Coolier - 新生・東方創想話

貴方の探し物は?

2010/12/24 18:20:00
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2作目の投稿であります。
前回は酷い作品を投稿してしまい、申し訳ありませんでした。

※クリスマスなのに秋設定です。
※ただ内容は甘いです。
※初心者丸出し+句読点が多いです。
※それでもいい方はどうぞ
















 ある秋の日のこと


 たくさんの木々の葉が赤や黄色に色付き始めたのはついこの間。
 落ちた色とりどりの葉が道をカーペットのように彩る。
 そこを歩く影がひとつ。髪は灰色で、特徴的な丸い耳。
 両手に金属製の棒のようなものを持ち、尻尾らしきものの先端には籠があり、中で何かが 蠢いている。胸には太陽から光を受けて輝く蒼色のアクセサリ。

「あ~…疲れた…」

ここは魔法の森でいえば端の方に位置している場所。
 何故こんなところに・・・と、その前に 自己紹介をしておこう。私の名はナズーリン。
 容姿は・・・まぁ先程の通りだ。私の居住地は星蓮船というところだ。
 では、何故こんなところに居るのか。話せば長くなるのだが、一口に言えば失せ物探し。
 私は探し物を探し当てる程度の能力というものを有し、それを用いて色々な人の無くした 物を探している。

 のが、本業なのだが今日は違う。

 「何で私が無くすかなぁ~…」

 そう。私は、自分が無くしたものを自分で探しているのだ。
 まさか自分がこんなことになるとは予想だにしていなかったので
物凄く驚いたし、大切なものを無くしたという言いようのない悲しさに襲われた。
 しかし、よくよく考えるとこんな能力を持っているのだから
 すぐに見つけられるではないか。と立ち直った。
 そして、今両手に持っているダウジングロッドと胸にあるペンデュラムで失せ物を探して いるというわけだ。
 もう随分と彷徨っている。その理由は探しているうちに分かったのだが
まるで失せ物が意志を持っているかのように動いていたのだ。
 今こそ止まっているが、かなり振り回された。
勿論動いている理由も分かる。誰かが持って動いている、ただそれだけだ。

 「そろそろ強い反応無いかなぁ…」
 
 これほどまで躍起になって探しているのも久々だろうか。
 普段はすぐ見つかってしまうので時間をかけて探すと言うことは中々無い。
 早く見つかれば早く報酬が貰える。
 時間がかかれば何としても見つけてやる。という執念が湧いて楽しく仕事できる。
 どちらにも魅力があり、甲乙つけ難い。今回は勿論後者。それも格別の。

 


 
 失せ物の正体は、我が主人虎丸星から貰った御守り。
 主人が聖白蓮にわざわざ頼んで念を込めてもらった物らしい。
 御守りそのものは主人の手作り。触ってみると中に紙らしきものが入っていた記憶があ  る。だから、そんな大切なものを無くしたとなれば大変なことだ。
そんなことを回想しながら、ロッドの先が示す先へと歩を進める。

 「おっ!きたきた…!」

 徐々にロッドの反応が強くなってきた。失せ物が近い証拠だ。
 逸る気持ちを抑え、しかし速度はすこし上げながら、更に前へ進む。
 やがて・・・木々ばかりだった道が左右へ開けてくる。その先にあったものは・・・
 
 「……また、ここか。」

 そこには木で作られた民家らしきものがあった。あまり頑丈そうではない。
 屋根も強い風が吹けばすぐに飛んでいってしまいそうだ。
 小さな窓も幾つかある。そのうち1つは割れていて、紙か何かで覆ってあった。
 実際のところ、私がここに来たのは2回目だ。
 これも話せば長くなるのだが・・・簡単に言えば今日と大体同じ。無くした人が違うだ  け。失せ物は毘沙門天の宝塔。我が主人の持ち物だ。
それを探しているときもここにあった、というわけだ。
 溜息をつきながら入り口の前に向かう。看板がある。そこには 香霖堂 と書かれていた。
ここは一応道具屋、店だ。これだけボロボロであっても店なのである。
扉には 商い中 と書かれてある掛札がある。開店も閉店も変わらない気がするのだが,
この店。とりあえず中に入ろうか、と思いドアノブに手をかけ、回す。
 
「邪魔するよ。」
 「いらっしゃい。おや、珍しいお客だね。」

 眼前には男が居た。椅子に腰掛け分厚い本を読んでいる。
 かけている眼鏡の奥から鋭い視線が注がれている。彼の名は森近霖之助。ここの店主だ。
外で気に入ったものを拾ってきては、店の商品として売っている。
尤も、あまり繁盛はしていないらしいが。

 「で、何の用だい?また探し物?」
 
 そう聞いてきたのであぁ、そうだ と答え、店内を見渡し目当ての物を探す。
 案外とすぐに見つかった。一緒に拾ってきたであろうガラクタの数々の隣に置いてあっ  た。

 「探し物はコレ。」

 手にとって見せる。彼は一瞬驚いたような表情になったが、すぐに戻って
 
 「それかい。それはついさっき…」
 「拾ったんだろ?」
 「ご名答。結構良いものだと思っただろう?」
 「そりゃあね、元々私が持ってたんだし。」
 「おや、そうだったのかい。」
 

 願わくばそのまま返してほしいのだが、あちらも商売なので簡単に譲るわけがない。
 結局は私が折れてしまうのだ。前もそうだった。
 さて、今回は幾らになるのだろうか。
 そう考えると気分が沈んでくる。自分が落としたのが悪いのだが。
 多少の出費は仕方ない、と覚悟し口を開く。
 
 「で、幾らだ?」
 「買うのかい?」
 「勿論だ。これは私にとって大切なものだからな。」
 「うーん…まだ決めてなかったからな。」
 「そうだ。」

 彼は何かを思いついたようだ。いい予感は全くしない。
 ほんの少しの希望と緊張感を抱きながら次の言葉を待つ。

 「……んー」
 「どうした?幾らなんだ?」
 「いや、前よりは安い…かどうかは分からないけど」

 前より安い。当たり前と言えばその通り。質が圧倒的に違うから。
 前の半分…とまでいかなくても、4分の3ぐらいに収まってほしい。

 「で、どうなんだ?」
 「…これは僕からの提案なんだけど、君の今日一日を僕にくれる、ってのでどうかな?」

 私の今日一日。探し始めたのが日が高く昇ってからだったから
 今はおやつ時というところだろうか。残された時間はそんなに多くない。

 「何を考えている?」
 「別にやましいことはないさ、ただの思いつきだよ。」
 
 ちょっと待ってくれ、と言い考える。
 まぁ、悪くはない提案だと思う。彼もああ言っているのだし、大丈夫だろう。
 問題は何を考えているのか。多分私に何かやらせるつもりなのだろう。
 その内容如何によっては大変なことになる。
しかし、金を払うと流石に懐が寂しくなる、それも悩みものだ。
 思案した末、結論を出した。
 
 「わかった、それでいいよ。」
 「そうかい、御買い上げありがとうございます。」
 「似合わない、その言葉。ありがとうでいいのに。」
 「一応商売人だからね、建前だけはしっかりしておきたいのさ」

 その建前より家を建て直した方がいいんじゃないか、とは言わない。
 流石に彼に悪い。大して気にもかけないだろうが。
とりあえず暇になりそうなので彼に聞く。

 「で、何をすればいい?」
 「そろそろ夕御飯に時間に近づいてるし、用意をしてくれないかな?」
 「御飯ね・・・久々に作るかも。」
 「普段は作らないのかい?」
 「料理できる人が一杯いるからね、出番がないのさ。」

 確かにそうである。ご主人然り、白蓮然り、皆料理ができるのだ。
 たまにご主人に頼まれて作ることはあるが、それ以外で作った記憶は無い。
 ご主人は、こんなにおいしいのに何で作らないの、と言っているが
 多少の御世辞も含まれているだろうから期待していない。
 外へ出るため、扉の前に向う。そういえば、と気付いたことが、振り返り尋ねる。

 「料理は私だけで作るのか?」
 「僕は不器用だから作りたくない。」
 
 どう考えても嘘だろう、とか、私も不器用だ、なんて言わない。
 それが今の私の使命。やるべきことだから。

 「分かったよ、じゃ、食材探してくるけど・・・」
 「僕も行くよ。」
 「今日の私の時間は君にあげたはずだけど?ゆっくり本でも読んでてくれよ。」
 「・・・そうだったね。じゃあ御言葉に甘えようか。」
 
 やれやれ、と心の中で呟きながら、ドアノブに手をかけチラリともう一度彼の方を見る。
 彼はずっと私のほうを見ていたようだ。スウッと目が合う。
 彼の目の奥は深くて、優しくて、それでいて何故か温かかった。
まぁ、そんなことはいいか、と思い向き直る。
 
 「それじゃ、行ってきます。」
 「行ってらっしゃい。」
 
 右に捻ってドアを開け、外に出る。秋の匂いがふわりと漂う。私は前へと歩を進めた。
さて、何を作ろうか、考えただけで頭が痛くなるが、楽しくもなる。
 彼に美味しいと言わせたい、私の中でその思いが大きくなっていた。
 
 「さて、とりあえず人間の里に行くか。」

 そこらに食材が落ちているわけでもないからな、大人しく買いにいった方がいいだろう。
 お金は・・・彼に付けておこう。
足先を人間の里の方向へ。今回は大して歩かなくて済むだろう。

  




 
 「着いた・・・はぁ、疲れた。」

 考えていたよりもすこし長かった。今日はあまり冴えていないようだ。
 そんなことはどうでもいいか、とりあえず食材を探そう。
 人間の里は結構栄えていた。主の通りは賑わい、声が飛び交っていた。
 はい、安いよ安いよー!だとか、ありがとねー!だとか。
 何処からか良い匂いが漂ってくる。それに誘われ、根源へと歩く。
 着いた先は焼き鳥屋のようだった。
 
 「いらっしゃい!何をお求めだい?」
 
 女将さんが団扇で匂いを飛ばしながら問いかけてきた。

 「うん。今日の晩御飯何にしようかと思っててさ。」
 「それならこの肉の焼く前のがあるけど、どうだい?」
 「焼き鳥丼か。いいね、それ。もらうよ。」
 「はいよ。ちょっと待ってな。」

 あの香ばしい匂いなら間違いなく美味しいだろう。あぁ、早く調理して食べたい。
 女将さんがお肉とタレを持って出てきた。

 「こんなもんでよかったかい?」
 「あぁ、十分だ。幾らだい?」
 「んーこのくらいだね。」
 
 十露盤を弾き、提示する。

 「こんなに安くて大丈夫なのか?」
 「一応これで商売は成り立ってるからね。」 
 「ふーん、あ、これは森近霖之助って人に付けとくから、金額紙に書いてくれない?」
 
 はいはい、と懐からメモらしきものを取り出し慣れた手つきで書いていく。
 よくあるのだろうか、こういうこと。

 「じゃ、紙とお肉。ありがとねー」
 「こちらこそどうも。」
 
 軽く挨拶を交わし店を後にする。今夜はいいことがありそうだ。
 元来た道を引き返す。人の往来は時間の経過と共に少なくなっていた。










 「ただいまー・・・」
 
 中々の重労働だった。荷物を抱えて歩くというのはこれほどまでに大変だったか。
 着いたときにはグッタリしてしまった。こんなので料理なんてできるのか?
 重い荷物を降ろし、俯いていた顔を上げる。
 しかし、何処にも彼の姿を捉えることはできなかった。

 「おーい・・・帰ったぞー」

 そう言いながら奥へと進む。中々無い機会かもしれないな。
 暖簾をくぐった先では、彼が椅子に座って寝息を立てていた。

 「スゥー・・・スゥー・・・」
 「寝てたのか・・・まぁ、暇だったろうしな。」
 
 彼に近づき顔を覗き込む、 ・・・・・・良いことを思いついた。
 少し顔に落書きでもしてやろう。昨日のお返しも兼ねて。
 丁度すぐそこの机にまじっく?と呼ばれるものがあった。
 手に試し書きしてみたが、成程これはいけそうだ。
 もう一度覗き込む。悪魔のような黒い彩色道具と共に。

 「さぁて、どんな風にしてやろうかなぁ~」
 「考えるだけでニヤケが止まらないよ。」

 どのようなものがいいか、と構想を練った。選択肢が多すぎて全く決まらない。
 悩んでいると、何故か彼の顔をまた覗き込んでいた。
 中々の美形・・・いや、どこが美形の境界かは知らないが、そう思った。

 「口と性格さえ良けりゃあ、ちょっとはマシになるっていうのに・・・」
 
 そう考えていたときだった。不意に胸の鼓動が鼓膜を振るわせ、全身に熱を伝えた。
 顔や体が熱くなる、呼吸が荒くなる、全身が震えている。
何故だ、一体どうした。さっきまでは何ともなかったはずなのに。
 咄嗟に彼から離れる。心臓の高鳴りが徐々に治まっていく。

 「・・・何だよ、これは。」
 「まぁ、考えてても仕方ないか。起きないみたいだしパパッと作りますか。」
 
 台所へと足を向ける。未だに顔は紅潮したままだった。








 
 
 「ん・・・」

 その言葉は、私が料理を運んでいるときに出たものだった。
 
 「おはよう。時間的には夜だけどね。」
 「僕は・・・寝ていたのかい?」
 「あぁ、しっかりと。料理終わったしね。」
 「そうかい・・・」
 
 人の寝起きとはこのようなものなのだろうか、いや、彼は半人半妖だが。
 心ここにあらず、というのが分かりやすいだろうか。
 目が虚ろで、ぼーっとしていて、どこかに浮いているみたいだった。
 彼は冷め切った紅茶の入ったカップに手をかけ、一気に飲み干す。
 ここでようやく、いつもの彼に戻った。

 「まさか寝てしまうとはね。寝ないと決めていたのに。」
 「そういうときに限って、っていうこと多いよね。」
 「あぁ、そうだな。やれやれ今日はツイてないみたいだな。」
 
 そうみたいだね、と返し料理を並べる。香ばしい匂いが部屋に溜まっていく。

 「いい匂いだね。」
 「そうだろう?あ、お金は君持ちで付けといたから。」
 「おいおい・・・まぁ味次第かな。」
 「それなら自信がある。食べてみな。」

 自信なんてあまり持ち合わせてはいない。自らハードルを上げてしまったか・・・。
 でも、真心込めて作ったのだから、きっとおいしいはず!
そんなことを思いながら一口食べた彼の言葉を待つ。
 
 「・・・・・・。」
 「ど、どうかな?」
 「おいしいね。最近まともな食事をしていなかったせいもあるが、とても。」
 「そうか、それはよかった!」

 素直に嬉しい。誰でもそう思うだろう。自分の作ったものが認められたのだから。
 私の感情を気にもかけず無言で食べ続ける彼は放っておいて、私も食べてみよう。

 「んぅ~・・・おいしいっ!」
 「ちょっといいかな? これってどこで買ったんだい?」
 「あぁそれなら、はい。」

 紙を渡す、彼は目を丸くしていた。勿論安さに関してだろう。
 紙には店の名前も書かれてあったのでそこへ行けばまた買えるだろう。
 なんとまぁ、便利なものだな。紙というのは。

 「ま、そういう話は後にしてさ、食べようよ。」
 「そうだな、冷ますと勿体無いし。」
 
 二人は無言で箸を進めていった。







 

 あらかた食べ終えた私たちは、店の裏にある桜の木の下に来ていた。
 彼から、外でお酒でも飲まないか、と誘われたからだ。
 片付けもしないまま飛び出してきたが、まぁ後でやればいいだろう。

 「暑くもなく、寒くもなくのいい天気だね。」
 「あぁ、そうだね。 ・・・よっと。」
 
 彼は桜の木の根元に腰かけ、杯に酒を注ぎ始めた。
 徐々に、徐々に、水が溜まっていく音が響き、やがて満たされる。
 どうぞ、と言われたので杯を受け取り、唇につけ、傾ける。
 
 「・・・美味い。」
 
 思わずそう言ってしまった。
 いや、意志とは関係なく出てしまったというほうが正しいだろうか。

 「そうかい、それじゃあ僕も。」
 
 少し小さめの杯に注ぎ、含む。
 私に大きい杯を渡したのに悪意を感じるが、まぁ沢山飲めるしいいだろう。
  
 「美味しいね。何というか、バランスがとれてる。」
 「あ、私もそう思った。」
 「これなら何杯でもいけそうだな・・・いや、飲みすぎには気をつけなければ・・・」
 
 このお酒の美味しさを例える言葉は、バランスがとれている、としか思い浮かばない。
 しかも、それぞれの質がかなり高い水準で均衡しているという感じだ。

 「こんな酒、どこで手に入れたんだ?」
 「んー、まぁいろいろあってね。」

 はぐらかされたような気がした。受け答えの内容的には全く問題が無いはずなのだが。

 「少し・・・説明でもしようか。」
 「何の?お酒のか?」

 そう、と呟いた彼がぽつりぽつりと言葉を紡ぎだす。

 「このお酒は『二月酒』という名前でね、十五夜の日に降った雨と、
  新月のときに降った雨を使って作られたんだ。勿論一年のうちでね。」
 「え!?それってつまり・・・物凄く高いんじゃ?」
 「まぁその辺は詮索しない。」

 またはぐらかされた・・・今度は確証を持って言える。
 彼は言い終えた直後にまた飲み始めからだ。
 全く、これほど話をすりかえるのが上手い奴はそうそう居ないだろう。
 それが彼の良いところであり、悪いところでもあるのだろうが。

 「仕方ない・・・飲むか。」

 私も木に寄りかかり、口に流し込み嚥下する。
 今日の月はすごく綺麗な満月・・・だと最高だったのだが、
 それでも、満月に見劣りしない、優雅な弧を描いた三日月であった。

 




 「君はお酒に強いのかい?見たところは強そうだけど」

 彼が唐突にそう言った。
 強くても弱くても大して変わらないだろうに。

 「微妙なところだね。と、いうかお酒を飲む機会があまり無いんだ。」
 「おや、君の居るところなら沢山置いてそうなものだがね。」
 「沢山飲む奴なら居るんだけどね。特にうちの主人。」
 「成程・・・それなら理解できるよ。」

 主人を馬鹿にされているような気がしたが、まぁその通りなので気にしない。
 主人は根っからの酒飲みなのだ。一度飲み始めると中々止められない。
 さらに酔い方が最悪だ。一気に飲んで、一気に酔っ払って、そして暴れる。
 だから、皆で酒盛りをしたときは苦労したものだ。
 あまりに酷いときは聖が一発で気絶させるのだが。
 
 「でもまぁ、お酒が美味しいのはすごく分かるよ。特に、こんな日はね。」
 「それはよかった。楽しんでくれたのなら僕も嬉しいよ。」
 「おいおい、今日は君のための日じゃなかったのかい?」
 「そんなものは口実さ。 ・・・君と、一緒に過ごすためのね。」

 口実?私と過ごすため?
 また変なことを考えているのだろうか、彼は。
 いや、変なことはいつも考えているだろうが。
 私はその真意が知りたくて、彼に聞いた。

 「どういう意味だ?」
 「・・・・・・ふぅ。」
 
 彼は深呼吸をしているようだ。きっとこれから言う言葉のために。
息を整えて一際大きな呼吸をしてから

 「君は、特別だからね。」
 「特別・・・?」
 「そう、特別。ナズーリン、僕は君が好きだ。客とか友人とかじゃなく、異性として。」
 「種族なんて関係ない。純粋に、君そのものが好きなんだ。」
 「・・・え? ・・・えー!?」
 「と、いっても僕は半人半妖だったか。そんなことはどうでもいい。
  君の返答を聞かせてくれないか?」
 「ちょ、ちょっと・・・待ってくれ・・・」

 彼は、私のことが・・・好き?
 そんな馬鹿なことがあっていいものだろうか。
 気持ちの整理がつかない。顔が熱い。心臓の鼓動が早く、早く、強く・・・
 息が乱れる、辛くなる。肩が震える。
 やがて、意識までもが侵食されていく・・・
 このままでは気絶・・・

 「ナズーリン?」

 彼の呼びかけで意識が覚醒して、視界が明るくなる。
 先程より体は幾らかよくなった。呼吸も落ち着いてきて、息ができる。

 「あ、あぁ、すまない。」
 「そうか・・・急にこんなことを言ってしまってすまなかったね。
  戻ろうか。そろそろ冷えてくるだろう。」

 彼はそう言って立ち上がり、私の隣を通り過ぎる。
 私は後ろを振り返り、彼の姿を目で追う。どんどん、どんどん、私から離れていく。
 言わなきゃ、私の気持ちを。このままで終わっちゃ駄目だ。
 そう思っているのだが、口が動かない。唇がせわしなく震えている。
 これほど歯痒いことはない。自分の思いを伝えられないとは。
 そう思った瞬間、糸が切れたように、口が動くようになった。
 それと同時に、無意識にこう叫んでいた。

 「待ってくれ!」
 
 彼に声が届いたのだろう。振り返り、戻ってきた。
 彼の顔は寝ているときとあんまり変わらない、不思議な感じだった。
 でも、そこには寂しさがわずかながら含まれていた。

 「どうしたんだい?」
 
 彼は先程と同じような距離まで来て、そう言った。
 目の奥を覗き込むと、先程のものとは比べることのできない悲しさ、寂しさがあった。
 私のせいだ。しっかり答えなかったからだ。
罪悪感に囚われた。しかし、もうひとつの思いも同時に生まれた。
 私は彼のことをどう思っているのだろうか、という疑問だ。
 私は色恋沙汰など更々興味ないし、そういう機会も少ない。
 だから、自分の思いがどういうものなのか、あまり分からないのだ。
 だから、こう彼に聞いてみた。

 「ねぇ、君の顔を寝ているときに見たんだけどさ。そのときに・・・
  不意に、心臓が高鳴りだしたんだ。私は、こういうことに疎いからさ、
  教えてくれないか?これが・・・どんな意味を表すのかを。」
 「ナズーリン・・・わかった。教えよう。

  人は、それを一般に『一目惚れ』という。いや、この場合は『二目惚れ』か。」
 「・・・それは君に恋してしまった、ということで間違いないか?」
 「王道でいけばそうなる。」

 恋。そうか、これが恋というものだったのか。
 すべて恋という言葉を当てはめれば納得がいく。
 あの心臓の高鳴りも、顔が熱くなったのも、呼吸が辛くなったのも、全部。
 私の心は妙に落ち着いていた。そして、次言うべきことに備えていた。
 先程の彼と同じように、深呼吸をして、言葉にした。

 「うん。私も君が好きなんだと思う。」

 彼は、目を瞑った。一瞬顔が赤くなったのを私は見逃さなかった。
 彼の顔をしっかりと見つめ、目が開くのを、次の言葉を待った。
 やがて、彼の瞼が上へと押し上げられ、口が開く。

 「そうかい。ありがとう。」

 彼はそう言って、笑顔を見せた。
 普段の作り笑いではなく、本物の笑顔。これが満面の笑み、という奴だろうか。
 自然と私も笑顔になっていた。彼が私との距離を縮める。私も彼に向かって歩き出す。
そして、彼が優しく、私を抱きしめた。

 「僕も大好きだよ。僕に思いを伝えてくれて、ありがとう。」
 「私のほうこそ、思いを、恋というものを教えてくれて・・・ありがとう。」
 
 彼が、先程と同じようにゆっくりと、優しく離す。
 もう一度、同じ場所に行き、腰掛ける。
 その足の間には隙間があった。ここに来てくれ、という意味だと私は思った。
 自然に足が動く。そして座り、彼に寄りかかる。

 「寒くなるけど、飲もう。こんな日は二度とないだろうから。」
 「そうだね。・・・それと、寒さなんて君が暖めてくれるから大丈夫だろ?」
 「ふふ、そうだな。」
 
 二人の杯にお酒を注ぎ、一緒に飲み干す。


 ある秋の日のこと
アドバイスを自分なりに生かして書いてみたつもりです。
ここはもっとこうしたほうが、等指摘が御座いましたら
是非していただけると有難いです。
それでは、お目汚し、長文失礼いたしました。
AkuA
http://blogs.yahoo.co.jp/akueryuumu
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コメント



0.540簡易評価
5.90名前が無い程度の能力削除
普通に面白かったです。
スラスラと…読みやすかったですし。
「初心者丸出し」と言うほどのレベルでは無いと思います。
しいて言えば、霖之助の告白が少々唐突に感じましたが、長編でも無いのでそこらへんが急展開なのは仕方ないようにも思います。
私は霖之助のss、霖之助というキャラが好きなので、告白→甘い雰囲気も好きですが、
他の人は結構そこらへんに厳しいかも知れないです。
まだ書きなれてないでしょうから「長文でしっかり霖之助の心情等を描写しろ」なんて無茶苦茶はいいません。

頑張ってssを創られたのは読めばわかります。次回作も期待してます。
8.無評価AkuA削除
>>5さん
コメントありがとうございます。
fmfm・・・アドバイスありがとうございます。
精進します。
16.60名前が無い程度の能力削除
前より面白くなってる。

・・・は…(三点リーダー)偶数個で代用した方が見やすくなり、好印象を与えますよ。
17.80名前が無い程度の能力削除
前半部分の所々にある謎の空白が気になったけど面白かったです
18.70名前が無い程度の能力削除
前よりかなり良くなっていますね。これからも期待しています。
内容に関しては若干急展開とも思いましたが、書き続けていくうちに自然な文章のつなげかたが見につくと思います。
後自分からもアドバイスを一つ。「」の文末には句点(。)をつけない方がいいですよ。
19.無評価AkuA削除
>>16さん
前作に続き、読んでくださってありがとうございます。
ご指摘ありがとうございます。次回から活用させていただきます。

>>17さん
お褒めいただきありがとうございます。
空白はシーンの変わりを表しているつもりだったのですが読み辛かったでしょうか?
試行錯誤しながら書いていこうと思います。アドバイスありがとうございます。

>>18さん
コメントありがとうございます。精進します。
やはり無い方がいいですか。次回作から取り入れたいと思います。ありがとうございます。