Coolier - 新生・東方創想話

紅魔館な日々。「フランと日傘」

2011/05/22 09:19:12
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 紅魔館。湖の横にある館である。
 
 異変の中心になった事もあるが、基本的には平和である。何故なら、館の主であるレミリア・スカーレットが強大な力を持っているからだ。

 そのため、この屋敷を狙うような妖怪は居ないし、もちろん人間も怖がって近づいたりはしない。一部、例外も存在するが・・・


 そんな平和な日々の一部である。




   ◇   ◇   ◇   ◇

   紅魔館な日々。

        「フランと日傘」


   ◇   ◇   ◇   ◇




 紅魔館の地下。主の妹フランドールの住まいである。制御しきれていない力を持つ彼女は、幽閉されてきた。

 だが、それももう過去の話。博麗の巫女との戦いから彼女は幽閉を解かれ、ある程度自由の身となったのだ。未だに自分の能力を制御できるかという問題はあるものの、見守っていこうというスタンスに切り替わったからだ。
 レミリア自身、妹のフランドールを愛している。ただ、過保護なだけだ。しかし、本人にとってみればはた迷惑な話だろう。幽閉されて、世界とは隔絶されていたのだから。
 そう生きてきた彼女にとっては、それが文句を言うに値するかも分からないので、問題にならなかっただけなのだ。


 彼女がまだ、館の中の世界しか知らない頃のお話。




 館の中を歩き回るのも飽きた頃、窓から外を見た。薄暗く、月の明かりしか無い。生き物の気配もほとんど無く、ひっそりと静まり返っている。何か面白そうな物も無さそうだ。
 これが当時、彼女の持った世界への印象である。吸血鬼という種族の特性上、体内時計は夜型なのだ。幽閉されていた時でも、起きている時間は夜中であった。
 そして、夜という時間は、生物は寝ているか、こそこそ動き回るかのどちらかなので無理も無い。

「はー・・・退屈。何か面白いことないかなー・・・」

 だが、そう上手くいかないのは世の常。図書館の本は、中身が良く分からない物ばかりなので、読書という選択肢は消える。姉に相手をしてもらうのも微妙な感じがする。咲夜は、なんかつまんないし。門番は、ビクビクするから嫌いだ。

 なんという退屈な世界なんだろう。部屋に居ても外に出ても何も無い。もう、いっその事寝てしまおうかと自室へ戻った。




 フランドールは自室に戻り、咲夜からもらったパズルで遊んでいた、知恵の輪というらしい。

「んー・・・」

 カチャカチャと知恵の輪の音と、彼女の悩む音だけが支配する空間に

「失礼します。」

 ノックと扉の開く音が介入する。パズルを持ってきた張本人、十六夜咲夜だった。

「・・・挑戦中でしたか、どうですか?」

 悪戦苦闘している彼女を見て、微笑を浮かべながら尋ねる。全然わかんない。とベッドに身を投げる。
 その様子を見て、ふふ。と微笑を浮かべる咲夜。貸して頂けますか?と言うので、ほおり投げて渡す。

「これ、曲げちゃ駄目って言うから・・・そんなの無理だよ。」
「最初に渡した物を分解したときは、説明不足でしたわ。いいですか、これはこうして・・・ほら、外れた。」

 え?と咲夜の手元を見ると、見事に2つに分かれていた。不思議だ。咲夜が手元を動かすと、また元に戻る。

「こことここの太さ、違うのがお分かりになりますか?」
「ここ?」
「そうです、この隙間を通るか通らないかの微妙な違いなんですよ。だから、こう回して・・・細い方を持ってくると・・・ほら、取れた。」

 咲夜が解説する。貸して貸してと知恵の輪を受け取り、実践してみると外れた。不思議だ。ちょっと楽しい。

「他にもまだありますので、今度お持ちしましょうか?」

 少し悩んだが、お願い。と短く答える。そういえば咲夜は何の為に来たのだろうか。

「え?いえ、自室に戻っていくのを見かけたので、お茶をお持ちしました。お飲みになりますか?」

 頷くと咲夜がお茶の準備を始める。それを眺めながら話しかける。

「退屈なんだけど、何か面白いこと無いの?」
「面白い物はご自分で見つけてください。その方が、面白いですよ。」
「咲夜のいじわる。」
「いえいえ、他の人から教えられた面白さは、自分で見つけた面白さには敵わない物です。」

 どうぞ、とカップを置く。飲んでみると甘かった。りんごの味が混じっている。アップルティーを出すのは初めてでしたねと口にする。今度からこれが良いと告げると、分かりましたと答えて咲夜は部屋を出ていった。

「自分で・・・見つけるねぇ・・・」

 そんな物見つけられるのだろうか、自分に。






「あれ?寝ちゃってた・・・」

 あれから、解けた知恵の輪をいじっていたのだが、寝てしまったようだ。時間は分からない。もぞもぞとベットから降りて上に向かう。

 廊下に出ると、カーテンが明るい。どうやら、太陽が出ている時間のようだ。寝起きでモヤモヤする思考のなか、なんとなしにカーテンをめくって外を見る。
 瞬間的に陽の光が目に飛び込んできた。

「うっ・・・」

 直接太陽を見たわけではないのだが、目が焼けるようだった。地下で生活している彼女は、姉のレミリアより明るいものに慣れていない。
 目を細めて遠くを見ると、空は青く、白い雲があり、そして緑の山や森が見えた。

「うわぁ・・・凄い。」

 日中に起きていたことはあるが、外を見たことが無かった彼女は感嘆の声を上げる。こんなにも色鮮やかな世界を見たのは生まれて初めてだった。
 本や絵で外の世界を見たことはある。しかし、これは想像以上に色がたくさんあって、広かったのだ。夜に見た世界とは全然違う。生き生きとした世界がそこにあった。

 しかし、自分は吸血鬼。日光に直接当たると焼けてしまうのが残念だったが、姉が以前言っていたのを思い出す、日傘を差していれば出歩けると。

「日傘・・・どこにあるんだろ?」

 そう呟いて彼女は歩き出す。






 外の世界に興味を持った瞬間だった。












紅魔館な日々。 「フランと日傘」 おわり
どうも、紅魔館な日々。3作目です。
今回は短いお話。まぁ、よくあるネタですけどね。
今回も単品でも問題ありません。シリーズ読みたい方は、私の名前で検索してくださいw

そもそも幽閉されて外を知らない少女が、外に興味を持つには、それなりの理由がいるはずです。
弾幕ごっこをきっかけにしている話は良く見るので、別の切り口からと思って書きました。
まぁ、似たような話はあるんでしょうけどねw
最後の歩き出すに色々な意味を持たせてあります。行動に移すため、世界を見るため、新しい人生のため。歩き出したんです。

それと、お出かけ描写は書きません。
いや、書いていたんですけど切りました。蛇足はいらねぇんですぜw


1作目と2作目で書いた中のスケート話は書いては消してを繰り返しています。
なんか、これはシリーズ最後の話にした方が良いかなぁなんて思うんですよ?w

紅魔館な日々。シリーズ

追記。誤字の指摘ありがとうございます。PCの変換がおかしくなって来つつあります・・・PCの辞書が幻想郷ですね
まなみ
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コメント



0.480簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
良かったです。
短くまとまっていて、とても読みやすいです。
3.80奇声を発する程度の能力削除
これから色んなことを見て学んでいくんでしょうね
4.100薬漬削除
続きを想像するのがたのしいです。
8.80名前が無い程度の能力削除
良い。良いですね。
フランドールの外に興味を持った瞬間が自然で。

誤字報告 博霊→博麗
10.80名前が無い程度の能力削除
うん