Coolier - 新生・東方創想話

ゆかれいちゅっちゅっ【冬】

2011/03/03 14:42:47
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 下らない話をしたり、ちょっとした豆知識や雑学なんかを教えて貰ったり、あとは他愛もない事をダラダラ話をして。ついでに今日の夜は何食べたい? と訊ねたりして、時間は過ぎて行った。
 日が暮れて夕飯の買い出しをして(代金は紫持ち)、ご飯を食べて。紫の提案で、紫しか知らない秘湯に連れて行ってもらって。それから一緒に寝て。
 次の日、いつもより遅く目が覚めると、空は曇天が広がっていた。分厚い雲が空を覆っていて、陽射しも無くて寒い。北風も楽しげにひゅるひゅると吹いていた。
 雲を見詰めて「明日までは持たなそうだな」と一人小さく呟いてから、紫を起こした。
 紫は寝ざめが悪くて布団の中で暫くもぞもぞとしていた。そんな芋虫もどきの姿に笑いを堪えながら少しの間見守って。それからご飯を作って、朝食と昼食を纏めて取った。
 昨日の夕食の時もそうだったけれど、この時も紫はあまり食べなかった。時間をかけて半分くらい食べ終えて、それから「ごめんね」と言って箸を置く。申し訳なさそうな表情を、具合も調子も芳しくない顔に浮かべる。だから、こっちが逆に申し訳ないような気持ちになって、でも「無理して食べなくていいよ」としか言えなかった。
 本当なら、「無理しないでいいよ」って「もう眠っていいよ」って、そう言えれば良かったのに。

 後片付けをしながら春を告げる小鳥の鳴き真似をしてみるけれど、紫みたいに上手くは出来なかった。




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