Coolier - 新生・東方創想話

背を追う

2005/05/16 13:33:31
最終更新
サイズ
42.63KB
ページ数
1
閲覧数
1645
評価数
4/118
POINT
5690
Rate
9.61
 このSSは過ぎ去りし肖像、鉄の鏡、の続編です。



 紅魔館の門前に剣戟の音が響く。
 剣を振るう一人は、悪魔の館の正門に根を生やしているのではないか、そう言われるほどに門前にいるのが常であると思われている門番・紅美鈴である。自ら鍛え上げた妖刀を正眼に構え、相手を静かな視線で見据えている。
 相対しているのは普段紅魔館の前ではなく、冥界は西行寺家の庭を守ったり庭木を整えたりもする魂魄妖夢である。隙無く楼観剣を下段に構え美鈴に鋭い視線を送る姿は、普段多くの人妖からからかいのネタにされる様とはかけ離れている。

 鋭い金属音が、二度、響いた。

 美鈴が構えから前動作無しに放った刺突を妖夢の剣が受け流し、返す刀で腕を狙った妖夢の一撃を美鈴がすぐさま剣を引き戻し弾いたのである。双方が追撃を嫌い、ぎりぎり間合いの外に距離を取る。
 このような膠着がしばらく続いている。ほとんど不意打ちに近いような速度で斬りかかる美鈴を妖夢は手堅く受け、きっちりと受け辛い反撃を返してくる。生真面目な性格が積み上げた修行の成果だろうか、正統派の剣術が持つ強さを妖夢は存分に発揮していると言えるだろう。
 おおよそあらゆる武術は、永きに渡る取捨選択により磨き上げられているものである。現在まで残り戦法として存在しているのは有効であるからであり、その蓄積は長命の妖怪に十分対抗しうるものだ。基本の型、受け難い連携、防御からの切り返し、戦術理論など無為に残るものなど無い。
 とりわけ魂魄妖夢が振るう剣は、まさに人外の者に対するべく磨き上げられた技法であり、美鈴が妖怪としての高い身体能力でもって突破しようとしても容易にそれを許してはくれない。
「腕前は一流ってわけね」
 若いのによくやるものだと美鈴は思う。外見よりは確かに長生きをしているのだろうが、妖夢の年齢はまだ五十を数えてはいないだろう。普段見せる幼い反応を鑑みれば、まだ二十年と生きていないのかも知れない。半人半霊の年の取り方などは美鈴の想像の外にある話だが、変化の類ならば化けてもいないであろう年月だ。
 その上妖夢が使うのは剣術だけではなく、その半分に相応しい妖術もこなす。双方完成にはまだ遠いのだろうが、バランスのとれた二つは組み合わさり強い力となるだろう。
「でも、うちのお嬢様を斬れるかしらね?」
 美鈴は構えを解くと、軽く首を傾げて言った。
「どういう意味?」
 妖夢から見て美鈴に侮っている様子とは思えない。人柄を鑑みても、そのような人物ではないだろう。つまりは、それが美鈴の率直な感想だということに他ならない。
「妖夢。あなた実は、あまり妖怪とはやり合った事無いんじゃない?」
「む」
 言われてみればそれは確かに事実であった。稽古の相手は主に師である妖忌であったし、妖夢が暮らしているのは冥界、死者が住まう土地である。妖怪は寿命が永い、或いは存在せず生と死のサイクルが非常に長い。都合、冥界に訪れるのは死亡した通常の生き物、中でも人間が多くなる。冥界に残るような動物はそもそも冥界に至らず、そのまま妖怪になる者も多いからだ。それに、死んだくせに勝手に生き返る妖怪も少なくない。
 よって冥界に住んでいれば、相手にするのは元人間が主体となってくる。怨霊と化した武者などが彷徨くことがあるが、それもまだ霊の範疇ではある。妖怪だの生きている人間だのを相手にする機会が増えたのは、ごく最近のことなのだ。
「普通の妖怪ならその妖刀で普通に斬れば良いんだろうけどねぇ。うちのお嬢様あまり普通じゃないし」
 確かにあの紅い悪魔を普通の範疇に入れるのはあまりにも憚られる。もっともあまり妖怪っぽくないと言う点から見ると、美鈴も普通の範疇ではないのだろうが。
「あなたの知り合いにもいるじゃない、スキマの人。八雲紫だっけ?」
 美鈴の挙げた人物は、知り合いが見ても他人が見ても誰が見ても胡散臭い妖怪だ。幻想郷の発祥以前から居るらしいのにあまり知られていないのは、その年月の半分以上は眠りっぱなしだからではないかと妖夢は思っている。
「紫様がどうかしたの?」
「ああいうのを斬ったからって、素直に斬れると思う?」
 妖夢は主人以上にのらりくらりとした、そのくせ圧倒的な力を持つその人物を思い浮かべた。妖夢には何となく、真っ二つにしても何事もなかったかのように現れそうな気がした。
「無理じゃないかしら……」
「実地で試すのが一番良いんだけどねぇ。私はそういう嘘くさい妖怪じゃないし」
 美鈴は腕を組んで考え込む。妖夢はその様子に少し感動を覚えていた。何というか、自分を真面目に扱ってくれる相手と久々に遭遇したような気がしたからだ。と言うより美鈴にも普段は遊ばれている気はしないでもないが、それは横に置いておくことにした。
「あっ! 身近にあったわ」
 軽く手を叩き、美鈴は数度確認するように頷いた。
「何か良い案でも?」
 聞き返す妖夢には応えず、美鈴は刃先に手を添えるようにして剣を目の前にかざす。美鈴の妖刀から鈴の音のような振動が発せられ、辺りに薄く広く残響する。
「え、あの、ちょっと?」
 妖夢は嫌な予感に駆られた。予感と言うには確実性が高すぎるような気もするのだが。
 彼女の勘を裏付けるように妖刀が紅い光を放ち始める。剣から、そして美鈴自身から吹き出した妖気が辺りに澱み、まるで地獄の釜の蓋でも開いたかのような気配が広がった。既に妖気と言うよりは瘴気に近い。
「大丈夫。安心して」
 辺りに漂う妖気とは対照的に、美鈴は花のような微笑みを浮かべた。
「へし折れたくらいならすぐ治すから、色々」
「へし折れるって何が!」
 最近は死神も営業スマイルくらい浮かべるようだ。死の宣告を行うことに替わりはないが。
「平気だってば。ちょっと死んだくらいならパチュリー様が何とかしてくれるし」
「それ平気じゃありませんからッ! 残念ッ!」
 薄く笑って細めた美鈴の虹彩は煌々と紅く輝き、妖怪らしさに満ち溢れている。つい先ほどまで妖怪味が薄いなどと思っていたことを撤回したい、そう妖夢は激しく思った。
「うちのお嬢様とやり合った私の経験から見て、今のあなたに足りないものがあるわ」
 完全に獲物を見る目で妖夢を眺めながら美鈴が言う。
「危機感よ」


 妖刀を片手にぶら下げた美鈴が、何の工夫もなく妖夢に飛びかかる。速度こそ飛び抜けているが隙だらけで軌道が丸判りと、今の美鈴には精密な動きをしていた先ほどまでの面影もない。妖夢は空中で力任せに大上段から振り下ろされる剣を受け止め、弾き返す。

 いや、弾き返そうとした。

 受け止めた剣からあり得ないほどの衝撃が伝わり、まず手首と肩から破滅的な感触がした。同時に妖夢の腕にまともな力が入らなくなる。そのまま美鈴の一撃は勢いを落とすことなく振り下ろされ、楼観剣の背が激しく妖夢の肩口に打ち付けられた。
 激痛に呵まれ脂汗を流しながらも飛び退いた妖夢は、ふと横に風を感じ取った。
 距離を離したはずの美鈴が真横に立ち、高々と足を振り上げている。とっさに白楼剣を腰から抜き放ち受けようとする、が、間に合わない。鞭、いや、龍の尾のように振り下ろされた美鈴の脚は妖夢の首に巻き付くように叩き付けられ、その意識を刈り取った。
 幸いなことに痛みはなかった。

 *

 妖夢の耳に聞き慣れない楽器の音が響いている。騒霊音楽隊が使う楽器の一つに近い音を発する物があったような気もするが、より大げさな、或いは荘厳な音であるように感じられる。
 妖夢は、ガバッ、と上半身を起こす。前後関係が把握出来ない。一体ここはどこで今はいつなのかと自問する。
「おお、妖夢よ。死んでしまうとは何という半人前×2かしら」
「……パチュリー?」
 疑問符が付くのは色々な理由からである。
 まず七曜の魔女、パチュリー・ノーレッジの服装がいつも着ている寝間着のような、もしくは寝間着そのものではなく、西洋風の聖職者、おそらくは神父の格好をしていることに依る。傍らに立つ彼女の使い魔は、それに合わせるかのように修道女風の姿をしている。向こうの宗教については詳しくないが、魔女と悪魔がこのような格好をしているのは流石に罰当たりなんじゃないかしら、と妖夢はどうでもいいことを思った。
「ここは、っていうか一体何?」
 妖夢が訝しげに見回して真っ先に目に付いたのは、パチュリーの頭上後方にある銀色の十字架。吸血鬼の館にこれはないんじゃないだろうか、と妖夢は思う。それに日光とは別の光源をわざわざ用意したステンドグラス。奏でられているのはずいぶんと大きなピアノ、いや、パイプオルガンというやつだろうか。弾いているのは小悪魔と似たような格好、髪をしたシスター風の女性である。
「教会?」
 実際にそのようなところを訪れたことはないが、この部屋の内装、パチュリー達の格好を鑑みると妖夢に他の発想は現れなかった。それに流れている曲は賛美歌とやらだろう。どう考えてもどれも紅魔館にあるべき物ではないと重ねて思ったが。
「そう。と言っても死体を修復するだけの場所だけどね」
「死体?」
 訝しげに周りを探ると、妖夢が座り込んでいるのはいかにもと言った感じの棺桶、しかも西洋風だった。棺桶としての役割よりも、ここの主人の寝台として使われていそうな印象の品である。
「なんだかまるで私が死んでたみたいね」
 怪我人の搬送を棺桶で行うというのは洒落が効きすぎて、もう悪趣味の域だろうと妖夢は思う。魔女だの悪魔だのには相応しい所行かも知れないが。
「まるで、じゃなくて死んでたのよ」
 さらりとパチュリーが口にした。
「は?」
 死んでいたとは何かの冗談だろうか。確かに妖夢の半分が死んでいるのは確かだが。
「頸椎が断裂すると人間側の方も死ぬと思うわ、大抵」
「他は軽傷ですね。左側の鎖骨と胸骨、あばらが何本か折れただけでしたし。あと両手首と肩が脱臼しただけかな」
 パチュリーが死因を、小悪魔が補足を述べる。それを聞いて、妖夢は何となく存在を確認するように首筋を撫でた。怪我の内容からすると、美鈴に首を刈られた時点で即死だったようだ。それにしても、妖夢には骨折だの脱臼はそもそも軽傷ではない気がしてならない。
 死んでいた、らしい、自分の体には特に異常は見られなかった。首は勿論のこと、脱臼や骨折をした部分にも痛みはおろか違和感さえ残っていない。自分を治療したのはおそらくパチュリーなのだろうが、七曜の魔女の二つ名は伊達ではないと感じさせる手際だ。さらっと聞かされた死因と怪我の具合は、あまり聞きたい内容ではなかったが。
「ここは、その、よく死人が出るのかしら?」
 如何に酔狂な者でも、まさか今日晴れて死体となった妖夢のためにこんな施設は造らないだろう。悪魔の館に教会とは巫山戯ていることこの上ないが、死者の復活などの儀式に相応しい清浄な空気で満たされている。おそらくは、本物の神殿などよりも。
「たまに、ね。加減を知らないのが一人ね……」
 パチュリーが遠い目をして虚空に視線を遣る。気の抜けたような空虚な笑いが口の端から漏れ、顔色の悪さと相まってそのまま昇天しそうに見えるほど儚い。その一人に余程苦労しているのだろうか。
「あとは、ここの魔法書の発掘時にも時折ですね。妖怪が死ぬ、って程になると炭化してたりで大変ですよー」
 妖怪の消し炭には慣れているのか、小悪魔の口調は羽のように軽い。先ほど首をへし折られた身としては、あまり聞き流せない切実さを感じたが。
「まあ修理も終わったことだし持っていっていいわよ、美鈴」
「お手数かけますねぇ」
 パチュリーの言葉に、パイプオルガンを弾いている紅髪の女性が振り返る。シスター風の女性は美鈴だった。揃ってこんな格好をして敷地に教会っぽい物を造ったりと、ひょっとして紅魔館の住人は馬鹿なんじゃないかしら、と妖夢は思わずにいられなかった。
「それじゃあ続き、する?」
「ええ」
 妖夢は美鈴の言葉に頷くと、表情を引き締めた。
「爆殺とかはしないでね。治すの面倒だから」
 直後のパチュリーの言葉に一抹の不安を覚えたが。

 *

「元々はパチュリー様の工房で、空き時間にやってたんだけどね」
 館外に向かいながら美鈴が話す。ちなみに服はすでに着替えてある。
 魔術的な作業も行うパチュリーの工房は雑霊等の侵入を防ぐのに都合が良く、またその手の儀式を行うのは当然彼女であるため、一番面倒のない場所だったのだ。ちなみに死体の修復を苦もなく行う彼女がなぜ自分の喘息その他を治せないかと言えば、強大な魔力を持つ吸血鬼が自分の弱点を何とか出来ないのと同じような物らしい。美鈴は、腹も身の内みたいなものよ、と言って混ぜっ返していたが。
「治された娘達が、何となく標本とかにされそうで嫌だ、って言ったのよ」
 パチュリーは物質を使っての魔術をそんなに行わないのだが、皆無ではない。都合、魔女らしい、妖怪から見ても不気味な剥製などもあったりするため、肉体的に死亡したメイドたちもその一員にされそうな気がしたのだそうだ。
「それでパチュリーはどうしたの?」
 まさか何人か剥製にしたのではないと思いたいが、人間の魔法使いも七色の魔法使いも怪しげである。ここの知識人もやはり怪しく、妖夢の目から見てもやりかねないように思えた。
「パチュリー様曰く、『普通の妖怪を標本にしたりしないから安心なさい』だって」
 それは珍しい妖怪だったら標本にするという宣言だろうか、と妖夢は思った。
 紅魔館のメイドたちも同様の印象を受けたらしく、半泣きの嘆願により結局別口で部屋が建造されることになったのだそうだ。その際に色々と悪ノリをした結果があの教会であり、ヴワルにある無駄知識を総動員して内装が決定されたらしい。なんでも外ではあのような施設で死者の復活を行うのが定型だとか。
「なんだか知識の壮絶な無駄遣いをしているような気がするわ」
 あれだけの蔵書の使い方を何か間違えているのではないだろうか、そう妖夢は思わずにいられない。遊び心があるのは結構なことだが、その比率に明らかな偏りがある。
「まあ知識なんてものは無駄なものだ、ってパチュリー様も言ってたわよ」
 パチュリーは図書館の本の価値など、閑古鳥がオーケストラでも開催しそうな博麗神社の賽銭程度の価値しか無いとも言っている。素敵かつ中身が空である箱程度の価値のものとして言ったのか、はたまた五年間も空であり続けたという価値を持っていると言ったのか。どちらにしろ、あまり有難味は無さそうである。

 *

「さっきの死因は、肉弾馬鹿の妖怪とまともに打ち合ったことよ」
 再び紅魔館の門前に戻り、美鈴が失敗の理由を告げる。元々、素の肉体能力で人に劣る妖怪はまず居ない。それが肉体派ともなれば、人間をねじ切るくらいは苦もなくやってのけるのだ。
「確かに。たとえお爺様でも純粋な腕力であんなことはできないものね」
 闘神の如き剣の冴えを見せた妖忌であっても力業は妖怪の領分である。技や妖術を使って受け手に直接傷を与えることはあっても、あのようなただのごり押しを通すことは不可能なはずだ。
「あなたには立派な剣技があるんだから、巧いこと力を逸らさないとね」
 妖夢の振るう剣の業そのものは、決して惰弱なものではないと美鈴は考えている。ただ、まだ若いが故に経験が不足していると言うだけの話だ。冥界に住む以上妖怪とかち合う機会も少ないというのもある。
「妖怪退治は人間の領分なんだし、化け物相手でも何とかなったりするものよ。まあ、あなたの残り半分を活かすのも手だけどね」
 美鈴の言葉に妖夢はしばし思案する。半端な妖術では隙を作るだけだろうが、剣術と組み合わせて使うものは多い。巧く使えば立ち合いに有利に働くだろうと妖夢にも思えた。


 再び淀んだ気配が辺りを満たし、二人が剣を構える。力任せに振り回された美鈴の横凪を、妖夢が細心の注意を払って受け流す。まだかなりの衝撃を受けるが、十分に許容範囲まで押さえられている。勘を掴めば対応は可能であると妖夢は感じた。
 しかし、受け流され逸らされた妖刀があり得ない力で引き戻され、さらに妖夢へと襲いかかる。予測よりも切り返しがかなり速い、が、まだ十分受けられると考え妖夢は冷静さを保った。それが数合で済めば。
 明らかに全力で妖刀を振り回す美鈴は疲れる様子も、途切れる様子もなく向かってきている。まだ認識が甘かった、と妖夢は臍を噛んだ。化け物を相手にしているのだと言われたばかりだというのに、危うく通常の立ち回りをするところだった。
 とは言え力任せに振り回すだけの剣は、暴力的な重さと速さ故に付け入る間がなかなか無い。何とか打開策を見つけなければ、受けているこちらが先にじり貧になる。妖夢は急いで思考を回転させると、一つ思い当たるものがあった。
 妖夢は何とか美鈴の剣を弾くと、僅かに間合いをとって白楼剣を逆手に抜き放ち、あろう事か美鈴の間合いに全くの無防備に突貫した。動きは雑になっても今の美鈴の速度はとんでもない。美鈴の妖刀が唐竹割に妖夢の特攻を一刀両断する、かに見えた。

 剣は手応え無く妖夢をすり抜け、地面を空しく割った。

 すり抜けた妖夢はそのまま白楼剣を袈裟懸けにし、美鈴の肩口からを浅くなぎ払う。予想外の事態に驚きの表情を浮かべる美鈴へ、ほとんど同時に反対方向からの横凪が迫る。何とか受け流そうとするが、体勢も不十分、大きく美鈴の剣は弾かれる。
 そこへさらに白楼剣が襲いかかったところで、美鈴は地を蹴り大きく距離をとった。距離を置いたところから状況を確認する。正直に言えば、かなりの驚きを覚えていた。
「まさか二人になるとはね。それとも半分×2?」
 美鈴は目を細め、獰猛な笑みを浮かべる。身近に四人に分身する相手を知らなければ、かなり、程度の驚きでは済まなかっただろう。
「半分×2よ」
 妖夢の幽霊側は今や人魂ではなく、実体を持ち地に足を付け白楼剣を構えている。短刀を抜き放って美鈴に斬りかかったのは妖夢の人間側ではなくその半身であり、人間側と重なるようにして出現することにより美鈴の目を欺いたのだ。そして、幽霊であるが故に剣に斬られることもなかった。
「あなたの言ったとおり、半分を活かしてみることにするわ!」
 妖夢は半霊を起点に猛然と攻め立てる。霊は物理的にそうそう傷を負うものではない。ほとんど捨て身に近いような攻め方を幽霊側はし、人間側は動きの取りにくい美鈴を大胆に攻める。
 小刻みに至近から攻め続ける半身を押さえながら、さらに長刀での攻めを受けるのは身体能力で勝っていてもかなり厳しい。一対多数はよほどの実力差があっても難しいのだ。それに、少なくとも剣において大きな開きがあるわけではない。妖夢にも、間違いなく押しているという感覚がある。
 ともすれば二人がかりにも思えるが、併せて一人の妖夢である。それに半分ずつの自分を別々に制御するのは、両手を別の作業に使うよりも遙かに難しいことだろう。卑怯などと言う印象は美鈴にも一切無い。

 ただ、肩口に楼観剣を受けながら、迂闊だなぁ、とだけ美鈴は思った。

 深々と食い込む長刀をものともせず、美鈴には本当に捨て身で攻めているように見える半霊に妖刀を叩き付ける。

 轟。

 衝撃が空気を震わせ、半身の手を離れた白楼剣が宙を舞う。傷を受けないはずの幽霊側は剣越しに注ぎ込まれた気に打ち据えられ、実体を、人型を失い硬直する。ただ手足が見あたらないため、宙に浮いているようにしか見えないのではあるが。
 妖夢の人間側も無事では済まなかった。半身が受けた多大な衝撃は背骨が抜けたかのような脱力感となって襲いかかり、背からは脂汗が流れる。何とか楼観剣は手放さなかったが、それで手一杯だ。
 半身を向いていた美鈴の視線が妖夢の人間側に移る。紅い瞳に妖夢自身が映った。
 あわてて距離を置こうとする妖夢だったが、楼観剣ががくりと引っかかる。美鈴の肩を切り裂いた長刀は、食い込んだ先の肉に阻まれ抜くこともかなわない。楼観剣の妖力は今なお美鈴の身を灼いているが、その端から信じられないような速度で傷が塞がり続けている。
 美鈴の腕が伸びたと認識するのが早いか。顔面を鷲掴みにされた妖夢の視界は高速で回転し、上下が反転した直後、彼女は堅いものが潰れる音を聞いた気がした。

 *

「妖夢~」
 聞き慣れた声が妖夢の耳に届く。
「幽々子さま?」
 声のする方へと妖夢が向き直ると、そこには彼女の主・西行寺幽々子の姿があった。辺りは妙に霞みがかり視界の通りが悪かったが、幽々子は亡霊らしからぬ存在感を発揮してか緩くウェーブのかかった桜色の髪がはっきりと見て取れた。
「妖夢~」
 相変わらず間延びした様子で自分を呼ぶ主人の方へと妖夢は向かう。幽々子の方へと近寄るとようやく見えてきたが、彼女の周り一面には花が咲いていた。対照的に妖夢の周りは石ばかりの川原である。
「ん、川?」
 記憶を掘り出すと、妖夢は紅魔館の門番と仕合っていた真っ最中のはずである。紅魔館の周りは湖ではあっても川ではない。一体ここはどこなのだろうという疑問が、当然妖夢の胸に湧き上がる。
「わー駄目駄目! そっち行かないで!」
 慌ただしく妖夢を呼び止める声がする。
「あなたは……」
 妖夢が振り返った先に居たのは紅い髪と蝙蝠に似た羽が特徴の少女、図書館の主の使い魔である小悪魔だ。なぜか大きな鎌などを持っていたが、修道女の格好などよりはよほど本性にふさわしい物だろう。服装も常時着ているような物に戻っている。
 妖夢の目の前まで文字通り飛んできた小悪魔は、息を切らせて向こう岸の幽々子を見ると、
「ご自分の従者を誘わないでください!」
 せっかく整えた呼吸をまた乱すであろうほどの大声で小悪魔は叫んだ。
「あらあら、そんなに叫ぶと動悸息切れ目眩がしますよ」
 幽々子は口元を扇で隠してころころと笑いながら言った。
 妖夢はなんの事やら判らず首を傾げて考え込んでいるところだった。誘うというのは向こう岸から呼んでいたことだろうか。誘う、向こう岸、幽々子、いくつかのキーワードが妖夢の頭を巡り、
「って、ここ三途の川じゃないですか!」
 妖夢は唐突に気づいて叫んだ。いくら半分は死んでいても身内を死に誘おうとはどういう了見ですか、半分幽霊でも三途の川を渡るのね、などという纏まりのない考えが妖夢の頭の中を駆けめぐる。思いつく端から口に出ていたが。
「だって妖夢が日に二度もふらふらとこの辺りまで来るんですもの。ちょっと誘ってみたくなってもしょうがないじゃない?」
「ぐ」
 後半はともかく前半は不覚としか言いようがない。それに言わなければばれないだろうと思って、報告するのは戦果の部分だけにする心積もりだったのだ。何となくその辺りまで見透かされていそうな気がしてならない。
「それはともかく妖夢」
「はい」
 表情を正して妖夢に向き直った幽々子に、妖夢もあわてて態度を改め向き直る。
「西行寺家の庭を守る者としての面子、そんなものはどうでも良いわ」
 そう言って幽々子は扇を閉じると、妖夢が腰に履いた剣をその先で差す。
「ただ一介の剣客として、恥じ入ることの無いよう振る舞ってきなさい」
 幽々子の考えからすれば、下の恥を被るのは上に立つ者の仕事である。恥をかかせるな、などとは本末転倒にも感じるほどだ。
「はい!」
 幽々子の言葉に妖夢は強く頷いた。
「それじゃあおみやげよろしく~」
 いきなりの緩んだ台詞に妖夢は脱力した。
「何で最後まで決めてくれないんですか……」
 せっかく主人の凛とした態度に感じ入ってるところだったのに、どうしてそれで締めてくれないのかと妖夢は思わずにはいられない。
「お泊まりになるなら粗相の無いようにね、おねしょとか」
 幽々子は口元を扇で隠すと妖夢に、にやりとしたいやらしい流し目を送った。
「しません! 一体何時の話ですか!」
 耳まで真っ赤にした妖夢が大声で幽々子に抗議をする。
「あら、そんなに昔のことだったかしら。最後にあったのは確か、」
「わーわーわーわー!!」
 妖夢はほとんど茹で蛸のようになりつつ、両手をぶんぶんと振って幽々子の言葉を覆い隠そうとした。その様子がよほど楽しいのか、幽々子は口元を隠したままくすくすと笑っている。
「それでは! 美鈴を待たせていますから! これにてッ!」
 妖夢は小悪魔の手を引っ掴むと、そのまま脱兎のごとく逃げ去る。妖忌の教えには退却が恥などと言うものはない。無謀な突撃は愚か者のすることである。つまり、妖夢は舌で幽々子に勝てる道理など無い、と心底思っていると言うことだろう。三十六計逃げるに及かず。


「すごいですねぇ」
 妖夢に手を引かれるままに宙に浮かんでいる小悪魔が、感心したような声を漏らした。
「え。なにがなの?」
 一体感心するものが前後にあったのかと妖夢は思ったのだ。
「妖夢さんみたいな弄られ属性の人初めて見ましたよー。お嬢様が気に入るわけです」
 妖夢は小悪魔の言葉に、走ったまま器用にがっくりと項垂れた。自覚もあったのでなおさら堪えた。その上、小悪魔の態度に悪意が見あたらない辺り、泣きそうだった。
「半分だけなのに反応がすごく人間らしいじゃないですか。私、人間離れした人間しか見たことなくて」
 さも感動したように述べてくる小悪魔と対照的に、妖夢は鉄の塊でも飲み下したような苦い表情を浮かべる。ああ、紅白も白黒もメイド長も妖怪より妖怪みたいな奴らばっかりね、と妖夢はあきらめ混じりに思った。
「あーその。早く戻りましょう?」
 もう妖夢にはそれくらいしか言えることがなかった。


「えい!」
 立ち止まった小悪魔は、大きく振りかぶった鎌を何もない空を切るようにして振り下ろす。すると、その刃が通り抜けた後に僅かな断層が生じた。小悪魔は手を合わせると手際よく、妖夢には解らない言語の呪文を詠唱し始める。
「よいしょっ、と」
 詠唱によって手の間に生じた闇の塊を隙間にねじり込むと、小悪魔はまたすぐ別の呪を唱え始めた。小悪魔の呪に反応して闇の塊は空間の裂け目を無理矢理広げるように肥大し、その闇色のまま材質不明な扉へと変化した。
「ふう。これで良し、っと」
 小悪魔は軽く額をぬぐうと、さわやかな笑みを浮かべた。美鈴もだが、この小悪魔もあまり妖怪っぽくない。
「ここから戻ればいいの?」
 西洋式のものは初めて見たが、妖夢にも幽明の境に関する術には心得がある。外見や方式は違っていても、根底の方はそう変わらないように感じられた。
「はい。ここを抜ければそのまま体に戻れますよ」
 言いながら小悪魔が扉を押すと、一切の音も無しに扉が開く。現実感を持たない扉が開いた先から現の光が漏れ、

 妖夢は再び棺桶の中で目覚めた。今度のBGMはおそらく葬送行進曲か何か。この馬鹿馬鹿しいノリはどうにかならないものかしら、と思いつつも既に、どうにもならないだろうなあ、という結論に妖夢は達していた。諦め半分、ではなく諦め全部である。
「ああ、お帰り」
 妙な定型文的台詞を今度は言わずに、パチュリー・ノーレッジが声をかける。顔を埋めるようにして本を読みながら言っている辺りやる気は皆無に見えたが、その姿は小悪魔の持つ鎌に合わせるように真っ黒なボロボロのローブに身を包んだ死神ふうである。意外とノリは良い人物なのかもしれない。そのことは妖夢にとっての救いにはならなかったが。
「ただいま、っていうのも変だけど。助かるのは確かだけど良いのかしら、こんなに簡単に生き返ったりして」
 幽明の境を生きたまま平気で抜けてくる人間が居る昨今そんな事を今更気にするのも何だったが、半分死んでいるという何とも言い難い状況の妖夢にとっても、いくら何でもお手軽過ぎやしないかしら、と思わざるを得なかったのだ。
 パチュリーはいつも仏頂面のままでいる顔を、同姓からみてももったいないと思うような微笑みで埋めると、
「最近の不死業界はね、ローコスト化が流行りなのよ」
 そう言ってのけた。
「ローコスト?」
 パチュリーの言葉に妖夢はますます眉をひそめた。ずいぶんと下世話な言葉が出てきたものだと妖夢は思う。その様子に魔女はますます笑みを深めた。どうやら説明をするのが嫌いではないらしい。
「そう。たとえばこれ」
 パチュリーが指を軽く鳴らすと、妖夢の目の前にひらひらと揺れながら一枚の大きな赤い羽根が舞い降りてくる。妖夢が手を伸ばして受け取ると、その羽根は僅かな熱を放っていた。
「これは?」
「不死鳥の羽根というやつね、大量生産の紛い物だけど。それでも魂を寄せる程度の効果は保証済みよ。あなたの主人が遊びで誘ったりしなければ、小悪魔を遣る必要もなかったわ」
 パチュリーの言葉に傍らの小悪魔が苦笑いを浮かべた。
「この類のアイテムを多量に持ち歩くなり、似た効果の術を常備しておくなりが便利だという事よ。後は壊れた肉体を修復すれば済むだけの話」
 パチュリーは軽く咳き込むと、再びいつもの不機嫌そうな顔に戻った。
「ローリスクでもローリターンは得られる。それで十全なのよ。完璧を求めればそれだけの代償を持って行かれる、色々とね」
「なるほど」
 妖夢の脳裏には竹林に住む永遠人たちが思い浮かんだ。得たものの代わりに、大きな代償を業として抱え込んでいるのは間違いないだろう。パチュリーが言ったのは、必ずしも彼女たちのことだけではないようにも感じたが。
「ところで、その。この格好は何?」
 妖夢は自分の首から下を見下ろして言う。それはそこそこ見慣れた格好ではあったが、着慣れた格好ではなかった。ついでに言うと、未だに葬送行進曲を弾いている美鈴の格好も同様である。
「割と似合ってるんじゃないかしら、ねえ?」
 パチュリーが傍らの小悪魔に尋ねると、
「お似合いですよー」
 そう言って小悪魔も大きく頷いた。
「いや、似合ってるとかじゃなくて」
 確かにこの服のデザインは決して嫌いではなかったし、いやむしろちょっと着てみたいなあ、と妖夢も思っていたりしたのだが。一着貰えないかなあ、とか言う感想もこの際横に置いておくことにする。問題はそこではない。
「何でメイド服?」
 妖夢が生き返ってみると着ていたのは普段纏っている緑色のベストやスカートではなく、紅魔館で見かける侍従が一般に着ている、早い話がメイド服だったわけである。
「色々飛び散ったからね」
「飛び散ったのはですね、」
「いや、待って。言わないで。お願い」
 ナニが飛び散ったのかなんて聞きたくなかった。美鈴も着替えている辺り、絶対聞きたくない。
「まあ、うちのメイドがちゃんと洗っておくそうよ。だからのうsy」
「め、美鈴! 早く行きましょう! 光よりも速くッ!」
「ほぇ?」
 妖夢は慌ただしくパイプオルガンの方に駆け寄ると、突然襟首を捕まれて惚けた顔の美鈴を引きずって、逃げるようにヴワルの門をくぐった。

 *

 再び門前まで来たが、途中まで美鈴を引っ張っていたせいで速くも妖夢が消耗している。
「何かいきなり息が切れてるけど、大丈夫?」
「し、心配無用……」
 美鈴の言葉に妖夢は微妙に古風な言葉で返す。あまり落ち着いて居なさそうである。
「半分を使うのは有効だと思うけど、さすがにあれは露骨過ぎね」
「うー」
 今更ながら、その事については妖夢も痛感していた。霊体は生身に比べて被害を受け難いだけであって、決して不可侵などではないのだ。
「霊体よりも生身の方が楽だからそっちを狙うけどねぇ。でも卑怯臭い能力持った妖怪は、ワケ解らないようなものにまで干渉できるんだもの。運命操ったりとか、バカみたいに強力な精霊をあごで使ったりとか、時空を操ったりとかぁっ!」
 突然仰け反らせた美鈴の上半身があった辺りを、無数の銀光が駆け抜けていった。追い打つように、上空から金属の輝きが大量に降り注ぐ。
「い、生きてる?」
 妖夢の言葉に応えるように、口にナイフを一本咥えた美鈴が上半身を起こし、中空にそれを放り投げるとそのナイフは突然煙のように消え去った。降り注いだナイフも何時の間にやら見あたらない。どうやら頭に突き立った一本以外は奇跡的に何とか避けたらしい。誰の仕業かは丸分かりだが、一体どこから聞き耳を立てていたのだろうか。
「ま、まあ。人間にも美しく聡明な上に、素晴らしい力を持っている人もいるわけで」
 平静を装いつつ、美鈴は媚び媚びの言い訳をした。額に汗を垂らしている辺り、妖夢から見ても全く装えていないのだが。紅魔館では、壁も障子もないところにさえ耳があるようだ。


 数時間が過ぎ、辺りは既に日が落ちかけている。灯りが無くとも、半分は幽霊であるものや妖怪にはさほど問題はない。
 宵闇を切り裂いて左から空気の唸りと共に、いや、それよりも速く襲いかかる刃を楼観でもって僅かに逸らす。それだけで大きく逸れた刃が、無理矢理に返されて再び殺到する。
 その無理矢理返された刃が妖夢の狙いである。勢いに逆らわないように、妖夢はそれをさらに加速してやる形で受け流す。不十分な体勢で放たれた力任せの剣は、美鈴の制御下から外れ彼女自身の体を大きく崩す。

 斬。

 妖夢は神速の踏み込みと共に胴を薙ぎ払い、さらに追い打ちとばかりに左のふくらはぎを駆け抜けざまに切り裂く。ほとんど過剰と言えるような斬撃である。にもかかわらず妖夢は未だ油断無く、構えを解こうとはしない。
 何事もなかったかのように、決して軽くない質量を持った妖刀が、棒きれのように、断頭台のように襲いかかる。雑な攻撃だが受け損なえば、先の二戦のように致死の一撃となる攻撃でもあった。
 美鈴が着たメイド服は既にあちこちが破れ、それと同様に彼女自身も切り傷を受けている。一度などは、首さえ切り飛ばした。それを自ら拾って繋ぎ直した時には、さすがに妖夢も肝を冷やした。妖刀によって美鈴の気による治癒能力も向上しているのだろうが、これはもう無茶苦茶だ。
「つかぬ事を聞くけど、あなたも不死身なの?」
 そうとしか思えない再生能力である。確かに切り裂き、傷を与えているが、返ってきた手応えが嘘であるかのようだ。楼観剣の妖力は間違いなく有効であるというのに、とても効いている気がしない。
「お嬢様はこんなモノじゃないわよー。何十回か粉々にしてやったのに平気で復活してきたもの」
「どういうインチキなのよ……」
 ケロリとしたまま美鈴が言ってきた物騒な事実に、妖夢は気が遠くなった。これはつまり、何か弱点のようなものを狙わなければならない、そう言うことだろうと妖夢は思い直した。ただ斬るだけでは埒も明くまい。
 妖刀からの力が、これだけの異常を生み出しているのは間違いない。しかし、武器を落とせば何とかなるのかと言えば、そんなに安易に済むものでも無さそうだ。ならば妖刀との繋がりなどと言う、見えないものを斬れるのか。
 雨は見えるが、見えることが斬れることには繋がらない。光は、見えたときには遅い。空間は。運命は。境界は。死は。
 見えないだけで斬れないのならば、斬れないものだらけだ。見えた程度で斬れるものならば、苦労などないものばかりだ。ならば斬れるか、ではない。
 斬るか、斬らないか。ならば、
「目の前の気を、斬る」
 妖夢はそう決めた。


「出来る?」
「出来るかじゃない。やるのよ」
「上等!」
 すさまじい速度で踏み込みながら美鈴が妖刀を振り下ろす。気の流れなど見えない。
 だが、妖刀を持った時の感覚は覚えているはずだ。幾度も斬りつけたからには、見えなくとも気の流れを把握しているはずだ。ならば、

 美鈴の剣が迫る。

 斬る。

 堅い音。美鈴の手から離れた妖刀が、傍らにあった岩に突き立つ。
 同時に美鈴が、妖刀が放っていた瘴気は嘘のように消え失せ、何の異常もないただの宵闇が勢力を取り戻す。
「お見事」
 美鈴が見下ろした彼女の腕は深々と切り裂かれていたが、妖怪からすれば大した傷ではない。その傷が、妖刀との繋がりを完全に断ち切っていた。腱が切れたことも妖刀を手放したことも、二の次以下のことに過ぎない。
「ふう」
 妖夢は息をつきながら楼観剣を鞘に収める。その音で正気に返ったかのように、自分の傷に魅入られるようにしていた美鈴は応急に傷を塞いだ。
「それでは行ってくるわ」
「休まなくて良いの?」
 今日はずっと仕合ったままだ。体力的にも精神的にも余裕があるとは思えなかった。
「今やらないと当分無理な気がするの。まだ未熟だから」
 妖夢の決心は固いようだ。無理に止めるのは無粋というものだろう。その代わりに美鈴は妖夢へと近寄り、傷を負っていない方の手で軽く妖夢に触れた。
「あっ」
 美鈴の手が触れた胸の辺りから心地よい熱を感じる。
「ラスボス前のサービスよ」
 気功治療という奴だろうか、妖夢の体からは嘘のように疲労が抜けていた。
「ありがとう、美鈴」
「それじゃあ、武運を、妖夢」


「それで、やせ我慢はいつまで続けるのかしら?」
 妖夢が館内に消えるのを見計らったかのように、どこからか美鈴に声がかけられた。
「いやぁ、せめて妖夢が居なくなってくれないと格好が付かないじゃないですか。って、痛つぅぅぅぅ!」
 妖夢が見えなくなると同時に脂汗を流して腕を押さえ始めた美鈴を、いつの間にか傍らに現れた咲夜が呆れ顔で見ていた。
「年甲斐もなくあんなもの振り回して暴れるからそうなるのよ」
 これまた忽然と現れたテーブルセットに着いて、ジロリと視線を送っているのはパチュリーであった。横には小悪魔も立っている。
「まさか妹様に頼むわけにもいかないじゃないですか。絶対加減とか出来ませんよ」
「あなたが加減したようには見えなかったけど」
「二度も私の手を煩わせてくれたわね?」
 咲夜はともかくパチュリーの冷たい視線を受けて、脂汗とは別の冷や汗が美鈴の額を流れた。
「ほら、あの、体で解らせるとかそう言う奴ですよ!」
 何とか言い訳をひねり出した美鈴をパチュリーはジト目で見、
「じゃあ二度目は余計ね」
「ぅぐ」
 ぐうの音も出なかった。
「そう言うわけで自力で治しなさい。前の時も一週間で済んだでしょ」
「やっぱ駄目ですか……。本気で一週間治らないんですが、この手の傷」
 美鈴はがっくりと項垂れて諦めた様子である。妖忌に腕を粉砕された時も、その場は平静を装っていたのだが、実際は動く程度に出来ただけで本当に一週間気が全く通らなかったのだ。今回もそのような感じで、操り糸か何かで無理矢理動かしているような状態になっている。
 実際の所この妖刀の妖力は、そのくらいしないと解けてくれそうにないのも確かなのだが。試しに持たせたメイドが鎮圧されるまでに負った傷は、妖怪が三日かかる致命傷、それもパチュリーの治療を加えて、である。目どころか色々と当てられない状態にしてようやく止まった効果を、切り傷一つで止めるというのは破格と言えるだろう。
「妖忌殿も怖い弟子を育てるもんですよ」
 言葉とは裏腹に美鈴の口調はずいぶんと楽しそうだった。

 *

 妖夢が門を抜けると、早くもいわゆる謁見の間というものの前に立っていた。メイド長の善意なのかはたまた茶目っ気なのか判然としない心遣いはともかく、荘厳あるいは大仰な門を妖夢は眺めた。
 初期の頃は訪れた者を威嚇する、あるいは上位者の威厳を見せつけるといった目的なのだろうと思っていた。しかし紅魔館の人々の人となりを知るにつれ、もしかしたら様式に拘っているだけなのかしら、と妖夢は思うようになっていた。最後の大物は偉そうな場所に控えている、そのような意味しか求めていないのではないだろうか、と思うことしきりである。それでもこの奥に控えているのは、正真正銘の魔王なのだ。
 それらしい大物が皆自分の立場を弁えているのであれば、妖夢のような立場の者は苦労が少ないことだろう。ただしそれは幻想郷やそれと関わる近隣の、緩やかな空気と引き替えになることも間違いない。ただ、もう少しだけ格好を付けてくれても罰は当たるまい、と妖夢は思う。
 それでも、勝負事に拘っていられる環境は得難いのだろうと言うことも解る。殺伐とした世界においては、自分のような立場の者がレミリア・スカーレットと仕合う機会など万に一つにもないだろう。
 妖夢の歩みに合わせて巨大な扉が開いて行く。歩を進める毎に心を引き締め直し、備える。中へと妖夢がたどり着くと、扉は重々しい音と共に口を閉じた。


「意外と早かったのね、魂魄妖夢」
 その割には、レミリアの口調に驚きは含まれていない。ただ面白がるような響きがあるだけだ。どうにもその様子には、幽々子や紫といった身内を思い起こさせるものがある。強大な力を持った存在とは、得てしてこういうものなのだろうか。
「美鈴が色々としてくれましたから」
 少々やり過ぎじゃないだろうかと思うところもあったが、実戦経験の薄い妖夢には願ったり叶ったりなのは間違いなかった。
「それに。私もそうそう立ち止まって居られない」
 師の背中は遠く、生きた年月もまるで違う。それでも自分を残していった彼の期待に、それを受け入れた主の期待に応えなければならない。そう妖夢は思う。
「ふふ。師弟そろって不遜よねぇ」
 レミリアの言葉に妖夢は訝しげな表情を浮かべた。
「この私を、踏み台にしようというのだから。一体何が斬り足りないのかしらね?」
 いかにも愉快そうな光を瞳に浮かべて、レミリアが妖夢を覗き込む。
「お爺様が?」
 あの剣豪がこれ以上、一体何を求めているのか。彼の人となりから、私心ではないだろう、と妖夢は思う。妖夢に思い当たるものはない。
「なぜ、なんて聞かないでよ? お爺さんに聞いてなんかいないし、なのに私が教えるのはズルだもの」
 暗にすべて知っているような態度だったが、彼女の言った通り聞いても答えはしないだろう。
「答えは自分で見つけなさい。運命なんて見えなくてもそれくらいやるのが人間の仕事よ」
 運命を操る者の言葉とは思えないように妖夢は感じた。それとも運命を操るからこそ、なのだろうか。
「言われるまでもない。師に追い付かなければならないのは私で、あなたじゃない」
「何だ、解ってるのか」
 一心にレミリアを射抜く妖夢の視線に、レミリアは微笑みを深めた。
「なら」

「運命を裂いてみなさいな、半人半霊」
「運命を斬ってみせるわ、紅魔」

 次の瞬間、レミリアは意外そうな表情を浮かべた。妖夢が抜き放ったのは楼観剣ではなく、ともすれば頼り無いとすら感じられる短刀・白楼剣だったからだ。
「それは本気?」
 レミリアの疑問に妖夢は沈黙で返す。
「ふぅん」
 なんの感慨もなく声を漏らすと、レミリアは軽く手を掲げた。それに呼応するように紅い魔力が集まり、振り下ろされたレミリアの手を合図に、無数の魔力塊となって妖夢に殺到する。
 紅い魔弾の群れが迫り、妖夢はそれをむしろゆっくりとした動作で避ける。ほんの一瞬で正解の隙間を選んだ妖夢は、そのままレミリアへと迫る。
 滑るように間合いを詰めて妖夢が放った一閃を、レミリアの鉤爪が硬質の衝撃を響かせて受け止めた。すぐさま逆腕の鉤爪が迫り返し、しかし、妖夢はそれを的確に白楼の柄でもって捌きさらに攻め返す。
 嵐のように降り注ぐレミリアの豪腕を、妖夢は完璧としか言えない精密さで防ぎ続けている。いや、むしろその動作はいつの間にかレミリアを上回り始め、次第に攻め手が妖夢へと移りつつあった。そして、短刀とは思えない威力で振るわれた白楼剣がレミリアの両腕を素早くいなし、

 巨大な霊気の刃が紅魔を両断した。

 すぐさま妖夢は大振りで乱れた体勢を立て直す。この程度ではまだ足りないと予想は付いている。
 ただ、それでも遅まきに失していた。
 まるで霊気の刃が素通りでもしたかのように、レミリアはその場に立っていた。レミリアの指先が妖夢へと向けられる。避けるにも防ぐにも、もう遅い。

 無音の衝撃が妖夢を弾き飛ばす。

 跳ね飛ばされながらも妖夢は白楼で床を掻き、叩き付けられるようにしながらも受け身を取り、何とか衝撃を抑えた。
「本気かと聞いたのは別に、その剣がショボそうだから言ったんじゃないんだけどねぇ」
 言いながらレミリアは肩をすくめて見せた。レミリアの言葉を耳にしながら、妖夢は白楼剣を支えに何とか身を起こし片膝を着く。全身に痛みが走ってはいるが、致命的なものではない様子だ。
「ぐっ」
 レミリアの言葉は正鵠を射ていた。白楼剣が短刀であることにレミリアは油断した、そう妖夢は踏んでいたのだ。
「私は、おまえのような半人前がそれを使いこなせると本気で思っているのか、と言ったのよ」
 レミリアは底冷えするような目で妖夢を見下ろしている。
 白楼剣の妖力は人の迷いを断つ。時には使い手の迷いさえも。故に持ち主へとその力を行使したのなら、動作の無駄を消し最良の行動を取ることが出来る。
 理論の上では。
 それも迷いのない行動が正しければの話だ。迷いは余裕でもある。それを削り取れば、ハズレを引いたときの反動が大きくなるのは必然だ。
「分不相応な力に振り回されて、一体どこへ行けるというの?」
 レミリアは興醒めだとでも言うように、冷たく切って捨てた。


「それでもっ……!」
 妖夢は心を、体を奮い立たせて立ち上がる。
「私は先へと進んでみせる!」
 妖忌が去った時、まるで捨てられたような心地になった。彼が幽々子を守る者として、いい加減な輩を残していくはずがないことは自明だというのに。信頼して残していった事も理解できなかった。
 春の騒ぎのおり、忽然と消えた幽々子の気配に呆然とするだけで、何も出来なかった。結局何事もなく終わったが、あの時ほど己の無力さを悔やんだ事はない。あんな思いは二度としたくはなかった。
 だから、妖夢は師に追い付こうと、そう思った。何時までも半人前を足しただけの存在ではいられない。妖忌ですら足りないものがあるのならば、師を助けるだけの存在になろう、そう思った。いつまでも主の庇護の下にある従者でなど居られない。


 妖夢がレミリアへと駆ける。たった一撃が満身創痍。もはや長くは戦えない。それでも体が動くのならば、まだやれることはある。
 歯を食いしばりながら、妖夢が白楼を振るう。レミリアがそれを受け、爪を振るい返す。妖夢には見えていなかったが、レミリアは楽しげに笑っていた。
 しかし、先ほどはこじ開けられた防御も傷ついた体では一歩及ばない。このまま打ち合えばいずれ終わり、下手に受ければそれだけで終わる。
 妖夢は地を強く踏み、全身全霊を込めて白楼を打ち付けた。無謀に過ぎる攻めである。吸血鬼に力で敵うはずがないのだ。全力でもって斬りつけた白楼剣はレミリアの腕を大きく跳ねはしたが、それを遙かに上回る反動は、白楼剣とその持ち手を遠く弾き飛ばした。もはや続くはずのないことが確信できる。

 玉砕覚悟か、レミリアはそう思い残念がった。通じない突撃はただの無謀である。もう少し楽しませてくれると思っていたのだが、無い物ねだりだったと言うことだろう。

 だから、レミリアは正直に驚いた。目の前に妖夢が居ることに。

 目前の妖夢は既に、この戦いに於いて抜くことの無かった楼観に手をかけている。妖夢にはレミリアが気を抜いた、この一瞬しかなかった。

 抜く手を、レミリアにすら見せずに放たれた楼観剣は、紅い悪魔を両断した。

 *

 妖夢の手には確かな手応えがあった。しかし、戦果を確認するだけの体力ももう無い。剣を収めることすら出来ずに、妖夢は意識を手放した。


 レミリアが居た辺りにその姿はなく、紅い闇がわだかまっていた。刹那、闇が黒に染まり、無数の蝙蝠へと変ずる。
「狙いが甘い」
 使い魔であり主人そのものでもある蝙蝠たちは、集い、再びレミリア・スカーレットの姿をとった。ただその頬に、僅かな傷を残して。
「ふん。やってくれたわね、半分」
 言いながらレミリアは頬を撫でると、指を口にやり紅い舌を出して自らの血を舐め取った。言葉の内容とは裏腹に、今にも笑い出しそうなほどの愉悦に満ちていた。
 レミリアの視線の先には大きな丸い物体、妖夢の半身が転がっていた。レミリアが弾き飛ばしたのは実体をとった幽霊側の方で、妖夢の狙いはおそらく初めから人間側の一撃にあったのだろう。
「うちの門番にしこたまやられておきながら、おとりに使うとはねぇ。良い度胸してるわ」
 その程度のことを感知しておくのは、レミリアにとって難しくもない。これだから人間は面白い、とレミリアはつぶやいた。
「さーて。どうしてくれようかねぇ」
 妖忌が狙った一点に比べ、妖夢の一閃はいかにも狙いが甘い。しかし、曲がりなりにもレミリアに傷を付けたのは間違いない。
「まあ私の勝ちは揺るがないけど、及第点ってことにしてやろうか」
 私ってなんて寛大なんだろう、とレミリアはしばし自画自賛した。
「咲夜」
「はい、咲夜はここに」
 レミリアの言葉に応じ、完全で瀟洒な従者が現れる。門前でだべりの真っ最中だったのだが、主に呼ばれれば現れるのが十六夜咲夜というものである。
「絆創膏はある?」
「はぁ。そりゃあ有りますけど」
 レミリアの言葉に、咲夜は妙な表情を浮かべた。
「その傷なら、パチュリー様に治して貰ってはいかがですか? お嬢様のことならあの人もケチったりしないと思うんですけど」
 そう言って咲夜は、門前の昼行灯じゃないんですし、と付け加えた。頬にある傷に咲夜が気付かないはずはない。紅魔館の知識人ならば、普通でない傷の治療もさほどの手間無く行うはずである。
「良いのよ、私の気まぐれなんだから。さっさと持ってくる」
 咲夜は僅かに困ったような表情を浮かべ、
「かしこまりました。では失礼します」
 言いながら咲夜はレミリアの傍にしゃがみ込むと、いつの間にか手元にあった絆創膏を彼女の頬に貼り付けた。
 レミリアは傷跡に貼られた絆創膏に軽く触れると、満足げに微笑みを浮かべた。

 *

 妖夢は数日紅魔館に滞在することになった。無理が祟り色々とガタが来たのだが、パチュリーが体調を崩して満足にスペルを唱えられない状態になり、治療を受けられなくなったからである。ただし体調が良かったとしても、面倒くさい、の一言で断られた可能性は少なくない。
 レミリアは目覚めに、咲夜が用意した紅茶を飲んでいるところだ。つまり現在は夕刻ほどである。目覚ましであるので、ごく普通の紅茶だ。傍らにある大きな木製の花のような物からは、環境音楽代わりに絶叫と笑い声が響いている。
「夕方も早くから元気ねえ」
「元気でなくなると色々とまずいですからね」
『話が違うじゃないですか!』
『あハハハハははははハハ!』
 悲痛な絶叫は妖夢、どこかネジの外れた笑い声はレミリアに似通っていた。木製の花は実の所外で言う電話とやらであり、離れたところとスムースに会話が出来る品である。外の物にはある機能が備わっていなかったり、あるいはその逆であったりはするが、離れた地下室との連絡が付くことに変わりはない。
「私に負けた罰として妹のフランと遊んであげて、そう言ったじゃない?」
 口調は身に覚えがないというような雰囲気だったが、レミリアの顔はまるでチェシャ猫のようににんまりとしている。茶目っ気と言うにはいささか邪悪な表情であり、せっぱ詰まった妖夢が見れば泣いて抗議したに違いないだろう。
『そりゃ聞きましたけど、こんな、うわきゃー!』
『半分だけ死んでるなんて面白い! 体も半分こしてみない?』
 言葉の合間に劫火が揺れる音が混じる。無邪気に語られる真っ黒い内容に、レミリアは満面の笑みを浮かべた。
 パチュリーが治療を渋ったり、気功治療なら行える美鈴がなにもしなかったのは、実はこのレミリアの妹であるフランドール・スカーレットのことがあったからだ。少しおかしくはあるが、むしろ純粋無垢の方に寄っているフランドールを紅魔館の者達は大切に思ってはいたが、あまり手加減を知らない彼女の相手はどうにも辛いのも事実なのである。
 そこで白羽の矢が立ったのが妖夢である。色々な人と関わらせてみよう、と言う建前の下、妖夢は生け贄に捧げられることが決定され、数日療養の名目で彼女は引き留められることになり、フランドールがそろそろ暴れたりしたくなる頃合いになった。どうなるかも知らずに、妖夢はレミリアの提案を快諾し、もはや後の祭りである。
「大丈夫よ。燃えさしからでもパチェなら何とかしてくれるから」
『それって全然大丈夫じゃ、』
 ブツリという音と共に妖夢の抗議が途切れる。面倒くさいのでレミリアがスイッチを切ったためである。
「咲夜。もう一杯お願い」
「かしこまりました、お嬢様」

 *

 数時間後、妖夢は驚くべきことに、五体満足で帰還することに成功した。ただし、紅魔館への滞在は数日延長されることになった。
 ぎりぎり一集一遍に間に合いました、人妖の類です。

 過ぎ去りし肖像、鉄の鏡と来て、この背を追うにて一応終結と相成りました。
 未回収の部分など有りますが、追々解決していく予定ではあります。

 ここまで読んで下さった方に感謝を。
人妖の類
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.5370簡易評価
3.70名前が無い程度の能力削除
妖夢とスカーレット姉妹、いや紅魔館の面々って非常に相性が良いのでは?
まあ妖夢は半死に常態なんて慣れっこですから、悪魔のおもちゃとしては美鈴以上に最適なのかも知れませんね(外道

え? ハーフはいつもの事だけど、クオーターは想定外ですって?
いやいや、妖夢(枕言葉?)。 死中に活を見出してこその剣豪物語。 
いいぞ作者様、もっとやって下さい、もっとw(人非人
8.90おやつ削除
マジで氏の作品には頭が下がります。つめの垢くだs(レッドマジック
三編とも面白かったです。
紅魔館住人の性格が非常にはまっていて楽しめました。
特に美鈴ラブな私にはつぼでしたね。
それと妖夢の前向きな足掻きが非常にかっこよかったです。
頑張れ妖夢。
努力を続けられる者はいつか大成するんだ。
21.80藤村流削除
みなさん格好良いですねぇ。憧れます。
妖怪には妖怪の、半霊には半霊の魅せ方があるのですね。
がんばれ妖夢ー。
25.80名前が無い程度の能力削除
シスター中国! シスター中国!! ヴァー!!


……もとい。シリーズ完結お疲れ様でした。
すっ転んだり壁にぶち当たったりしながら前へ前へ進む妖夢を、眩しく見つめています。

ああそうそうパチュリー、生き返らせサービスの時に「ささやき いのり えいしょう ねんじろ!」なんてやるなよ。 頼むから。