Coolier - 新生・東方創想話

歯車が回るとき

2010/10/14 00:17:09
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注:オリキャラが出てきます。またオリキャラ目線での物語の進行となりますので苦手な方はバックを推奨します。

うす暗い廃墟で1人の男性が椅子に座っている。その周りにいるのはたまたま遊びに来た子供が数人。この男性はいつからいたのだろうか見たところ年の割には少しやせ細っている。

「少し昔話をさせてくれないか?」

男性が口を開く。

「君たちは妖怪を信じるかい?」

有無をいう前に先に男性の口が動き始める。当然妖怪など幻想の生き物だ、いるはずがない。

「いや信じられないならそれでいい。ただ、今からする話は実際にあった話なんだ」

あれはそう、とても暑い夏の日だった。歳はたしか君たちと同じくらいだ。夕方になり子供はも
う帰る時間、親も友達もいない僕は独り川辺を歩いていた。そこで出会ったんだ、河童と呼ばれ
る妖怪の少女と・・・


その川は夕日に照らされて輝きとても綺麗だった。
僕はその美しさに見とれていた。今までそんなこと思ったこともないのにこの日だけは違ってい
た。
気づいたら僕は川の中へと足を踏み入れていた。
すると川の流れが突然強くなった。突然の出来事に戸惑い、その場でおどおどしてしまった。
その時だ、目の前で不自然な波ができていた。よく見るとその波間から人影が見える。誰か流さ
れたのだろうか?僕はその人影に手を伸ばし掴むと一気に引き上げた。引き上げると同時に僕の
体は後ろへ倒れ頭を打ち、激痛が走る。

「だ、大丈夫かい!?」

女の子の声がする。痛みで閉じてしまった目をうっすらと開けるとそこには緑の髪のツインテー
ルの女の子がいた。

(か、かわいい・・・)

こうして僕の意識は少しずつ暗闇へと落ちていった。

感覚がまた戻ってくる。どれくらいの時がたったのだろうか、辺りはもう暗くなっている。頭は
まだ痛いがそれと同時にひんやりとしている。

「布・・・?」

ひんやりしているところに手を触れてみると濡れた布が頭に巻いてあった。誰かが手当てしてく
れたのだろうか。

「あっ、目が覚めたんだね!よかった~なかなか起きないから死んでしまったのかと思ったよ」

声がする方に首を向けるとそこにはさっきの女の子、彼女が手当てしてくれたらしい。

「余り動かない方がいいよ。さっきまで頭から出血していたんだ、しばらくこのままでいた方が
いい」

布をもった手を離すと真っ赤な自分の血で染まった手が出てきた。暗くて見えにくいのが救いか
まだ落ち着いていられる。昼間だったらどうなっていたことか。

「た、助けてくれたの?」
「うん、ちょっと驚かそうと思ったらまさかこんなことになるなんて思わなかったからね」
「驚かす?ひょっとしてあの川の変化は君が?」
「そう、ボクはにとり。河童という妖怪さ」

にとりと呼ばれる少女(妖怪?)が手を伸ばす。僕は一瞬戸惑った。妖怪とは人を喰らう化け物だ
と教えられてきたがにとりを見る限りそんなもの一切感じられない。もしそうなら僕は今頃食べ
られているだろう。僕はにとりが差し出した手を静かに握った。

『一目惚れ』、当時の僕は『友達』という言葉の方があっているかもしれない。けど、確かに僕
は河童の少女、にとりに心を奪われたんだ。けど、この時僕たちは知らなかったんだ。この手と
手がこれから起きる悲しい物語の歯車をつないでしまったことにね・・・

それから僕たちは毎日川辺で過ごすようになった。

「さぁ今日はどこにいるのかな~」

毎回にとりは川の中に隠れて僕を驚かそうとする。いつもやられてばかりも悔しいので今日こそ
は先に見つけ出して驚かせてやるのだ。まずは周りをよく見る、川の中ばかりかと思ったら時々
近くの草むらに隠れている時もある。しかし見つからない。僕は川の中に顔を入れてにとりを探
す。耳に聞こえるのは静かな川の流れ、目に見えるは透き通った水中の世界。けどにとりの姿が
いない。息が苦しくなってきたので顔を上げる。

「ぷはぁ~、一体どこにいるんだろう」

呼吸を整えてもう一度川の中に顔を入れようとした時・・・

ドン!

いきなり後ろから押され、僕は思いっきり顔から川の中に飛び込んでしまった。後ろから笑い声
が聞こえる、そうにとりだ。

「あははは!それじゃあボクを見つけることはできないよ」
「くっそ~今日こそ見つかると思ったのに!」

これが僕たちの挨拶のようなものになっていた。

「今日もすっごいことがあったんだよ!」
「へぇ~それは楽しみだなぁ。けどボクも負けないくらいすごいことがあったんだよ!」

こうして僕たちはお互いに初めての驚きを持ち寄っては笑いあっていた。

しかし『妖怪』と『人間』、それをよしとしない人が僕の村には少なくなかった。
ある日、僕はいつもどうりにとりと遊んで村に帰ってきた。いつもと違って少し静けさが漂って
いる。道端にいる人も僕を見て震えている。一体僕が何をしたというのだろう。
その答えはすぐにわかった。僕の家の前に村の大人たちが仁王立ちしていた。

「おい、お前!最近妖怪と一緒にいるそうだな!」

いきなり胸ぐらをつかまれ零距離で怒鳴られる。そして地面へ突き放した。お腹から内臓とかが
できそうな衝撃、僕は咳き込んだ。

「おめぇ、親もいねぇでずっと1人でいるからおかしいと思ったが、まさか妖怪じゃないだろうな
!」
「妖怪とな!?おお~怖い怖い」

僕に味方がいないことをいいことに勝手な妄想まで付け加える始末。それを囃し立てる他の人た
ち。

「にとりは悪い妖怪じゃない!人も食べないし、毎日僕の知らない世界を教えてくれた、最高の
友達なんだ!」

僕は叫んだ、声が枯れるまで叫んだ。初めてで最高の友達。妖怪と仲良くして何が悪い。にとり
はみんなが知っている妖怪とは違うんだ。

「そうだよ、たしかにボクは妖怪だけど決して人は食べない」

聞き覚えのある声、暗闇から出てくる少女・・・にとりだ。

「にとり!」
「あぁん?あれがその妖怪だぁ?まだ子供じゃないか」
「小さいからって妖怪を甘く見ないでもらいたいね」

にとりの背中のバッグから手が飛び出し僕の周りにいる大人たちを倒していく。

「大丈夫?」
「うんなんとか・・・」

にとりの肩を借りて立ち上がる。立っているのがやっとなのに、にとりがいるというだけで力が
湧いてくる。

「この野郎!調子に乗るんじゃねえ!」

大人たちが襲いかかってくる。僕たちは戦った、ボロボロになるまで戦った。しかし多勢に無勢
、二人では大勢の大人に抗うことはできなかった。

「やっと捕まえたぞ小僧」

僕の腕が1人の大人に捕まる。必死にもがいたが体力はもう限界だった。

「にとり・・・逃げて・・・」
「大丈夫、すぐにボクが助けて・・・」
「もういいんだ。僕は大丈夫だから・・・」
「でもこのままじゃ・・・!」
「安心してまた明日いつもの場所で会おう。今度はすっごい出来事話すからさ」

にとりが立ち止まる。にとりが捕まってしまえば殺されてしまうのは必然だろう。なら僕がつか
まってしまえばにとりは助かる。僕もさすがに殺されるということはないだろう。

「・・・わかったまた明日・・・明日がダメなら明後日、それがだめでもいつまでも・・・いつ
までも待っているから!」

にとりの姿が周りの地形と同化し、見えなくなった。その地面には一粒の水滴が落ちた。

その後僕は村の外に出ることを禁じられた。行動するにも監視が付きまとった。けど僕は諦めな
かった、もう一度出会える日を夢見て何度も抗ってみせた。こうして季節が過ぎゆくうちに僕は
知らず知らずに大人になっていったんだ。あれは本当に夏の日の通り雨のように短い時間だった
けど、それでも僕にとっては永遠のような時だった。

「どうだったかな?ちょっとした妖怪の少女との話は?そうだね、さすがにつまらなかったかな
。さぁもう周りも暗くなってきたから帰った方がいい」

子供たちは帰っていった。僕は今でも彼女を探している。村からようやく脱出したが僕はもう動
く力を失っていた。

次の日廃墟には誰もいなかった。子供たちはこう言う。にとりという妖怪の少女に出会えたんだ
と・・・

もう一度差し伸べあった手は今度は幸せな物語の歯車を回し始めたのかもしれない。
「もう大丈夫、君にはボクがいる。それじゃあ始めようか。もういっぱい話したいことがあってどれから話そうか迷っちゃうよ」


まずはごめんなさい。
これで4作目です。
今回はKarakuri Watercolorsを元に自分なりの解釈で制作しました。
オリキャラの目線によって進行しているのでにとりの活躍が少なくなってしまいました。もっと修正できたんじゃないだろうか・・・
ヤナ
https://twitter.com/yanaseagl
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コメント



0.150簡易評価
10.60爆撃削除
>にとりの背中のバッグから手が飛び出し僕の周りにいる大人たちを倒していく。
ごめんなさい。さすがに吹き出しました。どう考えても突っ込みどころかと。
温厚な妖怪だと言いたかったはずなのに、どうして自ら危害を加えていくのか……。
にとりと出会って、素朴な恋をするというテーマは好きでした。
11.60幻想削除
終わり方がいいですね。
ただ、にとりが武器も持ってない人間に対して遅れをとる姿が想像できなかったです。
おびえる姿は簡単に想像できるのがにとりですが、貴方のにとりは少し違うような気がしたんで。