Coolier - 新生・東方創想話

悲しみの絆

2010/09/02 23:46:03
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「楽しそうに橋を渡って行くなんて、妬ましいわね」

いつものように、彼女は自分の口癖をぼやいた。
彼女―水橋パルスィは橋の上で地上に行く者がいないように監視をし、
地下に行くものには警告を、地下に行かざるをえない者には案内をしていた。

しかし、以前の異変の後、地上と地下の交流が始まり、
今ではたくさんのヒトがこの橋を渡っている。
だからこそ、以前のようなことは出来てない。
今では監視者としての仕事は無い、
と言っても過言ではないかもしれない。

それでも、パルスィが橋の上に立っているのは、
彼女が橋姫だからだろう。
彼女自身、自分の居場所はここだと思っている。

喧騒なところは嫌いだし、私自身、皆から嫌われている。
だから、私は皆から離れ、ここに住んでいたほうがいい。

嫉妬心を操る妖怪として、避けることの出来ない宿命なのだろう。
そう思って、諦めていた。

私を蔑む奴らなど嫌いだ、
と思っているからでもあるが。

「昼間っから騒がしいわね、旧都は。妬ましいことこの上ないわ」

パルスィはいつものように、呪詛のような口癖と溜息を吐いて、
いつものように、橋に佇んでいた。










「暇ですね……」

彼女はそう呟いた。
ここは地霊殿の一室。
ヒトのいない自分の家の中で、一人寂しくお茶を啜っていた。

彼女―古明地さとりは、地霊殿の主である。
ここに住むヒトは、自分を含め4人しかいない。
しかも、妹であるこいしは、無意識を操る能力を使ってどこかへ行ってしまい、
お燐やお空は、地上に遊びに行ってしまっている。

よって、今地霊殿に居るのは、さとりとペットたちだけである。

「暇ですね……」

よっぽど暇なのか、この一言しか出てこない。

この地霊殿に来る物好きは、そうそういるはずがないことは、
さとり自身がよく知っている。

自分は、相手の心を読める覚り妖怪だ。
好き好んでここに来る変人がいるハズがない。
しかも、外に行ったら行ったで、皆の心の中では、
自身に対する罵詈雑言ばかり……。
聞きたくもないこんな声を聞くくらいなら、
家の中に居たほうがよっぽどマシだ。

そんなこんなで、さとりは、自室で暇を持て余していた。










ドンドンドン……。
扉を叩く音がする。

「ちょっと、待ってください」

そう言って、私は玄関に向かった。
扉を開けると、そこには一本角の鬼―星熊勇儀が立っていた。

「今日、旧都で宴会をやるんだが、来ないか?」

勇儀はこうくりだした。

(正直、行きたくないのですが……)

私はあまりヒトに近づきたくない、と思っている。
心の中の罵詈雑言など、耳にタコができるくらい聞いている。
そんな場所に行きたいなんて、思うハズがない。
まぁ、酔っ払いの思考回路はわからないし、
恥ずかしい妄想を叩きつけられるのが嫌、
という理由でもあるのだが。

「私は遠慮しますよ。
 私が行っても、皆が嫌がるだけでしょうから」

私はこう言った。

「たまには宴会にでたほうがいいと思うんだがなぁ。
 なぁに、酔っ払いは誰が来ようと気にしやしないさ」

勇儀はそう切り返してきた。

(行っても楽しめることなんてほとんどないのですが……)

心の中で呟く。
折角ここまで来たヒトなのだ。
不快にさせるようなことを言うのは悪いだろう。

「どうせ暇なんだろ?」

(まぁ、暇ですけどね……)

言ってしまうと拉致されてしまうので言えない……。
言わなくても、暇なのを認めているようなものだが……。
かといって、嘘が嫌いな鬼に嘘をつくわけにはいかない。

(既に八方塞がり、でしょうか……)

沈黙が、暗に暇だけど行きたくない、
ということを示していることに気付いてくれることを願った。

「たまには、ぱぁっとやって楽しもう!なぁ?」

やっぱり気付いてくれなかった。
遠慮する方法が思いつかない……。
これはもう、行かざるをえないだろう。
以前、宴会に誘われたときも、
どんどん押されて断れなかったことがあったような気がする。

私は仕方なく準備を始め、宴会に行くことにした。











「お~い、パルスィ~」

私を呼ぶ声がする。

「私に声をかけるなんて暇なのね、暇なのが妬ましい」

いつも通りにこの言葉を吐く。

「パルスィだって暇してるじゃん。ねぇ」

こいつ―土蜘蛛の黒谷ヤマメはそう言って
隣にいる桶―釣瓶落としのキスメに同意を求めた。
キスメも首を縦に振っている。
事実、暇なのだが……。

「暇じゃないわ。ここに来る煩い奴を追い払うのが大変なの。
 あなたたちみたいなヒトをね」

煩いので追い払うために言う。
いつも通りでまったく変わりがない。

「いつもひどいなぁ。
 私は友達に声をかけてるだけなのに」

相変わらず勝手なやつだ。

「私はあなたたちと友達になった覚えはないわ」

友達だとは思っていない。
仲間だとは思ってるけど。

「友達だよ~。いつも顔合わせてお話してるじゃん。ねぇ」

また、ヤマメはキスメに同意を求めた。
キスメはまた、首を縦に振る。

「あなたたちが勝手に話し掛けてきてるだけでしょ」

「まぁ、そうだけどさぁ~。
 でもいい加減、パルスィも私たちのこと、
 友達だと思ってくれてもいいんじゃない?」

こいつはいつも勝手なことを言う。
私は、友達など、とっくの昔に諦めた。
こいつも、私みたいな嫉妬狂いの妖怪と友達なんかにならないほうが、
絶対幸せになるに決まっている。

「私はパルスィのこと、結構気に入ってるんだけどなぁ。キスメはどお?」

キスメはまた、首を縦に振る。

「私はあなたたちのことが嫌いよ。
 皆に好き好まれて、妬ましいことこの上ないわ」

「ぶぅ~。なんでパルスィは友達になってくれないのさ~。
 友達がいたほうが、絶対、ぜ~ったい楽しいのに。ねぇ、キスメ」

キスメがまた首を縦に振っている。

「私は、他人といると疲れるの。
 だから、他人である友達なんていらない」

事実、他人と一緒に長い時間いるのは疲れるのだ。
他人への妬ましさばかりが募っていくから……。
友達だったらどうなのか、なんていうのは知らないけど。

それに、嫉妬狂いの友人なんていないほうが、
こいつらにとっても幸せだろう。
そう思っているのに……。

こいつらは、毎日のようにここに訪れては私に話し掛ける。
煩いっていって、追い払っているのに……。

「友達といると楽しいのにな……。
 そうだ!今日、旧都で宴会があるから、一緒に行こうよ。
 友達と一緒にいると楽しいってこと、教えてあげるからさ」

宴会なんて行きたくない。
ただ煩く騒いでるだけじゃない。
しかもその真ん中にわざわざ行くなんて。

「嫌よ。私はいかな」

「よ~し、しゅっぱ~つ」

言いきる前に、無理矢理連れていかれてしまった。
ヤマメもキスメも楽しそうにしている後ろで
私は暗く、面倒臭いというような顔をしていた。










私は旧都へ連れてこられた。
旧都では、夕方からの宴会に向けて準備をしていた。

相変わらず、すれ違う妖怪たちは私に白い目を向けてくる。
心の中でも、私に対する罵詈雑言ばかり……。

(やっぱり来るんじゃなかったかな……)

私はそう思いつつも、勇儀の後ろについて歩いていく。
勇儀はどんどん先に進んでいく。

「思いのほか、準備が出来ているな」

「そうですね……」

「やっぱり嫌だったか?」

「ええ、まぁ。慣れてますけどね」

そうは言うものの、やっぱり心の奥では悲しい気分になっていた。
生まれたときから持っている能力のせいで、いつまでも蔑まれていく。
罵られ、白い目で見られるのに耐えられるのは、
そういう気質を持ったヒトだけだろう。
私は、そんな気質ではない。

いくら心の奥で悲しんでいても、表面上は強がってみせる。
それは、地霊殿の主としてのプライドかなにかか。
彼女は決して、公衆の面前で弱い自分を見せることはなかった。
プライベートな場でも、弱い自分を見せることはほとんどないが。

「ん?あれはヤマメと、キスメと……、パルスィか?珍しいな」

勇儀はそう言った。
それにつられ前を見ると、ヤマメとキスメと、
2人に連れられたパルスィの姿があった。










ズルズルと旧都の方へ連れていかれる。
私を拉致している2人はとても楽しそうにしている。
……。
心底、妬ましく感じる……。

「離しなさいよ」

怒気を少しだけ含めて、
私を拉致する2人―ヤマメとキスメに話し掛ける。

「離したら逃げちゃうでしょ~。
 旧都に着くまでは絶対に離さないよ~」

楽しそうに返してくる。
ほんとに妬ましい。

少しずつ旧都に近づいていく。
旧都に近づいていくと、思いのほか、宴会の準備が出来ていた。

旧都に近づくにつれ、多くの妖怪とすれ違う。
その妖怪たちの目が痛い。
そして、……ウザい……。
ただひたすらに、嫌悪の感情しか出てこない。
まるでゴミを見るかのような目線……。
そして、そんな目線が、ヤマメやキスメにすら向いてるのが、
なによりも……ウザかった……ムカついた。
そして、こんなことになってしまう原因を作っている自分が、
……嫌いだった……。

「パルスィ、やっぱり気にしてる?この目線?」

「あなたこそどうなのよ?」

「別に~。大して気にしてないよ。
 でも、この目線がパルスィに向けられてるのは、ちょっと嫌だな」

「なんであなたがそんなこと言うのよ。
 私がこいつらにどうみられようと、あなたには関係がないでしょ」

「関係なくないよ。
 パルスィがいいヒトだっていうのは、私がよく知ってるもん。
 それを知らない皆が、こんな目を向けてくるのは、
 癪にさわるというかなんというか」

「私は別にいいヒトじゃないわ。
 嫉妬狂いの妖怪が、いいヒトなわけないじゃない」

「そんなことないよ。
 パルスィはとっても優しいよ」

「どこを見ればやさ」

「あっ!勇儀だ!お~い」

またしても、言いきる前に割り込まれた。
最後まで聞いて欲しいんだけど、と思いつつ、
ヤマメの声につられて前の方をみると、
一本角の鬼―星熊勇儀と、覚り妖怪―古明地さとりの姿があった。










「パルスィじゃないか!
 珍しいな、こんな所に来るなんて!」

楽しげに勇儀は話しかけた。

「連れてこられただけよ!
 こんな所、来たくもなかったわ!」

パルスィは、少し怒気を含めて言った。

「いいじゃん別に~。絶対楽しいって」

「宴会は楽しいぞ~」

「あなたたちにとって楽しいだけでしょ。
 私にとって、煩い以外のなんでもないわ」

嫌がってるみたいですね……。
パルスィは、心底嫌そうな顔をしている。
顔に出ているのだから、心を読まなくてもこれくらいは分かる。

「まぁまぁ。折角来たんですし、宴会を楽しみましょう?」

私は、パルスィを説得してみる。
折角来たのだ。楽しまなければ損だろう。

「楽しめるわけないでしょ!
 こんな煩い奴がひしめく宴会会場のど真ん中で!」

火に油を注いでしまったようだ。

「ねぇ、パルスィ。
 絶対、ぜ~ったい楽しいからさ、パルスィも一緒に楽しも?」

ヤマメはパルスィに言う。

ヤマメはパルスィのことを気にしているようですね。
私は、ヤマメの心の中を覗いて、そう思った。
ヤマメは、いつも橋の上で虚空を眺めるパルスィに、
楽しんでもらいたいと思っている。

しかし、私はヤマメの心を読んでも、どうすればいいのか分からなかった。

「私なんか誘ってないで、あなたたちだけで楽しめばい」

ドーーン!!

暗い空に咲く花火の音は、見事にパルスィの言葉を遮った。
私より、よっぽどフォローがうまい。
パルスィは、ちょうど言葉を遮られ、諦めたように、
そして、その光に見惚れるように、暗い空を眺めた。

どうやら、この花火は宴会開始の合図らしい。
皆、楽しそうにお酒を飲んだりし始めている。
既に顔を赤らめ、楽しんでいる妖怪もいる。
近くにある屋台にも、妖怪たちがひしめきあっている。

暗い地底世界の空には、暗い空を彩る綺麗な火の花がいくつも咲き輝いていった。










街はどんどん賑やかになっていく。
空には無数の火の花が咲いている。

(花火大会じゃないの……)

私は、心の中でそう思った。

「確かに、花火大会ですね」

「心の呟きに反応しないでほしいんだけど」

「とっても綺麗ですね」

(スルーしないでほしいんだけど……)

「こんなに綺麗なものがみられるなら、
 たまには外に出てみるのも、いいものですね……」

「そう……」

あいまいな返事をしておく。
確かに、花火は綺麗だけど、それでも街にくることは憚られる。
今は皆、花火やら酒にやらに現を抜かしているせいか、
私に向けられる白い目はない。
それだけは、マシだった。
出来れば、もっと静かに、花火の音を聴きたかった。

気付くと、さっきまでいたハズの勇儀とヤマメ、キスメの姿が無くなっていた。

「あら?3人ともいなくなってますね」

「そうね」

「折角ですし、一緒に屋台をまわりませんか?」

「別に、いいけど……」

勝手に帰れば、そのうち面倒なことになるだろう。
なら、適当にまわるのも悪くはない。
皆、酒や花火に現を抜かしているのだから……。

私は、さとりの後について、屋台をまわることにした。










屋台が道の両脇に、所狭しと並んでいる。
すべての店が、とても混雑している。

花火やお酒で、私たちに気付く妖怪はほとんどいない。

(いつもこんななら、苦労はしないのですが……)

私はそう思った。
パルスィの心を覗いてみれば、彼女も、似たようなことを考えていた。

前から、私とパルスィは似た者どうしだと思っていた。
私たちは、行く先々で、皆に嫌われる、避けられる、蔑まれる……。
こんなことを思われるのが、こんな思いで白い目を向けられるのが、
……とても嫌だった……。

だから私は、家に引きこもった。
だから彼女は、街から離れて生活しているのだろう。
私は、パルスィとは似た者どうしだと思っている。
パルスィはどう思っているのだろうか?

「なんか、楽しいですね。
 こういう所をまわるのも」

「煩くて、楽しいなんて感想出て来ないわよ」

「そうですか?
 私は大して気になりませんけど」

「私は気になるのよ。
 迷惑なのに気付かない、能天気な頭が妬ましいわ」

パルスィはいつものように、その言葉を言う。
パルスィらしいな、って私は思う。

「折角の屋台ですし、何か買いませんか?」

「私はなんでもいいわ」

「じゃあ、私が何か買ってきますよ」

「そう。なら、私は静かな所でも探しているわ」

彼女はそういうと、静かなところを求めて歩いていった。










私は、静かな所を探す。
やっぱり騒がしい所は嫌いだ。
私に、白い目を向けてくる奴がいないだけ、まだマシだけど。
騒がしい妖怪たちの間をすり抜けていく。

(花火の音がもっと大きくなればいいのに……)

そう思うほど、妖怪たちの雑談が、雑踏が、妬ましかった。
自分たちだけ、楽しそうにしているのが妬ましかった。

「あ、パルスィじゃん」

振り向くと、そこには無意識を操る妖怪―古明地こいしがいた。

「こいしじゃない。何か用なの?」

「別に。そういうわけじゃないけど。
 珍しいね、こんな所にいるなんて」

「ヤマメとキスメに連れて来られただけよ」

「そうなんだ。じゃあ、折角だし楽しんだら?
 とっても暗い顔してるよ?」

「いつもこんなもんよ」

「そうだね~。確かにいつも、そんな顔してる」

ちょっと傷つく。
別に気にしないけど。

「あっ!なんか面白そうなのやってる。
 パルスィも行かない?」

「私は遠慮するわ」

「そっか。んじゃ、またね」

そういって、こいしは妖怪たちの中に消えていく。
あんなに無邪気に楽しめるこいしが妬ましい。

そう思いつつ、私は休める場所を探して歩いていった。










私は、屋台の陳列している道を歩いている。

(さて、何を買いましょうか……)

焼きそば、たこ焼き、かき氷……。
目移りしてしまうほどたくさんある。

(やっぱり、宴会じゃないですね……)

宴会というより、お祭り、と言った方がいいような品揃えだ。
まぁ私としては、こっちのほうがいいとは思いますが。

私が悩んでいると、見知った顔が近づいてくる。
目の前には、地上に遊びに行っていたハズのお燐とお空が歩いていた。

「お燐。お空。ちょうどよかった」

「さとり様。珍しいですね、こんな所にいるなんて。」

お燐が答える。

「勇儀に連れて来られましてね。
 ところで、ここの屋台で何かおすすめの食べ物とかありませんか?」

私はお燐に尋ねる。

「そうですね……。
 あそこの八目鰻の蒲焼きとかおいしいですよ」

そう言って、お燐が指を指す。

「綿菓子もおいしいですよ~」

お空はそう言っている。

「そうですか。ありがとう。
 2人とも、楽しんでくださいね」

「さとり様も楽しんでください」

お燐とお空は、そう言うと、妖怪たちの中に消えていった。

私は、八目鰻の蒲焼きとお酒を持って、パルスィのもとに向かった。










私は広場の端の所に、まわりに比べれば静かなところを見つけた。
そこにあったベンチに座って、物思いに耽る。

さとりは、自分に似ている。
妖怪たちに嫌われる、蔑まれる。
たぶん、さとりは自分を嫌う妖怪たちを嫌っているだろう。
そう思った。

私のこの悲しさを分かってくれるのは、さとりくらい……。
だから私は、さとりと一緒に屋台をまわったのだろうか……。

誰も、私たちに白い目を向けなかったあのとき、
さとりはどう思っていたのだろうか……。

さとりは、自分を嫌い、蔑む奴らを、どう思っているのだろうか……。

さとりは、私のことを、どう思っているのだろうか……。
私は、さとりのことを、どう思っているのだろうか……。

他人の気持ちは分からない。
自分の気持ちすら分からない……。

……。
ふっ。
らしくもない……。

気付けば、さとりのことばかり……。
私は、さとりと、友達にでもなりたいと思っているのだろうか……。
でも……。
私に、友達なんて、出来るハズがない。
作る、べきじゃ、ない……。
自分が苦しむだけだから。
相手が苦しむだけだから。
自分が悲しむだけだから。
相手が悲しむだけだから。

見上げると、暗い地底世界の空には、未だにたくさんの火の花が咲き乱れていた。
この綺麗さには、妬ましさすら感じなかった。
ただひたすらに、綺麗だ、としか感じない。
それ以外を感じさせないくらい、火の花は、綺麗に咲き誇っていた。

気付けば、私はただ、花火を眺めているだけになっていた。










広場の真ん中には妖怪たちが集まっている。
しかし、広場の端の方はほとんど誰もいない。
少し騒がしいけど、他の所よりかは静かだ。
まるでそこだけ、広場とは違う空間であるかのように……。

パルスィは、ベンチに座っていた。
まるで虚空を眺めているかのような深緑の瞳は、
綺麗に咲き乱れる花火を映しているようだった。
彼女の心は、暗い空に咲き誇る花火で一杯だった。

「買ってきましたよ」

「結構おいしそうね」

「八目鰻は妖怪たちの間で、結構評判のようですよ」

「うん、おいしい」

「聞いてます?」

「聞いてるわよ。さとりは食べないの?」

「もちろん、食べますよ」

パルスィは、とてもおいしそうに八目鰻の蒲焼きを食べている。
私も、八目鰻の蒲焼きを食べた。

「おいしい……」

自然とこの言葉が漏れる。
それくらい、この八目鰻の蒲焼きはおいしい。
八目鰻の蒲焼きを食べながら、2人で静かにお酒を飲み始める。

八目鰻の蒲焼きを食べ終わり、お酒を飲みながら、
私たちは、暗い空に咲き続ける火の花を眺める。
やっぱり綺麗だ。
皆、この花火に心奪われ誰も私たちのことなど気付いていない。
これがどれだけありがたいことか……。

「花火はいいですね」

「……」

パルスィは答えない。
彼女の心の中は、嫌悪の感情で満たされていた。
まわりを見渡すと、こちらを見ている妖怪がいた。
そいつは、私たちに白い目を向けている。

酔っ払っていない奴がいたんだな、と思いつつ、
私も、パルスィと同じ感情を持った。

私がその妖怪のトラウマを蒸し返す為に、
その妖怪に向けて第三の目を向けると、
そいつは怖気づいて逃げだした。

隣に座っているパルスィを見る。
パルスィは無表情だった。

パルスィの心の中を読む。
心の中は、その表情とは違って、
嫌悪と悲しみが混ざったような色をしている……。
いや、混ざっているからこそ、あんな表情だったのかもしれない……。

やっぱり、パルスィは私に似ている。
そう思った。

彼女も、自身を蔑む奴を嫌っている。

でも、少しだけ違う……。
とても優しい……。
自分のことだけじゃない。
自分と一緒にいる仲間にまで、
白い目を向けさせてしまうことを嫌っている。
その原因になる自分を、……嫌っている……。

「優しいんですね、パルスィは……」

「嫉妬狂いが優しいわけないでしょ」

パルスィは言う。

(今日だけで2度目ね。どこが優しいんだか……)

「2度目、ですか。
 やっぱりあなたは優しいんですよ」

「どうだか」

パルスィはそう言う。
でも、他人のことをここまで思えるヒトが、優しくないわけがない。

私は、彼女と最初に会ったときを思い出す。

彼女は私の能力を妬んだ。
私は、それに、とても嫌悪した。
でも、彼女はただ自分の能力で、私の能力を妬んだだけだった。
そして、彼女は、私を蔑んだりはしなかった。
そんな感情を、私に向けたことはなかった……。

彼女は、私のこの嫌われる能力を蔑んだりしない。
彼女は、今まで何度会おうとも、私を嫌いはしなかった。
ずっと、普通に、接してくれた。

そして、パルスィは私と同じ苦しみを背負っている。
自分にしか分からない……。
そう、思っていたこの気持ちを、理解してくれるヒトがいた。

だから、私は……。
あなたを好きになった。
あなたとずっと……、一緒に居たい……。
そう、思うようになった。

それは、今も変わらない。
いや、今日、一緒にいて、
さらに強く、そう願うようになった。

その願いを叶えるために、……心を、決める……。
共に歩んで行ける、一生涯の、親友を得るために……。

「……。
 ねぇ、パルスィ……」

心の中に不安が渦巻き始める。

拒絶されたらどうしよう。
嫌われてしまったらどうしよう。

そんな気持ちのせいか、
涙が出そうになる。
声が震えてしまう。

「私は、他者から、ずっと嫌われ、蔑まれ続けてきた……。
 でも、あなたは、私のことを……、嫌わないで……、いてくれた。
 だから……」

もし、拒絶されたら……。
そう思うと、恐怖で……、悲しみで……、涙が溢れそうになる……。

それでも、弱い自分を見せるまいと強がろうとする。
必死に、涙を堪える。
必死に、言葉を続ける。

「だから……、私と……、
 と、友達に……、なって、くれませんか?」

私がそう言うと、パルスィは顔を背けた。

やっぱり、嫌なのだろうか……。
私が気が付かなかっただけで、嫌われていたのだろうか……。
そんな思いが心の中を駆け巡る。

永遠に、誰からも疎まれ続けるのだろうか……。
永遠に、誰からも蔑まれ続けるのだろうか……。
永遠に、誰からも嫌われ続けるのだろうか……。
永遠に、誰からも好かれないのだろうか……。
永遠に、誰からも愛されないのだろうか……。
永遠に……。
……。

暗く思考が沈んでいく。
もう、生きていく気力すら失いそうだった。

「……。
 いい、よ……。
 と、友達に、なっても」

パルスィのその言葉が、私の心に沁み込んでいく……。
今までの悲しさがすべて溢れ出ていくかのように、頬を伝って涙が落ちていく。
とめようと思っても、とめどなく溢れてきてとまらない。

「あ、ありがとう……。パルスィ……」

泣きながら、パルスィに微笑みかけると、顔を背けてしまった。
その顔は、お酒のせいか、恥ずかしさのせいかわからなかったけど、
赤く、紅く、染まっていた……。










宴会がおわったあと、2人がベンチに座って沿い寝ているのを、ヤマメとキスメが見つけた。
2人の寝顔は、とてもうれしそうな顔でした。
はじめまして、朔盈です。
この作品を読んでいただいて、ありがとうございます。

初めてこんな文章書きました。
(読書感想文とか、ちゃんと作った憶えがありません)
自信はないです。
駄文だったらすいません。
読みにくいとかあったらすいません。

クーリエにある作品を読んでいて、自分も書いてみたいな、
と思って書いてみた作品です。
あと、さとパルが少ないと思っていたから、でもあるんですが。

次作を書くかは、わからないのですが、アドバイスや批判などをくだされば、
次作を書いたら、それに反映させる努力をするつもりでいます。
(頭が悪いので、反映させられるかどうか怪しいのですが……)

人生初で、文章構成能力がない、と思っている人間が書いた文章なので
変なところとか稚拙なところとか、たくさんあるとは思います。
それでも、ここまで読んでいただいたみなさんには、感謝いたします。
本当にありがとうございました。

追伸
4番のコメントで、警告不要の旨のコメントをいただいたので、警告部分を削除しました。
投稿後の修正、申し訳ありません。
朔盈
http://fluck2011.web.fc2.com/index.html
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コメント



0.1560簡易評価
3.80名前が無い程度の能力削除
良かったです。駄文ではないですし、もっと自信を持ってもいいのではないでしょうか。
まだ伸びる余地は大いにある、とは思うのですが、私の力量ではそれが分からない……。
力になれなくて申し訳ない。
4.無評価名前が無い程度の能力削除
3です。一言追加。
冒頭の警告は不要だと思います。
16.80山の賢者削除
たしかにこの二人のカプはもっとあってもいい。
文章力に関しても、そんなに難があるわけではないかと。
強いて挙げるなら改行を多用しすぎるよりは地の文を増やしたほうがいいとは思います、個人的に。
22.80名前が無い程度の能力削除
いいと思うよ
23.80名前が無い程度の能力削除
>>共に歩んで行ける、一生涯の、親友を得るために
これが大好きです。
ありきたりな関係かもしれませんが。
さとり様の前を歩いて引っ張るのではなく、後ろに付き従うのでもない。
対等に、ただ隣に立っている。
そんな関係が似合うふたりだと思いました。

交互の一人称というのも諸刃になりますが、区切りがわかりやすかったかと
27.無評価朔盈削除
コメントありがとうございます。
こんなに読んでいただいて、うれしいです。
以下、コメレス

>>3さん
力になれないなんてことはないですよ。
コメントをいただけるだけで、力になります。

>>山の賢者さん
貴重な意見、ありがとうございます。
出来るだけ、参考にさせていただきます。

>>22さん
コメントありがとう

>>23さん
セリフを気に入ってもらえるなんてうれしいです。
交互の一人称って諸刃だったのか……。初めて知ったぜ……。

みなさん、本当にありがとうございました。
28.90Admiral削除
ヒャッハー、さとパルだー!
とても良いお話でした。
30.70koo削除
やった!さとパルだ!これでかつる!

しっかり、キャラクターの動きをまとめているな、と感じました。
ただ、この場面の描写が必要なのか、というような部分も若干見受けられたと思います。
書いた場面が、作品の芯に対して本当に必要なものなのか、必要なものにできているかを検討してみるのも良いと思います。
32.70名前が無い程度の能力削除
なかなかよかったです
38.100名前が無い程度の能力削除
これはいいさとパル