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対談【霧雨魔理沙×因幡てゐ】  ~うそをつくということ~

2011/05/14 23:40:55
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コラム・人間ってなあに?

対談【霧雨魔理沙×因幡てゐ】 ~うそをつくということ~

 うそをつくことはいけない、と人間はいう。それは、誠実であれ、実直であれという言葉の裏返しだ。誠実であり続けることは難しく、実直であり続けることはとても疲れる。そしてその難しさと疲労を乗り越えた分だけ、人間は成長するのだ、と。
 しかし反面、人間を強くする嘘もまた確実に存在する。
 例えば、人間は、神を崇めば救われるという。神は決して個人を救ったりはしない(なお、ここで言う『神』とは山にもおわす『神霊』や『八百万の神』のことではなく、信仰が足りずに未だ完全なる人間の空想に過ぎないものを指す)。それにも関らず、人は崇めることをやめない。神に限らず、正体のつかめないものを崇めることをやめない。縁起物、ジンクス、おまじない。なんでも良いが、人間はそれ自体に意味がないものを崇めて、信じられない力を発揮したりする。しかしそれらはもちろんその人間の潜在能力が発現しただけに過ぎず、崇めたものが直接作用したわけではない。それでも、人は崇めたものに感謝を怠らない。つまり、自分に『うそ』をつき続けて強くなる人間もいるということだ。
 さて、当コラムは極めて珍妙で不安定な『人間』という存在を、各回のテーマに長けた人間と妖怪をお呼びし、対談していただくという形で人間の真の姿を探ってきているわけだが、今回はこの、人間を弱くも強くもするという『うそ』が一体どんなものなのか、ということにスポットを当てることにしたいと思う。
 そこで、人間側としてお呼びしたのは、あのヤマザナドゥさまに、昔話よろしく舌を抜かれかけたという筋金入りの大嘘つき、霧雨魔理沙氏。そして、妖怪側としてお呼びしたのは、同じくあのヤマザナドゥさまに裁きの前に皮を剥かれると予言された、『兎詐欺』の異名を持つ因幡てゐ氏だ。
 それでは、嘘つき界の大御所二人による、濃淡織り交ぜた前衛芸術的で不愉快極まる『うそ』の数々を、どうか寛大な心で楽しんでいただきたい。

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魔理沙:えー、こんにちは。
てゐ:こんにちは!
魔理沙:まさか本当にてゐに会えるとは思わなかったぜ。もう用事は済んだし帰っていいか?
てゐ:え、わざわざ私に会いにきてくれたんですか? うれしいなぁ。
――なるほど、さすが大嘘つきですね。さっそく挨拶代わりに嘘の応酬ですか?
魔理沙:いや、私は本心から言ってるわけだが。ラッキーを分けてもらいたかっただけだし。
てゐ:私も久々に魔理沙さんに会えてとても嬉しいです!
魔理沙:というか、対談なのに文まで出しゃばっていいのかよ?
――いえ、基本的には口をはさみません。ただ、いきなり企画終了してしまいそうだったので思わず。とりあえず、何でもいいので尺を稼いでください。
魔理沙:ふーん。そう言われてもなぁ。別に話題なんてないぜ?
てゐ:せっかく自由におしゃべりしていいって言われてるんですから、おしゃべりしましょうよ!
魔理沙:どうでもいいけど、新聞に載るからって肩肘はるなよ。お前、ちょっと変な奴になってるぜ?
てゐ:あ、そう思います? 実はですねぇ、鈴仙からひたすらに良い子を演じ続けなさいって言われちゃいまして。私がそんなことしても、うさんくさいだけなのにね!
魔理沙:お、意外と自分のことわかってるんだな。
てゐ:いやいや、私自身が嘘をついたことなんてないからこそ、よ? 嘘をついたことがない私が演技をしようとしても大根になるに決まってるじゃない? でも、今回私たちはなぜか知らないけど嘘つきとして呼ばれてるんだから、ある程度は嘘つかないといけないのかなって。演技とはいえ、嘘をつくなんてとても心が痛むけど、それも記事を面白くするためには必要なことなのかなって。そう思ったら、嘘っていうのも一概に否定していいものじゃないと思ったの。まぁ、それでも私の嘘はこの対談の中だけで、後にも先にも金輪際天地神明に誓って実生活の中で嘘をつくことなんてまずありえないけどね。魔理沙だってそうでしょ?
魔理沙:私? 私は私だ。私はいつだって私であるからして、嘘なんてつかないし、それはこの対談の中でも変わらない。正直に言って、こんな対談は不本意だったんだ。しかし、私は考えた。私が嘘つきでないことをこの対談の中で証明することができれば、少なくとも読者の心の中で、霧雨魔理沙という人間は純然たる正直者という正しい形で生き続けると!
てゐ:あーなるほど。そう来たか。
魔理沙:そう来たかってなんだよ。
てゐ:いえいえ、でもそれは難しいんじゃない? 閻魔様が黒といったら赤でも青でも緑でも、もちろん白でも黒になっちゃうもの。そして蒙昧なる大衆はそういうのを信じてしまうんですよ。もちろん、この対談を読んでくださってる方々は、『閻魔様が絶対に正しい』なんてシーラカンスでステレオタイプな考えに囚われているわ・け・が・ないんだけどね。私は心の底からそう信じていたから、今回の対談依頼を受けることにしたの。
魔理沙:まぁそうだな。叡智ある文々。新聞の読者諸君が『閻魔様が絶対に正しい』なんてもはやノスタルジックですらあるイデオロギーに囚われているわ・け・が・ない。私だって信じてるさ。しかし、もしかしたら愛すべき読者のなかには、四季映姫・ヤマザナドゥのことが好きで好きで好きでしょうがないという者もいるかもしれない。そういう者達はやはり、閻魔様が間違えるなんてありえないと思ってしまっても仕方がないだろう。だから、私はあえて、閻魔様でも間違うことがある、ということを改めて証明しておきたい。
てゐ:イデオロギーの意味わかってる?
魔理沙:読者のセンスを試したんだ。
てゐ:でもまぁそうね。たしかにそのような方が読者のなかにいないとは言いきれないかも。でも、何かあるの? そうは言っても閻魔様なわけで、なかなか槍玉に上げられるようなことはないんじゃないの?
魔理沙:そうだなぁ、まず一番の間違いは、私達を嘘つき呼ばわりしていることだな。
てゐ:そんな、『1+1=2』を証明するのに、2になるから1+1=2なんですー! みたいなゴリ押しで聡明な読者さんを誤魔化すことなんてできないよう。
魔理沙:誤魔化してなんかない。誤魔化すなんて、嘘をつくのと同じくらい私にはできないことだぜ。わかるか? しないんじゃない、できないんだ。常人は嘘をついたり誤魔化したりすると、後から罪悪感で心が押しつぶされてしまうのがわかるから、しないらしい。まぁ、自分の首を絞めるだけってのもあるらしいけどな。でも私レベルになると、もう嘘をつくとか誤魔化すとか、それがどういうことなのか、概念からして不明なんだ。つまりできない。とはいえ、根拠がそれだけじゃ悪意か誤解か、誤魔化しと捕らえられることがあるというのもわかるから、他の例も挙げておこう。・・・・・・そう、映姫は少し人を見る目がなさすぎる。
てゐ:だめよ、魔理沙。人の口癖をマネて笑いを取るのが許されるのは、有名人のモノマネをする芸人さんだけなんだから。閻魔さまは有名人でも、あなたは芸人じゃないでしょ? ・・・・・・でも、『人を見る目がない』って、閻魔様として致命的じゃない? そんなことあるわけがないわ。それこそ嘘じゃない・・・・・・と、本当はそう言いたいんだけど、残念ながら、私にも魔理沙の言いたいことがわかっちゃった。他人のアラを探すなんて私にとっては嘘をつく以上に苦しくて、もう心臓がしめつけられてしまう思いだけど、でも、真実が明かされることを、司法の頂点たる閻魔様が否定なさるはずもないものね。わかった、今回は魔理沙につきあってあげる。魔理沙が言いたいのはあの死神のことね?
魔理沙:そうだとも。彼女の唯一と言っていい部下、まぁ名前は伏せるが、これがかなりのこまっちゃん・・・・・・いやいやこまったちゃんなんだ。まぁ、その死神自身は個人的に嫌いじゃないし、それをどうこう言うつもりもない。ただ、私が映姫に初めて会ったとき、あいつなんて言ったと思う? 『小町ったら、もっと真面目な娘だと思ったのに・・・・・・』って言ったんだ。信じられるか?
てゐ:それは・・・・・・センセーショナルが起こっちゃうよ。
魔理沙:ああ、調子に乗りすぎている私達に対してな。
てゐ:それは言わない約束でしょ!? ま、まぁいいわ。そんな・・・・・・閻魔さまと言う以上、その相手を見るだけで過去の行いも性格も全てわかるはずでしょう?
魔理沙:いや、私だってそう信じたいさ! でも、映姫にできるのは白黒はっきりつけること。それだけなんだ。そして白黒が決まる根拠は映姫の印象だけであり、その真偽は定かでない。いや、むしろ偽の方が多いだろう。なんせ、第一印象で全てが決まってしまうんだからな。
てゐ:そんな・・・・・・
魔理沙:でも・・・・・・それは仕方がないことなんだ。映姫がザナドゥのヤマである限り、私がいつか映姫の世話になることは避けられない。そのへんはもう諦めがついてるよ。ただ、私はまだ・・・・・・私はまだ死んだ覚えはない。それなのに、映姫のささいな一言で、嘘つき呼ばわりされて、こんな不名誉な対談をセッティングされることになってしまうのは、どう考えても不条理だろう! 
てゐ:魔理沙・・・・・・泣かないで・・・・・・。
魔理沙:いや、泣いてはないけどな。嘘をつくんじゃない。
てゐ:これは冗談というやつよ。だけど、これで納得がいったわ。なんで私が閻魔様に嘘つき呼ばわりされてしまったのか・・・・・・全ては、第一印象が悪かったからなのね・・・・・・。
魔理沙:ああ、たった・・・・・・たったそれだけのことだったんだ。とんだ職権乱用だ。――なぁ、文、大した話はできなかったけど、こんなもんでいいか? なんていうか、これ以上何かを喋る気にはなれないんだ。
――いいんですか? まだ四季映姫・ヤマザナドゥ様のことをこきおろそうとしただけにしか聞こえませんでしたが。
魔理沙:ああ、いいんだ。こんな対談で、私が正直者ということを証明するなんて、どだい無理な話だったんだよ。
てゐ:そうね・・・・・・うん、私もこれからは風評被害に負けずに生きていく勇気がわいてきたわ。本当はね、この対談依頼が来た時に、いっそ嘘つきとして生まれ変わろうかとすら考えてたの。ううん、むしろその覚悟を持ってここに来た。でも、相手が魔理沙でよかったわ。
魔理沙:はは、私達にそんな器用なことができるわけがないだろう? 別に相手が私じゃなくたって、てゐなら同じ結論が出てたはずだ。お互いに、自分らしく生きていくしかない。ま、頑張って生きていこうぜ。
てゐ:ええ!

こうして、二人は固い握手と共に、この対談の幕を閉じることとなった。

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(対談後記)
 いかがだっただろうか。
 読者の中には何が何やらわからない、という方もいるかもしれない。
 そう、聞き手であった私自身、彼女達の話を聞いていると、何が正しくて何が間違いなのか、わからなくなった部分がある。
 無論、彼女達がいちいち挟んできた『胸が痛くなる』だの『心苦しい』だの言葉は明らかな『うそ』であろう。
 だが、最終的に彼女達はきわめて自然に固い握手を結んだのである。それが、新聞に載るという事実を前にしての単なるポーズだった可能性は高いが、少なくとも、霧雨魔理沙氏は何かをやりきったという顔をしていた。あれだけ『うそ』にまみれた会話だったのにも関らず、である。
 このことから、人間にとって、『うそ』とは積み重ねると自身のなかでのみ『事実』となってしまうということが予想される。
 そして、自分の中の『事実』に酔いしれ堕落したものは単なるうすっぺらい口先だけの人間に、現実に昇華させようとしたものは比類なき力を発揮するのだろう。
 霧雨魔理沙氏はこの対談の中では明らかに前者であるが、彼女のこれまでの経歴をみれば、後者にもなりうるということは想像に難くない。人間とはやはり、良くも悪くも不安定なのである。
 人間という存在の一面を、我々はまたひとつ知ることができたのではないだろうか。
                                                                      (記-射命丸 文)

~以下、清く正しい射命丸より善意の追記~

※この記事を刊行するにあたり、話題に上った四季映姫・ヤマザナドゥ様(ついでに小野塚小町氏)からの許可は命がけで取ってあります。安心してお読みください。
※じきに、四季映姫・ヤマザナドゥ様から直接的に罰が下されることが予想されます。しばらくの期間は霧雨魔理沙氏、因幡てゐ氏の両名には近づかない方が良いでしょう。
魔理沙もてゐも映姫様も大好きウサ。

というのは嘘で、正直てゐに関しては、あんまり自分の中でイメージが固まりきらないまま書き始めてしまい、自分の中では中途半端になってしまった感じです。
大好きなキャラは勝手に喋ってくれるんですが、好きなキャラではそうもいかず、ぐぬぬと言ったところです。まぁ、アイディア先行で書くからそうなるんでしょうけども(山がない・短い等も含めて)。精進します。

色々アレですが、基本的にはエンターテイメントのつもりで書いたので、少しでも面白いと感じていただければうれしいです。
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コメント



0.210簡易評価
1.60名前が無い程度の能力削除
やっぱり山が欲しいかもね
2.80アジサイ削除
ザナドゥなヤマはあったけども。
しかし、雑誌の対談文はこんな感じだと思います。記者側からの話のフリがもう少しあってもいいかもしれませんが。
魔理沙とてゐの白々しい感じは十分伝わりました。