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神様になった巫女のお話

2011/06/26 22:49:59
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昔話風に軽くいい話
独自設定注意
口調がウザイです
パロ色あり(まん○日本昔○なし風)

神様になった巫女のお話




むかしむかし、ある山の上に一つの神社があったそうな
その神社には蛇の神様と蛙の神様、そして巫女さんの三人が仲良く暮らしておった

その巫女さんは、毎日毎日里に降りては神様の教えを熱心に広めておった
巫女さんには奇跡を起こす不思議な力があり、その力で里の者を助けることも多かった
里の者は親切な巫女さんをとても気に入り、里には神様を信じる者が次第に増えていった
二人の神様は信仰が広がって大喜び。奇跡を起こす巫女さんも、神様と同じように里の者から崇められるようになった

じゃが、二人の神様は寝食を惜しんで仕事をする巫女さんを少し心配しておった

ある日、働きすぎるのが心配になった神様達は巫女さんに声をかけなすった
「これ早苗や。お前、体は壊してないか?」
「神奈子様、ご心配には及びません。このとおり元気でございます」
「しかし、ご飯を食べなかったり、眠る時間を減らしたりしているじゃないか。それは体に悪かろう」
「諏訪子様、お気遣いありがとうございます。ですが最近、不思議とお腹も空かず眠らなくとも平気なのです」

ここまで聞いて神様達はピーンときた
神性を得たこの娘は、人間の体を失い神様に変化しようとしておる

蛇の神様は優しい目を大きく見開いて言った
「早苗や、それは里の者からの信仰を力に動けるようになったのだよ。いよいよ現人神から純粋な神になりよるぞ」
蛙の神様は嬉しそうに跳ね回って言った
「お前が熱心に信仰を説いてきたのが実を結んだのだ。めでたいめでたい」
いきなりなことに巫女さんはビックリしておったが、神様達が言っていることの意味がわかるとゆっくりと微笑んだ

神様達はそれはもう大喜びじゃった。だから、巫女さんが人間じゃあなくなっていくのを怖がっているのに気づくことはなかった


その日の夕方

「今日はお祝いじゃ!お赤飯を炊いたぞ」
「とっておきの酒も出してきた。早苗もちょっとは飲みなさい」
巫女さんは不安をかき消すように、どんどんお酒を飲んだ
だけどもちっとも酔うことができない
「早苗や。今日はよく飲むのぉ」
「どんなに飲んでも、なぜだか酔うことが出来ないのです」
「それは神に近づいてきたからだな。神になれば、酒など清めの水のようなものじゃ」
それは神様にとっては何気ない一言じゃった。だが、巫女さんにはたいそう辛い言葉じゃった

これまで恐怖を隠しておった巫女さんも、耐え切れずとうとう泣き出してしまった
「私は人間から離れていくのでしょうか
いずれ人間でなくなってしまうなら、これまでの私はどうなるのでしょうか
私は恐ろしゅうございます。人間として培ってきた私の人格が、消えてなくなりそうで怖いのです
神になっても、私は私でいられるのでしょうか」
神様たちは言葉に詰まった。生まれついての神である二人には、どう答えればいいのかとんとわからなかった


次の日、巫女さんは朝から部屋に閉じこもったままだった
「早苗の悩みを解決するにはどうすればいいだろうか」
「しかし、我々ではなにも思いつかない。誰かに助けを求めるしかないかのう」
神様達は巫女さんをとても心配したが、どうすればいいかまったく見当がつかない

ちょうどそのときじゃった
「ごめんください。厄を引き取ってはいただけないでしょうか」
山の麓に居る厄神様が、集めてきた厄を引き渡しに訪ねてきた。
困りきっておった神様達は、わらにもすがる思いで厄神様に助けを求めた
「何とかしないと、早苗は辛い気持ちを持ったまま神になってしまう」
「このままでは悲しい気持ちを司る神になってしまう。どうか、どうか早苗を助けてやってくれないか」
巫女さんと仲が良かった厄神様は、ゆっくりとうなづいて巫女さんの部屋まで歩いていった

「雛です。厄神の雛です。どうか扉を開けてはもらえませんか」
「申し訳ありません。今は誰とも会いたくないのです」
「では扉ごしにお話しましょう。神になるのに悩みがあると聞きました」
ここで巫女さんはふと思い出した
この厄神様はもともと雛人形から神になった。なら、私と同じ不安を持っていたのではないか
巫女さんは、厄神様に気持ちを打ち明けることにした
「実は、神になると人間としての私が消えてしまいそうで怖いのです
雛さんは、人形から神になるとき怖くは無かったのですか。自分が変わってしまうことに不安を覚えませんでしたか」

厄神様は少し考えた後、答えなすった
「早苗さんは何か勘違いされてるようです」
巫女さんは、すぐにはその言葉の意味がわからなかった
厄神様は続けなすった
「私は確かに神と呼ばれるだけの力と役目を持っております。昔の体も失いました。
ですが、私は今でも雛人形です。厄を集め流すという本質はまったく変わっておりません
普通の雛人形より大きな力を手に入れ、その力を見た周囲の人たちが神と呼んではいますが
それは呼び方の一つとしての意味しかありません」

少しの間の後、硬く閉ざされた扉がちいと開いて、中から巫女さんの細い声が聞こえてきた
「私は、神になっても人間でいられるのでしょうか」
「ええ。あなたが人間であることを忘れなければ、あなたは人間です」
二人の神様は、厄神様の後ろで固唾を呑んで見守っている
扉がもうちょっと開いて、巫女さんは泣きはらした目でこちらを覗いてきた
「信仰の力を得て、ご飯食べなくても死なない体になっても、私は人間なんでしょうか」
「ええ。人間としての気持ちを忘れなければ、どうなろうとも人間です」
二人の神様も大きくうんうんとうなづいた
「神であると同時に、人間であろうとしてもいいんでしょうか」
厄神様は巫女さんににっこりと微笑んで言った
「ええ、もちろん。人形であり神でもある私が言うから間違いありませぬ」

その言葉を聞いた巫女さんは、意を決して扉を開けた
「早苗、よう出てきてくれた。本当によう出てきてくれた」
「早苗の気持ちを考えなかった私たちをどうか許しておくれ」
泣きすがる三人を、厄神様は優しい目で見つめておった

それから巫女さんは次第に神様に近づいていったが、もう不安になることは無かったそうな
そして季節が一回りするころには完全に神様となり、『自己暗示』を司る優しい神様として広く親しまれたとのことじゃ
めでたしめでたし






神奈子「なんか変なの司ってんだけど」
諏訪子「まあ早苗が元気ならそれでいいんじゃない?」
神「いいのかねぇ。自己暗示の神って、ようは思い込みが激しいってだけよね」
諏「早苗らしくていいと思う」
神「確かにらしいね。まあ、いっか」
ここでは始めましてです。といっても他所に一作しかない初心者ですが。
早苗と雛は市○○子、ナレーションと二柱は○田富○男で読んで貰えると嬉しいです

*句点と細かな修正実施
句点については悩みましたが、今回は無しの方で統一しました
アンチョビ
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コメント



0.390簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
こういうのっていいですね。
次回作、期待してます。
3.90奇声を発する程度の能力削除
こういう昔話風の物語は良いものですね
6.80愚迂多良童子削除
我、無敵也。とか言ってパワーアップするんですか。
ナイス雛ポン。

>>気づくことはなかった。
ここだけ文章の最後に句点があるので、
句点をつけるかつけないかは統一したほうがいいと思います。
8.80名前が無い程度の能力削除
いい感じでした。
それだけに、文末の句点がないのに違和感がありました。
9.90名前が無い程度の能力削除
いい話でした
最後の自己暗示で吹いたけど
11.100名前が無い程度の能力削除
『自己暗示』を司っているところをみると、早苗さんが早苗さんであることに変わりはないようですね。
面白かったです。