Coolier - 新生・東方創想話

霧雨バーガー  ~星の鼓動は愛~

2010/09/01 10:54:12
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「ありゃ!??」

魔理沙は素っ頓狂な声を上げた。

夜の闇が深い。瘴気が立ち込める魔の森では虫の音や草木のかすれる音だけが静かに響いている。

そのなかで、霧雨邸だけにぽつんと明かりが灯されていた。

ぺろり。

魔理沙は指につけたペーストをもう一度舐めてみた。

「んーーー!?なんかうまいぞ・・?」

彼女は壺のなかのドロドロの液体をまじまじと見つめた。

彼女は得意の魔法の研究の為、今日も森で取れたキノコを煮込んでいたところだ。実験用に開いた土間のスペースに、5,6基の壺を据えいつも数種類の異なった配合でキノコを煮込む。

その中の一つの壺の中身を味見してみたところ、いつもと全然異なる味覚が彼女の脳を刺激したのだ。

(アンタ・・いつか死ぬわよ?)

味見をするのは魔理沙の独特の研究方法である。

霊夢なんかにいわせると危険極まりないことだそうだか、口の中というのは体の中で最も神経が鋭敏な箇所だ。微細な調合を必要とする魔法関係の実験には最も適した手段だと思う。

農業を生業とする者、林業をする者などは、耕地の土や、木々の皮を味見するという。

壺の中身の内容物がどの程度溶け込んでいるか、どの程度の濃さか、味はどうか。自身の舌で直接味わうことで、何よりも正確にその感覚を計ることが出来るのだ。

まあ、時に数分気を失ってしまっている時もあるが・。

「これは・たしか・・。」

魔理沙はメモをぺらぺらと捲った。

この壺はタマネギを植物の油で炒め、その中に豆をすりつぶした物を加え細切れにしたキノコと、数種の森の植物とで煮込んだものだ。

確か火をかけたのが昨日の夜だから、まる一昼夜煮込んでいたことになる。

「まあ・・よくよく考えれば料理の具材みたいな材料だぜ。」

魔法のことだけにとらわれていると他の事を見失ってしまう。

以前は出来上がったものがよくよく考えればカレーと同じ材料だったということがあった。もう結局ごはんにかけて食べたのだが。

「でも失敗っぽいってことには変わりないぜ・・」

魔理沙は脱力したようにイスにもたれた。はあと大きなため息を漏らす。料理をしているわけではないのだ、おいしいものが出来ても話しにならない。

ぐ~~~

不意に魔理沙のおなかが鳴った。

そういえば今日は一日魔法の研究だった。お昼にアリスの差し入れクッキーを摘んだが、それ以来何かを口にした記憶が無い。

「・・・。」

魔理沙は先ほどの壺を見た。

米は・・確か焚いていない筈だ。彼女は何気なくテーブルの上に目線を移した。

紙袋が見える。そういえば昨日アリスがクッキーと一緒に持ってきたものだ。

「パンか・・。」

作業をしている間でも食事が取れるようにアリスが気を利かしたものだ。パンなどほとんど食べたことは無いが、この際なんでもいい。

魔理沙はがさがさと紙袋を漁った。トースト状の焼き跡のついたパンが出てきた。

台所の冷蔵用の木箱から肉を出してナイフで切り、パンにはさむ。

先ほどの壺の前に戻った。

「ん~~~。」

火を止めた壺からは、なんともいえないいいにおいが漂ってきていた。

木匙に適量をとり、肉の上にそのペーストを乗せる様にかけていく。その上から更にパンをぽんとのせる。サンドイッチにしようというのだ。

ぱく。

魔理沙は隣の壺の中身を確認しながら無造作にそれを口に頬張った。

「こ・・これはーーーーーー!!!!」

夜の静寂を破って霧雨邸からものずごい叫びがこだましていた。






「・・どうだ?」

魔理沙はぐいと身を乗り出した。

テーブルを挟んで、その前でアリス・マーガロイドの小さな口が動いている。

「いけそうか・?」

魔理沙は更に突っ込む。アリスの周りでは人形たちが胸に手をあててその様を見守っていた。

「・・・。」

アリスはガタンと立ち上がった。

彼女は無表情でそのまま魔理沙の横を通りすぎると、家の入り口のドアからガチャリと外へでていく。

「お・・おい・・アリス・・?」

アリスの突然の行動に戸惑いながらも、魔理沙はあわてて後を追った。


「WAAAAAAAANNAAAAAABEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEーーーーーーーー!!!!!!!!!」


庭に出たアリスの周りで七色の爆発が起った。その閃光の中心でアリスは両手を突き上げ叫んでいる。

「うおお!!??」

魔理沙はあまりの眩しさに手をかざした。

「うーまーいーぞーーーー!!」

アリスは光の中でひとしきり叫んだ後、何事も無かったように家の中に戻り、さっき座っていたイスに腰掛け、何事も無かったように紅茶を
すすりはじめた。

「イインジャナイ?」

「へ・・?」

「まあまあだと思うわ。」

あまりの出来事に魔理沙は唖然としていた。が、どうやら味は旨いらしい。

魔理沙は昨日偶然にも出来てしまったペーストソースをアリスにも味見してもらおうと、サンドイッチにして持ってきたのだ。

「――――――――――――・・ふーん・・。めずわしいわね。」

食べてみてくれと差し出されたバスケットを見て、アリスは30分ほど固まった。魔理沙も30分待った。

ようやく震える声でクールに反応したアリスは、激しく震える手でサンドイッチを口にしたのだ。

「う・・旨いんだな?ホントに旨いん・・だな?」

「まあ、おいしいわ。いいと思うわ。」

アリスの紅茶はばっちゃばっちゃと波うっていた。手がヤバイほど震えている。

「そうか!アリスがそう言ってくれるなら何とかなりそうだな!」

魔理沙はなんだか得心したようにウンウンと頷いている。ただアリスにはそんな魔理沙を見ている心の余裕はなかった。

「なあアリス。ひとつ相談なんだが。」

「なにかしら。」

アリスの紅茶は大半がテーブルにこぼれていた。それがドレスの胸や膝にも縦横に飛び散っている。それでもアリスの表情はクールであった。

「わたしと店を持ってくれないか?」

アリスは紅茶を爆発とともに吹き出した。


『バーガー』という料理の噂が幻想郷に広がったのはそれから間もなくのことだった。


「魔理沙のお店でしょ?知ってるけど・。」

博麗霊夢は神社の縁側でつぶやいた。魔理沙がアリスと早苗を連れて3人で店をやるということは前から聞いていたことだ。

なんでも新しい料理を開発したと言うのだが、それが実際どんなものかは見たことは無い。

「これから見に行ってみようかと思うんだけど。どうかしら?」

目の前には十六夜咲夜の柔らかな表情があった。仕事の間では見られない心を許した相手にしか、咲夜はこういう顔をしない。

「相変わらず研究熱心よね~。」

「料理の世界は無限の宇宙よ。」

咲夜は、里に新しい店や、評判の料理などがあると欠かさずその味を研究しに行く。そして必ずと言っていいほどその味を自分のものにしてしまう。駄菓子屋のお菓子から高級料亭まで、その領域は実に幅広い。

「でも・?並ぶんでしょ?めんどくさくない?」

「並ぶお店なら並んでみないと本当の価値は分からないわ。」

魔理沙の店は、人里のはずれにある。古い洋食屋を改装したらしいのだ。最初は特におおっぴらにやるでもなく適当に営業していたらしいのだが、いつしか郷中に響き渡るほどの評判の店になっていた。

「なんでも今までに食べたことの無いような料理らしいわ。」

「あ~それ前にも誰かがいってたなあ・。」

その噂はついには郷の境界のはずれにある博麗神社まで達していた。

「でも・だめだめ。私はパス。」

「どうして?」

「そんな外食なんて贅沢な。贅沢よ。うん。バチが当たるわ。」

「ご馳走するけど?」

「何をしている!!ぼやぼやしていると戦場に乗り遅れるぞ!!」

霊夢は縁側で仁王立ちになっていた。

「やっぱそこなんだ。」

咲夜は全く動じることはない。完全で瀟洒なメイドは何処にいようと完全で瀟洒なメイドなのだ。



店は思ったより小さかったが、お洒落な外観をしていた。

霊夢は咲夜と列に並んで待ったが、30分ほどで店内に入ることが出来た。

「いらっしゃいませ~!!2名様ですね!!」

店に入るなり彼女らを出迎えたのは早苗である。早苗は片目を瞑って見せて「ありがとうございます。来てくれて」と笑顔を見せる。

お洒落な店内にはおいしそうなにおいが充満していた。奥からはジュージューという何かを焼く音が聞こえてくる。2人は店の端の白い丸テーブルに案内された。

ごくりと霊夢の喉が鳴った。

「盛況ね。」

咲夜は例の柔和な笑顔で早苗に話しかける。

「えへへ。私はこんなに流行るなんて思っても無かったんですけど。なんだか・・ねえ。」

店内ではエプロン姿のアリスの人形達が、スイスイと料理を運んでいく。

「「バーガー」て聞いたけど。それはどんな料理なの?」

咲夜は早速早苗に質問した。

「ええ、もともとは外の世界の食べ物なんです。魔理沙さんがすごくおいしいソースを開発して、アリスさんがパンを焼いて。原型が出来かけた時にたまたま私がアリスさんの家に立ち寄って、『それならこういう料理がありますよ』て教えてあげたんですよ。」

「それで3人ですることになったわけ。」

咲夜はこの妙な3人の組み合わせに納得した。向かいの霊夢もそんな顔をしている。

「まあサンドイッチのような物と思っていただければ・・。」

そう言って早苗はメニューを渡す。咲夜は目を通してみたが、メニューと言っても『ハンバーガー』の1品しかない。あとはサイドメニューと飲み物があるだけだ。

まさに一本槍で勝負ということか。魔理沙らしい。

「ポテトはいかがですか!?」

早苗が言うにはポテトを勧めるのが、バーガー店の作法だという。

変わった作法もある物だと思いながら、咲夜はバーガーと炭酸水を注文した。霊夢はバーガーとポテトとミックスジュースだ。

料理は10分ほどで運ばれてきた。

「ん~?」

霊夢は微妙な声をあげた。

皿の上を見るとまるーいコッペパンを裏返したようなパンの上にレタスやきゅうりの野菜が乗っている。それが二つ皿の上に並んでいて、片方のパンにはスライスチーズが一枚ペロンとのっかっていた。それとは別にソースが入った小カップがあるだけだ。

「?これがバーガーなの?」

咲夜は料理を運んできた上海に訪ねる。

「いや、まだだぜ。」

キッチンの方から声がした。

見るとコック服姿の魔理沙が小さな鍋を片手にこっちに歩いてきている。鍋はジュージューと鳴り、食欲をそそるいいにおいが一気に伝わってきた。

「魔理沙。」

魔理沙は白いコック服に丈の長いエプロンをしていた。ブロンドの髪は邪魔にならないように、一括りにされていてその姿が良く似合っていた。

ちょっとかっこいいかも。。

「はは!良く来たな。咲夜、霊夢。」

魔理沙は小鍋を片手に鼻をこすっている。その人懐っこい笑顔に咲夜は柔らかな笑みを返した。霊夢はガタンと立ち上がって言う。

「べ・・別にアンタのために来てあげたわけじゃないんだからね!!」

「ツ・・ツンデレ・!?・・じゃ無い!??」

そりゃそうだ。タダメシだから来たんだ。

「まあぐだぐだしゃべってても料理が冷めちまうからな。こいつを挟んで食べてくれ。」

魔理沙はそういうと、咲夜と霊夢のパンの野菜の上にジュージューと音をたている別の焼き野菜を載せていく。

鮮やかなグリーンの野菜が次々に乗っていく。

「おお?おおお?」

霊夢は立ち上がったまま上ずった声を上げる。最後に大きな輪切りの焼きトマトがじゅうじゅう音をたてて乗せられる。

「こいつがメインだ。」

魔理沙はそう言ってフライ返しで、ハンバーグのような肉をどんと乗せた。その上から小カップのソースを乗せる様に盛り、スライスチーズをその上からかぶせた。

じゅ~~~~・・・

チーズはみるみるうちに溶け、ふわ~んといいにおいが伝わってきた。

最後にチーズの上に香辛料を振りかけ、もう一枚のパンでフタをする。迫力満点のまるいサンドイッチのような物が出来上がった。

「『霧雨バーガー』完成だぜ!!」

じゃーーーーん!!!

出来上がった料理はインパクト十分だった。野菜や肉が塔のように積み重ねられ、ひとつの集合体となっている。焼き野菜や肉はパンの中でしゅうしゅうと音をたて、チーズがとろけていく様子が分かった。うえのパンも焼きたてらしくこんがりと香ばしい香りを放っている。まさに今まで見たこともない料理であった。

「これが・・ばーがーー・・」

「両手でつかんでそのままイってくれ。」

霊夢はあわててイスに座り直す。咲夜は両手でゆっくりと大きなバーガーを掴む。あったかいパンの熱が手に伝わってきた。

「あわわわわ・・」

霊夢はバーガーを目の高さに持ち上げ呻いていた。焼き上げた肉や野菜から輝く肉汁がじゅわりと溢れ出ている。

大きい。咲夜は一度めいっぱい口をあけたが、目前に迫ったバーガーの迫力に逡巡してしまう。

「がぶっといきな!そうやって喰うものだぜ!」

魔理沙に背中を押され、咲夜はぐわっと顔をゆがめて口を開けた。

がぶり!!

「んんんっっ!!!」

「これはっ!!!!」

どっか~~~~~~~~~~~ん!!!!!

咲夜のなかで巨大なきのこ雲が上がった。

噛み付いたとたん肉汁とソースが滝のように口に流れ込んでくる。

口に溢れるバーガーのかけらをゆっくりとかみ締める。

一度目はじゅわりと肉汁がはじけた。

二度目はシャキリと野菜がはじける感覚が伝わった。

三度目にはそれらがオーケストラのフィナーレのようにわっと襲い掛かってきた。

「ううう・・うウオおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

咲夜と霊夢は歓喜の宇宙に放り出された。

魔理沙の顔に凶悪な笑みが浮かんだ。

『最初は些細なことだ』

真っ暗な空間を漂う咲夜と霊夢に魔理沙の声が何処からともなく響きわたってくる。

『野に生えた野菜、荒野を行く獣、地を照らす太陽』

二人の周りに大自然の雄大な景色が広がった。

『人間の営み』

そう、これは自然の恵みそのもの、野菜、肉、パンの小麦の香りまでもが愛おしい自然の恵み。

『そして火の発見だ』

当たりが再び真っ暗闇になったかと思うと、一つの小さな炎がぽっと浮かび上がった。

『火は神の光だ。自然の命の灯火だ。』

猿人が木の先のたいまつを掲げて何か叫んでいる。囲炉裏を囲む景色、神に捧げる祈りの火。それらの映像がぐるぐると流れていく。

『そして人々は魔法を生み出した。料理という魔法を』

ジューと音をたてる肉が見えた。

「その通りよ!!」

咲夜は闇に向かって叫んだ。

「料理こそ、自然と人とを結ぶ魔法!!食こそ神が与えた命の果実!!」

咲夜の前にバーガーがでんと現れた。

咲夜はバーガーにかぶりついた。

「この野菜は!!!」

咲夜と霊夢の意識は郷の段々畑に飛んだ。

日の光をめいっぱい吸収した野菜、レタス、かぼちゃ、トマト、きゅうりが色とりどりに実っている。一人の農夫がきゃべつの塊をむしっている。

「見て!」

霊夢が指差す方向を見ると、広大な平原を悠然と牛が歩いている。

なんと堂々とした姿だろう!青々と茂った草をたくさん食べ、平原を歩き、大地の上で寝そべる。雄大な雄牛の肉の本来の旨みが咲夜の口にぐわっと広がった。

それに混じるタマネギ、小麦。

次の瞬間とろりとした食感が舌に伝わってくる。

「こ・・これわああああああーーーー!!!!!!」

咲夜は吹っ飛ばされた。パンに、肉に、野菜にかかるこの深みのある味。

ソースだ!!

「そ・・そうか!!わかったぞーーーーーー!!!!!」

咲夜はなりふり構わず大声で叫んだ。完全で瀟洒な十六夜咲夜はもうそこにはいない。

「こ・・これだわ!!これが原点よ!!!すべてはこのソースを生かすためのもの!!」

「その通りだぜ!」

広大な宇宙空間にいつもの魔女服姿の霧雨魔理沙が浮かんでいた。

「魔理沙!」

霊夢は叫ぶ。魔理沙はにやりと笑ってポケットから何かを取り出した。

「キノコ・・・?」

霊夢と咲夜は怪訝な顔をする。

「私は魔の森で採ったキノコを魔法の原料にしてる。それを煮込んでスープにして、固めて使う。」

「知ってるわ!」

咲夜は叫んだ。魔理沙のアトリエには何度も行ったことがある。掃除してあげた事だってある。

「キノコは森の恵みだ。あの森でないとこんなにキノコは生まれない。」

咲夜は黙って魔理沙の言葉を聴いていた。

「でもキノコは孤独だったんだ。私と出会うまで。だーれも見向きもしないさ、こんなもの。魔の森の毒キノコとさげずまれてきた。」

魔理沙は両手を広げて叫んだ。右の拳にはしっかりとキノコが握られている。

「おんなじだ!!私と!このキノコは私なんだ!!!」

「魔理沙・・あなた・・。」

暫くの沈黙があった。

「ある時一つの失敗作が出来た。私はそれを舐めてみた。そして驚いた!私は自分がとんでもない物を作ってしまったと分かった。」

「・・・。」

「アリスの家に駆け込んだ。アリスにも食べてもらったんだ!アリスは爆発した!」

魔理沙はかすかに震えているように見えた。咲夜自身も、自分の肩が小さく震えているのが分かった。

「これが魔法だ!!」

魔理沙は叫んだ。

「自然の恵み。精霊、神々の理力を喜びに変える!!森の毒キノコだって人を感動させることができる!!」

「分かったわ!!」

今度は咲夜が叫んだ。

咲夜は齧りかけのバーガーをぐわしと掴む。

「この温もり、熱いバーガーこそあなたなのね!!」

手に伝わってくる確かな熱。それは魔理沙の熱い思いなのだ。そこには箸もフォークもナイフもいらない。原始のコンタクト。

「うおおお!!」

咲夜は大口を開けてバーガーに噛み付いた。はるか太古の昔、ひとは命がけで獲物を捕らえ、暖かい血潮の流れる肉を掴み、かぶりついた。

肉汁があふれ、咲夜の指を伝った。ソースが口のまわりにべたべたにこびりつく。

それでも咲夜は食べることを止めない。霊夢も手をべとべとにしながらバーガーにかじりついている。

ソースのコク。これはキノコのコクだったのだ。キノコの濃厚な深みがソースの中に見事に溶け込んでいる。

これが魔理沙のソース。これが魔理沙の魔法!

咲夜は頬をおもっいきり殴られた気がした。

その拳は魔理沙のものだ。熱い彼女の思いだ。

霧雨魔理沙のスペル、それは ――恋符――

恋をするとは、一般的に人が人へ慕情を抱くことを言う。

彼女は特定の個人に恋をしているのか?魔理沙の場合は違うのではないか?咲夜の中にその思いが去来していた。

霧雨魔理沙の恋。

それはあらゆる物に向けられているのではないか?

人に、妖怪に、妖精に、魔法に、郷の皆にだ。

彼女は恋し、それを追い駆け続けている。恋したい。恋し続けたい。それが魔理沙のスペルではないのか?

その少女の一途な思いが、星の輝きとなって現れているのだ。幻想郷一の火線を生み出したのだ。

そしてこのバーガーの圧倒的な迫力。溢れんばかりの思いが、そのまま口の中に溢れてくる。

――私はお前に恋してるんだぜ、と。

咲夜の目から涙が溢れた。

魔理沙、森のキノコ、そして咲夜自身も孤独な子だ。

生まれながらの奇異な能力。吸血鬼の館で働くただ一人の人間としての孤独。

「でも!!」

咲夜は涙を拭い、叫んだ。涙の雫が、小さな星の光となって輝いた。

でも今は寂しさなど感じない。お嬢様や、妹様、パチュリー様、美鈴、小悪魔、妖精メイドの皆がいる。帰るべき家がある。

目の前に魔理沙の姿があった。彼女の熱い拳がバーガーの味となって咲夜を襲った。

さっきと逆の頬に咲夜は拳を受けた気がした。これは野菜の弾ける太陽の恵みだ。

腹にドスンと伝わる衝撃に咲夜は歯を食いしばった。肉とチーズの大地の恵みだ。

「ううおおおーーーー!!!これが私の魔法だぜ!!」

そしてソースのラッシュが魔理沙の無数の拳となって降り注いだ。

ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラ!!!!!!!!!!!!!!!

咲夜は両腕をめいっぱい広げて立ちはだかった。

「飲み干してみせるわっっ!!私は『完全で瀟洒なメイド』なのだから!!!!」

咲夜は再び完全で瀟洒なメイドの鎧を纏った。この姿こそ咲夜の真の姿だ。偽らざる彼女自身なのだ。

「無駄無駄無駄ぁ!!!」

咲夜は魔理沙のラッシュを全身で受けながら叫んだ。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁーーーーーーーー!!!!!!」

咲夜の心の壁に風穴があいた。そこから眩いばかりの輝きが差し込んでくる。

2つ3つ4つ・・それらはやがて無数の光の筋となり咲夜の心に入り込んできた。

「うおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーー!!!!!!」

「ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボボラボララボラボラボラボラ!!!!!!!!!!!!!!!」

咲夜には一つの信条があった。

料理の新しい味を追求しつづける彼女にとって、最もヒントとなるのは庶民の味だ。もっとも低下層にある、いわゆるジャンクな食べ物のなかにこそ、新たな芸術の原石が埋もれていると信じている。

それは気の遠くなるような旅だ。巨大な山の中から、ちいさなスコップをもって、原石を掘り当てるようなものだ。

しかし、スコップが突き当たった原石の輝きは、何ものにも形容しがたい輝きを放つのだ。

そう、まさに星の輝きのような――

咲夜の姿は無数の星屑の光に包まれていた。全身の力が抜ける。咲夜の体はゆっくりと浮き上がった。


――私はお前に恋してるんだぜ――  魔理沙の声が聞こえた気がした。


「ま、魔理沙・・あなたはっ・・私のぉっ・・・!!」


ズバアァァ・・・・!!


咲夜の体はスローモーションの速さで吹っ飛ばされていた。その周りには水を散らしたような星の瞬きがきらめいていた。


「ボラーレ・ヴィーア!!(飛んでいきな!!)」


魔理沙の髪はいつしかほどけていた。

そのブロンドの髪を小さな星屑がゆっくりと撫でていった。















「お待たせ致しました。」

紅魔館のテラスでは瞬く間にレミリアの夜食が用意されていた。

「ほう・・これは最近はやりの・・。」

レミリアはにやりと微笑む。こんがりと焼けたフランスパンの中に肉や野菜が何重にも挟まれている。一際野菜の緑とモッツァレラチーズの白い色が印象的に見えた。

「さすがは私のメイドね。もう今流行のバーガーの味をモノにしてしまったか。」

レミリアは満足そうに微笑んだ。

「いいえ。これは私の味でございます。郷のどの店のものにも負けません。今最も先を行く料理ですわ。」

咲夜は珍しく反論する。レミリアは笑って訪ねた。

「くくく・・そうか。ではこの料理の名前を聞こうか。」

微笑を浮べるレミリアに咲夜は胸を張って言う。その背後に真円の月が、狂おしいほどの白い輝きを放っていた。


「バーガーを超えた新しい料理。『十六夜パニーノ』でございます。」


(了)
霊夢、霊夢。ねえねえ霊夢。

何よ紫。

わたしもかっこいいラッシュを叫んでみたいんだけど。

だめよ。アンタ息が続かないでしょ。年だから。

(紫涙目。。)






ハンバーガー賛!!これこそ日本のおにぎりに唯一対抗しうるソウルフードじゃないかしら?「その命がけの行動!!僕は敬意を表するっ!!」
※いくつかあるガンダムネタはウチの超門番のご提供。まっったくわかんないけどっ!!

紫ジョジョ立ち。 冥途蝶

アリスジョジョ立ち。      超門番

お嬢様・冥途蝶・超門番の3人ユニットです。ありがとうございます!ああ・・夏が・・終わった・・・
お嬢様
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コメント



0.2850簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
完全にシリーズ化しているしw
まぁ大阪城壊したりしないからまだ穏当だよね、うん。
5.100名前が無い程度の能力削除
わはー、ハンバーガー食いてー!
7.90風峰削除
何かこのノリ好きだwwww
ハンバーガー食いたくなっちまっただろうが!!
8.100名前が無い程度の能力削除
幻覚性キノコは、体に毒ですよ。
12.80名前が無い程度の能力削除
ちょっとマック行ってくる
16.90名前が無い程度の能力削除
テンションで押し切るとは卑怯な

あ、霧雨バーガー10個お持ち帰りで
17.100名前が無い程度の能力削除
マジックマッシュルーム
22.無評価名前が無い程度の能力削除
1番様   え!?カレーと焼肉とうどん読んでくれたの!?マジで!!?すっごい!!   お嬢様
      うん。大阪城壊しましょう!!   超門番
5番様   ちなみに私はモス派だから!   お嬢様
      私はロッテリア派なんだからねっ!  冥途蝶
風峰様   ウチの高校の学食にはハンバーガーがあるのよ!!すごくない!?   お嬢様
      まずいですけどねぇ・・     超門番
8番様   まあ「毒キノコ」てモロにいってますしねぇ・・   超門番
      あ・・・ホントだ・・    お嬢様

12番様  ちょっ!!ダブルチーズ買ってきなさいよ!!    お嬢様
      フィレオフィッシュ買って来てぇぇぇぇ!!!!   冥途蝶
      わたしがまだ小っちゃいころバナナ味のシェイクがあったような気がするんですよねぇ・・・   超門番
16番様  一万円はいりまぁぁぁぁぁす!!!!!    冥途蝶
      ボラボラ喰らいまくりですねぇ・・   超門番
17番様  キマッちゃってる!!??    お嬢様
      
24.100名前が無い程度の能力削除
結局悩んだ末にモスを買ってきてしまったのぜ…
にしても…Zネタが全然無いじゃないか!!
26.100名前が無い程度の能力削除
あなたたちの夏休みは終わらせない!
というか終わらないで!
32.100.45ACP削除
原初の歓喜、それの一つは食だと自分は思う。それを賛美する四作品、楽しませてくれてありがとう。

期待と夢を込めて、この点数を。
33.100名前が無い程度の能力削除
すいません、霧雨バーガー作れるだけください。
34.100名前が無い程度の能力削除
カレーと焼肉とうどん・・・「焼肉」!?
未チェックでしたちょっといってきます
35.100名前が無い程度の能力削除
あなたのSSを読むとお腹がすいて夜食を食べ過ぎてしまうから困る
38.100名前が無い程度の能力削除
あなた方のSSにはいつも食欲をそそられる

サブタイは嘘つきみーくんでおk?
40.100名前が無い程度の能力削除
SSは楽しいのが一番かな,と思わせる作風.
なるほど,咲夜さんはジェリドか...
42.50名前が無い程度の能力削除
ジェリド乙
43.80名前が無い程度の能力削除
面白かったですが、誤字(?)を見つけたので報告します。

>>咲夜と霊夢のパンの野菜の上ににジュージューと音をたたている……
野菜の上「に」ジュージューと音を「たてて」いる……
ではないでしょうか。
44.100名前が無い程度の能力削除
またお前かwwww
ちょっとマック逝ってくる
45.100名前が無い程度の能力削除
ある意味ノリと勢いが命のナンセンスギャグのパロディギャグに見えて、良く読めばかなりハイレベルな筆致なのが凄い。
それにしても、幻想郷には何人の味皇様が居るんだw
47.100名前が無い程度の能力削除
ひょっとしてアリスは5部好きなのかww
50.100名前が無い程度の能力削除
グルメ泥棒シリーズ、次は何がくるかと期待していたらハンバーガーでしたか。
何だろう、この謎の感動はwww
焼肉は変則的でしたが、紅魔館に永遠亭、魔法の森がメインにきたわけで、次がどこがくるのか、何の料理なのか、楽しみにしていますね。
51.100名前が無い程度の能力削除
あんたのSSはいつ見ても美味しそうだ(二重の意味で)。
次からタグ気を付けないと。深夜に腹減って仕方ない。
とりあえず霧雨バーガーを5個お持ち帰りで。
54.100名前が無い程度の能力削除
グルメシリーズ最新作はバーガーがテーマとは・・・。
うん、いつも以上に面白かったです♪んでもって、読んでて食欲が・・・。
・・・はっ!?何故か無意識の内にマックのチーズ月見セットを買って食べてしまったze!?
とにもかくにも、次回も楽しみにしておりますよ~。・・・そろそろデザート系がきても不思議じゃない、かな?(を)
59.無評価お嬢様削除
ちょっと待ってよ。いまからお茶飲みながら返すから。。
60.無評価名前が無い程度の能力削除
24番様   絶対モスよね!ちょっと高いけど・。でもモス!  お嬢様
       Zネタはちょっとしか無いんですよ~ 。  超門番
26番様   まあ夏休み終わったけど終わったら終わったであんまり変わんないのよね。  お嬢様
       気分的には随分違いますわ。  冥途蝶
45ACP様 とても光栄よ。あなたの作品は無いのかしら?探してみたんだけど・・。よかったらまた見てね! お嬢様
       身に余るお言葉ですわ。良い夏をお過ごし下さい。  冥途蝶
33番様   べ・・別にアンタのために作ってるんじゃないんだからねっ!!  お嬢様
34番様   焼肉見てくれたのね!!!ディ・モールトありがとう!!私はあの作品好きなんだけど・・。どうしてああなった・・!!  お嬢様
       なんて律儀なひと!!   超門番
35番様   夜食ってみんなが言うほど悪いものじゃないらしいわよ。  お嬢様
       いつも見に来てくださいますのね。心よりお礼申しあげます。  冥途蝶
38番様   前のも見てくれたの??ありがとう!!最高ね!!   お嬢様
       べ・・別にアンタのためのサブタイじゃないんだからね!!  冥途蝶

       
62.無評価名前が無い程度の能力削除
       休憩しながらやらないとね。。

40番様   流石にちょっと百合っぽいのは書けないからね。でも楽しんでもらえてホントうれしいわ!  お嬢様
       残念ながらティターンズとはそういうものだ・・!!  超門番
42番様   金色めぇ!!  超門番
43番様   またでた!もう色々あってなかなか校正できないのよ・・。まわりもうるさいし。。  お嬢様
       あたたかい目で見守ってあげて下さいませ。   冥途蝶
44番様   だからストロシェイク買って来なさいよぉぉぉぉ!!!!  お嬢様
       はあ!?違いますよ!バニラ買ってきてくれるんですよね!! 超門番
47番様   まあ、イケメンキャラ揃い踏みだからね。。  お嬢様
       アリスちゃんは何気にハマリそう!  超門番
50番様   わお!!全部見てくれてるの!!??超ありがとう!!焼肉は私一番すきな話なんだけど・・。シット!!  お嬢様
       ありがたいですねぇ!!ほんとうにありがとうございます!!  超門番
51番様   これも!!  うれしい!!  深夜でもガツガツ喰って!!  お嬢様
       あわーー!!ホントありがとうございます!次もよかったら立寄ってみてください!!  超門番
       べ、別にアンタのために作ってるわけじゃrjkwww   お嬢様
54番様   朝マック!!??・・・・・・・やるわねぇ・・   お嬢様
       「こいつ!?ただものじゃない!?」  超門番
       デザート!!・・いい勘してるわ!そろそろやりたいわね!!  お嬢様
67.無評価名前が無い程度の能力削除
45番様   返事が抜けてたわ。ごめんなさい。 ふ~ん・分かる人には分かってもらえるのよ!!分かってくれてる!!
お嬢様
       お詫びいたします。 すばらしいご彗眼ですわ。  冥途蝶
71.100名前が無い程度の能力削除
おのれ作者・・・夕飯前の俺にこんなSSを読ませやがって。
こうなったらマックに行くしかないじゃないか
72.無評価名前が無い程度の能力削除
マックじゃなくてモスにしてっ!!そして海老カツかってきてぇぇぇぇ!!!!  お嬢様
抹茶シェイクかってぇぇぇぇ!!!!!!!!  冥途蝶
84.90名前が無い程度の能力削除
マック?モス?どちらも愛せずしてなにがハンバーガー好きか!
ということでおれは個人経営してる行きつけの店でハンバーガー食ってきます
85.無評価お嬢様・超門番削除
84番様   このお話読んじゃうかぁ~!!渋いね~!
       ていうか熱いね!確かにどっちも好きだよ!?最近は確かに個人経営のサセボ?バーガー
       のお店があるよね。ハンバーガーも立派な料理になんだよ!て感じが好き。一回行ってみ
       たいなあ~。                               お嬢様
       どっちも愛してるけどどっちでもないんですかっ!??            超門番