Coolier - 新生・東方創想話

魔理沙の主食とかけまして

2010/08/01 02:48:20
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 このお話は「東方霊夢異変」の続編となります。
 もし気になった方は創想話114に前作がありますので、その話の頭からチルノ達の会話まで、そして紫と藍の会話から後書きまでを読んでいただけると大体の話の流れをお分かり頂けるのではないかと思います。では本編へどぞ。


 さぁさ、今宵も東方言霊遊戯が始まるよっ!お相手は前作に続いてあたい、小野塚小町が引き受けさせてもらうさねぇ!では、弾幕遊びとは一味違った捲るめく言葉遊びに酔いしれてくんなっ!



……五月晴れの爽やかな季節が過ぎ去り、幻想郷にも梅雨がやって来た……それはここ、迷いの竹林に建つ永遠亭も例外ではなくシトシトと降る雨で幽かに映る竹林と御屋敷が何とも妖しく見え、それが風情と言うのか趣と言うのか私にはよくわからなかったけど、お師匠様が「これがわびさびよ」とおっしゃてたのでそれで間違いないと思う。
ちなみに姫様はというと「雨だからお外出ない」だの「やることがなくてつ~ま~ん~な~い~」とか言ってお師匠様を困らせていました、嫉妬しますパルパル。お師匠様もお師匠様で、私が姫様を注意すると「季節の変わり目だから許してあげて」と姫様を甘やかしてます……グスン、私だって甘えたいのに……。
そんな、季節の変わり目に起こった霊夢の異変とされたあの問題も私のお師匠様が動いてらっしゃるので直に解決するんだろうなと確信している私がいる。
 なので私は、自分の出来ることをやろうと思った……。

「さぁ、捕まえたわよ」

 そう言い肩で息をする私――すばしっこいコイツを捕まえるのは容易いものではないのだ。

「ウサウサウサ、これで終わりと思ってるウサか?」

 そう言い、不敵な笑みを浮かべながら不穏な事を言うのは妖兎、因幡てゐ。捕まっているにも関わらず、その余裕が顔から消えることはない……。

「えぇ、まだ何かあるって言うの……?」
「イヤ、何にもないウサ」
「じゃ何だったのよ、さっきの思わせぶりなセリフは!?」

 思わずズッコケて、スカートが翻ちゃったじゃない……後ろにカメラがあったらアウトだったわね……。

「で、何で私は縛られてるウサ?」
「自分の胸にでも聞きなさいよ」

 今、てゐは縄で縛られ天井から吊り下げられている。別にそういった趣味に目覚めた訳ではない、断じて私は。

「私も違うウサ」
「はっ、心を読まれたっ!?」
「全部口に出してたウサよ……」

 いけない……私の悪い癖だ、気持ちが高ぶると心の声が口から出て来てしまう……何ですかその眼は。べっ別に興奮なんかしてないんだからね!息が上がってるのだっててゐを捕まえるために走り回ったからなんだからねっ!だって私は……――

「Mだからウサね」
「えっと、新作のTHE薬は……」
「すみませんでしたぁっ!」

 あらあら、そんなてゐ、どこぞの小動物のように眼を潤ませなくてもいいのよ……最近お師匠様や幽香さんじみてきたかも……ゾクゾクしちゃう。

「こんなことする為に縛ったのかウサ……最近永琳とご無沙汰だからって……」
「そうそう、最近回数がちょっと……って違うわよ!?」

 危なかった……もう少しでてゐのペースに乗せられて口を滑らせるところだったわ……だって最近ホントにご無沙汰なんだもの……今夜もお預けかしら……。

「お~い、戻ってこ~い」
「はっ、わふぁふぃふぁふぁふぃふぉ?」
「とりあえず、口に入れてる自分の耳を出すウサ」

 「そこが感じるところウサね」とそこはかとなく黒い笑みを浮かべるてゐ……なっ何よ、アンタなんかにされたって感じないんだから、それに縛られてるアンタに何が出来るってのよ……ってすっかり忘れてた……私がてゐを縛ったのはそういうことじゃない……

「あんたが捕まってるのは今回の異変の事ででしょう」
「私が何をしたというウサ?」
「あの時、リグルちゃんがいるのをわかっててあんな発言したんでしょう?」
「何の事ウサ?」
「とぼけないで、霊夢の容体についてよ」

 そう言い、てゐの眼を見つめる私――

「こういう騒ぎになること、わかってたんでしょ?」
「ウサウサウサっ、バレたウサか」
「どうしてっ……」
「ふふっそれはウサね……」

 私は、固唾を飲んでてゐの言葉を待った――

「ではここで謎かけウサ」

 本日二回目のズッコケ&サービスシーン。文章なのでお見せ出来ないのが残念。

「悪戯をして捕まった私とかけまして、罠を張る黒谷ヤマメと解きます」

 渾身のお色気シーンをスルーされました、死にたい。

「ちょっと、隣で首を括るのはやめるウサ。さ、早く続きを促して欲しいウサ」
「グスン……その心は?」
「どちらも『意図(糸)』を吐くでしょう」
「えっ、ヤマメちゃんって糸吐くの?」
「え、吐くんじゃないウサか?」
「……」
「……」

 二人とも沈黙してしまった――吐くにしてもどこから吐くんだろう?
 お互いがこの沈黙を打ち破れない中――

「ただいまー」
「あっ、帰って来られたわ」

 そう言いてゐを残し玄関へと向かった。「ちょっ、放置プレイ!?」とか聞こえたような気がするが気にしない、気になどしてなんかいられない。

「お帰りなさい、お師匠様」
「ただいま、鈴仙」

 玄関に腰掛けていたのはお師匠様こと私の憧れ、八意永琳様、今日もお目麗しいです……私には衝撃が強すぎます……。でも私はそれ以上のショックを受けた……お師匠様が……永琳様が……私以外の女を連れて帰って来たのだ……外に立っていて暗くてよく見えないが私には分かる、何故なら……

「匂いでウサね」
「そうそう……ていつの間に」

 気付けば隣にてゐがいた。

「アッアンタどうやって……」
「フフン、どうしてだと思うウサ?」

 そう言って無い胸を張るてゐ、そんなてゐに違和感を覚えた私……別にてゐの胸が通常より3割増しされていることではない。胸に付いているワッペンが、縛っていた際にはエイリアンのワッペンだったのが今はプレデターになっていた。

「か、可愛い……」
「いやアンタこれが可愛いって……」
「医者の私からしても相当危ないわね……」

 いやだって、あのヌメヌメ感とか最高に可愛いじゃないですか、一度でいいからペットにしたいです……が今はそれは問題ではない……。

「てゐ……その服……」
「ウサウサウサ、そうウサ――」
「服脱いだぐらいでしゃしゃり出ないでこのロリっ!」
「ウサーーーっ!?」

 「私のサービスシーンがぁっ!」とのたまわるてゐだがこの際無視、差し迫りたるはお師匠様の女性問題である。

「おっ……おっ……」
「ちょっと鈴仙、顔が真っ青よ?」
「おっ、おっとっと様……」
「誰が海産物よ」

 ちなみに幻想郷でおっとっとと言うと、時々入って来る海産物の揚げ物の総称である。唐揚げ天麩羅フライ、どれにしてもおっとっとである。まぁ酔っ払いの口癖でも間違いではないですが。

「お師匠様、そちらの方は……」
「あぁ、この方は今回霊夢の事でご協力頂いた大事なお客さまよ」

 そして「中へどうぞ」とお師匠様に促され中に入って来たのは鍵山雛、その人である。

「おじゃまするわ」
「ウチはセールスと宗教と厄神様はお断りしてるんですが」
「ちょっと鈴仙」
「いいのよ別に」

 「慣れてるから」と涼しげな顔をする厄神様……何余裕ぶってるのかしら、私の眼で狂わせてやろうかしら……それとも某橋姫の専売特許である丑の刻参りを……――

「悪いけど、私に呪詛の類は効かないわ」
「なっ何故バレたっ!?」
「だから全部喋ってるんだって言ってるウサ」
「これは相当重症ね……」

 溜息を吐くお師匠様とてゐ……もしかして私――

「呆れられてるわね、あぁ厄い厄い」
「スミマセンゴメンナサイ謝りますから厄取って下さい」

 なりふりなんか構ってられない、気付けば目視出来るほどの厄が私を取り巻いていたのですから……ここは本職厄神様(副職・JK)に取り除いて貰わないと……そのためだったら土下座ぐらいします、それでもお約束はハズしません。

「本日三回目のサービスシーンウサよ~」

 スカート翻りはお約束です、それとお師匠様にアピールの意味もあります……お師匠様、今晩こそは――

「ってお師匠様は!?」
「永琳なら雛と一緒に奥に行ったウサ」

 そう札束を数えながら答えるてゐ……誰が払ったのよそのお金……

「誰だっていいじゃないか、ほいアンタの取り分ウサ」
「……貰っとく」

 そう言い受け取った札束に「E/Y」と書いてありました……こんなの頂かなくても言って下されば、お部屋で二人っきりの中見せて差し上げるのに……

「それにしても意外と対抗心が強いウサね、永琳の奴も」
「えぇ、何が?」
「鍵山雛に霊夢の事で協力して貰ったことウサよ」
「うぅ、ホントよ……言って下されば私がお薬を調合したのに……」
「そこウサ」
「……何が?」
「アンタに薬を調合させないで雛を連れて行った事ウサ」
「だからそれがどうしたのよ?」
「私を捕まえるよう言ったのは永琳ウサね」
「そうだけど」
「つまり永琳は私の意図に気づいていたという事ウサ。だから私の捕獲を命じたウサ」

 ……そう言われれば確かにそうだ、霊夢の所に行く際、お師匠様からてゐを捕まえるように言われた時に聞くまで、私はてゐの謎かけに気付かなかったのだから……

「つまりどういうことなの……?」
「ウサウサウサ、簡単な事ウサね」

 そう言い、コホンと咳払いを一つしたてゐ。

「謎かけウサ。永琳の仕事とかけまして、鍵山雛に出会った時と解きます」
「えーと、その心は?」
「どちらも『薬医(厄い)』と言うのでしょう」
「……あぁ、成程」

そんなこんなで、てゐを発端としたこの謎かけが、娯楽の少ない幻想郷に瞬く間もなく流行ったのであった。それは若きも古きも、天であろうと地であろうと関係はなかった――


 所変わってある日の博麗神社。腹痛も治まった霊夢のお見舞いにいつものメンバーが集まったりしていた。

「お~い霊夢、邪魔するぜ」
「邪魔するなら帰って」
「あいよ……てなんでやねんだぜっ!?」

 大阪弁でツッコミを入れつつも語尾に「だぜ」を付けるのが魔理沙流である。

「つれないこと言うなよ霊夢~、折角見舞いに来てやったのにだぜ」
「へぇ、じゃあ何かお見舞いの品が――」
「そんなの、私の笑顔で充分だろ?」
「帰れ」

 持っていた箒を逆さにして魔除けを施す霊夢。すると「冗談だぜ」と魔理沙が里の甘味処の水羊羹の包みを出したので魔除けを解くのだった。

「悪いわね~、こんなに気遣わせちゃって」
「よく言うぜ、あの時寝ても覚めても水羊羹が食べたいって言いまくってたのは誰だぜ」
「あはは、何のことかしら」

 受け取った水羊羹の包みを開け数を数える霊夢、満面の笑みである。

「六個か……一人一個でも一つ余るわね……」
「何?他にも誰かいるのか、私以外に?」
「えぇ、ていうかあんたで最後よ」
「むぅ……」

「最速たる私が後れを取るとは……」、そんなことをブツブツと呟き始める魔理沙……霊夢はそんなことお構い無しに幸せそうな顔で水羊羹に頬ずりしている。

「ま、とりあえず上がりなさいよ」
「……邪魔するぜ」
「邪魔するなら――」
「ここで無限ループは無しだぜっ!?」

 閑話休題――

「何だ、お前らだったのか」

 霊夢と共に居間へと赴いた魔理沙の目の前にいたのは――

「あっ魔理沙さん」
「ご無沙汰してます」
「遅かったわね」

先の異変で解決に当たるまでは2P巫女とか揶揄された東風谷早苗、半人半霊な為か若干影の薄い魂魄妖夢、そして人形はトモダチことN――じゃない、アリス・マーガトロイドの三人である。

「惜しかったわね、もう少し早ければ咲夜もいたのに」
「咲夜もいたのか……?」
「何か用事があるみたいでしたけど」
「ふ~ん、まぁ後で行く用事があるからいいけどな」
「紅魔館に?何の用よ?」
「パチュリーに呼ばれてるんだよ」
「……へぇ?」

 パチュリーの名が出た途端、アリスが凍てつく波動を出し始めたが当の魔理沙に水羊羹に夢中な霊夢はお構い無しである。早苗は早苗で「ATフィールド発動!」とか言ってブッチのポーズを取った、ところによってはエンガチョーとも言う。ちなみに妖夢は半霊ごと凍った。

 妖夢解凍中―― チーン――

「妖夢が天に召されたぜ」
「生きてますから!?」
「それにここお寺じゃないから霊夢も困るでしょうに」
「ツッコミどこそこですか……?」
「そうね、お賽銭の代わりにお布施を払うなら考えるわ」
「結局お金ですか……」

 そんな他愛無い少女達の会話は、霊夢の異変を発端とした今回の「謎かけ」ブームの話になった。

「流石は因幡の白兎、腹は黒いが伊達に長生きしてないぜ」
「そうね、なかなかの発想力と言葉遊びだったわ」
「でもあれって私の事ネタにしたのだから、その分謝礼とかあってしかるべきじゃ……」
「霊夢さん、最近お金に執着し過ぎ……」
「(早苗さんそれ地雷です!?)せ、せっかくですから私達もやりません?謎かけ」
「そうね、面白そうだわ」
「でもなぁ、急に言われてもな……」
「私はもう整ったわ」

 そうアリスが自信ありげな顔をしてるものだから魔理沙が「じゃ言えよ」と促した。

「えぇ、霊夢や早苗とかけまして、私の出自と解きます」
「その心は?」
「どちらも『巫女(神子)』と相なります」
「……あぁ~」
「そういえばアリスって魔界の神の娘だったっけ?」
「そうだったんですか?」
「えぇ、そうよ」

「忘れてたわ」と言う霊夢と驚く早苗に答えるアリス。そこに魔理沙が口を挿んできた。

「名前はあれだろ?確かキャッチフレーズにもなった……何だっけな……」
「……何の事を言ってるの?」
「あぁ思い出したぜ、そうはい『神崎』だろ?」
「いえ神綺だから」
「でもあの神様ならやってくれそうよね、それ」

 霊夢の間の抜けた言葉に反論しようとしたアリスだったが、自分の母のノリの良さを考えると、威厳の欠片も無いハイテンションでポーズを取る姿を容易に想像が出来てしまい、泣きたくなるのだった……

「私も思いついたぜ」

 と、腕組みをして考え込んでいた魔理沙が手を叩きながら言った。

「へぇ、言ってみなさいよ?」
「言うぜ?妖夢を捜す私とかけまして、その私を追う小兎姫と解く」
「その心は?」
「どちらも『半人前(犯人、前)』見つけたぜ」
「うえ~ん、どうせ私なんか、私なんかぁ~」

 そう言って泣きながら妖夢が飛び出して行った。半霊が置いてけぼりを喰らったが影が薄いため誰も気がつかない。

「……」
「……」
「……追いかけなくていいんですか?」
「あぁ、必要ないぜ」
「霊夢さん……」
「いいのよ別に」

 そう言いつつ、妖夢のまだ手をつけていなかった水羊羹を目にも留まらぬ速さで確保した霊夢、流石である。ちなみに半霊は小町が回収しました、こちらも目に留まらぬ速さだったが、若干影の薄い妖夢の半分が連れ去られただけなので、またしても誰も気づいていなかった。

「でも速かったですね、妖夢さん……」
「さしずめ、幽々子んとこに一直線ってとこだな、まぁ私のスピード程じゃないぜ」
「それで閃いたわ」

 今度は霊夢が膝を叩いた。ちなみに水羊羹は目にも留まらぬ速さで空となっていた、幽々子といい勝負である。

「ほう、言ってみろよ」
「行くわね?空に飛び立つやいなや彼方に消えた魔理沙とかけまして、それを見送りながら咳き込むパチュリーと解きます」
「その心は?」
「どちらも『全速(喘息)』なんでしょう」
「おぉ、私らしいぜ」
「でもあれですよね、魔理沙さん飛び立つ時って……」
「砂埃が凄いわね」
「しかもパチュリーさんって……」
「落ち着きなさい早苗、全部想定内だから」
「パチュリー、そんなにも魔理沙のことを……」
「パチュリー……いい奴だったぜ……」

 うろたえる早苗に相変わらずな霊夢、ハンカチを取り出すアリスと十字を切る魔理沙……ここにいる全員が、砂埃が治まった後、そこに倒れ伏すパチュリーの姿を思い浮かべてしまい、皆で合掌してしまった。

「そんな中だけど、私も思い付いたわ」

 と、ハンカチを仕舞いながらアリスが言った。

「アリス……」
「アリスさん……」
「M&A……」
「何か最後おかしくない?」
「別におかしくないぜ、とりあえずなアリス……」
「何よ?」
「「「空気読め」」」

 アリスが首を……――以下略

「で、どんなのよ?」
「言いたくない……」
「残念だなー楽しみにしてたのになー(魔理沙棒読み)」
「言うわ。罪な魔理沙と戦った後とかけまして、キスメの性分と解きます」
「その心は?」
「どちらも『恋(故意)』に堕ちるでしょう」
「おぉ、それも私らしいぜ、流石だなアリス」
「どうも」
「ホント、被害者が言うと説得力があるわ」
「何のことかしら?」
「奴は大変なものを盗んで行きました、それは貴女の心ですってヤツね」
「そんなんじゃないわ……」

 そう言いつつ魔理沙を横目で見やるアリスだが、当の魔理沙は「恋に堕とす……恋色の魔法使いには最高の褒め言葉だぜ」と自分の世界に浸っていた……恋色の魔法使いを自負する割には鈍い節があるのはご愛敬である。そんな中……

「あの~」
「どったのよ、早苗?」
「今のセリフって……」
「あぁこれ、懐かしすぎたかしら?」
「いえ知らないんですけど……」
「……これだから現代っ子は……」
「そうね、都会育ちの私だって知ってるわよ」
「いや、アンタは都会育ちでも現代っ子じゃないでしょ……」
「心は少女」
「どこぞのババa――紫か」
「何で急に限定し――」

 ――ウアァァン、ガタン、ドンッ、バリバリッ、ドンガラガッシャーン――
 誰かの泣き声の様な音と共に、隣の部屋よりけたたましい音がした――

「……」
「……」
「……」
「……私も思いついたんですがいいですか?」
「ババアでか?」
「そこはノーコメントです(キラッ)」

 某歌姫のポーズを取る早苗、これぞ現代っ子である。

「何か言われた気もしますが行かせていただきます。神楽を踊る神奈子様とかけまして、激しい弾幕戦と解きます」
「その心は?」
「どちらも『風神(風塵)』が舞うでしょう」
「おぉ~」

 皆が感嘆の声を上げるのを聞き気を良くしたのか、早苗は「続きまして」と言い、もう一つ謎かけを披露した。

「玩具を欲しがる子供に親が言い放った言葉とかけまして、諏訪子様が何の神様かと聞いた時と解きます」
「その心は?」
「どちらも『買わず(蛙)に帰る(蛙)』と言うのでしょう」
「へ~蛙の二刀流かよ、凄いぜ」
「ホント……流石は私と同じ都会育ちね……」
「そうね、毎日『えあこん』とかで涼んでグータラしてるだけかと思ったわ」
「霊夢さんと一緒にしないで下さい」
「失礼ね、ウチにあんな便利な式ないわよ」
「グータラは否定しないんだ……」
「そういえば早苗、その『えあこん』ってエレキテルで動くんだよな」
「エレキ……電気の事ですか?」
「そうそれだ、どうしてるんだ、その電気?」
「いつもは地下センターだけなんですけど、今は他に水車とか風力、あとは太陽光で発電してます。ただ最近はそれだけでは間に合わないので龍宮の遣いの方に……」
「それって衣玖にか?」
「えぇ、そうですよ」
「よっしゃ整ったぜ!」
「……もしかして霊夢さんの発言ってこの為の前振りだったの……」
「安心しなさい、霊夢はともかく魔理沙にそこまでの芸は無いわ」
「そこうっさい。行くぜ、守矢神社や河童に重宝される衣玖とかけまして、パチュリーの出した自伝が人気と解く」
「その心は?」
「どちらも『電気(伝記)』が売れてるぜ」
「いやパチュリーさんまだ生きてますから」
「あいつはさっき、私達の心の中で星になったぜ……」

 その頃、紅魔館の大図書館で咳き込んだ途端吐血した大図書館こと病弱魔女と、その床に飛び散った血を丁寧に掬い瓶に注ぐ使い魔の姿があったのは別の話――

「で、その売り上げは?」
「頂くぜ」
「どっ泥棒ですっ!?」
「無駄よ早苗、コイツはそういう奴なのよ。盗めるものは全て盗んでいくのだから」
「そうね、貴女も大切なものをを盗まれたものね」
「もういいわよそのネタは……」
「失礼な、少し金を借りるか飯をたかるだけだぜ」
「それって私もなのかしら……」
「アリスは別だぜ」
「でも借りたら返さないですよね……」
「死んだら返すぜ」
「看取る日まで私を大事にして……」
「アリス、上海に何言ってんだ?」
「独り言よ……」
「お金……ご飯……」
「霊夢さん……?」
「あ……」
「マズイわね……」

 気付けば霊夢が俯きながら腕をダランと下げユラユラと揺れていた――

「どうしたんですか霊夢さん……」
「早苗、触れてやるな」

 霊夢の変調に新たな異変かと慌てる早苗を止める魔理沙……

「反動が来てやがるんだよ、霊夢の奴」
「反動?何のですか?」
「あぁ、それはだな……」
「この前の異変の反動よ」

 魔理沙と早苗が仲良さそうに内緒話をするのが気に入らないとばかりに、アリスが口を挿んできた。

「あの異変って、確かお腹壊しただけじゃ……」
「そうだぜ、そしてそれが原因だぜ」
「えっと、どういう……?」
「早苗、貴女のとこの神様が霊夢の看病をしたわよね?」
「え……あ、はい」
「それが理由よ」

 そこまで言われても要領を得ない早苗に魔理沙が説明を始めた。

「まぁ神奈子もそうだが、あのときは紫や勇儀とかも看病したり酒や食料を持ってきたりしたんだよ」
「そうでしたね、ウチの米櫃からお米が無くなってましたから」
「でな、そんな感じで久しぶりに三食ちゃんとしたご飯が食べれたんだがな……」
「……あぁ~」
「分かっただろ、それは看病のためで治ったなら……」
「誰も食料とか持って来てくれない訳よね」
「それでですか、今の霊夢さん……」

 ただいま絶賛一人エクソシスト状態の霊夢……「テケテケーーーっ!」とか言って天井を走り回っています、ってかそれ作品が違う。

「……あのー」
「どったよ早苗」
「こんな時に何ですけど、謎かけを思い付きました」
「どんなのだよ?」
「ハイ、紅魔館の外観とかけまして、霊夢さんの家計簿と解きます」
「ちょっ、早苗おまっ……」
「その心は?」
「アリス空気読めっ!?」
「早苗早く続きを」
「え、でも……」

 早苗の答えを遮ろうとした魔理沙に、ヘッドロックを掛けるアリスにオドオドする早苗……その早苗に上海が――

「ハヤクシネェトコイツノイノチハネェゾ」

 と蓬莱人形の首に縄を掛け始めたからさぁ大変♪

「うわぁぁんやめてあげて下さい!?言いますからっ!」
「邪、ソノココロハ?」
「うぅ……どちらも『紅地(赤字)』で塗られているd――」

 そう早苗が言い切るか切らないかのその瞬間、博麗神社の居間が爆発した。

「……ふー、危なかったわ」
「……ホントだぜ……」

 爆発の瞬間、アリスは素早く魔理沙とその箒を掴むといち早く居間を飛び出して行った……それでも爆発は迫って来たがそれは蓬莱が身代わりになった……。

「大丈夫かよ……」
「蓬莱なら心配ないわ、HPはまだ半分あるし」
「いや早苗が」
「大丈夫でしょ、奇跡を起こせるんだし」

 ちなみにその早苗は障子に頭を突っ込んだ状態で吹っ飛んでいた……純真な早苗だが、ただいま絶賛――

「スカートひらりね」
「純○きらりみたいに言うなよ……」

 そんな早苗のスカートを「黒か……」と言いつつ直してあげる魔理沙……紳士である。

「そういや霊夢は?」
「さっきの爆発は大爆発かマダンテのどっちかだから……」
「どちらにしても捨て身だな」

 さっきまで居間であった瓦礫の山を見つめる二人、動く物は何もない――

「で、これからどうするのよ?」
「そうだよなぁ……」

 魔理沙が次の言葉を言おうとした瞬間、突如瓦礫が崩れ何者かがアリスを捕らえた――

「置いてけ~」

 そこには髪を振り乱し、アリスを後ろから羽交い絞めにする霊夢の姿があった……――

「ちょ、霊夢離しなさいっ……」
「そうだぜ霊夢っ!アリスを離すんだぜっ!」
「離して欲しければ置いてけ~」
「置いてけって何をだよ」
「……お金」

 魔理沙の問いに対し、「いっつまねー」といまいち呂律の回らない返答をする霊夢……顔が必死過ぎてホラーである。

「落ち着いて霊夢、顔が楳図か○お先生の描く絵みたいになってる!?」
「落ち着けアリス、これはしょ○たんだ!?」
「どうでもいいわっ!?」

 そうこうしている間に、霊夢の髪が逆立ち始めた……さらに体中の筋肉が盛り上がり始め、稲妻がほとばしりはじめた――

「ちょっ、そのネタは駄目ぇっ!?」
「大丈夫、誰もわかんないぜ★」
「そういう問題じゃ……っていうか助けなさいよっ!」
「おぉっ!……でもどうすれば……」
「もう何でもいいから置いてけ~」
「何でも……だと……?」

 霊夢の発言を聞き逃さなかった魔理沙……ちょうど彼女の足元には今も尚気絶している早苗が……アレなシュチエーションである。

「……仕方がないぜ」
「魔理沙……私のために……」
「じゃ、アリスあとは任した」
「え?」
「霊夢、金はないがアリスを置いてくぜ」
「ちょっ、魔理沙……」
「悪いな、パチュリーが待ってるんだぜ……」
「いやアンタさっき星になったって……」
「じゃあなアリス、お前のこと忘れないぜっ!」
「いや何でもいいって言ってることだし、そこに転がってる早苗を……」
「アリス、お前さっきから何言ってるんだ?早苗はちゃんと送ってくぜ」
「……え?」
「いやだってそうだろ、怪我人ほっとく訳にもいかないし」

 そうして早苗を抱え、箒に跨る魔理沙……なんて羨ましいやら妬ましいやら。

「という訳だ、悪いなアリス、身代わりになってくれて」
「なってない!?」
「それからアリス……お前に貰ったコレ、大事にするぜ……」

 そう言う魔理沙の腕の中にはちゃっかり上海が……ヤロウ、逃げやがった……

「いやあげてないし、てか助け――」
「てな訳でアリス、達者でな!」

 そういうやいなや、魔理沙は飛び立っていた……私を置き去りにして……でも最期に魔理沙のとびっきりの笑顔を見れて本望だわ……そんなことを想いながら霊夢に引きずられていくアリスであった――

 それから数時間後――

「こんにちわー、霊夢さんいますー?」
「文、こっちよ」

 声がする方を見やると、霊夢が木陰の下でお茶を飲んで休んでいた。

「あやや、霊夢さん涼しそうですねー」
「ホント涼しいわ、大きな穴も開いたことだし」
「あやや、これまた見事ですね~」

 そういうやいなや、倒壊した居間を文はカメラに収め始めた。

「ちょっと、記事にしないでよ」
「記事にすれば寄付があるかもしれませんよ?」
「文、許すわどんどん撮りなさい」
「えぇ遠慮なく、ちなみに犯人は?」
「白黒にでもしときなさい」
「わかりました、ではもう一つ」

 そう言うと文が樹の上を指差した――

「これは何でしょう?」
「照々坊主」

 文の指差した先には簀巻きにされ、樹から吊るされているアリスの姿があった。

「照々坊主にしては随分洋風ですね……」
「最近の流行よ」
「梅雨明け間近……って感じですかね?」
「納涼的な意味でね」

 確かに、樹に吊られて風に揺れる様は何とも不気味、ぜひとも肝試しに欲しい絵面である。

「ところで文、何の用よ?」
「あやや、忘れるところでした」

 そう言いポシェットを漁り出した文、中から取り出したるは――

「霊夢さん、今日こそ新聞取ってもらいます!」
「いらないわよ」
「ふっふっふ、そう言うと思いまして、今日は購読特典をご用意しました」
「どんなのよ?見せなさい」

 モノに釣られた巫女、目がランランとしている。

「それはですね……ジャーン、キメェ丸抱き枕――」
「帰れーーーっ!?」

 霊夢の飛び膝蹴りが文のアゴに炸裂した、飛行している相手にも命中する技だ、実際は飛んではなかったが。

「~~~~~~っ」
「持って来るならせめて洗剤とかにしなさいよ」
「~そっそれひゃあ赤字でふよ……」
「赤字……?」
「……ゲッ」

 文が地雷を踏みやがりました、本日二度目の飛び膝蹴り炸裂。もんどり打ちスカートが全く意味をなさなくなった文をほったらかし、霊夢は文の落とした新聞を拾い上げ読み始めた――文は復活の呪文を唱えた、「椛モミモミにモジモジ、あわせてモミモミしモジモジ」、テンテンッテッテテン――

「復活しました」
「あっそ、で何よ?アンタも謎かけネタ?」
「流行には敏感なもので、だから――」
「取らないわよ、ってかお帰りはあちら、賽銭箱はそちら」

 そう言い賽銭箱を見やる霊夢、俗物過ぎである。

「う~、ではこうしましょう、謎かけで勝負です」
「……はぁ?」
「私の謎かけが面白かったなら新聞を取っていただきます」
「面白くなかったら?」
「取って頂くのは諦めます」
「それじゃあ私にメリットがないわ」
「……ハイ?」
「だってそうでしょ?今までだって何度勧誘に来たって追い返してたんだから」
「じゃあどうしろと?」
「そうね、有り金全部賽銭箱に入れてもらうわ」
「本気ですか!?」
「マジマジ、超マジよ」

 そう言い顔の前で手をお金サインにし笑顔で答える霊夢。

「で、どうすんの、やるの?やらないの?」
「うぅ~、受けて立ちます」
「掛かって来なさい」
「私、射命丸文とかけまして、賽銭箱を見やる霊夢さんと解きます」
「……その心は?」
「どちらも『最速(催促)』に違いないでしょう」
「……そんなものかしら?」

 文の謎掛けに対し、余裕の笑みで答える霊夢……いつの間にやらいつもの異変解決時の雰囲気を漂わせていた……

「なってないわね文、今から手本を見せてあげるわ」
「受けて立ちます」
「文文。新聞の購読者とかけまして、またも宝塔を無くした寅丸と解きます」
「その心は?」
「どちらも『文待ち(過ち)』を繰り返すでしょう」
「おぉ~」
「さぁ、これでお賽銭を払わざるをえないわよね」
「残念ですが霊夢さん、私の新聞定期購読者いないんですよ、無理やり押し付けてるだけですので」
「文……それ自分で言ってて悲しくない?」
「うぅ……霊夢さぁん……」
「仕方ないわね……取ってあげるわよ新聞」
「ホっ、ホントですか!?」
「ホントよ、だから賽銭箱にお賽銭と一緒に入れといてね」
「ヒドっ!?」
「何よ、取ってあげるんだからそれぐらい当然でしょ」
「うぅ……そんな霊夢さんに取っておきの謎かけをしてあげますよ」
「へぇ、慈悲深い楽園の素敵な巫女たる私を讃えるやつかしら?」
「えぇ、霊夢さんをよく表してますよ。今日も貧乏な霊夢さんとかけまして、ミスの少ないプレーヤーと解きます」
「その心は?」
「どちらも『賽銭(再戦)』が少ないでしょう」
「ふーん、言い残すことはそれだけかしら?」
「あやや、もう一つあります」
「へぇ、聞かせてみなさいよ?」
「では。梅雨のこの時期とかけまして、今の私の気持ちと解きます」
「その心は?」
「それは……どちらも逃亡(東方)するに限るでしょぉぉぉ!」
「あっちょっ、待ちなさいよっ!?ってか本心と答えが逆じゃない!!」
「待ちません知りません聞こえませんっ!」

 梅雨の束の間の夕焼け空に、巫女と天狗の喧しくも仲良さげな声が響くのだった――
 そんな空の遥か上、穏やかな時が流れる天界にてお騒がせ天人と従者である竜宮の遣いが佇んでいた。

「――ったく、下が何だか騒がしいわね」
「そうですわね」
「ホントよ、折角の衣玖とのデートなのに」
「……」
「……ちょっと、衣玖ー?」
「えぇそうですわねデート?ですわ?」
「ちょっ、何で疑問形なのよ?」
「終止疑問文です」
「何よそれ?」

 そう言いむくれる天子の頭を撫でる衣玖……天界のお騒がせ天人を知る者からしたら微笑ましい限りである。

「そういえばね衣玖、この前地上に行った時面白いものを聞いたわ」
「何です?」
「謎かけって言うらしんいだけど、これが面白いのよ。私も色々考えたわ、聞きたい?」
「そうですね、どういったのでしょう?」
「聞きたい?聞きたいのね?それじゃあ仕方ないわね、どうしても聞きたいのね?」
「早くおっしゃらないのでしたら実家に帰らせて頂きます」
「あぁん衣玖、言うから許して~」
「許しましょう、ではどうぞ」
「じゃ、心して聞きなさい。八雲の式とかけまして、私、比那名居天子と解くわ」
「その心は?」
「どちらも『九尾と(キューピット)』呼ばれるでしょう」
「総領娘様……」
「どうよ衣玖、あたしの謎かけは?」
「失礼ですが、天使違い、さらに言えばキューピッドは天使の意味ではありませんわ」
「細かいことはいいじゃない、天人は小さいことは気にしないのよ」
「胸もですか?」
「衣玖のバカ~鬼畜~、ワァァンっ!」

 そう言い泣き出した天子……それを見つめながら衣玖が一言……

「総領娘様は天使ですよ……私にとってはですけど……」

 惚気発言である。

「落ち着きましたか、総領娘様?」
「……うん」

 今天子は衣玖の胸にダイブ状態、羨ましい限りである。

「う~~~妬ましい限りだわ、パフパフ」
「まぁまぁ、お詫びに私からも謎かけを差し上げますわ」
「ホントっ!聞かせて聞かせて!」
「行きますわ。総領娘様がオイタをして縛られてしまったとかけまして、藍さんがご自分の式の名を呼ぶと解きます」
「う~ん、その心は?」
「どちらも『チェーン(鎖・橙)』と叫ぶでしょう」
「あぁん~衣玖~」
「……何ですか総領娘様、その恍惚に満ち溢れたお顔は?」
「いやだって、振りでしょ?」
「……は?」
「え、だって緊縛プr――」
「ここで再び謎かけです」

 私が空気を読んだ結果、「えぇー」とか総領娘様が桃の様な頬を膨れさせて怒ってらっしゃいます……可愛いです。

「行きますわ、龍神様のお言葉を人々に伝える私とかけまして、今総領娘様が置かれている状況と解きます」
「むぅ、その心は何よ?」
「どちらも報知(放置)するでしょう」
「あぁん、今日はそっちのプレイなのね!」

 そう言って、無い胸を抱き抱えながら身悶え始めた天人娘とスタンバイを始めた龍宮の遣いのいる長閑で平和な天界の真下を、一隻の船が横切った……

「暇ね~」
「そうね」

 船の名は聖輦船――その甲板に船長の村紗水蜜と入道使い、雲居一輪の二人が立っていた――

「姐さんも寅丸もナズもぬえも何さ!折角の遊覧飛行だってのにさ」
「しょうがないでしょうに、姐さんと星は里の守護者に、ナズーリンはチーズの買い足しに、ぬえはぬえで正体どころか行方が不明なんだから」
「うまいこと言うじゃない、一輪」

 村紗が拍手した、いつも背景と化している一輪の相棒、雲山も拍手した。

「そういえば最近里の方で謎掛けが流行ってるらしいじゃない?」
「そのようね」
「私達もやりましょうよ、謎掛け」
「えぇ、急に言われても無理よそんなの……」
「私はもう整ってるわ」

 そう言い一輪より大きめの胸を張る村紗。

「……妬ましい」
「……一輪、何か言った?」
「うぅん、どうぞ」
「う~ん、ま、いいか。出航前の私の気持ちとかけまして、小傘の気持ちと解きます」
「その心は?」
「どちらも『沖がさ(置き傘)』気になります」
「へ~、やるじゃない村紗」
「ふふん、どんなもんよ」
「でもあれよね、幻想郷に沖も無ければ海すら無いわよね?」
「そうなのよね、雲海はあるけど」
「あ」
「どしたの、一輪?」
「私も一つ思いついたわ」
「どんなの、聞かせてよ」
「えーと、幻想郷の雲海とかけまして、今の会話と解きます」
「その心は?」
「どちらも『沖(オチ)』が無いでしょう」
「……」
「……えっと、村紗……」
「……ねぇ、一輪」
「はひっ!?」

 そう言ってこちらを見た村紗の顔は青白く、眼は深海の底の様に光無く澱んていた……。

「私ね……海で死んじゃったの……」
「……」
「とっても冷たくて、凍るような水の中に沈んでいって……あの時はホントに――」
「ワァァァン、寒いなら寒いって単刀直入に言ってよぉっ!」

 そう叫ぶやいなや涙で顔をグシャグシャにした一輪が聖輦船から飛び降りた、ちなみに雲山が置いてけぼりを喰らった。

「あらら、ちょっちイジメ過ぎちったか?」

 そう言ってペロリと舌を出したるは村紗では無くぬえであった。今まで村紗だと思っていたのは正体不明の種で化けていたぬえだったのだ。

「で、こんなもんでよかったの、お二人さん?」
「うん、ありがとうね、ぬえ」

 その声は雲山から聞こえてきた、と思うとその雲山から手足が生えた……――

「G・Jよ、ぬえ」

そう言い雲山から現れたるは本物の村紗水蜜、何故か水着姿である。雲山がピンクを通り越してアツアツなゆでダコさえも真っ青になるほど真っ赤になっている

「私の水着姿で悩殺ってやつねっ」
「そりゃ私の水着だもの、そのボンテージ」
「胸がキッつい……」
「嘘言うな詰め物のくせして、ってか要らないでしょうアンタの胸の大きさなら」

 ちなみに一輪が70後半位です、何かとは言いませんし無論当社比なので責任は負えません。

「まぁそれはそうと……」
「ホントによかったの、あれで?」
「ナイスよナイス」

 そう言うと水着の中からポロライドカメラを取り出した村紗……どこに挿んでたかは言わない。そして――

「一輪の泣き顔、頂きましたー!」

 そして狂喜乱舞する村紗と親指を立てる雲山……おっさん何やってんだとか言わない。

「でも大丈夫かしらね」
「ウフフ~何が~?」
「一輪よ」
「あぁ、晩御飯までには帰って来るでしょう、なんたって今日の晩御飯作ったの聖だし」
「いやそうじゃなくて、雲山置いってったでしょ?」
「だから?」
「雲山いないと飛べないんじゃなかったっけ、一輪?」
「……え?」

 そんな血の気が引いてってる聖輦船より、雲山を置いてけぼりにして飛び降りてしまったため飛べなくなってしまった一輪の叫びが幻想郷の空に響く中、その叫びが届かない地底ではいつものドンチャン騒ぎが繰り広げられていた――

「おら~酒持って来なっ!樽じゃ足りないよっ!」

 そのドンチャン騒ぎの中心にいたのは毎度御馴染、星熊勇儀その鬼である。

「よ~しパルスィ、何か芸をやっておくれよっ!」
「無理無駄無茶、私に芸をやれなんて妬ましいったらありゃしないわ」

 急に無茶振りされたのは嫉妬の橋姫、水橋パルスィである。勇儀に向かって卓袱台をひっくり返す仕草をしたが卓袱台が無かったので、代わりに中に入ったままのキスメごと桶をひっくり返した。勇儀は片手でそれを受け止めた。

「なんだいパルスィ、つれないじゃないか」
「曲芸なら貴女の方が得意でしょうに、勇儀」
「あっはっはっはっ、そうでもないさねー」

 そう言いつつキスメと空いた酒瓶とで御手玉をする勇儀……粗雑そうに見えて鬼は中々器用なものなのだ。

「それにしても、何か面白いことはないものかねぇ」
「それなら謎かけはどうよ、姐さん」
「あぁん?」

 声がした方を見てみるとそこには黒谷ヤマメの姿が、両腕一杯に荷物を抱えている。

「あらヤマメ、どこに行ってたのよ?」
「ちょっと地上にねー、はい御土産」

 そう勇儀に土産を渡しつつ、器用にキスメを糸を使い救出したヤマメ……糸は手の方から出て来ました。

「何々、永遠亭名物月見饅頭?旨そうだねぇ」
「ホント、月の出ない地底において月見なんて何て嫌味なのかしらパルパル」
「いやそんなつもりじゃないとは思うけど、それ永遠亭の兎からの御土産だよ」
「どっちの?」
「どっちのって?」
「兎よ、大きい方?小さい方?」
「あぁ、小さい方」

 パルスィとヤマメの会話の間に24個入り饅頭二箱をペロリと平らげていく勇儀、どこぞの亡霊姫といい勝負である。

「でヤマメ、謎かけって」
「あぁウン、今地上でね謎かけがブームなのよ」
「謎かけ、ね……そんなの急に言われても思いつく訳ないじゃない、パルパル」
「思い付いたさねぇっ!」

 そう言い勢いよく立ち上がった勇儀、自信満々の笑みである。

「大丈夫なの、勇儀?」
「大丈夫さねぇパルスィ、まだ酔ってないしね」
「いや貴女頭使うの苦手じゃない、バカだし」
「バカじゃないさね!?やってやろうじゃないか!私、星熊勇儀とかけまして、野生の熊と解く」
「その心は?」
「どちらも『酒(鮭)』が好物です」
「バカね」
「う~~~、でもそんなパルスィの方がもっと好きさねっ!」
「ほら、やっぱりバカ……」
「アラアラアララ、妬けますねぇ」

 そう言いこの和やかムードをぶち壊したのは地霊殿の主、古明地さとりである。

「いつからそこに!?」
「最初からです。あと『いつから無意識を操れるように!?』とか思っているようですけど、こいしの技は想起してなんていません。いつも大切には想っていますけども」
「聞いてないのによくしゃべるわね、妬ましいわパルパル」
「許してやりなよパルスィ、最近こいしが帰って来てないらしいんだよ、ざっと一ヶ月位」
「正確には一カ月と一日と十三時間三十三分二十一秒ですよ、勇儀さん」
「そこまで数えてたの!?」
「(凄い……)」
「当り前ですよ、こいしのためなら例え火の中水の中あの子のスカートの中ですっ!」
「……そんなんだから避けられんのよ」
「何か言いました?パルスィ」
「……別にぃ~」

 そうやって睨み合うさとりとパルスィ……あまり迫力はないがヤマメとキスメは慄いた。

「そんなことよりさとり、お前さんは何か無いのかい?」

 流石に大妖怪と言ったところか、この状況を何とも思って無いように勇儀が口を挿んだ。二人もこうなっては黙るしかない。

「謎かけですか……勇儀さん?」
「そうそれだよ、お前さん得意だろ、こういうの?」
「……まぁありますよ、何個か」
「だと思ったさね、聞かせなよ」
「では、お空が好きなお燐とかけまして、除草剤と解きます」
「その心は?」
「どちらも『猫(根っこ)から鴉(枯らす)』でしょう」
「おぉ、やるじゃないかさとり」
「でもあれよね、地霊殿って……」
「えぇ、草なんか生えませんから除草剤は必要ありませんね」
「パルスィ、そんな無粋なこと言うなよ、謎かけなんだからさ」
「そうですよ、あまりいじめないで下さいよ」
「だって(勇儀に褒められるなんて)妬ましいんだもの……」
「あぁそう言うことですか……」

 ニヤニヤニヨニヨとするさとりに対し、顔を真っ赤にしながら「次に行きなさいよ」と慌てて促すパルスィ……微笑ましい限りである。

「次ですね、何度言っても忘れてしまうお空とかけまして、未だに中国と呼ばれる門番さんと解きます」
「その心は?」
「どちらも『尚(名を)』覚えてくれません」
「さとり、それはちょっと難しやしないか?」
「そう思って、もう一つありますわ」
「聞こうか」
「その門番さんの本名とかけまして、お空がお燐のこと好きかと解きます」
「その心は?」
「どちらも『紅美鈴(本命、燐)』と言うのでしょう」
「あぁあの門番ってそういえばそんな名前だったっけ、あの門番」
「中国じゃなかったのね……」
「……貴女達もですか、憶えてなかったの……」
「あっはっは、悪いね」
「いいじゃない別に……それに今ので私も一つ思い付いたわ」
「へぇ、どんなのだい?パルスィ」
「あの門番って紅魔館の主に仕えてるのよね?」
「えぇ、そうですよ」
「で、そこの主の妹と仲いいわよね、貴女の妹」
「……えぇ」
「では、そこの主、レミリアと貴女の会話とかけまして、初めて永夜抄のExボスを見た時と解く」
「その心は?」
「どちらも『妹くれない(妹紅)』と言ってたわ」
「ダッ駄目です!?こいしはあげませんっ!!」
「落ち着きなよ、さとり。たかだか謎かけだろ」
「でもそのこいしが今行ってるわよ、その吸血鬼(妹)のとこ」

 そうして、パルスィの一言で無双と化したさとりが暴れだし、旧都が大騒ぎになってるのを肴に酒を煽る勇儀達がいる遥か真上の地上で、ある一つの邸が夕陽に照らされていた――

「むきゅ~……」
「大丈夫ですか、パチュリー様?」
「えぇ……ありがとうね咲夜……」
「いえ、かまいませんわ。でもびっくりしました、お茶をお持ちしましたら血の海だったんですもの」
「誰かが噂してたのね、だから吐血しちゃったのよ」
「でも小悪魔もいましたのに……」
「肝心な時に役に立たないのよね……」

 ここは紅魔館内の大図書館……ちなみに小悪魔はと言えば只今絶賛お仕置き中。正座させられた上、分厚い魔道書を何十冊と載せられていた。

「パチュリー様~もう許して下さ~い……」
「駄目よ、主人の危機に役に立たない使い魔にはお仕置きしないと……ねぇ、咲夜?」
「そうですわね全くもって同感ですわ」
「……棒読みよ、咲夜」
「瀟洒の欠片も無いですね」
「貴女に言われたくないわよ」

 そう言うとおもむろに小悪魔の上に載せられた本の上に優雅に座った、その瞬間小悪魔の悲痛な叫び声が紅魔館中に響き渡った……

「そういえば咲夜、最近謎かけが流行ってるらしいじゃない」
「よくご存じですね」
「新聞に書いてあったわ」

 そうパチュリーが手にしていたのは花果子念報であった。文々。新聞は作者行方不明のためまだ届いていない。

「そういう訳だから咲夜、何か謎かけをしてくれないかしら?」
「急に言われても思いつきませんわ」
「むきゅう、じゃあ小悪魔」
「ハイ」
「何か面白いものを披露してくれれば許してあげるわ」
「ホントですか!」
「本当よ」
「では行かせて頂きます。咲夜さんとかけまして、異変解決を成し遂げた者と解きます」
「その心は?」
「どちらも『瀟洒(勝者)』でしょう」
「成程ね……」
「どうでしょう、パチュリー様」
「悪くはないんだけど……」
「なっちゃないな、小悪魔」

 そのセリフと共に颯爽と現れたのは魔理沙である。

「あら、遅かったじゃない魔理沙……」
「色々とあってな、早苗を守矢神社に送って来たぜ」

 ちなみに早苗は永遠亭で治療と記憶修正を受けたので万事抜かりなし。

「それはそうと小悪魔、面白いことしてんな」
「魔理沙さ~ん助けて下さ~い……」
「何をだぜ?」

 少女説明中――

「ははーん、つまり謎かけでパチュリーを納得させればいいんだな」
「そうなんです、何とかなりませんか?」
「小悪魔、仮にも悪魔の貴女が本来力を貸すべき魔女に助力を求めるのはどうかと思うわ」
「そんな~」
「閃いたぜ!」
「あら早いわね」
「最速は私の信条だぜ、行くぜ。レミリア、フランドールの二人を相手取るとかけまして、人生の終焉と解くぜ」
「その心は?」
「どちらも『姉妹(終い)』に違いないぜ」
「流石にお二人相手となると恐ろしいモノがあるわね……」
「私も遠慮するわ、小悪魔」
「ハイ何でしょう?」
「許してあげるから二人の相手、ヨロシクね」
「やっぱりこのままでいいです」
「冗談よ」
「そういや咲夜、美鈴はどうしたよ?」
「美鈴はお嬢様のところよ、それがどうかしたの」
「いや、いざとなったらアイツを人身御供にだな……」
「そうね、美鈴なら上手くやるでしょう、頑丈だし」
「それもそうですわね」

 その時小悪魔は思った……悪魔はここにいる……しかも三人も、と……

「そういえばパチュリー様は無いのですか、謎かけ?」
「え?」
「そうだな、パチュリーのことだから思わず唸らされてしまう様な謎かけを考え付くに決まってるぜ」
「むきゅ、そこまで言うなら……」
「私も聞きたいです、パチュリー様」
「じゃあ、レミィの齢とかけまして、咲夜の生き様と解きます」
「その心は?」
「どちらも『中世(忠誠)』に生きたでしょう」
「500年位前でしたか……中世って?」
「中世って意外と年代がはっきりしないけど、レミィの歳だって似たり寄ったりよ」
「そういうものなのか?」
「そういうものよ」

 そんな中、昔から噂をすれば何とやらと言いまして――

「咲夜~」

 現れたのはこの館の当主にして、紅い悪魔と呼ばれるレミリア・スカーレット。カリスマがあったりなかったりしたりと何かと忙しいお嬢様である。ただ今は赤と言うより――

「真黒だなオイ、私の専売特許を取る気かよ、泥棒はいけないんだぜ」
「貴女が言うな」
「あら、どうされましたお嬢様?」
「書けた~」

 そう言うレミリアが手に持っていたのは紙、そこにミミズののたうったような字で何か書いてあった……つまり真黒だったのは墨だったのだ。

「パチュリー、どうしたんだよレミリアの奴」
「ホラ最近、妹様に地底のお友達が出来たじゃない」
「あぁ、こいしのことか」
「そうその子。で、その子とお姉さんの自慢し合いがあったようなの」
「ホ~、それで?」
「それでそのこいしちゃんが、さとりちゃんは容姿端麗で才色兼備なお姉さんだって言ったらしいのよ」
「ナルホドなぁ」
「それで妹様、レミィに泣きついたの。せめて文字だけでも書けるようになってほしいってね」
「まぁ、あのネーミングセンスじゃな」
「そうね。で、今は美鈴が文字の読み書きを教えているのよ」
「だからいなかったのか、アイツ」

 そうこうしてる間に咲夜に嬉々として自分の書いた文字を見せながら、咲夜に綺麗に墨を拭われていた。

「どう咲夜~上手に書けたでしょ」
「えぇお上手ですわお嬢様」
「どれどれ、私にも見せてみろよ?」

 そう言い、咲夜から紙を受け取りパチュリーと共に覗き込んだ魔理沙。

「何々、Frandreか……中々よく書けてるじゃないか」
「よく見なさい魔理沙、よく書けてはいるけども一つ間違ってるわ」
「えっ、嘘でしょパチェ!?」
「まぁ習い始めたばかりだし、美鈴も気づかなかったか……」
「気を遣ったかだな、咲夜と一緒で」
「さぁ、何のことかしら?」
「ねぇどこなの~教えてよ~」
 自分より背の高い三人が紙を持ってることもあってか、届かず間違いを見れず目を潤ませ始めたレミリア……咲夜が鼻から血を出しながら卒倒した――

「ここよレミィ」

 そうレミリアに見えるようしゃがみ込み、間違ったところを指差すパチュリー。

「ここよ」
「……?間違えてるの、どこが?」
「ほら、dとbを間違えてるのよ。これじゃあフランボールよ」
「フランボール……新作に出そうだなそれ」
「……どっちの?」
「……ゲットだぜ!」

 そう言い某冒険シリーズの主人公のポーズを取る魔理沙……声もそっくりである。

「ウ~」
「まあまあレミィ、こんなこともあるわ」
「そうだぜ、書き間違いなんて気にするな」
「ア~ウ~」
「そんなお嬢様のために、私も謎かけを思い付きましたわ」
「おっ、復活したかよ咲夜」
「えぇ、もう大丈夫ですわ」
「で、咲夜。レミィのために思い付いた謎かけって?」
「ウ~聞かせなさいよ、咲夜」
「では失礼して。お嬢様のグンニグルを使う妹様とかけまして、妹様の名前を書き間違えたお嬢様と解きます」
「その心は?」
「どちらも『スペル(詠唱・綴り)』が違うでしょう」
「おぉ~流石咲夜、謎かけも瀟洒だぜ」
「褒めても何も出ないわよ」

 そう言った瞬間、魔理沙の帽子の中に美味しそうな匂いをさせた包みが入れられていたのは内緒だ。そして……――

「咲夜~私にもそれ教えて~」

 そう目をキラキラさせて咲夜を見つめるレミリア、それを見て咲夜が再び卒倒したのも内緒だ。

「わー、咲夜大丈夫かよっ!?」
「小悪魔、早く美鈴を!」
「ハイっ!」
「レミィは血を舐めないの!」
「離してパチェ~」

 そんなドタバタな紅魔館とは打って変わり、冥界に建つ広大な屋敷は静寂に包まれていた……その屋敷の中庭から二人ばかしの声がしてきた――

「犬走椛の牙とかけまして、妖夢の生き様と解きます」
「その心は~?」
「どちらも『犬歯(剣士)』に違いないでしょう」
「あら~やるじゃない藍~」
「いえいえ、これぐらい出来ないと紫様の式は務まりませんよ」

 そう話すのは妖怪の賢者・八雲紫に仕えし式、九尾の狐・八雲藍。そしてその傍らにはここ白玉楼の主、亡霊姫・西行寺幽々子の姿があった。

「ところで藍~、ここにいて大丈夫なの~」
「何がです?」
「紫よ~ほったらかしじゃないの~」
「大丈夫ですよ、紫様は今頃博麗神――」

 そう言った途端、臨戦態勢に入った藍……その瞬間――

「ワァァァンっ!藍~っ!」
「ワァっ、って紫様じゃないですか!?」
「どうしたのよ紫~、妖夢といい皆よく泣く日ね~」
「ウェェェン、だって、だって~霊夢が~」
「霊夢がどうしたんです?」
「わっ私のことババアって……」
「年齢はそうでしょう」
「藍までそんなこと言うの!?」
「霊夢もヒドいわね~」
「でしょう幽々子」
「そういうのは本人のいないとこで言わなきゃね~」
「幽々子酷い!?って貴女も相当いい歳――」
「私10代で死んでるから永遠の10代だもの~」
「う~~~返す言葉がないわ……」
「ほら泣きやんで下さい紫様」
「エ~ン、藍~」
「大丈夫です、老後もお世話して差し上げますから」
「もう嫌っ!?」

 藍が紫にトドメを刺したところで幽々子が言った。

「泣かないで紫~お詫びに貴女に謎かけを送るわ~」
「うぅ、慰めてくれるの……幽々子~」
「うん~元気を出してね~。つれない彼女とかけまして、私と解くわ~」
「グスン、その心は?」
「どちらも『脈』はないでしょう~」
「ウワァァァン、幽々子がイジメル~!」

 そう言うと泣きながら隙間に消えた紫……その後、紫の姿を見た者はいない――

「ってなりはしないでしょうから大丈夫ですよ、晩御飯までには帰ってきます」
「ただいま~」
「いえ貴女ではなくてですね……」

 そう言って藍に抱きついた幽々子……その光景に何か別の泣き声がしたのは気のせいだろう――

「でも~ちょっとイジメ過ぎたかしら~?」
「いえ、いいんじゃないんですか、私も最近苦労掛けられっぱなしでしたから少しスッキリしました」
「そういえば藍~まだあるんじゃないの~」
「……えぇ、とっておきの謎かけがありますよ」
「どんなの、聞かせて聞かせて~」
「行きます。旅立つ紫様へ向けて送る言葉とかけまして、紫様に気苦労掛けられっぱなしだった私のそれからと解きます」
「その心は~?」
「どちらも『Good Luck(グッと楽)』になるでしょう」
「貴女って酷い式ね~」
「貴女もでしょう?」
「だって、ねぇ~」
「そうですよねぇ」

 そう言い二人して異口同音に言った――

「泣いてる『紫』『紫様』は可愛い」

 そう言うとハイタッチする亡霊姫と九尾の狐……そのハイタッチが微弱な電波を発したのに誰も気づいていなかった……一人を除いては……

 そして再び地底――

「……はっ!?」
「ちょっ、どうしたんです勇儀さん?急に立ち上がったりして」

 胡座をかき、パルスィを抱き締めながら杯を煽っていた勇儀が電光石火、それこそ雷の如きスピードで立ち上がった。

「たった今電波をキャッチしたんだよ」
「……はぁ」
「駄目だわこの鬼、お酒の飲み過ぎでおかしくなったわ……って思っただろう、さとり?」
「いつから心が読めるように!?」
「いやコイツがそう思ってるってさ」
「ホニャニャチワー」

 そう言いパルスィと共に勇儀に抱かれていたのは我が愛しの妹、古明地こいし。二人とも抱き抱えられた子猫の様で可愛いです。ペットにしたいですとか思っていたら……

「たっ、ただいま戻りました~」
「うにゅ、孵った」

 フラフラと歩いて来たお燐と字面が何かおかしいと思ったら、卵を両腕いっぱいに抱えたお空が戻って来た……ここで愛すべきペット達を抱きしめてあげるべきなんでしょうが、今は目の前にヴァルハラが――

「お姉ちゃんそれ死んじゃう」
「さとり様、あたい達に構わずこいしさまを~……」
「うにゅにゅ、卵食べます?」

 そんなペット達の声援に押され、私は遂に意を決した――

「勇儀さん、私にも抱かせて下さい」
「いいけどパルスィは駄目だ」
「私はこいしが抱ければそれでいいです」
「じゃ、姉ちゃんとこに帰りなっ!」
「お姉~ちゃ~ん」
「メイ~」
「美しい姉妹愛だね……」
「妬ましいわ、パルパル」
「いいなぁ、あたいもあんな風にお空と……」
「うにゅにゅ、ゆで卵ウマー」

 抱き締め合う姉妹とそれを見守る鬼と橋姫、火車に地獄鴉……微笑ましい光景である……ツッコミどころがあったような気がするのは気のせいだ。

 閑話休題――

「で、何の電波を受信したんです?」

 こいしの頭を撫でながらさとりが勇儀に聞いた。

「あぁ、受信したよ、この角がね」
「それこそ電波じゃ……」
「はっ、たった今も電波を受信したよっ!」
「うにゅにゅ、どんな?」
「え~と、地デジ以降まであと一年、地デジの準備、お早めに」

 「打倒地○ジカ」と叫ぶ勇儀だが、すげぇと憧れの目で見る空以外の全員が「いやアンタはアナ○グマでしょ……」と思ったのは内緒だ。

「で、もうひとつの電波ってなんなのさ、姐さん?」
「あぁ、忘れるところだった。拾ったのは謎かけのネタだよ」
「謎かけ……ですか?どんなのですか?」
「あぁ、行くさね」

 そう勇儀が言ったので第三の目を閉じるさとり、やはりネタが分かってしまっては面白くない。

「いつも通りのパルスィとかけまして、今これを書いてる終焉刹那と解く」
「その心は?(何か読めちゃったかも……)」×4+「卵まいうー」
「どちらも『妬む(ネタ無)』でしょう」
「思った通りでしたっ!」

 これにて終焉、ここまで付き合ってくれてありがとさねっ!
「おっとっと、いかんいかん忘れてたよ、これが最後の謎かけさね。黒白の主食とかけまして、創想話の素晴らしい作品と解く」
「その心は?どちらも『米(コメ)』が多いさねぇ」

 ここまで付き合ってくれてホントありがとな、じゃまた来てくんなよっ!

 どうも、そうこうしてる間に梅雨も明け夏真っ盛りになってしまいました終焉刹那です。
 これを書き上げるだけに2ヶ月掛ってしまいました、相変わらずやる気とタイピング速度が上がりません。えっ?だからピチュるんだよ?ほっといて下さい。

 さて今回は前回使わなかった謎かけを一挙放出しました、中には苦しいもの(自分としてはコンティニューを再戦としたとこ)や、会話乱立で読みにくいとこもありますでしょうが、ここまで読んで楽しんで頂けましたら嬉しいです。
 ではここまでありがとうございました。
終焉刹那
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コメント



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9.70ワレモノ中尉削除
タイトルを見てティンと来ました。
謎かけ楽しいですよねっ。
僕は
>「行くわね?空に飛び立つやいなや彼方に消えた魔理沙とかけまして、それを見送りながら咳き込むパチュリーと解きます」
>「その心は?」
>「どちらも『全速(喘息)』なんでしょう」
ここがお気に入りです。霊夢上手いなあ。
ただ、地の文が少なかったので、ちょっと「今、何処で、誰が何をしている」というのが分かり辛かった様に感じてしまいました。そこだけ少し残念。

賽銭に悩む霊夢とかけまして、パルスィと解きます。
その心は、どちらも収支(終始)マイナスの勘定(感情)です。