Coolier - 新生・東方創想話

悪魔のわがままな人形遣い

2010/08/09 15:34:59
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*この話は、作品集121『被告人レミリア・スカーレット』のサイドストーリーになります。
 ですが読んでなくても何ら支障はありません。そのまま下へお進みください





梟が鳴く月の刻

「ようこそおいでくださいました」

客人に対しアリス・マーガトロイドは深々と一礼する。

「お招き与り感謝するわ」

レミリア・スカーレットは頭を動かすことなく謝辞を述べた。
そしてアリスが頭を上げ、レミリアと目を合わせると、二人同時に笑い出す。

「ふふふ、堅苦しい挨拶はこれぐらいにしましょアリス」
「そうね、ようこそ真夜中のお茶会へ。歓迎するわレミリア」




居間にはすでに2人分の席が用意されていた。
レミリアが奥側の席に着くと、焼き菓子の甘そうな匂いが漂ってくる。
アリスが反対側の席に座ると、テーブルの上の人形が2人のティーカップに紅茶を注ぐ。

「あなたから、お茶会を開いてほしい、なんて手紙を受け取ったときは驚いたわ。
 しかも2人きりでなんて、一体何を考えているのかしら?」

アリスは紅茶を飲みながら、レミリアに問いかける。
もっともおおよその察しはすでについているのだが。

「まるで何か企んでる、みたいな言い方ね。私はただあなたと話がしたかっただけよ」

レミリアはスコーンを食べながら、アリスの問いに答える。
白々しいわね、と内心思いながらアリスはクッキーを齧った。

「どんなお話なのかしら。ぜひ訊きたいわね」
「やれやれ、アリスは存外せっかちなのね。ムードも何もあったもんじゃない」

レミリアは軽く首を振ると、楽しそうに笑いながら話を始めた。

「ねえアリス、七色の羽を持ったフランドール・スカーレットは私のものよ」

勿論アリスは知っていた。
というより、幻想郷においてスカーレット姉妹の爛れた関係を知らぬ者などいない。

「七曜の魔女パチュリー・ノーレッジも私のもの」

それも知っている。何度も図書館に通っていれば、嫌でも2人の関係は耳に入ってくる。
もっとも、フランドールにしろパチュリーにしろ、一方的に『もの』などといえる関係でないのは、アリスもよく分かっていた。
レミリアは椅子から浮かび上がり、アリスの顔に手が届く程度まで一気に近づく。

「だから七色の人形遣いアリス・マーガトロイド」

そしてアリスの顎に手を添えると、

「あなたも私のものになりなさい」

たっぷりの自信と、威厳を込め、アリスに告げた。
その言葉に、アリスは頭を抱え深くため息をつく。

「もしかしてあんた、それで人を口説いているつもり?」

これは無い。はっきり言ってこれは無い。予想してたけどこれは無い。
怒りとかそういうものを遥か彼方に置き去りにして、アリスは心の底から呆れかえった。
有史来、本気でこんな口説き文句を言った奴などバカかアホかのどちらかだろう。

「それ以外の何に聞こえるのかしら?」

さも不思議そうに小首を傾げるレミリア。
レミリア・スカーレットはそのどちらかだったようだ。

「あんたって、ホントに自分勝手でわがままよね。」

思わず、思ったとおりのことがそのまま声に出た。
その言葉に、てっきり怒り出すかと思われたレミリアだったが、
楽しそうな笑みを崩さずに、アリスに言葉を返す。

「あなたがおとなし過ぎるだけよ」

そう言うと、何かを思いついたように手を叩く。
そして先ほどまでの楽しそうな笑みとは違う、まるで企み事を思いついたような笑みを浮かべ意外な提案をしてきた。

「そうだ。あなたも何か好きなことを言ってみなさい。特別に聞いてあげるわ」

アリスは一瞬呆気に取られるが、そこは魔法使いの端くれ。
すぐさま頭を回らし、悪戯を思いついた子供のような顔をレミリアに向ける。

「レミリア、私のものになって。もう紅魔館にも戻らず、ここで一緒に暮らしましょ」
「それはできないわ」

アリスの思った通り、レミリアはアリスの言葉を一蹴した。
アリスは肩を竦め、したり顔で

「ほらね。やっぱりあんたはむぐっ」

わがままよ、と言おうとしたが、その口をレミリアの指が素早く塞ぐ。

「でも、夜が明けるまで貴女だけのものになってあげるわ」

そして、アリスがまったく予想もしていなかった事を言ってきた。
レミリアの手がアリスの口から離れる。

「さあアリス、なんでも好きなだけわがままを言いなさい。
 私は今宵一晩貴女だけのものだから、何だって聞いてあげるわ」

レミリアは両手を広げ、心底楽しそうな口調でアリスに告げた。

「へっ?」

混乱するアリス。
レミリアはそんな様子をクスクスと笑いながら、

「ほら、何がしてほしいのかしら」

混乱から立ち直っていないアリスに言葉を促す。

「じゃっ・・・・・・じゃあね・・・・・・抱きしめて」

自分が何を言ったか、口にした後自覚したアリスは顔を耳まで赤く染める。
そんなアリスをよそに、レミリアはそっと彼女を抱きしめた。
両腕を回した後で、翼でアリスを包み込む。
アリスの鼻を、レミリアの香りが擽った。

不意に、アリスの目から涙が零れる。

「どうしたのアリス?」

背中を摩りながら静かに聞くレミリア

「・・・・・・昔ね、お母さんもこうやって抱きしめてくれたの。
 それを思い出して急に・・・・・・」
「甘えん坊なのね。アリスは」
「やだ、止まらない、恥ずかしいのに・・・・・・」
「無理に止めなくていいわ。貴女が泣き止むまでこうしていてあげるから」
「・・・・・・うん」

普段の言動や身形からはまったく想像できない、慈愛と包容に満ちた声に、アリスは素直に頷いた。
そのままレミリアの背中に腕を回すと、軽く抱きしめ返す。
2人はしばらく身動ぎすることなく、お互いを抱きしめ合った。






「ねえレミリア」
「レミィって呼んでいいわよ」

泣き止んだ後も離れようとしないアリスの耳元で、レミリアは密やかに囁いた。

「いいの? パチュリーが怒るんじゃない?」

もしパチュリーがこの事を知ったらどんな顔をするだろうか、とアリスは考えた。
きっと鬼のように怒るに違いない。そうなればレミリアとて只では済まないだろう。

「貴女が心配することじゃないわ」

アリスの心配をよそに、笑いながら即答するレミリア。

「ねえレミィ」
「何かしら?」
「素敵な子達に囲まれてるのに、私までほしがる強欲なレミィ、貴方は私のどこに惹かれたの?
 フランや咲夜やパチュリーと、並べて置こうと想うほど、私のどこが魅力的? ねえ答えてレミィ」

アリスの問いかけにきょとんとするレミリア。
やがてゆっくりと、子供を諭すように、言葉を紡ぎ出す。

「そう自分を卑下するものではないわ。あなたの魅力は他と比べるものではない。
 糸を操る繊細な指先、宝石のように澄んだ瞳、人形を思わせる整った顔立ち、貴女の全てがとても素敵。
 でも私が惹かれるのはそんなところじゃない」

顔を少し動かし、アリスの耳元に口を近づけるレミリア、
アリスは耳に息がかかるもどかしさに、少し身を捩じらせる。

「貴女の心、初心なのに芯の通った貴女の心に惹かれるのよ」

アリスは瞼を閉じるとレミリアの言葉を何度も何度も想い返す。
しばらくして目を開けると、軽く笑って返事をした。

「ありきたりね」
「失望させてしまったかしら?」
「いいえ、とても嬉しいわ」

アリスはレミリアを抱きしめていた手を離すと、
瞼を閉じながら、小さく小さく呟いた。

「キスして」

短いアリスの告白に、しかし悪魔は意地悪に笑う。

「どこにしてほしいの?」

何も言わず唇を重ねてくるものだと思っていたアリスは、目を見開いて言葉を失う。

「えっ? えっ?」
「アリスはどこにキスしてほしいのかしら?」

主導権を完全に握り、意地悪く笑っているレミリア。
急に恥かしくなったアリスは、耳まで真っ赤に染めあげて、消えるような声で呟いた。

「・・・・・・頬っぺたに」

アリスの言葉とほぼ同時に、レミリアはアリスの頬に口づけをする。
唇の感触を感じた瞬間、ビクッと体を強張らせるアリス。
そして唇が離れると、終わったという安堵と、
踏み込めなかった一抹の後悔から、軽くため息をつく。
だが、ここで終わらせるほど甘いレミリアではない。

「さあ、次はどこかしら?」

意地悪い笑みを強めながら、アリスの瞳を覗き込むレミリア。
紅い瞳に魅入られて、目を離せなくなるアリス。

「どうしたのアリス、早く言いなさい」

レミリアは指一つ動かせないアリスに追い討ちをかける。
しばらく2人は見つめ合っていたが、やがてアリスが観念した様に口を開く。

「唇に・・・・・・」
「よく言えたわ」

ゆっくりと重なる2つの影
そんな情景を、テーブルに置かれた人形が、静かに眺めていた。







「じゃあねアリス、また来るわ」

日も昇り、日傘を手に帰ろうとするレミリア。

「まって、お願い、もう少し、せめて夜になるまでここにいて」

後ろから抱き着いて懇願するアリス。
そんなアリスにレミリアは・・・・・・

A:「ダメよ。わがままを聞いてあげるのは夜が明けるまでの約束よ」
   →作品集121『被告人レミリア・スカーレット』へ

B:「まったくわがままな子ね。いいわ、夜になるまでよ」
   →このまま下へ






















日が午の方角に差し掛かる頃

「アリス、遊びに来たぜ!」

霧雨魔理沙は返事を待たずに仕切を跨ぐ。
しかし居間まで来た魔理沙を出迎えたのは、予想外の相手だった。

「あら、魔理沙じゃない」
「レミリア!」

魔理沙は自分の家のように寛いでいるレミリアに驚く。
だが彼女の驚きはここで終わらない。

「どうしたのレミィ、誰か来たの?」

台所から出てくるアリス。
エプロンをつけた彼女の両手には、皿に盛られらたスパゲッティが美味しそうに湯気を立てている。

「はい、レミィ」

そのうちの片方、少し赤みがかった方を、レミリアの前に置くアリス。

「ありがと、ふふふ、貴女のように美味しそうね」

当然のように受け取るレミリア。少し顔に朱が挿すアリス
まるで予定調和のような2人の様子に、魔理沙は思わず声を荒げる。

「なんでこいつが居るんだ! しかもレミィってどういうことだよ!」
「ええとね・・・・・・」

アリスは困ったように視線を宙に泳がせる。
そんなアリスの表情を、楽しそうに眺めていたレミリアだが、
急に何かを思いついたらしく、ゆっくりと見せ付けるようにアリスに近づく。

「どうゆうことってこういう事よ」

そのまま彼女の頬に軽く口づけをした。
顔を真っ赤にして俯くアリス。
その様子は、けして嫌がっているものではなく、ただ恥かしがっているだけだった。
いままで見た事がないアリスの表情に、唖然とする魔理沙。

「・・・・・・なんでだよ」

握りこぶしを固め、喉から搾るように声を出す。

「知ってんのか! そいつはな、実の妹にまで手を出すような最悪の変態なんだぞ!」

魔理沙の怒鳴り声に、しかしアリスはきょとんとして、

「知ってるわよそんなの・・・・・・でも、好きなんだからしょうがないじゃない」

と言うや、顔をさらに赤く染める。
がくっと膝を突く魔理沙。頭に被った帽子が床に落ちる。

何を思ったか、レミリアはそんな魔理沙に近づいていく。
魔理沙の顎を持ち上げると、

「んっ!!!」

なんの前触れもなく唇を奪った。
目を見開く魔理沙。一瞬頭が真っ白になるが、自分が何をされているのか気づくと、
腕を振ってレミリアを引き剥がす。あっさり離れるレミリア。

「何しやがる!」

レミリアを睨みつけながら怒鳴る魔理沙。

「あなたは、言葉を並べるよりこういう方が好みでしょう」

レミリアは澄ました顔で受け流す。
そして、悪魔の誘惑が始まった。

「寂しかったのね、魔理沙は」

まるで赤子を抱いた母親のような笑みを魔理沙に向ける。

「なっ、何を言ってるんだよ」

困惑する魔理沙、悪魔の言葉は止まらない。
ゆっくりと魔理沙に近づいてゆく。

「フランもパチェも咲夜も私のもので、アリスまで私のものになって
 でも大丈夫、心配はいらないわ」

魔理沙の目の前にきた紅い悪魔は、彼女の耳元で囁いた。

「あなたも私のものになるのだから」
「あ・・・・・・あ・・・・・・」

魔性の雰囲気に呑まれ、ろくに声を出すことさえできない魔理沙。

「頷くだけでいいわ。さあ、運命を受け入れなさい」

恐怖からか、それとも別の何かからか、魔理沙は全身を震わせる。
そんな魔理沙の頬を悪魔の指が優しく撫でた。
それだけで、魔理沙の中の何かが、音を立てて崩れ去った。

魔理沙の顔が僅かに動く。
悪魔はにんまりと笑った。






次の瞬間、レミリアに四方八方から糸が襲い掛かる。
瞬く間に縛り上げられ、10以上の人形に捕り囲まれるレミリア。
だがレミリアはまったく慌てる事無く後ろを向く。

「アリス、私は縛るほうが好みよ」

魔理沙もつられてレミリアの後ろに目を向ける。
そこにはアリスが指から糸を伸ばし、腕を組んで立っていた。
その雰囲気は先ほどまでのアリスとはまるで別人、さながら魔人。
悪魔に劣らぬその存在に、魔理沙はぞっと冷や汗を流す。
ほんの一瞬垣間見た、アリスの背中の6枚羽は、夢か現か幻か。
ギチギチとレミリアを縛っている糸が軋む。
あの糸一本一本にどれだけの魔力が注がれているのか、魔理沙には想像できなかった。

「レミィ、貴方がそういう人なのは知っているし、それも含めて好きになったけど、
 昨夜の今日で他の女にうつつ抜かされて、黙っているほど軽い女じゃないわよ、私は」

アリスは射殺すような視線でレミリアを睨み付ける。
レミリアの顔から表情が消えた。

「甘えん坊かと思っていたけど、そんな眼もできたのね」
「好みじゃなくて失望した?」

不敵に笑うアリス。

「とんでもない! 惚れ直したわ!」

にやりと笑ってアリスの予想通りの答えを叫ぶレミリア。
すでにレミリアの視界の中にも、思考の中にも霧雨魔理沙は存在していなかった。

「レミィ、二人だけで話しましょうか」
「強引なお誘いね、でも特別に受けてあげる」

アリスと人形たちは、レミリアを引きずりながら家の奥に消えていく。
居間には、呆然と座り込む魔理沙と、いまだ湯気を立てるスパデッティだけが残されていた。





どれだけの時間がたったか、スパデッティが冷え切った頃、霧雨魔理沙は無言で立ち上がる。
床に落ちていた帽子を被り直すと、玄関に向かって歩いてゆく。
家の奥に続く扉は開いていたが、そこに足を踏み入れる勇気はなかった。
歩きながら想う。

自分は弱い。
アリスよりもずっと弱い。
おそらくフランよりも、パチュリーよりも、咲夜よりも、弱いのだろう。
だったら強くなろう。彼女達と並び立てるほどに強くなろう。

霧雨魔理沙はそう決意して、最後に一度振り向くと、黄昏の空へ高く高く飛んでいった。
 ここまで読んでくださった方、ご足労おかけしました。
この話は前作品のサイドストーリーになる予定ものでした。分岐があるのはその名残です。
気がついたらこんなオチになってました。誠無計画にもほどがある。

追伸
 私事になりますが、ツイッター始めてみました。
ちょっと前に理解できずに挫折したので、2度目の挑戦になります。
ツイートはスィーツの仲間なのかと半ば本気で思いながら、東風谷早苗のミラクルツイートなんて変なこと考え、
横文字と専門用語の訳わからなさに、自分は⑨なのかと落ち込む今日この頃の日々です。あたいってばさいきょーね

 誤字脱字その他指摘事項等あればよろしくお願いします。
それではお粗末さまでございました。
clo0001
http://twitter.com/clo0001
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コメント



0.1220簡易評価
5.100tukai削除
これは酷い女たらし
こんなレミリアもっと増えろー
6.100名前が無い程度の能力削除
なぜかヘルシングを思い出したw旦那とウォルター戰w
それにしても良い吸血鬼っぷり。アリスも良い女だ。
8.100再開発削除
なんというレミリア無双www
11.80可南削除
レミリアが格好良かったです。魔人アリスにちょっと吹きました。
前作共々楽しませて頂きました。ありがとうございました。
21.100名前が無い程度の能力削除
続編(?)キター!
あいかわらずの修羅場www
さてさて、次にお嬢様の毒牙にかかるのは誰なのだろうか…w
29.90名前が無い程度の能力削除
吸血鬼のカリスマ性をかんがえればこれは納得できるし私的にとっても素敵。
霊夢が落ちないのは能力が能力ですもんね。
分かります。