Coolier - 新生・東方創想話

幽香の秘密5

2010/12/20 12:03:16
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前回までのあらすじ
未来にきたよ








私と同じ格好、同じ顔、同じ声の人物が目の前でお茶を飲んでいる。
違うところがあるとすれば体つきだろうか、何故だかだいぶ違う。
私はあんなに大きくない、どこの何がとは言わないが。
弓とか使ったら当たって痛そうだ。

「さて、どこから話そうかしら…」

先ほどまでは抱きかかえられていたが降ろされ、勧められるがままに椅子に座らされる。
木の椅子では無く、なんだかよくわからないふわふわした感触の椅子だ。
机の上にはコップが三つ並べられている。
私と、私と、誰の物であろうか。

「是非最初から」

現状がまったく把握できないので、わかる限り説明して貰う事にする。
情報は大切なのだ。
情報の有無は自分の生死に関わってきた、情報が無くては何も出来ない。

「どこから説明するべきかしら」
「未来云々について」
「わかったわ、ここは貴方がいた世界ではない。
何故そんなことがわかるかと言われたら、私が昔同じ経験をしたからよ」
「同じ経験?」
「ええ、貴方ミスティアに頼まれて技を見せたらここにいたんでしょ」
「な、何で知ってるの」
「まったく同じ経験をしたからよ」
「じゃあどうして私は未来になんか来れたの?」
「過去と未来の境目を斬ったせいで、時間を越えた。
師匠が言ってたでしょ、我が剣に斬れぬ物など無いって」

時間を越えた?
この私が?
剣の才能はまったく無いが、修行し続けたらそこそこぐらいにはなれるだろうと言われた私が?
そんなことあるわけが無い。

しかし私の目の前に座る私は、真剣な顔だ。
とても嘘をいっているようには見えない。

「信じられない?」
「ええ、だって私がそんなことできるはずが無い」

目の前の私も私の言葉に同意したのか深々と頷いている。

「でもね事実なの、そうで無ければ貴方がここにいるはずが無いもの」
「ちょっと待って」

私の言葉を遮り、気になっていた事実を聞く。

「貴方は、どれくらい先の私なの?」
「五百年ぐらいかしら」


五百年?
聞き間違いでは無いだろうか。
何をどうしたらそんな場所に、ああだからか。
即座に五百年も移動する方法なんて、時間を越えるぐらいしか方法は無い。
それを認識すると体が震えてきた。

「私みたいな、弱小妖怪がそんな奇跡のようなことができたの?」
「ええ」

手に力が入り、握り締める。
嬉しい、そんなことが出来るようになった事実が嬉しい。
歓喜で体が震える。
これほど嬉しいのは何時ぶりだろうか。

「まあまぐれだけどね」
「えっ?」

そんな私の嬉しさに水を差す私。
まぐれってどういうこと?
いや言葉の意味はわかっているが、まぐれで出来るような技では無い。
長年修行を積み、境地にたどり着いた者だけができる秘儀に等しい技なのだ。

目の前の私は私から視線を逸らし、閉まりきったカーテンをぼんやりと見ている。
カツン、ガツン
窓に小石が当たっているのか、鈍い音がする。

「人間に持て囃されて、妖怪の中で強いと思った時期もあったけど。
幻想郷にいるなら、自分自身の無力さわかってるわよね。
その程度の力で時間なんて斬れないのよ、本当なら、絶対に」
「じゃあどうして…?」
「火事場の馬鹿力、簡単に言えばそういうことよ」
「火事場の馬鹿力?」
「生命の危機を感じたから、たまたま変に集中し、変な力が入ったからまぐれで時間を越えた。
それが理由に滅多に時間なんて斬れないわよ」
「でも、斬れたってことは強くなれたんじゃないの?」
「ええ強くなれたわよ、会う妖怪、人間達に最強と言われているわよ」
「じゃあ!」
「でもね、精々三倍程度よ。
一が三になったところで百に勝てると思う?」
「無理」
「人が死に物狂いで修行しても強くなるのは僅か。
だというのに周りの化け物たちは際限なく強くなっていった」
「じゃあどうして最強といわれたの?」
「知らない、でも原因があるとすればアレね…アレさえなければ…」

アレって何だろう。
聞いてみたいが聞きたくない。

「アレって…いやごめんなさい」
「聞かないほうがいいわよ。しかもね、この後が地獄なのよ」
「地獄?どうして?」
「まぐれで斬れる、要するに私の意志なんて無視して突然切れて、突然知らない時間の知らない場所に飛ばされる
何度も怪我するわ、何度も死に掛けるわ、何度も精神崩壊しそうになる。
救いなんてほとんど無いわよ、ミスティアとの生活が楽しかった思い出クラスよ」
「……」

そんな事実は聞きたくなかった

「過去の私がどこまで話したか覚えてないから、思いつく限り言うわね
恐竜と戦って食われかかる、月で変な姫の玩具にされる、一人で七万人に特攻、魔女狩りで殺されかかる、ダンボール被って基地に潜入、ゾンビやグール達と戦う羽目になったり、はした金とこんぼうで魔王と戦ったこともあるわ」

自分の降りかかった事柄を言うたびに目の前の私の表情が暗くなっていってる。
やめて、そんな事実や未来は聞きたくもないし。

「冗談…よね?」

お願いだから冗談であって欲しい。
だと言うのに、目の前の私は私の言葉が届いてないのかまだまだ言葉を続けている。

「飛ばされるたびに色々な妖怪や人間に出会ったわ。
その度に…くそっ何で私だけがこんな目に、何で私に頼るのよ、自分達で解決しなさいよ…私にだってプライベートっていうものが…」

私がいるのを忘れたのごとく、ぶつぶつの文句を言い続けている。

「あの…」
「ああごめんなさい、ちょっと愚痴りたくなったのよ」

嘘だ。
その愚痴はちょっとどころでは無い。
放って置いたら延々と続く愚痴だったはずだ。

「で、冗談だよね…?」

そういうと未来の私は私の言葉を無視してカーテンのほうを眺めている。
本当なの?
やめてよ、そんな未来。

「ねえ私、今の私の状況聞きたい?」

こちらが落ち込みはじめると、死んだ人間のような顔でにんやりと問われる。
聞きたくない、聞きたくない。

「やだ、絶対にやだ」
「そう残念ね、聞いて欲しかったのに、変えれるかも知れないのに」
「えっどういうこと?」
「聞きたくないんでしょ?」
「そうだけど…」
「だったら教えないわよ、昔の私も聞かなかったし」
「………」
「私だけ経験して、貴方だけが経験しないなんて許さない絶対に許さない…」

小声だった。
耳は良いので全部聞こえた。
どうしてこうなった。

お互い無言になって目の前にあるお茶を飲み始める。

「ああそうそう一応言っておくわね」
「あまり聞きたくないけど…」
「あの子食事に妖怪の残骸いれてるわよ」
「えっ?」
「私の力をもっと強くするって黙って勝手に混ぜてるのよ」
「本当に…?」
「ええ、まあぎりぎり全部たべたことないけどね!食べてたら強く慣れたのかしら…」

危ない。
食べる料理を全て管理して置いてよかった。





「幽香さんはそのままの強さでかまいませんよ」

突然後ろから声をかけられ振り向くと、髪が湿って顔が上気してる子供がいた

「湯加減はどうだったかしら」
「良いお風呂でした、あと私子供ではありません」

「へっ?」

何で子供と思ったことがわかったんだろう

「幽香さん私が言った通り今日だったでしょう」
「そうみたいね、ほらこっち来なさい髪乾かしてあげるから」
「はい」

そういうとその子供、妙な目のアクセサリーをした少女は
椅子に座ってお茶を飲んでる私の膝の上に乗り私にもたれかかっている、頭は丁度胸の間だ。
なんかお母さんと娘みたいに見える

「だから子供でも娘でもありません」
「へっ?」

まただ、また考えることが読まれた
口でだしていたのだろうか

「出してないですよ」
「出してないわよ」

私とその子が同時に否定する。
口に出してないとするとまさか…。

「もしかして、その子…」
「ええ心が読めるわよ。しかも毒舌だから嫌われて、秘密抱えまくってる妖怪達に恐れまくって幻想郷でもトップクラスの人気の無さを誇る、いたっ」

そこまで言うと、その子は私の頬を抓ってむくれている。

「……」
「ごめんごめん、そう拗ねないで」
「拗ねてなんていません」
「拗ねてるじゃない」

膝の上で見る見るうちに不機嫌な表情になっていく。

「どうせ私はペット以外に親しい者なんていませんよ、人型になったペットたちや妹からも避けられて、同類と思った守護者には逃げられるし、普通の少女の振りして仲良くなろうとしたら、つい口が滑ってばれて嫌われましたし…」
「何かすっごく怒ってるわよ」

愚痴りだした。
不機嫌な顔で物凄く愚痴り始めた。

「いいんですよ、貴方だって最強とか言われて子供に笑顔見せたら泣きながら逃げられたりしてますし、実際死ぬほど弱いし…」

愚痴が止まらない。
どうする気なのだろうか、簡単に止まってくれそうに無い。

「ねえ、ずっと続きそうだけどどうするの?」
「いつものことだから気にしないで、抱きしめたら一発で機嫌なおるわよ」

そういうと私はその子を後ろから優しくだきしめた。

「………あぅ」

本当に一言で溢れ出していた愚痴が止まったる
未来の私って凄い。

「………」

機嫌の悪そうな顔が一瞬で元に戻り、恥ずかしそうにしている。
なんかみるみるうちに顔が赤くなっていってるがどうしてだろうか

「赤くなってなんていません」
「まあそういうわけで、仲いいのよ私達」
「仲良くなんてありません」

必死に否定しているが、そんな顔真っ赤にして、抵抗もまったくしてない時点で仲良くないなんてありえないと思うけど。

「そういうわけで、そのうちこの子に会うと思うから助けてあげて」
「えと、どういうこと?」
「この子出会った瞬間襲われて死にかけてるのよ」

何に襲われてるかは知らないけど。
私程度の腕で勝てるはずが無い、そもそも勝てる相手のほうが少ないのだ。
私ならそんなこと一番わかっているだろう。

「…無理勝てないわよ」
「大丈夫、なんとかなるのよ。
それにこの子を逃すと化け物に囲まれて、死ぬ運命しかないわよ」

化け物に殺されないがために、化け物と戦わないとダメなのか…。
でも未来の私がいるってことは勝ったのかしら。

「そうなの?」
「貴方にならわかるでしょ、情報の大切さ。
こいつが居なければ私はとっくの昔に死んでいたはずよ、といってもこの子も私が助けないと死んでいたはずだけど」
「ええ…」
「幽香さん、それまでです」

そこで一旦会話が止む。
それまでとはどういうことなのだろうか

「…ああそうなの?」

未来の私はそのことで察したようだが私は意味がわからない。

「はい、あの時の貴方はこれ以上会話してませんし私と貴方にあっていません」
「よく覚えてるわね」
「はい貴方との出来事は全て…いえたまたまです。別にやってないことをやるのが嫌なだけです」
「下手に過去が変わって私とこういう関係になれないのが嫌、と」
「そんなこと思ってません!」
「いいのよ、私あんたがテレ屋の恥ずかしがり屋って知ってるし」
「照れても恥ずかしがってもいません!」
「子供みたいねぇ」
「なんですか!私は子供ではありません!」


なんか私が頭撫でてる
旗から見るだけで凄い喜んでるのがわかる
もし私に娘、いや恋人がいたとしたらこんな感じのじゃれあいをするのだろうか。

この子に犬耳としっぽあったら、ふりまくってるんだろうな…

「誰が犬ですか!」

さて、ここまでということは私はもう帰らないとダメらしい。
しかしどうやって帰るのだろうか。
私は元々まぐれで未来まで来た。
まぐれで過去に戻れるのだろうか。

「そういえばどうやったら私は帰れるの?」
「いつでも帰れるわよ」
「本当?」
「今回は私がいるし、返せるわよ」
「…時間斬れるの?」

過去の私はまぐれだとしても未来の私はいつでもできるようになっているのか。
やはり私は強くなれるのか。
そう考えると未来は明るい、ような気がする。

「斬れるのよ、だからちょっとさとりどいて頂戴」
「わかりました」

目の前の私の膝から降りた子供が

「だから子供じゃありません」

部屋の隅にあった剣をもってくる。

「それ違う」
「その剣なに?」
「テュルフング」
「…何でそんな物騒な剣があるのよ!」
「巡り巡って何故か私の手元にあったのよ…、使ったことないけどね!」
「ちっ…失礼、間違えました」
「舌打ち聞こえてるから、そっちよそっち」

壁に立てかけられてる私の愛剣を持ってくる。
未来の私も同じ剣を使い続けているのか。

「成功率は皆無だけど、昔の私が戻れたってことは帰れるはずよ」

そういい目の前の私は何も無い空間に向かって剣を振る。
何もなかったはずの場所は斬れ、暗闇が広がっている。
ここに入れば戻れるのだろうか。

「すごい…」
「ここを通れば、過去よ。あとは…頑張りなさい」
「ありがとう!私頑張るから!」

ここに来るときに持ってきた物を持ち、境目に手をかける。

「ねえ私最後に忠告しておくわね。
斬った先には青髪の変な妖精がいるから、そいつを助けなさい」
「はい?」

私がいた場所に戻るのだからミスティアがいる場所だろう。
青髪の妖精なんていなかったはずだ。

「しばらくもとの時代には戻れないわよ」
「えっちょおま」
「じゃあね私、二度と会うことはできないけどずっと繋がってるから」

そういうと背中を押され、境目に体が落ちていく。
元の世界に戻れないってどういうことよ!

「ああああああああああぁぁぁぁぁ…」

暗闇の空間を抜けるとそこは何かの実験室のようだった。
見たこともないような器具や、なんだかよくわからない液体が所狭しと置かれている。
私が落ちた衝撃でかなり散らばっているが…。

青い妖精って何?
それにここどこ?
何か色々壊してしまったし、持ち主帰って来たら死ねるわね。

早く逃げないと…。でもここどこなのよ
ああもう、誰かたすけて!
「………帰りましたか」
「ええ、見ただけでわかる弱小妖怪だったわ」
「今でもですよ」
「いいえ今の私は最強よ、なにしろ貴方がいるからね」
「妖精にすら負ける貴方が最強だなんてありえません」
「私一人だったらね」
「…はぅぅ…」
「言う前に心を読むな!」
「ですが、その…えと…」
「ああもう、折角のシリアスが台無しよ!」
「あのですね、わ、わ、わたしは…」
「何でこんな可愛らしい子が元ペットにすら嫌われる嫌われ者なんだか…まあいいわ、よく聞きなさい」
「あ、わわわわ…」
「貴方は私にとって…」
「はぅっ…」
「ああもう気絶するな!たまには最後まで言わせなさい!」



投下恐怖症治ったけど、しばらくはなんかこうまったり投下します。
というわけでヒロイン登場。
幽さとなんてねーよと思ってましたけど。
弱小幽香と嫌われまくりさとりと合わしてみるとこれがまたよく会う。

嫌われまくりで毒舌だけど、実はウブなさとりっていいとおもいませんかー

読んでいただきありがとうございました!
ケチャ
http://
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コメント



0.2770簡易評価
5.100名前が無い程度の能力削除
さとりかわいいよさとり
6.100名前が無い程度の能力削除
これは良い幽さと。
次に期待せざるを得ない。
10.100奇声を発する程度の能力削除
続き来た!!
12.100名前が無い程度の能力削除
次回はチルノか…
16.100名前が無い程度の能力削除
おお、何かややこしい事態に……
面白かったです、次回が楽しみ。
28.無評価名前が無い程度の能力削除
ついに……ついに負けフラグ……(泣)
29.70名前が無い程度の能力削除
最強伝説は脆くも崩れさるのか?
つか、時間を超越できる程度の能力を持ってる時点で、結構強いんじゃないかと。
あれか?次元刀を使えるようになっても、やっぱりS級妖怪には勝てないであろう桑原みたいなポジションか?戸愚呂(兄)に簡単に捕まってしまったことから、A級妖怪相手ですら勝てるか怪しい。
37.70名前が無い程度の能力削除
誤字
>部屋の済→隅

ゆうかりん・・・強く生きろ。
38.80幻想削除
なにかが始まりましたね。
ますますケチャさんの幽香から目が離せません。
40.100名前が無い程度の能力削除
このまま巡り巡っていって幻想郷の人や妖怪すべて救って行っちゃうんですねわかります
41.100名前が無い程度の能力削除
あ、やべ、番号28です。
点数の入れ忘れ……おかしいなあ……?
44.100名前が無い程度の能力削除
幽さといいね。
47.80名前が無い程度の能力削除
さとりかわいい
55.80葉月ヴァンホーテン削除
いいですねーこのシリーズ。
続きが待ち遠しいです。
70.100名前が無い程度の能力削除
似たもの同士って良い