Coolier - 新生・東方創想話

かっこいい二つ名とか妬ましい

2010/08/09 07:49:31
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今日も今日とて夏のくそ暑い夜に宴を開催している。
そんなに騒ぐのは好きではないけど、夕食とかお酒がただでもらえるからという理由だけで私は宴に参加している。
あと、勇儀がうるさいっていう理由もある。
とにかく、今日はたくさんの人間や妖怪達が集まって宴を楽しんでいた。

宴に足を運ぶのはいいが、いつも妬ましいと思う事ばかりである。
皆仲がいいし、すっごいおしゃれで可愛らしいかったり、かっこよかったり……。
それに比べて私なんていつも同じ服だし、自分でいうのもなんだけど、性格が残念なので友達なんて全然出来ない。
地下に住んでる奴らとは話す事はできるけど、上に住んでる奴らとはなかなか喋れない。

「おいパルスィ、もっと酒呑めぉ、なぁ!」

ふと隣を見ると、酔っ払った魔法使い、魔理沙が私にお酒を進めてくる。
こいつが宴に参加して、お酒に酔いつぶれていなかった事なんてみた事が無い。
いつも酔いつぶれるまで飲んでるなんて、なんと計画性の無い人間なのだろうかと毎回思うが、もう知らん。
心配するだけ無駄なので、いつも通り接することにしている。

「酒臭いわね、ほんと。まぁ、お酒はもらうわ」
「おぉ? なんだぁパルスィ、ツンデレかぁ? 可愛いのぉ~」
「どこのおっさんよあんたは……」

杯になみなみ注がれたお酒を、こぼれないように私は啜った。
魔理沙は酒に酔うとどこか親父臭くなるからめんどくさい。

「緑目の橋姫さんも大変ねぇ。こんな酔っ払いの相手するの大変でしょう」
「酔っ払いとはなんだ、酔っ払いとは! まだまだいけるじぇ~」

酔っ払う魔理沙から酒瓶を奪うのは、人形師アリスだ。
この人形師が私の名前を橋姫と呼んだように、私の名前をパルスィではなく、橋姫と呼ぶものも多い。
例えば、酔っ払いの子鬼とか、無駄に胸がでかい死神とか、食欲旺盛な亡霊嬢とか。
いわゆる、二つ名のようなものである。

幻想郷の妖怪や人間達には、誰がつけたかは知らないが二つ名なるものが存在する。
目の前の酔っ払いの場合は、東洋の西洋魔術師だったり、普通の魔法使いだったりと様々である。
人物によって二つ名がたくさんある者もいれば、少ない者もいる。
かくいう私は、地殻の下の嫉妬心らしい。
だれが付けたかは知らないが、ありがた迷惑な者である。

しかしなんというか、皆二つ名がかっこいい。
私なんてちんけなもので、ねたましいったらありゃしない。
人形師の二つ名は、七色の人形遣いという。
別に七色じゃなくても、違う現し方だってあるじゃないか。

「玉虫色の人形遣いとかでいいじゃない」
「え?」
「いや、こっちの話だから気にしなくていいわよ」
「玉虫色の人形遣いってどういうことよ」

あ、聞こえてた。
聞こえてないと思ってたけど、やっぱり聞こえてたみたい。

「いや、みんなかっこいい二つ名で妬ましいから、ちょっとださい二つ名に変えてみようかなぁと思って」
「へんな事に無駄な才能を発揮しなくていいのよ」
「玉虫色の人形遣いか! いいんじゃないか、アリス! お似合いだぜ」

アリスの後ろで腹を抱え、倒れながらも笑っている魔理沙。
そんな魔理沙をアリスは足で蹴り飛ばした。
自称都会派の魔法使いアリスがそんな事するとは思わなかったし、こういう一面ははじめてみたかもしれない。
とりあえず、魔理沙南無三。

私がそんな二人のやりとりから目線を逸らし、辺りを見渡す。
すると、一人の人物と目線が合った。
食べても食べても太らないという羨ましい能力を身に付けた亡霊嬢である。

私と目線が合うと、柔らかい笑みを浮かべて、手招きをしてくる。
玉虫色の人形遣いと白黒の場所よりはマシだろうと思い、私は席を移動することにした。

「えらいあっちは楽しそうにやってるようだけど、何かあったのかしら?」

この亡霊嬢独特の、静かな鈴の音のような笑いを含みながらの問いだった。

「かっこいい二つ名が妬ましいから、違う二つ名を考えていたのよ」
「で、アリスには何っていったの?」
「玉虫色の人形遣い」
「あらあら、面白いわね~。私の二つ名も何か違うものを考えてもらおうかしら」

この亡霊嬢の二つ名は、かっこいいものばかりである。
幽冥楼閣の亡霊少女、天衣無縫の亡霊、亡霊の姫君、等など。
ぼーっとしているようで、ころころと笑う亡霊からは考えられない名前ばかりである。
怪しい香りはするけど、どうみても感じのいいお姉さんでしかない。

「あんたは、華霊の亡霊でいいんじゃないかしら。なんか怪しい臭いがするし」
「あらあら。加齢とかけたのかしら? 私はそんなに年じゃないわよ?」
「そういうのが怪しいのよ」

こうやって悪口にも似たような事を言っても笑っていられるのが更に怪しい。
まぁ、この亡霊嬢よりも怪しい奴なんてたくさんいるけど。

ちらりと隣を見ればスキマ妖怪がいるし、向こうのほうには薬師だっている。
もう見るからに怪しいやつばかりで困るし、大抵二つ名がかっこいいから困る。
薬師は、月の頭脳という二つ名があり、その名に恥じぬ素晴らしい頭脳の持ち主だ。
スキマ妖怪に関しては、神隠しの主犯、幻想の境界、境界の妖怪など。

(事件の確信犯とか、境界詐欺師とか? とにかく怪しい臭いのするがするのよね)

なんというか、あのスキマ妖怪はいろいろ詐欺ってそうである。
そりゃもう様々な境界を弄っているに違いない。
年とか顔とか胸とか。 特に胸は大事。
何年生きても胸がでかくならない私に比べて、あの大きさは卑怯。
胸の格差社会である、厳しい世の中だ。

それはそうと、先ほどから痛いほどに視線を感じる。
ふと後ろを見ると、案の定そこにはさとりがいた。

「なによ、さっきからずっと私の心の中読んでたの?」
「いいえ、誰も胸の格差社会とかそういう話は覗いていません」

わざとなのかこいつは。
さとりの癖でもあるのだが、他人が思っている事を口にするのはよくないと思う。
というか、今回のはどう考えても墓穴を掘っていると言わざるを得ない。

「プライバシーとかそういうのを守ろうとは思わないのかしら?」
「そんな難しい言葉、私にはわからないわ」
「そうやって嘘ついても分かるのよ」
「あら、貴女も私の心が読めるのかしら?」

そんなはずないだろ。
突っ込むのは心の中ですませると、さとりの二つ名はなんだったかと思い出す。
確か、怨霊も恐れ怯む少女、だったはずだ。
これは恐れ怯むっていうよりも、むしろ嫌がるの間違いではないだろうか。
よって、さとりの二つ名は、三つ目の覗き魔に決定。

「あらあら、三つ目の覗き魔だなんてひどいわ」

だから口にするなと。
裾を口元に寄せ、およよと嘆いているが、無視した。


さとりから距離を置き、とりあえずお酒を口に含む。
ふぅ~と一息つく。

「どうしたんですか、ため息なんてついて。幸せが逃げますよ?」
「えぇ、その通りね。貴女に絡まれてしまったし」
「そんなにいわなくてもいいじゃないですか」

烏天狗、射命丸文の登場である。
幻想郷でもめんどうくさいやつのランキングで上位にランクインするだろう。
おめでとう、射命丸文。

私のランキングだと、確実に上位に入る人物といえば、霧雨魔理沙、星熊勇儀、古明地さとり、射命丸文、八雲紫だろう。
とりあえず、めでたくトップ5入りしている人物だ。

この烏天狗の二つ名を考えてみたが、そういえばいい二つ名が既についていた。

「捏造新聞記者って二つ名が既についてるじゃない。いい様ね」
「なっ!? いきなり何をいうんですか!」
「なんでもないわ、捏造新聞記者さん。悔しかったら捏造無しの新聞でも作る事ね」
「ぐぬぬ……。今に痛い目みますよ、パルスィさん」
「勝手にするといいわ」

そういってにやっと笑ってその場を後にした。

二つ名をつけた人物も、ちゃんとその人物を観察しているんだなぁと感心する。
なんだかんだいって、かっこよかろうがかっこわるかろうが、その人物にぴったりなきがする。
まぁ、私が考えたのは合わないかもしれないけど。
なんだかんだいって、私についた二つ名も、結構お気に入りだったr――

「あんたさっきから何にやけてるの? 気持ち悪いわね」

人がせっかくいい感じでまとめていたのに、邪魔が入った。
ふと前を見ると、小さな吸血鬼が私を見つめている。

私よりいろいろ小さい吸血鬼である。
身長も小さければ、胸も小さい。
胸も。

そういえば、この吸血鬼の二つ名は何だったかなぁと思い返す。
永遠の紅い幼き月、紅い悪魔、紅色の世界……。
え? なにこれ、かっこいい。
なんで私よりいろいろ小さい吸血鬼がこんなかっこいい二つ名使ってるのよ。
妬ましいったらありゃしないわ……。

「さっきから何ぶつぶつ呟いてるのよ」
「うっさい吸血幼女。私は考え事で忙しいのよ」
「吸血幼女……!!」

ふと吸血鬼を見ると、肩を震わせている。
あれ? 私なんかしたっけ?

「もういっぺん言ってみなさい」
「へ?」
「さっき言った事をもう一度言ってみなさいって言ってるのよ!!」

涙目になりながら紅い槍を掲げている。
どうやら無意識のうちになにかまずいことを言ってしまったようだ。
無意識って怖い。
ともかく、今はそんな余裕を見せる暇もなさそうだ。

「ちょ、しゃれにならないわよ!」
「うっさい!」

吸血鬼は体を仰け反らせ、その勢いをつけたまま、槍を投げた。
私は一目散に逃げた為、その私がいた場所へと飛んで行く。
その先、見えたものは

「「あ」」

紛れも無い、博麗神社そのもの。


ドガシャァン!!


凄まじいほどの音を立てて神社が崩壊した。
呆気なく、たった一撃で消し飛んだ。

全身から、冷や汗が噴き出る感覚が私を襲った。
崩壊した神社から目線を逸らすと、向こうから何やら近づいてくるのが見える。
一歩一歩、私と吸血鬼のもとに近づいてくる人物が一人。

それは、鬼の形相の紅白だった。

「何か言う事はないかしら?」

吸血鬼は、しゃがんで頭に被った帽子を手で引っ張っている。
こんなときに可愛らしい下ガードを決めているせいで、紅白の視線は私に向けられた。
あれ? 私別になんもしてないのに?
壊したのは私じゃないのになんで私が……。

とりあえず、何を言うにも無駄だと思ったので、

「貴女の二つ名は、鬼の巫女っていうのがお似合いだわ。鬼なだけにお似合いってね」

そういうと、紅白はにっこり笑った。
鬼の形相のままで。

「神社、建て直しなさいよ?」
「え。でも私が壊したわけじゃないんだけど」
「建て直しなさいよ?」
「いやだから、私は何も――」
「何度も言わせないで。わかった?」
「はい……」

いいえと言わせない気迫の表情で睨みつけられたら、はいと返すしかない。
私の返事を聞くと、満足そうに微笑んで帰っていった。
最後に、「あとレミリアは神社ができるまで紅魔館に住むから、ちゃんと部屋用意しなさい」と言い残して。

しかし、困ったものだ……。
私の無意識の発言でこんなことになってしまうとは。
とりあえず、勇儀に頼んで、手伝ってもらうしかなさそうだ。

はぁ、変なことなんて考えるんじゃなかった……。

私はつくづくそう思いながら、勇儀に泣く泣く頭を下げる。
すると、快く私のお願いを承諾してくれた。

友達って素晴らしいなぁと、こんなことで改めて実感する、今日この頃だった。
はいどうも、へたれ向日葵です。
作品毎に様々な二つ名があって、どれもかっこいいなぁと思うばかりです。
なんかよく、オリジナルキャラに二つ名とかつけるの見ますけど、なんか違うんですよね。
やっぱり神主って凄いなぁって思いました。

最後まで読んでくださった方々には、最大級の感謝を……。

追伸
ツイッター初めてみました、右も左もわかりませんが、気軽に話しかけてくれるとうれしい限りです。
へたれ向日葵
[email protected]
http://twitter.com/hetarehimawari
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コメント



0.2160簡易評価
8.40名前が無い程度の能力削除
東方の二つ名のセンスはおもしろいよね
格好いいものは、スカきれてるわけでもなく
ダサイ感じのものの中にも、意地みたいなのが見えていて
一見意味不明なもののでも、イメージだけはわいてくる
9.90名前が無い程度の能力削除
微妙な匙加減が難しいですよね
二つ名は
10.100名前が無い程度の能力削除
パルスィww
15.90名前が無い程度の能力削除
妖々夢の口上もかっこいいですよね。
…ん? 確かえーりんには蓬莱の薬屋さんというかっこいいとは言い難い二つ名があったような…
17.90名前が無い程度の能力削除
紫には『割と困ったちゃん』があるじゃないか!
19.90ぺ・四潤削除
勇パルの仲の良さに嫉妬だ!

「あらあら。加齢とかけたのかしら?」
「ちらりと隣を見ればスキマ妖怪がいるし、向こうのほうには薬師だっている。」
パルスィよく生きて帰ってこれたな……
21.90名前が無い程度の能力削除
めんどうくさいやつのランキングに星熊勇儀を入れてるけど、その「めんどうくさいやつ」の意味合いが、きっと他の4人とは違うんだろーなあ・・・
24.70可南削除
『口は災いの元』と思いましたw

沢山のキャラが生き生きしてて面白かったです。ありがとうございました。
42.80名前が無い程度の能力削除
東方の二つ名ってやたらカッコいいですよね
レミリアは「永遠に幼い紅い月」に間違われている方が多いですけどw
44.100名前が無い程度の能力削除
おお、二つ名ネタ!もっといろんな人にひどい二つ名をつけまくるパルスィが見たかったです。
そしてゆゆ様の二つ名はどれも卑怯なくらい格好いい……。ゆゆ様は二つ名もスペカ名も弾幕もBGMも全てが格好良くて妬ましい……。
46.無評価へたれ向日葵削除
>8 様
評価ありがとうございます。
出てくるごとに二つ名変わる辺りがなんとも。
ダサくてもなんか、そのキャラの特徴をとらえていて大好きです。

>9 様
評価ありがとうございます。
ほんと、難しいですよねぇ……。
中学校の頃に書いてるの見ると恥ずかしくて爆発する。

>10 様
評価ありがとうございます。
パルスィの一人称視点のお話書くの大好きですわ。

>15 様
評価ありがとうございます。
いやぁ、分かってはいたんですけどね。
カリスマあるキャラはやっぱりかっこいい二つ名を押したかったのでつい。

>17 様
評価ありがとうございます。
知っていました! でもそれを出すわけにはいかなかったのです……!!

>ぺ・四潤 様
評価ありがとうございます。
勇儀とパルスィはほんと仲がいい、妬ましいわ。
パルスィさんは何度も戦場から帰ってきているのだ……!!

>21 様
評価ありがとうございます。
でしょうね~。
おせっかいみたいな意味でのめんどうくさいやつ、なんでしょうね。

>可南 様
評価ありがとうございます。
ほんと、その通りですよねw
こちらこそありがとうございました!

>42 様
評価ありがとうございます。
ほんと、その通りですわ。
私も時々間違えますわww

>44 様
評価ありがとうございます。
あまりたくさんつけてもぐだぐだになるかなぁとか思ったので控えめで。
幽々子のはほんとどれも素晴らしいですよねぇ……。