Coolier - 新生・東方創想話

東方X17

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東方X戦記



第17話「絶望の街 炎のさだめ」
それは、早苗が装甲機関車で戦っているより少し前の事・・・・・・。
「遂に来たわね・・・・・・。」
多くもの機械人形を倒し終わり、勇者がいるらしき部屋を発見した咲夜はそう呟いた。ここに勇者が・・・・・・。
そう思い、黙っていると後ろの小悪魔が恐る恐る尋ねてくる。今まで彼女は咲夜の後を付いているだけだが。
「あ、あの咲夜さん・・・・・・大丈夫ですか?」
「え!?え、えぇ・・・・・・行くわよ・・・・・・!」
小悪魔に言われて慌てながらも咲夜はずっと考えていた思いを振り払って、部屋のドアを開ける。
中を見るといかにも殺風景な感じのするものだった。そこに誰かがいる。
「まさか、ここまで来るとは・・・・・・十六夜咲夜・・・・・・名無しの小悪魔・・・・・・。」
「・・・・・・っ!あ、貴方は・・・・・・!?」
その人影の正体が分かるや否や、咲夜の表情が驚きと絶望に変わる。彼女こそ倒すべき勇者だが・・・・・・
髪は金色とやや薄い赤色のショート、服装は中華風と魔道士風の合体版。顔つきとカチューシャは咲夜に似ていた。
だが、目つきや背中に生えている左右対称の羽を見て、咲夜は確信した。目つきはお嬢様で、羽はまさにあの方の・・・・・・!
「貴方は一体・・・・・・!?」
「・・・・・・戦いたくない相手に出会った様だな・・・・・・私の名は・・・・・・S2とでも言おうか・・・・・・。」
「咲夜さん・・・・・・あの人って・・・・・・。」
「えぇ・・・・・・私はともかく、お嬢様や妹様、パチュリー様、それに美鈴のクローン・・・・・・。」
足元をふら付きながらも咲夜は確信した。この勇者はお嬢様達のクローン・・・・・・。
「十六夜咲夜・・・・・・恨みはないが・・・・・・これ以上、私達の邪魔はさせない!」
そう言って、勇者1号・・・S2は赤き槍を構えて消えた・・・・・・否、これは・・・・・・。
「(やはり、あの能力は・・・・・・!)」
そう確信して咲夜は時を止める。すると、S2が自分に向かって突っ込んでいるのだ。慌ててかわす咲夜。
「今の私の能力ですね、“S2様”・・・・・・!」
「・・・・・・やはりな、咲夜・・・・・・お前、本当は・・・・・・。」
お互いに距離を取り合って時を止める能力を解除する。他の者から見れば瞬間移動しているのに見えるだろう。
牽制なのか、S2に向けてナイフを投げる咲夜。しかし、S2に弾かれてしまう。このままでは・・・・・・!
「私だけでなく、お嬢様達のクローンならば・・・・・・これで!十六夜咲夜・・・・・・紅魔形態!!」
「!?咲夜・・・・・・まさか・・・・・・!?」
咲夜の変貌にS2は絶句した。一気に勝負を決めるのか咲夜は紅魔形態へと変わったのか。
「その姿は、やはり・・・・・・!」
「・・・・・・参ります・・・・・・!」
そう言って、ナイフを投げながらS2と戦う咲夜。しかし、只見ているだけの小悪魔は彼女の変化に気づく。
「(咲夜さん、何だか防いでばかりで攻撃がいつもより大雑把みたい・・・・・・まるで本気を出せないみたい・・・・・・。)」
すれ違い様に攻撃し合う2人。だが、変化した咲夜は何故か本気を出してないのか攻撃がそんなに多くはない。
S2の赤き槍と咲夜の3本のナイフによる鍔せり合いの中、いきなりS2が叫ぶ。
「何故、そこまでしてその力を使う!?これでは、吸血鬼としての道を行き・・・・・・人の道から外れてしまうぞ!」
「っ!?この力はお嬢様から託された力・・・・・・お嬢様の意志に答えるならば、人外になっても・・・・・・!」
「咲夜!博麗霊夢、霧雨魔理沙、魂魄妖夢と共に月の異変を解決したお前が何故、人間性を捨てる!?」
S2の言葉を聞いた咲夜は詰まりながらも強い意志と共に答える。
「別に死を恐れているのではありません・・・・・・ですが、お嬢様は言いました・・・・・・霊夢や魔理沙と共にこの異変を解決しなさい、と・・・・・・それが私にできる事なんです!その為なら、人を捨てても・・・・・・!」
「じゃあ何故、本気で攻撃しない!?今のお前なら私に重傷を負わせる位、簡単ではないのか!?」
「そ、それは・・・・・・!?」
その言葉に咲夜は言い返せない。やはり、咲夜さんの様子がおかしい!そう思う小悪魔だが、思いもよらない言葉を耳にする。
「やはりな・・・・・・お前は自分の主達のクローンを殺す事が怖いのだろう?」
「!?!?」
「先程、お前は私に敬語で話したり、“S2様”と呼んでいた・・・・・・違うか?」
それを聞いて、図星をさされたのか咲夜は攻撃の手を止めた。そして、青白い顔で呟く。
「左様です・・・・・・霊夢達には幻想郷を守る為に・・・・・・亡きお嬢様の思い出を守る為に、勇者と戦う決意をしたと言いました・・・・・・ですが!私にはお嬢様や妹様、パチュリー様に美鈴のクローンである貴方を殺したくないのです!貴方を殺せば無くなってしまう・・・・・・例えクローンとは言え、お嬢様達の面影を残している貴方を殺したら、お嬢様達の面影が無くなってしまうのです!!」
「咲夜さん・・・・・・。」
咲夜の言葉に小悪魔は納得した。咲夜さんは恐れていたのだ・・・・・・自分の手で大切な方の面影を消すのが・・・・・・。
それを見ていたS2はやっと確信したのか目を閉じて首を振り、そして・・・・・・
「・・・・・・咲夜・・・・・・情けない奴っ!」
そう言って、赤き槍を突き刺そうとする。咲夜は慌てて回避するが、間に合わずに右脚に刺さってしまう。
「くっ・・・・・・S2様・・・・・・!」
「人の道から外れるのみならず、主の面影を消したくない故に私を殺したくないのは間違っている!それは自己満足だろう!?」
「!?そ、それは・・・・・・!」
「それに、お前の主の仇の仲間である私と主・レミリアを重ねるなんて・・・・・・エゴだぞ、それは!」
そう言いながら、槍で攻撃を強めるS2。だが、咲夜はかわすだけで全然、攻撃してこない。S2に痛い所を突かれたからだ。
そして、S2はトドメなのかスペルカードを取り出す。見た所、お嬢様達のとは違うスペルだが・・・・・・?
「咲夜・・・・・・今すぐ、その力を捨てろ・・・・・・お前には人として生きなければならない・・・・・・!」
「私は・・・・・・嫌です・・・・・・お嬢様から授かった・・・・・・お嬢様の力を捨てる事は・・・・・・できません・・・・・・!」
「そこまで、亡き主に執着していたとは・・・・・・『魔符:ノーレッジ・フレア』!!」
そう言って、S2がスペルを発動するや否や、突如として凄まじい光が咲夜に襲い掛かった!
「これは・・・・・・っ!あうぅ・・・・・・!そ、そんな・・・・・・体が・・・・・・痛い・・・・・・!」
突如、体中に鋭い痛みが襲い掛かる。恐らく、その痛みの原因は・・・・・・
「・・・・・・咲夜・・・・・・今のお前は吸血鬼そのもの・・・・・・故に破邪の光には効果的だと言う事だ!」
そう確信して言うS2。しかし、当の本人もお嬢様のクローン・・・・・・何故、日光を平気とする!?
光のダメージを受けながら咲夜は考える。その時、自分の足が凍って地面とくっついている事に気づいて驚く。
「これは・・・・・・あの妖精の・・・・・・!まさか!?」
「あぁ、そうだ・・・・・・私のパチュリーや他の者の遺伝子がレミリア達の遺伝子の弱点を克服したのだ・・・・・・。」
そして、S2は赤き槍を振うと弾幕が生じて咲夜の周りに集まる。その時、その弾幕の隙間から新たな弾幕が!
破邪の光で敵を牽制し、弾幕を生じて2回目に時を止めて隙間なく弾幕を設置する。まさに完璧そのものだった。
ピチューン!!
大爆発と聞いた事のある音が出、咲夜は地面に倒れる。メイド服は血まみれ傷だらけで紅魔形態は解除されていた。
「くっ・・・・・・やはり、貴方とは・・・・・・お嬢様と同じ貴方とは戦いたくありません・・・・・・。」
弱々しく呟く咲夜。そしてトドメなのかS2が咲夜に近づきだす。赤き槍を引っ込めて咲夜の様子を伺っている。
「可哀そうに・・・・・・今までにそう悩んでいたのだな・・・・・・その迷いが敗北へと繋がったのだ・・・・・・。」
「S2様・・・・・・。」
「だから、敵である私にそう言わないでくれ・・・・・・そのレミリアの力・・・・・・運命を消滅させなくては・・・・・・。」
そう言って、S2は運命の能力を発揮して咲夜の紅魔形態の源であるレミリアの力を奪おうとする・・・・・・その時!
「・・・・・・さ、させません!!」
「!ちいっ!」
突然の弾幕にS2は咲夜と離れて後ろへ下がる。何と小悪魔が咲夜の前に立って弾幕を出す態勢に入っていたのだ。
「小悪魔!?」
「咲夜さん、しっかりしてください!確かに咲夜さんの気持ちも分かります!ですが、それではお嬢様達に申し訳がありません!」
咲夜を庇うかの様に小悪魔がS2と向き合う。ふと、彼女の様子にS2が気付いた。
「(震えている・・・・・・?やはり彼女も、自分の主パチュリーのクローンである私と戦いたくなかったのか・・・・・・。)」
しかし、小悪魔は震えながらもS2と向き合っていた。一体、何が彼女をそこまで動かしたのだ?
「咲夜さん・・・・・・一刻も早く、ここから引いて体勢を立て直して下さい!私があの人をおびき寄せます!」
「小悪魔、無茶よ!中ボスの貴方では・・・・・・!」
「・・・・・・咲夜さん、貴方はとても立派なメイド長です・・・・・・貴方が死んだら、パチュリー様達に申し訳がありません・・・・・・咲夜さんの気持ちも分かりますが、あの人の仲間は幻想郷を・・・・・・お嬢様が愛した紅魔館を支配しようとするのです・・・・・・それを守るならば、私達は・・・・・・亡き方達の遺伝子を持つあの人達と戦わなくてはなりません・・・・・・さぁ、早く!」
そう言って、弾幕を放つ小悪魔。だが、ことごとくS2にかわされる。
「まだだっ!たかが中ボスの1人、私が押し通して見せる!!」
S2の攻撃に慌てて避ける小悪魔。その隙が咲夜の脱出の時間稼ぎとなった。
「咲夜さん、急いで下さい!」
「小悪魔・・・・・・!」
小悪魔の叫びに躊躇いながらも咲夜は後ろへ下がり、時を止める。S2は小悪魔の弾幕故にそれを発動する事が出来ない。
移動完了したのか消える咲夜を見て、S2は諦めたのか小悪魔の方へ向かう。
「仕方ない・・・・・・正直、咲夜には人としての道を歩ませて欲しかったのだが・・・・・・。」
「貴方の優しい気持ちは分かります・・・・・・ですが、お嬢様から貰った力を捨てたくない咲夜さんの気持ちを察して下さい!」
そう言って、小悪魔は弾幕を放つ。咲夜の事を思うのは後回しにするのか、すぐに小悪魔と向き合う。
「パチュリー様の為にも・・・・・・S2さん・・・・・・貴方を倒します!!」
「こうなったからには、私も手加減はしない・・・・・・行くぞっ!」
そう言って、弾幕を放ち合う小悪魔とS2。だが、既に勝負は見えていた。相手の力量は桁外れだった。
「相手はたった1年で作られたパチュリー様達のクローン・・・・・・私は無理でも多くの弾幕を繰り広げた咲夜さんなら・・・・・・!」
必死にかわす小悪魔だったが、突如、S2は手から魔方陣を描いて小悪魔に発する。それが小悪魔に当たり・・・・・・
「っ!?こ、これは・・・・・・!」
小悪魔の体の周りに生じる魔方陣に締め付けられ、膝を付く小悪魔にS2は説明するかの様に言う。
「知っての通り、私はお前の主・パチュリーの遺伝子を持っている・・・・・・故に彼女に召喚されたお前を縛り付けるのも容易と言ってもいいだろう・・・・・・勇者1号は伊達じゃない、だな?たった1年で弾幕の全てを習得する事は私自身も信じられない位だ。」
赤き槍を突き付けられ、小悪魔は呻く。やはり咲夜さんの言う通り、自分では無理だったのだ。
「・・・・・・早く、殺して下さい・・・・・・拷問されても霊夢さん達の事は決して言いません・・・・・・!」
「分かっている・・・・・・キリュウにはこの事は伏せ、お前を咲夜が戻るきっかけとして連れて行く・・・・・・。」
「っ!咲夜さんはお嬢様達のクローンである貴方と戦いたくないのです・・・・・・私の事を心配してると思いますが・・・・・・。」
「いや、彼女の性格からして、紅魔館の仲間であるお前を見捨てはしない・・・・・・決してな・・・・・・。」



そして、今に至る。荒れ張れている都市に絶句する咲夜。これは一体・・・・・・?
「まさか、S2様の軍勢がこの都市を・・・・・・?いえ・・・・・・。」
S2の仕業かと思いきや、機械人形の残骸らしき物を見つけて、別の部隊と言う事に気づく。
装甲の色と言い、材質と言い、咲夜が戦ったのよりスペックの落ちるタイプの様だ・・・・・・
しかし一体、何故・・・・・・その疑問が頭の中をグルグルと回り出す・・・・・・すると・・・・・・
「!?誰!?」
瓦礫から人らしき気配を見つけ、ナイフを構える咲夜。だが、瓦礫の中から現れない事に訝しむ。
「?・・・・・・っ!これは・・・・・・!」
中を見るとそこには少女が血まみれで埋もれていた。両の肩や脚から血が流れ、顔も痩せ細って生気がない。
だが、ボンヤリと咲夜を見ていたのだ。この少女は生きている・・・そう確信した咲夜は瓦礫をどけて彼女に手を伸ばす。
それなのに少女は腕を伸ばさなかった。警戒しているのか、力がもう残っていないのか・・・咲夜は何とか彼女を救出する。
そして気付いたのだ。彼女の手脚の骨に多くのひびが入っている事に。恐らく、瓦礫でそうなったのだろう。
「大丈夫?貴方は一体・・・・・・?」
「・・・・・・。」
咲夜の問いに少女は何も答えなかった。口を開けて何かを言おうとするが、空気が出るだけで言えてない。
「とにかく、ここは一体・・・・・・!?」
瓦礫の中の少女や荒れ張れた都市に疑問を持った咲夜だったが、何やら乗物の音が聞こえる。まさか、追手が!?
そう警戒していると、咲夜の前方から固そうな外見を持つ車が走り、咲夜達の姿を見たのか急停止する。
そして現れたのは、武装した兵士の様だ。咲夜達に銃を向けている。対する咲夜もナイフを構える。
「なぁ、サブロウ・・・・・・メイドがいるって事は・・・・・・ここはかの有名なアキバか?」
ふと、武装した兵士の1人・・・・・・金髪で若い男の兵が咲夜と同じ日本人風の兵士にジョーク混じりに言う。
「そんな訳ないだろう・・・・・・だが、妙だな・・・・・・ここは完全に封鎖された筈だが・・・・・・?おい、あんた・・・・・・」
「待って、サブロウ!この人達、怪我をしているわ!まだ、取り残された人がいたのね・・・・・・。」
「おいおい・・・・・・あの事件からまる72時間経っているんだぜ?それにあの状況じゃ生きているなんてな~。」
「でも、現にここにいます・・・・・・それにあの銀髪の人、サブロウさんと同じ日本人ですけど・・・・・・。」
「そうに決まってんだろ?なんてたって、モエの国だからな、ジャパンは・・・・・・な、サブロウ♪」
「・・・・・・ニック・・・・・・言いたい事はそれだけか・・・・・・!」
日本人風の兵士の言葉を遮って金髪のロングの女性兵士が言い、彼女の言葉に黒い肌の兵士と美鈴と似た雰囲気を持つ幼い少女(武装はあまりしてないが)が言う。そして金髪の兵士のジョークに苦虫を噛んだかの様な表情の日本人兵士。
すると、車からゾロゾロと新たに4人の兵士が現れた。
1人は隻眼で、手には細い銃(スナイパーライフルと言われている)を持ち、表情からして感情の起伏がない男性だった。
2人目は兵士の中でも大柄で顔は厳つい男であった。背中にはガトリングと言った凶暴な武器を背負っている。
3人目は運転席から出たのだが、驚く事に若い女性だった。年は咲夜と同じみたいでそばかすと赤毛が特徴づける。
そして4人目はいかにも真面目そうな男性だった。武装は他の者より豪華で若いながらも歴戦の戦士を裏付ける。
「・・・・・・どうやら、彼女は生存者の様だな・・・・・・ここは一時、基地に戻る必要があるな・・・・・・。」
「ですが、隊長・・・・・・72時間も経っているのに生きているなんて・・・・・・もしや奴らのスパイじゃ・・・・・・!」
「まぁ待て、ボナルト・・・・・・さて、何やら訳ありの様だな・・・・・・済まないが君達は我々と同行してくれないかな?」
「貴方達は一体・・・・・・!?」
咲夜の問いにリーダーらしき兵士はきりっとした眼差しでこう答える。
「我々は対・北方勇者帝国の特殊部隊・・・・・・通称、ネオアルファーズだ・・・・・・。」



「・・・・・・やはりな・・・・・・。」
人里より少し離れた所にある自分の家に安置中の妹紅を残して、慧音は書庫である物を調べていた。
そして、とある本を見つけて確信する。内容は『歴史を残したホラー映画』。そこから真実に辿り着いた。
最初は幻想郷の歴史本を手当たりしだい探していたが、その本が本棚落ちて開かれたページを見て、それに気づく。
彼女は気にかかっていたのだ。かつてZと出会ったあの建物の名『クリスタルレイクキャンプ』の名を。
いかにも覚えがありそうな名前はたまたま拾ったこの本の中にある恐怖映画に出ていたのだった。
映画の話によると、今から約30年前に作られた物であり、これによって恐怖映画のブームの火が付けられたらしい。
あの建物の名と同じキャンプ場で不死身の殺人鬼が引き起こす惨殺事件だというのだが、実は実際の事件を元にしたような。
「(成程・・・・・・確かにT‐Jがもたらしたあの異変とこの物語は同じだと言う事か・・・・・・!)」
思い起こしてみるとこの異変で多くの仲間が死んでしまった。大神・天照の力で自分が生き返ったのは別として。
この物語と同じ様に我々を全て消そうとしてZは建物の名に同じ名前を着けたのか・・・・・・!心中に怒りが生じる。
「名前を見た時にZの陰謀を気付けなかったのは私のミスだった・・・・・・ワーハクタクあろうものが・・・・・・。」
そう呟いて、ふと、思い出す。かつて、自分が救えなかったあの命を・・・巫女である彼女の心を・・・
それは気の遠くなる様な数百年前、慧音が未だに教師見習いだった頃・・・・・・

私は急いでいた。胸騒ぎがする。何事も無ければいいが・・・・・・。兎に角、急いで彼女の元へ急ぐ。
場所はあの教師見習いのワーハクタクの家。彼女が言うには、戦闘に関しては一流らしいが・・・・・・。
そして、家の扉を開け・・・・・・いや、扉が倒れて中の惨状を見て、私は信じられないのを目の当たりにする。
家の中は少し荒れており、そこの中央にはワーハクタクの慧音が傷だらけで倒れていた。そして彼女は・・・・・・
『っ!!!』
私は倒れている彼女を見つけ、駆け付けて彼女に呼び掛ける。だが、どんなに揺すっても名を呼んでも・・・・・・
彼女の閉ざされた瞳は決して開かなかった・・・・・・この時、私の“心”は完全に壊れてしまった。
『何で・・・・・・どうして・・・・・・どうして貴方が死ななければいけないの・・・・・・!』
私は泣いた。彼女を腕に抱いて泣いた。今まで、姉や母様に見せた事が無い涙を流した。傍らで慧音が立ち上がろうとする。
『済まない、霊華・・・・・・遅かったのだ・・・・・・何者かが現れて、素早く彼女に何かをして・・・・・・必死に抵抗したが・・・・・・。』
『・・・・・・何なのよ、それ・・・・・・言い訳って事・・・・・・あの時、あんたが自信満々に言ってたくせに・・・・・・!』
ワーハクタクの言い訳がましい言葉に私は怒りのあまりに慧音の胸ぐらを掴む。
『あんたがっ!あんたが任せろ、と言ったから信じたのに!それなのに、彼女を助けなかった!どうしてなのよ!』
『・・・・・・!すまない・・・・・・!』
『っ!もういい!こうなったからには、私が仇を追う!そして・・・・・・私の大切な者を奪った事を後悔させてやる!!』
怒りに駆られた私は無力の慧音を突き飛ばし、家を出て追おうとする。痕跡はないが追い詰める気でいた。
その時、首元に鋭い痛みが走り、意識が薄れ始めていく。意識が薄れる中、振り向くと・・・・・・。
『・・・・・・ね・・・・・・姉さん・・・・・・!?』
私にみね打ちをした姉は呆れそうに溜息をつくとこうぼやいた・・・・・・
『・・・・・・気持ちは分かるけど、落ち着いてよ・・・・・・後はお母様に任せなさいって・・・・・・。』

その後、私は座敷牢らしき場所に閉じ込められた。母様が私を落ち着かせる為らしい。
座敷牢では姉が食事を運んできたり、母様が私を慰める為に会ったり、あのワーハクタクが謝罪しに来たり・・・・・・
だが、それでも私の心の傷は決して癒す事はなかった。大切な彼女を失ったばかりに・・・・・・
結局、私は彼女との約束を守れなかった・・・・・・私は現実の非情さを受け、彼女が亡き者になってしまったからだ。
何故?何故、こうなった?どうしてこうなってしまった?これが運命なのか・・・・・・?
「いや・・・・・・そんなのは絶対に嫌だ・・・・・・!」
座敷牢の狭苦しい所で私の心は徐々に蝕んでいった・・・・・・闇そのものに・・・・・・
彼女は死ぬべきではなかった・・・・・・それを受け入れるなんて嫌だ!絶対に嫌だ!
「彼女は私の大切な宝物で!親友で!愛する者だった!私は彼女の純粋な存在そのものが好きだった!彼女の他は何もいらない!彼女の死を受け入れるなんてできない!彼女の死を受け入れる世界なんていらない!・・・・・・私は絶対に彼女を生き返らせる・・・・・・死んだ者を生き返らせるのはいけない事は分かっている・・・・・・だけど、この世界が変わらないなら、私が彼女を生き返らせて、この幻想郷を変えて見せる・・・・・・例えそれが・・・・・・巫女、いや人にあらざる道・・・・・・外道に堕ちようとも!!」
そして私は叫んだ。彼女が死んだのは絶対に認めない。そして年数が経っても変わらない幻想郷を認めない。
死んだ彼女は何としてでも生き返らせる・・・・・・そして、幻想郷を変えて見せる・・・・・・!
その思いを胸に・・・・・・私は・・・・・・闇に堕ちていった・・・・・・

「(そして、霊華は我こと博麗霊牙へとなった・・・・・・全てはコード・紅の為に・・・・・・。)」
北方勇者帝国のとある一室で霊牙は忌々しい記憶を思い出す。あの時は“自分”が誕生した瞬間だった。
霊牙の正体・・・・・・それは、霊夢の先代の巫女の妹である巫女・博麗霊華が生みだした闇の人格だったのだ。
自分を生み出した事に霊華は驚かなかった。むしろ、闇の力に魅了されていた。自分に取り込まれるのも妥協してくれた。
『よいのか?我が貴様を取り込めば、貴様の体は我の物だぞ?』
『構わないわ・・・・・・貴方は私そのものよ・・・・・・貴方も私同様、彼女を愛し、そしてこの幻想郷を憎んでいる・・・・・・。』
『ふぅむ・・・・・・仮に彼女を生き返らせたら、我が告白して、結婚するつもりだが?』
『ふっ、いいわ・・・・・・私と貴方は2人で1人・・・・・・私の人格がどうなろうと体は変わらない・・・・・・だけど、忠告。』
『何だ?』
『1つは、闇の世界だろうと絶対に幻想郷を外の世界と同じ様に新しい世界へと変えて。彼女との新世界を・・・・・・』
『当然だ。我も新しい事には目がないからな・・・・・・月へも行かせてやるぞ・・・・・・。』
『流石ね・・・・・・だけど2つ目、姉さんや紫さんに注意して・・・・・・巫女とスキマ妖怪の力は桁違いだから。』
『案ずるな。我の能力ならば、一気に決めてやる・・・・・・。』
『・・・・・・ありがとう・・・・・・後は頼むわね・・・・・・。』
そして、自分は霊華の体を取り込み、完全なる闇の巫女として降臨した。その後は、ほぼ順調だった。
能力で外の世界の技術を何とか持ち入れ、試作機械人形を作った。あと、冥界にさまよっていた4人の少女達を部下にした。
試作機械人形には外の世界の時代に合わせて強化する様に設定され、4人の少女達は冥界四天王と名付けた。
後に試作機械人形は“Z”と言う自我を持ち、設計者の自分でも考えているのが分からない程の性能を発揮した。
冥界四天王も自分と出会ったばかりなのに、どうやら自分に一目惚れなのか自分につき従える様だった。
全ての準備は整った。後は幻想郷を闇に堕として新世界へと変え、彼女を生き返らせる。それが全ての目標だった。
だが、最終局面の前に八雲紫、悪霊として有名な魅魔、魔界神の神綺、そして1人前の巫女となった姉が立ちはだかった。
本当は慧音も消したかったが、あの時の彼女は姉に頼まれたのか人里を守っているのかいなかった様だ。
自分と姉達の戦いは激しい戦いを繰り広げ、それはまさに時空ですら歪みそうな戦いだった・・・・・・

『神綺!神綺、しっかりしろ!』
『だ、大丈夫よ・・・・・・これ位・・・・・・。』
闇の力の直撃を受け、重傷を負った神綺に駆け寄る魅魔と何とか立ち上がろうとする神綺。戦況は正にこちらが有利。
『霊華・・・・・・いえ、闇の巫女、博麗霊牙!この幻想郷を闇に堕とさせる訳にはいかない!』
『甘いぞ、霊夢!我はこの幻想郷に闇をもたらす為に貴様の妹、霊華の心から生み出した者・・・・・・我を生み出したのは貴様等が原因と言えよう!もはや、戦局は我の方が有利と見えた・・・・・・この戦い既に勝機は見えている!!』
『くっ・・・・・・霊華・・・・・・紫さん・・・・・・あの時、話したアレを使うしかないわ・・・・・・!』
『本当にやるのね・・・・・・相手は乗っ取られるけど、貴方の妹なのよ・・・・・・そしたら・・・・・・』
『確かに・・・・・・霊華が闇の巫女になったのは彼女の夢や大切な者への想いに気付かなかった私がいけなかった・・・・・・アレをやるのは、幻想郷を救う為ではない・・・・・・彼女の悲しみを封じる為に使う、それだけにあるの・・・・・・!』
『分かったわ・・・・・・魅魔、神綺をかばいつつ、霊夢を援護して。』
『あぁ、分かった・・・・・・。』
そう言って、姉は自分に向かって突っ込む。それに対し、自分は魅魔の援護をかわしつつ、姉の方へ突っ込む。
『(これで・・・・・・終わりだ!)』
勝利を確信し、一気に闇の力を発動させようとした瞬間、姉は突如、札らしき物を掲げる。
『この時を待っていたわよ!』
『な・・・・・・何!?何だ、その札は!?』
『お母様が作り出した幻想郷の妖怪等が行う“遊び”・・・・・・通称、「弾幕ごっこ」で使う札スペルカードよ!!』
そう言って、姉は幻想郷で最初のスペルカードを発動する。すると、弾らしきものが自分を縛り付けてしまった。
『ぐっ・・・・・・霊夢・・・・・・貴様ぁ!』
『闇の理に堕ち、幻想郷に闇をもたらそうとする博麗霊牙!今、貴方の魂を封印する!!』
『主!?』
『ご主人たま!?』
『御姉様!?』
『マスター・・・!?』
自分を封じようとする姉に対し冥界四天王が駆け付けて姉に攻撃を仕掛けようとするが、魅魔と神綺に阻まれる。
『そうはさせないっ!』
『っ!邪魔よ!おどきなさい、魔界神!』
『魅魔!幻想郷一の悪霊たるそなたが何故、巫女如きに!』
『まぁね~私も悪霊だが、幻想郷を愛する心はあいつと一緒ってことさ♪』
そうした中、紫が隙を付いて冥界四天王を封じる結界を生み出す。たちまち、彼女達は封じられてしまう。
『結界による強大な封印・・・・・・脱出、不可能・・・・・・!』
『ご主人たま・・・・・・すんまへん!』
『!青龍!白虎!朱雀!玄武!八雲紫・・・・・・!だが、これで終わったと思うなよ・・・・・・まだ、外の世界にはZがいる!奴がいる限り、我は必ず復活し、真っ先に貴様らとあの憎きワーハクタクを抹消し、幻想郷に闇をもたらすだろう!』
徐々に体が封じられる中で自分が叫ぶと、姉達はキッと睨み返して言う。
『そうだとしても私がいる限り、この幻想郷は決して汚させない・・・・・・!』
『私だって、大切な娘がいるもん・・・・・・その子の為に幻想郷も魔界も壊させはしない!』
『まぁ、仮に復活する事を仮定して、あたしも弟子を入れようかいな?できれば、人間の少女がいいが・・・・・・』
『霊牙・・・・・・霊華・・・・・・この幻想郷はどんな事があっても私の子孫達が守って見せる・・・・・・絶対に・・・・・・!』
その言葉を聞きながら・・・・・・自分は姉達が作り出した結界の中へと封じられていった・・・・・・

「(だが、現に今、我が復活したとなると、Zが何かをしでかしたのかもしれん・・・・・・。)」
今を思い返してみると奇妙なものだった。自分は何故か機械人形の体の中にいて、目の前には魅魔達がいたのだ。
それはきっと、Zが自分を復活させる為に何かをしたに違いない。全く、とことん油断がない奴だ・・・・・・。
そしてキリュウ・・・・・・話によれば、彼女はZの手によって作られた、神綺のクローン。今は彼女が総帥らしい。
キリュウが言うには、Zは現在の巫女、博麗霊夢(姉と同じ名前で正直、驚いたが)に破壊されたのだ。
「(何という奇妙な運命・・・・・・まさか、姉と同じ名を持つ子孫の時代に我が復活するとは・・・・・・!)」
だが、自分の闇の力は完全に復活した所かあの時より強くなっている。この時代の闇の力を取り込んだが故に。
現在の巫女の“弾幕ごっこ”でも負ける気はしない。それは現在の紫との戦いで分かった事だ。
問題は・・・・・・“紅”の事だ。キリュウに頼んでも自分の正体を知らないのか、「ぬ、ぬしは客人じゃからな・・・・・・何処であやつの事を聞いたか知らんが、わしの許可なくして入れる事は許されんのじゃ・・・・・・。」とぬかしていた。正直、久しぶりに会いたいのだが、今はそれ所ではない模様だ。そう考えていると、冥界四天王の1人、青龍が何処からも無く、現れた。
「我が主・・・・・・報告しておきたい事が・・・・・・。」
「何だ?手っ取り早く申せ。」
「たった今、勇者2号こと神影が東風谷早苗と言う現人神に負けた模様です。現在は1号だけが外部に残っています。」
「そうか・・・・・・で?キリュウの奴は?」
「・・・・・・信じられないかと思いますが、気絶なさいました・・・・・・。」
「・・・・・・何・・・・・・?分かる様に説明しろ・・・・・・。」
「勇者2号の敗戦を聞いた直後、『ウソジャドンドコド―――ン!!』と叫んでバッタリと倒れた様です。」
「そこまで期待している事や、奴もパソコンの動画とかを見るのが分かった・・・・・・。」
「現在は嫌々ながらも勇者3号ことザリク、楽しそうな気分の勇者8号こと四由美が彼女を介抱しています。」
「ついでにナース服を着ろと言って来い。(キッパリ)」
「はっ!やはり、Zが作り出した彼女は失敗作ですな・・・・・・彼女が作ったクローンは私にとっては弱すぎる・・・・・・。」
「失敗作ではないぞ、青龍。奴はZが作り出した試作型だからな・・・・・・。」
「試作型・・・・・・ですか・・・・・・?」
「そうだ・・・・・・いきなり物を作るのはリスクが高い。故に試作型を作ってからその欠点などを補って、初めてそれが完成する。お台場に立っている白いロボットも実は2号機であって、試作機が存在しているぞ。キリュウもそれに分類する。」
「試作型と言う事は・・・・・・紅の・・・・・・ですか・・・・・・。」
そう言って、寂しそうに俯く青龍。余程、憧れている自分と彼女が付き合うのは抵抗がある様だ。
「ふぅむ・・・・・・嫉妬とやらか?」
「い、いえ!正直、羨ましいだけで・・・・・・(部下の私が嫉妬などとは、その様な事があろう筈がございません)」
「心の中と言っている事が逆になっているぞ・・・・・・お台場と言えば、そのロボットの対戦ゲームがゲームセンターで稼働されているらしい・・・・・・これが終わって日本を制圧したら、貴様もやらないか?結構、いいぞ。」
「・・・・・・っ!ありがたき幸せ・・・・・・!」
顔は伏せているが嬉しいのか体が震えていた。そこまで、自分に想いを寄せているとは・・・・・・少しからかってみよう。
「だが、我と一緒にゲームができるのは2人だけだ。他の奴らが聞けば、修羅場だな・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・ちょっとナース服の件の後、話し合ってきます・・・・・・!」
冗談交じりに言ったら案の定、青龍は殺気を纏って剣を抜きながら去る。「程々にな」、と彼女に声をかける。
「(さて、現代の巫女・博麗霊夢がどれ程の者か・・・・・・楽しみだな・・・・・・。)」
その後、冥界四天王で激しい議論が発生したり、総帥室ではナース姿のザリクと四由美がキリュウを介抱していたそうな。



謎の兵士に連れられ、テントらしき所に着く咲夜と少女。すると、豪華な武装の兵士が口を開く。
「まずはこちらから自己紹介をしよう・・・・・・私はハリソン・リュクソン。ネオアルファーズのリーダーだ。」
そして次は先程、ジョークを言っていた金髪の兵士を紹介する。
「彼は、ニック・クンダーソン。無駄弾が多いが、射撃の中では抜群の腕を持っている。」
「宜しくな、メイドの姉ちゃん。俺、こう見えても日本の文化には詳しいから仲良くしようぜ?」
「そして彼はサブロウ・モトオリ。見ての通り日本人であり、チームの主力の1人でもある。」
「ネオアルファーズの隊員、本居三郎だ・・・・・・。」
隊長のニックに紹介されて、日本人風の兵士が敬礼する。次は金髪ロングの女性兵士を紹介する。
「彼女はジョーニア・リッキーノ。作戦の提案者であり、元は軍人でもある。」
「ジョーニア・リッキーノよ。事情があって軍を辞めて、この部隊に所属したの。」
「彼はボナルド・スリザンヌ。爆弾には詳しく、爆弾の製造や解体を得意とする。」
「よっ!黒人を見るのは初めてかい、姉ちゃん?」
黒い肌の兵士がそう言って陽気に笑う。次に紹介されるのは美鈴と同じ雰囲気を持つ少女だ。
「名前はリン・フォンユ。幼いながらも情報担当を得意とし、オペレーターとして活躍している。」
「リン・フォンユです。宜しくお願いします。」
「私よりも年上でチームの副リーダー、ガルワ・リオハレス。狙撃では彼に勝る者はいないだろう。」
「・・・・・・宜しく頼む・・・・・・。」
そう無表情に呟く隻眼の兵士。今度は体がガッシリしていて巨大な銃を手に整備している。
「そしてロージ・ロナパルド。彼は銃器のプロだ。自作のガトリングで多くの功績を残している。」
「はっはっは――!気分はどうだい、嬢ちゃん?」
最後に赤毛とそばかすが特徴の兵士だが、・・・・・・何やら慌てて別室で薬類を集めている。
「む、アンヌ。その赤いビンは銃の手入れ用のオイルだぞ?」
「あっ、そうでした!すみませ~ん!」
「全く・・・・・・最後にアンヌ・アンサード。この特殊車両の操縦だけでなく、そそっかしいが医学にも詳しいらしい。」
「ど、どうも~!アンヌで~す!あ、隊長!この子を治療しないといけません。メイドさんは大丈夫そうですが。」
「よし、何とかして応急処置をしてくれ。我々は、政府によって集められたエキスパート隊である・・・・・・元々はテロリストやゲリラの撲滅を目的として提案されたが、北方勇者帝国と名乗る恐るべき規模を持つ一団の出現により、それに対抗する為に結成された。本当は極秘だが、我々の目的はこの廃墟となった街から北1キロにいる勇者と呼ばれる幹部格の排除、できるなら捕獲である。」
「(この町から北1キロ・・・・・・S2様の所・・・・・・)聞きたい事があるのだけど、この街は・・・・・・。」
「・・・・・・本当は軍隊がやる事になっているが、勇者帝国で有名な“移動基地”と鉢合わせになり、戦闘を行ったのだ。」
「“移動基地”?」
聞いた事も無い言葉に首を傾げる咲夜にニックとサブロウとボナルドが説明する。
「勇者帝国の主力と言える、名の通り動く基地だ。恐ろしい武器を積んで、邪魔者とかを消しているらしいぜ。」
「この事態に対し、軍隊は独自の判断で街に人がいるにもかかわらず、ミサイルを発射した・・・・・・。」
「んで、その結果がこうさ。移動基地を退けたのはいいが、市街地や住人もその犠牲となったって事だ。」
「そんな・・・・・・!」
「軍隊はその責任を問われ、ヤケクソ気味に俺達にさっきの任務を押しつけやがったのさ。全く、嫌な連中だね・・・。」
「そうね・・・・・・。」
そう言って溜息をつくジョーニア。元軍人の彼女を見て、ボナルドは慌てる。
「あ、いや、その・・・・・・すんません・・・・・・。」
「謝る必要はないわ。事実だから。」
「その途中で君達と会ったのだが、君達は一体どこから来たんだ?あの後、市街地は封鎖されている筈だが・・・・・・。」
「・・・・・・(隠しても仕方ないわね・・・・・・。)信じられないと思うけど、私は・・・・・・。」
覚悟を決めたのか咲夜はハリソン達に説明する。自分は人間だが、この世界の人間ではない事。幻想郷の事。1年前に起きたR島の件や自分が自分の主のクローンである勇者1号(S2)に敗れて敗走した事も全て話した。それに驚くネオアルファーズ。
「まさか、異世界の人間だったとは・・・・・・。」
「信じられねぇぜ・・・・・・。」
「俺もだ・・・・・・吸血鬼と言ったモンスターは架空ものだと正直、思ったぜ・・・・・・。」
「では、帝国の幹部はサクヤさん達の能力を持っているのですか?」
「おいおい、能力たって一体どんな能力なんだ?気になるぜ。」
「そうね・・・・・・私達、幻想郷の住人は弾幕と言う力とそれぞれ異なる能力を持っており・・・・・・。」
咲夜が説明の途中で話しを止めるや否や、消えてしまった。と思いきや、別の場所に現れる。
「私の能力は“時間を操る程度の能力”。時間を戻す事は出来ないけど、名の通り進めたり、止めたりする事もできるわ。」
「すげぇ・・・・・・まるでコミックに出てたラスボスのスタ○ドだな・・・・・・。」
「幻想郷・・・・・・素晴らしい能力を持った人や妖精等が住んでいる・・・・・・どんな所でしょう・・・・・・?」
「他にも運命を操ったり、死をもたらしたり、大地を揺らしたり・・・・・・私達、幻想郷の住人は皆、能力を持っているの。」
「そうか・・・・・・そして我々の世界のZと言う輩がその力を利用しようとしているのだな・・・・・・。」
「えぇ・・・・・・Zは霊夢(幻想郷の境界を維持する役目を持っている巫女)に倒され、今はクローンのキリュウが私達の能力を持つクローン、すなわち勇者を作り出して、この世界と幻想郷を支配しようと企んでいるらしいわ。」
咲夜の言葉に戸惑いを隠せないネオアルファーズ。やはり、自分の説明は半信半疑の様だ。すかさず、咲夜は言う。
「一つだけ頼みがあるの。S2様の居場所は私が知っているわ。だから、貴方達の手伝いをする代わりに私も連れて行って。」
「・・・・・・何を企んでいる?一度は自分の主の面影を消したくない為に攻撃するのに躊躇ったでは?」
サブロウの半信半疑っぽい問いに咲夜は真っ向と見据え、答える。
「・・・・・・今度は違う・・・・・・小悪魔がS2様に掴まっている・・・・・・だから、私が助け出さないと・・・・・・!」
「ヤレヤレ、吸血鬼のご主人様の次はデビルってか?・・・・・・どうする、隊長?」
ニックの問いにハリソンは暫く考えたが・・・・・・
「・・・・・・分かった・・・・・・我々はロボットや基地を破壊する事に集中する・・・・・・サクヤくんと言ったかな?君は済まないが、勇者を引きつけてくれ。君の仲間は必ず、助けて見せる・・・・・・。君は安心して戦ってくれ・・・・・・。」
「た、隊長!?何故、得体のしれない異世界の者に・・・・・・!」
慌てて反論しようとするサブロウだが、手で制止されてしまう。
「彼女の眼は本気だ。もし、断ってもきっと、1人でも助けに行くだろう・・・・・・サクヤ君、いいね?」
「・・・・・・えぇ、分かったわ・・・・・・S2様の事は任せて・・・・・・。」
「さて・・・・・・アンヌ、彼女の容態は?」
ハリケルの問いに咲夜が瓦礫から助けた少女にギブスや包帯巻きをしながらアンヌが答える。
「はいっ。えーと、手足の骨は骨折していますが、完全に粉々になっていませんのでギブスを付けて安静すれば、約3カ月位の後は完全に治ると思います。ですが、呼吸器官は無事ですが、瓦礫に埋もれたトラウマでしょうか、全く声が出ないらしいです。」
「そうか・・・・・・リン、市街地の住人のデーターから彼女について調べてくれ。彼女はこの世界の人間だから分かる筈だ。」
「了解です。すぐに調べます。」
そう言って、リンはテントの中のパソコンに向かい、素早くキーボードを叩いてデーター等を入力する。数分後・・・・・・
「・・・・・・出ました!彼女はマリア・ガイバード・・・・・・年齢は13歳でこの街に古くから住んでいます。」
「ガイバードと言えば、聞いた事があるぜ。超有名企業の社長の爺さんだよな?政府に危険視されているって噂の。」
「ロージの言う通り、あそこは影では兵器とかを輸出しているからな・・・・・・そのお孫さんってわけか?」
「リン、両親について何か情報はないの?例えば、娘の行方を捜す為に情報を公開しているとか。」
ジョーニアの問いに対し、リンは躊躇ったかのような表情を出したが、意を決して答える。
「・・・・・・彼女の両親、スティーム・ガイバードとミラ・ガイバードは軍隊と勇者帝国の移動基地との戦いの最中、住人と一緒に非難の最中に爆撃に会い・・・・・・死亡されたの事です・・・・・・遺体はそれから10時間後に発見されています・・・・・・。」
「「「なっ・・・・・・っ!」」」
リンの報告に咲夜達は絶句した。アンヌの所を恐る恐る、見て見ると・・・・・・
「っ!・・・・・・・・・・・・っ!!」
両親の死を聞いた包帯まみれの彼女・・・・・・マリアは泣いていた・・・・・・大粒の涙を流し、項垂れて・・・・・・。
その彼女の姿がかつて、1年前に主・レミリアお嬢様達を失った自分の姿を重ね、顔をそむく事が出来ない咲夜だった・・・・・・。



「なんじゃ、ガイバード氏?わしは訳あって疲労状態じゃが・・・・・・?」
自分の娘同然の1人である2号こと神影が負けた事にショックを受けて倒れるキリュウだったが、突然の呼び出しに答える。
相手は、表の顔は超有名企業だが、裏ではZと同じく兵器などを軍国やゲリラとかに輸入しているガイバード社長だった。
ガイバード社長・・・・・・それは、咲夜が救出した少女、マリア・ガイバードの祖父に当たる男であるのだ。
『突然の申し出に答えてくれて感謝しているよ、キリュウ君・・・・・・あの時の答えを出そうと思って・・・・・・。』
「ほぉ・・・・・・?」
彼の突然の言葉に意気消沈だったキリュウも興味心身と聞く。自分達に協力しろと頼んだ際に、考えておくと言ったが・・・・・・
『・・・・・・我が社は君達、北方勇者帝国に全力で協力する事に決定した・・・・・・。』
「ほぉ!それは、それは・・・・・・どういう風の吹きまわしかの~?」
『それには、3つの理由がある・・・・・・1つ、今の国連等は全くの無力と言う事が分かった事・・・・・・1つ、テロリストやゲリラに売るよりは君達の方が儲かりやすく、更なる兵器が開発できるメリットがあると言う事・・・・・・1つ・・・・・・軍のやり方だ・・・・・・。』
「ふぅん・・・・・・軍のやり方とはまさか、軍事隊長の移動基地と軍との戦いの事かの?」
『そうだ。戦いの原因は君の仲間かもしれん・・・・・・だが、それを排除するのに街を爆破する軍のやり方に嫌気がさした・・・・・・。』
「ほぉ?聞いたのじゃが、その爆撃で死んだ息子の仇討ちではなかったのかいな?」
『その事はこちらも聞いている・・・・・・が、我が思想を理解できず、庶民の女と結婚し、その娘と共に引っ越した息子の事など知らん。寧ろ、清々したと言っても過言ではない・・・・・・あやつがいなくとも奴の妹に相続させる面倒がなくなったのだ・・・・・・。』
「ククク・・・・・・ガイバード氏・・・・・・ぬしも悪よのぉ・・・・・・。」
『ふん、多くの人間を楽しそうに殺した君に言われたくない・・・・・・必要とあれば、言いたまえ・・・・・・。』
「分かった、分かった・・・・・・必要な武器があれば注文するからの、期待しておるぞ・・・・・・。」
『・・・・・・条件と言ったら何だが・・・・・・。』
「む?何じゃ?」
条件と言う言葉に眉をひそめるキリュウに対し、ガイバードは声の調子を変えずにこう言った。
『あの街では可能性はないが、孫のマリアが生きていたら・・・・・・殺したまえ・・・・・・あの娘は邪魔だからな・・・・・・。』
「・・・・・・分かった・・・・・・条件がそれだけなら、了解したぞ。」
『では、これにて・・・・・・。』
そう言って、ガイバードは電話を切る。それを聞いたキリュウは満足そうにベッドに寝転がる。
「(ガイバード氏がわしらに協力したとなると、これで武器は万全じゃが、問題は幻想郷の住人共じゃな・・・・・・娘同然の薫がやられたとなると危ない気がするのじゃが・・・・・・闇の巫女が協力して居るが、やはりチルノも出番が必要よの・・・・・・。)」



一方の咲夜達は一時、テントで休む事になっていた。万全な状態で昼に向かう事になっていた。
咲夜は外に出て、頭上に輝いている太陽を見る。お嬢様から受け継いだ能力なのか怪我はすっかり完治したが・・・・・・
「(太陽をまともに見れなくなっている・・・・・・やはりS2様の言う通り、紅魔形態はお嬢様の力を発動する時に同じ吸血鬼になる・・・・・・それで同じ様に日光が弱点に・・・・・・どうすれば・・・・・・。)」
どうすれば、あの方に勝てるのだろうか・・・・・・どうすれば小悪魔を助けられるか・・・・・・そう考えている最中
「咲夜・・・・・・1つ、いいか・・・・・・?」
「?貴方は・・・・・・。」
突然の声に振り向くとそこにはサブロウが立っていた。恐らく、武器の整備とかが終わったのだろう。
「何かしら?質問って事ね・・・・・・。」
「あぁ・・・・・・何故、人でありながら吸血鬼のメイドとなった?」
サブロウの問いに咲夜は内心、苦笑した。全く、キッパリとした質問だな。サブロウは自分を信用できないのだろう。
「どう言う事かしら?」
「お前が異世界の人間だと言う事は分かった・・・・・・だが何故、吸血鬼について行くようになった?」
「さぁね・・・・・・今となってもお嬢様と出会った頃の事が思い出せないわ・・・・・・。」
「・・・・・・お前の主の能力の“運命の能力”とやらはどんな能力なんだ?」
「そうね、お嬢様の能力は自分や相手の運命を読み取ったり、変えたりする事も出来るわ。」
「・・・・・・咲夜、もしかすると本当のお前はバンパイアハンターとやらで、その吸血鬼に記憶を奪われたのではないのか?」
「っ!・・・・・・な、何のことかしら・・・・・・?」
サブロウの言葉に咲夜は戸惑った。主と出会った頃は覚えていないと言ったが嘘だ。何故なら・・・・・・
「リンから聞いたが、お前の武器のナイフは銀だな?銀は西洋のモンスターの弱点らしく、吸血鬼も例外ではない・・・・・・。」
「・・・・・・私がお嬢様を殺そうとしたが返り討ちにされて、記憶を奪われて今に至る・・・・・・とでも?」
「1つの仮定だが、人外が人間を雇うと言うのは訳ありに聞こえたからな・・・・・・。」
「そうかもしれない・・・・・・けど、私がお嬢様の意思に従ったかもしれないわよ?」
「・・・・・・幻想郷か・・・・・・俺達の世界とは違って平和ながらもそれぞれ恐ろしい能力を持っているのだな・・・・・・。」
「それが暇なので異変を起こしている者もしょっちゅう出ているわよ。まぁ、お嬢様もその1人だけど・・・・・・。」
「そうか・・・・・・・咲夜、最後に言いたい事がある・・・・・・。」
「何・・・・・・?」
「・・・・・・お前が人の道を外れるのは勝手にしろ・・・・・・だが、人外になる時に他の者を巻き込むなよ・・・・・・。」
そう言い捨てて、サブロウは去った。その背を見送って咲夜は溜息をつく。
「・・・・・・人の道を捨てる時に他の者を巻き込むな・・・・・・か・・・・・・。」
そう呟き、咲夜は一時、テントに戻る事にした。捕まった小悪魔の無事を祈りながら・・・・・・



「・・・・・・何処だ、ここ・・・・・・!?」
一方、紫のスキマを潜り抜けて、外の世界を見た魔理沙達は絶句した。
何故ならそこは・・・・・・空飛ぶ基地みたいなものだったからだ・・・・・・そう、咲夜達が話していた移動基地だったのだ。
「・・・・・・困ったな・・・・・・どうしよう・・・・・・まさか、敵の本拠地が動いているなんて聞いてないぜ・・・・・・。」



続く



次回:「ネオアルファーズの助けを借りて、小悪魔救出の為に再びS2と戦う咲夜!だが流石は上級勇者、真の力を発揮して咲夜を苦しめる!その時、無垢の少女の心の叫びが彼女の過去を・・・そして力を呼び起こす!次回、『メイド・オブ・紅魔館』!」
どうも、ZRXです。
今回はメイドでお馴染の咲夜さんです。あと、オリキャラも多く出ます。
少し、咲夜さん視点が多いのですが、そこはご愛嬌でw
次回は、後篇へ続きます
ZRX
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コメント



0.300簡易評価
12.100名前が無い程度の能力削除
真の芸術とは如何に?
ギャグジャンルでは先生の作品がトップだと信じてやみません。ごめんなさい、SFは知識範囲外なのですうぬぬ
15.無評価名前が無い程度の能力削除
やるじゃん
16.無評価名前が無い程度の能力削除
自演乙
17.10名前が無い程度の能力削除
東方キャラよりオリキャラの方が多い気がしたww

そもそも東方でやる意味あるの?

いや、その前に他人に読ます気ある?
……うん、聞いてごめんね。無いよね。
18.無評価名前が無い程度の能力削除
帰れ
20.100名前が無い程度の能力削除
もうここまで来たら己の道を突き進め