Coolier - 新生・東方創想話

絵本「さいきょーになりたいチルノ」

2010/09/14 03:19:12
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ある日のことでした、チルノはいつものように魔理沙に弾幕勝負を挑んだのです。
そして、何回やっても負けていた魔理沙に初めて勝ったのでした。
チルノの喜びようといったらそれはそれは凄いものでして、大きくふんぞり返ってからいつもの口癖を出します。

「あたいったらさいきょーね!」
「そういえばさぁ、お前っていつもそれ言ってるけど何で最強を目指してるんだ?」
「何でって……あれ、なんでだっけ?」

とても大切なことだったはずなのに思い出せません。
考えてみれば、この事を聞かれたのは初めてなのです。
周りの人達はチルノの言葉を子供の言うことだと深くは考えません。
それは仲間も同じで、なんで"さいきょー”にこだわるかチルノに聞く友達もいないのでした。
だからチルノはその事をすっかり忘れてしまっているのです。
気がつけば目の前から魔理沙はいなくなってました、きっと今頃は赤い館の魔女のところから本を盗んでいる頃でしょう。

「えーっと、うーん、どうしてなんだっけ?」

うんうん唸っても、ぎゅうぎゅう考えても思い出すことはできません。
それでも大事なことだったという事だけは覚えています。
冬が近づき、葉っぱが寂しいことになった森の中でチルノは必死に考えました。
それでも答えが出てきません、いったい何故でしょう。

「おはようチルノちゃん」

前から出てきてチルノに声を書けるのはお友達の大妖精。
いつもニコニコと優しく笑っているチルノの大事な大事なお友達でした。
今日も笑顔のままと来るのですが、チルノの様子が変なことにすぐに気が付きます。
いつもの陽気な友人が、珍しく真剣な表情をしているのだから。

「何かあったの?」

チルノは心配そうな表情をする友人の存在にやっと気が付きました。

「ねえ大ちゃん、あたいって何でさいきょーになりたいんだっけ?」
「う~ん、それはちょっと分かんないな。チルノちゃん初めて会った時からずっと言ってるしね」

お友達も答えは知らなかったみたいです。
けれどもチルノはとっておきのアイディアを思いつきました。
パッと明るい表情になって大妖精に自分の閃きを教えます。

「じゃあさ、幻想郷のみんなに聞けば誰か一人くらいは知ってるよね!」

じゃあ行ってくる、と大妖精の返事を聞かずにチルノは飛び出していきます。
多分誰も知らないんじゃないかな、と大妖精はつぶやきましたが、木枯らしがびゅーびゅーと言葉を掻き消してしまいました。




「何であたいってさいきょーになりたいんだっけ?」





彼女の友達の宵闇の妖怪や虫の王様、夜雀は「知らない」と口を揃えて言います。


先生なら知ってるかもと尋ねた人里の教師も「すまないが、初対面の君のことは分からないな」と答えました。


竹林にすんでいる天才は「この薬を飲めば思い出せるかもしれないわ」と言いましたが、彼女の弟子が止めるので結局ダメ。


博麗神社の巫女のところに行きましたが「知ってるわけ無いじゃない」と素っ気ない返事が来るだけ。


気が進まないけどライバルである蛙の神様を頼りに守矢神社を訪れましたが「悪意とかそういうのを一切抜きで本当に知らないんだ」と謝られてしまいました。


神様の紹介ではるばる行ってみた地霊殿の覚も「忘れてるものまでは読めないわ」と匙を投げてしまいます。


幻想郷には沢山の人間や妖怪に神様、そして妖精がいたのですが、誰もチルノが最強になりたい理由を知らないのでした。



一日中飛び回っていてチルノはもうくたくたです。
辺りはすっかり暗くなっていて、空にはお月様がぽっかりと浮かびます。
知りたかったことを誰も知らなくてチルノはとっても悲しい気持ちになりました。
彼女の青い瞳からはポロポロと涙がこぼれてしまいました。
わんわんと声をあげて泣き出してしまいました。

すると、上を向きながら泣いている彼女の額に何か冷たいものが落ちてくるのです。
なんだろう。
触ってみるとそれは水の雫でした。
いいえ、違います。
これは幻想郷で今年最初に降った雪です。
チラリ、チラリと小さいカケラが空から落ちてくるのです。





「どうしたの? そんなしょげた顔して。元気に笑ってる方があなたらしくていいわ」





この雪は冬の始まりを告げるものでした。
チルノのお友達のレティ・ホワイトロックの目覚めを告げる合図だったのです。
久しぶりに出会った友達にチルノは駆け出して抱きつきます。
鼻水や涙で腰の辺りを濡らす友人の頭をレティは優しく撫でてあげました。
しばらくの間チルノはレティを抱きしめています。
そして涙が引っ込んだ後、誰も答えてくれなかったあの質問をするのです。

「ねぇレティ。何であたいってさいきょーになりたいんだっけ?」

この質問に、レティは昔のことを思い出しました。
ずっと昔、チルノとレティが初めて出会った冬が終わりを迎える時のことです。
冬の妖怪であるレティは春になると、次の冬まで眠ってしまいます。
その事をチルノにも分かるよう丁寧に説明すると、彼女はこう言いました。

『じゃああたいが幻想郷中を寒くして、ずっと冬が続くほどさいきょーになれば、レティとずっと一緒にいれるんだよね?』

レティはその時微笑みました、とても嬉しそうに微笑んだのです。
この言葉をチルノは頑張って覚えていようと秋まで頑張ったのですが、次の冬に出会ったときには既にこのことは忘れてしまいました。
"さいきょー”を目指さなくてはいけないことは覚えているのに、その理由は分からないのです。
だけど今まではずっとそんなことを気にせず、チルノがその事を疑問に思ったのはこれが初めてのこと。
レティはゆっくりと口を開いて、おどけながら言うのでした。

「ふふふ、それはあなたがさいきょーになったら教えてあげる」

レティはこの小さな友人が自分への思いでがんじがらめになるのを見たくありませんでした。
変に気負って"最強”を目指すよりも、無邪気に"さいきょー”を目指して欲しかったのです。

「だからこれからも頑張ってさいきょーを目指しなさい」





こうして、今年も冬を終え無事に春を迎えました。
次の冬を待つレティは微笑みながら眠ります。
そしてチルノは今日も"さいきょー”を目指して頑張るのでした。


「あたいったらさいきょーね!」




おしまい
どうも、お読みいただきありがとうございました
このネタってもしかしたら他にやった人もいるかビクビクしております
別の作品の執筆が終わらなくて気分転換にちょっと違う感じで書いてみました
似非絵本をモチーフにしたのでこの作品はシンプルイズベストを心がけております




実はタイトルを『地上最強を目指して何が悪い!!! 妖精として生まれ女として生まれたからには 誰だって一度は地上最強を志すッ』
ってしようと思ったのはないしょの話
通りすがりの〇〇
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コメント



0.1250簡易評価
9.90名前が無い程度の能力削除
チルノらしいなあ。
10.100名前が無い程度の能力削除
なかなかいいチルノ。つか魔理沙に勝ったのかww。さにげなくすげぇ。

あとがきふいた
14.100名前が無い程度の能力削除
きっとチルノはいつかサイキョーになってくれますね。
15.100名前が無い程度の能力削除
あたいったらさいきょーね!
16.100名前が無い程度の能力削除
シンプルがいい!