしまえばそれまでだけど…。
 私に一度伝えようとしたのは事実なのだ。必ず何か理由があるのだろう。
「それは私の台詞ですよ…。答えてくれるまで逃がしませんからね?」
 まぁ逃げるはずはないとは思うけれど。
 最高速は私の方が上なことぐらいわかっているはずだし、不本意ながら私の取材を断ると風評被害に遭うと思ってる人も多い。
 唯一の懸念は…この子が何も考えてないという可能性でしょうか。
 無さそうでありそうなんですよね…
「…じゃあさ、なんで私が隠し事をしてると思ったんだ?」
「新聞記者としての経験…ですかねー」
 要は勘ですね。
「ふーん…例えば?」
 た、例えば!?勘に例えばも何もないんですけど!
「そうですね…魔理沙さんの仕草や言動などから判断したのでしょうか」
 疑問形である。
「ふーん…例えば?」
「いやーいきなり声かけて逃げ出したりしたら気になるんじゃないですかねー?」
 お願いだからこれ以上やめて?もう無理・・・。
「ふーん…」
 いやちょっと待って!ストップストップ!
「いいぜ」
「…はい?」
 なんかいきなり良いって言われた。ほんとに何を考えてるんだろう。
「いやぁお前が焦ってるの見てたら隠すのが馬鹿らしくなってな!」
 あやややや…いいように遊ばれてたわけですね…
「まぁなんにせよ疑問が解決することはいい事ですね!」
「…下らなくても怒るなよ?」
「いいですとも!さぁ早く早く!」
「…お前すごく気持ち悪いぞ?まぁいいけど、私はあれだ、写真を…写真を撮ってほしいだけだぜ」
「…はい?」


 珍しく赤面している魔理沙さん。これだけでも十分面白いのだが、今はそんなことはどうでもよくて。
 …まず考えを整理しよう。この可愛い女の子は私に写真を取って欲しいようだ。
 写真?写真ってなんだっけ。
 あ、あ~写真。なるほど写真ですか。……はい?
「写真…ですか?」
「あぁそうだぜ。お前の持ってるカメラってのは見た物をそのまま写し残せるんだろ?」
「え、えぇ…そうですけど…」
「なら、私を撮って欲しいと思ってな。…駄目か?」
 いやいやそんな風に聞かれたら駄目って言えるわけ無いじゃないですか。
 狙ってやってるとしたら相当な人ですね…
「駄目ってわけじゃないですけど…なんで急に?」
「特に理由があるわけじゃないぜ。ふと思いついてな」
「そ、そうですか…」
 本当にそうだろうか。
 何気に健気で努力家のあの魔理沙さんがただの気まぐれでこんなことするのかなぁ…
 でも写真に何かの意味を持たせられるかって言ったらそれも難しい話ですよね。
 まぁ恐らく何も無いんでしょう。
「というわけでさ!撮ってくれよ!な!な!」
「はいはいわかりましたよ……じゃあ撮りますよ~」

 パシャッ。

「…撮れた?」
 そうやってたずねる様はとても可愛らしい。だからこそ彼女の望みを今すぐ叶えられないことにちょっとした罪悪感を感じてしまう。
「あー…」
「ん?なんだ、何か問題でもあったのか?」
「あれですね…問題というわけでは無いのですけど…ただ、私がまだ取材したいので写真をお渡しするのは後にしたいのですがよろしいですか?」
 どちらかと言うと疑問というより確認のようなやりとり。
 …もしここで拒否されたら私はどうすればいいのだろう。何か彼女なら言いそうな気がするし…
 そんなことを考えていたとき。
「…私が嫌だって言ったらどうするつもりなんだ?」
「えっ」
 もしかして心が読めるのでは?と思ってしまいそうな程的確な指摘。
 返す言葉もございませんね。
「ま、頼んだのは私だし、待って欲しいなら待ってやるぜ」
「んーそれでは日が沈む頃に神社でお会いしましょうか」
「じゃあまた後でなー!」
 そう言うと彼女は…早速神社の方に飛んでいった。
 …あと3時間はありますよ?


 日も傾き、空が茜色に染まった頃。
 私射命丸文はその神社に向かって飛んでいました。
 そう、博麗神社にです。
 立地が最悪な上に鬼やら妖怪やらがうじゃうじゃのひっどい神社にです。
 そんな幻想郷の端に位置する所で待ち合わせしたのは若干失敗かなと思いつつ、ゆっくりと飛んでいるわけでして。
 …いやまぁ全力で飛べばすぐなんですけどね?
 別に急ぎじゃないんだしのんびり行っても悪くないでしょ。
 おっと、そうこうしている内にたどり着いたようですね。あの紅と白と黒は間違いなく巫女と魔法使いでしょう。
 …縁側でお茶飲んでますし。
「あぁ…やっと来たのね」
「霊夢さん…どうしたんですか?」
 魔理沙さんと一緒に和やかな一時を過ごしていたのは空飛ぶ巫女、博麗霊夢さん。
 怠惰なくせに異変を軽々解決できたり色々凄まじい人なんだけれど…だいぶお疲れの様子。
「そうね…こう言えばわかるかしら」
「『霊夢ーっ!私の暇つぶしの相手になれー!』」
「あぁ…そうですか…」
 ということはあの後ずっとここにいたということでしょうか…お疲れ様です。
「まぁ勝手に神社を待合所にした借りは今後じっくり返してもらうとして…」
「えっ?いやいや…えっ?」
「当たり前でしょ?高くつくから覚えとくのよ」
 あぁー失敗したー…まさかこんなことになるなんて…
「文ー早く写真くれよー!」
「あ、はいはい、これですね」
「おぉ~ばっちり写ってるぜ!サンキュー文!」
 …やっぱり礼を言われると照れますね。
「い、いえそれ程でも…」
「ん、そうか?お前にしか出来ないことだしもっと堂々としていいと思うぜ!」
 お、おお……人を撮って感謝されるなんて…
 それ以前に私を褒めてくれる人間がいたなんて…
 感激で涙が出そうです。
「じゃっ、私はもう帰るぜ。またいつか撮ってくれよな!」
「ええ、いいですともいいですとも!」
「あ、でも写真撮るのってちょっとお金かかるのであまり頻繁には撮れませんよ?」
 まぁこんなもので人に喜んでもらえるなら安いものなんだけれど。
「あぁ、わかったぜ!」
 そう言って彼女は帰っていく。その背中が少し儚げに見えたのは気のせいだろうか。
「それではまたいつか~…」
 魔理沙さんを見送ってから私も家路についた。
「今日は色々と調子狂う日だったなぁ~」
 でも、それ以上に楽しい日だったしまぁ良かったかな。
 さて、今日はどんな記事を書こうかなぁ…
初めまして、雀蛾と申します。初投稿となります。
書いてる途中にキャラが変わってくるという謎事態に苦労しながらもなんとか形にはなってればいいなぁ。
元々長編だったのですが(時間が足りなくて)諸事情によりカットしました。
精進したらまた続編を書くかも知れません。それでは。
雀蛾
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コメント



0.260簡易評価
1.無評価名前が無い程度の能力削除
このお話の中には起伏がなにもないのですけども。続編があるということなのでしょうか? それとも所謂、やおいと言う奴なのでしょうか?
2.無評価雀蛾削除
本来一つの作品として出すつもりだったんですけど…友人とそれぞれ書き合って一緒に出そうということになっていたので切って出してしまったんですよね…
続編は書くつもりですね。さすがにこの状態で終わらせちゃうのは私としても納得がいかないので。
それでは、続きに向けて頑張らせていただきます。こんな中途半端なものを読んでいただきありがとうございました。
4.無評価名前が無い程度の能力削除
これの上下の作品が友達のってこと? ちょっとよくわからんけど
5.60名前が無い程度の能力削除
ここから話がどういう風に流れてくかわからないけど
文と魔理沙が仲良さげにしてるシチュはなかなか見られないので新鮮さを感じました。
6.40名前が無い程度の能力削除
特にお話として盛り上がりがある訳ではないですが、読んでいてほほえましいですね。
ここの他の作品をたくさん読めば、ある意味で精進にもなると思いますよ。
頑張って下さいね。
7.30名前が無い程度の能力削除
初投稿多いなー…まぁ頑張って下さい
10.40Ash削除
容量やストーリー(の起伏の無さ)に問題はありますが、上の方がおっしゃった通り魔理沙と文の組み合わせはなかなか新鮮で楽しめました。

何はともあれ初投稿、おめでとうございます。
今後に期待しています。

…………私が他人に“期待しています”とは言える資格があるかわかりませんが(ぉ
15.80名前が無い程度の能力削除
なんでかな、お話の起伏が無いとはどうしてか感じられなかった。
ないんだろうけれど、でも、楽しめました。
続きに期待?
16.100いさらゼット削除
初投稿を心より歓迎します。

内容はほほえましくていいですね、大好きです。長編期待してます
18.100しゅーてぃんぐ☆すたー削除
上の方同様
ほほえましい内容で
楽しませてもらったのだぜ★

続編も期待してます~★ミ

馴れ馴れしいですが
雀蛾さんの他の小説もよんでみたいです☆