Coolier - 新生・東方創想話

どれだけ君を愛しても3分の一も伝わらないどころか、大抵は悪化する罠

2010/10/31 19:29:52
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『紅魔館なぅ』




『参ったわね。これじゃあ解除も出来ないわよ。なにせ呪文の詠唱も出来ないんだから』

ここは悪魔の住む館、紅魔館の中にある薄暗い大図書館。

その主であるパチュリーは、その無表情を珍しく崩しながら、機嫌悪そうに、筆談のために用意した画用紙を掲げている。

ちなみに字は紫だ。

『だ、だから悪かったってば』

同じように画用紙を掲げているレミリア。無論こちらの字は真っ赤である。

『あの……?結局今私達の身に何が起こっているんですか?』

そこに小悪魔が2人の言い争い(?)に割って入ってきた。

どうやら小悪魔は事態を掴めてはいないようである。

そんな自分の従者に溜息を吐くとパチュリーは面倒くさそうに説明を始める。


『事の起こりは、とある薬が食事に混入されてしまったことなの』


『その効果というのが問題で』


『私達はこのままでは一生、口にする言葉が全て本音と逆の言葉になるのよ』



……奇妙な沈黙が訪れた。

『何故、またそのようなしょうも無い薬を……よほどの暇人なのですか?』

咲夜は謎のボディランゲージで尋ねる。

最早ボディランゲージの域を超えている気もするが、何故かこれで伝わっているので皆、「アリだな」と気にしていない。

『それはわからないけれど、これを紅魔館に持ち込んだ犯人はわかっているわ』

それだけ書くと、パチュリーは半眼でじろりとレミリアを睨みつける。

『それで……どういうわけでこんなややこしいものを使おうとしたのかしら?』






遡る事昨日の夜、レミリアは自室でとある人物への悩みに思いをはせていた。

彼女の悩みは大抵、というか九割九分九厘が妹のフランドール関係の悩みなのだが、今回は珍しく別の人間がその対象だった。

かなり稀有な例である。

「……はぁ」

彼女の目下の悩み事とは黒白魔法使いこと霧雨魔理沙に関することである。まあ、それも結局のところでいえばフランドール、そしてほんの申し訳程度にパチュリーに関わっているのだが。

「うううううう~~~~ふ~ら~ん~私の可愛いふ~ら~ん~~~れみふらこそがじゃすてぃす~~」

禁断の暗黒舞踊っぽい動きで妹を想う歌を歌うレミリア。

何かを決定的に間違っている。

駄目だ。こいつはレミリアじゃない。

「はっ!?今気づいた。リバもアリだ!!」

……じゃあ何だろうと聞かれても、その、なんだ、困る。

「だというのに!!」

しかし突如、アホな踊りを踊っていたレミリアの身体から魔力が溢れ出す。

瘴気と見紛う魔力が世界を紅く染める。

その凄絶なる力が、世界を震わせ、威圧する。

この少女の前では、神さえも絶対者を相手にしたかのごとく膝を折るであろう

見るもの全てにそう確信させるほどに、世界が

――紅き悪魔そのものと化す。

「あの白黒が来てからというもののフランとめっちゃついでにパチュ……はどうでもいいんだけど!!この私から奪い去りやがった!!FUCK!!!本のついでにハートも盗むってかぁ!?盗みはイケナイと思いますjk!!」


……畜生。


「魔理沙死ね!氏ねじゃなくて死ね!」

よくも哀れな魔理沙を殺したな

「そこでフラン奪還のために、永遠亭から強奪してきたこの薬の出番!」

盗みはイケナイと思いますjk。

「確実に幻滅されるというこの薬!これを使えば、魔理沙の居場所はこの館から消えてなくなる!そして魔理沙に裏切られ悲しむフランをこの私が慰める……ああ、完璧すぎて自分でも恐ろしくなる計画だわ!」






Q: 説明はフラグだが大丈夫か?
               

A: 大丈夫じゃない、問題だ。



あいつは昔から咲夜の言う事を聞かなかったからな。




『……その後、レミィの多大な手違いでこの日の食事に薬が混入した、というわけね』

『あ、あれは妖精メイドのミスよ!』

『……調味料といっしょに粉末状の薬剤を置いとくのがあなたのミスじゃなくてなんなのよ!』

《はいはい、ゆかりん乙――なん、だと?》と言われるSS理論

『これが私の愛読書よ!そう、これによって私は悟ったわ!即ちカリスマとは意外性!』

『ああああああああああああああアアアああああああアアアああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!腐りきっているとは言え、あなたと縁を持ったのが私の魔女生最大の失態よ!!!!』

『スペルカードなんか捨てて、掛ってこいぃぃ!!!!!!』



無言でぎゃあぎゃあと騒ぐ、という矛盾したことをしている二人を見て、咲夜と小悪魔は顔を見合わせ、そっと溜息を吐いた。



暫らく大騒ぎし、ようやく落ち着いたパチュリーは大至急今後の方針を練る事にした。

なぜなら――

『……拙いわね。いくらか試してみたけど、私達の発言全ては、言葉の意味の逆転ではなく、思考の逆転という形で置き換わってる。要するに何が言いたいのかと言うと……私詰んだよ。OCG化にあたり弱体化ってレベルじゃねーぞ。もう私要らないよ。ブラックフェ○ードラゴンよりも存在価値無いよ、今の私』

『これは一刻も早くどうにかしたほうがいいわね。これじゃあ普段の生活にも支障をきたすわ。咲夜、紅魔館でまともなのはどのくらい残ってる?あとパチェ。テメーは俺を怒らせた』

『軒並み全滅です。ただ、門番は先日魔理沙に突破されたお仕置きで、食事抜きだったので大丈夫です。それと、こんな偽りのブラック○ェザーなど、私もいらないと思います』

『おい、デュエルしろよ……信頼と実績の門番。まあ、今は好都合。取り敢えず火急の仕事として、この薬の解毒剤を作れそうな相手をつれて来させなさい。そうね……魔理沙、アリス、永琳あたり……』

「おーーい!誰かいないのかーー」

『『『『キタ―――――!!』』』』

普段は騒々しくてはた迷惑だが、今回に限ってはグッドタイミングな来訪者である。

各々が文字や謎の動きで喜びをあらわにする。



「おいおい。どうしたんだよ、パチュリー?つーか皆、画用紙なんか持って写生大会でも開くのか?」

話しかけられたパチュリーは慌てて画用紙を取り出そうとして――画用紙がいつの間にかなくなっていることに気がついた。

(こ、小悪魔ぁぁぁぁぁ!!!)

画用紙は小悪魔の手の内だった。

何かを期待するかのようにこちらをニヤニヤと見つめている。

ヤバイ。このままでは自分の本音が駄々漏れだ。

(それが狙いかあぁぁぁぁぁ!!!!)

そんなパチュリーの様子を怪訝に思い尋ねてきた魔理沙。

パチュリーは咄嗟に言葉で応えてしまった。

「あなたには関係ないでしょ。何しに来たの?」

「パチュリーに会いに来た……「え?」なんてな」

「まあ、そんなことはどうでもいいわ」

「そりゃ残念。少しは期待してくれたら嬉しかったんだけどな」

「しないわよ、そんなもの。それに貴方のこんな冗談なんていちいち気にするわけ無いでしょ」

2人のやり取りは文章にするならこの程度の簡素なものだが、パチュリーの内心など、その表情からして魔理沙以外にはバレバレである。

つまるところ、彼女の懸念など関係なしに、彼女の場合、薬があろうが無かろうが魔理沙に関してはまるで意味が無かった、という話である。

『つまりは滅茶苦茶嬉しくて期待もしたし、結構傷ついたってことで』「やだらっぱぁ~~!?」

悶絶する小悪魔。その鳩尾には分厚いグリモワールがめり込んでいた。というか突き刺さっていた。

「お、おいパチュリー!?」

「魔理沙、気にして」

「うん!するよ!ってか、なにしてんの!?」

『うぐぐ……それにしても本音の逆を口にしていると言うのに普段の会話とあまり変わらない』「あじゃぱ~~~!?」

今度は丁度、頭骨の関節に叩き込まれる。

『おおおおお!?』

悶絶し転げまわりながらも器用に画用紙に書き込む小悪魔。
しかしそれほどの苦痛を味あわされて尚、彼女は止まる事を知らなかった。

『い、いわゆるツンデ』「ぎゃぴり~~ん!!!!!?????」

『どうやら意味を成さない言葉には反応しないようね』

パチュリーは表情1つ変えずに画用紙を拾い上げた。というか今更だがさっきから皆、文章書くのが早すぎだと思う。

『さて、と気を取り直して――魔理沙、一つ頼みごとがあるのだけれど』

「お、おう。報酬は珍しい魔道書で手を打とう」

自分の使い魔を表情1つ崩さずに殲滅したパチュリーに、魔理沙は若干ビビり気味だったが、パチュリーはそんな彼女に構わずさっさと話を切り出した。

『……それじゃあ「あっ、魔理沙だ!!」妹様?』

――出そうとしたのだが、それを遮り響いてきた声。

その声の持ち主は1人しかいない。

部屋の空気が引き攣った。

そういえば――フランドールは現在、紅魔館が陥っている騒ぎを知っていただろうか?

『あ、妹様に確認を取るのを忘れてました』

瀟洒なメイドは若干不愉快になりそうな動きでそんなことをのたまった。

『をいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?』

『完璧で瀟洒返上せいやぁ!!』

そんな周囲の騒ぎも知らぬままに、フランドールはいつものような笑顔で魔理沙に飛びつこうとする。

「フ、フランお嬢様!!」

その事に気づいた咲夜が、慌ててフランドールを静止しようとしたが、時既に遅かった。

「魔理沙、一体何しに来たの?こっちは下らない遊びに付き合うつもりは無いんだからさっさと帰っ……て?」

自分の口から飛び出した言葉に、フランドールは満面の笑顔のままに硬直した。

いや、それ以上に彼女を凍りつかせたのは――魔理沙の瞳から零れ落ちた雫。

それを認めたフランドールのみならずその場にいた者たち全てが硬直した。

居た堪れない空気が蔓延する。特にレミリア。

涙を流させているのが自分の言葉だと分かり、フランドールは必死で取り繕おうとするが、喉に何かが絡みついたかのように言葉が出てこない。

「えっと……わ、悪い。ひょっとして今までも私、邪魔だったか?」

「そうだよ。理解したなら、早く消えてくれないかな?」

努めて明るく、しかし力なく呟いた魔理沙に、フランドールは必死で否定しようとした。

しかし彼女の口から飛び出る言葉は、その意に反し全てが肯定の言葉として飛び出してしまう。

あんまりと言えばあんまりの事態に直面して、フランドールの表情は今にも泣き出しそうになっている。

「……今までごめんな。もうこないから」

その表情を怒っていると勘違いしたのだろう。

魔理沙はフランドールのほうを見ないようにして踵を返した。

「ふぅん?清々するね。壊されたくなかったらもう二度と友達面して来ないでよ!!」

遂には泣き出しながら零したその言葉には答えず、魔理沙は黙って立ち去った。





大図書館を痛々しい沈黙が包み込む。

『……どうするの、レミィ?これは流石にフォローできないわよ』

いつの間に書いたのか、パチュリーはいつもの無表情で、画用紙を掲げていた。

但し、額に漫画の様な青筋を浮かべているのは、レミリアの気のせいではないだろう。

『だ、だってこんな状況になるなんて!』

『十分予想できたことでしょう?もっとも二人の立場は真逆だったでしょうけど』

『で、でもあの程度の悪口くらいで、いつも言われ慣れてそうだった魔理沙が泣くと思ってなかったし……』

その文を読んだ瞬間、停止していたフランドールの脳がゆっくりと動き出し、程なくしてその意味は彼女の全身の血液を沸騰させた。

湧き上がる怒りが、命の抜け切ったかの様に力の入らない身体を、再び突き動かす。

「………今のって……」

普段の感情過多な――それこそ躁病とも思わせる程の――声は成りを潜め、今有るのは只事実を問い質すかのような徹底的に無機質な声。

『ええ。概ね、というかほぼ全ての原因はレミィよ』

流石と言うべきか、そんなフランドールを相手にしてもやはりパチュリーは表情1つ変えなかった。

ただし冷や汗だらだらだったが。

「とぉぉぉってもステキなお姉さま?」

最愛の妹から、これ以上無いほどの美しい笑顔を向けられたレミリアだったが、今回ばかりは全然嬉しいとは思えない。

それでも無言の圧力はレミリアの、この場からの逃亡を許さなかった。

「な、なにかしら、フラン?」

次の瞬間、フランドールは有史以来使用されてきたありとあらゆる美辞麗句を並べ立て始めた。それこそ博覧強記の極致であるパチュリーを以てして、驚嘆させるほどの語彙を用いてだ。

そんな自分の口から出た言葉がよほど不快だったのか、フランドールは苦虫を噛み潰したかのように表情を歪めると、吐き捨てるかのように告げた。

「心から愛するお姉さま。私達姉妹の絆は永遠ですわ。それこそ世界が終わるまで。それではまたお会いしましょう」

フランドールの最後の言葉の意味を理解した咲夜達は、その表情を青くした。

しかもこの時のフランドールは普段のこどもっぽい口調ではなく、完璧なまでのお嬢様口調。それが彼女の怒りの度合いを謳っている。

そしてその言葉を残し、彼女は振り返る事すらもせずに、その姿を夜の帳に踊らせた。

「うきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

……門番生きろ、超生きろ。

『妹様、お待ちください!!』

その光景を見た咲夜はみょんな動きと共にフランドールを追おうとしたが……

「むきゅ~」

『――ってお、お嬢様ぁぁぁ!!しっかりしてください!傷は浅いです!』


パチュリーはそんなレミリアを自業自得とはいえ流石に憐れに思ったが、それでもとりあえずこれだけはいっておかねばならない。

『盗みはイケナイと思いますjk』
なんだか、HDから以前ここに投稿した奴が見つかったんで、何とはなしに色々と書き直してみた。故に続編はない。
色々とやらかした男
http://
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コメント



0.580簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
一回読んでるけど続編に期待を込めて。楽しみにしてたんだ!
こんな(ウソがバレバレの)後書きで大丈夫か?
9.100名前が無い程度の能力削除
初見です

本気の悪口に弱い魔理沙可愛いよ魔理沙
12.100愚迂多良童子削除
一番の犠牲者はブラックフェザードラゴンだと思う。
15.100名前が無い程度の能力削除
タイトルでるろうにを少し思い出した