Coolier - 新生・東方創想話

赤い宮殿 1

2011/02/03 03:21:08
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赤い宮殿

 序

 これは昔、まだ阿礼の子が九代目だった頃です。当時は先生もまだまだ若くて、髪の色もこんなに白くはありませんでした。それに、竹林の妹紅さんも、まだまだ皆と、今ほど仲良しじゃなくって、里の人に話しかけられると、ドキドキしながら、しどろもどろになって、おかしいくらいでした。ですから、もう、百年以上昔の話です。
 その頃、村はずれの大きな湖にあるお屋敷には、吸血鬼の姉妹と、素敵な従者と、魔法使いと、たくさんの妖精が女中として仕えていました。吸血鬼の姉妹、と言いましたから、おや?と思う物知りな子もいるかも知れませんね。今では、あのお屋敷には、吸血鬼が一人暮らすばっかりで、女中の妖精が幾らか仕えていますが、殆ど一人ぼっちです。今日は、どうしてそうなったのかを、お話してあげましょう。

 一

 当時、その吸血鬼の姉妹は、あんまり仲良しではありませんでした。お姉さんは、決して妹に意地悪だったわけではありません。妹も、決してわがままを言ってお姉さんを困らせたわけではありません。ただ、二人ともどこか素直になれないで、思っていることを言わずに、ずっともやもやしていました。お姉さんは、吸血鬼は強い妖怪で、ご先祖様はりっぱな貴族様でしたから、自分もしゃんとしなくっちゃいけないと思っていました。妹は、そわそわしたり、かえってだんまりになったり、急におこりんぼうになったり、そうして、あぁ、私は落ち着きの無いダメな子だと思って、落ち込んだり……気分がころころ変わって、見ていてはらはらする子でした。だから、お姉さんはその子のことを心配しましたし、妹が粗相をして、ご先祖様の名誉を汚しては申し訳がないと思い、妹にはお外に出てはいけないと言って、お部屋に閉じ込めてしまいました。妹は、あぁ、自分が悪い子だからそう言われてしまうんだ、それも仕方がないなぁっと思って、素直にお部屋に閉じこもっていました。ただ、さっきも言ったとおり、急な癇癪持ちでもありましたから、しばしば暴れて、手がつけられなくなったりもしました。それを見てお姉さんは、かわいそうだけれども、こう暴れん坊ではお外には出してあげられないと思って、ずっと閉じ込めたっきりでした。だから、二人とも、お互いに気まずくなって、自然とお話することも無くなっていって、ずっと仲良しになることが出来ないでいました。
 ところが、ひょんな機会があって、姉妹はちょっと仲良しになりました。癇癪を起こしたら、代わりに私があやしてあげますと、当時の博麗の巫女様と、巫女様と仲良しの魔法使いさんが言ってくれたのです。それならよいでしょうと言って、お姉さんは妹を、お部屋から出してあげました。たまには、お庭でお散歩もさせてあげました。妹は大変喜びました。花は香り、蝶は舞い、春は微笑み、夏は朗々、秋は静やか、冬は、あぁ、こんなに冬は美しくあったのだなぁっと思い、妹は一番喜びました。雪の白が、まぁ、お綺麗。結晶は、あら、素敵です。そうして、晴れた日、お空を見渡すと、夏よりもずっと澄んでいて綺麗なくらいで、特に夜、満月の綺麗な日、誰もが寝静まった夜更けで、冬の夜空は真っ暗で寒くって、怖いくらいに違いないと思っていたのに、お昼よりもよっぽど空が美しかったことには、妹は胸がきゅんとなって、チクチク痛いくらいでした。
 彼女の胸に響いて驚かせたのは、夜空だけではありません。冬、お屋敷をちょっと出て、眼下に広がる湖には、夜空の青と、星の光と、月の輝きとが、広がって、そこに銀河がすっぽりおさまっているではありませんか。水と空と夜との世界は、全て彼女のためにあるようでした。そうして、それを見つけて、妹は得意になって言うのです。
「お姉さま、お姉さま、こちらにいらして。ご一緒して頂戴。きっと、良いものを見せてご覧になりますよ。」
「あらあら、そう急かしては悪うございますよ。はしたないですもの。」
「あら、ごめんなさい。でも、どうしても良いものですから。」
「あらそう?なら、ご一緒いたしますわ。まぁ、素敵ね。お空が水面にすっぽりおさまって。よう教えてくれましたね。嬉しいわ。」
 そう言われて、妹はますます得意になりました。そうして、お姉さまが自分と同じに思ったので、とてもとても、嬉しくなりました。二人は、夜が明けるまで、仲良く手を繋いで、水面に映る銀河を愉しんでいたのでした。
三月末にオリジナル小説を新人賞に応募するので、その練習として平行して二次創作を書いていこうと思っています。ですので、至らぬところがあれば、大いにご指摘頂きたいと存じ上げます。オリジナルは、別に童話ではありません。ただ、本来の文章が堅く、また内容も哲学を扱うものが多いので、出来れば童話であるとか、ライトノベル的な読みやすさを真似て、少しでも平易で読みやすい小説を書きたいと思っていますので、赤い宮殿は童話としています。
雲井唯縁
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コメント



0.290簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
冒頭の先生は慧音か、それとも…
続きに期待。

砕けた文章が苦手なら、一足飛びに「読みやすさ」重視のラノベの領分を目指すのは危険ですよ~
4.無評価名前が無い程度の能力削除
短い
8.100アン・シャーリー削除
好きでござる
期待
12.無評価雲井唯緑削除
どういう返事の仕方をすればよいかちょっと分かりませんが。

>1レスさん

なるほど。確かにそうですね。しばらくは、評価の高い童話をお手本にして、創作をしていこうと思います。かつては児童文学が一大運動になったことがあり、大正時代に一流だった小説家なんかは、皆児童文学の作品があったりするので、非常に良い手本になるのです。読んでみると、簡潔で中身が深い。難しい言葉や表現なんて、いらないことが分かります。ちなみに、この話も、小川未明の『赤い宮殿』から、インスピレーションを得たものです。内容はまるで違いますけれども。

>2レスさん

次はこの三倍くらいの文章量でアップしよう思います。
土曜日の晩にはアップしたいものです。

>アン・シャーリーさん

有難う御座います。続きを頑張って書いてみます。
今、『藤花の祈り』と言うのを投稿したので、よかったらそちらも読んでみてください。