Coolier - 新生・東方創想話

神奈子・諏訪子「早苗が笑顔で妖怪腐れ外道つれてきた」

2011/01/20 23:10:41
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「えへへ……うふふ……」

空をふらふらと飛んでいた私は、日向の猫みたいに頬の緩んだ小傘を見つけた。
傘をくるくる回したり、手に持った何かを空にかざしたり。
いつになく上機嫌な様子だ。

「やっ、何かいいことでもあった?」

興味を持った私は彼女の目の前に降り立ち訊ねる。

「ふふっ……」
「おーい」

目の前で手を振ってみても気がついた様子はない。
幸せそうににやついていた顔のままだ。
どうやら心を何処かに置き忘れてしまったらしい。

ならば、取り戻してしさし上げよう。

「ていっ」
「ひょわあぁあ!?」

冷たい手を背中に突っ込む。冬場における48の殺人技の一つである。
素人にはお薦め出来ない。

「騒がしいわね」
「ぬ、ぬえ! なにするのさ!」

頬を膨らませ彼女は怒鳴る。

「別にいいじゃん。それより唐傘お化けが驚かせられてどうするのよ」

痛いところを突かれた小傘は言葉をつまらせる。

「うぐ……それは不意のアレが……こう……」
「まだまだってことね。それで」

アイディンティティを見失いかけ沈み込む小傘に私は二度目の質問をする。

「何かいいことでもあったんでしょ」
「そう、いいことあったの!」

落ち込んだ顔を引っ込め、一瞬で表情を輝かせる彼女に苦笑が漏れる。
空みたいに表情が変わる彼女は見てて退屈しない。
素直な彼女がまぶしすぎるときもあるけれど。

「早苗がね、プレゼントをくれたの」
「早苗って、山の上の巫女?」
「そうだよ。知り合い?」
「知り合いって言うか……」

エイリアンだ、宇宙人だとブン屋と一緒に追いかけ回された苦い記憶が蘇る。
今は小傘にご執心のようで、被害は収まったが。

「で、これをくれたの」

そう言って、小傘が取り出したのは小さなガラス瓶だった。
透明なそれの中には薄い紫色の液体が波打っている。

「香水?」
「うん、外の世界の香水」
「ふぅん。あ、ホントだ。小傘からいい匂いがする」

彼女の首もとに顔を近づけると柔らかいラベンダーの香りが鼻孔に届く。
香りは強いがキツい匂いではなくやさしくてホッとする、そんな香りだ。

「それで機嫌が良かったんだ」
「うん! あ、ぬえ。相談したいことがあるんだけど」
「ん、何?」

緩んだ顔から一転して真面目な顔を作る小傘。
相談したいことか。一体なんだろう。

「早苗にお返しをあげたいんだけど、何がいいかな? 私はプレゼントなんてもらった事ないからよくわからないの」
「んー……」

それを私に聞くか。
私も一人が基本だったからプレゼントなんて数えるほどしかもらってない。
それも全部ムラサだったし。あいつは微妙にずれたものをプレゼントしてくるし。
地底にいた頃、最近体がダルイって言ったら青竹踏みをプレゼントとしてきたときはさすがに閉口した。
その時のお返しは……万歩計だったか。
空を飛ぶから意味が無いのに、嫌み無く喜んでたっけ。

「私もあんまりわからない……」

いやまて。
何もプレゼントするのは物だけとは限るまい。
古来より『プレゼントは値段より気持ち』が大事だと言われてきた。

そして。

「……? 何?」

この脳天気そうに私をみる小傘に必要なもの。
ついでに今まで散々追い掛け回された恨みも晴らせる一石二鳥のアイディア。

「そうね。『気持ち』をプレゼントすればいいのよ」
「『気持ち』?」
「そう」

可愛らしく首をかしげる小傘に私は続ける。

「とびっきりの『サプライズ』プレゼントをね」

私は心の底からの笑みを浮かべた。





「いた……」

私と小傘は幹に隠れ様子を伺っていた。
白い息を吐きながら雪かきを続ける早苗がこちらに気がついた様子はない。

「えっと、ほんとうに大丈夫? 早苗怒らないかな?」
「大丈夫よ、ちょっとした悪戯じゃない」
「うーん……」

小傘は納得しかねているようだったが、計画は実行するのみだ。
こっちだって久しぶりにわくわくした気分なんだ。
平和で平温な生活も悪くないけれど、たまには妖怪らしく恐怖を呼び起こすものになってみたい。
その本能は忘れらない。

もっとも。
私は横目に小傘をみる。

見失いかけている奴もいるみたいだけど。

「それじゃあ、いくよ。さっき打ち合わせたとおりにね」
「うん……わかった」

早苗が背を向けたのを見計らい、小傘は音を立てないように、尚且つ早足で駆け寄る。
体が震えるのは、緊張か冬風のせいか。

小傘は慎重に一歩、二歩、と距離を詰めると彼女の肩を叩く。
早苗が振り返り、そして

「が、がおー! 驚けー!」

境内に響き渡る幼い脅し文句。
だが、早苗は恐怖をきたしたかのように目を開き、息を飲んだ。

「よしっ」

それを見た私はほくそ笑む。

はたから見れば馬鹿にしか見えないし、小傘が普段からやってることと変わらないが今回は私がいる。
小傘には正体不明の種を植えつけてあるから、他人からはおどろおどろしい化物に見えているのだ。
多分、悪鬼か金剛か死霊か。そんなモノを見ているのだろう。

「か……」

さすがの巫女もこれはこたえたのか、手にしたシャベルを取り落とし、後ずさる。
わなわなと震える身体は彼女の恐怖を代弁してるかのようで

「かわいいぃぃぃ!」

あれ?

「え、ちょ、さな、ぶっ」

ねこまっしぐらとばかり飛びついてきた早苗をかわすことも出来ず、小傘は雪面に押し倒された。

「ああもうなんですか! なんでそんなに可愛いんですか! もってかえってもいいですかいいですねわかりました!」

え、なに。
もしかして早苗さんってば、指が6本で血液は緑色の人がタイプとかそんな人?
そこはもうちょっと常識に囚われようよ。

「ちょ、ぬ、え、たすけ、て」

全力で逃げ出したかったが途切れ途切れの助けを求める小傘は見捨てるわけに行かず、二人のもとに駆け寄る。

「早苗! ほら、離れて! それは小傘だから!」

私は背後から羽交い絞めにして、無理矢理に引き離す。
それでも早苗は収まらず、手足は駄々っ子のようにばたつかせる。

「落ち着いて!深呼吸!」
「はぁはぁ……コオォォ……」

いつから波紋を使うようになったんだ。

「はぁ……落ち着いた?」
「む、私は一体何をしていたのでしょうか。今ひとつ思い出せません」

白々しい事この上ないが突っ込むのも面倒だ。
私は溜息をつくと、押し倒され雪まみれになった小傘に手を貸し、立ち上がらせる。
さすがに色々とショックだったのか涙目になっていた。

「ぐすん……」
「あー泣かないの。強い子でしょ?」
「うん……頑張る……」
「おお、小傘ちゃん。誰がこんなひどい事を……」

早苗はおよよと白々しさを振り切った泣き真似をする。
もうどうでもいい……?

「小傘?」
「……? どう見ても可愛い小傘ちゃんですよ」

今度は背中から優しく抱きしめる。
小傘も赤面したものの抵抗はしなかった。

いや、それよりも。

「なんでわかったの?」

種はちゃんとついてるはずなのに、何故小傘だとわかった?
異変の時にはちゃんと効いていたから、早苗には効かないというわけじゃないし。

「言ってることがよくわかりませんが……香水の匂いがしましたから」
「あ……」

そうか。
あの香水は早苗があげたものだったか。それも外の世界の貴重な物。
その匂いがするのは小傘しかいない。

しかしまぁ、それだけで判別できる早苗もどうかと思う。
それだけ小傘が好きなんだろうけど。
ちょっと妬けるわね。

「それで? 二人は何をしようとしたんですか?」

うりうりと頭を撫で続けながら早苗は訊ねる。

「ぬえが早苗にプレゼントしようって……」
「プレゼント?」
「うん、サプライむぐっ!」

そこまでだ。それ以上は主に私の命に関わる。
妖怪には容赦のない早苗のことだ。
自分を驚かそうとした相手に情けをかけるとは思えない。

「なんですか? 何が目的だったんですか?」
「えっと……」

考えろ。不自然ではなく尚且つ波風立たない解答を。

「そ、それは……そう! これは早苗の小傘に対する気持ちが本物かを確かめるためだったのよ!」
「どういう事です?」

落ち着いて落ち着いて。矛盾のない解答を。

「小傘の姿が違ったとしても、それに気がつくことができたなら小傘のプレゼントを受け取る権利がある!」
「そうなんですか?」
「え……あ、うん。たぶん」

必死のアイコンタクトが通じたのか当たり障りの無い応えを返してくれた。
後は勢いでなんとかなる……!

「普段言えない感謝の気持ちを伝えることが早苗へのプレゼントなのよ! さあ、小傘! 言っちゃいなさい!」
「えっと、その……」

お願い小傘。あなたが何とかしてくれないと私が危険で危ないの。

「その……早苗は私に構ってくれるし、ご飯も食べさせてくれるし……えっと、一緒にいて楽しいから……その……いつも、ありがとう」

小傘は顔を俯かせ、控えめな声で感謝の気持ちを伝える。
よく言った。これで私は救われた。

そして早苗は私以上に感動していた。
瞳を潤ませその視線は小傘だけを捉える。

「小傘ちゃん……私もいつも楽しいですよ」
「早苗……」

安心感から膝から崩れる私を余所に、見つめあい頬を染める二人。
もう、後は二人でお幸せにどうぞ。

「これからもよろしくねっ、早苗」
「はい。そうだ、折角ですから御飯食べていきませんか?」
「うんっ。ぬえは?」
「私はいいわ。遅くなるとムラサがうるさいから」

二人といると迂闊なところでボロを出すかもしれないし。
というか、こんなバカップルと一緒の空間とか考えただけで胸焼けがする。

「それじゃあ、またいつかね」
「うん、またね」

境内を飛び立ち、小傘たちと別れる。
ぶんぶん振られる手と、しっかり握られた手を見て、息を吐く。

私の目的とはズレた結果になったが、小傘は喜んでるみたいだし。
まあ、結果オーライってところでしょう。
たまにはこういうことも悪くない。

私は小傘たちに背を向けて、命蓮寺に向かって速度を早めた。




















「あっ」

正体不明の種外すの忘れてた。
山の一部が更地になったとかなんとか。

41作目です。
やっぱり小傘ちゃんは早苗さんと仲良くしてるのがいいと思う。
ぬえはそれを呆れて見てるけど、ムラサと似たようなことしてる。
そんな理想。
すねいく
https://twitter.com/kitakatasyurain
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コメント



0.3550簡易評価
5.100奇声を発する程度の能力削除
最後の最後でwww
11.100名前が無い程度の能力削除
タイトルそういうことかww
こがさな+むらぬえという大好物をありがとうごさいました^^
14.100名前が無い程度の能力削除
なにそれこわい
16.100名前が無い程度の能力削除
こがさな!
22.100名前が無い程度の能力削除
タイトルに納得。
こがさなは馬鹿ップルがよく合うねw
35.100名前が無い程度の能力削除
いい話だと思ったら…
そういえば忘れてたwww
その後どうなったのか気になるwww
36.100名前が無い程度の能力削除
シリアルエンド
38.100名前が無い程度の能力削除
忘れてたなら仕方ない
39.100名前が無い程度の能力削除
正体不明=腐れ外道、ってことですねw
こがさなの仲良しさに比べて、ダメ神様ズにますます磨きがかかってきたかなすわ。
このあとぬえがどうなるかちょっと心配。ぬえ逃げてーw
44.100名前が無い程度の能力削除
結局救われなかったね…
45.100橙華(仮)削除
腐れ外道だったら精霊をお供に引き連れている弓持ちキャラで封殺できますね。
え? 外道違いだって? こりゃ失礼。

テンポよくすっきりとまとまっていたいいお話でした。
46.100名前が無い程度の能力削除
なんというオチww
53.100名前が無い程度の能力削除
ぎゃははwww
54.90名前が無い程度の能力削除
なんてこったいwwwwww
59.100名前が無い程度の能力削除
ほんわか終われると思っていたのにッ!
65.100名前が無い程度の能力削除
オチにやられたw。
72.100名前が無い程度の能力削除
嫌な事件だったね…
74.90とーなす削除
二柱が見たものとは一体……。
いいこがさなでした。小傘可愛い。
77.100名前が無い程度の能力削除
小傘かわいい
まぁ怒涛の早苗さんの反応ならぬえも忘れちゃうだろうな。この後のご両神の反応も仕方ない
しかし小傘かわいい
83.100名前が無い程度の能力削除
早苗には小傘が何に見えたのか非常に気になる