Coolier - 新生・東方創想話

ナズーリンユウギ

2011/03/03 23:54:09
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ナズ星の六作目になります。やや甘口、変態成分少々、勝手設定、例によって過去作を引きずっております。 
ご了解いただけましたらどうぞ。









こんにちは、寅丸星です。

皆様いかがお過ごしですか? 命蓮寺はおかげさまで賑わっています。
日に日に寺に訪れる人や妖が増え、うれしい忙しさです。
真剣に朝課に臨まれている方、遊山がてらの方、朝餉がお目当ての方、様々いらっしゃいます。
ご縁をいただくきっかけは色々あって良いのです、まずはお越しくださるところから始まりますしね。

参詣に来られる大勢の中には、熱があるのに無理していらっしゃる方や、急な腹痛を訴える方もあります。

聖の発案で置き薬を備えようということになりました。

今はその申し込みにナズーリンと二人、永遠亭に向かうところです。

せっかくですから、途中、慧音さんのところにご挨拶に寄ることにしました。
一輪が寺の裏庭で作った京ニンジンが手土産です。

京ニンジンと言っていますが、この幻想郷が【閉じた】頃の日本では、ニンジンはこちらがほとんど
だったはずなんですけど、ここでは橙色の西洋ニンジンの方が多く出回っているのが不思議です。
日本で西洋ニンジンを頻繁に見るようになったのは、爆弾がたくさん落ちたきた大戦(おおいくさ)の後、
数年してからだったと記憶しているんですけど、私の記憶ですからあまり当てになりませんね。
西洋ニンジンは作りやすいからでしょうか、今、ニンジンと言えば、これのようです。
京ニンジンは細長くて折れやすいからあまり作られないのでしょうか?
煮ると甘味がグンと増すので私は好きなんですけどね。

慧音さんに気を遣わせたくありませんから、お昼時を外してうかがいました。
妹紅さんと二人で寺子屋のお掃除をなさっていました。

二人ともお元気そうでなによりです。
妹紅さん、普段はぶっきらぼうな口調だそうですが、私は聞いたことがありません。
私たちの前ではいつも穏やかで優しい言葉遣いです。
今日の妹紅さんは以前にも増して表情が柔らかいですね。
可愛さと凛々しさがいい感じで両立していて、とっても素敵な雰囲気。
こんな感じのヒト、ナズーリン以外では初めてです。

可愛いと言えば、ナズーリンは可愛いと言われることを嫌がっているんです。
イメージが大切だ、とのことですが、可愛いっていけないんでしょうか?
感情を面にしないように気を張り、わざと皮肉な物言いをし、誰に対しても常に一線を引いて接しています。
隙を見せてはいけないのだとむっつり顔で言いますが、私は知っているんです。
普段は無表情を装っていますが実はとても豊かです。

ぼんやりと遠くを眺めているときは、眉が上がって下顎は突き出し気味になって、オモシロカワイイ顔です。
珍しい植物を見つけたときは、にいーっと口が広がって、プクプクのほっぺがいっそう強調されます。
道具の手入れをしているときは真剣な眼差しなんですが、でも、ちょっとおちょぼ口になるんです。
こんな表情を知っているのは私だけですよね。 
他のヒトには見せませんし。

でもナズーリン、いつもそんな風に他人を遠ざけていると、お友達、出来ませんよ?
あ、そう言えばナズって、お友達いるんでしょうか? 
最近、はたてさんと仲良しですが、お友達って関係より、親しい師弟って感じですよね。
そう言えば私、長いこと一緒に過ごしていますが、心当たりがありません。
彼女の付き合いの範囲はとても広くて、お知り合いはたくさんいるんですが、
友達と言えるのはどなたなんでしょう? 
んー、少し気になります。


脱線してすみません。

慧音さんは相変わらず、きりっとしておいでですが、お顔がとってもつやつやです。
何か特別な美容法をなさっているんでしょうか? 

ナズーリンは慧音さんに呼ばれ、【ちょっとだけ】とお部屋にあがっていきました。
きっとまた難しい話ですね。
私は妹紅さんとお話をしました。
近況報告から、自然とお互いの恋人のことに話題が移ります。
かなり際どい話も聞いちゃいましたよ。
妹紅さんたち、あの、その、ええ、ススんでいます、はぁ。

永遠亭までの道案内を申し出てくれましたが、丁重に断りました。
私の太陽が道に迷うはずありませんし、二人で散歩を楽しみたいですし。

ナズーリンは京ニンジンを一本、持っています。
【魔除けに一本持っていく】と言って、手土産から引き抜いたんです。

普段、荷物は私が持ちます。
昔は【荷物は従者が】と気にしていたナズですが、何かあったとき、彼女の手が空いている方が良いんです。
それに私、力持ちですし。
星熊勇儀さんから【能力抜きなら私と互角】って言われましたし。
私の槍、ホントの重さはナズーリン20人分くらいあります。
地面にめり込まないように呪術で浮かせてありますが、槍を振るうときは私も本来の体重に戻すんです。
そうしないと、うまく捌けませんから。
本来の体重ですか?
内緒です! 聖100人分より重いなんて内緒です!

あ、あ、だって、武神の代理なんですよ!
いざっていうときは、戦わなくちゃいけないんですよ!
戦うなら負けられないんですよ!
頑丈なんです、重いんです、力持ちなんです!
石ころ握れば粉にできますよ、足場を固めればバオバブの木だって引っ込抜けます。
でも、そんなの誰にも見せたくありません。
聖とナズだけが知っています。
知った上で触れないでいてくれる大事なヒトたちです。


迷いの竹林の入り口が見えてきたあたりで妹紅さんからうかがった、ちょっと際どい話をしました。
以前、耳にした符丁についてなんですが、ナズーリンがスゴい喰いつきを見せました。

「噂に聞いた【に】の3番とか【と】の4番とかの話か!
どうやらお楽しみの符丁のようだけど、どんなものなの!?」 

「妹紅さん、顔を真っ赤にして、もじもじしながら少しだけ教えてくれました。
彼女の恥ずかしそうな仕草、とても可愛いですよねー」

賛同を求めてナズーリンを見ました。 
あら? なんだかイライラしています。 立ち止まっちゃいました。

「妹紅どのが可愛いのはわかったから、符丁の意味を教えておくれよ!」

なにを焦っているんですか?

「えーと、初めの【いろは】は、お遊びの種類だそうです。
次の数字は、1・3・5の奇数は慧音さんがリードで、偶数の時は妹紅さんです。
数字が大きいほど激しさが増すんだそうです。
【い】は、服を着たままだそうです。脱がしちゃいけないんです。 
【ろ】は、数字の9とか6とか言ってました。
【は】は、お風呂でアワアワですって。
【ほ】は、なんでも蜂蜜をたくさん使うんだそうです。
例えば【ほ】の3番ですと、蜂蜜を使って慧音さん主導でそこそこ激しく、ということになりましょうか?
あとはまだ内緒だそうです」

思い出しながらそこまで話して、ナズーリンの様子をうかがって見ます。
なんでそんな怖い顔をしているんです?

「ご主人! 私はくやしいよ!!
恋人になったのは私たちの方が先なのに、完全に追い抜かれている!
蜂蜜プレイだと? くそっ! くそっ! ちっくしょー!!」

すごい剣幕です、どうしちゃったんでしょう?

「ナズーリン、汚い言葉を使ってはいけませんよ」

「それもこれも、ご主人がいけないんだ! あああ! 我慢できないよー! 
貴方が許してくれるのなら、これまで蓄積してきたエロスの知識、それを錬成し磨きあげ、
貴方のためだけに編み出した127のシチュエーションプレイを、炸裂させるのにーー!!!」

パムッ、パムッ、パムッ、と小さな足で地団太を踏んでいます。
やだ、なんだかスゴくカワイイ。

「ナ、ナズ、落ち着いて、ね? 落ち着いて?」

「なーーぜ! 落ち着いていられるんだ!? もう! もう! 我慢できない! 
【フトモモすべすべバインディングプロテインフラクションファイヴ・膝頭噛み噛み】をさせてもらうぞ!」

言うや否やニンジンを放り出し、正面からヴアっとスカートを捲りあげて、潜り込んできました!  
ちょっとーっ! いきなりなんなんですか!? 今日の下着短いのに!
後ずさりしようと、足を上げたら、膝が、ごつっ、と当たっちゃいました!

尻餅をついたナズーリン。
顎に手をやっています。

「きゃー! ナズー! だ、大丈夫ですか!?」

「うー、こんな仕打ちを受けるとは」

顎を押さえながら睨みつけてきます。

「だって、急に変なことしようとするから、驚いちゃったんですよう」

「うー……ご主人! いったい、いつ!? いつになったら私たちはすべてを許せる仲になれるの!?
重想合身できるの? 満たされるの?」

「わ、私は、貴方とこうしているだけで満ち足りますけど……」

「うそだ! うそを言ってはいかん! 
夜な夜な切なそうに私の名前を呼び、布団の中でごそごそしているじゃないか!」

「えっ!? ええーっ!! ア、アナタ、見てたんですか!?」

なんてことでしょう! 見られていたなんて!! どーーしましょう!???
よりによってナズーリンに見られていたなんてー!

「あの、あ、あれはですね! そのっ、あの」

「……ホントにしているのかね?」

は?

「あ? あっ? あぅ、う、う、うかー!! ナズのばかー! ばかナズー!! ばかーーー!!」

顔から火が出そうですー!!
また引っかけられましたー! 今回は最っ悪っですー!!
ほら、ニタニタニタニタニタニタしてますよー! 最悪ー!

「よぉーし、よしよし、うん、ご主人、自分に素直になろうよ、ねっ?
大丈夫、見るだけ、見るだけだから、絶対に変なことしないから、ねっ、いいだろう?
一刻(二時間)だけでいいからさ、ねっ? ねっ? 
ちょっとそこで休んでいこう? ねっ? ねっ?
後で何でも買ってあげるから、ねっ? ねっ?」

「その言い方って、好色な年輩の殿方みたいですよ?」

【エロオヤジ】って言うのでしょうか?
目が血走っていて嫌です、この顔、イヤー!

「で、どうかな? いいだろ? いいんだよね? ねっ?」

「ヤです!
『見るだけ』と言って『味を見るだけだよ』とか、
『変なことじゃないよ、気持ちよいことだよ』とか、
ちょっとずつ誤魔化すに決まっています!
だから、ヤです!」

「……なんだ、その変態オヤジは。考えすぎだよご主人」

「今の【間】はなんだったんですか!? 騙されませんからね! 
あっ、今、舌打ちしましたね!? しましたよね!!」

私が強く言うと、一転してしおらしくなりました。
え? 涙まで浮かべて悲しそうな顔。

「星、私、もうだめになりそう、助けてよ、私を導いて」

「う、う、そんな顔してもダメ、です」

「むぅーー、なんとガードが固いんだ。なぜなんだよー ううー」

あ、ポロッと涙が。
こんなことでホントに泣くなんて。 
ナズ、そんな顔しないで、私だって辛いんです。

「ナズ、私、わかっているんです。
いきおいに任せてそうなってしまったら、きっと、貴方に溺れてしまいます。
今でもほとんど溺れっぱなしなのに。
なにもかも放り出して、完全に溺れてしまいます。
でも、そうなったらいずれ貴方は私を軽蔑すると思います」

「え? そんなことはないよ」

ナズに軽蔑されたら私、生きていられません。
私、実は怖いんです。
ナズが愚かな私に愛想を尽かして、いつか去ってしまうんじゃないかと。
【これでオシマイ、さよならだ】なんて言われたら、その瞬間、死にます、死ねます。

「ナズ、貴方とはいつでも対等でいたいんです。
私、ナズに守ってもらって、全てを委ねれば楽なんだろうと思いますけど、でもそれじゃダメなんです。
私の心が弱いままじゃダメなんです、ナズが大好き、それだけじゃダメなんです。
安っぽい願いですけど【ご主人、スゴいなー】【星、素敵だったよ】って思われたいんです。
大好きなナズーリンにいいところを見せたいんです。
大それた望みですけど、少しは尊敬されたいんです。
でも、まだ全然ダメです。
だから今は我慢なんです。
いきおい任せはきっと後悔します、私、とても弱いから」

ナズ、お願いです、わかってください、お願いです!

命より大事な魂の半身、私のナズーリンに祈ります、お願い、どうかわかって!

じっと私を見つめるナズーリン。

「わかったよ、焦りすぎたか。
私なんかのためにそこまで思っていてくれているのか。
貴方はやっぱり最高だ、高潔で慈愛に溢れ、強く気高く輝く星だ。
私は貴方を誇りに思うよ」

ああ、なんて慈しみ深く優しい微笑なんでしょう。
私の全てを理解してくれるのはいつでもこのヒトです。 
よかった、ナズでよかった、ホントよかった。

でも、私そんなに立派なモンじゃないです。
大好きなナズには正直に白状しなくてはなりません。

「でもね、ナズ、私だって興味がない訳じゃありません。
【いつかは】と期待して、少しはエッチなことも夢想しています。ゴメンなさい。
えと、例えばですね……

ナズと私は裸で抱き合っているんです。
仰向けの私にナズがまたぐように覆いかぶさっています。
二人はキスしています。 
何度も何度も。

ナズは私の首に両手を絡めていますが、私の手はナズの内腿をなで上げ、次に少しお尻を揉んで、
それから尻尾を優しくしごきあげるんです。それを繰り返します。 
何度も何度も。

腿の付け根からお尻にいくとき、私の指先がナズの大事な庭先をかすめていきます。
かすめるだけです。
わざとなんです。
何度も何度も。

そのうちナズは、もどかしくなって、キスどころではなくなって、泣きながらねだるんです。
【しょ、星! お願い、もっと、ちゃんと、ちょ、直接、】って。

……あら? ナズ? きゃー! ナズ!! しっかりしてー!」

はっ、鼻血が出てますよー!!


鼻血を拭いながら、荒い呼吸を整えているナズーリン。

「ご、ご主人、そこまで細かく、うん・・・・・・ああ、恐れ入った。
委細承知した! そんなお楽しみがあるなら、待とうではないか、待つよ、待てるよ! 
ふー、単純なシチュなのに、ご主人がしてくれると思うと、たまらないな!
このうえない悦楽だ! 今夜のオカズ、いただいたー!
ご主人がストロングエッチッチで嬉しいよ、あっはーっ!」

「なっ!? ちょっと待ってくださいよ!」

「いやいや、貴方には間違いなく才能がある。
その才能が開花したら、私は寅丸星に翻弄されてしまうのだね。
そして晴れて貴方の肉奴隷になるんだ、なれるんだ! やっとなれるんだー! 本望だよ!
寅丸星になぶられ、責めぬかれ、愛欲の虜にされてしまう! 
ああ、私はきっとそのために生まれてきたんだ。

ご主人、いや、ご主人様、どうか私を導いてください。
この哀れな奴隷をエロスの高嶺へ連れて行ってくださいませ!」

ナズが土下座してます。  
えーと、なんなんでしょう? この流れ?
いろいろブチ壊しです。


「ナズーリン、いい加減にしてください」

「よし、ここまでとしよう。でも、約束だよ、連れていってね」

「どのあたりの約束ですか? どこに連れていくんですか!?」

ニッコリ笑うナズーリン。

「はうああー、星、だーい好き、ずーっと一緒だからね!」

そう言って、ぱふっと抱きついてきました。

えっと、喜ぶところなんでしょうか? なんだか微妙です。
私、誤魔化されたんでしょうか?



迷いの竹林とはよく言ったものです。
代わり映えのしない風景が延々と続き、おまけに霧がかかっています。
これでは方向感覚と距離感が狂ってしまいますね。
ナズーリンはそのどちらも補正する術を持っているので、迷うことはありませんが。


女の子が大きな石の上に座っていました。

薄桃色のワンピース、大きな目、黒い髪、その髪からウサギの耳が垂れ下がっています。
因幡てゐ、さんですね。

「こんにちはー」

にっこり笑ったてゐさんが、すとん、と、岩から降りて近づいてきました。
背丈はナズーリンと同じくらい、強さや怖さは感じませんが、なんだか忘れられない印象を塗り込まれました。

あ、いけない、私もご挨拶しなくちゃ。

「こんにちは、命蓮寺の寅丸星と申します」

「寅丸さん? 虎なの? でも、全然怖そうじゃないね。
あー・・・・・・ ふーん、ものスゴく強いのに頑張って抑えているんだぁ」

え、このヒトいったい何を見ているの? 何が見えているの?

「初めまして、かな? 私はナズーリン。こちら、寅丸星の侍者だ」

少し慌てた私を尻目に挨拶をかぶせたナズーリン。
動揺している場合じゃありませんでした。

「私は鈴仙・優曇華院・イナバ、【おうどん】って呼んでね」

は? てゐさん、ですよね? 
私が顔をしかめると、

「うん、うそ。てゐ、因幡てゐ、よ」

このウソ、必要なんでしょうか? 意図が分かりませんよ。

「永遠亭に行きたいの? 血の臭いがするね。怪我したの?」

「いや、気遣い無用だよ。配置薬の申し込みに伺うのさ」

「お師匠様、今はいないよ。往診中。鈴仙も一緒。多分、夜まで戻らないよ。明日は居ると思うけど」

あら、それでは出直すしかありませんね。
ナズーリンも軽くうなずきました。

「ならば明日、改めて訪うとしようか。今日のところはてゐどのに会えた幸運を持って引き上げるよ。
あ、そうそう、お近づきの印にこれを受け取って欲しい」

そう言って、京ニンジンを差し出しました。
ナズ、もしかして、このためだったんですか?

「あらー、珍しい。金時ニンジンじゃない。
最近見なくなったよね、甘くて美味しいのに。
あ、それから、てゐどの、って てゐでいいのよ?
寅丸さんと、えーと、ナズリンだっけ? ありがとう」

「ナズーリンだよ」

「ふーん、ナズーリンね。じゃ、アナタのことは【ナズ】でいい?」

「いや、それは困るんだがな」

「略すのは親しみの表れだよ? ナズーリンって言いにくい」

「そう言われても、こう言う名前なんだから仕方ないだろう?」

「私だって【てゐ】って呼ばれてるけど、ホントは【テヰーセン】なんだから」

「そうだったのかい?」

「うん、うそ」

また、薄っぺらいウソです。ホント、何の意味があるんでしょう?

「明日も来るんだよね? 明日は昼ご飯抜きなの、かわいそうな私のためにご飯を持ってきてね?
そしたら永遠亭まで案内してあげる」

無邪気な表情で結構図々しいことを言いますね。
でも、ご飯抜きはちょっとかわいそうです、なにかの罰なんでしょうか。



引き返す途中、ナズーリンはずっと取り留めの無い話をまくし立てていました。
人里のお店のことや境内の敷石のことなど、私が口を挟む間もないほど次々と。

竹林から出てしばらくして、真面目な顔で私に向き直りました。

「このあたりまで来ればよいだろう」

どうしたんでしょう? よく分かりません。

「ウサギは耳が良いからね。それにあの竹林は彼女の縄張りだ」

「それじゃ、あそこで話したことは全部筒抜けになっちゃうんですか!?」

「まぁ、全部が全部というわけではないだろうが、用心するに越したことはない」

それでどうでもよい話を延々としていたんですか。

「今回は様子見といったところかな? 
永遠亭へは明日行けばよいし、一番会いにくい因幡てゐと接触を持てたのだから収穫大だ」

「配置薬とてゐさん、なにか関係があるんですか?」

「薬は薬でも別のことだよ。妹紅どのとの約束さ。蓬莱の薬のことだよ」

妹紅さんとの約束! そうでした! 
ナズーリンは以前、蓬莱の薬の効果を打ち消す方法を探す、と約束していたんでした。
ホントに大事な約束なのに、私、忘れちゃってました! 妹紅さん、ごめんなさい!
でも、ナズーリンは違いました、【約束】を必ず守ってくれる誠真の使徒でした。
誠実を絵に描いたら、ナズの肖像画になります。
ああぅ、惚れ直しポイント、四千点追加ですー!

「八意永琳から、その方法なり薬剤を手に入れられれば手間が少ないからね。
かなり風変わりな傑物と聞き及んでいる、無理のない接触をしたいところだ。
対等以上の関係を持って交渉、駆け引きを行いたい。

そこでご主人に質問、永琳どのの言動に影響を与えるのは誰だと思う?」

ナズーリンに問いかけられ、慌てて妄想モードから切り替えます。
人伝に聞いた話を思い出しながらまとめてみます。

「え、えと、やっぱり主人である蓬莱山輝夜さん? 
でも取り仕切っているのは永琳さんでしょうし、鈴仙さんは従者ですよね?」

従者といっても、私、ナズーリンの影響受けまくりですし、ナズが真剣に言ったことには
ほとんど従っていますし。
体の関係は別ですけど。
どっちが主人か分かりませんが、不満なんかこれっぽっちもありませんし。
でも、永琳さんと鈴仙さんはそういう関係に思えません、普通の主従ですよね。
あ、私たちって、普通じゃないんでしょうか!? 不満が無い私が異常なんですか???

「私は因幡てゐの存在が大きいと思っている」

てゐさん?

「彼女は永琳どのを【お師匠様】、輝夜どのを【姫様】と呼んでいるようだが、もともと、
ウサギたちに智慧を授けてくれるなら、永遠亭に人間が寄りつかないようにする、
そういった交換条件のもと契約を交わした対等の関係と聞いている。
永琳どのがどんな腹積もりで契約内容を受け入れたかは知らんが、その時点では間違いなく対等だね」

にーっ、と笑うナズーリン、この笑い方って、本当に面白いものを見つけたときです。

「現に従者のように振舞いながらも、従ったり従わなかったり、好きにやっているようだ。
また、永琳どのもそのことをとやかく言わないようだ。いや、言えないのかも。
警戒されるほど強くもなく、さりとて軽んじられほどは弱くもなく。
微妙な立ち位置にいながら、発言力も保持している。
永琳どのは一目置いているはずだ。
興味深い相手だね」

ナズーリン、とても嬉しそうな顔です。

「興味深いといっても、性的な意味じゃないからね? ヤキモチは無用だよ?
私、幼女体型には微塵も興奮しないから」

なっ! そーんなこと、思ってもいませんよー!
真面目な話だったのに、またしてもいろいろブチ壊しです。



次の日、ナズーリンは急な探し物の依頼を受け、人里に行くことになりました。
仕方ありませんが、大丈夫、私一人で行ってきます。
寺の皆が、それぞれに同行を申し出てくれましたが、大丈夫、一人で行けますよ。
何故、皆、そんなに不安そうなんですか? 失礼ですね、傷つきますよ?
ナズーリンだって、これも経験だ、と言ってくれましたし。
ん? 誰です? 【はじめてのおつかい】なんて言うのは。
これまでに何度も一人で買い物やお使いに行っているじゃないですか。
たまたま永遠亭が初めて、ってだけでしょ? 
ナズの【印】だってありますし、昨日のてゐさんのところまでならモーマンタイですよ。
あ、一輪、こっそり雲山に見張らせようとしていますね? 
そんなことしたら晩ご飯のオカズ減らしますからね! ホントですよ!

てゐさんと自分のおにぎり弁当をこしらえ、気合を入れて出発します。
寺の皆が横一線に並んで見送ってくれたのが何故か腹立たしいです。
姫海棠はたてさんや、小傘ちゃんまで手を振っています。
なんなんでしょう、まったく。


ナズーリンの【印】を頼りに迷いの竹林をぺくぺく歩きます。

昨日の大岩に着きました。
てゐさんが座っています。
ほーら、大丈夫だったでしょ? やりましたよ! ふん! ふーん!

「寅丸さん、こんにちは。何をそんなに興奮してるの?」

「え、? いえ、なんでもありませんよ、それよりお昼ご飯にしましょうよ!
お弁当もってきましたから!」

興奮して挨拶も忘れちゃいました、はー、私、やっぱりダメですね。


おにぎりが三つ、オカズは、ほうれん草入りキノコ出汁巻き卵、京ニンジンとゴボウの煮物、
鶏肉シュウマイです。
オカズが多いのでおにぎりの具は梅干し、刻みタクアン、シジミの佃煮であっさり目です。

さあどうぞ召し上がってくださいな。

「美味しい! 鈴仙のよりずっと美味しい! おコメの炊き具合、にぎり加減、これ美味しい! 
オカズもスゴく美味しい!」

パクパク食べるてゐさん、お口にあってなによりです。

「寅丸さんたちは、いつもこんな美味しいご飯食べてるの?」

なんだか照れますね。

「作った甲斐がありました、よかったです」

「え!? 寅丸さんが作ったの!?」

そこ、驚くところなんですか?

「ごめんね。 寅丸さんって、てっきりぶきっちょなんだと思ってたから」

あぅ、やっぱりそう見えるんですね

「えっと、ぶきっちょは間違いありません。
初めておにぎりを作ったときは、力任せに握って、お餅みたいになっちゃって、 
ホントヒドかったんです。
もう二度と作るまいとも思いました。
それでもナズーリンはニッコリ笑って食べたんです。
【ちょっとしょっぱいかな】って、それだけでした。
私それからも作りました。何度も何度も」

ナズに美味しいって言ってもらえるように。
ナズに認めてもらえるように。

「そう言えば、ナズリン、どうしたの?」

おにぎり話はあっさりスルーされちゃいました、まぁいいですけど。

「ナズーリンは急な仕事が入ってしまって来られません」

「ふーん」

大して興味もなさそうに三つ目のおにぎりを食べ始めました。

「ん? この梅干し、なんだか不思議な味ね。うん、美味しい。これはスゴいよ。
これも寅丸さんが作ったの?」

「残念ですが違います。博麗神社秘伝の梅干しなんですよ。
ナズーリンが博麗霊夢さんから特別に分けてもらったものです」

滅多に口に出来ない梅干ですが、恩着せがましく言うのもなんですし。
でも、違いが分かるとは、てゐさんの味覚はなかなか鋭いんですね。

「あの因業巫女が分けてくれるなんてどんな手を使ったのかしら?
ナズリン、やるじゃない」

ヒドい言いようですね。
霊夢さん、悪いヒトじゃないのに。 多分。

「ナズーリンはちょくちょく神社に参拝にいくんです。
懇意にしていただいているようなので、分けてくれたのだと思います」

「参拝? あの神社に? ナズリンが?」 

眉をしかめるてゐさん、考え込んじゃいました。
何度目か首をかしげたとき、私の視線に気づいたようです。

「あ、ごねんねー、ぼけっとしちゃった。 でも、ナズリンってやっぱり面白いんだね」

いえ、呆けているようには見えませんでしたけど。
ナズがやっぱり面白い? 何を考えていたんでしょうか?

「ごちそうさま、とても美味しかったわ。 約束どおり永遠亭に案内するね」


歩きながら永遠亭の皆さんのことを聞いてみました。

蓬莱山輝夜さん【姫様】は、ほとんど外出しないそうです。
以前は妹紅さんが殴り込みのいきおいでやってきては凄惨な戦いをすることもあったようです。
今は妹紅さんから仕掛けてくることはなくなったようです。
そりゃそうですよね、今、妹紅さん色々と忙しいですもの。

八意永琳さん【お師匠様】は、日中は診療や調剤、往診で、夜はなにやら研究をしているそうです。

鈴仙・優曇華院・イナバさん【鈴仙】は、永琳さんの助手、配置薬の集金・補充、炊事、洗濯、掃除、
聞いているだけで大変です。
そして粗相をすると永琳さんから折檻されるそうです。
なんだか気の毒すぎます。 てゐさんにそう言ったら、
「好きでやってるみたいだからいいんじゃないの?」

ですって。
しれっと言ったこの態度にはどうにも納得できませんが、他所様の事情ですから何も言えません。

てゐさんは竹林の見回りと例月祭で供される団子作りの監督だそうです。
随分と楽なように思えますが、これもナズーリンが言っていた微妙な立ち位置だからでしょうか?


「薬箱はどうするの?」

「は? 薬を入れる箱のことですか? 箱ごと置いていってもらえるんじゃないんですか?」

「それじゃ預箱(あずけばこ)にするってことでいいのね?」

「あの、よくわからなんですけど」

「薬自体は使った分を支払ってもらう【先用後利】だけど、入れ物は貸すだけなのよ、分かるでしょ?」

薬箱は借り物ということですね? もっともですね。

「でも、貸していた薬箱が壊れちゃったらどうなると思う? 弁償しろとは言いにくいよね」

ふむふむ、それはそうですね。

「だから最初に預箱の代金をいただくの。そして配置薬がいらなくなったら引き上げるときに箱代を返すわけ」

なるほど合理的ですね。

「最初に箱代を払わないヒトもいるよ。
ずっと大事に傷つけずに扱ってくれるのならそれでもかまわないんだけどね。
でも壊したらそれなりのお金はいただくよ。
先に箱代を払ってくれるなら、そのお金は大体半額。 

どうする? 払う? 払わない? どちらでもお好きなように」

寺に薬箱を置くとなるときっと長い期間でしょうし、それに私自身がうっかり壊しちゃうかもしれませんし、
無傷でお返しするのは無理のような気がします。

「先にお支払いします。おいくらですか?」

てゐさんが示した金額は、里の甘味処の【贅沢三昧甘味フルコース・春の調べ】二人分くらいでした。
よかった、そのくらいの持ち合わせはありますから立て替えられますね。

「それじゃ私が預かるから」

両手を差し出すてゐさん。
ここで払うんですか?

「だって薬箱作っているの私だもん。このお金で材料を仕入れるんだよ」

そういうことですか。
ナズが買ってくれた財布を広げ、お金をわたしました。

「毎度ありがとうございまーす」

いかにも、の作り笑いですね。 まぁいいですけど。



てゐさんは休憩中の永琳さんのお部屋まで案内してくれました。
去り際に【ナズリンによろしくね】と言ってニタッと笑いました。


「近々そちらへ売り込みに行こうと思っていたのよ。
わざわざお越しいただいて恐縮ですわ」

永琳さんは成熟した才女とお見受けしました。 
柔らかいのに強い視線、物腰に落ち着きがあり、なにより【頼りになる】雰囲気です。
はぁー、私、この雰囲気にとても憧れます。ナズに頼られたいです。

「薬は明日、お届けしましょう。
ところで、寅丸さん、てゐになにかイタズラされませんでした?」

「いえ、なにも。楽しくおしゃべりしながら案内していただきました」

「そうですか」

永琳さんがじっと見つめてきます。 なにか変なんでしょうか?
なにもなかったと思いますけど…… 箱代のことですかね?

「お薬の箱代はちゃんとお支払いしましたし」

「箱代? なんのことでしょう?」

不審げな永琳さん。

……あっ! ああーっ! ワタシ、ヒッカカッタンダ……

「いくらとられたんです?」

動揺している私を冷ややかに見据える永琳さん。
私の中で湧き上がる驚きと怒りの感情、でもそれよりはるかに大きいのは自己嫌悪。
バカです! マヌケです!

「寅丸さん、おっしゃってください。私がお返ししますから」

この賢人は、なにもかも見透かしています! そんな憐れむような顔しないで!
恥ずかしい! 言えません! 
命蓮寺の代表で来たのに! 皆の心配どおりになってしまうなんて!
こんな愚か者が聖の名代だなんて!

飛びそうな意識を引きずり戻し、歯を食いしばってから、
「いえ! なんでもありません! あれは案内してくれたお駄賃です!」

自分でもなにを言っているのかわかりません。

「これにて失礼します!」

永琳さんと目をあわすこともかなわず、逃げるように永遠亭を辞しました。



気がついたら空を漂っていました。
邸を出て、すぐに飛び上がったのは覚えていますが、その後はわかりませんでした。

金額の問題ではありません、永琳さんの前で大変な恥を晒してしまったんです。
なにが毘沙門天の代理でしょう! 代理がこれでは毘沙門天様まで侮られてしまいます。
それに命蓮寺の、聖の顔に泥を塗ってしまうなんて!
なんと情けない!
私、うっかりモノじゃありません! 精進の足りないただの愚か者です!
聖に、皆に、なんと言ったらいいのか。
そして、そしてナズーリンはなんと思うでしょう!?
【いいところを見せたい】【尊敬されたい】ですって!?
ああっ、なんと大それたことを言ってしまったんでしょう!
数多いる毘沙門天様の【使い】の中から、あのナズーリンが私のところに来てくれたのに。
この幸運を何度も何度も無駄遣いしているなんて、罰当たりの極みです!
あれほど有能なのに、こんなダメな主人に長年仕えさせてしまうなんて。
もう、合わす顔がありません、どうしたらいいんでしょう……


不意に後ろから抱きつかれました! 誰!? 誰って、この感触は……

「ご主人、少し休んでいこう」

今、アナタにだけは逢いたくなかったのに。
振りほどいて逃げたくなりましたが、弱い私は背中から伝わる温もりに全てを委ねてしまいました。

そう、このヒト、こんなときにはいつも真っ先に駆けつけてくれるんです。
私がホントにつらいとき、ホントに悲しいとき、ホントに苦しいとき、
いつのまにかそばにいるんです。
何故ですか? 不思議を超えて奇跡のようです。 ……もう、泣きそうです。



人気のない林の中、大きな木の根元に二人で座りました。
ナズーリンがすすめてくれた水筒にはぬるくなった麦茶が入っていて、渇いた喉を優しく潤してくれました。

人里での用事を済ませたナズーリンはその足で迷いの竹林の上空へやって来たそうです。
私の様子が尋常ではないと見て、後ろから近づいたそうです。
そう、遠くから声をかけられたら、私、きっと逃げちゃってたと思います。

少し落ち着いたと見たナズーリンは、座っている私に正面から跨り、首に手を回し抱きつきました。
【なにがあったのか話してごらん、ゆっくりでいいからね】
私もナズの腰を抱いて肩に顎を軽く乗せます。
あったかい、なにもかも全部あったかい。
先ほどまでの激情が退いていきます。


「預箱の代金は【保証金】として理にかなった話だ。あり得ることだよ」

今日の出来事を思い出せる限り順を追って話しました。

「ただ、因幡てゐに直接渡してしまったところが失敗だったね」

確かに、てゐさんは【払う? 払わない? どちらでもお好きなように】と言っていました。
強要された訳ではありません、払うことを選んだのは私です。

「今は持ち合わせがない、とか言っておいて、永琳どのに確認すればすんだことだが、
それまでの会話、雰囲気作りにしてやられた、というところだね。
少し辛口の授業だったと諦めるしかないな、それとも正式に抗議するかい?」

滅相もありません。そんなことしたら恥の上塗りです。

「そんなつもりはありません。てゐさんとのことはいいんです。
私、私がマヌケなせいで永琳さんに毘沙門天様や、聖や、命蓮寺の皆が見下されるのが我慢できないんです」

私はかまわないんです。
でも、私に関わりのあるヒトたちまで私のようにマヌケだと思われたら申し訳が立ちません。
たとえば、聡明なナズーリンが永琳さんにそう思われてしまうなんて、そんなの絶対嫌です。

え……ナズーリンが永琳さんに?

ど、どうしましょう!? ナズはこれから妹紅さんとの約束を果たすために永琳さんと折衝するのに!
【対等以上の関係を持って交渉、駆け引きを行いたい】って言っていたのに!
こんなマヌケな主人の従者だなんて言ったら、対等になんか接してもらえません!
私、私、ナズの足を引っ張りまくりです! これは本気でマズいですよー!!!

抱きついているナズーリンを引っぺがし、
「ナ、ナズッ! あの、ごめんなさい! 永琳さんの、ナズの、ナズは私と違うんだって言いに行きます!!」

「ご主人? 落ち着いて。言いたいことはなんとなく分かるから。それにその件は心配いらないよ」

「でも、でも、ナズが、ナズが」

「寅丸星!!」

「はひっ!」

ナズーリンの大きな声にビックリ。

「貴方の従者、【ナズーリン】とは、なにモノか!?」

へ? ナズーリンがなにモノ、ですか? 真剣な表情のナズ、ちょっと怖いです。
でも、私、その問いにはいつでも正確に答えられます。

「ナズーリンはこの世で一番頼りになって、この世で一番優しくて、この世で一番素敵なヒトです。
大大大大だーい好きな私の恋人です!」

「あ、ありがとう」

ちょっとうつむいたナズーリン、はぅ、可愛い。

「それならば、その【ナズーリン】が言う! この件、問題なし! 大丈夫!」

はえ?

「ご主人は私の言うことを信じてくれるんでしょ?」

「も、もちろんです」

「だったら、OK!」

「でも」

「でも、は必要なし!」

妙に力強いナズーリン、なんか変ですけど、ナズが言うのでしたら、そうなんでしょう。

いつの間にかいつもの穏やかな表情になっているナズーリン。
ああ、やっぱりこの顔、大好き。

「ご主人、大丈夫だよ。他にもいくつか手を打ってあるから。心配しないで。私を信じて」

そう言って、ふわっと笑いました。
あぅ、私、なんて言ったらいいんですか、こんな顔見せられて。

「それからもう一つ【ナズーリン】が言うよ。何度でも言うよ。
私のご主人、寅丸星は高潔で慈愛に溢れ、強く気高く輝く星。
私のほとんどすべてを捧げる至高の存在だ」

そんな、そんな立派なモノじゃないですよ、私、ただのマヌケですよー。

力なく首を振る私の顔を優しく掴んでじっと見つめてきました。

「いいかね? 万に一つ、貴方が己を信じきれずに踏み外してしまい、堕ちていくときが来たとしても、
【ナズーリン】は必ず貴方の隣にいる。必ず、だ! 【ナズーリン】はいつでも寅丸星と共にある!」



私どのくらい泣いていたんでしょうか。
夕闇が迫ってきた頃、ようやくナズーリンに手を引かれ、命蓮寺に向かいました。
永遠亭でのことで泣いたんじゃありません、ナズーリンの【想い】が熱すぎて嬉しくて泣いたんです。

私、この世で一番の幸せモノでした。 
そして、それに気づかない、この世で一番のマヌケでした。
だって、なにがあってもナズーリンがずーっと一緒にいてくれるんですよ?
これ以上の幸せってあるんでしょうか?
それにあらためて気づいたマヌケですが、もう、いいんです。
私、もう、大丈夫です。ナズが一緒なんですから。


寺に戻って、聖に顛末を伝えました。
ナズが聖にだけは全部話しておけ、と言いましたし、私もそうすべきだと思いましたし。
永琳さんに侮られるだろうの件について、聖は【そうですか】と言っただけでニコニコしていました。
このヒト、こんなことでは動じないんですね。はあー、やっぱりスゴいなー。
箱代のことは【必要経費】ですねって言ってくれましたが断りました。これは私の貴重な教訓ですし。



翌日ナズーリンは出掛けていきました。
行き先は言いませんでしたが、きっと、てゐさんのところだと思います。
こんなことがあったとき、ナズは必ずと言っていいほど報復をします。
きっとなにか仕返しをします、そして恨まれるのはいつもナズなんです。
私なんかのために嫌な役をするんです。
私、望んでいないのに。
これまでにも何度も、何度も、やめて欲しいと訴えてきましたが、譲ってくれません。

【ご主人の尊厳、純心を汚したものを私は許すわけにはいかない】

ナズが他人を傷つけ、そしてナズ自身が傷つくのは耐えられないのに。


帰ってきたナズーリンはいつものように無表情でした。
なにがあったのかは話してくれません。
とても気になりますが、私から聞くことではないと思ったので、待つことにしました。

二日目、また行き先を告げず出掛けていきました。
帰ってすぐに【夕食はいらない】と言って部屋に篭っちゃいました。
心配だったので、軽めのお夜食を部屋の入り口に置いておきました。

三日目、二人分のお弁当を頼まれました。 二人分? てゐさんの分? 
帰ってきてから【明日、豆大福を持って行きたいんだ】と言われました。
材料はありますからかまいませんが。

四日目、この日も二人分のお弁当、そして豆大福を持っていきました。 そして帰ってきませんでした。

今日、五日目の朝、帰ってきたナズーリンは参拝者向けの朝汁を二杯飲んでから【ちょっとだけ寝るから】
と言って自室に下がりました。

昼過ぎに部屋に呼ばれました。
本棚と文机、座布団が二つ。質素なナズーリンの居室。
部屋着に着替えたナズが迎えてくれました。

「呼び立てしてすまないね。まぁ、座っておくれよ」

落ち着いたいつもの雰囲気ですが、なんだか嬉しそうです。

「お察しのとおり、ここ数日、因幡てゐのところへ行っていたよ」

やっぱり。

「少し懲らしめてやろうと思っていたんだがね・・・・・・」

そこまで言って、ちょっとうつむき加減で頭を掻いています。
ナズーリンらしくない歯切れの悪さです、どうしたんでしょう?

「因幡てゐと話したんだよ。 うん、たくさん話したんだ」

この数日のことをぽつぽつと話し始めました。

*****************************

私に興味を覚えていたんだそうだ。
ご主人にああいったことをすれば、私が必ず会いに来るだろうと踏んでいたようだ。

『ナズリン、蓬莱の薬ってさー、何種類あると思う?』

初めに【蓬莱の薬】について切り出されたんだ。
ご主人のことで色々言ってやろうと思っていたのに、機先を制されてしまった。

私たちが【蓬莱の薬】の情報を欲しがっていることを見抜かれていたようだ。
はっきりとは言わなかったがね。
カマをかけただけかもしれない。
しかし、私は喰いついてしまった、いきなり、まさかの話題を振られ反応してしまった。
やられたよ。

最近、輝夜どの【姫様】のところに妹紅どのが来ないそうで、少し淋しそうなんだと。
知ってのとおり、今、妹紅どのは慧音どのにべったりだ、いや、べっちょりだ。
慧音どのと生きることを決めてしまったからね。

『あの一途で生真面目で性根の優しい娘が心を許したのなら、その相手と添い遂げたいと思うはずよね?
だったら【蓬莱の薬】をどうにかしたくなるんじゃない?』

そう言って顔を覗き込まれたら何も言い返せなかった。

『ナズリン、アナタが賢くて用心深いのはわかるわ。
そして笑っちゃうほど義理堅いのね。
私、耳がいいのよ、いろいろ噂が聞こえてくるもん。
紅魔館のこと、寺子屋のこと、鴉天狗のこととかね。 
お節介さんだよね。

それで最初にアナタにあったとき、一目見て間違いないって思った。
私に会いたかったんでしょ? この私に。
あの、さびしんぼ娘のために一肌脱ごう、ってんでしょ? 
そのために私を利用したいんでしょ?』

そうしよう、と思ったのは間違いないが、ここまで読まれるとは驚いた。

『アナタは【尽くす】ことに生き甲斐を感じる性分なのね。
誰かの役に立つことでようやく自分を信じられる』

どうにも恐れ入った。
こんな序盤で私の要を暴かれるとは思わなかった。

それにしても随分と饒舌だし、妙に突っかかってくるなと思った。
正直に恐れ入った、と伝え、その理由を聞いてみたんだ。

『そう言われればそうね。 んー、ナズリンのことを聞いていると、黙っていられなかったのよね。
ウソもイジワルも他人のため、私、そういうのイライラするんだよね。
それでいいの? 自分はどこにあるの?ってね』

てーゐに言わせると、私は自分の性情と逆の存在らしいよ。

しかし、その時点で興味があったのは蓬莱の薬の話だったので、なんとか軌道修正して聞きだした。
ここからは不確かな情報ばかりなので、多分に私の憶測が混じるけどね。

【何種類かある】の根拠なんだが、不老不死、無限に見える再生能力だが、再生の仕方が違うらしい。
ボロボロの状態から炎をまとって一気に再生する妹紅どの。
同じ状態から心臓を中心に末端へと光りながら再生が始まる輝夜どの。

推測の域を出ないが、てーゐが言うように永琳どのが作った蓬莱の薬は試作を含め、何種類かあったのかも。
そう簡単に作れる代物ではないだろうし。
輝夜どのと妹紅どのが飲んだ蓬莱の薬は違うものなのかもしれない。

そして、永琳どのは毎夜、弓矢の鍛錬をしているとのことだ。
それも一本だけ射るらしい、一本だけ。
不自然なほど大きな鏃(やじり)の矢だそうだ。

『本当に射るとき、その鏃には何が入っているのかな?』

そこまで聞いた私は、薬の効力を打ち消す【なにか】が入っていると仮定してみた。

普通に考えれば、【姫】を害する可能性のある妹紅どのに放たれると考えるべきだが、
私は永琳どのがその矢を放つ相手は【蓬莱山輝夜】のような気がしてならない。

蓬莱の薬、この夢の薬がリスク皆無とは思えない。
なぜ永琳どのは全てを投げ打って輝夜どのと共にあることを選んだのか?
まだ情報不足で分からないが、勘が告げているんだ。
蓬莱の薬絡みで起こり得るなにかに備えて永琳どのは一発必中の弓の鍛錬をしているのだと。
その特別製の鏃を探してみたいものだが、今は時期尚早だ。

************************

ナズーリンの話、あまりのことに理解が追いつきません。
憶測と言っていましたが、どこまでが真実と重なるのでしょう?
ナズの思考が広いのは知っていましたが、それに渡り合っているてゐさんってスゴいのかも。
それに、ナズにこれだけズバズバ言うヒトって初めてです。

相好を崩したナズーリン、これって、ちょっと休憩ってことですよね?
お茶を淹れてきましょう。

お茶と干菓子を持って部屋に戻ると、

「喉が渇いていたんだ。ありがとう」

すぐに湯飲みを取り、ごくごく飲みました。よかった、温めのお茶にしておいて。

「てーゐがね」

てーゐ? てゐですよね?

「ご主人のこと、気にしているかと思ったら、全然そんなことなくて、
悪いことをしたとも思っていないんだよね」

うーん、あのヒトならそうかもしれませんね、別にいいですけど。

「ご主人は、器が大きいから大丈夫なんだそうだ。
獣から仙人や神様に昇格するのはご主人みたいなタイプが多いんだってさ」

へ? 

「いずれ貴方はもっと【格】が上がるんだそうだよ」

え、え、それってどういうことですか??

「そうなったら、私なんぞ、傍にいられなくなってしまうかもしれないな」

ま、待ってください! そんな、そんな。

「ダ、ダメです! ずーっと一緒にいてくれるっていったじゃないですかー!」

そんなの、そんなの、嫌ですよー!

「まぁ、落ち着いて。私もそんなの嫌だから、精進して自分を磨くからさ」

ホントですか? ホントですよね?
ビックリさせないでください、私が昇格なんてどうでもいいんです、いつでも一緒じゃなきゃ嫌ですよぅ。

ナズーリンが【それでは話の続きだよ】と言いました、ちょっと笑って。
もう、意地悪なんだから。

**********************

無学の賢人と言えばいいのかな?
知識は少ない、いや得ようとしなかったんだ、でも観察力、洞察力はずば抜けている。
物事の本質をズバッとついてくる。
シニカルな見方も興味深い。

イタズラが好きなのは他者との関わりを持ちたいから。
それでいて厭世的、矛盾をはらみながら生きてきたんだ。

てーゐに言わせると、鈴仙どのが今の立場に甘んじているのは自分の意思が見えていないからだそうだ。
だから助けようとは思わないのだと。

鈴仙どのは友人じゃないのかい? と聞いた。

『一緒に遊ぶことも多いけど、私の気持ちを聞いてもらおうとは思わない。
まだまだ頼りないもの。ちょっとオツムが弱いところも可愛いけどね』

厳しいと思ったね。

まぁ、語られっぱなしも癪だったので、あえて癇に障りそうな話題を振ってみたんだ。

大国様には何度か会ったと言ってみたら、喰いつき、スゴかったよ。

『ええええええーーー』

私は毘沙門天の使いだからね。【あちら】でお目にかかっているよ、 ってね。

『ええええええーーー』

初めて動揺を見せたよ。
それが面白くてさ、ワルノリしたんだ。

ネズミは大国天の使いでもあるんだよ? 知っているだろう? 
大昔だが、お供をしたことがあってね、旅先で一夜の伽を命ぜられたんだ。
あれは、甘美で素敵なパッショネイトナイトだったなぁ、 ってね。

『ええええええーーーうぅ、ぅぅ』

泣きそうになったもんだから、慌てたさ。
ウソだよ、ウ、ソ、

『ふぇ!? ウ、ウソなの???  ナズリン! ヒドいよー!』

てーゐがこの程度のウソに引っかかるとは、驚きだった。
まぁ、なかなかイイオトコだったね、と振ってみたら、

『なかなか、ですって!? アナタおかしいんじゃない!?』

えらい剣幕でね。
そこから語る、語る、とまりゃしない。

『あんなイイオトコいないもん!
優しくて、高貴で、強くて、賢くて、そして超絶イケメン、笑顔がこれまた爽やかで、
でも馬鹿正直で、どこか要領が悪そうで、ほっとけない感じ。
このヒトのために何かしてあげなくっちゃ、って思わせる、天然スーパーカリスマジゴロ!
あ、ちょっと下品になっちゃった。今のナシ。

私のことなんか覚えていないだろうけど、ただの兎だったしね。
昔、ちょっとイタズラしたら結構ヒドイ目にあっちゃってさ、死ぬかと思った、ホント。
今、どんなお話で伝わっているか知らないけど、あの方が全部助けてくれたんだよ?

ワタシを抱いて真水があるところまでいってくれたんだよ?
ワタシをそっと優しく洗ってくれたんだよ?
ワタシのために蒲の穂を摘んでくれたんだよ?
ワタシが治るまで黙ってそばにいてくれたんだよ?
急ぎのホントに大事な用事があったんだよ?
それなのにワタシのために!

そんなオトコに出会ってしまたんだもの。
私の理想は大穴牟遅様、大国様だもの、私なんかがどうにかできるとは思わないけど、
でもホントに最高にイイオトコなのよ!』

涙を溜め、叫ぶように訴えかけてきた。

大国様に助けられ、大国様に一目惚れ。
最初に出会ってしまったものが【最高】だったんだ。 
そしてそれは手に入らないものだった。
これは悲劇かもしれないよ。

確信した、実はとても一途な娘なんだと。

そしてもう一つ、確信には至らないが、気づいたことがあった。
てーゐがイタズラやウソをし続ける理由に。

もしや、アイツは大国様にもう一度会いたいんじゃないかと。
イタズラして、ばれて、ヒドい目にあったら、もう一度大国様が助けに来てくれるんじゃないかと。
出会いの場面を無意識のうちに再現しようとしているのじゃないかと。

これほど賢く慎重なヤツがこんな単純な理由で生きてきたとは思えなかったが、考えてみれば、
理想の相手を求めるって、純粋にして覇気あふれる想いだよね。

そのとき、私、てーゐを大国様に会わせてやろう、って思ったんだ。
筋道立った理由が見当たらないんだが、そうしたいって、強く思ったんだよ。
会ってどうなるかなんて分からないし、かえって悪くなるかもしれない、いらぬお節介だとも思う。
おかしいよね。でも、私、そのときはそうしたいって強く思ったんだ。

お館様【多門様】に頼んだんだ、大国様のお出ましを。
七福つながりで結構交流があるからね。
これでもそれなりに功績をあげているから、多少の無理は利いていただけるのさ。
二日目、その旨を手紙に書いたんだよ。
こちらの声は届きにくいが、お館様にとって【見る】事は容易だ、この程度の結界ならばね。
返事は、とある星の瞬く間隔を調整することで知らされた、まぁ、暗号のようなものだよ。
早かった。翌々日の夜、一刻(二時間)だけだが、竹林にお越しいただけることになった。
昨夜のことだ、月が昇りきった頃から一刻だけご来臨いただいた。

豆大福? 博麗大結界の管理者、霊夢どのへの貢ぎ物だよ。 
お目こぼしいただくためのね。
賄賂みたいなものだ。
ちょっと結界をくすぐるのを見て見ぬ振りしてもらうのさ。
【今夜、結界の一部が揺らぐやも知れませんが心配は無用です。ほんの一刻ほどですみますから】
いくら神様がなさることといっても、事前に知っているのと、そうでないとでは、後々の心証が違うからね。


大国様とてーゐの再会。
流石に盗み見をすることはしなかったよ。

しばらくして様子を見に行ったら、てーゐは潤んだ目で月を見上げていた。

『覚えていてくれたの、私のこと、姿かたちが違うのに、私だってすぐ分かってくれたの、
抱っこしてくれたの、私の話をきいてくれたの、 相変わらず、ううん、前よりイイオトコだったー』

なんとも穏やかな顔だった。

『ナズリン、ありがと』

だってさ。

『私、もう少し長生きして、いろいろ頑張ってみる。
大穴牟遅様は艶福家だし、奥さんたくさんいるし、頑張れば、愛人くらいにはなれるかもね』

逞しいものだ。

*******************************

ナズーリン、大仕事でしたね。
お節介? いいえ、やっぱり貴方は素敵なナズーリンです。
私はそう思いますよ。

「ご主人、実はてーゐに言われたことがあるんだ」

そう言えば、なんで【てーゐ】って言うんです?

「ああ、それか、私、【てゐ】って言いにくいんだよ。
普通に呼んだら【てゐっ】って強く呼びつけているようだろ? てゐどの、てゐさんは嫌がるし。
それに、アイツも私のこと、言いにくいからって【ナズリン】と呼ぶし、いつのまにかこうなったね」

あらまあ、随分仲良しになったんですねー。

「あ、ごめんなさい。てゐさんになんて言われたんでしたっけ?」

「ナズリン、私、アナタの友達になってあげる、いえ、友達になって、って」

これはビックリ。

「ご主人、私、どうしよう。
うん、まぁ、てーゐと話をしていると、ドキドキするんだ。
ご主人とは違った興奮だ。
こんなことって久しくなかった。
性的興奮は全く覚えないが、気を抜けない緊張感と、脳がチリチリするほど刺激されるやりとり、
それなのに不思議な心地よさがあるんだ。変な気持ちだ」

難しい顔をしてうつむくナズーリン。

「ナズ? それって、貴方も友達になりたいってことですよね?」

「でも、友達ができたら、ご主人と一緒にいる時間が減るかもしれないよ?」

私、ヤキモチ焼きなんですけど、これ、違いますね。
ナズを独り占めにしたいですが、お友達を持ったナズはもっともっと素敵になるような気がするんです。
これは賭ですけど、きっとかなり分が良い賭です。

「それでもとてもいいことだと思いますよ」

「ホント? 実は私、アイツと友達になりたいんだ」

ぱぁっと笑うナズ。

「あの、でも最後はいつでも私と一緒にいて欲しいんです。 【ラストダンスは私に】なんです」

「ロマンチックだね。 私は越路吹雪の歌唱がいいね」



「明け方、てーゐの隠れ家で渡されたのがこれなんだ」

差し出されたのは大き目のシジミ貝。
ナズーリンが開くと、鮮やかな紅が詰まっていました。

「蜜蝋とひまし油、紅花、そしていくつかの鉱物を混ぜた手作りの口紅だよ」

何でこんなものを?

「てーゐの内職だそうだ。アイツ、実は化粧に詳しいんだ。
初めは自分のためだったようだが、試行錯誤するには量が要るということで、
作りすぎたものを人里に卸していたらしい。
本人は【イメージに合わない】と言って使わなくなったようだが。
まぁ、幼女に口紅はいただけないからね。
おかしなものは含まれていないよ、安心して使うといい。 この鏡使って」

端が少しだけ、へずれていました。
調べてくれたんですね、慎重なナズらしいです。


紅差し指は薬指でしたね。ナズの手鏡を見ながらちょっとずつ塗ってみます。
塗りすぎは下品になりますから、注意して。
やや深めの緋色です。 グロスが結構ありますね。  
あーこの唇、いいですね。自分の唇を言うのも変ですが。
なんだか唇だけ美人になったみたいです。唇だけ緊張しちゃいます。

ナズ? どうですか?

ナズ? どうしたんですか?

「あ、あ、あーーーー! 十分イメージしたはずなのに、気の利いたことを言うつもりだったのに、
嬉しすぎてどうしていいのか分からないよ!!
綺麗だ、可憐だ、美しい、いや妖艶だ、ああー!! 違う! こんな陳腐な言葉じゃない!
うっあーー!! 壊れそうだー! くそーっ! アイツの思うとおりなのかーー!」


****************************

アナタのご主人って、とても美人よ。分かってるの?
ああ、もちろん分かっている。

どうかしら? せっかくのヒト型、その中でもかなりのものよ。 暖色系美人って言おうかしら?
暖色系? 聞いたことないな?

あったかで、穏やか。やさしくて、やわらかい美人さん、ってこと。
それなら合点がいくな。

あのヒト、ぽわぽわしているから、自分のこと絶対分かってない、気にしなさすぎ。
それがご主人の良いところだ。

美人はね、自分は美しいんだと意識したときから美人度が上がっていくのよ、踏み外すヒト、多いけど。
そうかも知れんね、いや、そうだね。

もっと綺麗になるのに。アナタ、好きなら、もっと綺麗にしてあげればいいのに。
しかし、着飾ったり、化粧することは嫌がるんだよ。

いきなり何もかもじゃなくていいのよ。紅をひくだけでもうんと変わるわよ。アナタ、腰が抜けちゃうよ?
まさか、そこまでではないだろう?

ふふん、ナズリン、まだまだだねー。

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自分を捨て、歯をくいしばって生きてきた鼠は、ようやく探し当てた。

理想を求め、孤高を保って生きてきた兎は、幸せの種子を見つけた。

お互い、生まれて初めて友を得た。

自分の能力に因るものなのか、偶然なのか。

理由なんかどうでもいい。

生涯の友を得た、この奇跡に心ふるわせるだけ。

酒を酌み交わそうか。

知恵比べをしようか。

それとも幻想郷をかき回そうか。

ナズリン、

てーゐ、

これから二人、たくさん、たくさん、遊ぼうよ。


でも、私はご主人が最優先、それでも良いならたまには付き合ってやろう。

ふん、私だって大国様が一番、それでも良いならたまには遊んであげるわ。

ふ、ふぁははははー

きゃははははははー

強く賢い突っ張り娘たち、でも本当はちょっと寂しがりだった。

永く生きてきた二人の少女は、生まれて初めて心の底から笑った。





ナズーリンの友人、友誼の話を書いてみました。
ナズーリンとてゐ、腹黒幼女キャラと言われる二人ですが、
それぞれ信念を持って長く生きてきたんだと思います。
友達がいなかった、と言うより、作らなかったんじゃないかなと。
そんな二人が打ち解けあって、友誼を持てたら、素敵で愉快なコンビになりそうじゃないか?
と思い至り、話を組み立ててみました。

お嬢様・冥土蝶様・超門番様、お三方の梅干しを少し頂戴しちゃいました。
事前に許可をいただく術がありませんでしたので、この場を借りてお礼申し上げます。

お読みくださり感謝でございます。
ご感想、ご意見、ご指摘等いただければ幸いです。
紅川寅丸
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コメント



0.1830簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
これですよこれ!これが読みたかった!
ナズとてゐの知恵比べ的な!ね

それはそうと星ちゃんの「うかー」ってかわいすぎる
次回作も期待期待!
4.100名前が無い程度の能力削除
おぉ!とても面白かった!
8.100名前が無い程度の能力削除
やっぱりいいね!
10.100名前が無い程度の能力削除
てゐとナズーリンの絡みが新鮮で面白かったです。
12.100名前が無い程度の能力削除
てゐとナズーリン。私も似てる所があるなーと思っていた所にこのSS。
二人の甘々な関係とそれと共に広がっていく幻想郷の世界が、これからも楽しみです!
13.100奇声を発する程度の能力削除
この二人の絡みが面白かったです!
14.100名前が無い程度の能力削除
紅川さんの作品はもう…たまりませんな!
新しい話を繰りつつ、少しずつ今までのお話がつながって… 甘々のナズ星はそのままに広がっていく世界感が素敵で仕方ありません
次回作も楽しみにしております!
15.90ナルスフ削除
ナズとてゐの組み合わせは、私もやろうかなと思ってたけど、どうにも具体案が思いつかずに放置していたものです。
よくぞやってくだされた! しかもオオナムチ様まで持ち出してくるとはな・・・。いいもの見れたわー
星ちゃんもかわいかったですよ。
20.100名前が無い程度の能力削除
ナズーリンの変態度が日増しになっているような…w
気のせい…じゃ…ないよなぁw
21.100名前が無い程度の能力削除
重思合身はいつになるんだろう
23.100名前が無い程度の能力削除
てゐ良い子…!
ナズが歪みなさすぎがいい!
26.無評価紅川寅丸削除
2番様:
 ありがとうございます。当初、「イタズラ合戦! 永琳のスカートをめくれ!」
 だったのですが、組み立て直すうちにこんなふうになりました。
 星の「うかー」はなんとなくこだわっています。お目にとまって嬉しいです。
4番様:
 ありがとうございます。何よりのコメントです。
8番様:
 過去作もお読みいただいているのですね。ありがとうございます。
10番様:
 この不思議な最凶コンビが幻想郷を駆け回ると面白いなぁ、と思っています。
 ありがとうございました。
12番様:
 共感してくださる方がいて嬉しいです。ありがとうございます。
 これからも色々書いてみたいと思います。
奇声を発する程度の能力様:
 毎度コメントをいただき、ありがとうございます。この二人のやり取りは、
 今後もちょいちょい出していきたいな、と考えております。
14番様:
 ありがとうございます。続けて読んでくださり、しかも暖かいコメントをいただける、
 これにすぐる悦楽は滅多にありません。ご期待に沿えるよう精進します。
ナルスフ様:
 「むらさむらむら」シリーズ、大好きなんです! あ、「麦湯一杯」も好きです。
 これらの感性が同居するナルスフ様からのコメントに恐縮です! ありがとうございます。
21番様:
 ありがとうございます。大丈夫です。ナズーリンはノーマルです(多分)。
22番様:
 「寸止め」を気取っているわけではないのですが、話ごとに少しずつ進展している、
 と思っています(多分)。あと10作くらいで合身完了かと(長すぎ)。
 よろしければ、そのくらいまで付き合ってやってください。ありがとうございます。
24番様:
 ありがとうございます。今後この二人、刎頚の友として描ければ、と画策しております。



 
 
 
29.100お嬢様・冥途超・超門番削除
ええ話やー!!
期末あったから読むの遅れてごめんなさい。春休みだぜイエ~ゐ!
梅干出てきたときなんだか妙に緊張しわ~wwもう梅干でもカレーパンでも
なんでも使ってやって下さい!               お嬢様
凄く大人の遣り取りでございました。うわ~大人だぁ~て感じでした。
やっぱり紅川先生には独特の語り口調がありますね。これからも独自の道を
突き進んで下さい。                    冥途蝶
て~ゐがいいですね!てーい!て感じで。かわいい!     超門番
30.無評価紅川寅丸削除
お三方様:
 そういえばそんな時期でしたね。家人の一人はAO入試で大学が決まり、遊び歩いておりますし、
 もう一人の家人も県立高校へ進学が決まり、ぐでぐでとゲーム三昧です。困ったものです。
 【独特の語り口調】うーん、やっぱり妙な癖があるんでしょうか? 自分ではよく分からんのですが。
 そのように言って下さる方が何人かいらっしゃるんですが、ホント、これでいいんでしょうか? 
 正直、ちょっと不安です。私、大丈夫なんですかね?
 ナズリンとてーゐ、呼び方で想いが違って来るような気がしたんです。
 これからもちょくちょく出てくる予定です。 ありがとうございました。
 
 
33.100もちょ削除
いい話だー!実に良かったー!文体も好きですし、設定も好きです。
これからも頑張ってください!
34.無評価紅川寅丸削除
もちょ様:
 ありがとうございます。
 勝手設定ばかりですが、一応原作の会話や書籍をベースにしているつもりです。
 やれるところまで頑張ってみますね。
39.100名前が無い程度の能力削除
凄いなー凄いなー
この読みやすさと文章から覗く知性と、ナズトラ好き

てゐの描写が好きっす
40.無評価紅川寅丸削除
39番様:
 てゐのとらえ方はかなり自分設定ですが、気に入ったのでこのままでいくと思います。
 今後も痴性に磨きをかけ、精進します。ありがとうございました。
41.100名前が無い程度の能力削除
設定が深いですねー。妹紅やはたてがちょくちょく出てくるのがシリーズとして嬉しいです。
久しぶりに紅川さんの書く面白い咲夜さんを出してほしいな~と思ったり。

ナズ星最高です
43.100名前が無い程度の能力削除
良い組み合わせだなあ。
どこまで拡がるか楽しみになる話でした♪
44.100Admiral削除
ナズてゐとな…
てゐ可愛すぎる。大国主様に会えて良かったね。
なんていい娘たちなんでしょう!
もっと広がれナズーリンワールド!
46.無評価紅川寅丸削除
41番様:
 ありがとうございます。「七曜のクッキー」書かせていただきました。ぶっ飛び咲夜をご覧ください。
43番様:
 ありがとうございます。広げすぎは怖いんですが、やれるところまで頑張ります!
Admiral様:
 てゐ大好きです。これからもナズーリンの頼りになる相棒として要所で顔を出します。
 よっしゃー! 広げるぞー!(笑)
49.100名前が無い程度の能力削除
てゐとナズが格好いいです
50.無評価紅川寅丸削除
49番様:
 ありがとうございます。今後は寅丸がてゐに食われないよう注意しておきます(笑)。
52.80名前が無い程度の能力削除
わい
53.100ぺ・四潤削除
タグを見ないで読んでたら一体勇儀姐さんがいつ出てくるのかとww
前回で気になってた【いろは】はそういうことだったのかー!てっきり48種類あるアレだと思ってたのにまさかシチュエーションのことだったとは!くっ!!私の陳腐で浅はかな想像が恥ずかしい!!
ところで【に】のシチュエーションはなんですか!!
いや、しかし【い】が最終的に実は一番高度なシチュなんじゃないかと……

てゐは幻想郷一攻略が難しいと思われていましたが、こうもあっさり堕とすとは流石ナズーリン。最早幻想郷征服も時間の問題か……?
まあ、冗談はともかくとしててゐとナズーリン。それぞれ心からの親友と言える相手はこれまでいなかったのでしょう。お互いにとって隠し事の無い話ができる存在ができたのは本当に喜ばしいことです。
てゐも一途で、しかも愛人にも寛容だなんて、何て素敵なんでしょう。てゐは幼女って言われてますけど実は幻想郷一いいオンナなんだなーって思いました。
あと星ちゃんがだんだんとナズーリンに開発されてきて素晴らしい。布団の中でナズーリンの名前を呼びながらもぞもぞとだなんて……!!さらに妄想をこと細かく本人を前に説明するだなんて……!!
54.無評価紅川寅丸削除
52番様:
 先ほどかたでしょうか? ありがとうございます。

ぺ・四潤様:
 フェイクっぽいタイトルで恐縮です。
 【に】以降はいずれってことで・・・・・・
 【い】の件、さすが分かっていらっしゃる! だからこそいの一番なのです!

 てゐについて。
 偉そうに言いますが、各種二次創作を拝見する中で、どうにも納得ができませんでした。
 このコ、ただの悪賢いこいロリウサギじゃない、もっといろいろあるはずだと。
 ナズーリンと対等に渡り合える、そして理解し合えるキャラを考えたら、てゐしかいませんでした。
 いい女なんです、ここ一番で頼りになるはずなんです。
 ナズ星がベースですが、私、もしかしたらナズてゐの友情を書きたいのかもしれません。

 星はエッチなんです。
 本人は否定しますけど、隠れエロリストなんです。
 でも、要領が悪いから隠しきれないんです。
 そうあって欲しいのです。
67.無評価ナルスフ削除
昔読んだけども、シリーズを追ってきたので読み返してみました。
・・・なんで昔の自分は90点しか入れてないのか。くそう100点入れたい・・・。
すっごいほろりと来ましたよ。
ナズをもやり込めるてゐの乙女モードかわいい! 彼女のために奔走するナズの健気なこと!
憧れの人はいるけれど、対等といえる存在のなかった二人がやっと出会って友達になれた。いい話だっ・・・!
そしてシリーズを読んでくると、このコンビが本当に最凶だというのが理解できて震えが止まりませんw
二人が本気になったら、本当に幻想郷をひっくり返す事だってできてしまいそうw
68.無評価紅川寅丸削除
ナルスフ様:
 ありがとうございます。
 貴方にこのコンビを認めていただけたことが本当に嬉しいです。
 これからも『ナズてゐ』がチョロチョロと悪さをする予定です。