Coolier - 新生・東方創想話

桃李言わざれども下自ずから蹊を成す

2011/03/05 14:40:40
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俺は生まれて初めて、大衆から注目されるという状況に遭遇した。
一介の兎である俺が、こうも沢山の月人の視線を集めるなんて、考えたこともなかった。
俺は今、この部屋の真ん中に立ち、後方を除いた三方を月人達に囲まれ、その視線を浴びている。

そう、ここは……月の都にある、裁判所だ。
俺はそこに被告として立たされている。
月人達は俺を舐めるように眺め、俺に対する量刑を決めていた。
だがその時間も、そう長くは掛からなかった。
元々、俺に対する処遇は決まっていたも同然なのだから。

「被告は、本法廷終了ののち、しかるべき施設にて再教育を施す。
 その後に、元の職場へと復帰。以上!」

裁判長を務める月人がそう言い放ち、俺に対する審理は終わった……ハズだった。

「裁判長、その処遇には納得がいきません。そもそも、それでは本来の規律に違反することになりますよ?」

俺を取り囲む月人の一人が、そう言った。
長い金髪に、白い帽子を被った、少女と呼ぶにふさわしい外見の月人。
本物の彼女を見たのはこの法廷が初めてだが、その名前と役職ぐらいは俺でも知っている。
綿月豊姫。月の都の自衛隊とでも呼ぶべき、「月の使者」のリーダーだ。

「規律を乱した玉兎は、月の使者担当となり、再教育を受ける事。それが、玉兎処遇の原則です」

豊姫は、裁判長をじっと見る。決して睨むのではなく、あくまでも笑顔を崩さずに。
しかし、その表情にはどこか厳粛さも感じられた。
笑顔であるにも関わらず、そこから放たれる威厳のようなオーラは、とても不思議に感じられる。

「確かに、原則ではそのようになっています。しかし、現在の玉兎収集率は貴方もご存知でしょう?
 月の使者担当玉兎は、明らかに他の担当よりも数が多いのが現状です。
 これ以上、不要に月の使者担当を増やすわけにはいかないのですよ」

裁判長は、笑顔とは言えないまでも、厳粛な面持ちで豊姫を見返した。
しかし、裁判長の言葉には、明らかに豊姫に対する悪意のようなものを感じられる。
そしてそれは、残りの月人の視線にも言えることだった。
俺を取り囲んでいる月人達は、一人残らず今は豊姫の方に目を向けている。
その表情には、明らかな敵意があった。

「不要、と仰いましたね?月の都は、いつ地上人の侵略に遭うかも分からないのですよ?
 それなのに、月の使者担当を不要と申すのですか?」

豊姫の語気にも、少々のいらだちが見られ始めた。
あの笑顔も、今は厳粛な顔になった。
しかし、それでも相手を睨む事だけはしない。

「月の使者そのものを不要と言っているのではありません。
 ただ、担当にふさわしき人数を超えていると言っているのです」
「ふさわしき人数ですか?月の使者担当に定数があったなんて、始めて耳にしましたが」

こんなやり取りが、しばらく続いた。
今日の法廷で一番時間が掛かったのは、このやり取りであろう。
最終的に、豊姫の意見が通り、俺は月の使者担当となることで話はまとまった。
その背景には、彼女の権力の強さがあった。それは、間違いない。

法廷が終わり、俺のもとに豊姫がやってきた。

「これで、貴方も今日から私のペットね」

最初に見たときと同じ笑顔で、彼女はそう言ってきた。
『ペット』。
その言葉だけが、俺の頭の中でぐるぐると回っていた。



俺は、大きな屋敷に連れてこられた。
月の使者のリーダーというだけあって、「家」も前の職場のリーダーとはケタ違いだった。

中に入ると、まずは居間に通される。
居間に入ると、一人の月人が窓の外を眺めているのが目に付いた。
彼女は、扉が開く音に気付き、こちらを向く。

「お姉さま、また新しいペットですか」
「えぇ。なかなかに高いオークションから競り落としてきたわ」

俺はソファに座るよう促される。
言われたとおりに座ると、彼女たちも俺の向かい側のソファに座った。

「さて、これから貴方の業務について説明するんだけど……その前に、名前を決めなくちゃね」

名前……か。
前の職場では、『お前』とか『そこの』とかでしか呼ばれたことが無い。

「う~ん……何がいいかしら」

豊姫は自分の膝に頬杖をついて、眉根にちょっとしわを寄せながら、そうつぶやいた。
こいつ……真面目に人の名前を考えているんだろうか?
人の事をペット呼ばわりしたり、いつもヘラヘラ笑っていたり、どうにも彼女からは、軽薄なイメージしか湧いてこない。
権力もそれなりに持っている、いわゆるお嬢様だ。
とても、責任感のある人物には見えない。

まあ、仮に責任感があったとしても、月人であることに変わりはないのだ。
月人はみな、俺たち玉兎を道具のようにしか思っていない。
だから、それ相応の……いや、それよりも酷い扱いをする。
道具だって、ちゃんと手入れをしなきゃいつかは錆びていくっていうのに、奴らはそれすらも怠っているのだから。

「トウリ」

唐突に、豊姫は持っていた扇子の先をこちらに向けながら、そう言った。

「じゃ、名前は決まりね。それじゃ、軽く業務の説明をするわね」

気に食わない。
たったの1,2分で決められた適当な名前……気に食わない。
そうだ、気に食わないんだ。何もかも……。
こんな軽薄な月人にペット呼ばわりされて、適当な名前を付けられて……
こんな奴の下で、また奴隷同然のように……いや、道具として俺は扱われなきゃならないのか?

「さてと……それでは、そろそろ職場へ移しましょう」

紫髪の……依姫と言ったかな、彼女がそう言った。
彼女たちに連れられ、俺は中庭へと移動させられた。



中庭には沢山の玉兎が居た。
始め、全員楽しそうにおしゃべりなんかしていたようだが、こちらの気配に気づいた途端、
持っていた銃剣を構え、稽古のフリをし始めた。

「お前達に新しい仲間ができた。トウリという名だ。仲良くしてやってくれ」

玉兎達は俺を見つめた。
でも、先ほどの法廷で月人達が俺を見ていたそれとは違う。
同族としての視線、同族としての興味……そうだ、彼らは俺の仲間なんだ。

あの法廷で、どういう処遇が下されるにしろ、どこかしらの担当に着かされることは分かっていた。
それが薬搗きであろうと、農作物であろうと、月の使者であろうと関係ないと思っていた。
だが、それは違った。
月の使者と言えば、玉兎の間では厳しいことで有名だ。
何といっても、罪を犯した玉兎が再教育の場として連れて行かれる場所だからだ。
しかし、逆にいえばここでしっかりと訓練をこなせば、それなりの体力と戦闘技術が身に着く。
そうすれば、俺たちをこき使ってきた月人に対して、反乱を起こすことができる。
ここへ来る時、ずっとそう考えていた。

だが、それが甘い認識であったことに、俺は気付かされた。
こいつら……明らかにやる気が無い。
これじゃあ、農作物担当や薬搗き担当の方が毎日腕を使う分、よっぽど腕力があるだろう。
こいつらと一緒に訓練したところで、月人達に反旗を翻すことなんて到底不可能のようだった。
俺はまた、絶望の淵に追いやられてしまった。

「えへっ、よろしくね!トウリ君」

唐突に、玉兎の一人がそう話しかけてきた。

「お前は?」
「あっ、ごめんなさい。私はレイセンって言うの。貴方の一つ上の先輩よ」

つまるところ、俺の次に新参ということらしい。
レイセンは、ようやく後輩が出来てうれしそうな感じだった。
それにしても、レイセンに限らずここの玉兎は、どうにも気持ちが緩んでいるというか、呑気すぎる。
散々月人にこき使われてきて居るというのに、なんでこいつらはこんなにも呑気なんだろうか?

俺がそんな風に思考を巡らしている間も、レイセンはいろいろな事を話しかけてくる。
正直うっとうしいのだが……まあ、情報収集ぐらいは出来そうだな。

「なぁ、なんか皆訓練サボってるようだが、いつもこうなのか?」
「そうだね。いつもこんな感じ」
「よく怒られないな……」
「あはは、本当だよね」

呆れるというより、ここまで来ると清々しさも感じるな。

「あれ?どこ行くの?」
「もう、こんなとこには居られねぇよ。俺は出て行く」

レイセンがあたふたとした顔をする。

「出て行くって、そんな……豊姫様も、依姫様も心配しちゃいますよ?」
「知ったことか!」

俺は銃剣を握り締め、屋敷の外を目指した。

「ついてくんな!」

レイセンが今にも俺の腕を掴んで、引き戻そうとするので、そう叫んだ。
それを聞いたレイセンは、手を引っ込めて、縮こまりながらこちらを眺めた。
もう俺を止めようと言う気は無さそうだ。



屋敷の出口へ差し掛かった。
ここから抜け出しさえすれば、もうあんな奴らの言いなりになんかならなくて良い。
これで、俺は自由になるんだ……っ!

「トイレだったら、あっちだけど?」

突然、背後から聞き覚えのある声がした。
振り返ると、いつものすまし顔をした豊姫が立っていた。

「それとも、依姫に買い物でも頼まれたのかしら?」

あくまでも笑顔で、彼女は俺を見つめる。
俺は、持っていた銃剣を構えようとしたが、その時手元に銃剣が無いことに気がついた。

「飼い犬に手を噛まれるって言うけどね、それは飼い主のしつけが悪いから。
 ちゃんと良い子にしつけてれば、噛まれることなんか無いのよ」

そういって、彼女は俺が持っていた筈の銃剣をこちらに向ける。

「何で、俺の銃を……」
「あらあら、まだ私の質問に答えてもらってないわよ?
 質問するなら、まずはそれに答えてからでしょ?」

豊姫は銃剣を右手でクルッと一回転させ、肩に担いだ。

「……俺はここを出る。あんた達の奴隷になるなんて、まっぴらだ」

豊姫は特に驚いた様子も、怒った様子も見せない。

「ふ~ん。それで、どこか行く当てなんてあるの?」

その質問に、俺はとっさに答えられなかった。
行く当て……。

「そんなの、あんた達には関係ないだろ……」
「有るわよ。貴方は私のペットなんだから」

豊姫はにこにこしながらそう言った。
それが、俺の中のボルテージを引き上げていく。

「ふざけるな!ペットペットって……お前は、俺達を何だと思ってるんだ!」

豊姫は少しうつむいた。
ここへ来て初めて、彼女は感情らしい感情を見せた……気がする。

「ここから外へ出たら、他のリーダーに捕まるのがオチよ。
 貴方がここから逃げようと、月人の手からは逃れられない。
 それが、貴方達玉兎の運命なのよ」
「なっ……!」

言い返してやりたかったが、次の言葉が思い浮かばない。

「さ、戻りましょう。依姫を怒らせると怖いわよ?」

そう言って、豊姫は銃剣のグリップをこちらに差し出した。
俺は、それを無言で受け取ると、豊姫に腕を握られた。
そのまま、引きずられるような感じで、稽古場へ連行されたのだった。



稽古場へ付くと、サボっていた玉兎たちが一斉に稽古のフリに戻る。
その切り替わりの素早さだけは、何者にも劣らないだろう。

「さて……と。ここで、みんなに言っておかなければならない事があるわ」

稽古場へ着くなり、豊姫はそう言い始めた。
俺がチラッとその顔を覗き込むと、先ほどまでと打って変わって、真剣な表情をしていた。

豊姫のいつもと違う雰囲気に、他の玉兎の間にも緊張が走っていた。
やはり、よほど珍しいことなのか……それとも、怒らせると怖いと知っているからなのか。

「ついさっきね、脱走者が現れたわ。まあ、未然に防ぐことは出来たけれど……
 依姫の監督責任もあるけれど、貴方達もそれを見過ごした責任があるわよね?
 だって、ちゃんと稽古していたら、見逃すはず無いもの」

稽古は、数人の玉兎でペアを組んで行われる。
確かに、まじめに稽古していたら、俺が逃げる隙は無かっただろう。
まあ……それでも、レイセンは気づいていたんだが。

「貴方達にやる気が無いのは、これでよく分かったわ。
 もう、お仕置きどころじゃ、事の重大性が分からないでしょ、貴方達?」

そういうと、彼女は持っていた扇子を開いた。
それを見た玉兎たちは、いよいよ持って顔面蒼白になっていく。

「貴方達の心は既に穢れている。一度、この扇子で浄化してあげる必要があるみたいね」

玉兎たちは慌てているのだが、俺にはその理由がいまいち掴めない。
とりあえず、この世の終わりみたいな顔をしているレイセンを捕まえて、事情を聞いてみた。

「あの扇子は、『周囲の森ごと素粒子レベルで浄化する扇子』なんです!」

彼女のその台詞を聞いて、俺は呑気にも、それが正式名称なのか?と聞きそうになった。
しかし、その疑問が口をつくよりも早く、彼女の言っている事の重大性に気づいた。
慌てて豊姫の方を見返すと、彼女は既に扇子を高く振りかざしていた。

抵抗は出来ない、しても無駄だ。俺はそれを悟った。
だから、必死に目を瞑った。


それから、長い沈黙が流れた。
沈黙……そうだ、俺は今沈黙が流れていることに気がついた。
この体に何かあったのなら、それすらも感じられないはず。
俺は、恐る恐る目を開けた。

まず目に付いたのは、さっきまでの俺と同様に、目を瞑って顔を腕で覆っている玉兎たちだった。
それから……口を手で押さえながら、今にも噴出しそうに震えている豊姫の姿が見えた。

少しして、他の玉兎たちも異変が無いことに気づき、目を開けた。
その頃になると、豊姫も笑いを堪え切れず、腹を抱えて笑い始めた。

「全く……私の言うこと、疑いもしないなんて、貴方達は……。
 私が改まって、まじめな話なんかするわけ無いじゃない」

玉兎達は呆れたような……でも笑っているような表情で豊姫の周りに集まった。

「もう、みんな素直なんだから。ふふっ、可愛いわね」

豊姫は集まってくる玉兎達の頭を撫でて行った。
撫でられた玉兎達は、嬉しそうに尻尾を振ったりしている。

俺にはもう理解できなかった。
どうしてこいつらは、こんなにも馬鹿にされ、道具として扱われているにも関わらず、
月人達にじゃれついて、文字通り尻尾を振ったりするのだろうか?

「はい。みんなにお詫びのしるし」

そう言って、豊姫は何処から持ってきたのか、たくさんの桃を玉兎達に差し出した。
玉兎達は一人ずつ、それを受け取っていった。

「はい、トウリ君の分」

そう言って、レイセンが桃を一つ差し出してきた。

「俺は、いい……」
「そんな事言ったら、豊姫様が可哀想だよ」

レイセンは、尚もしつこく桃を差し出してくる。

「いいって言ってるだろ!」

俺はレイセンの腕を振り払った。
すると、レイセンは持っていた桃を取り落としてしまった。

音も無く、桃が地面に落ちる……。
レイセンは、両手で顔を覆って泣き出してしまった。

更に俺の怒鳴り声を聞いた他の玉兎や、豊姫が一斉にこっちを見始める。

「……ちっ」

俺は地面に落ちた桃を拾い、ブレザーの端で軽く土を拭った。

「俺が悪かった……だから、泣き止んでくれよ」

それでもレイセンは、ただ泣くだけだった。
他の奴らも、ずっとこっちを見たままだ。
くそっ……何なんだよ。これじゃあ、俺が悪もんじゃねぇか……。


その時、豊姫がレイセンの側に近寄り、そっと抱きしめた。

「泣き虫なところは、あの子にそっくりねぇ」

豊姫の胸の中で泣き続けるレイセン。
豊姫は、そんなレイセンの頭を優しく撫でた。

レイセンもすぐに落ち着きを取り戻し、ひとまず泣き止んだ。
それから、そっと顔を上げて、豊姫を見上げる。
豊姫はハンカチを取り出して、レイセンの顔を拭いてやる。

「全く、せっかくの可愛い顔が台無しじゃない」
「す、すみません……豊姫様……」
「ま、レイセンの泣き顔も可愛いけどね」

豊姫はハンカチを仕舞うと、今度はこちらを見た。
俺は、それを見てとっさに身構えてしまった。

豊姫は、ゆっくりと近づいてくる。
彼女が一歩進むたびに、俺の鼓動は早くなった。
そして、彼女は俺の目の前にやってきた。

つい、目を瞑ってしまった。
叩かれるかもしれない、ぶたれるかも知れない……いつものように。
さっき、逃げ出そうとした上にリーダーにあんな口を利いたのだ、何をされたっておかしくないんだ……。

でも、次の瞬間に感じた感触は、俺の予想を大きく裏切ってくれた。
痛みではない……それは、温もりと言うべきか……。
何かに優しく包まれたような、そんな気がした。
俺は、それが何故なんだか分からなくて、恐る恐る目を開けた。

すると、豊姫がレイセンの時と同じように、俺を抱きしめていた。

「なっ……!?」

何かを言おうとしたが、頭の中に言葉が浮かんでこない。
それだけ、この状況は衝撃的であり……予想外のものであった。

「もう、何にも怯えなくていいよ。もう、何も怖くないから……」

唐突に、彼女はそう言ってきた。

「お、俺が……何を怖がってるって言うんだよ……?」
「怖くなかったら、どうして私が近づいたとき、身構えたの?」

何も言い返せない。
そうだ、確かに俺は豊姫がこっちへ来たとき、身構えていた。
彼女がこっちへ近づくたびに、恐怖で鼓動が早くなっていった。

だって……いつだってそうだった。
あいつらが、俺達に近寄ってくるときは、大抵殴るか、罵倒するかのどっちかの時だ。
まして相手は、月の使者のリーダー。
俺は今更ながら、身の程知らずも良い所だと思った。

「誰かからの好意はね、ちゃんと素直に受け取りなさい。良いわね?」

そう言って、豊姫は俺を解放した。
俺は何がなんだか分からなくなった……。
明らかに、前のリーダーとは違う……月の使者は、その過酷な重労働に耐えられず、
逃げ出す玉兎だって居る程だと聞いていたのに……全然、話が違うじゃないか。

「お姉さま!またこんなところで、油を売っていたんですか!」
「あらあら、小うるさい妹が来たわね。じゃね、みんな」

そう言って、豊姫は屋根の上を飛び越えていってしまった。

「やれやれ、ちょっと目を離すと、すぐに玉兎へちょっかいを出す……。
 ほらほら、貴方達もちゃんと稽古しなさい」

依姫に言われ、しぶしぶ稽古のフリに戻る玉兎達。
しかし、俺の心境はなんとも複雑だった。
何が正しくて、何が間違っているのか……もう、俺には分からないよ……。



その日の夜、俺はこっそりと屋敷を抜けた。
ここに居ると、気が変になりそうなんだ……月人は信用しちゃならない。
あの綿月姉妹だって、俺達を油断させて何か企んでるに違いないんだ。

大体、あの裁判の時だって豊姫の行動は怪しかった。
なぜ、あそこまでして俺を月の使者担当にしようとしたんだ?
どう考えたって、おかしな事ばっかりだ。
これ以上、あいつらの好きにさせてたまるかってんだよ……。


屋敷の敷地から少し出たところで、俺は何者かの気配に気づいた。
数は5,6人ぐらいで……少なくとも、玉兎の気配ではなかった。

「誰だよ、お前達」

向こうは問いに答える代わりに、いきなり俺を縄で拘束し始めた。

「な、何しやがる!」

持ち出した銃剣も、あっさり取り上げられてしまう。
大した抵抗も出来ないまま、ぐるぐる巻きにされてしまった。

抵抗できない俺を、奴らはそのまま連れ去ろうとした。
その時だった……。

「いてっ!」

突然、俺を拘束していた一人がそう言った。
それと、足元に何かが落ちるような音がした。
でも、暗くてよく見えない。

「家畜泥棒とは、なかなか頂けないわね……」

声がした方を振り返ると、寝巻き姿の豊姫が居た。
その手には、いくらか桃の種が見えた。

家畜泥棒……もとい、誘拐犯たちは戦闘体制に入った。
多勢に無勢、誘拐犯たちは6人がかりで豊姫に襲い掛かる。
俺は、とっさに目を瞑ってしまった。

しかし、豊姫の声は全く聞こえなかった。
代わりに、誘拐犯たちと思しき断末魔は聞こえたが……。

俺が恐る恐る目を開けると、誘拐犯たちが逃げ出していく光景が見えた。
そして、ふと横を見ると、豊姫が俺の拘束を解いてくれていた。
しかし、その表情はどこか寂しげだった。

「そんなに、ここが嫌?」

その問いかけに、俺は何も言えなかった。
何と言うか、言う資格が無いような気がして……。

「ねぇ、トウリは私の気持ち、考えてくれたことある……?」

その言葉を聞いた瞬間、俺の中で大きなもやもやが生まれた。

「まあ、そんな訳ないよね。まだ、出会ってから一日しか経ってないんだもの」

豊姫の気持ち……分からない。
俺は、あんたを恨んでる。その気持ちでいっぱいだ。
でも、あんたは俺をどう思ってるんだ……?
こんなこと、考えたことも無かった。
いや、考えなくたって分かってると思っていた。

月人は、みんな俺達玉兎を道具だと思ってる。そうなんだろ……?
あんただって、本当は俺のこと道具の一つとしてしか見てないんだろ……?

「さ、帰りましょう。みんな待ってるから、ね?」

そう言って、豊姫は俺に右手を差し出した。
でも、その手を素直に受け入れることは出来なかった。
彼女が嫌いだからと言うよりは……後ろめたいからだ。

「俺……帰る資格なんか、無い。逃げちまったんだ……」
「そうね、確かに貴方はうちの職場から逃げ出したわ。それは、逃亡罪にあたるわね。
 だとしたら、貴方は月の使者担当として再教育を受ける義務が生じる。
 だから、例え貴方が嫌がっても、行くべき場所は私の家なのよ」

豊姫は、まだ俺に右手を差し出してくれていた。
俺は、それを無言で握った。

「手、冷たいわよ」
「そ、そうか……?」

俺が手を離そうとすると、今度は豊姫がぎゅっと握ってきた。

「私が暖めてあげる」

結局、綿月邸に着くまで、手を繋いで歩いてきた。
なんだかそれが、小っ恥ずかしい気がした。


屋敷に入ると、豊姫はすぐ寝室へ向かってしまった。
俺も、自分達の寝室へ向かった。
結局、自分を誘拐しようとした犯人の正体は良く分からなかった。
豊姫にも、聞くに聞けなかったし……。

そう思ったとき、寝室前の廊下で、一人ポツンと窓から外を眺めている影が見えた。
近づいてみると、それがレイセンだということが分かった。

「あっ!トウリ君!」

向こうは、こっちに気がつくとパタパタ走ってきた。

「良かった、無事だったんだね!急に居なくなっちゃうから、本当に心配したんだよ……」
「心配……?何でだよ。俺、あんだけ酷い事したのに……」

レイセンはちょっと俯いた。

「確かに、アレはちょっと酷いなって思ったよ。でも、トウリ君の気持ち……私にも分かるから」

彼女は、俯いたまま続ける。

「私、ここへ来る前は薬搗きの担当だったの。でも、あんなに必死になって搗いたって、
 褒められるわけでもないし、頑張れば頑張る分、何かが報われるわけでもない。
 ただ、淡々と薬を搗かされて……職場の空気もあんまり良くなかったの。
 それで、嫌になって逃げちゃった……」

彼女の言いたいことはよくわかる。
俺も、同じ思いで前の職場を抜けたのだから。

「最初、月の使者の担当になって、やっぱり怖かったんだ。
 前のリーダーがそうだったから、豊姫様も依姫様も、私の事虐めるんだと思ってた。
 それに、月の使者担当はあまりにも重労働で、逃げ出す玉兎が後を絶たないって聞いてたし……」
「確かに、俺もそう聞いていたが……どうにも、そうには見えないんだが」

稽古だって、みんなまじめにやってないし、豊姫は稽古中に桃なんか配ってるし……
これの何処が、逃げ出したくなるほどの重労働なのだろうか……?

「どうもね、私達騙されていたみたいなの……」
「騙されてたって……豊姫たちに!?」
「ち、違います!綿月様は本当にいい人達です!私達を騙していたのは、他のリーダー達ですよ」

他のリーダーが、俺達を騙していた……?

「私達玉兎の労働規約に、一つのミソがあるんです。
 玉兎が罪を犯した場合、再教育のため月の使者担当にさせられます。
 例えば、私達みたいに玉兎が職場から逃げれば逃亡罪が科せられ、これに該当します。
 私みたいに、元の職場が薬搗きであろうと、月の使者担当になるんです。
 じゃあ、この月の使者から玉兎が逃げたら、その玉兎は何の担当になりますか?」
「それは、当然月の使者だろ……?」

レイセンはゆっくりと頷いた。

「もう、この時点で気付いてますよね?この労働規約の問題点……ポイントに」
「つまり、月の使者担当の玉兎が、絶対的に多くなる……ってことか」

そういえば、あの時の裁判でも、月の使者担当が不要に多くなるとか、裁判長が言ってたっけ……。
それは、こういう事だったのか。

「職場がしっかりしていて、リーダーがちゃんと玉兎達の面倒を見ていれば、脱走はおろか、罪を犯すことも本来だったらありません。
 ですが、実際玉兎による犯罪は時たま起こるんですよ」
「俺らみたいに、職場の雰囲気に耐えられなくなった奴らが、そういうことをするんだろうな」
「豊姫様は、そういう思いをしている玉兎を集め、月の使者担当という名目で、匿っているんですよ」

あの人が、玉兎を集めている……?

「なんで、そんなことを……」
「決まってるじゃないですか。私達の事、親身になって考えてくれてるからですよ。
 他のリーダー達の酷い扱いから、私達を守るためです」
「だが、それじゃあ、他のリーダーは納得しないだろう?」
「えぇ……だから、時折こっそりこの屋敷へ刺客を寄越しては、玉兎を誘拐していくらしいんです。
 そうでもしないと、月の使者担当に戻されちゃいますからね」

じゃあ、さっき俺をさらおうとしたのは、他のリーダーが仕向けた刺客だったんだな。
とりあえず、レイセンには、さっきの事は黙っておくか。
変に心配させちまうだけだし……。

「さらわれた玉兎は、表向きだと月の使者担当の激務に耐えかねて逃走した、ということにされます。
 でも、本当に逃走したのなら、拘束されて、月の使者に戻されてるはずですよ。
 月人達に見つからず、永遠に逃げ延びるなんて不可能なんですから。まあ、地上に行けば話は別ですが……」

この口ぶりからすると、レイセンも一回は地上へ逃げたみたいだな。

「……豊姫様、命を狙われてるんですよ」

突然のレイセンの一言に、俺も耳を疑った。
豊姫が……狙われている?

「他のリーダーから、玉兎を奪っているんですからね。当然、反感を買ってますよ。
 ただ、綿月様もそれなりに権力がありますから、表向きでは誰も攻撃はしません。
 だから、こっそりと刺客を送りつけては、豊姫様を襲っているらしいです……」

また、刺客か。自分達は手を汚さずに、汚い仕事は他人に押し付ける。
いかにも、あいつ等らしいやり方だ。

「……でも、その刺客に玉兎を使っているわけではないんだな」
「玉兎では、大した働きは出来ないと思っているんでしょう。舐められたものですよ」

だから、誘拐犯たちも玉兎ではなかったんだな。

「その、豊姫……様は、なんで命を懸けてまで、俺達を匿ったりするんだ?」
「う~ん……それは、さすがに私にも分かりませんよ」

まあ、それもそうだよな。

「あれ?トウリ君、何処行くの?」
「豊姫様のところへ行く。どうしても、謝りたいんだ……今までの事」

今はもう寝てしまってるかもしれないが……でも、このままもやもやしてたんじゃ、上手く眠れそうにもない。
もしかしたら、それは豊姫様も同じかもしれないし……。

「そっか。じゃあ、私は先に寝るね」
「ああ、おやすみ」
「うん。おやすみ、トウリ君」

俺は、豊姫様の部屋へ向かって歩き始めた。

「ねぇ、トウリ君!」

突然レイセンに呼び止められ、俺は思わず振り返った。

「……もう、居なくなっちゃやだよ。せっかく出来た、後輩なんだから……」

レイセンは、寝室のドアをしっかりと握ったまま、こちらを見続けた。

「分かったよ。先輩の頼みなら、聞かないわけにはいかないものな……」
「約束だからね」

そういって、レイセンは寝室へ入った。
俺はそれを見届けると、今度こそ豊姫様の部屋へ向かって歩き出した。



部屋の前まで来たは良いが、なかなか中に入れなかった。
入って、まずなんて言えばいいんだ……?
いや、それ以前に寝てたら……声掛けらんないよな。

ここに来るまでは、何とかなるとか思ってたのに、いざ目の前に来ると頭が真っ白になっちまう。
俺馬鹿だよなぁ……こんなんだったら、明日にすりゃぁいいのに。
でもレイセンにああ言っちまった手前、やっぱり今日は諦めたとか言って、戻るのは恥ずかしいしな……。

「わっ!」
「うわああああぁぁぁぁぁぁっ!」

考え事をしていたら、突然後ろから大声が聞こえてきて……つい、こちらも大声を上げてしまった。

「くすくす、凄い顔してる」
「お、驚かさないでくれよ……」
「あら、レディの部屋の前で一人こそこそしてたくせに、何を言ってるのかしら?」

突然の本人登場に、これ以上言葉が出ない。
ただでさえ、なんて話しかけようか考えている最中だったのに……。

「寝てたんじゃ……なかったのか」
「ちょっと、お手洗いにね。それで、急にどうしたのかしら?
 私に添い寝してもらいたいの?」
「い、いや……そういうわけじゃ……」

この人と話すと、本当にペース持ってかれっぱなしだな。

「まあ、用件も無しにこんなところへは来ないわよね。
 でも、その様子だと少し長くなりそうね」

そういうと、豊姫様は部屋のドアを開け、手招きをした。

「いらっしゃい。そこだと寒いわよ?」

豊姫様に促され、俺は部屋の中に入った。
部屋に入ると、豊姫様は椅子を二脚持ち出して、片方に腰掛けた。
彼女の指示が出るのを待って、俺はもう一方に腰掛ける。

「それで、どんな用件かしら?」

豊姫様の問いかけに、すぐに答えられなかった。
言いたいことはハッキリしているのに……それを、上手く言葉に出来ない。

自分から押しかけておいて、ずっと黙り込んでいる俺を見ても、豊姫様は怒ったりせず、ただ俺の顔を見ていた。
あの、いつもの笑顔で……。

「その……さっきは、ありがとうございました……」

俺がそう言うと、豊姫様は下あごに右手の人差し指を乗せて、空を見つめ始めた。

「さっき……なんかあったっけ?」
「へっ?」
「う~ん……思い出せないわねぇ。飲みすぎたかしら?」

今度は、人差し指を眉根に移動させ、目を瞑り、顔をしかめる。

「いや、だから……その……俺がさらわれそうになった所を、豊姫様が助けてくれて……」

御礼の内容を説明するというのが、こんなにも恥ずかしいものだとは思わなかった。
言いたいことはハッキリしているのに、どうにも、しどろもどろになってしまう。

豊姫様はそんな俺を見て、クスクスと笑い始める。

「名前。初めて呼んでくれたわね」

なんだか、凄く恥ずかしくなってきた。
でも、おかげで少し気分は楽になった。

「本当に……ありがとうございました」
「お礼を言われるような事じゃないわ。ペットを守るのは、当たり前の事でしょ?」

にっこりと微笑みかけてくれる、豊姫様。
なんだか、その顔を直視するのが少し恥ずかしくなって、思わず顔を背けてしまった。

「あの、それと……逃げ出そうとしたり、酷い事言ったりして、すみませんでした……」

それを聞いた豊姫様は、少し視線を落とした。
なんとなく、いつもの彼女の気配じゃない……俺は、そう思った。

「……謝らなくていいわ。私達月人が、貴方達玉兎に恨まれるのは当然だもの」
「でも、豊姫様達は、俺達の事……」
「道具だと思っていたわ。40年前まではね」

その言葉を聴いた瞬間、頭が真っ白になった。
豊姫様が……俺達を道具だと思っていた……?

「私達の師匠である、八意様がそうしていたように、私達も玉兎を道具として扱っていたわ。
 まあ、今の彼女は罪を犯し、地上に幽閉されている身。もしかしたら、今では心境の変化もあるかもしれない。
 でも、私達が知っている八意様は、玉兎をそれこそ薬の実験台としか見ていなかった」
「それ……本当なんですか?」
「仮に嘘だとして……貴方にこんな嘘をついて、得する事なんてある?」

確かに、逆の場合ならまだしも、わざわざ俺を傷つけるような嘘をこの人がつくとは思えない。
少なくとも、今は……。

「月の使者のリーダーを任されてから、私達も八意様と同じように玉兎を扱ったわ。
 便利な道具だと、ばっかり思ってね……」
「ですが、今は違うじゃないですか」

豊姫様はまた視線を落す。

「……40年前、あの子に逃げられて、初めて分かったのよ。
 玉兎にも、私達と同じように心があって、生きているんだって……」
「40年前って……何かあったんですか?」

豊姫様は視線を落としたまま、少しの間黙っていた。

「……レイセン」
「えっ?レイセンがどうかしたんですか?」
「あの名前はね、40年前に地上で起きた戦争の名前なの。
 戦争って言っても、武力でドンパチするようなものじゃなくて、お互いにらめっこしてる様な感じだったわ。
 まあ、冷戦って言うぐらいだからね」

豊姫様は、机の上にあったボトルの中身をグラスに注いだ。
匂いからして、お酒のようだった。
豊姫様はそのグラスを俺に勧めてくれたが、俺は断った。
彼女はそのグラスを持って、もう一度椅子に座りなおした。

「冷戦は、宇宙開発競争とも呼ばれていてね。
 地上のある国では、10年以内に月面着陸を成功させるという、大統領声明が発表されたわ。
 当然、それを知った私達は慌てた。地上人の侵略だってね」

豊姫様は、言い終わるとグラスの中身を一口飲んだ。

「地上人たちの侵略に備えて、私達は非常線を張った。玉兎達にも、よりいっそう厳しい稽古をしたわ。
 そしたらね、一人逃げ出しちゃった玉兎が居たのよ。レイセンって子なんだけどね……」

グラスの氷が、カランと音を立てた。

「あの子臆病だったから……戦いが怖くて、逃げてしまった……。
 臆病だから……心があったから、あの子は逃げ出したの。
 馬鹿だよね、私。そんな当たり前の事がさ、逃げられるまで分からなかったのよ!」

彼女の、グラスをもつ手は震えていた。
中のお酒の水面が、ひっきりなしに波打っている。
俺は、どうしていいか分からなくて、ただ心配そうに豊姫様を見ることしか出来なかった。

「……ごめん、ちょっと酔っちゃったみたい。飲みすぎはいけないわよね」

豊姫様は、立ち上がってグラスをテーブルに置いた。

「……豊姫様は、偉いと思います。
 他のリーダーは、例え玉兎が逃げたって、そういう風に考えたりはしませんもの……。
 自分達と同じように心があるから逃げ出したんだって、他のリーダーは夢にも思いませんよ」

彼女は、テーブルの方を向いたまま、突っ立っていた。

「それはきっと、私も逃げ出したいからなんだと思う。本当は私、怖がりだから……。
 今だって、本当は逃げたくてしょうがないの。こんなところ、怖くて居たくないの……」
「それは、他のリーダーに嫌われたり、命を狙われたりしているからですか?」

豊姫様は、さっきとは違うグラスにボトルの中身を入れ、それを俺に有無を言わせず渡した。
豊姫様自身も、さっきのグラスを持って、椅子に座りなおした。

「そんなものは、怖くもなんとも無いわ。だってそれは、今まで貴方達を道具扱いした、罪滅ぼしだもの……。
 私が本当に怖いのは、八意様に裏切られたって言う事実よ」

裏切られた……?
彼女は、八意という師匠を今でも尊敬していたのではないのか……?

「あの人ね、ずるいんだよ。何でも知ってるんだもん……。
 私達が、心の底から八意様を尊敬しているって、あの人知ってるんだもん……っ!」

俺は目の前の光景が信じられなかった。だから、持っていたグラスを危うく取り落としそうになってしまった。
豊姫様が……泣いているなんて……。

「だからあの人は、月の都を去る前に私達を月の使者のリーダーに任命したのよ。
 私達なら絶対に、八意様達を捕まえないって、あの人知ってたから……っ!」

豊姫様は、グラスの中身を一気に飲み干そうとした。
見ていられず、ついそのグラスを奪ってしまった。

「豊姫様は、八意様を恨んでおられるんですか?」
「……恨むわけ無いじゃない。私達の尊敬するお師匠様だもの……。
 でも悔しいのよ。私達はこんなにも八意様を慕っていたのに、八意様にとって私達は、良い手駒でしかなかったのかなって……」

俺は二つのグラスをテーブルに戻し、椅子に腰掛けなおした。

「いきなり月の使者のリーダーにさせられて、右も左も分からない内に、突然八意様は私達の目の前から居なくなって……。
 それから、私はどうしていいか分からなかった。でもそれは、依姫も同じだったのよ……」

また、彼女は泣きそうになる。
でも、今度は堪えた。あんまり、俺に泣き顔を見られたくなかったんだろう。

「依姫のためにも、姉である私がしっかりしなきゃいけないって、思った。
 八意様が居なくなった今、依姫が頼れるのは私だけだもん。
 だから、私がしっかりしなきゃいけなかった……」

豊姫様は、また顔がゆがみ始めた。
今度こそ、大泣きしそうだ……。

「……ねぇ、トウリ。もっとこっち来て……」

俺は言われたとおり、椅子から立って、豊姫様の目の前に来た。
すると、いきなり豊姫様は俺を抱きしめた。
とたんに、泣き始めた。

俺を抱きしめたのは、豊姫様の最後の抵抗だったんだろう。
俺に、泣き顔を見せないための……。

「頼れる人が一人も居なくて、ずっと怖かったの……。
 それでも、尊敬する八意様が残してくれた月の使者を守りたかった。
 だから、一生懸命に他のリーダー達と折り合いをつけたり、玉兎の面倒を見たりしたわ。
 依姫にもちゃんと仕事の指示を与えて……私頑張ったんだよ」
「……豊姫様は、立派ですよ。俺なんか、とても豊姫様のようにはなれないし……」

よく分かんないけど、豊姫様はきっと褒めてもらいたいんだろう……今は。
今の彼女は、頼れる相手が居ない……褒めてくれる相手も、居ない。

「私も逃げたいの、八意様のところに……。本当は誰かに甘えたいのよ。
 頼られるのは、もう辛いの。誰かに甘えたい……一人ぼっちは、もう嫌……」
「豊姫様は、一人ぼっちなんかじゃないですよ。依姫様も居るし、玉兎達からも慕われてる。
 そんなリーダー、綿月様以外には知りませんよ、俺……」

豊姫様は、また少し落ち着かれたけれど、まだ時々しゃくりあげたりする。

「姉である私が依姫に……リーダーである私が貴方達に甘えられるわけないじゃない……」
「じゃあ、今は……甘えてるんじゃないんですか?」

豊姫様はしばらく黙り込んだ。
不味かったかなぁ……今のは。

「そう……なのかな」

豊姫様は、ゆっくりと俺から離れた。

「ごめんね、トウリはまだ新人君なのに、変なところ見せちゃって」
「いえ、そんな……」

謝るのは、むしろ俺の方だろうに……。

「40年前、レイセンに逃げられて、彼女も私と同じ気持ちがあったんだって思った。
 それから、改めて回りを見回して、私は恐ろしくなったわ。
 玉兎達が道具として扱われているという事実が、怖くなったのよ。
 私達と同じように心があって、生きている存在なのに、なぜこんな風に扱われているのか……。
 私だって、他のリーダーと同じ事してたのに、こんなの生意気だよね」
「ですが、気づけたというだけでも、俺は凄いことだと思います……」

改めて、自分は月並みな表現しか出来ないんだなぁ、と少し後悔した。

「あの、今居るレイセンですけど……なぜ、彼女に同じ名前をつけたんですか?
 その……逃げた玉兎と」
「あの子もね、一度地上へ逃げた兎なの。だから、同じ名前をつけたのよ。
 私自身への、戒めの意味もこめて……」

手持ち無沙汰なのが嫌なのか、また豊姫様はグラスを持ってきた。
俺ももう一度、彼女からグラスをいただく。

「私はまず、玉兎の労働規約改正からとりかかったわ。
 不正を行った玉兎は、再教育という名目で月の使者担当にする、と。
 そうすれば、おのずと私のところへ玉兎が集まってくる。
 まずは、そうやって奴隷制度に苦しんでる玉兎を減らそうと思ったの。
 規約改正には、私の肩書きが役に立ったわね」
「ですが、他の担当玉兎を減らしたら、その分の埋め合わせで、残された玉兎がより過酷な労働をさせられることになるのでは……?」

豊姫様は、グラスの中身を一口飲む。
それを見て、俺も申し訳なさそうに一口飲んだ。

「だから、最終的には全ての担当玉兎の数を公平に戻すつもりよ。
 でも、今の労働条件のまま戻したら、また悲劇を繰り返すだけ。
 だからね、他のリーダー達の労働条件を改正させて、それから数を戻そうとしているの。
 今は、そのために他のリーダーの細かな不正やミスを集めて、権限を奪う手はずを整えている。
 私達が、リーダー達の全権限を奪えれば、労働条件の改正が出来る」
「ですが、当然他のリーダー達は黙ってませんよ!」
「そうね……だから、命やスキャンダルは常に狙われているわ」

豊姫様は、右手でグラスをくゆらせ、左手で自分の膝に頬杖をついた。

「奴ら、何でもするわよ。八意様を見逃している事にこぎつけて、私達が王への謀反を企てているとか、でっち上げもいいところだわ」
「その話なら、聞いたことがあります……」
「まあ、有名だものね。この間、地上から侵略者が来たときは大変だったわ。
 地上の巫女が神卸の能力を覚えていてね。依姫が、本格的に謀反の準備を始めたってデマが流れた。
 奴らにとっては絶好のチャンスだったわけね。まあ、それについての無実は晴らせたから良かったけれど……」

また、豊姫様はグラスに口を付ける。

「……ただ、月の使者の名前に別の傷がついたわ」
「それも、聞いたことがあります。敵前逃亡……ですよね?」

俺は、ほとんど氷の溶けたグラスに視線をやった。

「そう……うちの玉兎達は、地上人を見てすぐさま逃げ出してしまった。
 それが、他のリーダー達にも知れちゃってね。
 月の使者の玉兎は、役に立たない。それはつまり、私達のリーダーとしての素質の欠落を指摘されているって訳」

豊姫様は、また視線を落とした。

「奴らこれにこぎつけて、私達をリーダーから下ろそうとしたり、私達が抱えている玉兎を、別の担当へ分散させようとしたり、色々言ってきたわ。
 まあ、でも最終的にあいつ等を追い返したのは私達だったから、それでこの話は終わったわ。
 でも、私がそうしているように、奴らもこの事を私達のミスの一つとして記録している。
 いずれ、またこれが問題となるでしょうね」
「多勢に無勢じゃないですか。他のリーダー全員と戦うなんて……」

豊姫様は、まだ視線を落としたままだ。

「……大変じゃないですか?命を懸けてまで、戦うなんて……」
「大変……か。まあ、大変じゃないって言ったら、確かに嘘になるわね。でも……」

豊姫様は、俺の顔を見て……そして、いつものようにニッコリと笑った。

「貴方達の可愛い顔を見ていると、それも吹っ飛んじゃうわ」

彼女は、今まで何度も嘘の笑顔をしてきた。
でも……この笑顔だけは、本物なのだろうと俺は確信している。


「桃李言わざれども下自ずから蹊を成す」
「えっ……?」

豊姫様の突然の一言に、一瞬間抜けな声が出てしまった。

「桃や李はね、何にも喋らないけれど、美味しいから自然とその下に人が集まってくるものなのよ」
「……あの、俺の名前ってもしかして……?」

豊姫は、グラスの中身を飲み干した。

「うち、男の子少ないのよねぇ。だから、トウリは何にも言わなくても、女の子の方から集まってきちゃう。
 そういう意味だったのよね」

レイセンと言い……割と適当に名前をつけてるみたいだな、この人。

「さて……大分遅くなっちゃったけど、そろそろ寝ましょう。
 早くしないと、明日の朝が辛いわよ?
 まあ、もう手遅れな気もするけれどね」
「すみません、こんな遅くまで付き合わせてしまって……」

俺はグラスの残りを飲み干すと、豊姫様の分と一緒にテーブルに載せた。

「なんかね、今日はずっと一人で溜め込んでたものを一気に吐き出した気分。
 貴方に話せてよかったわ。ごめんね、愚痴につき合わせちゃって」
「でも、話し始めたのは俺ですし……」
「ふふっ、すっかり良い子になっちゃったわね、トウリ」

確かに、俺はさっきまで彼女の事をものすごく恨んでいたはずなのに……不思議なものだな。
やはりこれは、豊姫様のリーダーとしての素質なのかもしれない。
もう、どんな月人にも従いたくないと思っていたけれど、この人なら……命を預けてもいい。
今なら、そう思える。



翌朝、朝食が出来た頃、俺はレイセンにたたき起こされた。
正直、全然眠気が取れていない……。

「早くしないと、トウリ君の分、無くなっちゃうよ?」
「あ、ああ……分かった。分かったから、シャツを引っ張るなって」

レイセンに引っ張られ、俺は食堂へ向かった。

「豊姫様と、夜遅くまでお話ししてたの?」
「まぁな……」
「仲直りは出来たの?」
「まぁな……」
「トウリ君、さっきからそればっかりじゃない」
「まぁな……」

食堂には、豊姫様達を初め、すでに他の玉兎達が揃っていた。
それにしても、豊姫様も俺と同じ時間に寝たはずなのに、全く眠そうな様子が無い。
なんていうのか……こういうのが、いわゆるカリスマって奴なんだろうか。


軽く朝食を済ませた後、俺達は稽古場へ向かう。
その時、この屋敷に来訪者があった。
ひとまず、依姫様が対応したのだが、珍しい来客に玉兎達も興味津々だった。
稽古場へ行くフリをして、みんなで屋敷の入り口へ様子を見に行った。

「だから、一体どういうことなんですか?お姉さまが、裁判所へ出頭なんて……」
「昨夜、この近辺で傷害事件があったのです。その容疑者として、綿月豊姫様に出頭していただきたいと」
「ですから、それは何かの間違いですよ。昨日の夜は、お姉さまもすぐに寝てしまいましたし……」

その来訪者との会話内容は、なんとなく把握できた。
いや、それよりも俺にはそれについて心当たりがある。
とにかく、あの来訪者の誤解さえ解ければ、この場は丸く収まるはずだ。
そう思って、俺は二人の前に出た。

「待ってくれ!それには、事情があるんだ!」
「トウリ!こんなところで何をしているんだ。もう稽古の時間だぞ?」
「す、すみません……いや、それよりも豊姫様の事で話が……」

俺は、昨日の夜に起きた出来事を、なるだけ丁寧に話した。

「……なるほど。つまり少なくとも、豊姫様がその方々に怪我を負わせたのは間違いないのですね?」
「確かに結果的にはそうだけど、でもそれは……っ!」
「おかしいですねぇ、依姫様の話に寄れば、豊姫様はすでにご就寝なされていたそうですが……。
 どうやら、嘘をつかれていたようですね」

その時、俺にはようやくわかった。
こいつ、他のリーダーの回し者なんだ。
何を言おうが、難癖つけて、豊姫様をどうにかするつもりなんだ!

「さて、そろそろ豊姫様をお連れしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「残念ながら、今お姉さまは忙しいのよ。また、後にして下さらない?」
「残念なのは貴方ですよ、依姫様。貴方は一度偽証をした身。それをお忘れなきように」

考えるよりも、先に手が動いていた。

「いい加減にしろよ、お前!」
「と、トウリ!やめろ!」

持っていた銃剣を、奴に向ける。

「ほう。ここでは兎にどんなしつけをしているのやら、一度拝見させていただきたいものですね」
「トウリ、もういい!お前は、他の奴らと一緒に稽古にもどれ!」
「そんなの……できるわけ無いじゃないですか!こいつ、豊姫様を奪う気何ですよ!?」

依姫様は、必死に俺を下がらせようとした。
だがその時、俺の一言を聞いて、覗き見ていたほかの玉兎がやって来た。

「お、お前達……」

みんな、銃剣を構えていた。標的は、あの来訪者だ。

「依姫様、何ですかなこれは?全く持って、兎のしつけがなっていないようですね」

奴はあくまでも、慇懃無礼な態度を崩さない。

「豊姫様に手を出すな!」
「お前には、指一本触れさせない!」

とにかく、ひっきりなしに言いたいことをぶつけた。
豊姫様は、絶対に渡さないと。

でも、みんな手が震えていた。表情にも、恐怖があった。
無理も無い……俺もそうだもの。
相手は、月人なんだ。兎である俺達が、付き従わねばならない存在。
それに、銃口を向けているなんて、本来許されるものじゃない。

「調子に乗るなよ、兎共!こっちはなぁ、今すぐお前達を殺処分することだって出来るんだよ!
 悪い芽は、すぐに潰さねぇといけないからなぁ」

みんな震えが止まらなかった。
心臓なんか、破裂しそうな感じだった。
怖い……それでも、誰一人逃げようとするものは居なかった。
地上人が攻めてきたとき、一目散に逃げていったあの玉兎達が……今は、誰一人として逃げようとはしない。
大切な人を守りたい……ただ、その一心で……。

「そんなに死にてぇのか?なら、望みどおり……」
「お待ちください」

依姫様が一歩前に出る。

「彼らの非礼はお詫びします。後で、しっかりと灸を据えておきますゆえ、今はお引取りを」
「冗談じゃないでしょう、依姫様?豊姫様は傷害事件に関わっている。
 あまつさえ、この兎共の不始末。黙って帰れってことはないでしょうが?」

相手は段々と苛立ちを隠さなくなってきた。

「……今は、お引取りください。どうか、お願いします……」

依姫様は、そういって地面に顔を伏せた。

「よ、依姫様!」

地面に顔を伏せ……土下座をした。

「どうか、お引取りを……」
「はん。謝れば何でも許されると?良いご身分ですな、綿月と言うのは」

怒りで、銃を持つ手が震えた。
俺のせいだ……昨日の夜、俺が抜け出そうとなんかしなければ、こんな事には……。

「お待たせいたしました」

その時、ものすごく聞き慣れた声が響いた。

「と、豊姫様!?」
「申し訳ありませんね。朝の身だしなみには、時間が掛かってしまうものでして」

豊姫様は、あいつの元へ向かった。

「出頭……していただけるのですか?」
「もちろん。そのために、お迎えに上がっていただけたのでしょう?」

依姫様が顔を上げ、豊姫様の腕を掴んだ。

「お姉さま……行ってはダメ……」
「もう、貴方がそんなんじゃ、みんな心配するじゃない。私が居ない間も、ちゃんとあの子達の面倒見るのよ?」

豊姫様は、あくまでもいつもの笑顔でそう言った。

「……私に、もしもの事があったら、そのときはお願い」
「……っ!?お姉さま!」

豊姫様は、今度は俺達の方を向いた。

「じゃあ、ちょっと行ってくるわね。今日のお夕飯には間に合いそうも無いけど……まあ、すぐ戻ってくるわ」

そう言って、俺達に背を向けた。

「では、行きましょう」

俺達はただ、その背中を見送るしかなかった……。



アレから、数日が経った。
豊姫様は、まだ戻って来ない。

俺は、自分のふがいなさを痛感していた。
あの時、なぜもっと抵抗しなかったのか?
そもそも、前日の夜に抜け出したりなどしなければ、誘拐犯たちに襲われることも無かったのに……。

机に、自分の手を叩きつける。
あー……もう、訳がわかんねぇ。
最初はあんなに豊姫様の事恨んでたのに……でも、それが誤解だったことが分かって……だけど、その次の瞬間には、彼女を失っていた。

こんな事なら、俺なんかここに来なければよかったんだ。
豊姫様と会わなければ良かった……そうすれば、こんな思いもしなくて済んだのに……。

「トウリ君、トウリ君!はやくこっち来て!」
「何だよ、うるさいなぁ……」
「いいから、早く!」

妙にはしゃぐレイセン。それに引き換え、何もかも嫌になった俺には、それが耳障りでしかない。
レイセンに連れられ、やって来たのは屋敷の正門だった。
なにやら、既に他の玉兎が集まっており、わいわい騒いでいる。

その時、俺はふと、豊姫様の一言を思い出した。
『桃李言わざれども下自ずから蹊を成す』
桃や李は言葉を発さずとも、その美味しい実の魅力に惹かれ、自ずと人々が集まってくる。

「ほらほら、みんな。早く稽古に戻らなきゃ、依姫に怒られるわよ?」

聞き慣れた声がした。
玉兎達が集まっている、その中心には、見覚えのある顔があった。

「と、豊姫様……っ!」

俺は銃剣を投げ捨てて、すぐに彼女の元へ駆け寄った。

「あら、トウリじゃない。元気だった?」
「豊姫様……俺……」

こんなん、かっこ悪いよ……かっこ悪い。
それは分かってる、分かってるけれど……。
涙が出ちまう……止まらないんだ。

「あらあら、ちょっと見ない間に、レイセンみたいな泣き虫になっちゃったみたいねぇ」
「豊姫様……どうして、戻って来れたんですか……?」
「あら、何?私がくたばらなくて残念だった?」
「そ、そんなんじゃないですよ!もう……いじわる言わないでください」

ああ、もうダメだ……みんな見てるってのに……。
なんで、涙が止まらないんだよ。
すげぇ、恥ずかしいよ……。

「あれが正当防衛だったこと。つまり、被害者だと言われていた人たちが、事件当時、トウリを誘拐しようとしていたことが立証できたのよ。
 思ったより、時間は掛かったけれどね」

豊姫様は、少し得意げだった。

「私が無罪になったときね、みんなそれはそれは悔しそうな顔をしていたのよ。
 ふふっ、アレは見ものだったわ」

彼女は、俺の頭をそっと撫でてくれた。

「泣くほど嬉しかった?私が戻ってきて」
「そんなの……見れば分かるじゃないですか」
「ふふっ、そうね。ありがとう」

豊姫様はみんなの方を向いて、いつものように笑った。

「じゃあ、みんな。稽古をサボって私を迎えに来た罰として、今からお仕置きを始めるわよ!」

それを聞いた玉兎達は、一目散に稽古場へと逃げていった。


豊姫様は、自分は一人ぼっちだと言っていた。
でも、それはやっぱり違うと思う。
だって、俺達玉兎にとって、豊姫様こそが桃李なのだから
どうも、割と久しぶりの投稿な、ビアードです。
今回は、いつか書いてみたかった豊姫様のお話でした。

周りを見回すと、綿月姉妹の人気があんまり無いような気がしまして……ちょっと寂しいです。
まあ、かくいう自分も、儚月抄は漫画版しか読んだことが無いのですが……。

永琳が玉兎を薬の実験台にしか見てないと言う表現は、言いすぎかな……とちょっと思ったんですが、
ウィキペディアには、月人は玉兎を道具のように扱っていると記述があるし、
うどんげっしょうでも、うどんげの扱いが……まあ、アレだったので。


今回はオリ主の視点で書いたのですが、戸惑いはありました。
メアリー・スーという言葉を知ったのはごく最近で、これのプロットを書いてる段階では全く知りませんでした。
素人がオリ主を扱うって言うのも、難儀だということは承知していました。
それでも、こういう視点で豊姫を書きたかった、という思いがあったしだいです。
まあ、作者の我が儘ですね。


最後に、今回かなり長文になってしまいましたが、最後まで読んでくださった方。
このような長い我が儘に付き合っていただき、本当にありがとうございました。
ビアード
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コメント



0.420簡易評価
1.80奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
7.100名前が無い程度の能力削除
このぐらいの我儘なら別に問題ない。
話自体とても面白かったです。
8.70鈍狐削除
この程度ではメアリー・スーには該当しないと思います。玉兎の一匹としての思考や視点は色々と新鮮だったので、興味深く拝見させてもらいました。
ただメアリー・スーではないのですが、この作品の主人公はちょっと作中の事態の蚊帳の外に居るなぁと思ってしまいました。立場がこうである以上仕方が無いことなのですけどね。
11.100名前が無い程度の能力削除
新鮮な気持ちで月のことを見れました。
物語の痛快さに欠ける気がしましたが、自分なりに頭を捻ってこの作品の世界に思いを馳せてみたいとは思いました。思考停止気味の自分にはいい刺激だったと思います。

話の中心は豊姫様なんで、気に障るオリキャラの臭いはほとんどしませんでした。
楽しかったです。
12.100名前が無い程度の能力削除
オリキャラものが好きなのですがいかんせん
当たりが少なく困っていた所なので
これはいい物を読ませて頂きました。

これからも良い作品を期待します
17.100名前が無い程度の能力削除
この作品を読んで、豊ちゃんが好きになりました。