Coolier - 新生・東方創想話

童謡

2010/08/30 21:40:33
最終更新
サイズ
37.52KB
ページ数
1
閲覧数
6483
評価数
62/230
POINT
14170
Rate
12.29

分類タグ

「おーい、霊夢ー」
 頭上から声が降ってくる。手元のほうきを動かす手を止めて、呼ばれた人間は上を振り返ることなく、左手を社殿の方へと向けた。
「拝観料」
「いつから博麗神社は有料立ち入りになったんだ」
「今」
 ジト目で来訪者を見ながら、巫女は言う。しかし、来訪者は、そんな彼女の視線などどこ吹く風でまたがっていたほうきから飛び降りると、「実は、すごいものを見つけたんだ」と目をきらきら輝かせながら言った。
「何よ。またつちのこでも見つけたの?」
「違う違う。とにかく来てみろ、ほら!」
「あ、こら! 私はまだ、境内の掃除が……!」
「そんな景気の悪いことしてるから神社の景気も悪くなるんだよ!」
 そう言われて、『そうかもしれない』と思いつつも、あとでこいつを泣かすと巫女は心に決めた。
 ともあれ、彼女は来訪者に手を引っ張られて、一路、空を舞う。向かう先は――、
「見ろ!」
 彼女が示すのは、視界一面に広がる、赤い花畑だった。
 左手側の森の中から流れてくる川を区切りとして二つに分かれた平原一杯に、花の絨毯が出来ている。そこには無数の蝶が舞い、見るも美しい景色だった。
「すごいだろ、これ。いつぞやの花の異変の時もすごかったが、ここはその上を行くぜ。
 だけど、こんな異変なら、それこそどんとこいじゃないか?」
 無邪気に笑いながら、彼女は一輪、その花を摘んで巫女へと手渡した。
 巫女は言う。手に持った花を見つめながら。
「ねぇ、魔理沙。あんたさ、この花の名前、知ってるの?」
「ん? 何だ、突然」
「じゃあ、質問を変えるわ。
 この花、どこかで見たことない?」
「……んー?」
 指先で花を突きながら頭を悩ませる。
 わからん、と彼女は言った。
「んじゃ、教えてあげる。
 こいつの名前はね、曼珠沙華ってんのよ」
「おー。何かかっこいい名前だな。燃える手裏剣か?」
「で、うちらがこれを見たのは、映姫のところ」
「……あー、何か覚えてるような覚えてないような……」
「そして、魔理沙。
 この花のもう一つの名前はね」
 そこで、一旦、巫女は言葉を区切った。
 さぁ――と流れる風が宙を舞う。花びらがいくつか千切れて、風に舞った。







「彼岸花」










一日目 昼



 その日、博麗神社は殊更に暇だった。
 夏の暑さに霊夢がうだっていると、来訪者が現れたのは、昼も中頃を過ぎた頃だったか。
「霊夢殿、お手すきか?」
 慧音だった。
 いつも通り、堅苦しい雰囲気をまとって現れた彼女は、この神社を訪れる人間にしては珍しく、きっちりと浄財を賽銭箱へと投げ入れてくれる。
 そうして、むくっと霊夢が起き上がり「何か用?」と訊ねた。
 慧音は言った。
 ちょっと、あなたに頼みたいことがある、と。
 ――霊夢はそれを引き受けて、彼女と一緒に人里へと向かった。
「こんなところにもあるのね」
「人里と言っても千差万別だ。霊夢殿たちがよく足を運ぶ、大きなところから、地図にも載ってないような、こんな隠れ里のようなところまでね」
「……もしかして、こういうところでパフォーマンスしたら、早苗とか白蓮のところにお客さんを奪われないですむかな?」
「さあ、どうだろうか」
 足下に見えてきた里は、屋根の数が10かそこらしかない、小さな里だった。慧音が言うには、人口は50人程度なのだという。ただ、それでも環境としては恵まれていた。
「何か、自然の中の村って感じ」
 里の左手側は奥深い森になっている。その中には、たくさんの動植物が住処を構え、里の生活を潤しているのだという。
 反対に、右手側を見れば、かなりの流量を持つ川が、さらさらという音を立てて流れていた。川辺には田畑が設けられ、ちょうど、盛りを迎えた夏野菜が実を付けている。
 その環境のためか、肌を焼くような暑さも鳴りを潜め、森の中から響いてくる蝉の声が、むしろ心地いいくらいだった。
「いいところじゃない」
「ああ、そうだな」
「で?」
「ああ――」
 慧音は周囲を見渡した。つられて、霊夢もそれに倣う。
 しばしの沈黙。静寂。それを破る蝉の声。
 頭上から降り注ぐ夏の日差しに、霊夢はハンカチを取り出して額の汗をぬぐう。
「何よ?」
「何かおかしいと思わないか?」
「……何、って……」
 もう一度、周囲を見渡す。
 森。川。畑。田んぼ。家屋。村。太陽。風。
 そして、
「……村の人たちは?」
 そこに、もう一つ、必要な要素がないことに、彼女は気づいた。
 たとえ小さな村であろうとも、人の姿が全くないということはありえない。それこそ、人が死に絶えた、あるいは移住などで廃村になった場合を除けば、そのような事態に陥るということは、
「異常事態ということだ」
 ――そういうことになる。
 しばしの沈黙が落ちた。
 少しだけ、二人は空を見上げる。強い日差しが空から降り注ぎ、大地を灼いている。蝉の声が、まとわりつくように聞こえてくる。
「ついてきてほしい」
 歩き出す慧音につられ、案内されたのは、村の家屋の一つだった。
 引き戸を開けて中に入ると、すっと、それまでの暑さが引いていく。ふぅ、と一息ついた霊夢が『喉が渇いたわね』と、右手の土間にある水がめに近寄った時だ。
「それに触るな!」
 いきなり、後ろから鋭い声が飛んだ。思わず背筋をすくませ、振り返る。
 慧音の形相が、鬼のように怖かった。
「……失礼。大きな声を出してしまって申し訳ない。
 だが、霊夢殿。この村の水に触るのはやめておいた方がいい」
「……なんでまた」
「それは、あとで説明する。とりあえず、早苗殿のところへ」
「ん? 早苗もいんの?」
「霊夢殿一人に任せておくのは不安だったのでな」
 何それ、と霊夢はつぶやいた。すなわち、自分一人じゃあてにならない、と慧音に明言されたからだ。
 不機嫌になりつつも――ふと、思う。
 ちょっと待て、慧音はこんなことを言う奴だったか?
「早苗殿、お待たせした」
「いえ、待っていませんのでお気遣いなく」
 勝手から一段高くなった引き戸を開ければ、そこに、品よく背筋を伸ばして座っている早苗の姿があった。振り返り、彼女は慧音と霊夢の姿を確認して、にっこりと微笑む。
 その笑顔を見れば、なるほど、彼女が人受けするのもわかるものだ。霊夢はひょいと肩をすくめた。
「今、お茶を用意しよう」
「あれ? 水は飲むな、じゃないの?」
「それとは別に用意してある。さすがに、水も飲まずに暮らせとは言わないよ」
 慧音は奥の間へと消えていった。
 障子が閉められ、また、そこは静かになる。響くのは、蝉の声。
「あっついわねー」
「そうですね。ただ、建物の中は、結構、涼しいですよ」
「そうね」
 足を崩して座る霊夢とは対照的に、どこまでも、早苗はお上品だった。『疲れる奴だな』と思いつつも、霊夢は「何でここに?」と早苗に訊ねる。
「わたしも、慧音さんに『用事がある』と言われたまでで……。
 神奈子さまや諏訪子さまは事情をご存知のようでしたけど、『早苗の修行になる』って言われて」
「ぶっちゃけ、あんたや私が出てくるより、あの二人が出てきた方が早いんじゃない?」
「かもしれませんね」
 他愛もない会話をしていると、奥の障子が開き、慧音が戻ってきた。彼女の手には、冷たい麦茶と、そのお茶請けが載ったお盆がある。
 彼女は二人にそれを配ると、『さて』と、どっかとそこに腰を下ろした。
「単刀直入に言う。
 お二方に、この里に流行っている奇病を処理してもらいたい」
「は?」
「え?」
 妖怪退治じゃないのか。霊夢の頭に真っ先に浮かんだのがそれだった。
 早苗も思う。霊夢と同じく、妖の類を調伏することではなかったのか、と。
「あんた、それは永琳の仕事でしょ」
「わたし達……ああ、いえ、申し訳ありません、わたしには医学の知識はとてもとても……」
「もちろん、永琳殿にも話はしてある。向こうから、何人も人を借りてきている」
「……いまいち、話がつかめないわ」
「わたしもです」
 病気は気から。
 確かにその言葉はある。そうした、病気になって落ち込んでいる人間を励ませばいいのだろうか。彼女達は顔を見合わせる。
「永琳殿が私に指示をしたのだよ。
 医学ではどうしようも出来ない。その筋の専門家を呼んで来い、とね」
「……はあ」
「あの、それは一体……」
「永琳殿は笑っていたよ。『まるで自分が道化のようだ』とね」
 ――気のせいだろうか。
 部屋の中が、少し蒸し暑くなってきたように、二人は感じた。立ち上がった慧音が、外に面した障子を開く。吹き込む風が部屋の中の空気をかき回し、同時に、縁側に下がった風鈴を、ちりんちりん、と鳴らした。
「尽くすべき手を尽くしたのに、誰一人、快方に向かわない。
 それならばもう、これは、隠の仕業だ、とね」
 要するに、永琳はこういったのだ。

『呪いか祟りか』と。

 ――慧音が席に戻り、腰を下ろした。
「事の発端は、一人の女性が病に倒れたことから始まった。最初はただの、普通の病気かとも思っていたが、どうにも違う。
 そのうちに、同じ病気に苦しむ人が増えた。里のものは、これを一大事と考え、病気になっていない女子供を別の里へと送り出し、そうして、病気にかかっているもの達を看病していたもの達も、また病気に倒れた。
 事態を重く見た、外に送り出された里人の一人が、私のところへとやってきた。私は永琳殿に助力を願った。
 ……そして、あとは、今、話した通りだ」
 誰一人病気はよくならない。
 そのうちに、あの永琳ですら、ある意味では匙を投げた。これを、物の怪の仕業と考えた。そう考えなくては、辻褄が合わなかったのだろう。彼女の中では。自分の力量に絶対の自信を持っていた天才にとって、理解できない『領域』の話は、まだあったのだ。
「祟り……ねぇ。
 早苗、そんなの感じた?」
 ふるふると、無言で、早苗は首を横に振る。
 実を言うと、霊夢も同じだった。もしも祟りや呪いの類にこの村が侵されているのだとしたら、入ってきた段階で、それに気づくはずなのだ。それが出来なくて、何の巫女か。しかし、結果としては見ての通り。
「だが、あれを見れば、もうその類だとしか思えないんだ。この私にとってもな」
「ふぅん……」
「水に触るなと言ったのはそれが理由だ。
 水が、何らかの要因になっていると、私は見ている」
「水が……ねぇ」
 手に持ったコップの中の麦茶を見る。水滴が張り付き、夏の冷たさを演出するそれに、何の原因があるというのか。
 霊夢は麦茶を飲み干した。
「ですけど、慧音さん。
 もしも祟りなどが原因でしたら、ただ、対症療法をしても何の意味もありません。病気で言うところの、根治療法が必要です」
「ああ……うむ……。どうしたらいいだろうか……?」
「もしも、水が原因ということでしたら、その水を調べればいいと思います」
「……そうか。
 霊夢殿。ならば、私はこの村に続く水源を調べようと思う。ご一緒願えるか?」
「いいわよ」
「では、早苗殿は――」
「この村に残って、対症療法を行いたいと思います」
「かたじけない」
 深々と頭を下げる慧音。
 二人は互いに顔を見合わせると、小さく肩をすくめる。
 遠くから響いていた蝉の声が、この時、つと、やんだ。

「霊夢殿、水には触るんじゃないぞ」
「わかってるわよ。
 けど、この暑いのに、こんな冷たそうな水に触れないなんて不幸だよね、私達は」
 これこそまさに祟りじゃないだろうか。
 霊夢はそんな風に笑いながら、目の前をさらさらと流れる川に視線をやった。
 ――話し合いも終わり、昼食を終えた後、三人は活動を開始している。とりあえず、霊夢は川辺へとやってきて、じっと川の流れを見据えていた。
「何かわかるだろうか」
「……はっきり言う」
「ああ」
「ぜんっぜん、何にもわからん」
「……そうか」
「あ、今、露骨に肩落とした」
 仕方ないじゃない、と霊夢は頬を膨らませる。
「普通ね、何らかの『汚れ』がついたものってのは、目で見てわかるくらいに変貌してるの。
 けど、これにはそんなものなんて微塵もない。文字通りの、ただの水」
「……ふむ」
「慧音が私を信用しないならそれでもいいけど、この川には、何の問題もない」
 第一、なぜ、水が原因だと考えたのか。
 霊夢がそれを問いかけると、慧音は黙り込んでしまった。そのまま、気まずい沈黙が続く。

 一方の早苗は、里のほぼ中心に陣を敷き、小さな社をそこに組み上げていた。
「こんなところね」
 この里に何らかの祟りなどが起きているのだとすれば、そうした不浄のものを浄化するのが対症療法となる。
 自らの神力と、自分を守る二つの神の力と。
 それを行使するのなら、多少の祟りなど、文字通り、瞬きをする間に祓い清められる自信があった。
 それでは早速、と彼女がそこの前に膝をつき、祈りを捧げ始めた時だ。
「何してるの?」
 後ろから声がした。
 振り返れば、齢五つごろの少女が一人。粗末な身なりだが、燃えるように赤い布が使われたその衣装は、早苗の印象に深く残る鮮やかさを持っている。彼女は片手に一匹の蝶をとめていたが、それを空に離してから、にこっと早苗に向かって微笑む。
「こんにちは」
「こんにちは」
 笑顔の早苗に、同じく笑顔で返した後、もう一度、『何してるの?』と問いかけてくる。
「今ね、お祈りをしているの」
「お祈り?」
「そう。この村にいる、悪い鬼をやっつけるお祈り」
「そうなんだ。お姉ちゃん、すごいね」
「そうでしょう。ありがとう。
 あなたは……」
 早苗が問いかけるより早く、少女は手まりを取り出した。それを地面につきながら、「てんてんてまり♪」と歌い出す。
 変わった子だな、と早苗は思った。
 しかし、それ以上、彼女に気を割くことなく、早苗は再び社に向かう。
 そのまま、どれほどの時間が過ぎた頃だろう。
「お姉ちゃん、遊ぼう」
 また、後ろから声。
 振り返った先に、少女が笑顔で立っている。手に持ったまりを早苗に見せて、『遊ぼう』と笑っている。
「ごめんね。お姉ちゃん、お仕事……」
「遊ぼう」
「……あのね」
「遊んでくれるよね?」
 ……?
 一瞬、早苗は首をかしげた。今、一瞬だが、少女の表情が変化したように見えたのだ。燃える赤によく映える、白い素肌に差し込む赤――。
 ……気のせいだろう。彼女はそう結論付けた。
「わかった。それじゃ、ちょっとだけね」
「うん」
 少女と一緒に手まりの歌を歌いながら、彼女はしばし、遊びに興じた。
 少女は、自分に優しくしてくれる早苗に早くも懐いたのか、けらけらと声を上げて、よく笑う。
「楽しい?」
「うん。お姉ちゃん、遊んでくれてありがとう」
「ううん、いいのよ。
 ……さて、と」
 ぽん、とまりを手に戻して、
「そろそろ、お姉ちゃん、お仕事しなくちゃ」
「うん、わかった」
 少女は踵を返した。
 え? と早苗が声を上げそうになる。
「まり……」
「お姉ちゃんにあげる。それ、もういらないから」
「ダメよ、そんなの。ものは大切にしないと」
「ううん、いいの。今度、新しいのを買ってもらうの。
 そのまりより、とってもきれいで、とってもよく跳ねるの。ぽんぽん、って」
「……もう」
「じゃあね、お姉ちゃん」
 一瞬、ざっと風が吹きぬける。その強い風に驚いて、早苗は眼を閉じて、服の裾と流れる髪を押さえた。
「なくさないでね」
 少女の声が耳に残る。
 ――目を開けると、彼女の姿はなかった。相当に身軽な子なんだな、と早苗は思う。
「……さて、と」
 手に持ったまりを見て、仕方ないな、と肩をすくめた後、彼女は再び、社に向かった。



一日目 夜



 日が落ちる。
 長く伸びる影法師が黒く溶け込んで見えなくなる頃、霊夢と慧音が帰ってきた。
 お帰りなさい、と声をかけて、早苗は社の前から立ち上がる。
「……何だか空気が入れ替わったようだ」
「そうですか? ありがとうございます」
 彼女の祈りが、何らかの功を奏したのか、里を包む空気に、慧音が感嘆の声をあげる。
 一方の霊夢は、わずかに眉をひそめて早苗を見る。
「あの?」
「早苗。あんた、何かあった?」
「……何がですか?」
「いや、いい。多分、私の気のせいだから。
 ずーっと、釣竿を持たない太公望やってれば、感覚もおかしくなるわよ」
「はあ」
 その後、三人は、明日の予定を話し合いながら帰途につく。
 霊夢と早苗の二人は、昼間、慧音に案内されたあの家屋へ。一方の慧音は、「これから忙しくなる」と言い残して、どこかへと。
「何なんでしょうね」
「さあ」
 さて、と居間でくつろいでいた早苗が立ち上がり、「お料理、作ります」と言って土間へと降りていった。
 対する霊夢は、そんな彼女の背中をじっと見つめた後、おもむろに腰を浮かして、懐から取り出した御札を、周囲にぺたぺたと貼り付ける作業を始める。
「……ん?」
 その時、何かが足下を転がったような気がした。
 すぐに身をかがめて、彼女は周囲を探るのだが、特段、これといった変化は認められない。
 気のせいだったか。
 そう結論付ける。
 ――その一方、早苗は「とりあえず、こんなところかな」と料理を作り終えていた。用意したのは、簡素にご飯と味噌汁、野菜と肉の炒め物。もちろん、水は慧音が用意していった水がめのものしか使っていない。
「霊夢さーん、ご飯……」
「早苗。あんた、何か持って帰ってきた?」
「え?」
 床机を出して、その上に料理を並べながら、早苗は首をかしげる。
 少ししてから、彼女は、ぽん、と手を叩いた。
「女の子と、ちょっと」
「ふーん」
「多分、みんなが病気で退屈してたんでしょうね。遊ぼう、って」
「……へぇ」
「それで、手まりをいただいたんですけど……」
 きょろきょろと、早苗は辺りを見渡した。
 その視線が、部屋の片隅で止まる。
「これです、これ」
 床の上に落ちていた手まりを拾い上げて、早苗。
「あんたって、やっぱり性格なのね」
「?」
「誰にでも好かれやすいってのはさ」
 ま、いいや、と霊夢はそこで話を打ち切った。二人はそろって床机につくと、手を合わせて「いただきます」と声をそろえる。
 その後の食事時間は、静かなものだった。
 ちらりと早苗は目の前の相手を見る。
 霊夢は無言だった。じっと、目の前の食事を見つめながら箸を操っている。
「あの」
 その無言の時間に堪えられなくなったのか、声を上げる。
「霊夢さんって、意外と無口……?」
「あんた達の相手をしてるからお喋りって思われてるのかもね」
「……は、はあ」
「早苗、あんた、料理上手ね」
「あ、いえ、どうも。
 何というか……神奈子さまに仕込まれたというか……」
「あの神様の相手するの大変でしょ。口うるさい母親って感じで」
「あはは……。たまに、そういうことも思いますけど……やっぱり、普段は、とてもいい……母親、なんでしょうか」
 てへへ、と照れる早苗。
 羨ましいわね、と霊夢はコメントをして、味噌汁をすすった。ちょうど、その時である。
「……何か風が出てきましたね」
 早苗の瞳が外に向く。がたがたと、外に面した戸や障子が揺れる。
「霊夢さん、どうして結界を?」
「こんなぼろ家、壊れそうじゃない」
 先ほどまで、外から聞こえていた夜の虫の声もどこへやら。今は、がたがた揺れる建物の音で周囲は満たされている。
「……何か冷えますね」
「風が強いとね」
 一度、早苗は土間に下りると、積まれていた薪を持って戻ってくる。
 それを囲炉裏にくべて火をつけると、ほっとできる暖かさが周囲を満たした。
「こんな夏の盛りに焚き火をするなんて思いませんでした」
「早苗ってさぁ」
「はい?」
「……あー、うん。都会ってどんなとこ?」
「いきなりどうしたんですか?」
「ん? そういや、早苗のこと、あんまり知らないなぁ、って」
 せっかく、二人っきりなのだから、腹を割って話し合おうとのことだった。
 早苗はくすくすと笑いながら、「それじゃ、せっかくですから」と立ち上がった。
「お茶、淹れますね」
「うん」
 食事も終わって。
 少しの間だけ流れる、ゆったりとした時間。今現在、自分達の状況は切羽詰っているということすら忘れるほどの。
「へぇ、そうなんだ。
 何か色々あるのね、都会って」
「逆に、わたしから見れば、この生活の方が驚きですけどね。
 だけど、何とか生活できる辺り、人間の適応力ってすごいなって思いますけど」
「そうだわなぁ。
 ……ま、そんな環境で暮らしていたら、忘れるよね」
「何をですか?」
「隠」
 その一言で、周囲の空気が刹那に入れ替わる。
「文字通り、隠されるわけだ。
 祟りも妖怪も、かつてはみんなが恐れていたのに、いつしか誰も恐れなくなって。そうして、忘れられていった奴らが此処に集まってくる。
 どっちが自然なんだろうね」
 忘れられている状態と、覚えている状態と。
 無言のまま、早苗は席を立った。
「風、強いね」
「……はい」
 霊夢の何気ない、その一言が、何だかとても怖かった。


 手まりの歌が聞こえていた。
 視線の先に、一人の少女がいた。
 彼女は、手まりをついて遊んでいる。子供らしい、甲高い声で、楽しそうに歌を歌いながら。
 だが、その手の中で弾む手まりは。






 びちゃり。








 ついては壊れ。









 びちゃり。









 ついては弾け。












 びちゃり。











 ついては潰れ。












 びちゃり。












 ついては破れていく。






 そのまりと、このまりを交換しましょう。
 彼女は言った。
 子供は嬉しそうに振り返ると、彼女が差し出した、よく弾む手まりをついて遊び始める。


 ぽん。


 まりが大きく跳ね返る。



 ぽん。



 子供の手の動きに合わせて跳ね返る。




 ぽん。




 大きく跳ねたまりが、どこかへ転がっていく。
 子供が走っていく。
 よく弾むまりを追いかけて、走っていく。
 そして、彼女は手元のまりを見る。
 全く跳ねることのない、出来損ないのまりを手に、彼女は手まりの歌を口ずさむ。
 地面についたまりが。










 びちゃり。









 という音を立て。








 弾けて。








 潰れて。













 割れてしまった。















「っ!?」
 彼女は暗闇の中に跳ね起きる。
 不自然なくらいに呼吸が荒い。気持ち悪いくらい、全身にぐっしょりと汗をかいている。
 隣を見て、彼女はようやく、気を落ち着かせることが出来た。
「……そうよね。夢よ……」
 隣では、幸せそうな顔で霊夢が寝息を立てていた。
 ほっと息をついて、彼女――早苗は立ち上がる。
「……変な夢……」
 肩をすくめて、一度、土間に下りる。
 部屋の片隅に置かれた水がめから柄杓で水をすくって一口。それでようやく、乱れていた心が落ち着きを取り戻した。
 そんな時、ひときわ大きな音を立てて、外に面する戸が揺れる。窓から吹き込む風も、一段と強くなってきたようだ。
 薄気味の悪い天気だな。
 そんなことを思いながら踵を返す。







 びちゃり。








 ……音がした。
「え……?」
 もう一度、足を下ろす。






 びちゃり。







 聞き間違えではない。

「ひっ……!?」
 足下がぐっしょりと濡れている。一瞬、水がめから水が漏れているのかとも思ったが、違う。置かれている水がめには亀裂一つ入っていない。
 水が、どんどんあふれてくる。最初は土間を濡らすだけだったそれは、瞬く間に量を増し、あっという間に早苗のくるぶしまでを飲み込んでしまう。
 慌てて逃げた。
 つまづき、水に手が、顔がつく。
 慧音の言葉が蘇る。
『水に触るな』
 水の中から引き抜いた手に、水滴が残る。それが早苗には、まるでくもの糸のように絡み付いているようにすら見えた。
 必死に水の中から抜け出した彼女は居間に戻り、霊夢に飛びつく。
「……何よ、どうしたの」
「み、水っ! 水がっ!」
「……水?」
「た、多分、嵐か何かで川が氾濫したんです! 急いで高台に逃げないと、みんなおぼれちゃいます!」
「ちょっと、早苗。あんた、何を……」
「いいから!」
 慌てふためく早苗は、霊夢の言葉を聴かず、彼女を立ち上がらせようとした。
 霊夢は眠気の残る瞳でうろたえる早苗を見て――そして、言った。
「寝ろ」
「え?」
「いいから寝ろ。早く!」
 霊夢が上から早苗を押し付ける。
 しかし、早苗は抵抗した。当然だ。このままでは、自分達は溺れ死んでしまうのだから。
 必死に暴れる早苗。それを押さえつける霊夢。
 さながら――、
「いい加減にしろっ!」
 その声と共に、自分の意識が飛んでいくのを、早苗は感じていた。
 目の前が急速に暗くなり、体から力が抜けていく。
 ごん、という音が聞こえた。きっと、頭をぶつけたのだろう。
 消えていく意識の中、早苗の瞳が宙をさまよい、いまだ、風になぶられる戸に向いた。
 ……気のせいだ。
 そこから見える光景に、早苗は、そう結論付けた。
 その一瞬、戸が少しだけ開いて、びしょぬれの少女がそこに佇んでいるように見えた。その口が動いて、早苗に向かって何かをささやいたように見えた。己が昔からよく口にしていた言葉を、自分に向かってささやいたように見えた。
 気のせいだ。
 どさりと、彼女は倒れて、そのまま闇の中に飲み込まれていった。



二日目 昼



「……頭が痛いです……」
「どっかにぶつけたんじゃないの?」
「……うぅ……。たんこぶでも出来てるのかなぁ……」
 そんなら薬でももらいに行く?
 翌朝、頭痛に悩む早苗に霊夢が声をかけた。そうします、と早苗はうなずき、彼女と一緒に家を出る。
 外は、今日もいい天気だった。夏の日差しと、夏の空気と、夏の気配と。
 全てが二人を受け入れてくれる。
「昨日の風、ひどかったですよね」
「そうよねー。いつ壊れるかと思ったわ、あの家」
 今日も、道に人の姿はない。
 そんな中、二人がやってきたのは、慧音に教えてもらった『医療施設』だ。
 ――そこの前に、何人もの人影があった。
 慧音を筆頭に、見たことのある姿ばかりがそこにある。
「慧音、どうしたの?」
「……何、いつものことだ。もっとも、こんなことが日常化されてはたまらないがな」
 彼女は笑みともいえない笑みを浮かべて言った。
 彼女達が見ているのは、大きな大きな火。その中で、何かが燃えている。
「……まさか」
「死人だ。そのまま埋めるわけにもいかないからな」
 慧音の周りには、永遠亭から遣わされたのだろう、うさぎ達が立っている。皆、呆然とした表情を浮かべていた。
「どうしたんだ?」
「……ああ、いや、早苗が『頭が痛い』ってさ。
 ちょっと診てもらおうと思って」
「そうか。
 ……ついでだ。中を見ていくといい」
 隠すつもりもないのだからな。
 慧音に連れられ、二人は建物の軒をくぐる。勝手から上がり、障子を開いて、霊夢も早苗も、その場に固まった。
 広い居間は簡易的な病室に改装されている。置かれた布団の上で生きているのか死んでいるのかすらわからない状態で看病されているのは――、
「……水死体?」
 人間の形を辛うじて保っているだけのそれは、確かに、水死体と表現できる状態だった。
 うさぎ達は懸命にそれらを看病するのだが、当然のごとく、それらが目を覚ますことはない。だが、時々、それらは口から水を吐いた。その水をたらいに入れて、うさぎ達が外へと捨てていく。
「……奇妙な病気だろう? あれで生きているんだ」
 信じられないという表情を浮かべる早苗。一方の霊夢は、特段の表情の変化を見せることもなく、無言のままだった。
「これが、水に触るなということだ。
 あんな状態の人間を見ていれば、水に、何らかの原因があると思いたくもなる」
「……ま、その通りね」
「早苗殿、頭の方だが……」
「……治りました」
「……そうか」
 建物を後にすると、早苗は思いっきり、外の空気を吸い込んだ。
 大きく膨らんだ肺が肋骨に押さえつけられ、痛みを覚えるくらいに深呼吸をしてから、肩から力を抜く。
「慧音。ちょっとさ、付き合ってもらっていい?」
「ああ」
「早苗。一人で任せて大丈夫?」
「大丈夫です」
「よし」
 霊夢と慧音は歩いていく。
 その後ろ姿を見送ってから、早苗は踵を返した。
 その顔には決意の色と、同時に、隠しきれない怯えの色が浮かんでいたのを、その場の誰が見ていたのかは――。

「霊夢殿、どこへ行くんだ?」
「水源」
「……なぜ?」
「昨日、早苗がおかしくなった」
 森の中に分けいった二人は、足下の獣道に沿って歩いていく。右手側に川の流れを見ながら進む霊夢は、昨日の夜、何が起きたのかを事細かに慧音に語って聞かせる。
「今朝方、探りを入れたんだけどね。あの子の中じゃ、それは夢だったってことになってるみたい」
「……どういうことだ?」
「とりつかれたんでしょ」
 ぞっとする一言だった。
「風も吹いてないのに、『風が強くなってきた』とか、寒くもないのに『何だか寒い』とか。挙句、『おぼれてしまうから逃げ出そう』って。
 おかしいでしょ。明らかに」
「……ああ」
 しかし、なぜ?
 慧音の問いに霊夢は返す。
「優しいからよ」
「……優しいから?」
「私は嫌われたみたい」
 彼女はふっと肩をすくめた。
「でね。早苗の言っていたことを聞いてさ、ふと思ったのよ」
「……水源のことを言い出したのは、それが理由か?」
「そういうこと。
 出来ることなら当たって欲しくない予想だけど……ま、無理よね」
 彼女は足下の草を蹴り上げる。
「こんな不自然な道、あるわけないし」
 ――それは、獣道という割には、あまりにも整備された道だった。
 足下の草はきれいに刈り込まれ、膝より上に伸びたものは一本もない。生い茂る木々の枝葉も、道にかぶさっているものは、全てきれいに鉈で落とされていた。
 明らかに、獣道に偽装した、人の作った道である。
 それを二人は歩きながら、先へと進んでいく。
「見えてきた」
 視線の先に、大きな泉が見えてくる。どこからも、そこにつながる水が流れてこないのを見る限り、地下水が湧き出しているのだろう。
 その泉のほとりにやってきて、霊夢は『やっぱりな』という顔を浮かべ、対照的に、慧音は目を見開いた。
 鮮やかに咲き誇る、一面の彼岸花。その上を無数の蝶が乱舞する光景は、幻想的なまでに美しく、同時に、この世のものとは思えないくらいに不気味な光景だった。
「あの世やら地獄やらに知り合いがいる私らだけどさ。こういう光景を見ると、やっぱりちょっと来るわよね」
「……ああ」
 霊夢は泉のほとりで、躊躇わずに服を脱ぎ、裸になると水の中へと身を躍らせた。
 澄み切った泉の中に、予想通りの光景があるのを見て、彼女は顔をしかめる。
「慧音、予想通りだったわ」
「……まさか」
「あんた、以前言ったよね。子供が生まれても、貧乏な家は、食い扶持を減らすために、それを間引こうとする、って」
 水の中から上がってきた彼女が持っていたのは、人間の頭蓋骨。
 だが、そのサイズはとても小さいものだった。
「……悪しき風習だよ。
 だが、それをとがめることは出来ない」
 富めるものがいれば、貧しいものが出てくるのが自然の摂理、と言いたいのだろう。
 霊夢は何も言わず、泉を指差す。
「あの中、ほんとにめだかの学校だわ」
 彼女は空を見上げ、大きく伸びをする。
「もうお遊戯の時間は終わったのにね。遊び足りないんだね」
 その時、初めて彼女はつぶやいた。
 ――かわいそうに。
 そう、小さな声で。

「お姉ちゃん」
「あ、昨日の……」
 振り返る早苗の前に、あの少女がいた。彼女は、今日は、手にシャボン玉のおもちゃを持っている。そして、その肩に、二匹の蝶がとまっている。
「買ってもらったの?」
「ううん。自分で作ったの」
「そうなんだ」
「お姉ちゃん、遊ぼう」
「う~ん……。
 ちょっとだけね?」
 彼女は嬉しそうににっこりと笑うと、早苗の手を引いた。
 彼女に連れられるまま、川辺へとやってきた早苗は、そこに腰を下ろす。
「ねぇ、お姉ちゃん。やってみて」
「うん」
 そう言えば、昔、こんな風に遊んだな。
 まだ自分が小さかったころのことを思い出して、早苗は手元のストローに息を吹き込む。ふわりと広がったシャボン玉が、ゆったりと漂いながら、空へと舞い上がっていく。
 それを見上げて、楽しそうに少女がはしゃいだ。
「すごいすごい。お姉ちゃん、上手だね」
「うん。お母さんとかに仕込まれたから」
 こんなことも出来るんだよ、と早苗。一個の大きなシャボン玉を作り、その中に何個も小さなシャボン玉を作り出すという妙技に、少女がますますはしゃいだ。
 神奈子さま達も、はしゃぐわたしを、こんな目で見ていたのかな。
 隣の少女に優しい視線を注ぎながら、彼女はシャボン玉を噴く。いくつものシャボン玉が宙に舞い上がり、やがて、弾けて消えていく。






「どうして、シャボン玉って壊れちゃうんだろう」







 少女が言った。


「ずっと飛んでいられたら、すごくきれいなのに」
「そうだね。どうしてだろうね」
 シャボン玉は空に舞い上がり、やがて程なく、壊れて消える。
 その儚さに、『おかしいね』と早苗は笑った。
「……お姉ちゃん?」
「なぁに?」
「……どうして泣いてるの?」
 少女の瞳に戸惑いの色が浮かんだ。
 早苗は『何でだろう』と笑いながら、目元をぬぐう。しかし、ぬぐってもぬぐっても、涙は止まらなかった。
「……ごめんね、驚かせちゃって」
「……ううん。
 あの……」
 少女は言いよどむ。
 そうして、次の言葉を、彼女が口にしようとした瞬間だった。
「早苗ー! どこー!?」
 上から降ってくる声に、早苗は振り返り「霊夢さん」と声を上げた。
「あ、いたいた。
 あー……心臓に悪い。あんたがどこに……」
 霊夢が、その目を見開き、動きを止める。やや遅れてやってきた慧音も、「ああ、早苗殿。こんなところに……」と、そこまで言ったところで言葉を失う。
「どうしたんですか? お二人とも」
「あ……ああ……いや……」
「……早苗」
「はい?」
「……風邪、引くわよ」
 全身をずぶぬれにして、しとどに泣きはらした早苗を見て、霊夢は小さくつぶやく。
 そのすぐそばを、二匹の蝶がひらひらと舞っていった。



二日目 夜



「……霊夢殿。いつから、早苗殿がとりつかれていると?」
「んなもの、昨日の夜よ」
 やっぱり、彼女を一人にするべきではなかった、と霊夢は言った。
 夜を迎え、慧音は霊夢に『見ていくといい』と半ば強引に、彼女達が『家』として使っている家屋に引き止められていた。
 今現在、早苗の姿はそこにはない。湯浴みの最中だ。
「こんなものを、嬉しそうに『もらったんです』って……。そう言われて、『おかしい』って思わない理由、ないでしょ?」
「……ああ」
 先日、早苗がもらったという『手まり』。
 それを取り上げる霊夢に、慧音は小さな声でうなずいた。
 それは、幼い子供の頭蓋骨だった。しかも、まだ比較的新しいのだろう。完全に乾燥しておらず、所々に肉が残っている。
「あの子に話を聞いたのよ。都会ってどんなところ、って」
「……ああ」
「予想通り。
 確かに、あの子は神力を持っていて、神様の遣いとしてふさわしい霊格を持っているのかもしれない。けど、その格の高さは、言ってみれば『徳の高さ』にも近いわね。
 文字通り、あの子はこういうことに関しては素人よ」
 かてて加えて、あの子は優しい、いい子なんだ、と霊夢は続けた。
「周りを警戒しているあんた。妖を寄せ付けない私。
 隙のない連中ばかりの中にやってきた、隙だらけの娘。しかも、不浄の妖である自分たちにすら優しく接してくれる母性の持ち主と来れば、親が恋しい子供の幽霊がとりつかない理由がないでしょ」
「……確かにな」
 してみると、自分の責任か、と慧音はつぶやいた。
 早苗のような人間を此処に招き入れてしまったことを悔やむ彼女に『起きたことは仕方ない』と霊夢は諭す。
「とにかく、まずはあの子の目を覚まさせる。明日の朝一で、此処を漂う子供たちをあの世に送り還すわ」
「今夜ではダメなのか?」
「冗談。いくら相手が、半分悪霊になっていても、まだ子供よ。
 あの子達は、まだまだ遊び足りないだけ。同時に、自分たちを間引いた大人への怨念はすさまじいわ。こんな真夜中に『いい加減にしろ』なんて言おうものなら、本気の殺し合いになる。
 いくら私でも、子供を殺すのなんていやよ」
 だから、相手を眠らせるのなら、その力が著しく落ちる、昼の日差しの下で行うのが正しい、と霊夢は押し切った。
 夜は妖の時間。最も、彼らがその力を高める時間帯の『戦い』は、まさに生死を賭したものとなる。相手が本物の『悪霊』なら、それも望むところだが、『無邪気』という名の悪意に満ちた子供たちを相手にするのは、あまりにも忍びない。
 それが、霊夢の理由だった。
「……哀れな話だな」
「けど、あんたはそれを責められないんでしょ。私からしたらバカみたいな話だと思うけどね」
「わかっている。
 だが……それでもな。仕方ないと言いたくはないが……仕方ないんだ」
「どこぞの寺の奴らに頼みなさいよ。財宝を下さい、って」
「考えておくよ。割と真剣にな」
 ――そして。
「……早苗殿、遅いな」
 女の入浴は長いとは言え、長すぎる。すでに一時間以上が経過しているのだ。
 見に行くか。
 慧音が腰を浮かした、その時だ。
「……何の音だ?」







 ぴちゃり。









 ぴちゃり。











 ぴちゃり。











「……水の音?」
 霊夢が立ち上がる。慧音は『まさか』という顔を浮かべた。
 二人は居間を後にして、風呂場に向かう――しかし、その足は、土間に下りたところですぐに止まった。
「早苗……殿……?」
「あ……すいません、慧音さん、霊夢さん。
 お風呂に入って、汗をかいてしまったからでしょうか……喉が渇いてしまいまして」
 ごめんなさい、と笑う早苗の姿を見て、慧音は絶句した。
 風呂から上がって、そのままの姿で来たのだろう。裸身を濡らし、水がめの前で、ただひたすら水を飲む彼女。一体、どれほどの水を飲んだのか、その腹は大きく膨れ上がり、さながら妊娠したかのようだった。
 あまりの異様な光景に、一歩、二歩、と慧音が後ろに後ずさる中、霊夢の声が飛ぶ。
「慧音! 早苗を押さえつけて!」
 その一言で正気に戻ったのか、彼女は『わ、わかった!』と返事をして、早苗の腕を後ろ手にひねり上げ、その動きを拘束する。
「い、いたっ……! 慧音さん、何を……!」
「霊夢殿!」
「早苗! 今から、あんたについてるいたずら娘を引き剥がす! 抵抗するな!」
 構えるのは札と針。
 針に巻きついた札が鋭くとがり、ぎらりと光る。それを見て、早苗が恐れおののいた。
「い、いやーっ! やめてくださいっ! やめてっ!」
「なんて力だ……!」
「助けて! 助けて、誰かっ! お母さんっ! お母さん、助けてぇっ!」
 早苗の声が変わる。甲高い子供の声に。彼女の色を残しながら。
「聞け、いたずら娘!
 あんたが辛いのも悲しいのも、大人がみんな憎いのもわかるっ! けど、その子はあんたの母親じゃないっ!」
 霊夢が彼女に飛びつき、その口許を押さえる。
「あんた、このまま成仏してみなさい!
 おっかない閻魔様に怒られて、間違いなく地獄に落とされるわよ! そんなことになったら、誰が悲しむと思ってるの!
 一杯遊んでくれて、一杯優しくしてくれた、その子が悲しむのよ! あんた、それでもいいの!? とりつくくらい大好きになった人が泣く姿を見たいの!? えぇ!?」
 その一瞬、確実に彼女の動きが止まる。それを見逃さず、霊夢は手にした『針』を彼女めがけて突き刺した。
「……私だってね、女よ。わかるわよ……その気持ちくらい……」
 どうしようもなく、辛さと悲しみをかみ締める口調でそうつぶやく霊夢に、かくん、と早苗がもたれかかった。
「早苗殿、大丈夫か!?」
 慧音の声が響き、「……ん……」と、小さく早苗が呻いた。
 途端、彼女は口を押さえ、目を見開く。霊夢は彼女を連れてトイレへと駆け込んでいく。
 ――戻ってきた時、早苗の体は元に戻っていた。だが、その顔だけは元に戻らない。
「……よしよし。苦しいよね。悲しいよね。辛いよね。
 わかるよ。あんた、ほんとに優しいいい子だ」
 泣きじゃくる彼女を慰める霊夢の姿は、まるで、彼女の母親のようだった。
 その光景に、慧音は、ふぅ、と肩から息を抜く。






 ――その後ろで、ぴちゃり、という小さな音がした。







 翌日、病気にかかっていた全ての人間が死んだ。
 その火葬を行う傍ら、霊夢と早苗の二人は、間引かれた子供達の霊を供養するための儀式を行っている。
「早苗」
「……これは燃やせません。約束……しましたから」
「だからとりつかれるのよ。あんたは」
 聞けば、初日の夜から、早苗の記憶は曖昧なのだという。自分が何をしていたかをほとんど、彼女は覚えていなかった。
 しかし、その中で、一緒に遊んだ『少女』のことは鮮明に覚えていた。そして、彼女からもらった手まり――その頭蓋骨を『なくさないように』しなくてはいけない、という約束も。
 焚き上げの火の中に消えていく、たくさんの子供達の骨。その前で祈りをささげる彼女達。
 やがて、二人の耳に歌が聞こえてきた。
 その歌は、かごめかごめ。
「早苗。目を開けるんじゃないわよ」
 彼女達の周囲を、無数の子供の霊が取り囲んでいる。それを見据える霊夢を警戒してか、彼らは近寄ってこなかった。
 だが、しかし。









 かーごのなーかのとーりーはーいーつーいーつーでーやーるー










 その輪を、徐々に、彼らは縮めてくる。あくまで霊夢には近寄らず、その視線を、その後ろの少女に向けたまま。











 よーあーけーのーばーんーにー











「いたっ……!」
 髪の毛を引っ張られ、早苗は小さな悲鳴を上げた。
 手を、足を引っかかられる。
 体のあちこちに走る、小さな痛みに、彼女は歯を食いしばる。










 つーるとかーめがすーべったー









「うくっ……!」
「早苗、絶対に振り向くんじゃないわよ!」
 子供達が早苗の周囲を取り囲む。
 響く歌声に、早苗は答えない。目を閉じ、必死に祈りをささげる彼女の背中から、響く。













『後  ろ  の  正  面  、  だ  ぁ  れ  ?』












 ――ざっ、という音と共に、一陣の風が吹く。
 しんと周囲が静まりかえった。
「……ったく。最後の最後まで……」
 燃え盛る炎の中から、子供達の笑い声が響き、消えていく。
 早苗は、霊夢の後ろで泣いていた。
 優しいってのは、時には損よね。彼女は思う。少なくとも、霊夢のように、淡々としていれば、そんな思いをすることもなかったのだから。
 ひとしきり泣いて落ち着いたのか、ようやく立ち上がる早苗を連れて、霊夢は歩き出す。
 とりあえず、慧音と合流しよう。完全に廃村となってしまったここから立ち去ろう。そして――、
「忘れてしまおう、と」
 後ろから声がした。
 振り返った先には、霊夢たちとは親しい関係にある亡霊の姫君が佇んでいる。
「それは悲しいわね。生きるものにとって、最も辛いこと。それは、忘れられてしまうこと」
「覚えておく必要のない記憶だってあるのよ」
「あなたにとってはね。
 けれど、その子にとってはどうかしら」
 彼女の言葉に、一瞬、身を堅くする早苗。その早苗へと、彼女――幽々子の影から、一人の少女が走りよる。
「あ……」
「……ごめんなさい」
 あの子供だった。
 新たに、早苗の目に涙が盛り上がる。そっと、彼女は少女を抱きしめて「……元気でね」とささやいた。
 少女はうなずくと、早苗の手にある、自分の頭蓋骨を持って、にこっと笑った。
「ありがとう、お姉ちゃん」
 少女の手の中で、その頭蓋骨は色鮮やかな手まりへと変わる。彼女はそれをつきながら、楽しそうに歌いつつ、その姿を消した。
「しばらくの間、あの子達は冥界で預かりましょう。閻魔様には、私から言っておきます」
「信用するわ」
「本来ならば、道を迷うもの達の道標となるべきは私のところ、あなた達には迷惑をかけました。
 これは、亡霊の姫としての、あなた達へのお礼と償いです」
 その手の扇が翻ると、辺りの風景が一変する。
 無数に咲き乱れる彼岸花の中、佇んでいた霊夢は早苗の手をとり「帰ろうか」と、小さくささやいたのだった。


「……ま、そんなことがあったわけ」
「何だか、話を聞く限りじゃ、おどろおどろしい怪談なのか、悲しい話なのかわからんな」
「あれから早苗が大変だったのよね。色々、母性に目覚めちゃって」
 何だそりゃ、と笑う魔理沙。
 彼女は手に持っていた彼岸花を『悪かったな』とつぶやき、元あった場所へと戻した。そうして、彼女はほうきに横座りになると、「魔理沙さんからの手向けだ」と言って、一陣の星を撒き散らして去っていった。
 霊夢はその彼女を手を振って見送った後、辺りを見渡す。

「蝶の名前は、別名、鬼車。鬼を乗せて運ぶもの」

 彼岸花の上を乱舞する蝶の群れ。
 彼女は空へと舞い上がりながら、その光景を見て、つぶやく。
「鬼とはすなわち、隠。そして、人は死して鬼籍に入り、鬼となる。鬼となって隠れていく。
 ……鬼の乗り物があんなにいるってことは、まだまだ還ってないものがたくさんいるのね。あそこには」
 紫に言って、この周囲を立ち入り禁止にしてもらおう。



 その場を飛び去った霊夢の足下に響くのは、子供達の甲高い笑い声と、薄気味の悪い童謡だけだった。
童謡の元は色々あれど、実際の歌詞は不気味なものが多いと思うのです。
怖いと言うより気味の悪い感じになるように書いてみたつもりですが、はてさて。

どうぞ、夜中に読んでみて下さい。
haruka
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.8100簡易評価
5.100名前が無い程度の能力削除
時を忘れ、思わず読み耽ってしまった。
10.100名前が無い程度の能力削除
不思議だ……何故かすがすがしいぞ
11.90名前が無い程度の能力削除
怖くはなかったけど、淡々とした、しかし陰鬱な雰囲気が良かったです。
13.90コチドリ削除
お話を読んでいる最中は、ずっとこのふざけた暑さを忘れることが出来ました。感謝です。
童謡、特に『かごめかごめ』は色々な解釈がなされていて、作者様の言われているように
かなり不気味なものもありますよね。
個人的にはこの物語もそれらに負けず劣らずだと思いますよ。何度も鳥肌がたちましたもの。

ところでこのようなお話では、作中の被害を被る登場人物や読者である私を日常に繋ぎ止めてくれる
アンカーのような存在が居てくれると凄くホッとするのですが、霊夢はまさにはまり役ですね。
博麗の巫女が与えてくれる安心感、プライスレスだぜ。

繰り返しになりますが、寝苦しい夜に一服の清涼剤を与えて下さった作者様に感謝を。
15.100名前が無い程度の能力削除
夜に読んだ、俺は負け組。
18.100名前が無い程度の能力削除
気味は悪いが、後味は悪くない
20.80名前が無い程度の能力削除
夜に読んで欲しいと書いてあったけど
確かに、きれいに終わっていてすっきり眠れそうですね
23.100名前が無い程度の能力削除
怖い!怖い!

でも、とても魅力的で暖かく、また美しい話だったと思います。

ありがとうございました。
24.100名前が無い程度の能力削除
ぞっとして どこか懐かしく
振り返ればすぐそこに居る
あの少女との思い出。



水底の彼女との思い出。
25.100名前が無い程度の能力削除
失われかけた日本の風土を感じさせてくれる作風が、なんとも懐かしく怖い良い作品でした。
読後感はなぜかすっきり。
31.100名前が無い程度の能力削除
単純なホラーじゃない所が素敵です
読後感が爽やか
38.100ケイ削除
久しぶりにゾクゾク来た。空気感が素晴らしい不気味を醸し出してますね。良い作品ご馳走様です
40.90名前が無い程度の能力削除
気味の悪さもあったけどなんか涙ぐんでしまった…… 霊夢のキャラがいい味だしてますね。
「ぜんっぜん、何にもわからん」
笑いました。
41.100名前が無い程度の能力削除
こういうホラー大好きです
42.100名前が無い程度の能力削除
二人とも優しいなぁ。
俺も霊夢に縋り付いて泣いてみたいw

お祓いする日に村人全員死んじゃったのは何でだったんだろう。
無邪気なだけだったのが明確な悪意に変わったから?
44.100名前が無い程度の能力削除
結構な長さが全然気になりませんでした。
うん、童謡とかって冷静になって考えてみると怖い要素って多いですよね。
子供に対する戒めみたいなものも含まれてるのかな。

しかし霊夢かっこいい
45.100奇声を発する程度の能力削除
おお…鳥肌が…
47.90名前が無い程度の能力削除
これは…背筋に来ますね。朝っぱらに読みましたがそれでも怖かったです。
49.100名前が無い程度の能力削除
驚くほど読後感が良い。ホラーを読んだ後とは思えない。
良いものを読ませていただきました。

しかし、こういう時の早苗さんは、まさに女神ですね。人間だけど。んでもって霊夢カッコいい
52.90名前が無い程度の能力削除
正体不明のものに対しては薄気味悪さを感じずにはいられない。
このお話も例外ではなかったんですがなんでしょうね、
このお話はろうそくが燈された暗がりの中でおどろおどろしく語るよりも、
それこそ霊夢がやったように淡々と語るほうがふさわしいと思いました。
きっとこのお話で発揮された霊夢と早苗さんの人間性が、
私にそんな感想を抱かせたんでしょうね。
58.100名前が無い程度の能力削除
巫女っぽい霊夢久々に見た
61.100名前が無い程度の能力削除
いやあ、読ませてきますね。
夏の終わりにいいものをありがとうございます。
エンターテイメントはこうじゃないと。
63.100名前が無い程度の能力削除
良いものを読ませていただきました。
ただただ感服です。
66.90名前が無い程度の能力削除
夕方に読んだ私は負け組w
人選、物語の組み方、語り口、どれも申し分ありません。
ただ村人が全員死んだ理由だけが気になって、この点数にいたしました。
67.100名前が無い程度の能力削除
色々母性に目覚めた早苗さん………ゴクリ
73.100名前が無い程度の能力削除
妊娠したかのようにお腹を膨らませた早苗さん………ゴクリ
88.100名前が無い程度の能力削除
良かったです。
90.100名前が無い程度の能力削除
そういえば霊夢は巫女さんだったな………ゴクリ
92.100名前が無い程度の能力削除
ホラーかと思ったらエロかった。
94.100名前が無い程度の能力削除
霊夢のはまり役っぷりがすごい。
あと、端々に込められたホラーというよりは怪談といった風の、薄暗がりのびっちょりした感じでよかったです。暗い部屋の中で囲炉裏の炎が横顔をチロチロ照らす様が目に見えるようでした。
99.80deso削除
頼れるお姉さん風の霊夢が素敵でした。
107.100名前が無い程度の能力削除
夜に読んだのは正解でした
109.100名前が無い程度の能力削除
夜に読んで正解だった
面白かったです
111.100名前が無い程度の能力削除
おお・・・。
113.100MR削除
日本古来の怪談って感じが良いね。

夏の夜に見るのがピッタリな作品だね。
114.100名前が無い程度の能力削除
完全に引きこまれ、よみふけってしまいました

良い意味で怖いというより、気持ちの悪い話でした
117.100名前が無い程度の能力削除
オカルトものの小説を読んでいるかのような感想。
お祓いシーンで宜保愛子を幻視した。
村人は全員亡くなって廃村とか、救いないなぁ
それもまた不気味さの演出なのかもしれんけど
118.100名前が無い程度の能力削除
背筋冷えるミステリというかホラーというか、それでこのさっぱりとした読後感はすごい。
日本人の文化的面から来るぞくっと感は覚えておくべき感情だなぁ。
しかし、こういう時の本業モード霊夢はかっこいいですね。
122.100名前が無い程度の能力削除
>「文字通り、隠されるわけだ。
> 祟りも妖怪も、かつてはみんなが恐れていたのに、いつしか誰も恐れなくなって。そうして、忘れられていった奴らが此処に集まってくる。
> どっちが自然なんだろうね」
> 忘れられている状態と、覚えている状態と。

私が初めて幻想郷の設定に魅力を感じた時のことをこのくだりで思い出しました。
幻想となってしまった陰の薄気味悪さと不思議と爽やかな読後感がとても印象的です。
125.100名前が無い程度の能力削除
面白かった!
128.100名前が無い程度の能力削除
日本の古き良き怪談といった雰囲気。
涼をいただきました。
133.100名前が無い程度の能力削除
大変良かったです。
135.100名前が無い程度の能力削除
大変面白かった。
なんというか、独特の雰囲気を感想で現せなくて困ってしまった。
141.100名前が無い程度の能力削除
これ
環境音と子供の笑い声と「かごめかごめ」が流れるサウンドノベルに仕立てたらお金取れますね
スゲー怖いと思う
143.100名前が無い程度の能力削除
GJ
146.100名前が無い程度の能力削除
物悲しい……
147.100名前が無い程度の能力削除
すばらしい
151.100名前が無い程度の能力削除
\すげえ!/
155.100名前が無い程度の能力削除
残暑厳しい投稿直後に見なかった事を後悔。
怖くも哀しくそして面白い話でした。
ところどころに挟まる霊夢の独白が非常に濃いのがとても印象に残りました。
158.100刻の旅人削除
童謡とはつまり動揺であり、心や物事の揺れ動く様を伝えるために、歌謡として童に伝わったのかもしれません。

霊夢のお姉さん姿が大変素敵でした。
160.100名前が無い程度の能力削除
何なんだ…この感覚は…
163.100名前が無い程度の能力削除
霊夢の達観具合が素晴らしい
166.100名前が無い程度の能力削除
かーごーめーかーごーめ 後ろの正面だぁれ?

えっと××ちゃん、つぎはあなた?
169.100名前が無い程度の能力削除
怖くて、切なくて、哀しい。それでいながらどこか懐かしく、奇妙なぬくもりがあった。
上手く言えないけど、人間の人間たる所以、なのかなと。

誰そ彼時、或いは彼は誰時にふと読み返したくなる作品でした。ありがとうございました。
188.100名前が無い程度の能力削除
凄い
切なさと怖さと何か、言葉にできないものを感じました。
貴方のホラーをもっと読みたいです。
191.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい

こんな感じの話をもっと読みたい
198.100名前が無い程度の能力削除
切なすぎる・・・
200.100名前が無い程度の能力削除
「ホラー」のタグに引っかからないのが惜しい!
実に美しい怪談でありました
201.90名前が無い程度の能力削除
早苗さんが女神過ぎて、引きずり込まれて帰ってこなくなるじゃないかとヒヤヒヤしたぜ
202.100名前が無い程度の能力削除
無意識にかごめかごめ口ずさんでた。おおぅ…
206.80名前が無い程度の能力削除
すっきりとした物語でした。
226.100名前が無い程度の能力削除
昼に読んじゃったから不気味さは薄れたけど、それでも面白かった。
廃村になるほど人が死んだってことは人間と妖怪のバランス崩れてそうだし、
人間はどうやって補充するんだろう?生き残りに子供作らせるだけじゃ足りなさそうだし
外の世界からもってくるのかな
231.無評価名前が無い程度の能力削除
作品自体は、ホラーでしたけどここの霊夢が出て来ると怖さは減りますね。
その影響も在ってかサラッと読めた気がします。