Coolier - 新生・東方創想話

欠けた世界で想うモノ

2011/06/23 23:10:13
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リリリリリリ……

「ん……」
目覚ましの音が部屋に響く。
「んん……」
手を伸ばし、目ざましを止める。
「朝か……」
そっと体を起こし、足をベッドから下ろす。
今は大体7時くらいの筈だ。そろそろ来るかな……?

ポーン

『メリー、起きてるー?』
「はいはい。おはよう、蓮子」
声をかけると、扉の鍵が開く音が聞こえ、足音が近づいて来る。
「おはようメリー。機嫌は如何?」
「上々よ」
「ならよかった。さて、着替えましょうか。立てる?」
「ん」
倒れないように、気をつけながら立ち上がる。
やはり、目が見えないために毎回苦労する。


――ある日、私は光を失った。
突然の事に、私は恐怖状態に陥ってしまった。
誰かを呼ぼうにも電話がわからない。わかったとしても、どこにかけれるかわからなかった。
もし、蓮子がこの時来ていなかったら、私はどうしていたのだろうか?
ただ、完全に見えなくなったという訳でもなかった。
現では見えないが、幻想では世界が見える。
気付いた時の、喜びと悲しさは大きかった。
……そして、彼女の笑顔が見れなくなったのが、一番の悲しみだった。


「はい、おっけい」
「ありがとう。いつもごめんね」
「何言っているの。私達は二人で一人、秘封倶楽部でしょ?」
「そうね……」
その優しい言葉に、俯く。
「どうしたの?」
「もう、一緒にソラを視て、境界を視て、不思議を探す事が出来ないわね」
「……」
その言葉に、蓮子の手が止まる。
「私達は二人で一人だった。だからその一つが欠けてしまったからもう……」
「メリー……」
「私達、秘封倶楽部はもう、解散かしら?」
言ってはいけない事を、言ってしまった気がした。
「そんなこと……」
声が震えている。
「そんなことない!」
蓮子が叫ぶ。
「でも!もう私は何も見えない!世界が視えない!幻想の世界しか視る事が出来ない!」
「それでもいいじゃない!」
「よくないわ!見えないのが怖いの!」
「メリー!」
伸ばされ、体に触れた蓮子の手を弾く。
「やめて!どうせ蓮子だって、本当はこの眼が必要なだけだったんでしょう?もう視えなくなった私は必要ないんでしょ?」
「メリー、私は……」
はっと、気付く。また、彼女に酷い事を言ってしまった。
「ごめん、蓮子……。酷い事を言ってしまって」
「ううん、いいの」
俯いている私を、蓮子はそっと抱き締める。
「私はね、始めは貴女の眼に興味があって、貴女自身の事なんてなんとも思ってはいなかった。でもね? 貴女と一緒に、秘封倶楽部として活動している間に、そんな事どうでもよくなっていたの。
似たような、不思議な目を持つ貴女。私はね、ただ友達が、一緒に笑って傍にいてくれる人が欲しかっただけなのかもしれない」
体を離し、見つめ合う。
「私も、独りだったから」
見えないが、近くに顔があるのがわかる。
「だからメリー、私には貴女が必要だから」
段々と、近づいて来る。
「私もよ蓮子。今までも、そしてこれからも。ずっと……」


そっと、目を閉じて……

  私達は、二人で一人の

 二人の唇が重なり合って―――

  秘封倶楽部だから

そして、開く―――
蓮子の目が見えなくなるってのは沢山あってみたことがあるけどメリーの方は見た事がないし、聞かない。
だったら書けばいいじゃない。そんな事を思って書いた。
ひらいた瞳の先はそれぞれの御想像に任せます。

あ、最後の所はああなってるけど悪夢の連鎖とかないから。ないからね。
蒼電
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コメント



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5.80ラビィ・ソー削除
これで蓮子まで目が見えなくなってたらあまりに救いがないじゃありませんか。><

車椅子の未来宇宙って曲、私好きなんですよ。なのでこの二人を書く蒼電さんには期待してます!