Coolier - 新生・東方創想話

あなたと妹

2011/05/28 17:08:18
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「咲夜」
「はい、なんでしょう」

 名を呼べば一秒で出現する我が従者。
 そいつに向けて、私はふとした思いつきを口にした。

「あなた、私の妹にならない?」
「断ります」

 拒否された。

「いや、って、え、即答?」
「はい。吸血鬼になるのはお断りですわ」

 きっぱりとした口調で言う咲夜。
 私は慌てて弁明をする。

「いや何も、そういうガチシリアスな話じゃなくてね。単にそういうフリをしてみようってだけよ」
「ははあ、つまりは姉妹プレイをご所望なのですね」
「しばくぞ」

 威嚇をするも、咲夜は顔色ひとつ変えずにしれっとしている。
 少しは物怖じしろよ。

「でも、なんでまたいきなり妹なのですか?」
「ん、ただの気まぐれよ、気まぐれ」

 これは半分嘘で、半分本当。
 
 私の実の妹―――フランドールは、未だに思考や行動が読めないことが多々ある。
 昔に比べれば大分まともにコミュニケーションが取れるようにはなったが、まだまだ未解明の部分が多い。

 そこで、別の誰かに『妹』を演じてもらい、『妹』の一般的な行動パターンを把握しておくのも悪くはあるまい、と思ったのだ。

 ……まあ、あの妹が『一般的な行動パターン』に当てはまるのかどうかは甚だ疑問ではあるのだが。

「そうですか。まあ、別にいいですけど」

 咲夜はあっさりと承諾した。
 こいつ基本何も考えてないよな。

「じゃあ咲夜。早速始めて頂戴」
「はあ……そう言われましても、まず何をすれば?」
「何をすればって……」

 何をすればいいんだろう?

 よく考えたらよく分からない。
 そもそも、『妹』の一般的な行動パターンを把握しようとしている私が、『妹』の一般的な行動パターンなど知るはずもないわけで。

「……まあ、適当に妹っぽく振舞いなさい」
「はあ」

 結局こう言うしかなかった。

 咲夜はおほん、と軽く咳払いをすると、

「えーと、じゃあ…………“お姉様”」
「!?」

 いきなり爆弾をぶっぱした。

「ど……どうされましたか」
「え、いや……ごめん、なんでもないわ。続けて頂戴」
「はあ」
 
 ヤバい。
 今のはマジヤバかった。
 
 いつもの呼び方が少し変わっただけだというのに、なんだ今の核弾頭級の破壊力は……。

「……お姉様」
「ッ!? な、何かしら? 咲夜」

 落ち着け。
 落ち着け私。

 これはただの芝居なんだ。
 デモンストレーションなんだ。

「え、えっと……お、お紅茶でも、いかが?」
「お、おーけー。頂くわ、咲夜」

 なにこれ疲れる。
 しかも咲夜もなんだか顔が赤いし。

「はい、どうぞ。お姉様」
「あ、ありがとう。咲夜」

 咲夜の差し出したカップから、ダージリンの香りが漂い、鼻腔を刺激する。
 時を止めて用意しただろうに、咲夜の顔もまだほんのり赤い。

「…………」
「…………」

 テーブルに向かい合い、無言で紅茶を啜る私たち。
 あ、味が分からん。

「ね、ねぇ咲夜」
「な……なに? お姉様」
「えっと……さ、咲夜は私に、何かしてほしいことって、ある?」
「えっ」

 咲夜の顔が一層赤くなる。
 だ、だからこれは演技なんだって……!

「え、えと。して、ほしい、こと……」
「そう。妹として、姉である私にしてほしい、こと」

 そう。
 それが私の一番知りたいことなのだ。

 姉として、妹のあいつに一体何がしてやれるのか。
 何をしてやればいいのか。
 
 そこが未だによく分からないから、多分私はあいつとの距離を測りかねているのだと思う。

「じゃ、じゃあ……」
「うん」

 咲夜は空にしたカップをソーサーに置くと、目を私から逸らしながら言った。

「ひ、膝枕……してほしい、かな」
「ッ!?」

 い、今なんつった?
 ひざ……ひざまくら?

「…………」

 咲夜はよほど恥ずかしかったのか、目どころか顔そのものを横に逸らしている。
 しかしそのお蔭で、真っ赤に染まった耳たぶがよく見える。
 
「わ、わかった……わ」

 そう返事をするしかなかった。
 他でもない、『妹』の頼みなのだから。

 ……というか、一般的な『妹』は姉に膝枕を頼んだりするものなのか?

 そんな疑問はさておき、私はソファに移動すると、咲夜に向けて手招きした。

「……おいで。咲夜」
「……はい。お姉様」

 咲夜は言われるがままに来る。
 先に座った私の隣に腰を下ろすと、お伺いを立てるような眼差しで私を見た。

「い……いいわよ。咲夜」
「……はい。お姉様」

 そう言うや、咲夜はこてんと私の膝の上に頭を落とした。
 その僅かな重みと確かな温もりが、紛れもない咲夜を私に感じさせた。

「…………」
「…………」

 銀の髪から覗く、咲夜の耳たぶはまだ赤い。

「……お姉様」
「……なに? 咲夜」

 消え入りそうな、か細い声で咲夜は言った。

「……頭、なでてくれる?」
「……もちろんよ、咲夜」

 その銀を梳かすように、私はそっと頭を撫でた。

「……ぅん」

 咲夜の声が漏れる。
 とっても、気持ち良さそう。

「……お姉様」
「……なに? 咲夜」

 安堵に満ちた声で、咲夜は言った。

「……ずっと、こうしていてくれる?」
「……もちろんよ、咲夜」

 私は緩やかな所作で、咲夜の頭を撫で続けた。

「……お姉様」
「……なに? 咲夜」

 一瞬の沈黙の後、

「……ずっと、一緒にいてくれる?」
「……もちろんよ、咲夜」

 それは演技だったのか、本心だったのか。

 いずれにしたって、いずれでもいいことだ。





―――後日。


フラン「お姉様が膝枕してあげるとか言ってきたから何それきもいって言ったらガチ泣きされた」
まりまりさ
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コメント



0.3400簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
なんつー可愛い主従……

フランちゃんマジ最終鬼畜
4.90奇声を発する程度の能力削除
にやけるのが治まらない…そして後書きwww
7.100名前が無い程度の能力削除
一瞬、違う方向の「お姉様」になってしまうと
思った俺は負け組
8.100名前が無い程度の能力削除
そりゃそうだよね妹様、膝枕って姉妹がすることっていうか恋人とか夫婦がすることだもんね!
これだからレミ咲は・・・!!!
9.100名前が無い程度の能力削除
伝えられてよかったね咲夜さん

ちゃんと実行するお嬢様素直カワイイ
11.80名前が無い程度の能力削除
フランひどいなww
12.100名前が無い程度の能力削除
咲夜とレミリアだと、姉妹と書いてスールって読むのではw
可愛い主従だなあ。
14.90名前が無い程度の能力削除
いつも一緒にいるというのに姉妹プレイだとこんなにも初々しいのか…!
フランちゃんとは主従ごっこすればいいんじゃないかなぁ
16.10名前が無い程度の能力削除
あとがきで台無し。
24.100名無し程度の能力削除
ニヤニヤ
32.100名前が無い程度の能力削除
www
37.70ずわいがに削除
うん、まぁ、何て言うのかな……リア充キュッとしてドカーン!!
39.100名前が無い程度の能力削除
妹様貴女って娘は…
42.100名前が無い程度の能力削除
いいぞもっとやってください
47.90名前が無い程度の能力削除
姉妹プレイとは新しいですね。今回も楽しませていただきました
56.80名前が無い程度の能力削除
よし、次は咲夜(姉)と魔理沙(妹)で頼みます
62.90名前がない程度の能力削除
でも妹様は姉の膝の上で読書してたよなw
65.100名前が無い程度の能力削除
フランちゃん空気読んでえええええ!!!
87.90名前が無い程度の能力削除
×一般的な妹の行動パターン

⚪︎お嬢様に甘える機会を得た咲夜さんの、個人的な欲求

レミ咲かわいい……!