Coolier - 新生・東方創想話

悪夢は続く

2011/04/29 15:14:28
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 変化が無いというのは退屈なものだ。変わらない事は素晴らしい、なんて言う輩がいるが私には一生理解出来ないだろう。起きて、食べて、働いて、寝る。何も変わらない日常など、暇すぎて死んでしまう。……問題は、今まさにそんな状態が続いてしまっているという事だ。寝る前にベッドの上でこんな事を考えてしまうほど、退屈な日が続いてしまっていた。
 こうなったらまた何か大きい事件でも起こして無理にでもこの日常を――
「壊してみせる!」
「何をですか?」
「おわっ!?」
 後ろからいきなり返事をされてしまっては、思わず変な声が出てしまってもしょうがないだろう。声のした方へ振り向いて見ると、瀟洒で完璧な従者の心配そうな顔が見えた。
「いきなり叫んだかと思えば、今度は急に悲鳴を上げられるなんて……。なにかご不満な事でもあったのですか?」
「……半分はあんたのせいよ。あなたもいつも通りね」
「? はい、いつもと変わらず元気ですよ。それより、いきなりどうしたのですか?大きい声なんてお出しになって」
「ちょっとね。まあ、心配されるような事では無いから気にしないでちょうだい」
「それならば良いのですが……無理だけはなさらないようにしてくださいね?」
 無理する為に生きてると言っても過言ではない私に無理するな、なんてそれこそ無理な注文だ。言い返してやっても良かったのだが、眠気が頭の中をじわじわと支配してきているので、適当に切り上げる事にする。
「さて、どうかしら。……時間も良い頃だし、そろそろ寝るわ。後は頼んだわよ」
「承知しました。では、お休……さいませ。良い…を」
 彼女の最期の声が聞こえる前に、私の意識は……あれ?





 眠りに入ったと同時に目が覚めるというのは奇妙な感覚だった。眠りについたのは夢の中での出来事だったわけだが、それでもだ。
 それにしても寝覚めが悪い。外はまだ明るく、私を焼き殺すことの出来る太陽が偉そうにさんさんと輝いていた。こんな変な時間に起きてしまったというのも寝覚めの悪い理由なのだろうが、どうやらそのせいだけではない。何故か頭の中が霧がかったようにモヤモヤしている。……多分、先程まで見ていた夢のせいだろう。
 最期。夢の中の私は、就寝の挨拶を最期の言葉だと認識していた。咲夜はまだ健在なはずなのに、何故?もしかして今この時に?
「咲夜ー!」
「どうされました?」
 ……所詮あれは夢だったというわけか。たかだか夢ごときで心配になるなんて、私もまだまだ甘いようだ。
「なんでもないわ。ちょっと呼んでみただけよ」
 何事も無いのであればそれでいい。そんな変化は望んでいない。
「そうですか?用事があれば遠慮なく、なんなりとおっしゃってくださいね」
「ええ、いつでもどこでもどんな用事でも呼んであげるから、その時もちゃんと今みたいに駆けつけなさいよ?」
「もちろんです。世界の端から端でも一瞬で駆けつけさせていただきます!」
「当たり前よ。それじゃ、仕事に戻っていいわよ」
「かしこまりました。では――」
「ちょっと待って、咲夜。……咲夜はずっと私と一緒よね?」
「え? 当たり前では無いですか。死ぬまで精一杯、お供させていただきます」
「……そう。今度こそ行っていいわよ、変なこと聞いたわね」
「いえいえ、お気になさらず。それではあらためて失礼します」

 ゆっくりと閉じられた扉を見つめながら、咲夜の返事を繰り返し反芻する。あの夢のせいで不安になってしまったのだろうか、「死ぬまで」というなにげない言葉に引っかかってしまった。
 死ぬまでという事は、死んだらもうそれっきりだということだ。当たり前の事だが、一番重要な事でもある。
 咲夜には吸血鬼にならないかと何度も誘った。人間ではなく吸血鬼として生きるのであれば、人間など比にならないぐらい長く生きていけると何度も言った。
 しかし、咲夜は決して首を縦に振ることは無かった。私は人間のままだからこそ私なのだと、誘った回数と同じかそれ以上の回数、何度も主張された。最初は何故断るのか理解できなかった。 いや……もしかすると理解したくないだけかも知れない。理解してしまえばそれを認めてしまうことになり、認めてしまえばそれは決定的な事実となり、そして、決定的な事実は不変な運命へと変わる。個人が強く願うほど、その運命は強固になっていく。私の能力を持ってしても変えられないぐらいに。
 多分私自身も薄々は気付いてるはずだ、何故咲夜が拒むのか。……でも、本人の口からはっきりと告げられるまでは、胸の奥深くに閉じ込めておこう。それが咲夜の運命に対して私の出来る精一杯の抵抗なのだから。

 さて、変な時間に起きてしまったせいでかなり眠たくなってきた。眠い時に色々考えてもしかたないし、さっさと寝る事にしよう。またあの変な夢を見ることの無いように祈りながら……。





 おかしな夢は見なかったのに、目が覚めてすぐの私を襲ったのは、とても強い焦燥感だった。
 何故今日はこんなにも胸が苦しくなるのだろうか? あの夢だってたかが夢のはずだ。こんなに不安を掻き立てられるような物でもないだろう。
 そもそもあれは本当に夢?今まではどんなに悪い夢を見ても、こんなに後を引いたことはなかった。呪いの類か、それに類似する物の可能性もある。
 ……寝覚めの頭で考えても仕方ない。とりあえず紅茶でも飲みながら、ゆっくり考えるとしよう。
「咲夜ー、紅茶持ってきてー」
 すると、魔法でもかけたかのようにティーセットの乗ったテーブルが目の前に……現れない。
「……咲夜ー」
 再度名前を口に出すが、反応は無い。呼んでも来ないという事は、単純に考えると、私の下に来れない状況下にあるという事だろう。
 でもそれはありえない。咲夜は私の大体の起床時間を把握しているし、私が起きてすぐに紅茶を頼むのも知っている。主が頼み事をするとわかっているのに別件に掛かり切りになりすっぽかしてしまうなんて愚行、咲夜がするはずない。
 では何故来ないのか―その理由を考える前に、私の体は勝手に動いていた。




 こんなに綺麗な月の夜に、何故私がわざわざ息を切らさなければならなかったのだろう?咲夜の事が心配だったから?
 ならば私が息を切らしたのは無駄な事だった。咲夜はもう……

「遅くなってしまい申し訳ありません、お嬢様」

 私の目の前でピンピンしてるからだ。




「少し驚いたわ。来てみたらいきなり血溜まりだったから」
 竹林に着いた私の目に入って来た光景は凄惨極まりないもので、地面は鮮血に濡れ、竹は真っ二つに叩き割られ無造作に転がっていた。野獣が側で転がっていなければ危うく卒倒していたかも知れない。
「まあ、咲夜がこんなところで死ぬわけないわね」
「お嬢様を残していくわけにはなりませんしね。それにしても、よく私が居る場所がわかりましたね」
「……ちょっとね。昔にもこんな事があったのよ」
 忘れていたかったのに。あのおかしな夢のせいで、全部思い出してしまった。
 正確に言えば夢では無かったわけだが。
「咲夜。もし、次に目が覚めた時人間じゃなくなってたらどうする?」
「……急な質問ですね」
 自分でも急だと思う。しかし、どうしても聞いて置きたかった。
「私が急なのは今に始まった事じゃないでしょう? ……そうね、ついでに急な話でもしようか。ゆっくり帰りながら」
 館へ足を向かわせるのと同時に、私の口は勝手に喋りだしていた。誰かに語りたくてしかたなかったのだろう、ずっと胸の中にしまっていた事だったから。
「昔、従者を雇っててね。あなたとよく似てたけど、あなたと全く違ったわ。その子は何の能力も持ってなかった」
「何故そのような方を?」
「ただの好奇心よ。人を恐怖させるのが仕事のような吸血鬼に、わざわざ雇って下さいなんて言いにくる人間がどんなやつなのか興味が沸いたの」
「……確かに似てるかもしれませんね」
「そうでしょう?少し変わってるところや、何でもそつなくこなそうとするところなんか本当にそっくりだったわ。ただ、普通の人間だったってだけ。どんなに仕事が出来ても、能力が無いのは致命的すぎた。普通の人間にはこの幻想郷は生きにくい、普通じゃない危険がありすぎる」
「……」
「その日が何の変哲もない、ただ経過していくのを待つだけの退屈な日だったら彼女はまだ長生き出来たんでしょうね。私に仕え始めた日なんてわざわざ覚えてなくても良いのに……わざわざ危険な竹林へ、珍しい花などとりにいかなくてもいいのに」
「……お嬢様」
「私の能力もちっぽけな物だわ。自分の意志で使えない癖に、なにが運命を操る程度の能力だ。それでいて勝手に周りの運命を歪めてしまう。あの子と出会った日に私の能力が無ければ、あんな事には――」
「レミリアお嬢様!」
 半ば怒ったような声に驚き、話しを止めてしまう。いつの間にか俯いていた顔を上げ、咲夜に視線を合わせると、出した声とは全く正反対な表情をしている事に気付いた。
「怒鳴ってしまい申し訳ありません。ですが、あまりお嘆きにならないで下さい。今のお嬢様には私がついてます」
「そうね、私にはもうあなたがいるわ。今だけね。わかる? あなたはこの瞬間だけしかいないじゃないか!」
「おっしゃる通り、私が側に入れるのはお嬢様にとっては一瞬に等しいでしょう。ですが、私はお嬢様からは消えてなくなりません。現に、お嬢様の記憶には前の従者様の記憶が残っているではないですか」
「……そんなの、人間側だから言えるんだ」
「ええ、そうです。ただの一人間の浅はかな考えに過ぎません。しかしそんな愚かな人間だからこそ、胸をはってお嬢様に一生を捧げると誓うことが出来るのです。一瞬で消え去ってしまうからこそ、特別な一日でも特別でない一日でも一生懸命に駆け抜ける事が出来るのです。そんな、脆く儚い人間である事に私は誇りを持っています」
「私の命令を蹴ってでも守りたい誇り?」
「この誇りが消えてしまえば私は私では無くなってしまいます。ちゃんと人間である自分のまま、お嬢様のそばにいたいのです。少し矛盾してしまいますが、お嬢様の申し付けを死ぬまで聞き続ける為にも、これだけは譲れません」
「……なんなのよ、ずるいじゃない。そんなの」
 咲夜はいつもそうだ。言い合いになると私に反論の余地を与えてくれない。いつもいつもいつも……。
「お嬢様、大丈夫ですよ。お泣きにならないで下さい」
 だから私は理不尽に怒る。こうでもしていないと、喉から泣き声しかでてこないだろうから。
「なによ!全然大丈夫じゃないわ。私はあなたと一緒に居たいだけなの!それなのにねぇ……」
 こうでもしていないと、大事な咲夜を壊してしまうかも知れないから。



 ――ベッドに転がりながら、今日あった事を一通り思い返してみる。
 私は夢の中で退屈で無い日々を願って、それは早速叶う事になった。でも、それは私が望んだ類の刺激では無く、下手をすれば大事なものを失くしてしまうような、そんな出来事だった。
 退屈と言うのは本当に悪いことなのだろうか? 今まで私は自分の中のそれを敵だと思い込んでいたが、付き合い方さえ上手くすれば案外悪い物ではないのかも知れない。
吸血鬼と言う立場上、退屈でも構わないじゃないか、なんて発言は公にはできないが、この事については少し考えてみる必要がありそうだ。

 こんなことを考えてしまうのも、全部咲夜のせいだ。咲夜が全て受け入れてくれるなら、今夜はもやもやせずにぐっすり眠れたのに。
 ……私の愛しい咲夜。私はあなたを壊さずにいられるかしら?
 ――ベッドに転がりながら、今日あった事を一通り思い返してみる。
 私は夢の中でお嬢様と触れ合える事を願って、それは早速叶う事になった。でも、それは私が望んだ類の刺激では無く、下手をすれば大事なものを失くしてしまうような、そんな出来事だった。
 ロリコンと言うのは本当に悪いことなのだろうか? 今まで私は自分の中のそれを敵だと思い込んでいたが、付き合い方さえ上手くすれば案外悪い物ではないのかも知れない。
従者と言う立場上、ロリコンでも構わないじゃないか、なんて発言は公にはできないが、この事については少し考えてみる必要がありそうだ。

 こんなことを考えてしまうのも、全部お嬢様のせいだ。お嬢様が全て受け入れてくれるなら、今夜はもやもやせずにぐっすり眠れたのに。
 ……私の愛しいお嬢様。私はあなたを壊さずにいられるかしら?

―――

読んでいただきありがとうございました。
サブレ
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コメント



0.610簡易評価
1.無評価名前が無い程度の能力削除
別に貴女の事は呼んではいません。
作品は今から読みます。
2.70名前が無い程度の能力削除
「なんでもないわ。ちょっと呼んでみただけよ。」
 何事も無いのであればそれでいい。そんな変化は望んでいない。
「そうですか?用事があれば遠慮なく、なんなりとおっしゃってくださいね。」
「ええ、いつでもどこでもどんな用事でも呼んであげるから、その時もちゃんと今みたいに駆けつけなさいよ?」

「。」がついてたりついてなかったり。

話は面白かった
3.90奇声を発する程度の能力削除
おい後書きwwwしんみり感台無しだよww
5.80名無し程度の能力削除
咲夜さん…まぁそれぐらいじゃないとやっていけないか
7.80名前が無い程度の能力削除
瀟洒に全部ひっくり返していきやがったw
14.80名前が無い程度の能力削除
己のアイデンティティーについて悩み悶々としている後書きの咲夜さんに強い共感を覚えます。
ロリコンだっていいじゃない。
15.無評価サブレ削除
申し訳ありません、指摘していただけた箇所を訂正いたしました。
もし私の作品をまた読んでいただけるなら次こそ気をつけますので、またよろしくお願いします。

それと、感想のコメントありがとうございます。次への励みにさせていただきます。
16.70Admiral削除
まさか前の従者はレミリアが…?
オソロシス。
2人の未来はいかに?

後書きは「混ぜるな危険」という感じがしてちょっとなあ。
面白いんですけどねえ。