Coolier - 新生・東方創想話

おかねがない!

2010/08/28 16:05:33
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 IN博麗神社。

「お賽銭(かね)がない」
「お賽銭に私欲に塗れたルビ振るの止めようよ……」
「じゃあお賽銭をする人間達は私欲に塗れてないとでも言うの?神様に願い事してまで自分の欲を満たそうだなんてホント尊敬に値するわ。私もお賽銭入れちゃおうかしら入れるお金なんか一銭たりともな・い・け・ど・ねー!ふんっ!!」

 お金がない!と霊夢が騒ぎ出すのは何も今日に限ったことじゃない。
 しかし、今日はいつもと様子が違った。
一日三めざしで一ヶ月も生活してたら仕方ない気もするが。

「大体ね萃香。アンタも家でご飯食べてるんだから食費払いなさいよ!」
「それを言ったら魔理沙だって紫だってレミリアだって…ここに遊びに来る奴はほとんど食べてるじゃん」
「アンタは完全に住み込んで――」

 待てよ、と言って霊夢が黙り込む。
 嫌な予感がしたので即座に脱出を決め込んだ私の頭の上を数百の針が通り抜け、逃げの動きを牽制した。

「ひぃぃ!?」
「取りたてればいいのよ!食費を!」
「……まさか全員から?無理だと思うよ……?」
「やる前から諦めれるなら神様なんか必要ないわ!さぁ、ちゃっちゃと出掛けるわよ」
「いってらっしゃ――」

 スココン。

「アンタも行くのよね?」
「……アイ、マム」

 強制連行と相成った。
 こうして、霊夢(とついでに私)の「食費取りたて作戦」が始まった。



 IN紅魔館。

「まずはここからでしょう。やはり」
「ま、建物の外観からだと一番お金持ってるイメージあるけどさ……。実際のところここの奴らって何食ってんだかわかんないじゃん。食材が人間だったらノーコストなんじゃないの?」
「……アンタ妖怪じみた発想するわね」
「鬼だけどね」
「まぁ吸血鬼に関してはそうかもしれないけど、メイドとかそこで寝てる門番とかは別でしょ」

 そこ、と言って霊夢が指差した先には何故か片手逆立ちしたまま鼻ちょうちんを作っている門番の姿がある。
 名前は確か……中国。

「――紅美鈴です!」
「うぉ!?起きた!?」
「ん~……むにゃむにゃ。もう食べられないですよ咲夜さん……うへへ」
「……寝てるわね」
「なんてテンプレじみた寝言を……というか片手逆立ちで寝れるってすごいな」
「身体自体は鍛えられてるみたいだしね。あんなデカイ乳ぶら下げて逆立ちとか良くやるわ」
「……悔しいから揉んでいこっかな」
「やめなさい。――後で枕を濡らすことになるから」

 その後、額に「中」と落書きした私達は難なく紅魔館へと入り、その辺で捕まえたメイド妖精の案内を受けて紅魔館の主の部屋に至った。

「霊夢!?どうしたの今日はわざわざ…もしかして私に会いに――」
「まぁ大体そんなとこよ。レミリア」
「嬉しい!!ふふふ、じゃあ今日は朝までツイスターゲームとでもシャレこんじゃう……!?」
「そんなノリではないのよ。レミリア」
「なんだ…残念。まぁでも良いわ。……私の霊夢が私のためにここに来たことが大事」
「別にアンタの物にはなってないけどね」

 部屋に入ると同時に霊夢に飛びついたレミリアは、一瞬で二人だけの世界を作り上げて一方的にいちゃつき始め た。
 一方、部屋の中でレミリアの話相手でもしていたのだろう咲夜は微笑を浮かべたまま部屋の隅へと下がり、その様子を眺めている。
 居場所の無い私が何となくその隣に行くと、どこからか呪詛が聞こえて来た。

「お嬢様が霊夢を嫌いになりますようにお嬢様が霊夢を嫌いになりますようにお嬢様が霊夢を――」
「咲夜も難儀だね……」

 メイド長の嫉妬の声だった。

「それで本題だけど――」
「ん。えぇ、聞きましょうか。……聞いたらツイスターやってくれる?」
「前向きに検討する系の善処をするわ」
「やった!!じゃあ聞く!」
「金を寄越せ」
「――はい?」

 うわー。ストレートに言ったなぁ。
 おかげでレミリアが口を開けたまま固まっている。
 と、私の横で呪いの言葉を放っていた咲夜が飛び出していき、レミリアの肩に手をかけてその身体を軽く揺すった。

「ダメですよお嬢様!こんな小汚い貧乏巫女に素直にお金を渡したら!調子に乗って何度も何度もせびりに来るに決まってます!その内同棲し始めて最終的にはヒモになるんですよこうゆうのが!!」
「何度も来る……同棲……?」
「そうです!こんなのを紅魔館の中に置いておくわけに――はっ!?」

 そこで咲夜の言葉が止まる。
 それが、自分の発言の危険度に気付いたからなのか、目の前で瞳を輝かせているレミリアを見てしまったからなのかは解らないが。

「良いわよ!いくら欲しいの?」
「とりあえず諭吉が一人」
「お、お嬢様!ダメですってば!!」
「何を遠慮してるの!霊夢のためなら諭吉の百人や二百人――」

 ドカン。
 不意に起きた爆発がレミリアの身体を吹き飛ばした。
 レミリアはそのまま飛んでいき、壁にぶち当たり、人型の穴を開けて外へ落ちて行った。

「お、お嬢様ぁぁぁぁ!!」
「ダメだって言ってるでしょ。レミィ」

 扉を開けて現れたパチュリーは片手に魔道書を持ったまま、開いた魔道書に溜め息を落とす。
 数秒としない内に轟音が響き、部屋の別の場所に穴が空き、そこからレミリアが戻って来た。

「パチェ……否、パチュリー・ノーレッジ……!貴様、私の愛の前に立ちはだかるつもりか……」
「お金で買える愛に大した価値なんてないでしょう。というかこの子はこれでも一応かろうじてギリギリなんとか巫女属性を持てる程度には巫女なんだから、神社から引っ越しては来ないわよ」
「そんなん知るか!霊夢が遊びに来る可能性がコンマ1%でも上がるなら私は金を惜しまない!そしてその邪魔をする貴様を容赦しない――!!」
「怒りに身を任せたレミィなんて取るにたらない相手だわ。――三秒で沈めてあげる」

 二人の間に火花が散ったかと思った直後、激突と爆発が連続し始めた。

「無理っぽいし私達は帰るから。ほら、行くわよ」
「え?これ放置で帰っちゃうの?ねぇ!?」
「ま、頑張って。――それじゃさいなら!」

 レミリアが空けた穴から外へと飛び出し、紅魔館を後にする。

「この人でなしぃぃぃぃぃぃっ!!!!」



 IN八雲家。

「案内御苦労様」
「うっ……うっ……らんしゃまぁ~……」

 (霊夢が強引に捕まえた)橙に道案内をしてもらい、迷うことなく辿り着いた。
辿り着くと同時、音速を超える勢いで走って来た藍が橙をかっさらい、こちらを睨みつけた。

「貴様ら橙に何をしたぁあ!!」
「いや何って――。ちょっと可愛がってあげただけよ」

 またたびと猫じゃらしを使って懐柔しただけだ。

「は、辱められました……」
「貴様らぁぁぁ……!橙を甘やかしていいのは私だけだと決まっているのに!!」
「最低の上司ね。――その開き直りはある意味あっぱれだけど」
「なんで霊夢はそんな喧嘩腰なの……?」

 このままでは紅魔館の悪夢再びな気がしないこともない。
 取りたての成功はまず有り得ないだろう。

「あら。お客さんかと思ったら霊夢じゃない」
「やっほー紫。早速だけどお金ちょーだい」
「いいけど……。何かサービスしてくれるの?」
「お祓いでもしてあげましょうか?」
「……嫌がらせでしかないわね。私としてはもっとこうエロスの香り満点なサービスが良いわね」
「じゃあ今度阿求が趣味で書いてるエロ草子買って来てあげる」
「……ちょっと興味あるけど遠慮しとくわ」
「面倒ね。何がしてほしいか直接言いなさいよ」
「セッ――」
「待った待った待った!!昼間から何を言おうとしてんの!?」

 R-18指定にでもするつもりなのかこのBBAは。
 慌てて止めた私の隣で、橙の耳を塞いでいる藍が安心したように溜め息を吐いている。

「接吻って言おうとしたんだけど……ダメだった?」
「ややこしいな!というかさっきカタカナだったのに!!」

 ニヤニヤと笑っているところを見ると狙ってやっているらしい。
 相変わらずやることが厭らしい。

「で、接吻でいいの?」
「え……いいのって、良いの?ほっぺとかおでことかじゃないわよ?」
「こうゆうことでしょ?」

 紫の正面に回った霊夢は、少し背伸びしながら紫の肩と背に手を回して紫の身体を引き寄せ、唇を軽く重ねた。

「――――っ!!!?」

 見る見る内に赤くなっていく紫と対照的に、普段通りの霊夢は唇を離すとすぐに手のひらを差し出した。

「はい、お金ちょーだい」
「なっ……ななっ……!!何を……考え……!?」
「何よ。アンタが言ったんでしょ」
「う……うぅ……!」

 真っ赤になった紫はもじもじしながら私達に背を向け、空間に隙間を開いてそこに飛び込んで逃げた。

「あ!逃げた!!」

 ヒラリ。
 紫が逃げ込んだ隙間の後から、一枚の紙が落ちてきて、霊夢の足元に落ちた。

「『また今度来て』。――だって」
「まぁ今顔合わせられないだろうしね……」
「あー……ごほん」

 またダメか、と言って溜め息を吐く霊夢の隣、橙の目と耳を塞いでいる藍が解り易く咳払いをして、薄く頬を染めたままこちらを横眼で見て屋敷へと上がっていく。

「用事が済んだなら帰ってくれ。――じゃあな」

 ピシャリと扉が閉められ、二人で取り残された。
 まぁ帰り道で迷うことはないだろうから構わないのだが。

「それじゃ、次行きますか……はぁ……」
「あはは……折角身体張ったのに残念だったね」
「まぁ減るもんでもないし、次来た時にちゃんと絞り取るとするわ」
「さいですか……」



 IN霧雨家。

「来たわよ」
「いきなりだな。せめてノックくらい……というか扉から入るくらいの常識は持ってきてくれよ」

 扉が開かなかったので窓から侵入(ダイナミックエントリー)してしまった。
 霊夢が極端なまでに短気になってきているので、ある程度の破壊行動は仕方ないかもしれない。
 というか死んだ魚のような目をした霊夢の奇行はとても止める気になれない。怖い。

「で、何の用だ?宴会のお知らせなら喜んで回してきてやるけど」
「お金を出しなさい」
「……宴会用のか?無茶言うなよ。私だってそんなに余裕があるわけじゃ――」
「いいから出せよ!」

 バン、と壁を殴りつけた霊夢を見て魔理沙は固まり、そのまま何か呟きだした霊夢を刺激しないように、こっそりと私を引き寄せて囁いた。

「おい、なんだアレ。どうしたんだアイツ」
「極限にお金が無くて理性が吹っ飛び始めてるんじゃないかな……」
「それは……いつものことじゃないのか?」
「最近宴会多かったから普段の倍以上出費してたんだよ」
「あー……なるほど」

 なら仕方ないな、と言って魔理沙は霊夢に近寄り、その肩に手を置いた。

「先に言ってくれたらよかったのに、なんで一人で溜めこんじゃうかな」
「魔理沙……」
「ほら、持ってけよ。――私の気持ちだ」

 魔理沙がスッと取りだした何かを霊夢に握らせた。

「これは……」

 霊夢の手に握られていたのは、黄金色に輝く大きな――

「……キノコ?」
「あぁ。今朝取れた上物だぜ?――まぁまだ何のキノコかは調べてないんだけどな。多分食べれるんじゃないか?」

 ははは、と笑った魔理沙は霊夢の肩を叩き、部屋の奥からさらに多くのキノコを抱えてきた。

「この辺のも持っていっていいぜ。いつも世話になってるからな。はっはっは」
「………………」

 大量のキノコを押し付けられた霊夢は、しかし反応を示さずに黙ってうつむいている。

「……れ、霊夢?」
「なんだ?まだ足りないのか?でもそれ以上処分したいキノコは――。……あ」

 「処分」という言葉を聞いた瞬間、霊夢の耳がぴくりと動いた。
 直後、大きく口を開いた霊夢はキノコの山にかじりつき始めた。

「霊夢!?霊夢落ち着いて!」
「そうだぜ霊夢!キノコは生じゃなくて焼いたりした方が旨いんだぜ!?」
「そうゆう問題じゃないだろ!」

 魔理沙と二人がかりで霊夢を止めた時、霊夢はすでにキノコの山の半分を食べ終えていた。
 そしてその山の中にはあからさまに怪しい色をしたキノコの破片が幾つもある。

「ねぇ魔理沙」
「どうした萃香」
「なんか霊夢の身体に黄色い水玉模様が浮かびあがってきてるんだけど」
「それを言うなら全身真っ赤になって巨大化まで始めちゃってるじゃないか。ははは」
「ちなみにこれ効果ってどれくらいできれるの?」
「多分半日くらいじゃないか?」
「――なら逃げようか」
「――そうしましょうか」

見上げるほど(おそらく10メートル以上)の大きさになった巨大怪獣(霊夢)を残し、私達は逃げ出したのだった。
その後、巨大怪獣は博麗神社へと侵攻し、神社破壊し終わるとそこで居眠りを始め、その後は何をするでもなく半日後にはもとのサイズに戻っていったそうだ。(文々。新聞記者談)



 IN博麗神社跡。

「お金が無くて取りたてに行ったはずなのに何故神社が……修理費はどうしたら……」
「信仰集めをサボって楽しようとしたから神様が怒ったんじゃない?」
「神なんていない……!」
「まぁまぁ、次はもっとマシな案を考えようよ。ね?」
「お賽銭(かね)がなぁぁぁぁぁぁい!!」
お金がない!というドラマが再放送してたらしくテレビ欄にのってたんです。まぁ見たことないんですけど。

※残りのキノコは霧雨魔理沙が美味しく魔法実験しました。
依玖
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コメント



0.1190簡易評価
18.50名前が無い程度の能力削除
台詞が誰のものなのかわかりにくいです
20.10名前が無い程度の能力削除
意味不明でかつ面白くない。
キャラ崩壊物はそれなりに好きなはずなのに。
21.90名前が無い程度の能力削除
結構こういうのは好きだな
22.60名前が無い程度の能力削除
なんとなく晴れときどきぶたを思い出した
23.80ワレモノ中尉削除
これはなかなかのぶっ壊れSSですねw
そして紫様可愛すぎるでしょうマジで!
因果応報的なオチも良かったです。神社はこの後どうなったのやら…。