Coolier - 新生・東方創想話

パーフェクトメイド神綺ママ

2010/08/13 19:47:09
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目を開けて時計を見て、夢子はベッドから飛び起きる。
いけない、寝坊してしまった。
「あら夢子様、起きました?」
「…………」
夢子は言葉を失う。
「朝食の用意は出来てますよ」
目を擦る。
「どうしました?」
「…………神綺様、何やってるんですか?」
そこにはメイド服を着た神綺が笑顔で立っていた。














パーフェクトメイド神綺ママ

















「今日は私が夢子様のお世話をしますから」
「神綺様、落ち着いて下さい。昨日の夕食に何か悪いものが入ってましたか?」
「またまた、お上手ですこと」
神綺は微笑む。
何故こうなったか分からないし、何がお上手なのかも分からない。
「……困った顔も可愛いわよ。あら、そんな顔しないでよ」
やっといつもの神綺へと戻る。
「これは何です?」
「たまには私が夢子ちゃんのお世話してあげようと思って~。だからほら、何でも言ってちょうだいな」
「……また思いつきですか。それにそのメイド服、私が昔着てたやつですよね?」
神綺が着ているメイド服は、今の夢子と同じ赤いものだが、サイズは夢子より小柄な神綺にぴったりの大きさてなっている。
「掃除してたら出て来たの。懐かしくて~」
「それでこのような事を……」
「まあまあ、今日はどどーんとママに任せなさい。……夢子様、まずはお着替えしましょうか」
再び変なスイッチの入った神綺は笑顔で夢子に歩み寄る。
「じ、自分でしますから!」
「そう遠慮なさらずに」
「あ……きゃっ……だ、誰か!」
「じっとしていて下さいよ~」
その後、夢子の部屋から悲鳴が聞こえてきたが、事情を把握している他のメイド達は聞こえないふりをしていた。





朝からぐったりとした夢子と生き生きしている神綺は食堂にいた。
夢子はいつものメイド服姿ではなく、神綺の手作りの服を着てもとい着せられていた。
赤を中心としたその服は妙にフリルが多く、下はロングスカートでこちらもフリフリしている。
露出度が少ない所を見ると、製作中も一応理性が勝利していたようだ。
「夢子様、本日の朝食です」
「あ、ありがとうございます……」
笑顔な神綺に軽く頭を下げて、夢子は朝食を見た。
簡単なものだったが、自分が作るものより見栄えが良いと思う。
流石のママと言った所だ。
「いただきます」
夢子は橋を持ち口を付ける。
「やっぱりおいしいです」
「お褒め頂き光栄です」
神綺はにっこり微笑んだ。
「……その話し方、止めて下さいよ」
「う~ん、気に入ってたんだけど……」
そう言って唇を尖らせる。
「ならこれで良い?」
「はい、この方が落ち着きます」
「それでも今日は夢子ちゃんの面倒見るからね!」
「何で神綺様はこんな事でもきちんと最後までやり遂げるんですか……?」
「それが私のぽーりしー!」
「ポリシーです」
わざとなのか本気なのか分かりにくいボケを夢子は処理する。
「……神綺様が私の面倒を見られると言っても……私は何をすれば?」
「いつもの私みたいにすればいいんじゃない?お茶飲んだり、お昼寝したり、パンデモニウムって十回言えるか挑戦してみたり……」
「そんなことしてるんですか……?」
「難しいわよ?夢子ちゃんもやってみたら?」
夢子は初めは嫌そうにしたが、やがて小さく息を吸う。
「……パンデモニウムパンデモニウムパンデモニウムパンデモにゅっ!」
ばっと反射的に神綺の方を見る。無論神綺はにやにやしている。
「普段からクールな夢子ちゃんがにゅっ!か~」
「……わ、忘れてください」
燃えるんじゃないかと思うくらい顔を赤くした夢子は周囲で他のメイド達も微笑んでいるのを見ると、そのまま机に突っ伏してしまった。
普段は(神綺の前以外では)冷静沈着な夢子だけにメイド達も新鮮な気分を味わっていた。
「にゅっ!」
「許してください……」
突っ伏したまま、夢子は呻くように言う。





しばらくしてやっと復活した夢子は自室へと戻った。
「明日からメイド達に会えません……」
夢子はパンデモニウムにおけるメイドの指揮をとっているので、必然的に他のメイドとも顔を合わせる。
「あら、かえって人気が出るんじゃない?」
「そんな人気はいりません……」
「まあまあ、お茶でも飲んで元気出しましょ?」
落ち込ませた元凶は呑気にお茶の用意をする。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます……」
夢子は紅茶の入ったカップを受け取ると口に付ける。
「……美味しい」
「えっへん、日頃から煎れてる成果よ」
神綺は胸を張り、控えめだがしっかりある胸が強調される。
「あとお茶請けにこれ」
神綺はポケットに手を入れて、クッキーを取り出す。剥き出しで。
「遠慮します。いつのですか?」
「うん、まだ大丈夫みたいよ」
「ああっ!神綺様!危ないですからぺっしてください、ぺっ!」
「大丈夫よ…………洗剤みたいな味するけど」
神綺が若干顔をしかめる。
「それ私が昔着ていたやつなんですから年代物ですよ、そのクッキー……」
「という事はこれ夢子ちゃんが入れたのね。……未来でこうなる事を見通して」
「違いますよ!いくら昔の私だって神綺様に危害を及ぼすような事は……」
「そっちを否定してくれるのね。夢子ちゃんは優しいわねぇ」
微笑む神綺に再び顔を赤くした夢子は叫ぶように言う。
「いやっ!そんなっ!そういう訳では……、その……ですね……何と言いますか……」
次第に声が小さくなっていく。
「ふふ、分かりました分かりました。夢子ちゃん、私は朝終わらなかった夢子ちゃんのお部屋のお掃除しとくから、お庭でお昼寝でもしていらっしゃい」
「分かりました……」
なんだかいつもより疲れる……。
夢子は神綺が手を振ってくれるのに小さく礼をして、部屋から出た。
「さてとさてと、早速夢子ちゃんの下着でも……」
「神綺様」
「じ、じじじじ冗談よ……?」







パンデモにゅっ!事件によって、廊下ですれ違うメイド達から微笑ましいものを見るような視線を向けられた夢子だが、なんとか庭までたどり着いた。
「はぁ……」
置いてある長椅子に腰掛け、背もたれに寄り掛かる。
今日も魔界は良い天気だ。
心地好い陽気が夢子に降り懸かる。
「夢子姉さん?」
後ろからかけられた声に振り返る。
「あら、珍しいわね」
そこに立っていたのは帽子を被っていて糸目のルイズ。夢子の妹である。
「旅行から帰ってきたからお土産をと思って。隣良い?」
夢子が無言で頷くとルイズは隣に腰を下ろした。
そしてルイズは夢子を見て小さく震えていたが、やがて我慢の限界を超え、珍しく吹き出した。
「姉さん、その服……」
「こ、これは違うの!神綺様が無理矢理……私の趣味じゃ……」
普段物静かなルイズに珍しく、声を出して笑っている。
「流石神綺様……それにしても……姉さんがフリル……うふふ」
「今日は厄日だわ……」



「それでその時の神綺様ときたら……」
「あら、姉さん大変だったわね」
夢子の話にルイズはクスクス笑いながら相槌をうつ。
ルイズが一通り笑い終えた後は、夢子が愚痴を交えて最近の出来事を話した。
「だいたい神綺様は……」
「姉さんは本当に楽しそうに神綺様の事を話すわね」
「そ、そう?」
「ええ。でもそれもしょうがないかもしれないわね。神綺様は姉さんの話ばかりするし……」
ルイズは思いだし苦笑する。
「神綺様が?」
「この間夢子ちゃんと~、そうそう夢子ちゃんが~、これは夢子ちゃんに~、って感じよ。もちろん私の事も気にかけてくれるから、良いお母さんよね」
「それは否定しないわ」
「姉さんはずっと……それこそ私が生まれる前から神綺様の傍にいたからね。姉さんの神綺様に対する思いは誰よりも強いし、神綺様は皆を愛する中で姉さんを誰よりも深く愛している」
「…………」
夢子は黙って聞いていた。
「姉さん覚えてる?ずっと昔、まだアリスもいなかった頃、ユキとマイが悪戯で神綺様に怪我させちゃった事。怪我って言っても小さな切り傷だったけど」
「そんな事もあったわね……」
思い出したくなかったという表情を夢子はした。
「神綺様は怒ってなかったんだけど、姉さんは凄く怒ったよね。ユキとマイを並ばせて頬をパシーンって」
「ええ……」
「それで、ユキとマイの悪戯に怒らなかった神綺様が姉さんには怒った。それは……」
「ルイズ、私だってもうその意味が解るくらいには成長してるわよ」
神綺は夢子に人を傷付けさせたくなかった。ユキとマイが神綺に怪我をさせたのは事故であって二人が望んだ事ではない。
しかし夢子が二人を叩いたのは自我であり、事故ではない。
つまりはこういう事だろう。
「そういえばちょっと前には……」
「ルイズ、昔の話をされるのは好きじゃないの」
「どうして?」
「過去の私は間違いだらけ、その間違いに再び触れたくないだけよ」
今この時だって未来から見れば間違いなのかもしれない。
「でもその間違いがあるからこそ、今の姉さんがいる。ならばその成長の道筋をたまに触れてあげても良いんじゃないかしら?」
「……貴方はたまに良い事言うわね。ちょっとロマンチストだけど」
「旅人はロマンを抱くものなのよ」
「ロマンって抱くものなの?」
「私の中だと」
久しぶりの姉妹の会話が夢子にはとても心地好いものだった。



「姉さん……寝ちゃったみたいね……」
ルイズは肩に寄り掛かる姉を起こさないように空を見上げた。
「あらルイズちゃん、帰ってたの?」
神綺が後ろから近寄ってくる。
「はい。でもお土産渡したらもう次に行こうかと」
ルイズはお土産の箱を神綺に手渡した。
「いっつもありがとね」
にこにこして神綺は箱を受け取る。
「いえ、私は神綺様の娘ですから。母さんにお土産を買うのは当然です。……私はもう出掛けないと……だからママ、夢子姉さんをお願い」
子供の頃に戻ったような無邪気な笑みを浮かべ、ルイズは自分のいた場所に神綺を座らせた。
「可愛いルイズちゃんの頼み、引き受けましょう」
「じゃあ神綺様、行ってきます」
「あ、ちょっと待って。ルイズちゃん、顔寄せて」
手招きされるままに顔を近付けたルイズの頬に神綺は優しくキスをした。
「行ってらっしゃい」
「…………はい」
顔を真っ赤にしながらも笑顔を浮かべたルイズは最後に小さく会釈すると去っていった。
「みんないくつになっても可愛いわね~。ほら、ぷにぷに~」
肩に寄り掛かって寝る夢子の頬をつつく。とても柔らかい。
夢子は小さく、なんとも判別しがたい声を漏らした。





ぽかぽかしてて
ほわほわしてて
とっても気持ちが良い。
このままずっとこうしていたい衝動に駆られる。
しかしそんな思いも虚しく私の脳は着々と冴えていってしまう。
「お目覚めかしら?」
優しい声がかけられた。
「神綺様……?」
「そうよ」
私はどうしたんだっけ?
ええと、ルイズと話してて途中で寝ちゃったはず。
今は庭ではなく自分の部屋。元からそんなに汚れてはいないが、よりいっそう綺麗になっている。
ついでに神綺様の膝の上でもあるようだ。
寝ている私の頭の下には柔らかい太ももがあり、小さい……もとい控えめな胸の上から見慣れた優しい顔が微笑んでいる。
「何で膝枕に?」
「膝枕は男のロマンらしいわよ」
私は女ですけどね。
「お部屋のお掃除大変だったわ。それにしても夢子ちゃん、エッチな本とか隠してないのね」
「も、持ってるわけないじゃないですか!」
顔に血液が回る。
なんて事を言い出すんだ。
「それはともかく夢子ちゃん、私は今日一日で学んだ事があります」
「なんですか?」
「やっぱりメイドは大変ね」
「私も、働いてた方が気が楽です」
二人で顔を合わせて苦笑する。
「でも神綺様は私以上の仕事をします。料理だってお掃除だって、私なんか必要ないんじゃ……」
「夢子ちゃん」
神綺様の声音にはっとする。
「私は夢子ちゃんを必要としているし、頼りにしているし、信頼している。だから嘘でも冗談でも、そんな事は言わないで……」
とても悲しそうな顔をされてしまった。
「ごめんなさい」
「それに、自分でやるのめんどくさいしね~」
神綺様は表情を一変させて笑った。
「そうですね。神綺様に全部任せてたら魔界が滅亡します」
「それ酷くない!?」
「神綺様が疲れてしまって、という意味ですよ」
「違った!今の絶対違ったよ!」
わんわん叫ぶ神綺様の膝の上で私は自分の存在を改めて確認する。
神綺様の為に私は尽くす。ほどほどに。
「さて、明日からは私がまた頑張らないと」
「そんな夢子ちゃんに労いのプレゼントを……う~ん、ルイズちゃんのと同じじゃねえ……」
何かぶつぶつと呟いている。
「神綺様、一体……?」
言い終えるか終えないか、そのくらいに私の唇がふさがれた。
神綺様の柔らかな唇によって。
少しして神綺様は唇を離す。
「夢子ちゃん、顔真っ赤」
「………………」
笑われているがそれどころではない。
「夢子ちゃん?」
「…………魔界は……青かった……」
「夢子ちゃん!?しっかりして!別に青くないわ!」
このあたりから記憶が曖昧だ。
でもこれだけは言える。
私は今、幸せです。
タイトルの割には夢子ちゃんメインだったり
魔界は可愛い人ばっかりですね
鹿墨
http://haisuinozin.jugem.jp/
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コメント



0.1740簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
良いお話でした。
5.100名前が無い程度の能力削除
魔界が可愛すぎて生きるのがつらい
10.100名前が無い程度の能力削除
魔界が可愛い過ぎて里帰りが辛い
12.100名前が無い程度の能力削除
にゅっ!が俺のストライクゾーンだったらしく、しばらく顔のニヤケが収まらなかった
それはともかく、いいお話でした
18.100名前が無い程度の能力削除
浅めの話かと思いきや、要所要所に落とし穴のような深みのある会話が。
見事にはまってしまいました
23.100名前が無い程度の能力削除
ヒャーーーッホウ!
24.100名前が無い程度の能力削除
にゅっ!にやられた
25.100名前が無い程度の能力削除
にゅっ!
28.100削除
えっちな物はなくても、神綺さまの写真が大切に仕舞われてるんですよ……






ところで、パンデモにゅっ! の前にミルクパイを付けると素敵な事になると思うの!

……ごめんなさい
29.無評価鹿墨削除
皆さんコメントありがとうございますこんなにコメントされるなんて思ってもみませんでした

>>5、10
魔界って怖いですね

>>18
神綺様の本気です。たまに見せる本気によってカリスマを回ふk……
元からありませんでした。

>>12、24、25
夢子さんのこの名言は後に魔界神によって魔界全土に広められていきます。

>>23
ヒョーーーウゥ!

>>28
本当だわ。まあ素敵。
31.100名前が無い程度の能力削除
とても、ほのぼのとして、いい作品だと思います。

ひとこと言わせてください。

パンデモにゅっ!
41.80名前が無い程度の能力削除
パンデモにゅっ!
45.100プロピオン酸削除
神綺様に膝枕していただきたい