Coolier - 新生・東方創想話

風のように、嵐のごとく、朝日と共に

2011/03/08 22:16:57
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また、断られた。

彼らだって、彼らのようなものにこそ、開かれているというのに。
断られたことに落ち込み、最初から断られることが分かっていたことに落ち込む。

何度も何度もくり返しくり返してきた“分かりきった失敗”を引きずりながら、八雲紫は幻想の世界へと帰還する。
























































幻想郷の何処か、尋常の世界に生きる者達にはけして気づかれない認識の隙間にある大きな屋敷。
その中庭にふわりと、一人の淑女が舞い降りる。翻る道士服、回る白い日傘、そして思わずホウと溜息が漏れるほど整いながらもどこか影のある美貌。
屋敷の主、八雲紫が枯山水のただ中に着地した。

踏みしめているはずの足元の小石は、しかし水のうねりを描き出した形のまま崩れることはない。
そうして石造りの海に立ち尽くすことほんの数秒、屋敷の中から現れるは彼女の式たる八雲藍。
ほんの僅かだけ浮遊しながら、九尾の式は主を気遣うように彼女に寄り添った。


「今回も、でしょうか?」

「そうね、分かりきったこと。彼らはきっとああ答える。だから彼らは彼らなのだから。
 分かっていて勝手に落胆して、そのうえやってることはえこ贔屓みたいなもの。自分でもどうかと思うわ」


紫の表情は暗い。落胆と羨望と諦観と理解と、それらがないまぜになった表情を一言で言い表すのならば、それは自嘲の顔だった。
分かっているのに、無駄なのに、それでも八雲紫は問いかけ続け、そして拒否され続ける。悪意ではなく善意で以て断られる。
不毛だ。まったくもって不毛だ。けれど八雲紫は彼らに問い続ける。それはこの楽園を創った一人として捨ておいては置けぬことなのだから。

――――ふぅ

紫は一つ溜息をつくと、頬をぴしゃぴしゃ両手で叩いて顔を引き締めた。
眉間に一度皺を寄せ、それから力を抜けばそこにあるのはいつもの八雲紫。表情に感情の陰りはなく、ただ読みきれぬ奥深さだけがある大妖の顔だった。


「今日は橙でも撫でて過ごそうかしらね。今日は何処に?」


紫が式の式の黒猫の名を出すと、藍は少々困ったように形の良い片眉を跳ね上げた。


「どうも新しい遊びを見つけたようで。ここのところはチルノと一緒に守矢の神社に入り浸りだそうです。
 向こうに迷惑をかけていなければ良いのですがね」


藍が小さく嘆息する。全くそれは遊び盛りの子供のことを心配する母親のようで、それなら私は放任主義のおばあちゃんかしらねと紫は笑う。
あの子はお行儀がいいから大丈夫、と式の教育と式の式の成長ぶりに太鼓判を押してやると、紫はそっと中空を撫でた。
撫ぜる指が空間を裂き、紫の眼前に世界の“隙間”を切り開く。
非論理的な狂った揺らぎを示す“隙間”の向こうには、立派な社が微かに見えた。


「じゃあ守矢の神社に遊びに行ってくるわ。ついでにチルノと早苗ちゃんと諏訪ちゃんでも愛でてくることにしようかしら」

「やり過ぎないようにお願いしますよ。あそこと戦争をして五体満足で勝てる気がしません」

「愛でるだけだってば。じゃあ行ってくるわね」


足取りも軽く紫が“隙間”に飛び込み、その一瞬の後にはこの屋敷に存在しているのは藍一人。


(さて、今日の夕飯は紫様の好きなものでも作ろうか? いやいや、家で食べるか決まってからでも遅くはないか。まずは洗濯を済ますかな)


藍はひとつ大きな伸びをすると、家事を片付けるべく家へと向かった。





























妖怪の山の山頂に、ひゅるりと冷たい風が吹く。
風は守矢の神社の境内を駆け抜けて、隅の方に集められた落ち葉を撒き散らそうと踊った。

と、突然に風が裂けた・・・
パクリと風の真ん中に亀裂が走り、その“隙間”をこじ開けられて風が二股に分かれる。
落ち葉への悪戯適わず、風が虚しく過ぎ去った。



落ち葉の山の前にもう“隙間”はなく、ただ八雲紫が立ちつくしているのみだ。
紫は軽く境内を見回すが、静謐なその空間に人妖の気配はない。かきいれ時も過ぎ去って、神社は静かなものだった。

では、橙は屋内か。
紫は拝殿に併設された社務所兼住居へと足を向ける。
しずしずと、優雅に、しかしその動きに比して不自然なほどに速く。
守矢の家はもう目の前、全く速度を落とすことなく、止まることなく、閉じたままの玄関へとまっすぐに進む。
そしてそのまま引き戸に触れようともせずに突っ込んで――――するりと、紫の身体が玄関を通り抜けた。

家の中と外を隔てる扉は、つまりは境界。紫にとっては薄絹のヴェールを潜るよりも容易く突破できる障壁でしか無い。
かくて八雲紫は玄関から堂々と、しかし誰にも気付かれず静かに守矢の家へと侵入することに成功した。


「ちゃんと玄関から堂々と上がったわ」。その一言の言い訳のためだけに行ったにしては、少々大仰に過ぎる行為ではあったが。




さて、橙は何処だろうかと紫は玄関口で耳を澄ませる。
橙の声は案外あっさりと耳に届いた。チルノと早苗、それにくぐもったような別の声と音楽が聞こえてきた。


きちんと靴を脱いで傘を置き、何の失礼も無いように注意を払いながら、紫は家に上がる。
誰も見ては居ないのにそういう風な動作には一片の隙もなく完璧で、八雲紫という女性の優雅さや知的な印象の根本がそういった礼儀正しさから形作られていることがよく分かる。
そもそも不法侵入だということは、この際忘れておいた方がいいのであろうが。


声の聞こえてくる部屋の襖をちょいと開いて覗き込んで、紫はクスリと笑う。






“おのれ、お前達の悪事、もはや見逃せん!”
“き、貴様は――!”
“変……身ッ!”


舞踏の如きポージングにスイッチが切り替わり、男の姿が人間から“人間でも機械でも妖怪でもないヒトガタの何か”へと閃光と共に変じていく。


“俺は太陽の子!”


黒いヒトガタへと変じた男が、堂々と眼前の怪物に向かって見得を切る。








そんな雄々しき光景を映しだす大きめのブラウン管テレビが六畳間にひとつ。
人間と妖獣と妖精の一人とひとりとヒトリが、そのテレビをキラキラ目を輝かせながら見つめていた。


紫は襖を開くと、にっこり笑って一人とひとりとヒトリに挨拶をした。


「こんにちは、私も混ぜてもらっていいかしら」


その挨拶に、ヒトリの妖精がぴょこんと可愛らしく体ごとこちらへと振り向いた。


「あ、ゆかりだ! ゆかりも見る?」


光を乱反射させて輝く背中の氷の羽と同じように輝く笑顔で妖精チルノはそう言うと、またぴょこんと体ごとテレビへ向き直る。
一秒たりとも画面から目を離すまいと、食い入るように画面を見つめていた。


「あ、ゆ、紫様、お疲れ様です!」


ついでひとりの妖獣、橙が礼儀正しく頭を下げた。
思わぬところで主の主と会った驚きに、猫の耳と二股の尻尾がぴぃんと張って緊張している。
紫はそんな式の式の頭を優しく撫でてやり、ほら、テレビがいいところよ、と優しく言ってやった。

そして最後の一人、人間・東風谷早苗は部屋中をバタバタ駆けずり回りながら座布団を引っ張り出し茶葉をひっつかみ盆と湯のみをひっつかんで紫の眼前を行ったり来たりしていた。


「はわわわわわすいませんお出迎えもしないで! すぐにお茶を用意いたしますので少しお待ちください神奈子様は天魔様と会食で諏訪子様も泊りがけでお出かけになっておられますのでご用件は私がうかがいまわきゃあん?!」


自ら敷いた座布団に足を取られてすっ転んだ早苗を、紫は右の腕で優しく受け止めてやる。
転んだ拍子に宙を舞っていた湯のみと盆は空を一撫でするだけで掻き消えて、一瞬後には足元に鎮座していた。


「ごめんなさいね、勝手に上がり込んじゃって。私が悪いのだから、慌てなくて構わないわ」


紫は早苗の耳元に口を寄せ、蕩けるような表情で甘く囁いてやる。
彼女の顔は紅潮し、目は混乱でせわしなく明後日の方向を探った。
霊夢はつれないし、魔理沙はとんがり過ぎるし、藍は真面目で場慣れすぎているしと、こういった反応に飢えていた紫は実に満足そうに早苗の頭を撫でてやっていた。
早苗は完全にされるがままで、ほんの少しだけ幸せそうにも見える。


橙はそれを見て、神様達が留守で今日は小傘が遊びに来ていないことを心底有難がっていた。










さて、紫も早苗も一息つき、ようやく座布団の上に落ち着いてテレビと向かい合う。
紫は熱い緑茶を一すすりすると、傍らの早苗に問いかけた。


「ねぇ、早苗ちゃん?」

「はい、なんでしょうか?」


テレビの中では黒いヒトガタが異形の怪物と華麗な空中戦を繰り広げている。
橙とチルノは完全に画面の向こうの世界に夢中だ。


「――――『紅い仮面の三人目』はあるのかしら、ビデオ」




早苗はその問いかけに一瞬きょとんとした顔をして――――そして、その顔に不敵な笑みが浮かんだ時には、二人は親友以上の絆を持った関係を構築することに成功していた。
家族のように強くはなく、恋のように甘くはなく、されど決して途切れぬ趣味人の絆がそこにある。


「『さすらいの快傑』や『特警』も有りますよ。残念ながら『秘密戦隊』は選り抜きだけですが。素敵ですよねえ、あのひとは!」

「ええもう本当よ! 千年前から数えてもトップテンに入る色男だわ!」


がしりと二人が握手を交わす。組んだ拳は焔のように熱かった。
早苗はすっと立ち上がると、押入れを開けて大きな収納ケースを取り出す。
蓋を開いて見てみればそこには山のようなDVD−ROMにVHSテープ、ケースに入ったハードディスク・ドライブなどがぎっちりと詰まっている。
押入れの中を見れば、何処から入手したのか映写機用のフィルム入りと思しき円筒状の缶までもが積み上げられていた。


「幻想郷じゃ向こうのお金使えないと言うのは分かっていたので、不用品を処分して必需品を買って、
 それでもお金が余ったんで趣味に走っちゃいました。えへへ」

「じゃ失礼してちょっと見せてもらおうかしら……あら、こっちは『怪獣王』?
 特撮だけじゃなくて『機動戦士』や『勇者』もあるじゃない。早苗ちゃんは『機動戦士』はどれが好き?」

「『機動新世紀』ですかね。やっぱりボーイミーツガールが王道でしょう?」



少女らしくかしましく、少女らしく朗らかに、しかし些か少女らしくない話題で盛り上がる二人の背後で、ふわあと満足気な吐息を漏らすチルノと橙。
見れば、テレビからは勇猛なテーマソングが流れ、次回の闘いを予告する映像が踊っていた。


「あ゛ーっ、面白かったー!」


大きく伸びをしたチルノは興奮覚めやらぬ様子で紫に身振り手振りを交えながらヒーローの活躍をめいっぱいに伝える。
その一拳一投足を、その闘志を、その正義とそれに憧れる自分を、目一杯の感動と共に紫と早苗に伝えていく。
そんな彼女を紫と早苗は優しく優しく見つめていた。
チルノはパタパタ両手両足を振りながら、自らの語彙では伝えきれないその感動をなんとか目の前の友達に教えようと努力を続ける。


「そんでさ! あたいも大きくなったらああいうかっこ良くてサイキョーな妖精ヒーローになるの!
 背だってゆかりより大きくなってスタイルだって抜群になるのよ!」


成長の可能性だけは大いに秘めた薄い胸を張りながら宣言するチルノ。
そんな彼女の頭を優しく撫でながら紫は笑った。

……ほんの少し、複雑な顔で。


「それは凄いわね。でもね、チルノ?
 私は貴方達にはずっとずーっと、今のままでいて欲しいと思っているわ」


その紫の言葉に早苗と橙は僅かな違和感を感じる。
なんだろう、紫の言葉がひっかかる。子供に掛ける言葉としては何かが違う感じがした。
何が違うのか聞かれればそれが何かを断言するのは難しいが。

紫は首を傾げる一人とひとりに大して僅かに苦笑すると、チルノを膝に抱いてから話し始める。


「そう、違和を感じるのは正しい。子供の成長を称えるのが大人であるのなら、そのまま子供で居ることを望むのはエゴだもの。
 でもね、貴方達が子供のままで居るということは、私の夢見た世界がここにあるという確かな証明でもあるの」


紫の指が虚空を撫でる。空間が切り開かれ現れた“隙間”から、数冊の本がこぼれ落ちた。
和綴じの本に革表紙の洋書、近代的な製本のものに早苗のよく知るマンガコミックスまで雑多な本が床に散らばる。
紫はその中の一冊を手に取り開いた。


「ほら、これは外の世界の橙の仲間よ」


紫の指差すページを覗き込んだチルノは、ひゃっと声を上げて肩を竦めた。

そこに描かれている妖怪――化猫は、きょとんとした顔でこちらをみている橙とは比べようがないほどに別物であった。
少女のような柔らかな肌はなく、触れば指が落ちそうな体毛に覆われていて、
少女のような細っこい手足はなく、鋭い爪を備えた恐ろしい脚があり、
少女のような愛らしい笑顔はなく、悪鬼羅刹が如き怪物の顔がある。
それは全体を見れば確かに化猫であると分かるのだけれども、チルノの知る化猫とはあまりにも異質すぎる存在であった。


「こっちは外の世界の妖精、こっちは吸血鬼、こっちは……そうそう、藍の仲間ね」


そう言いながら紫が示していく妖怪の絵姿は、どれもこれもが衝撃的なものだった。
一部には見目麗しいものも無いことはないが、大概は絶えがたいほど醜いか、震え上がるほどに攻撃的か、あるいは背筋が冷たくなるような不気味さを持っているかのいずれかだ。
藍の仲間だという恐ろしい九尾の狐を見た時など、橙が目を回して気絶してしまうほどだった。


「外の世界では妖怪やそれに類する者達は、皆硬く、鋭く、怪しき姿を取っているわ。
 チルノ、それが何故か分かる?」


紫の問い掛けに、チルノは黙って首を横に降った。分からない。何故こんなにも幻想郷と外とが違うのか。
一方で、早苗にはなんとなく見当が付いていた。外とこちらとで妖怪の在り方が違いすぎる理由、そしてチルノたちが子供のままであって欲しい理由も。
外の世界で生まれ幻想郷へとやってきた早苗は、身に染みるほどよく分かっていた。



「それはね、そうでなければ生きていけないからよ」



紫は静かに、断言した。


「優しくない、非幻想げんじつは全く優しくない。ありとあらゆる存在は、戦わなくては生き残れない」


紫は謳う。それは悲しい唄だった。無常を嘆く、優しいあやかしのうただった。


「ありとあらゆる敵意を近寄らせぬために、妖精ゴブリンは醜く在る。
 飢え、敵、ありとあらゆる苦しみに抗うために、化猫は恐ろしい爪を研ぎ澄ます。
 誰かを幸せにするために、正義の味方は敵を討つ強さを追い求める。

 …………いつでも、いつまでも、全身全霊で抗い続ける。それはとても辛いことではないかしら?」


抗う相手はこの世の全て。生まれてから死にゆくその日まで、生き抜くために世界全てに抵抗し続ける。
例えば食料を得るために、例えば生きる場所を得るために、例えば名誉を得るために、例えばより良い暮らしを得るために。
抗って、抗って、抗い抜いてそれらを勝ち取るために、彼らは強く恐ろしく張り詰め続ける。

それは必要だけれども、きっと辛いこと。



「それらを完全に無くすことはできなくても、この幻想郷にたどり着いた者達には少しでも安らいで欲しい。
 だから、私は幻想郷をそういう風にした。それを皆受け入れてくれて、だから幻想郷はこんなにも優しくなった」



幻想郷の妖怪は少女である。男もいるが、彼らは余り目立たない。
それは、安らいでいるからだ。男達は平和な楽園で傷ついた鋭い身体を休め、女達は張り詰める必要なく少女として世を謳歌する。
それは八雲紫の望んだ、幻想になった者達の世界の理想型。
忘れ去られるまで生き抜いた者達に、少しでも安らぎを。それが八雲紫の夢見た世界。

チルノや橙がいつまでも可愛らしい少女で居られるということ。それはそんな紫の理想が叶えられ続けていると言う事に他ならない。


「妖怪や妖精の形は心の在り方によって変わるわ。貴方達が今の形で居られるのなら、きっと私の望みは叶い続けている。
 平和で暢気で陽気で安らいだ、そんな楽園が維持できていると信じられる」


紫の腕の中のチルノはしばらく難しい顔をして考え込んでいたが、数十秒も考えこむと、もういいやと顰めた顔を解きほぐした。

「んー、よくわかんないけどさ。あたい、今のままでいいんでしょ?
 まああたいは今でもサイキョーだから問題ないもんね!」

にかっと歯を出して笑うチルノに、紫はそうねぇと答えながら髪を撫でてやった。



「でも、外の世界の奴らも大変よねー。ゆかりの話聞いてるとさ」



続いてのチルノの何気ない一言に、紫の表情がわずかに曇る。
けれどもその翳りは、チルノにも橙にも早苗にも気付かれぬまま隠され消えた。



「そうね、大変なの。でも、だからこそ彼らを尊敬してほしいわ。
 彼らは決して安らがない。傷つき涙し血を吐いて、それでも自身の恐ろしき異形にプライドを持っている。
 それは、彼らが外の世界で己の信念に生きているという誇りなの」

「んー……?」

「『仮面のヒーロー』、かっこいいわよね?」

「かっこいい!」



それでいいのよ、と紫が笑う。
チルノを離してやると、それじゃあ続きを見ましょうかと早苗を促した。
早苗と共にあれを見ようこれを見ようと騒いでいる紫の袖。それがぴぃんと引っ張られた。

見れば、橙が少々不安げな顔でこちらを見上げている。



「あの、紫様の言う事、わかるんです、けど。
 でも私、やっぱり早く大きくなりたいです。紫様のお手伝い、したい、から」


たどたどしく、しかしはっきりと伝える。
子供のままでいて欲しい。その望みの理由は理解できた。
けれども、だからこそ、大きくなりたいと思った。彼女の理想を手伝えるくらいになりたいと、心から思った。


そんな橙に見上げられて、紫は困ったなあと思った。
だって今、自分は酷く不細工な表情かおをしているに違いなく、それを橙に見られたくはなかったからだった。

もっとも傍から見ていた早苗にしてみれば、こんなにも可愛らしい紫を見たのは初めてだ、という感想しか出てこないわけであるのだが。














◇   ■   ◇   ■   ◇   ■   ◇















物悲しいパラードが鳴り終わり、VHSビデオのデッキが機械音を立てて停止する。
ビデオ出力に設定されたテレビ画面は深い深い黒のみを映しだす。

その画面に映り込む自分の顔に、紫は小さく笑い、そして手元のコップに残った清酒を飲み干した。

外を見ればすっかり日も暮れ、星がキラキラと瞬いている。
部屋の中は散らかり放題になっていて紫以外の一人とひとりとヒトリは雑魚寝状態で夢の中。



さて思い返すもビデオの鑑賞会が再開されてから何があったか。
その答えはといえば、平凡といえば平凡なものであった。

見始めて盛り上がり、10分もすれば喉が渇いたというチルノの言葉に答えて御茶が出る。
御茶を飲みつつ正義の味方を応援し、30分もすれば口寂しいと言う紫の要求に茶請けの菓子が出る。
あられを噛みつつ正義の危機にハラハラし、一時間もすればお腹が空いたなという橙の独り言に応えて軽食が出る。
サンドイッチを食みつつもうどうしようもないほどテンションが上がれば、誰が言わずとも酒が出る。

閻魔すら異議申立てし得ぬ自然の摂理によって今現在紫のいる部屋は混沌へ沈んだというわけである。
早めに藍に「今日は遅くなるから」と伝えておいて正解だった。



それは兎も角、子供らをこのまま寝かせておくのはよろしくない。紫は部屋の片付けを行うことにした。
人差し指を軽く天に立て、呟く。


「境界を別ける、浮かべ」


静かで、なんでもない、絶対的な命令が部屋を疾る。
分かたれる境界は“部屋とゴミとの境界”。境界を強固なものとされたゴミは部屋に有り続けることができず、反発力でふわりと浮き上がった。
紫が指を小さく振ると、瓶、缶、紙、食べ残し、その他雑多なゴミが渦を巻き、一点に収束していく――――。

「はい」

紫の小さな掛け声と共に、まとまったゴミが“隙間”へと投棄された。
“隙間”の向こうは旧地獄よりも地下深く、地球の核が程近いマントル最下層である。
汚染物質もへったくれも無く何もかもが一瞬で燃え尽きる、クリーンと言えばこの上なくクリーンなゴミ処理方法であった。

紫は立ち上がると(よっこいしょ、なんて声が漏れたのは、幸い誰も聞いていなかった)、ゴミと判断されなかったまだ中身の残っている瓶を端に纏め、それから押入れの布団を引っ張り出して一人とひとりとヒトリを寝かせる。
きちんと毛布まで掛けてやり、さて一仕事終わったと一息ついた、その時に。




「お疲れさんだね、八雲の」




背後に現れた守矢の主神、八坂神奈子が労うように紫の肩を叩いた。
神奈子は快活に笑うと、生き残りの一升瓶をぐいと煽る。


「あら、お帰りなさいませ。お出迎えもなさらず申し訳有りませんわ」

「何、今帰ってきたところさ。天魔の奴、悪い奴じゃあ無いが面白みに欠けるな。酒を飲んでもいまいち盛り上がらなかった」

「あの方も昔気質な妖怪ですから」


二つのコップに酒を注ぎ、紫と神奈子が軽く乾杯を交わす。
ちぃんと言う澄んだ音の残響の残るガラスのコップを、一妖と一柱は一息で干しきった。

神奈子はすやすや眠る早苗の髪を軽く撫ぜてから、ふうと小さくため息を付いた。


「しかしこれじゃあここで騒がしくするわけにもいかないね。居間のテレビを使おうか」

「あら、騒がしくするご予定でも?」


紫の問い掛けに、神奈子はニヤリと笑って見せる。


「何、最近のも悪かぁないが――――やっぱり私のヒーローは『技の一号』でね」


そう言うと、神奈子は収納ケースを漁り始める。
背後から「ご一緒しても?」と問われると、「嫌いじゃなければ」と答えた。

無論、嫌いであろうはずもなかった。

















抜けるような青空の下、荒れた採石場で闘う異形と異形。
ブラウン管の向こう側に広がる幻想に時に見入り、時に喝采する。
そんなふうに神奈子と紫が穏やかに酒を酌み交わしていると、ぽつり、ぽつりと神奈子が何事かを語り始めた。

語るは思い出。眼前の正義の味方を好むその理由。
酒で口が軽くでもなったのか、あるいは元々誰かに語りたかったのか。

理由は兎も角として、彼女の話自体には興味があった。
国生みの古より在りし軍神が、架空の『正義の味方』を好く理由を。


紫はブラウン管を見つめながら、神奈子の語りに耳を傾け始めた。











































ありゃあねぇ、太平洋戦争のことも皆が思い出さなくなった頃のことだったよ。
思えばやっぱりあの戦争が転機だったね。明治の維新からこっちもなんとかやりくりできた信仰が、まるっきり駄目になったのは。

あの戦争で私達は何も出来なかった。日清日露の頃はそりゃ陰ながら手助けできたけれどもさ。
もし私達神に全盛期の信仰があっても、あの戦争を少しでも有利に傾けることは無理だっただろう。
人間は何トンかの爆薬で地上を本物以上の地獄に変える事ができるようになったし、敵を殺すためだけに八咫烏と同等の光を地上に作ってしまった。
いくら神の力を振るおうが、海を染める鋼の艦隊と空を塗り替える爆撃機の群れは手の届かぬところから民を殺すだろう。

人間と言う存在は、とっくに私達の理解と力を超えていたんだ。

そうなりゃ信仰は減って当たり前さ。だって、人間はもうそれが無くても自分達で何とかしてしまえるんだから。


けど、その頃の私ゃそれを認めたくなかったね。
信じてくれれば絶対に人間を救えると思ってたし、それが無理でもあの大きすぎる力をより良く使えるようにしてやれると信じていた。
だから必死に、心底必死に信仰を集めていたものさ。



あの頃……そう、1971年。
私の神社でよく遊んでる子供達が居たんだ。
礼儀も正しくて、境内で遊ぶときには必ずお賽銭を入れて挨拶もしてくれた。
私が見えては居なかっただろうけれど、私の存在を信じてくれていた。きっと親御さんの教育が良かったんだろうねえ。
まあ、その頃の私はそんな信仰を遣り繰りして細々やっていたわけさ。


ところがある日、その子らから普段とは比べものにならない様な、強い信仰が発せられてるのに気づいたんだ。
けれども不思議なことにそれはただの信仰とは――うまく言えないけど、何かが違った。
それに私に向けられたものでもなかった。

それでこっそり聞き耳立ててみりゃどうだい。子供らが話してるのは先週のテレビ番組の事だったじゃないか。
ああ、嫉妬したねえ。私はここにいるのに、私はこの子らの為にこそいるのに。
あの子らが信仰しているのは架空の存在に過ぎないのだから。


しかしまあ、そういう風に子供らを惹き付けるというのはどういうものだろうってのも気になったんだ。
ちょっぴり参考にしてやろうか、とかさ。

そういう訳で次の放送日に、そいつを見てやったんだ。


まあ、面白いと思ったね。良く出来てた。
けど、こう、胸がざわついたんだよ。何か、致命的な物を突きつけられているような感じさね。
だから、次の週も、其の次の週も真剣に見た。
この話が伝えたい何かは何なのか…………いや、ちょっと違うかな。私はこの話を通じて、何かの答えを欲しがっていたんだろう。




ある日ね、気付いた。気付くことが出来た。気付いてしまった。
もうね、泣いたよ。あんまり大泣きするもんで、諏訪子やらその代の風祝やらがすっ飛んできて大騒ぎさ。



――――『悪の組織』ってのはさ、あれ、人間だろ? 改造されてるけど、意識は人間のものだ。
人間の悪事ってのはこう、殺しとか盗みとか、そういうものさ。人間が人間として行う悪事だ。
けど『悪の組織』ってのは、その原理が恐ろしく理不尽だろ? 世界征服なんてそこらの人間には関係がない。
恨まれて殺されるのは理解できる、貧困から盗むなら同情できる。けれど、世界征服のために殺されるってのを理解できるかい?


そういう理不尽は祟りの領域さ。理解出来ない領域の話で理解出来ない行動で理解出来ないまま脅かされる。それは祟りだ、祈ることで回避しようとする祟りだ。
それを行っているのが神ではなく、『悪の組織』の人間なんだ。
ちょうど、外国の都合で爆撃機が街を焼き払うのとおんなじさ。人が神の祟りの如き行いを、あくまで人として行っている。
そしてその手段は人間の技術だ。最新鋭の爆撃機であり、より発達した科学の生み出した改造人間だ。


…………人は祟りを恐れなくなったんじゃない、知ったんだ。
自ら発展させてきた、そしてこれからも発展させていく技術が自らを祟るという恐ろしさを。それは祈れば鎮まる神よりも、ずっとずっと恐ろしいのだと。
未来に実現するであろう技術の全てを人は恐れる。その恐れが『悪の組織』と言う形になってこの番組に現れている。


そして、『正義の味方』も同じ技術から生まれた。祟りから生まれた異形だ。
『正義の味方』は神の血なんか引いていない、神代の武器も用いない、神仏の加護すら受けていない。
魂だけがあるんだ。正しい行いを成そうという魂だけがある。


そして、示す。祟りのごとき技術は、人の心一つで素晴らしい正義を成すのだと。
恐ろしい技術も使い方ひとつで平和を守れるのだと示している。そうして未来から吹きつける暴風を、未来への最前線に立って、その身で受けて人々を守る。


そこに私達の居場所はない。
人間は人間が発達していく未来こそ恐れ、人間の正しい意思がそれを正せるのだと『仮面のヒーロー』は謳っていた。
ああ、泣いたよ、寂しくて泣いた。私達はもう必要ないのだと。


でもね、それ以上に嬉しくて泣いたんだよ。
ついに人はここまで来た。私達が祟り守り支えずとも、自分達の恐ろしさを理解し、強い意志を以て、自らの足で歩くことを賛歌していた。
子らが巣立ち、私達は役割を終えた。それは、とても素晴らしいことじゃないか!



ま、そういう訳で首までどっぷりハマり込んでね。
『光の巨人』をチェックしてなかったの後悔しながらも色々集めさせてもらったよ。
そんなわけで早苗が生まれた頃には山のようにベータとVHSのテープがね。


あー、うん、早苗が気に入ってくれたのは嬉しいんだけどね。
ちょっと反省してる。女の子向けも取り揃えておくべきだった、うん。





まあ、そんなこんなで信仰を集める気概ってのがちょっと無くなっちゃってさ。
消えるならそれはそれでいいかって。
幻想郷のことを知らなけりゃ、私は今頃消えてたろうね。

多分、満足して、ね。








































ふう、と溜息を付いて神奈子は酒を一口啜った。
言ってしまった、という意識があるのか耳たぶが紅い。
いや、酒精のせいなのかも知れないが。あるいは、酒精のせいにするために飲んでいるのだろうか。



「悪いね、長々喋って」

「いえ、とても興味深いお話でしたわ」



空になった神奈子のコップに紫が新しい酒を注ぐ。
ブラウン管の輝きが、コップの中で歪む。
それを一息で飲み干す神奈子に、紫はひとつの提案をした。

「ねえ、八坂殿。良いお話を聞かせてくださったお礼に、ひとつ見せたいものがあるのですけれど」

「へえ、何をだい?」

紫はしゃなりと立ち上がり、楽団を指揮するように指を振る。
とたん、彼女の目の前がぱっくりと裂け、混沌色の“隙間”が顔を見せた。



「未来への、最前線を」


















◇   ■   ◇   ■   ◇   ■   ◇















“隙間”をくぐった先は、空の上だった。
薄曇りの、白々開け始めた冬の空。そこに満ちる臭いに、神奈子は覚えがあった。
鉄錆と、排ガスと、アスファルトの臭い。

(外の世界、か)

“隙間”から離れすぎないようにとの紫の注意を受けながら神奈子か現界へと顕現する。
眼下に広がるのは廃工場、錆と塵の山の中には、二人の人間が立っている。

いや、アレは、人間と表現していいものだろうか?


「御覧下さい、八坂殿。あれこそ私達の憧れる未来への最前線に立つものですわ」


神奈子が目を見張る。対峙する二つの人影を見る。
至極普通の中肉中背の男が一人、そして、それと向かい合う異形が一人、居た。


ヒトガタをして居ながら、人ではなかった。
獣のようでありながら、獣ではなかった。
機械が全身を駆動させていたが、機械ではなかった。
この上もなく怪奇であったが、妖怪ではなかった。

それを言い表す言葉を、神奈子は知りすぎるほど知っている。


「怪人……?! 改造、人間――――」


人を、機械によって、獣のように作り替えた妖怪の如きそれをそれ以外の言葉では表現など出来ないだろう。
無論、着包みでもない。コンピュータ・グラフィックスでもない。
改造人間は、実在の存在としてそこにいた。

そして、それに対峙する人間も、また。



腕を掲げる、腕を回す、ベルトが唸る、闘志が満ちる。
そして男は唱えた。世界との約束、世界最強の存在を召喚する数多の聖句の一つを唱える。
聖句はシンプルに一言。


「変んっ――身ッ!」


嵐のように風が吠え、職人芸の特撮技術によるものでもなく、技術の粋を集めた美しい電子処理技術でもなく。
実在する存在として、男は『正義の味方』へと変わり果てた。



神奈子は何も言葉を発しない。
口を開いたら、驚きと感動で涙を流してしまいそうだった。
紫が語る。朗々と、高々と。


「皆が信じたから現出したのか、あるいは彼らのことを知ってもらいたいからあの番組が作られたのか。
 それはどちらでも構わない。だって彼らは彼らなのだもの。
 正しく、強く、気高く、雄々しい、そんなみんなの憧れる存在は、人類の未来と平和の為に今も闘い続けている」


『正義の味方』が闘っている。その動きすら美しい。
弾幕ごっこが己の美学を映しだすことで美しくあるように、その闘いもまた美しい。
まるで、完成された一つの舞踊を見ているかのようだ。


「――――八坂殿、私ね、彼らを幻想郷に誘ったことがあるのよ」



驚きの告白に、神奈子は思わず紫の顔をまじまじと見つめる。
紫は恥ずかしいわと小さく笑った。


「幻想郷はすべてを平等に受け入れる。けれどやっぱり、誰かのために傷付き耐えぬいた者達は、まず導かれて然るべきだと思いますわ」


その言葉には神奈子は全く異論はなかった。
今日明日消える身の上というわけでもなければ、神奈子とて喜んで彼らに先を譲るだろう。
だって彼らは何処かの誰かのために、名誉はあれど栄光なき闘いをずっと続けてきたのだから。
最後は絶対に、報われなければ嘘だ。



「戦いが終わり、後を継ぐ者が現れた時点で、私はいつも彼らに問いかける。幻想郷へいらっしゃいと。
 元より幻想に近き者達、本来なら誘う必要もなくこちら側へ流れてくる筈。

 けれどもね、彼らは、皆――――優しく私を拒絶したわ」





















幽霊族最後の生き残りの少年を、幻想郷に誘ったことがある。

あなたの仲間達も徐々にこちらにやってきている、貴方もこちらへいらっしゃいな。
幻想は幻想のあるべき場所へ、安らぎと共に帰りましょうと。


しかし少年は、小さく頭を振ってその提案を退けた。
片目を隠すほど長い前髪が小さく揺れる。

「僕らは、やっぱりこちらが好きですから。
 八雲さんの幻想郷に負けないくらいにこちらを良くしていこうと思ってます――――こちらの人間とも、一緒に」

少年の髪の毛の中から、ひょこりと何かが顔を出す。
それは小人のような妖怪だった。しかし、頭が丸ごとひとつの目玉になっている。
異様にグロテスクなはずなのだが、不思議な愛嬌のある妖怪だった。

「いずれ遊びに行かせてもらうよ、八雲殿。わしらの楽園、幻想郷へとのう」

目玉の妖怪の言葉は少年と同じ優しい拒絶であった。
遊びに行く、それはつまり外の世界こそ帰るべき場所なのだと暗に告げているのだから。


そうして少年は紫に別れを告げ、夜の都会の雑踏へと消えて行った。
カランコロンと下駄の音だけを残して。












海底で眠る怪獣の王を、幻想郷に誘ったことがある。

灼熱の世界にて赤子の如き姿勢で眠るそれは、まさに怪奇なる獣としか言い表せず、そして王と呼ぶに相応しい覇気にあふれていた。

マントルの海に眠る黒い怪獣に、紫は念話で語りかける。
休みましょう、怪獣の王よ。怒り、荒ぶり続けるのは辛いこと。
貴方は十分に怒りを示したのだから、もう休んで良いのですと。


しかし怪獣の王は、怒りに燃える瞳をギロリと紫に向け、その誘いを拒否した。
念話の返事はない。しかしその瞳が強烈な意思を秘めて紫に語りかける。瞳の中に揺れるのは、怒りの焔だ。


行けない。この身は怒り、この身は憎悪。
人が愚かな行いを成す限り、その末にあるこの身は怒り続けなければならない。
二度とこの身の如き悲劇を生み出さぬために、人間に恐怖を与え続けなければならない。
自滅による安易な滅びなど、絶対に許しはしない。その前に、この身が怒りを以て人類に警告する。
永遠に、永遠に…………。


怪獣の王は瞳を閉じた。何よりも優しい純粋な怒りの焔は、見えなくなった。
彼は何時までも何時までも怒り眠り続けるのだろう、人が新しい過ちを犯すその日まで。

「願わくば、世界の終わりまで貴方が眠り続けんことを」

小さな祈りの言葉を残して、紫はマントルの海から姿を消した。












宇宙の果てで永遠無限に邪神と戦い続ける三位一体の神を、幻想郷に誘ったことがある。

貴方は数多の神々の先頭に立ち、奇跡すら生ぬるく思えるような細い糸を掴みとるような戦いを続けてきた。
あなたの後を継ぐ者達が居る。だから、貴方達はもう休んでもよいでしょうと。


しかし三位一体の一、少しだけお人好しなただの青年は困ったような笑顔で優しく紫を拒絶した。

「俺達が休んでる時に、誰かが泣いているかも知れない。それは後味悪ィだろ?
 だから、俺達は行けないんだ。何処かで誰かが、泣いているかも知れないから」


「そんな顔をするな、妖怪よ。汝は楽園を作ったのだろう?
 その楽園を思うだけで――――妾達は、こんなにも力が湧いてくる」

三位一体の一、少しだけ素直じゃない、優しい魔書の精霊はそんな風に紫を慰めた。

三位一体の一、巨大な鋼の巨人は何も語らない。ただ、体内のモニターに己の存在意義を出力した。
我、無垢なる刃、魔を断つ剣なりと。


結局引き止めることはかなわず、彼らは異なる次元の世界へと旅立っていった。
生存の確率がこの上ない極小の数で表される絶望の戦場へと。

紫の語った幻想郷に付いて楽しげに語り、朗らかに笑いあい、優しく陽気な気分で、旅立っていった。














そして眼下の彼らもそうだった。

誰かの涙を見たくはないから。
この体で戦い続けることこそが己のプライドであるから。
誰かのために、何処かの誰かのために、見知らぬ誰かのために――――

――――人類の自由と平和のために。彼らは優しい笑顔で紫に背を向けた。



「思えばそれは当然の事。どんなに辛く傷ついても、彼らはけして前進を止めない。
 だから、彼らは『正義の味方』なのだもの」




だから、紫の手は彼らには届かない。

幻想郷は忘れ去られた者達の楽園、この世界で最も過去にある場所。
だからどんなに手を伸ばしても、未来への最前線を真っ直ぐ突き進む者達に手は届かない。
どんなに傷つき、疲れ、報われなくとも、彼らが全ての存在にとって最前列の盾であることを諦めぬ限り決して彼らを救えない。
そして、彼らは諦めない。『正義の味方』はけして諦めない、挫けない、何百万回倒されても負けない。
だから紫には救えない。彼らがどんなに辛くとも、それを助けることは叶わない。

幻想郷は未来から最も遠い場所にある。だって、世界から零れた者達全てを受け止めるにはそこにいるしか無いのだから。
だから、どんなに頑張っても、そこから最も遠い場所で誰かのために未来を切り開く者達はどうしても救えない。
それは、なんて、残酷なことなのだろうか。




「無力だと痛感するわ、無能だと絶望するわ。
 それよりなにより、こんな考え方が幻想郷に今居る全てを侮辱している気がして、恐ろしいわ」


幻想郷は全てを受け入れる。そんな世界の管理者が、受け止められぬ者達を気に病み続ける。
それは、今幻想郷に居る全てをないがしろにする考え方ではないかと恐ろしく思う。
今幻想郷に居る彼らだって、同じように報われるべき者達には違いないのに、これは身びいきではないのかと。


神奈子は紫の表情を伺った。泣いているのでは、と思ったからだ。

しかし、紫は泣いてはいなかった。
けれども瞳から溢れる感情の迸りが無い分だけ、心のなかに収められた悲しみと自己嫌悪は大きく膨らんでいく。
泣けば良いのにと神奈子は思う。けれど涙を流して見せるには彼女は少しばかり大妖過ぎるのかも知れない。



神奈子は眼下の戦闘を静かに見つめる。
『正義の味方』は打ちのめされていた。爪に引き裂かれ、火に焼かれ、心を削られ倒れ伏す。
それでも、『正義の味方』は諦めない。何処かの誰かを守るために血反吐を吐いてもなお立ち上がる。

そんな絶望的でありながら一欠片の絶望もない光景を、神奈子は静かに見つめていた。


静かに見つめているだけのはずだったのに、いつの間にか、言葉が漏れていた。





「『正義の味方』ってのはさ、いつでも誰でも救えるわけじゃない。そんなこと、神様にだって出来はしない」


だから足掻くのだ。どんなに無様でかっこ悪くて痛くて辛くて悲しくとも。


「人の子らは、『正義の味方』の背中に憧れて、彼らの切り開いた未来の道を進んでいく」


正義の味方そのものでなくとも、似姿を作る、意思を継ぐ、自らの子らに誇れるように己が心を高潔と為す。
そうやって、気高き意思は受け継がれていく。


「けれどやっぱり、未来を行くのは辛いから、どうしてもついていけなくなる奴ってのは居るもんだ」


例えば忘れ去られた神様だとか、未来の世界に適合できない現人神だとか。


「『正義の味方』が立っているのは人の恐れる人の業、即ち未来の恐怖に立ち向かう未来への最前線。
 過去へこぼれ落ちていく者達はどうしたって手が届かないこともある」


彼らは皆優しいから、そうやって誰かを取り零すことに傷つき続ける。
身体ではなく心を、無限に磨耗し続ける。
けれども。


「けれど、八雲紫。お前はそんな私達・・を拾いあげてくれたじゃないか」


神奈子はまっすぐに紫を見た。
紫は驚きに目を真ん丸くして神奈子を見つめている。




「それが『正義の味方』にとってどれだけ心強いか分かるか? お前が居るから、お前が未来への殿しんがりに居るからこそ、彼らは安心して未来への最前線に立てるんだ。
 誇れ、八雲紫。幻想郷を愛せ、八雲紫。それだけで、お前は十分すぎるほどに『正義の味方』を、未来に向かうすべての者達を助けている」




だから、『正義の味方』は笑顔で優しく幻想郷への誘いを断ったのだ。
八雲紫が、皆の幸せのために足掻いていることを知ったから、その努力が形になったことを知ったから、笑顔で死地へと向かえるのだ。
自分達の救えなかった誰かを、八雲紫はきっと救ってくれると信じることが出来たから、この優しくない世界を生きて行けるのだ。


神奈子の言葉に、紫の顔がくしゃくしゃに歪む。
今度こそ泣くかなと神奈子は思ったけれども、結局その瞳から涙が流れることはなかった。
全く意地っ張りな大妖様だと神奈子は笑う。


「ありがとう、八坂殿。少しだけ報われた気がしますわ」


「何、今度旨い酒でも奢ってくれればいいさ。洋酒なんかが珍しくていい。
 …………もう夜が明ける。そろそろ帰るとしようか」


神奈子が見上げた空はすでに雲も散り、蒼色へと変わりつつあった。
広がる街並みの向こうから、朝日がキラリキラリと瞬いている。



「いいの? 闘いはまだ終っていないけれど」

眼下の闘いはいつの間にか形勢を逆転させていた。
最早傷の無い部分など無いほどに傷ついた『正義の味方』は、しかしその闘志を力にして確実に怪人を追い詰めていた。


「――――いいさ。私達は私達の幻想郷せかいで、私達のやるべき事をやろう。
 彼らを応援するのはそう、あの背中を追いかける子らの役割さ」


紫はその神奈子の言葉に頷いて、目の前の空間をそのたおやかな指で切り裂いた。
現れた“隙間”に紫が身を踊らせ、続いて神奈子が身体を潜らせる。

一妖と一柱は、“隙間”の向こう側に消えるその前に一度だけ振り返った。

振り返った先にあるのは広がる空、広がる街並み、広がる世界。
それら世界に向けて、まず最初に神奈子が詠う。


「神様は去った」


続けるように紫が詠う。


「妖怪は消えた」


二人が詠うのは賛歌。忘れ去られた者達からの、未だ知られぬものに向かって邁進する者達への賛歌だ。


「悍しき祟りの呼び声だけを今もそこに」


路地裏の殺人貴と吸血姫に、海底で銀河の彼方を夢見る船の骸に、光の国の星の戦士たちに、全ての『正義の味方』達に。


「遥か幻想の彼方へと消え去り」


そして、それらに憧れる全ての存在への賛歌が朗々と詠い上げられる。


「在りし日の於母影を忍ばせ安らぎの中で生きるのみ」


それは母の詩だ。恐怖を知らせ、祈りを教え、人の子らを守り育て続けてきた母の詩だ。


「なれど人の子よ、恐れるなかれ」


母は祝う。子らがついに一人で歩き始めたことに。
自分達を離れ、遠くへ遠くへ、よろよろと、よたよたと、頼りなく、しかし確固たる意志を持って歩み始めたことを。


「神も妖怪も降り立たぬ荒野に貴方達は居る」


そして、母は今安らぎの中にいる。安らぎの世界にいる。
――――待っている。歩み続けた子らがそのまた子らを育て独り立ちさせる日を。


「荒野を共に走る、煌く正義と共に」


その時は、共に安らぎの中で生きよう。
幻想郷はいつだって、彼らを受け止めるべく未来への殿しんがりに居る。


「「正義の味方は、そこにいる」」


だから、置いて行かれたことは寂しくないんだと、そんな詩を詠って。
そして、世界への賛歌を詠いあげると同時に“隙間”はぱたりと閉じて見えなくなった。何も。






賛歌の残響は、朝日に向かって走るバイクのエンジン音に混じってやがて消えて行った。
英雄ヒーローはね……風のように現れて……嵐のように戦って……そして……必ず朝日と共に帰ってくるんだ”  ――――平山亨
                                                     小田克己 村枝賢一 仮面ライダーをつくった男たち より


こんにちはorこんばんはorおはようございます。這い寄る妖怪です。
作品集128、ulea氏の『傲慢』をリスペクトした作品でした。

はい、あの作品を読んで書こうと思った作品なんです。
幻想入り拒否と言うテーマを自分なりに噛み砕いてみたらこうなりました。


個人的にはとても楽しんで書けたので、読んでくださった方にも楽しんでもらえたらより嬉しいなと思います。



ところでこういった作品ですので、パロディ、オマージュ、クロスなどのタグが必要かなあと思ったのですが、なんだかどれもしっくり来なくてちょっと困ってます。


3/10 追記
皆さん、評価・コメント共に本当にありがとうございます。
何度見返しても嬉しいこと嬉しいこと。

以下コメ返し


コメント9さん
幻想入りってそう考えると重たいですよねー。
某地底世界みたくもう未練薄くないと呼ばれなかったりするのかも知れませんが。


uleaさん
わお、ulea氏からコメがいただけるとは。
何処かの誰かのために、が正義の味方の本位なら、満ち足りた世界には長居できませんからね。
どんなにそこに居たくても、もっと行きたい場所は誰かが辛い目に合ってるところ。


コメント22さん
誰かの前に立つときの背中ってほんと絵になりますよね。
東方キャラだけーねとか非常にいい背中をしていると思います。非・性的な意味で。

>斬魔大聖
好きなんですもの。

好きなんですもの。
正義の味方の話題なら割と真面目に外せない一本だと思いまする。


おにがみさん
もっと入れたかったのですよ色々と!
宇宙を駆ける銀の刑事とか富士山麓の鉄の城とか妥協を許さぬ狂気の正義とか。
“何処の誰かは知らないけれど、誰もが皆知っている”とか。

3/17 追記
正義の味方の皆さんがツイッターを有効活用しているとのこと。
被災地の方々と共に頑張ってほしいものです。

以下コメ返し

コメント51さん
SPIRITSはブラック以降のライダーも1〜3巻のような形式の外伝を出すべきだと思うのです。真剣に。


コメント54さん
ヒゲ兄弟は初期はガチっぽかったですが、3辺りから幻想郷的にシフトしていきましたよね。
そこのカメ。お前嫁じゃなくて王国が欲しかったんちゃうんかと。


コメント56さん
んー、個人的には幻想郷のほうがシンプルだと思うのですよ。
コトが終わったらだいたい元通りでだいたい犠牲者ゼロな辺り。
シンプルで分かりやすい幸せ。

>跡継ぎ
後輩とか弟とか後継機がたくさん出てきても休まないのです。


10/16 誤字等修正
以下コメ返し。

コメント60さん
男の子が書くと男の子っぽくなっちゃいますねー、やっぱりw
次の『新聞供養』も何度か「椛は女の子、女の子、キリッとしたロリくて可愛い子」と言い聞かせないとどんどん男前に。


コメント63さん
水木キャラの東方との親和性は異常。
地味に超設定多いですよね、幽霊族のあの人筆頭に。
這い寄る妖怪
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コメント



0.2810簡易評価
5.100奇声を発する程度の能力削除
凄い…凄いなぁ…
8.100コチドリ削除
一番槍と殿、どちらも大切、どちらも頑張れ。もう一度言う、どちらもだ。

理屈抜きで楽しませて頂きました。
素晴らしき“幻想入ラズ”ありがとうございました。
9.90名前が無い程度の能力削除
あなたを、幻想郷に招待します。
この招待を受けるか否かは、あなたの自由です。
拒み、いつものなんでもない日々に戻るか。
受け入れ、そちらの全てを捨てるか。
11.100名前が無い程度の能力削除
すっごい
表現できないくらいすっごい
100点じゃ足りません…
12.100名前が無い程度の能力削除
よかった
14.100名前が無い程度の能力削除
こりゃすげぇ
15.100ulea削除
幻想郷はすべてを受け入れる、その姿勢はとても素敵なものだと思う。
だけれども同時に、すべてのものを幻想郷の色に染め上げずにはいられなくって。
幻想郷には正義も悪もない。守るべき街や挫くべき巨悪は存在しない。
ちゃらんぽらんな連中が、のらりくらりと日々を過ごしているような暢気な世界。
そんな場所で、はたしてヒーローがヒーローのままでいられるかっていったら。
きっと、変わっちゃうんだろうな。変わらずには、いられないだろう。
それが良いことか悪いことかだなんて、もちろん決め付けることはできないけども。
悪の組織との激闘を宴会で締めるヒーローなんて、やっぱりちょっと格好つかないよね。
ヒーローには似合わない。相応しくない。だから彼らに幻想郷は、いらない。
いろいろと考えさせてくれるお話でした。とても、とても面白かったです。
16.100名前が無い程度の能力削除
泣けた。
頑張れヒーロー。
頑張れゆかりん。
18.無評価スポポ削除
百点
20.100名前が無い程度の能力削除
選択肢って大事。
22.100名前が無い程度の能力削除
顔も名前も必要ない、ヒーローには「背中」があればいい…とは誰の言葉でしたか。
実に良いお話でした!

一点だけ、趣味に口を出すのは無粋の極みではありますが、斬魔大聖だけちょっと場違いかなと思いました。
野暮天失礼!
24.100久我暁削除
久々に創想話で読む楽しみを思い出させてもらいました。
心が沸き立ち、そして少ししんみりとさせられました。
どちらにも共感を覚えられ、辛いです。
良い作品をありがとうございます。
27.100名前が無い程度の能力削除
とても良いものを見た
鮮烈でいっそ清々しささえ感じるのに頬を涙が伝う
30.100おにがみ削除
色々な色々な感想が心に浮かび それをも超える何かが心の中から一陣の風となり細かな感想を押し流していきました。

すごい  もはやこの一言だけです。 百点 では足りない千や万をつけたいぐらいです。


それでもひとつ  無限の剣は? 俺が見落としたか?
31.90鈍狐削除
ああ、こういう真正面からのベタネタは大好きです。
個々人の趣味と笑わば笑え。私はあいつらの生き様に惚れたんだ。
作品としても読みやすくて、非常に面白い作品でした。
37.90桜田ぴよこ削除
熱い気持ちが蘇りました。
とても良かったです。
38.90名前が無い程度の能力削除
幻想入りしなかったモノたちの視点……
とても新鮮でした。
42.100名前が無い程度の能力削除
衝撃を受けた。
45.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいです
思い出が蘇るようだ
46.100名前が無い程度の能力削除
素敵な作品をありがとうございました。
50.100名前が無い程度の能力削除
いいね、とても
51.100名前が無い程度の能力削除
うぉぉぉっ…!感動した!。私の正義のヒーローは、5歳の頃から変わらず黒い太陽です。でもspirits良いですよね。
54.100名前が無い程度の能力削除
いい、としか言えないね。                         …しかし、俺の正義のヒーローは赤の帽子を被った英雄の兄と緑の帽子を被ったちょっとおとぼけてる弟の兄弟だった。       
56.100名前が無い程度の能力削除
悪の秘密結社が送り込む超神と戦うのが使命
そいつを倒せば みんなの笑顔が待っていた
でもここでは そんな単純(シンプル)な世界観は通用しない

平和な世界でもヒーローは悩んで、結局顔も知らない誰かを探しまわるみたいですね。
いっそ本当に期間限定にして、息子にでも継いでもらえば安心していけるのに……
……シリーズものってそういうことなのか? そうなのかー?
育て独り立ちさせるのかー。
57.100名前が無い程度の能力削除
感動で胸がいっぱいになりました!
60.90名前が無い程度の能力削除
小さいころ見たテレビのヒーローものを思い出す……良い話だった。
それにしてもみんな男の子みたいな子供たちだw
61.90名前が無い程度の能力削除
やはり「正義の味方」はいいよなぁ。彼らの魅力に改めて感じ入ることができました。ありがとうございます。
62.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい!
63.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい。
私の好きな物が全て詰まっていた。
特に幽霊族の彼は自分も使おうと思っていただけにw
しかしバッタの改造人間からそんな話になるとは…神奈子さまの話が面白かったです
64.100名前が無い程度の能力削除
彼らの手は二本しかなく、手にとって守れる人々の数はあまりにも少ない。
でも今日も彼らは理不尽と戦い続けるのですね。
そんな彼らの殿を守れるというのは、名誉なことだと思います。

そして、彼らが守りきれない人々の助けになるのが、外の世界で生きる僕らの仕事なのでしょう。
68.100名前が無い程度の能力削除
救うことも、戦うことも、彼らはやってくれる。
いつまでも、いつかまで。
70.100名前が無い程度の能力削除
面白かった
71.100名前が無い程度の能力削除
読んでいて胸が熱くなった神祭子様とゆかりんの語りのあたりからテンション上がりまくり
75.100名前が無い程度の能力削除
こんないいSSを今まで見過ごしていたなんてorz
77.100名前が無い程度の能力削除
あああああああああああ‼あの三位一体と幽霊族の声が自然と脳内再生されました。
神様の幻想入りをこんな風に解釈する人がいたなんて驚きです。読めて本当に幸せでした。アニメやDVDばっかみてる友人を少し見直してやろうという気分になぜかなってしまった。
這い寄る妖怪さん、あなたのアイデアはすごい。
79.100名前が無い程度の能力削除
かっこよすぎ!
三行半ではなく、未来への殿。
こんな幻想郷を描いた作品、はじめて目にしました。
清酒を傾けながら黒塗りのVHSを交わす紫と神奈子が最高に決まってる。
80.100名前が無い程度の能力削除
思わず目が潤んでしまいました
胸がいっぱいで言葉にならない
81.100名前が無い程度の能力削除
感動した。
何でこの作品が一万超えてないのかがわからない
83.100名前が無い程度の能力削除
幻想郷には英雄はいない。
倒すべき悪はそこになく、怒りを放つ善もそこにはない。
ただ流れる月日と平和がある。
それはヒーローにとってなんと理想的で、なんと残酷な世界だろうか。
素晴らしいクロスオーバーに感動しました。
84.100名前が無い程度の能力削除
うはぁ、素晴らしい。
良い作品をありがとうございます。
89.100名前が無い程度の能力削除
こんな良作が埋もれてるとは・・・やっぱ創想話漁りはやめられない。
世代がガラッと変わる貧乏探偵のチョイスには驚きましたが、
決して折れぬ魔を断つ剣ですので資格は十二分なんですよね。
90.80名前が無い程度の能力削除
戦わなければ生き残れない
91.100リペヤー削除
幻想は優しい。現実は厳しい。
それでも尚、現実に生きる怪異、異形たち。
良いお話をありがとうございました
92.100名前が無い程度の能力削除
感無量
94.100dai削除
久々に泣かせてもらいました。
「光の巨人」も「仮面のヒーロー」も「怪獣王」も何もかも死ぬまで忘れられない私の大切な思い出です。
またその背中を見直したいです。