Coolier - 新生・東方創想話

再会

2010/09/28 23:15:35
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星熊勇儀は旧都の脇にある自宅の屋根に登り、地霊殿を見ていた。

「あー、やれやれ」
ここから見たところでどうしようも無いと思いつつも、地霊殿を見る。
それで飽きる事は無かったが、どうにも無駄な時間を過ごしている気がしたので、
「ここでうじうじした所で、どうしようも無い、か」
と腰を上げ、屋根から降りると自宅に引っこむ事にした。



部屋に入ると、いつの間にか客が来ていた。
「よう、お邪魔しているよ」
片手を上げつつ、もう片方の手は酒を手放さず挨拶した、同族の伊吹萃香が迎える。
「何だ、萃香か」

いつも唐突に現れる友人に挨拶すると下駄を脱ぎ、畳に座り胡坐をかく。

「また地霊殿を見てたのかい、飽きないねー」
萃香は酒を呷るように飲みながら、以前と変わらない習慣を続けている友人に少しばかり呆れた。
「覗きとは趣味が悪いな」
「別に覗かなくたって、あんな目立つところで溜め息混じりにじっと向こうを見てりゃね」
そう言って地霊殿の方を指差す。

「そうか、そうだな」
「そうそう。で、まだ未練たらたらなのかい?」
頭を掻きながら勇儀は力なく笑って答える。
「未練、だなぁ」
力の勇儀も形無しだぁね、と萃香は楽しそうに言う。

「そんなに会いたいなら会いに行きゃあ済む話じゃないか」
「そう言うわけにも行かないさ。選んだのはあいつだし、選ばせたのは私だ。それに今更、昔の誼を頼んで会いに行ったところで、相手には良い迷惑だろう」
「昔と今じゃ違うって言ったって、古い友人に会うくらいに気軽に構えられないのかい」
「そう割り切る事が私には出来ないのさ」
勧められた杯を受けて、くいっと一気に飲み干すが、それで勇儀の憂鬱な気は払えなかった。

ふむ、と萃香は立ち上がる。
「二人で楽しく飲もうかと思ったけど、そんな気分じゃないようだし出直すとするよ」
「ああ、済まない。埋め合わせはいずれするからさ」
「気長に待つさ」
そう言い残すと、萃香は霧になって消えた。

一人残された勇儀は、寂しく呟く。
「全く、未練だね」



「あー、ありゃあ重症だねー」
萃香は霧になって消えた後も遠巻きにこっそりと見ていたが、勇儀は憂鬱を払う気配の欠片も感じさせない。

「さて、ここは一つ骨を折ってみようかな」
そう言うと萃香はまた霧になり、何処かへと消えて行った。



・・・



地霊殿の一室、古明地さとりはペットの猫たちと戯れていた。
「はぁ、猫は良いですね」

地底の猫屋敷と呼ばれるだけあって、地霊殿の飼い猫の数は多い。
さとりが拾って来る以外にも、飼うに飼えなくなった事情のある場所から引き取ったり、地霊殿に住む猫がまた猫を連れて来たりして、少なく見積もっても三桁には達している。

さとりはそんな猫の物量にものを言わせた「多数の猫に伸し掛かられて圧死寸前まで戯れ」作戦を実行していた。
寝そべったさとりの背中に第一陣として3×5匹の猫が乗り、更にその上に第二陣が2×4匹、更に上に2×2匹、そしてその頂点に更に1匹。

猫に伸し掛かられながら、さとりは満足な顔を浮かべる。
「完璧ですね、一分の隙も無い布陣です」
背中に掛かる心地よい圧力を感じ、今の状況を満喫していた。

「邪魔するよー」
突然目の前に霧が出たかと思うと、それは徐々に小さい鬼の形を取って行った。
「あら、萃香さんじゃないですか」
「お久しぶり」
「地上に出て行って以来ですか、いえ、この前の異変で会っていましたね」

「ああ、その節はどうも。ところで少し相談があるんだけど、取り込み中だったかい」
積み上げられた猫を見ながら言う。
「いえ、このままでも用件は聞けますから」
さとりは猫に伸し掛かられたまま、サードアイだけを萃香に向けて心を読み取る。
なかなか状況としてはシュールだが、さとりの動物好きは地底に知れているので萃香も深くは突っ込まなかった。

街での風聞からして、
曰く、ペットの食事を豪勢にしたせいで自分の食べるものがペットよりも粗末になってしまった。
曰く、それが原因で妹に家出されて渋々改善した。
曰く、目に入れても痛くないと本当にペットをサードアイに入れようとした。
曰く、最近は見るもの全てがペットに見えて来ている。
と噂されるくらい末期好きらしい。
まぁ地底の奴らは皆どこか変わった所を持ってるからね、と萃香は納得する事にした。



事情を読み終えたさとりは、素直に感想を漏らす。
「ふむ、勇儀が元気が無い、しかも地霊殿を遠くからずっと眺める生活を続けていると。状況は掴めましたが、勇儀は頑固なところがあるので会いに来てはくれないでしょうね」
「そう、そこで何とか一肌脱いで貰えないかなと思ってさ」
この通り、と両手を合わせてさとりに頭を下げる。

それに対してさとりは軽い口調で答えた。
「向こうからは会いに来てくれない、ならばこちらから会いに行くだけですよ」
「お、話が早いね。頼めるかい」
「ええ、久しぶりに顔を合わせておくのも悪くありませんから、今からでも」
割とあっさりと話が付いたので、萃香は安堵した。

「しかし勇儀の奴もこんな可愛い子を放っておくなんてね」
さとりは同意する。
「全くです、どれだけ寂しい思いをしたか」
「ま、会いに行くのなら、その辺も言ってやると良いよ」



・・・



「お邪魔しますよ、勇儀」
さとりはペットを連れて勇儀の家を訪ねていた。
「お、お前」
さとりたちが入って来るのを見た勇儀は、驚いた様子で立ち上がりさとりの方を見る。

「元気、だったか」
「はい、そちらも変わりなさそうで」

「済まなかったな、ずっと会いに行けなくて」
「いいえ、あなたの性格だからきっと会いに来ては貰えないと覚悟していました。だから私の方から会いに行くつもりでしたけど、何となくあの時の顔が許して貰えなかったような気がして」
「馬鹿を言うな。。お前がここを出て地霊殿に行くと言った時は本当に驚いたけど、ここを出て行った事なんか怒っていないさ」
「だってあの時、好きにしろとぶっきらぼうに言うんですもの」
「そう言う性格だと、知っているだろうに」
「そうですね、でも一言『いつでも戻って来い』くらい言っても良いのに、いえ、昔の事を言っても仕方無いですね」
「そうだな」

それから今までお互いに何をしていたか、どんな事があったか、他愛も無い会話を続け時間は過ぎて行った。



「あの、そろそろ戻らないといけませんので」
「そうか」
「また、ここに来ても良いですか?」
「好きにしろと言っている」
「……はい」

さとりはペットを連れて出て行った。



「良いのかい、あんな再会で」
萃香がいつの間にか勇儀の隣にいる。
「どうにも不器用で、あれ以上は言葉が見つからないんだ」
「やれやれ、どんな言葉だって待つ身にしたら嬉しいんだ、何でも良いから今から言って来たらどうだい、また後悔する前にさ」
ドンと背中を押すと、決心が付いたのか勇儀は外に駆け出し、まだ見える後姿に向かって叫んだ。

「本当に、本当に待っているからな!いつでも来いよ!」
さとりは振り返り頷きながらゆっくりと歩き、旧都の中へと消えて行った。



・・・



数日後、地霊殿でさとりは変わらず猫と戯れていた。

そのうちの一匹がさとりに話し掛ける。
「はあ、なるほど、ですが一人で大丈夫ですか?まぁあそこはあなたもよく知っている場所ですし、大丈夫とは思いますが」
にゃんと鳴いて大丈夫と答える。
「ええ、では行ってらっしゃい。元のご主人によろしくね」

猫は嬉しそうにさとりに軽く礼を言って、自分の生まれ育った場所へ向かい駆け出した。

-完-
そりゃ勇儀さんも恋人が出来たからそっちで暮らすと言われたらびっくりするでしょう。
さとり様が通訳して。


ベタ落ちです。勇儀も動物好きだったらと言う妄想でこんな風になりました。
地霊殿が猫屋敷って設定はMUSIC ROOMに書かれていたので、そこから引用。
いつもの一人称ではないので、少し変かも知れません。

ああ、それにしても猫は可愛いですね。
猫額
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コメント



0.410簡易評価
3.100奇声を発する程度の能力削除
ああ、やっぱりw
猫は良いです!!猫可愛いよ猫!!
6.100名前が無い程度の能力削除
最後にあるぇ~?
と思ったよ!
ぬこかい!
9.80名前が無い程度の能力削除
いいな、これw
さらりと読めて、オチが心地いいです。
12.無評価猫額削除
3 > 文中でさとり様も萃香も言ってますけど、可愛いですよね、猫。

7 > 猫なんです。

10 > 日常の中のシュールさ、みたいな感じで書いてみました。
二人が話してる場面を想像しながら、視線を外すと猫が居るという。