Coolier - 新生・東方創想話

紅龍戦綺談

2005/04/12 16:53:54
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あの…すみません。今、何ておっしゃいました? よく聞こえなかったもので…」

「あら。耳が遠いのね、咲夜ったら。これだから年寄りは」

「お嬢様の方が年上じゃないですか」

「…随分とアッサリ言いのけるわね」

「実際そうでしょう?」

「それはそうだけど。
 やれやれ。中国と違って、からかいがいの無いこと」

「そういう、一つ前のSSを読んでない人には解らないネタをふるの、
 やめた方が良いのでは?」

「『私が何を言ったか』を、咲夜は訊きたいんでしょ?」

「はい、そうです」

「……『話の転換が速過ぎる』とか、そういうツッコミは無いの?」

「確かに、話の振り方が唐突ではありますが、ついていけないレベルでもありませんし」

「…咲夜ってば、つまんない~~」

「ご期待に添えず、申し訳ございません」

「ま、いいわ

 決勝戦、あなたの相手が中国に決まった。さっきはそう言ったのよ。」

「あ、そうなんですか」

「………リアクション薄いわね。

 この間の中国みたく、
 『どこかの魔界の神と似た様な苗字の“お兄ちゃん”が黒幕やっている、
  13人によるメカっぽいモンスターを使ったバトロワもの(最後は皆 ○き○る)の
  主人公(炎属性の龍使い)』の様な叫び声は出さないの?」

「…また随分と長い科白ですね。色々な意味で、結構ギリギリな発言ですし、それ。
 しかも、今のお嬢様の条件付けですと、2人のキャラクターが当てはまってしまうのですが。

 お嬢様の言っているのは、よりハッピーエンドの方でしょうけど。


 まぁ、驚いてはいますよ、実際。勝ち残るのは妹様だとばかり思っていましたし。
 おかげで、中国の為に用意したお葬式の準備が、まるまる無駄になってしまいましたわ」

「……中国は強いからね」

「確かに。
 戦闘能力では妹様の足元にも及びませんが、こと『萌』となれば、中国はかなりの実力者と言えるでしょうね。
 殆どが弄られネタですけれど」

「私が言ったのは、戦闘能力についてなんだけど」

「………ハイ?」

「あ、やっと咲夜が驚いてくれた(はぁと)」

「あの、お言葉ですが…

 私、中国の修行に付き合う、って形で何度か弾幕勝負をしているのですが、
 62戦で、私の51勝0敗11分けですよ…?」

「随分と引き分けが多いのね。」

「それは、試合途中にお嬢様に呼び出されたり何だりで、中断した分です。
 大抵の場合、その時点で、私はほぼ無傷、中国はラストの体力ゲージ半分程、な感じで、
 実質、私の勝ちとも言えるのですが、それまで勝ち星に数えるのも、まぁ、大人気ないですし。」

「ま、弾幕勝負ならそうでしょうね」

「…と、おっしゃいますと?」

「中国本来の戦闘スタイルは、『弾幕』ではないわ。
 もし、中国がその『本当のやり方』で戦ったとしたら…
 …咲夜でも勝てないかもね」

「……まさか…」

「ねぇ、咲夜。聞いてくれるかしら? ちょっとした、昔話なんだけど…
 むかしむかし、そう、咲夜は勿論、パチュリーもまだ私のもとに居なかった頃のお話…………………」















        
               “紅龍戦綺談”
















「初めまして、スカレーットデビル。お会いできて、光栄至極」

仰々しく頭を垂れる女妖。

「それにしても…
 悪名高き紅魔、レミリア・スカーレットが、こんな可愛らしいお嬢ちゃんだったとは…
 っと、失礼。あんたらは、見た目と年齢が一致しないんだっけ?」

何処かの国の民族衣装を思わせる出で立ち。
紅く流れる長髪。
引き締まった、それでいて、女としての魅力を隠そうともしない肉体。

美しいな。
素直にそう感じた。

「……私の部屋に来る前に、護衛の妖魔が500は居たはずだけど………?」

「あぁ。彼女達なら、疲れが溜まってるのか、みーんなグッスリ寝てるわよ?
 普段から、部下を相当こき使ってるのかしらね、あんたってば」

「…それだけ濃い血の匂いをまといながら、まったく、よく言うよ」

「あらら、ばれちゃったか。流石は吸血鬼、血の匂いには敏感ね」

おどけた風な物言い。気に食わない。

「で、お前の様な下妖が、貴族たる私に一体何の用なの?」

問いながら、強く睨みつける。

吸血鬼の眼は、それ自体が強い魔力を持った「魔眼」である。
並みの妖怪なら、間違いなく気を失うほどのプレッシャーのはずだ。

それを全く気にもしない、目の前の女妖。

「いえいえ、お嬢様。用と言うほど大した事でもございませんが…」

『貴族』『下妖』と言った言葉への当てつけなのか、途端に芝居ががった喋り方。

「お嬢様がこの辺りで最も強い、という話を耳にいたしまして…
 …この下妖、貴女様をツブしに参ったのでございます。」

「わざわざ満月の夜にか… 勇気と無謀の区別もつかないらしいね、お前の頭は」

「万全の相手をツブす事に意味があるんじゃない。そんな事も理解出来ないのかしら、お貴族様の頭は」

話し方が元に戻る。さっきの慇懃無礼に比べれば、こちらの方がまだマシだ。
もっとも、だからと言って、生かして帰してやるつもりは既に微塵も無いが。

「本来ならお前の様な雑魚、相手にしたりなどしないけど…


 私の下僕に手を出した報いは、受けてもらうわ。」

手にカードを持つ。そう、私を怒らせる、という罪を犯した者には、相応の罰を与えないと。

「お前ごときに、私の時間をいくらも使わせてやるつもりは無い。
 一瞬で、速やかに、あっけなく、消えてもらう。」

魔力が充実し、膨れ上がっていく。

「天罰「スターオブダビデ」!」

紅い光が、敵の周りを囲む。
青白い魔力の塊が、哀れな愚者に向かって突き進む。


轟音。

爆風。









そして、静寂。








「口ほどにも………」

だが





「何よ今の? 手抜きにしても酷過ぎるわね」

全くの無傷。

「それとも、それがあんたの本気?」

なるほど、流石に甘く見過ぎていたか。仮にも、500に及ぶ妖魔を蹴散らしてきた者なのだ。

ならば

「いいわ。見せてあげる、私の本気を」

先程とはまるで比較にならない、強大な魔力。

「塵となれ! 「紅色の幻想郷」ッ!!」

紅い衝撃に包まれる視界。
粉々に消し飛んでゆく、自分の部屋。

そして
















いつの間にか目の前に居る女妖!

「もらった」

床に亀裂が走る。
地面を震わせる程に、強く踏み込まれる脚。



悪寒。
来る、とてつもないのが。
まともに喰らえば…………!!



「ハッ!!!」

音速すら遅く感じる程の、正に『神速』の拳が放たれる。

轟音。

四散する体。
















「……浅かったか。
 やれやれ、それも夜魔の能力ってやつなの? ヤッカイね、コリャ」

危なかった。
あと一瞬、体を蝙蝠に変化させるのが遅れていたなら…

「にしても、あの間合い・タイミングで殺れなかったのは初めてよ。流石ねぇ」

「それは奇遇だわ。私も初めてよ。防御姿勢の整わない内に、あそこまでの間合いに踏み込まれたのは」


……何かがおかしい。

「紅色の幻想郷」が、回避絶対不可能な弾幕だとまでは思っていない。
とは言え、あれだけの弾幕の中を、あれだけの間合いまで、あれだけの速(早)さで接近するなど、
そんな馬鹿げた話、例え妹であっても不可能だ。しかも、全くの無傷で。



…もしや……

「そう言えば聞いてなかったわね、お前の能力」

「そう言えば言ってなかったわね、あたしの能力。

 あたしの能力は、『気を使う程度の能力』」

「円満な人間関係を築くのに、とても役立ちそうな能力ね」

「……『気を操る』、って言った方が解りやすいかしら」

「何処かの妖怪狐の様な能力ね、盗賊の」

「………かなり強引な漢字変換ね、それ。
 まぁ、でも、あんたら悪魔には解りにくいかな。『気』って。
 んー、強いて言うなら、魔力の素(もと)、みたいな物かしら? つまり……」

相手が何か話しているが、それは無視して、小さな光弾を創り、それを投げつける。
私の予想が正しければ……

「っと、人が話してる最中に危ないなぁ~」

敵へ到達する直前に、動きを止める光弾。

やはり。

「理解したみたいね。ほらっ。」

静止していた弾が、こちらに向かって返される。それを片手ではじく。
なるほど、そういう事か。

「たとえ私が創った魔力の弾であっても、私の体を離れた時点で、その直接の支配権は弱まる。
 お前は、そうした『支配者の下を離れた魔力』を、自由に操れるわけか」

「難しい言い方するわね。
 ま、要は、私には『気を帯びた』『飛び道具』は通用しない。そういう事よ。
 気弾の類は勿論、『気』を通したナイフを投げる、なんてのも無効。
 まぁ、普通のナイフを、普通に投げられたりしたら、ソレは操れないけどね。
 もっとも、そんな物でやられる程マヌケでもないけど」

「フン。さっきの「紅色の幻想郷」の時も、その能力で私の弾幕を無効化(シカト)して、
 真正面から突っ込んで来た、と」

道理で、接近するのが速(早)過ぎるわけだ。こいつは、弾避けなどといった事を全く考えずに、
ただ、私の元にまで直進して来たただけなのだから。

「そういう事。弾幕をはってナンボ、なんていうあんたは、絶対にあたしには勝てない。」








……そうか、それは困った。








「フ、フフフ……」



………余りにも困り過ぎて、





「ア―――ッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」

笑いが止まらない!

「な、何が可笑しいのよ!?」

何がだと? 決まっているだろう。

「どうやらお前は、大きな思い違いをしている様ね。よろしい、ならばレクチャーしてやろうか。
 吸血鬼の、真の恐ろしさというものを……!」

脚に、翼に、力を込める。
次の瞬間、相手の顔が眼前にまで迫る。もっとも今度は、私から近づいてやったのだけど。

「なっ!!?」

驚愕に見開かれる眼。

「素晴らしいわ、その表情。最高よ」

その顔に向け、無遠慮に拳を叩きつける。
耳をつんざく様な音と共に、地面に歪な穴が出来る。
















「……っ、危ない危ない。間一髪だったわ」

外したか。

「にしても、何ていう踏み込みの速さ、それに、何ていう……」

「『破壊力』、とでも言いたいのかい?」

「……ご名答。」

「『吸血鬼』とは『血を吸う』『鬼』の事。ただ血を吸うだけなら、そんなもの、虫けらと何ら変わりは無い。
 けれど、私は違う。私は『鬼』よ。そして、『鬼』の恐ろしさとは… 『鬼』の真の力とは……
 圧倒的な身体能力! そしてそれが生み出す、純粋な暴力よ!!」

再度、相手に飛びかかる。咄嗟にガードを固める女妖。大した反応の速さだ。だが

「っっぁああッ!?」

そのガードごと吹き飛ばす。

「…っくぅ…… 完全に防いだと思ったのに、ここまで吹っ飛ばされるなんて…
 打撃技に高出力の『気』を乗せて直接 打ち込んでいるのか…!!」

「他にも、こんな事だって出来るわよ?」

手の中に、紅く光る王神の槍が具現化する。

「なぁッ!!?」

「とどめよ! 神槍「スピア・ザ・グングニル」ッ!!」
















「……なるほど。
 これだけ長い得物となると、手から離していなくても、先の方まで完全には掌握出来ないみたいね」

「……そういう事よ。残念だったわね。 …もっとも、これまた間一髪だったけど…」

確実に敵を捉えたと思った光の槍は、しかし、その先端部分を霧散させられていた。

本来なら投擲用のスペルを、こいつの能力を考えて、妹と同じ様に「薙ぎ払う」使い方をしてみたが、
やれやれ、無駄な努力に終わったか。

「まあいい。次は外さない。」

一旦間合いを離し、次の攻撃態勢に移ろうとする。

















「………ふふふふ… ははははは…



 ア―――――――ハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!」

相対する女妖が、突然に、狂った様に笑い出す。

「恐怖の余り、気でもふれた?」

「違う違う! 嬉しさの余り、気がふれそうなのよ!

 あたしが今まで倒してきた“自称”最強どもは、皆、口ばかりの雑魚だった。
 でも、あんたは違う。あんたは強い。

 本当に!


 信じられないくらいに!!


 そんなあんたと戦える、倒せる。これ以上の喜びが、何処に在るって言うの!」

「…やれやれ、生粋のバトルマニアか。付き合いきれないわ」

「そんなつれない事、言わないでよぉ! 次で最後にするからさぁ……!!」

女妖の魔力――いや、『気』、と言った方が良いのか?――が、急激な勢いで膨張していく。
なるほど。
自身の『気』を操って上昇させ、更には、
大気中にあまねく含まれる魔力素=『気』を操って、自身の体に取り込んでいるのか。

「我が戦闘の型は『八極拳』! 『八極』とは即ち『大爆発』の事!
 牽制など必要なし! 目指すは常に! 相手の正面! 中心!

 一撃で全てを破壊する!


 故にッ! 我が全力の一撃はッ!



 絶対無敵ッ!!」

呪文の詠唱とは違う。
自身のテンションを高める為の一種の自己催眠……でもないな。
一つ一つの言葉に、強い『力』を感じる。
……『言霊(ホツマ)』、というやつか。つくづく面白い相手だ、こいつは。

極限まで膨れ上がった『気』は、いまや大地を震わせる程にまで大きくなっている。
全身全霊、最後の一撃による真っ向勝負か。本当にバカ正直な相手だ。








………本当に面白い。

「いいだろう。その勝負、のってやる!」

何十年ぶりだろう、こうして、掛け値なしの全力を出すのは。
妹を抑える時は、情というのだろうか、『殺しても良いくらい』の力は出せないから。

「…久しぶりに血がたぎる。嫌いじゃないねぇ、こういうの」

カードを掲げる。妹相手にも使った事の無い、体術系最強のスペルカード。

高らかに宣言する。夜魔達の王にして、誇り高き伯爵の名を……!



「夜王「ドラキュラクレイドル」ッ!!」



全身を紅い光が包み込む。

ふと相手を見やれば、その極大化した『気』は、まるで巨大な龍の様の如き形を成している。
どうやら、向こうも準備は万端の様だ。



「怒れる龍気に呑み込まれ、砕けろ、紅い悪魔!!」
「満ちる紅月を頭上に仰ぎ、堕ちろ、猛き龍星!!」



































「……だから最初に言ったろう? 私は不死身だって」

地面に大の字になって横たわる女妖を、見下ろしながら話す。

「……話の内容なんか…いちいち…覚えちゃないけど…… 多分、そんな事、言ってない……」

「…最初から2番目位に」

「いや……2番目にも3番目にも…それ以降にも言ってないってば……

 つーか、そもそも…

 日光に当たれば消滅する、他者の血を吸わなきゃ生きてけない、って、
 そんなの…全然……不死身でも何でも…ないじゃない……」

「よく喋る負け犬ね。それだけ話せる元気があるなら、とっとと立ち上がったら?」

「駄目… 冗談抜きで… 指一本動かす力も残ってない……」

「情けない。 まぁ、格の違いがハッキリした、というところね」

とは言いつつも、正直、こちらも立っているのが精一杯だ。魔力の残量は、ほぼ0。
ここまで追い込まれるとは、想像すらしていなかった。

「それにしてもまぁ……」

周囲を見回してみる。

「人の家を、随分ときれいさっぱりにしてくれたこと」

幾重にも張り巡らされた結界に守られた、妹の部屋とその周辺を除けば、館はほぼ完全に吹き飛んでしまっている。
上を向けば、紅く輝く満月を、直に眺める事が出来る。

…館全体にも、かなり高度な防御結界がはってあったはずなのだが。

館の修理自体は下僕に行わせるから、まぁ構わない。
が、その際にあれこれ指示を下すのは、結局のところ自分なのだ。
……まったく、頭が痛くなる。
こうした面倒な用を完璧にこなせる、有能な部下が欲しいものだ。
あと、より高度な防御結界をはる事の出来る術者も。

唯一 無傷で残った妹の部屋も、その結界のいくつかは消し飛んでいる。
今のこの状況で妹が出てきたら、止める術は何も無い。
もっとも、これだけの騒ぎがあったというのに、妹が出てくる気配は全く無い。
あいつの行動原理は、私にも理解しがたい時があるが、今回はそのおかげで助かった、という事か。

「この始末、どうつけてくれるのかしら?」

「半分以上は…あんたが… 吹き飛ばしたんだけどね……」

本当によく喋る負け犬だ。もっとも、吠えるまでの元気は残ってない様だが。

「さて、お前の処遇だけど…」

「あぁ、覚悟は出来てる… 煮るなり焼くなり…勝手にしてちょうだい……
 あ… 吸血鬼だから… 煮たり焼いたりは…しないか…… 死ぬまで血を吸うとか…そういうの…?」

「そうね、とりあえず血はいただくわ。とはいえ、死ぬまでは吸わない。私、少食だから。
 と言うより、はなから殺すつもりは無い。生きて帰さないつもりはあったけど。」

「………それ…同じ意味……」

「全然違うわ。
 『殺す』というのは、その場で死なせる、という事。
 『生きて帰さない』というのは、生きている間は帰さない、という事。



 …私はお前が気に入ったわ。

 私のものになりなさい。」

「…はっ 死んだ方が… マシ…」

「敗者は勝者の言う事をきく、そういうものでしょう?」

「…………」

「そう言えば聞いてなかったわね、お前の名前。」

「そう…言えば…… 言ってなかった…わね… あたしの名前……

 あたしの名前は…『紅美鈴』…
 『紅く』『美しき』『鈴』と…書いて… 『ホンメイリン』よ…」

「長くて覚えにくい。略して『中国』でいいわね。」

「…それ… 略して…じゃなく…て ……あ…だ名……」





こうして、中国は私の配下となった。

































「……と言うわけよ。随分と長く話し込んじゃったわね。

 …って思ったんだけど、そのわりには温かいままね、この紅茶」

「お話の途中、何度か時を止めて、淹れ直しておきました」

「流石は咲夜、気が利くわね」

「ありがとうございます。 ……それにしても…」

「信じられない、といった顔ね」

「あ、いえ。別にお嬢様を疑っているわけではないのですが…
 ただ、それだけの力を持っているなら、何故、中国はあんな…」

「私が禁じたからよ。中国のやり方は、幻想郷(ここ)には合わないから、って」

「……合わない?」

「争い事は、弾幕勝負で決着をつける。それが、規律の無い幻想郷に於ける、唯一のルールと言っていいものよ。
 勿論、私や咲夜、白玉楼の庭師、そしてあの小鬼の様に、体術も得意、という者は居るわ。
 それでも、最後に物を言うのは弾幕、でしょう?
 けれど、中国の能力は、それを根本から覆しかねない。だから、封印させたの」

「そう、ですか…」

「はい咲夜、これ」

「なんです、この紙切れ?」

「許可状よ。私の直筆。『中国が本気出してもいい』っていうね」

「え、ですが…」

「明日の決勝、もし中国の本気が見たいなら、それを中国に渡しなさい。
 最終的にどうするかは、咲夜、あなたが判断して」

「お嬢様……」













                




                [エピローグ]





「…ついに来たわね、この日が……」

「そーぅですよ、咲夜さん! 決勝戦ですよ、決勝戦! まさか、決勝戦で咲夜さんと戦えるなんて…
 今日は手加減抜きでいきますからねッ!」

“ちゅーごくっ!ちゅーごくっ!ちゅーごくっ!ちゅーごくっ!ちゅーごくっ!ちゅーごくっ!”

「って、予想はしてたけど、また中国コールですか… ちょっと、観客の皆さん! 私の名前は…」

“ちゅーごくっ!ちゅーごくっ!本みりんっ!ちゅーごくっ!ちゅーごくっ!みすずちんっ!”

「が、がお……」

「美鈴」

「咲夜さんまで酷いですよ、美鈴だなんて……
 
って、あれ、ハイ??」

「聞こえなかったの、紅美鈴!」

「あ、はっ、ハイッ!」

「今日は全力で来なさい」

「え、あ、はい。勿論……って、最初にも言った気がしますが…」

「そうじゃない。お嬢様と初めて出会った時に見せた、あなた本来のやり方で来い、と言ってるの」

「ッ…! お嬢様から聞いたんですか、あの時の話。
 まいったなぁ… あの頃は私も、バカだったと言うか、無茶だったと言うか、若さゆえの過ちというか…
 今から考えると、結構恥ずかしかったりするんですが……」

「そんな事はどうでもいい。私は、本気で来い、と言ってるの」

「いや、でも、アレはお嬢様に禁止されてるし…」

「お嬢様からの許可は、既に得ているわ。これを見なさい」

「………

 ……間違いなくお嬢様の字、ですね。」

「理解した? なら…」

「咲夜さん、本当にいいんですね…?
 こう言ってはなんですが、相手が咲夜さんでも、一方的な試合になるかも知れませんよ?」

「!……誰に向かって言ってるのかしら?

 私は十六夜 咲夜よ。
 時を操る紅魔館のメイド長にして、レミリア・スカーレット様の一の従者である、十六夜 咲夜よ!
 あなたの本気とやらが如何に強大であったとしても、決して負けはしない!!」

「そう、ですよね… 分かりました。
 では…


 行きますよッ!! 咲夜さんッッ!!!」

「来なさいッ!! 紅美鈴ッッ!!!

































 って、
















 何でイキナリ服を脱ぎだしてんのよーッ!?」

「え、だって、『乳対決』をするんでしょう?」

「ち、ちち……???」

「いやだから、胸の大きさ比べというか…」

「……ハイ?」

「いや、あの、私がお嬢様に初めて会った時の方法で、勝負しろって…」

「……ちょっと悪いんだけど、あなたとお嬢様の出会いについて、少し詳しく教えてもらえないかしら?」

「あ、はぁ、いいですけど。


 私、以前は用心棒の仕事をしてたんですけど、大ポカやってクビになっちゃいまして。
 で、新しい職を探してたところ、紅魔館門番募集の広告を見たんです。
 んで、面接に行って、そこで初めてお嬢様と出会ったんです。
 で、その面接ってのが、集団面接だったんですけど、お嬢様の
 『スペカ以外の、何か面白い芸が見たい』って鶴の一声で、一芸入試みたいな感じになっちゃいまして。
 最初は、演舞でもやろうかな、とか思ってたんですけど、たまたま、私の他にも拳法やってる人が居て、
 その人に先に演舞をやられちゃったんです。それがまた、すごく上手で。
 もともと私、演舞はそんなに得意でもないし、同じネタじゃ受からないだろうな~って、
 それでほら、お嬢様ってあの外見じゃないですか。私、胸には、まぁ、そこそこ自信が有りますし、
 ここは一つ、母性ってもので攻めよう! とか考えて、まぁ、なんですか、その、
 お嬢様にハグハグしてギュ~ッとして、パフパフしたりなんかして…
 いやぁ、今思い出すと、ホント恥ずかしいです。何考えてたんですかねぇ、あの頃の私は」

「………で、どうなったの…」

「速攻で半殺されました。 でもまぁ結局、『面白い』って理由で採用されて、で、今に至るわけです」

「……幻想郷に合わない、ってのは……?」

「あぁ、ほら、幻想郷(ここ)って、ロリペタツルーンと言うか、そんな感じのが多いじゃないですか。
 お嬢様や妹様からしてそうだし。
 だから、胸を使ってナンボ、ってのは、『幻想郷に合わない』って、お嬢様に禁止されたんですよ」

「……さんっざん引っ張っといて、こんなオチか… 全く、お嬢様は……」

「いやぁ、にしても、咲夜さんの方から『乳勝負』を挑まれるとは思いませんでしたよ。
 だって、咲夜さんって、噂じゃパッd



プチン



「な、何ですか? 今の、おだやかな心をもった宇宙人が、はげしい怒りによって目覚めた時みたいな音は!?」

「噂じゃ パッド?…  私のことか…



 私のことか――――――っ!!!!!」

「な、なななななななな!?」

「てめーはわたしを怒らせた…」

「あ、あの、気のせいでしょうか。咲夜さんの周りに『ドドドドドド』とかの書き文字が見える気が…
 そ、それに咲夜さんの背後に、パイプをつけたムキムキマッチョマン型のロボット?の幽霊が……
 てか、それ以前に、咲夜さんの髪って、金髪でしたっけ………!?」

「中国が『とっておき』を見せてくれたんだから、私も『とっておき』を見せないと失礼よね?



 そう、





 とっておきの、

 ダメ押しというヤツだッ!」

「け、結構です~~ッ!」

「いくぞッ!



       泥悪「ロ ー ド ロ ー ラ ー」だッ!」



「結局今回もこーゆーオチですかぁ!?」

「ウリイイイイヤアアアッー ぶっつぶれよォォッ」

「い゛や゛~~~ッ!!」





[[[[not to be continued⇒×

































============================================================================================



                 [オマケ]


「試合はどうなったの、レミィ?」

「あら、珍しいわね、パチェが図書館から出てくるなんて。今日は体調がいいのかしら」

「私は、体が弱いから図書館にこもっているわけではないわ」

「そうね、貴方の場合、図書館にこもってるから体が弱いのだし。



 試合の方は、まぁ何と言うか、咲夜が目覚めたわ、色々とアレなものに」

「………

 …人を騙す最良の方法は、嘘をつかない事。
 けれども、ある特定の方向に人を誤解させるには、嘘は非常に便利である。そういう場合…」

「…多くの真実の中に、ほんの少しの嘘を交えるのが効果的である。

 だったかしらね?
 以前、暇潰しであなたに教えてもらった知識が、こんなところで役立つとは思わなかったわ」

「…今回レミィが咲夜に吹き込んだ話は、
 多くの嘘の中に、ほんの少しの真実を交えていた様にしか思えないわ」

「大差ないでしょう? 実際、成功しているんだし」

「…それにしても…… 中国に何か恨みでもあるの?」

「何を言うのかしら、この知識人は。私は中国の事、大好きよ?」

「だったら…」

「正確には、『弄られる』中国が好きなの。それと、『キレて暴走する』咲夜もね」

「…………」

「私はそんな中国と咲夜のためだったら  なァんでもするよ!」

「鬼ね… 貴方」

「何を今更… 私は500年前からずっと、吸血『鬼』、よ(はぁと)」
こんにちは、もしくはこんばんは。大根大蛇(だいこんおろち)と申します。
「おはようございます」の人はいなさそう。なんとなくですが。

まずは言い訳。最初はね、フツーに真面目に、「格好良い中国」を書こうとは思ってたんです。
イヤホントマジデ。
でも、書いてる内に、「やっぱ中国っつったらネタっしょ!」という神の声が聞こえて…


だが私は謝らない!(サクヤさんの上司風)


うそディス。スンマセンでした…

前のSSに続き、コレも最萌2中国支援用の作品を加筆修正したものです。
本文を書いてる時点では、まさか中国が優勝して、その上 萃夢想にまで出場決定するなんて、
そんなのネタ以外にありえねー!!!とか思ってました。

ともかく、こんな阿呆なSSを読んでくださった方、マジでアリガトーございましたッッ!!
大根大蛇
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コメント



0.1500簡易評価
8.100SETH削除
色々な仕込みにもニヤリってきたんですが
貴君のセンスのいい名前が一番おもしろかったw
11.60FC3S削除
バトルシーンでのクレイジーな中国はキモカッコ良くてシビレましたw
でも後半のネタシーンがちと長くて全体的にアンバランスな気も…
後半をもうちょっと短めに絞ってくれれば良かったと思います。