Coolier - 新生・東方創想話

其来(それから) ~ ダウザーの小さな大将の場合 後

2010/07/21 15:15:51
最終更新
サイズ
56.76KB
ページ数
1
閲覧数
473
評価数
5/15
POINT
950
Rate
12.19

分類タグ


※ご注意※
・本作では筆者独自の宗教解釈が含まれます。苦手な方は御免なさい。
・本作では筆者独自の歴史・伝承解釈が含まれます。苦手な方は御免なさい。




◇◇◇◇◇◇




 神々の坐す霊山、妖怪の山。その名は俗称に過ぎないが、先刻まで御山はまさに怪奇然とした妖しげな力に包まれていた。

 頂に近く鎮座する守矢神社は、宵も過ぎた曇天の闇夜に明かりなく佇む。飄々と風の鳴く音と、ざざめく木々の葉擦ればかりが社殿に弱く響く。
 拝殿を脇に抜け、本殿から山の側に少し間を開けて、やや背の低い平屋の住居が在る。麓からは恐らく社の影に隠れて見えない。寝食だの日常の俗事は立場上憚られるように在るべきと、そうした意向あっての立地であろう。しかし荘厳たる社殿に劣らず、集団生活を営むには十分に広い。

 縁側に二柱、風神と祟神が在る。彼女らは純粋な神であるため本来ならば祀られる御神体に宿るものだが、参拝者の持て成しなどに都合良く、また現人神を身内に持つという内々の事情もあり、該住居にて下々の者と同様の生活を嗜む。
 風神は、名を八坂神奈子という。また祟神は、名を洩矢諏訪子という。二柱は縁側に腰を下ろし、それぞれ得手勝手な方角を向いている。

「諏訪子、お前一体あの態度はどういうつもりだい」

 第一声を発したのは神奈子である。神奈子は、先程諏訪子がこの地で起こした恐ろしき祟りを咎める。神奈子の眼光は、闇夜でさえ鋭い光を湛えている。

「どうも何も。私は神奈子に出来ないだろう、直接的なやり方で彼女に接してやっただけだよ」

 声に応えるは諏訪子である。諏訪子は、さも詰まらない事に返答するごとくさばさばとして、咎める神奈子を皮肉に煽る。諏訪子の瞳は、闇夜になお昏く穴を穿つ。

「可哀相に、彼女は怯えて山を下りてしまった。少しは加減しても良かろう」
「そうして有耶無耶な、煮え切らない事しか言えないのじゃあ世話無いね。神奈子は甘過ぎる」
「それは私とて、道に迷いつつある彼女に諫言してやり、今一度彼女の目指す道に立ち返らせてやりたいと思うさ。けれど私には守矢神社での立場がある。直接的には言えんよ」
「だから私が彼女にそう言ってやった、と思えば良いじゃない。尤も私は私の思うように、ああして脅し付けただけさ。彼女はもしかすると真面目にその意義とやらを考えるのかも知れない。けれどそんなの、私の知った事じゃあない」
「むう……彼女にお前の本意が、届いていれば良いのだけれど。なあ諏訪子、私は神として、例え相手が異なる神を祀る者であっても、迷う者が居れば正しいと思う方向へ導いてやりたい。お前も在り方は違えど、それが本意なのだろう。彼女はこれから、迷いを晴らすことが出来るだろうかね」
「く……ははははははは。あっはははははは。神奈子、お前は全く御人好しだ。祟神に何て問い掛けをしているんだい。それにたかが妖怪の事じゃあないか。妖怪に何の道なぞあるもんか」

 からからと、闇夜に渇いた嗤い声が響く。山を下りた鼠へも届かせんとばかりに、闇夜に向かい吼えるように嗤う。
 ひとしきり嗤い終えて諏訪子はすくと立ち、夜闇の樹海へと足を踏み込む。樹海にあって闇はなお深い。諏訪子は闇に溶ける。諏訪子から闇が溶け出るごとく、それが諏訪子の理であるように、何処にでも在る闇に消えて無くなる。

(ああけれど、末に彼女がどんな答えを導き出すかは、興味深いねえ。神奈子はせいぜい御人好しを演じてやりな。私は私の思うように祟るだけさ)

 闇からぼんやりと声がして、黙る。後には神奈子ただ一柱が残される。神奈子は溜息を吐き、それから諏訪子の事など忘れたように黙り、沈思する。
 諏訪子に祟られ、泣いて逃げてしまった鼠の妖怪──ナズーリンの事を。

(……ナズーリン。お前は今、迷いの淵に居る。気を確り持たなければいけない。根本義に立ち返らなければいけない。さもなくば、いずれ六道からさえ外れてしまうだろう)

 神奈子は出会ってからまだ間も無いナズーリンの事を憂う。異教とはいえ、信仰の心を持つ鼠の妖怪の事を、祀られる神の一柱として真に憂う。




~風祝~




 愛別離苦(あいべつりく)。愛する者と別離する苦。
 別離とは、自と他とを隔てる距離にして絶対な壁である。幾ら帰依し奉ろうと。幾ら慕い魅かれ合おうと。ひとたび道を違えれば、それもまた別離と呼ぶのだろう。




 もう帰りたい、もう恐ろしいのは厭だ。そればかり念じていた。
 まぶたが重い。少しばかり腫れぼったく、わずかに痛みがある。鼻も、いくらすすっても出てくる。喉も何だか痙攣している。息をすればしゃっくりみたく、ふっ、ふっと声が漏れる。

 何故こんな事になってしまったのか、思い出そうにも頭が拒否をする。それで幾度首を横に振ったことか。あまり振り過ぎて、熱に浮かされたように頭が呆とする。
 辺りはもう闇に沈んでいる。朔(さく)の日。暗雲も色濃く、星明かりさえ無い闇夜の樹海の上を私は飛んでいる。たびたび首を振るせいで、ふらふら、ゆらゆらと蛇行する。真っ直ぐ飛ぶ事を意識すると、かえって心は散漫になり、余計な気持ちがまとわり付いて重くなる。そうして──

「アッ」

 涙で目が霞んだところに運悪く、一際背高な杉の木に肩を撲つけて落下した。がさがさ、ばさばさと枝葉を巻き込んで、雪融けらしい泥の地面に背中から落ちた。
 奇妙な声が聞こえる。得体の知れない生き物が、大きな翼を広げて夜空に飛び立つ。樹海の木々は、まるで私を見下して嘲笑うように枝葉を揺する。

 ミシャグジ神。自然崇拝から発生した土着の祟神は、そちこちに居る。そうして私の傍に立つ。卑俗で矮小な鼠の傍に、深淵の瞳に憎悪を忍ばせてじっと「立たるる」──

 もう私には限界だ。

「……っ、ふうっ……うわあああああ。うわあああああんっ」

 道に迷った幼子のように、声を出して泣いた。
 泥まみれで、服も心も重くて。冷たくて、寒くて、心細くて。疲れて、お腹も空いて、すりむいた腕が沁みて。
 暗くて、怖くて、恐ろしくて。泥の中に座り込み、泥水と朽葉で汚れた袖口で、無闇に目をこすって泣いた。

「あああああああん、うわあああああんっ」

 きっと誰も助けてくれない。誰にも気付かれない。私はここで、何だか判然しないモノに食われるのだ。会話さえ成り立たない、ただ怖いだけの化け物に、食う意味も無く食われてしまうのだ。
 私は私の全てを食われて、何の意味も無くなってしまうのだ。悲しむ者も居ない。覚えている者も居ない。私がこの幻想郷に居た事さえ食われて、消えてしまうのだ。

 その理由は解らない。ただあの洩矢神の、底の無い双眸に見据えられた時から、その思いは決して逃れる術の無い純然たる真実として心の内に芽生えた。
 それは恐ろしい事だ。けれど、それは何処にでも在る恐怖だ。彼の神の束ねるミシャグジ神は、そうした何処にでも在る神なのだ。何処にでも在り、また何もかもが「それ」なのだ。そうして「それ」に祟られた私は、この先どうなるのかなど考えるまでも無く……

 今の私には、泣くことしか出来ない。泣いてどうなる訳でもないけれど、ただ泣きじゃくることしか出来ない。




 ゆさり、ゆさりと、体が上下に揺れる感じがする。先刻まで何か恐ろしいものに取り憑かれていたような気がする。今はそれ程の恐怖を感じない。

「ん……う、ここは……」
「あ、起きちゃいましたか。もう少し寝ていて良いですよ、貴方あまり重く無いし」

 緑色の頭が見えた。その頭が、私の顔の間近で涼やかな声を発する。どうも私は、この誰かに背負われているようである。

「君は……」
「通りすがりの正義の巫女さんです。何てね、ちょっと言ってみたかっただけです」

 ひょうきんな事を言う。けれど素直である。恐怖に傷付き疲弊した私の心は、そんな物言いに安心する。

「ん……そうか、正義の巫女さんなんだね……」
「あは、冗談ですよう。ともかく、見付かって良かったです。これもまた奇跡です」
「奇跡かあ……有難いものだね……」

 安心というものは疲れた心を殊更に癒してくれる。揺り籠に居るような心地を堪能したくて、私はその肩に顔を寄せて目を閉じた。優しくて良い匂いがする。
 私を背負う誰かは、他に二、三言私に話したようだった。けれど私の意識はまた霞のごとく薄れて途切れたので、それから先何を言われたのかはよく解らない。




「……ず……りん、なず……」

 誰かの声がする。肩がぐらぐらと揺れる。心地良く眠っているのだから、もう少し放って置いて欲しい。
 微睡の半眼で見る。何かはっきりとしない様々な形が映るのだが、頭がそれを捉えていない。自分の頭は豆腐か何かのようで、手応えも歯応えも無くぼんやりとして崩れそうに震えるだけである。

 ふうと一息。もう少し眠ろうと、また目を閉じる。


「なずーりんっ」
「ふああっ、はいっ」


 耳元で弾けたような怒声に驚き、瞬時に覚醒した。尻尾の先をびびびと痙攣させ、思わず起立して敬礼──

「はっ……あれ、一輪。に皆も」

 目の前に怒り心頭の一輪が居た。その後ろにご主人様と船長と、久方振りの聖と。一輪以外、皆きょとりとした顔をしてこちらを……いや、一輪の激昂した姿を見ていた。
 一輪は直立のまま、私を放した手を拳固に握ってぶるぶると震えている。少し俯きがちの表情は、御山の磐石のように厳めしい。目に見えない炎をまとうように、足の先から頭の天辺に至るまで真っ赤な怒りを満たして屹立している。

 これは撲たれるかな、と思う。むしろ撲たれなければおかしい。何故撲たれるかという理不尽はさて置いて、一輪の仁王立ちからはそれ以外に選択肢を見出せそうにない。

 一輪が動く。撲たれる事前提の私は、思わず身を縮こまらせて目を瞑る。ところに、窮屈でぎこちない抱擁が私の体を極めた。

「ひゃあっ……え、あれ」
「……っ、じんばい、がげざぜるなよう、ごのばがっ……」

 ぐずぐずと耳元で鼻声を掛けられる。それからはもう、一輪は私の背に回した両腕で私をぎゅうぎゅうと締め続けるばかりだった。顔の押し当てられた肩掛けからは、水に湿った感触がした。
 皆一様にほうと息を吐き、やがて安堵したように微笑みを向ける。終始無言でにこにこしていたのは傍らに佇んでいる緑髪の少女だけである。

「ともかく、ナズーリンが無事で何よりでした。巫女さんも……ではないんでしたね。神様にもご足労をお掛けしました」

 一輪の肩越しにぽん、ぽんと私の頭を撫でながら、聖が少女に声を掛けた。そう言われた緑髪の少女は得意気な顔で胸を張る。

「この程度の事、何て事はないですよ。何たって現人神ですもん。アカデミックな視野を得た私に不可能なんて無いのです」

 ぷすうと鼻息を荒くする現人神。先程は奇跡とか何とか言っていたような気がするが、無茶苦茶である。
 聖は私に抱き付く一輪をなだめて、肩を優しく抱いた。一輪はなおもぐずぐずと泣いて、しきりに目元を拭っている。……どうも、珍しいものを見てしまった。あのつんつんした一輪の姿とは到底思えない。まだ私は夢の中にでも居るのだろうか。

「ええ、此度は本当に助けられました。有難う御座います。さて、もう遅いですから聖輦船に戻りましょう。宜しければ神様も今夜はお泊まり下さい。色々とお話も伺いたいですし。お茶菓子も御座います」
「お茶菓子。うんそうしましょう」

 私の驚きを他所に、歓喜に満ちた目をして両手を握り合わせる現人神。遠慮の無い現人神もあったものである。

 それにしてもここまでの展開が、私にはまだよく解らない。皆が私のことを心配してくれていたというのは、まあ解る。しかしその喜びより先に、一輪の取り乱した姿だの、図々しい現人神だのを目の当たりにしたものだから、私の心にこびり付いた驚きが容易に拭い去れないでいる。また少しだけ過去を振り返ろうかとも思ったが、大方私の知り得ない場所で色々あってこんな展開なのだから、それも無駄だろう。
 一輪を伴い、現人神を連れて先へ行く聖に、後から付いていく形でご主人様と船長と私が連れ立つ。納得いかないままというのも気持ち悪いので、私は船長に事の次第を問うことにした。

「なあ船長、あれは一体何事だい。少しばかり私が抜けてしまって心配は掛けさせたろうが、あの取り乱し様は尋常じゃあない」
「……貴方ね、莫迦じゃあないの」

 ぎろりと剣呑に睨め付けて、開口一番莫迦呼ばわりである。まあそれだけ心配をさせてしまったのかも知れないが、酷い。

「そりゃあ結界解放の衝撃は物凄かったし仕方無いけど。貴方は法界上空で聖輦船から放り出されたの。私も窓越しに見てたけれどね、そりゃあもうポコンと毬でも蹴ったみたく。これは昔水難事故で見た光景だなあと思ったけれども、私達も私達で聖輦船を鎮めるのに必死だったから、直ぐに助けに行けなくて──ああ思いだした、少し待って。おおい、一輪」
「ひく。……んう、何船長」
「何、って。好い加減雲山を戻してやりなよ。聖輦船はちゃんと台座に固定してあるんだから。彼、あれからずっと船の舷を支えているよ」
「…………ああっ、御免、雲山。もう支えてなくて良いよ」

 どうも皆の中に雲山が居ないと思ったら、彼は大きな体を一杯に広げて聖輦船を左右から挟むように支え持っていた。精一杯に拡散しているものか、少しばかり色が薄まっていてよく見えない。
 雲山は一輪を横目で見ると、やれやれといった調子で息を吐き、ゆっくりと体を縮めて中空に休んだ。

「もしかして雲山は、法界で私が放り出されたあたりからずっと聖輦船を支え持っていたのかい」
「ああうん。私が言って聞かせても、黙って首を横に振って全く離れようとしないのだもの、あの頑固親父。ずっと一輪の様子を見て困ったような顔しちゃってさ。けれどそれもこれも貴方がいけないんだからね」
「えっ……な、何故だい」
「何故。ハ、だから莫迦じゃないかと言うの」

 また莫迦呼ばわりされた。船長は心底呆れたような顔をして私に顔を向ける。三白眼の睨みが何とも憎たらしい。仕方無いじゃないか、解らないものは解らないのだから。

「貴方が船から放り出されてからこっち、ずっと一輪は貴方の名前を叫び通しだったの。思わぬ事で貴方を見失ったものだから、その時貴方の一番傍に付いていた彼女、もう見ていて痛々しい位に自分を責めちゃて。いくら魔界を探しても貴方全然見付からないものだからさ、死んで詫びるの何だのと懐刀引き抜いたりして、そりゃ大変だったんだから」
「ええっ。それは、何とも……驚いたなあ」
「愛されているのですよ、ナズーリンは」

 それまで黙っていたご主人様が私に笑顔を向けてそう呟いた。愛されている、か。これまで私は、一輪のつんつんした態度しか見た事が無かった。彼女は見た目からして尼僧のそれであり、心底聖に帰依しているのだとばかり思っていた。だから私に対してそんな熱い感情を向ける事があるなんて、ちっとも思っていなかったのだ。そう思うと何だか私は彼女に対し心の底から詫びたくなった。

「一輪だけではありませんよ。村紗も、私も、聖も一生懸命探しました。雲山も船の上から探してくれました。あちらの神様にもご足労頂きました。まさか一足先に顕界へ戻っていたなんて思いませんでしたから、どうしても見付からず一日が過ぎてしまった頃には、魔界の魔物に食べられてしまったのではないか、と皆悲嘆に暮れていました。それでも一輪は、ずっと諦めず探していたのです。それはきっと、自身の過失に対する後悔の念だけではなかった筈です」
「そうよ。貴方いつも一歩引いて私達に接している感じがあるけど、私に言わせれば帰命頂礼(きめいちょうらい)した相弟子なんだから。後でしっかりと謝っておきなさい」
「そうか……うん、落ち着いた頃に謝っておくよ。ご主人様と船長にも、心配を掛けさせてしまって済まない事をした。この通り、申し訳ない」

 深く辞儀をして謝罪する。船長の言う通り、私は彼女達から一歩引いて接している。私に課せられた仕事もあるのだから、それは仕方の無い事だ。けれど礼を欠く事はしたくない。彼女達が私を心配してくれた気持ちが本物ならば、私も彼女達に済まない事をしたという気持ちは本当である。それは仕事とは関係無い。

「ともあれ、ナズーリンが無事で本当に良かったです。ねえ村紗」
「ん、まあ。私の船でこれ以上被害者出したら聖に申し訳ないし。まああれだよ、おかえり。貴方も疲れたろうから今日はぐっすり休みな。もう船から落ちる事なんて無いからさ」

 そうして船長はようやく笑顔を見せ、私の背中をばんばんと叩いた。
 少しばかり、胸に沁みるような感覚がした。




◇◇◇◇◇◇




 怨憎会苦(おんぞうえく)。怨み憎む者に会う苦。
 怨嗟の念を持つ者の苦。怨嗟に貫かれるべき者の苦。果たして相対した際の、双方の苦。その鎖が過去よりの因縁である事に、因果である事に苦しむべき苦なのだろう。




 もう随分と遅い刻限になってしまった。聖輦船に戻ってから、皆は早々に好きな所へ引き上げてしまった。

 ご主人様は本堂にて只管打坐(しかんたざ)の行をすると言う。彼女は聖が発掘した妖怪であり毘沙門天様の弟子で、本尊のような立場もあるから少しばかり真面目なのだ。ただ至ってどじなだけである。多分今頃はぷうすか鼻提灯でも膨らませている頃だろう。
 船長は自室に戻って写経をするそうだ。彼女はあれで成仏というものをしっかり見据えているから、発言の通りだろう。ただ意外と少女というか、子供である。まだ寺のあった時分、彼女はよく原稿用紙に鉛筆書きの丸文字で写経して聖に提出し、花丸を貰って喜んでいた。
 雲山は、やっぱりよく解らない。今頃は多分聖輦船上空で雲仲間とたゆたっているに違いない。まあ楽しいのなら良いんじゃなかろうか。

 残った聖は現人神と、講堂の片隅に設けられた囲炉裏のある畳敷で語らっている。現人神はしきりにアカデミックがどうのこうのとよく解らない事を言う。飛倉の破片の話題など「ゆうほう」だか「ゆうま」だか難しい単語を並べていたが、どうも要領を得ない。対してこの聖輦船の話題への食い付きは判り易い程であった。この船は元々寺院で、いずれ場所を決めて元の形に戻すつもりだという聖の話を受け、

「変型合体するんですか。凄いです。子供の頃に見たアニメそっくりです。少女達の永遠の憧れです。ここ幻想郷なら、いずれ二足歩行巨大ロボも夢じゃありません。今後もアカデミックな視点で探してみようと思います」

 などと言う。またアカデミックである。学術研鑽は大変宜しいが、少女達の永遠の憧れなのかは甚だ疑問だ。あと聖輦船は、変型はするが合体はしない。聖が困ったように微笑むのも無理からぬ事だろう。


 それから私はというと。まあ解る通り、変わった客人の話を聞いて呆としているわけである。私の膝には一輪が頭を乗せて、すやすやと寝息を立てている。少し足が痺れる。
 本当は私もさっさと自室に戻り、明日からの寺院復興に向けてご主人様の助力となるべく、今日はもう体を休める予定であった。一輪は聖に肩を抱かれたまま泣き止まないので、明日しっかり謝ろうと思って、そう聖に挨拶して。
 しかしそうして立ち去る間際、尻尾に鈍い痛みが走った。私の行く先に関係なく、尻尾ががっちりと固定されて突っ張ったのである。根本から千切れるかと思った。じいんとする痛みをこらえ、取り敢えず尻尾を左右に振ってみると、どうも先っぽの方が一点に固定されている。振り返ってみると、一輪がぐずぐず泣いたまま、私の尻尾の先をぎゅうと掴んでいた。

「何をしているんだい君」

 そう問い掛けるも、一輪はぐずぐず言って首を振る。子供か君は。私は呆れ顔で一輪を見る。ところへ、聖が助け船を寄こした。

「あらあら。ナズーリン、悪いのだけれどもう少しこの子に付き合ってあげて下さい」

 無論、聖が助け船を寄こしたのは一輪に、である。まあ私が悪かったのだから仕方無い。という訳で、先に着替えを済ませてから講堂へ戻り、聖に茶と茶菓子を出して貰い、四人で団欒を極め込んだのである。
 もっとも一輪は黙って私の隣に座し、尻尾を掴んだままぐずぐずと泣き続けるばかりであった。囲炉裏を挟んだ向かいでは、しばらくの間聖と現人神がにこにこと微笑んでいた。まるで針の筵(むしろ)である。そのうちに泣き疲れた一輪が私の肩にもたれてきたので、こうして膝枕をしてやったのだ。つまり針の筵に重石を乗せられた態である。

 ……これもまた、苦行である。私は耐えよう。




「神様、本日は大変面白いお話を伺わせて頂き、感謝の念に絶えません。とても為になりました。……さて、もうお疲れでしょうからお開きにしましょう」

 そう言うと聖はよく眠る一輪を抱き上げた。聖は力持ちである。ようやく苦行から解放された私は、額を拭い一息吐いた。額は厭な汗でべっとりとしていた。
 現人神を客間へ案内しようと、また私達は連れ立って廊下へ出た。と、そこへ呆とした顔のご主人様が通り掛かった。薄鼠色の作務衣姿で、先程まで打坐していたらしい。

「アッ、おはようござい、じゃなかった。お休みですか聖」
「ええ、この通り一輪もぐっすり眠ってしまったものですから。星、申し訳無いのですが客人を客間へご案内頂けますか。ナズーリンは一輪を庫裏(くり)へ連れて行くのを手伝って下さい」

 ご主人様は、まあ想像の通りであった。しかし私のために色々と迷惑を被ったために疲れているのだ。悪い事をしてしまったと思う。一輪にしても同じ事だ。泣き疲れて寝てしまったのは、詰まるところ私が原因なのに違いなかった。ならば聖と共に彼女を彼女の自室まで運んでやるのは、責務である。
 けれど願わくば、明日にはいつもの一輪に戻っていて欲しい。いつものようにつんつんとして、真面目に仏の道を歩み……たまに笑い合う仲に戻りたい。彼女の取り乱し涙する姿は、もう見たくない。

「ああ承知した。ご主人様、申し訳無いがそちらは宜しく頼むよ」

 見ると何やらご主人様と現人神が意気投合して、大振りに握手などをしている。この二人に一体何があったんだろうと想像したが、まあ随分と弾けた神様であるから考えるだけ無駄だろうと思って止した。
 ふと現人神はこちらを向き、はきはきした声で挨拶をした。

「それじゃ今日は寅さんのお部屋でお泊まりさせて貰いますね。お休みなさい、白蓮さん、鼠さん」

 何だかさらりと妙な事を言った気がしたが、考えるだけ無駄である。それよりも。

「鼠は止してくれ、私にはナズーリンという名前がある。……そういえばまだ君の名前を聞いていなかった気がするね」
「アッ。そういえば貴方には自己紹介まだでしたね。私は東風谷早苗と言います。妖怪の山の守矢神社に住んでいる、風祝の巫女ですよ」


 屈託の無い笑顔。本人にそのつもりは無かろう。表情だけを見れば全く、似ても似付かない。
 けれどその面影が──確かに、似ている。

 ──祟りの語源を知っているかい、鼠。


「──な、ナズーリン、どうしました大丈夫ですか」

 ご主人様の上から差し伸べられる手を見て、私は腰を落とした事に気付いた。けれど、す、と屈むご主人様の姿を見て、彼女の背丈が幼子程に縮むのを見て──私はその手を強く払い除け、必死に後ずさって壁伝いに腰を上げた。
 動悸がする。息が苦しい。ここに「それ」が在る。「それ」が私を祟り、ここまで追って来ている。

「……ど、どうしたんですか、ナズーリンさん」
「ひっ」

 一歩踏み寄る、洩矢神の影。

 ──何処へ行く鼠。言葉も失くして、情け無い格好をして。それでも武神の眷属か。


「ご心配をお掛けしました、神様。ナズーリンは少々疲れている様子。後は私が彼女を休ませますから、どうかご安心下さい。ですからどうぞ、神様も今夜はごゆっくりお寛ぎ下さい。私共はここで失礼させて頂きますね」

 洩矢神の影と私との間を、聖が体で遮る。大きく頼もしい背中が、私に少しの安堵を与える。洩矢神の影──早苗は、当惑した声で何事か謝罪を述べ、ご主人様と連れ立って廊下を奥へ行く。その姿が見えなくなり、私はようやく息の止まっていた事に気付いた。


 恐ろしかった。ただもう恐ろしかった。


 聖は私をまず見て、それから廊下を歩き出した。

「ナズーリン、いらっしゃい。一輪を部屋へ連れて行くのを手伝って下さい」

 優しく響く聖の声に、私の金縛りは解けた。二、三度息を継ぎ、少し鼓動の静まったところで、私は黙って聖に付き従うことにした。
 数歩先で、聖は私を待ってくれていた。けれど私に振り返るでもなく、私の付いて来る気配を覚ると、また廊下を先に歩き出した。




◇◇◇◇◇◇




 諏訪子様、諏訪子様。届いてますでしょうか。私今日はもう帰るのが面倒──じゃなかった、遅くなってしまいましたので、出先で泊まる事にしますね。三日も神社を空ける事になって済みません。帰ったらお土産あげますね。
 なんて感じで諏訪子様に思念波を送って宿泊の許可を頂きました。返答はありません。まあでも、こう、びびびと来たのできっと大丈夫でしょう。

 アカデミックな目的で空飛ぶ船を追いかけて、よく解らないうちに白蓮さんを助けて感謝された私は、まだ空飛ぶ船──聖輦船に居ます。
 白蓮さんを助けた後、今度は鼠さんが迷子になるというアクシデントが起きて、聖輦船の皆さんと一緒に探す羽目になりました。何とか見付かりはしたものの、一夜と一日飛び回ったおかげでもうへとへとです。そうして白蓮さんのご好意で、一泊する事になったわけなのでした。

「アッ、おはようござい、じゃなかった。お休みですか聖」
「ええ、この通り一輪もぐっすり眠ってしまったものですから。星、申し訳無いのですが客人を客間へご案内頂けますか。ナズーリンは一輪を庫裏(くり)へ連れて行くのを手伝って下さい」
「解りました。それじゃご案内致しますね」
「はい、お願いします寅さ──」

 寅さんの頭の上に、二つの耳があったのがいけないのだと思います。そうして見ると作務衣の腰から背中にかけて、もそもそと動くものもあります。
 これはアカデミックな探究心です。私はそれを調査しなきゃいけない。決して邪な心などありません。第一、学問は純粋でなければいけません。それに私は巫女であり神なのですから、邪な心など欠片も無く──取り敢えず作務衣越しに動く何かを掴んでみました。

「うひっ……な、何ですか突然」
「……尻尾ですね。そして耳ですね」
「アッ、失礼しました……えへへ、どうも寝惚けると、うまく耳と尻尾を隠し切れなくて」

 これはアカデミックな探究心です。

「寅さんっ」
「うへ、ははい」

 取り敢えず、手もぎゅうと握ってみました。こちらは普通の人の手です。肉球はありません。残念……ガクジュツ的見地からの残念です。
 まあ、良いでしょう。私は寅さんと握手したまま、ぶんぶんと大振りに振りました。

「今夜は一緒に寝ましょう」
「は……はあ」

 そんな感じで同意頂き、私はガクジュツケンサンの徒となりていざ寅さんの私室に向かわんと、ぷうすか寝た頃の寅さんをまじまじと見つめなければなるまいと、白蓮さんと鼠さんへの挨拶もそこそこに、足早にこの場を辞そうとしたのです。
 けれど。


「……ど、どうしたんですか、ナズーリンさん」
「ひっ」

 何故か、鼠さん──ナズーリンさん──言い難いですね。良いや、面倒なのでナズさんにしましょう。ナズさんに、どうも尋常でない嫌われ方をされたようです。何故だかよく解りません。ただ何だか……彼女は私に、私の影に酷く怯えているようでした。


 そうして私は、寅さんのお部屋に御厄介になりました。
 最初は強引に押し掛ける形でしたが、ナズさんに嫌われたと知ると、何だかここに居てはいけない気がして遠慮したのです。けれど今度は寅さんの方から私を招いてくれました。……そんなに、私は悲しい顔をしていたのでしょうか。寅さんは優しい顔をして、床に二人分の布団を敷いてくれました。

 寅さんの私室はとても質素です。八畳間に押入と障子窓。壁は荒い土塀で、柱との間に隙間こそ無いものの寒々としています。その場にある生活用品といえば、窓の下に小さな文机と、何冊かの漢字で書かれた書物があるだけです。衣服などは行李に入れ、押入にしまうのだそうです。私も寅さんの普段使う寝間着を借りました。薄鼠色に白帯の浴衣です。
 こんな部屋に住んで苦労しませんかと聞くと、物欲は仏道の妨げになる、と言います。寅さんはまだ教えを請う身で、ここに住む皆さんも一様に同じ生活をしているのだそうです。

 ううん、私には解り兼ねますね。欲というのはそんなに悪いものでしょうか。そりゃ、他人様に迷惑を掛けるようなのは駄目でしょう。人道として駄目です。けれど誰の迷惑にもならない私生活で、欲を欠くことの何が良いのでしょう。私ならこんな部屋に居たら、寂しい。
 そうして私は借りた枕を胸にぎゅうと抱きました。蕎麦殻のかさかさする音が、一層寂しさを促すようでした。寅さんは笑って、貴方の考えは正しい、と言いました。

「けれどまた、そうした意味で私達の考えも正しい。詰まるところ私も貴方も、己がどう在り、どう成るべきか。そこにさえ迷わなければ、間違いなどという概念は無いのです」

 彼女はそう言い、布団に正座をして私に向かいました。私はその姿に少しだけ、神奈子様の姿を感じました。そしてもう少し、寅さんと話をしたくなりました。

「それにしても昨日といい今日といい、貴方には本当に助けられました。このような見苦しい場で申し訳ありませんが、感謝致します」
「いえそんな。私は私の感じるまま行動してただけです。畏まる事なんて無いですよう」
「そうですか。不思議な神様ですね。それにしても、貴方はどうしてナズーリンが顕界に戻っている事に気付いたのでしょう。彼女は確かに魔界で行方知れずになったと、村紗達から聞いたのですが」
「え、いやまあその。……奇跡です」
「はあ。奇跡ですか」
「奇跡です」


 実は奇跡というか。ただ少し、探索に飽きて……いやいや、別にナズさんがどうでも良かった訳じゃありません。私だって寅さん達の必死な捜索に心打たれるものがありました。けれど魔界での捜索は難航しました。見付かった物といえば、彼女の持っていたダウジング棒と、尻尾に下げていた籠だけ。それから幾ら探しても何も見付からないのですから、少しばかり気もそぞろになるのは仕方無い事です。

 でもそれが、結果として彼女の発見につながりました。気がそぞろになったおかげで、私はふと幻想郷に隙間を操る妖怪が居る事を思い出したのです。
 まだ私は出会った事が無いのですが、神奈子様の話では、気紛れで胡散臭くて、神隠しと称する非道な人さらいを平然とやってのける奴だと仰っていました。あの神奈子様がご自身の事を棚に上げてそんな風に仰るのですから、きっと神奈子様以上の手合いなのに違いありません。ですからもしや、彼女もその妖怪にさらわれたんじゃないか。もしや既に幻想郷に戻っているんじゃないか。私はそう思い、聖輦船の航跡をたどって幻想郷に戻りました。

 果たして隙間妖怪は居ませんでした。もっとも妖怪ですから、私に恐れをなして逃げたのかも知れません。けれどそれじゃ、結局ナズさんの行方も解らない。取り敢えずこの顕界と魔界の隙間から落ちていないか探していると、目の前に現れたのです──正体不明の光球が。
 それを見て私はすぐに、びびびと来ました。直感が──じゃなかった、ガクジュツ的見解からしてこれはエイリアンの仕業だな、と。きっとこの光球が彼女をさらったに違いない。そうしてキャトルミューティレーションするのに違いない。私はその光球を追い回しました。たまに光球が、ぬえぬえ言うのを聞きました。エイリアンの言葉は初めてです。中々興味深い言語を使います。

 ともあれそうして追い回すうちに、妖怪の山の中腹あたりで見失って──ナズさんを見付けた、というのが真相です。それは奇跡的な邂逅でもありましたし、私のアカデミックな調査の賜物でもありました。

 けれどまだそれを公には出来ません。幻想郷では日常茶飯事かも知れませんが、ひょっとしてそうじゃなかったら、エイリアンが襲来したなんて言えば大騒動になり兼ねませんし。諏訪子様の指揮の下、もっと調査に調査を重ねてから、然るべき時期然るべき場所で公表し、私達がしっかりと人類を導かなければいけません。
 ですから私はまだ、寅さんにも事の真相は伝えられないで居るのです。心苦しいです。けれど信じていて下さい。ナズさんの尊い犠牲は決して無駄にしません。人類とエイリアンの大戦争は、きっと守矢神社率いる人類が大勝利を収めてみせます──


「凄いですね奇跡。それはそれとして、何故ナズーリンは妖怪の山の中腹なんかに居たのでしょう。それに随分と怯えていたようでした」
「それはエイリアンがキャトル……じゃなかった。ええと、まあ奇跡ですから。よく解らない事だって起こるんですきっと」

 寅さんは中々鋭い。そうして誘導尋問にも長けている。さすが毘沙門様の代理、これは気を引き締めなければいけませんね。

「ん、よく解らない事──そう、もう一つ。ナズーリンは何故、貴方の名を伺ってからあんなに怯えたのでしょう。彼女は毘沙門天様の正統な眷属ですから、それなりに力はあります。胆力だって抜きん出ている。しかし彼女の貴方を見る目は、そう、強いて言うなら──地獄を目の当たりにしたような、そんな眼差しでした」

 そう。それが私も気になりました。私に、私の影に酷く怯えたような目。私はそれが何故か遠い昔、私の知るはずの無いはるか古代に見た事があるような、そんな気がしました。喜怒哀楽、様々な感情を秘めて、けれど見えるのはただ純粋な畏れと、怖れと、恐れ。それに私は大きな驚きと、戸惑いと……僅かばかりの嗜虐と、充足を覚えました。
 それは外の世界に居た頃の、現人神として私を崇めた人々の瞳の色にも似ていたような気がします。けれど彼女のそれは、より深く、より危うく。私は、私を通じて神奈子様に向けられる信仰心ではなく──むしろ諏訪子様に向けられる、得体の知れない畏怖と恭順の念を感じました。

 私は実際のところ、諏訪子様の事をよく知りません。日本の神様というものは随分と寛容ですから、そりゃあ神社に複数神様が坐す事はざらに有ります。ですから諏訪子様もまた神様に違いありません。けれど、諏訪子様がどういった類の神様なのかは知りません。
 ただ、諏訪子様はずうっと坐します。いえ、恐らくは諏訪子様の後ろに在る何か。諏訪子様を諏訪子様足らしめる何かが、神奈子様よりももっと古い何かが在る。「それ」に対する畏怖と恭順の念。私はごくたまに、そうした異様なものを諏訪子様に感じることがあります。そうしてそれこそ、私が諏訪子様を神様に違いないと確信する、証(しるし)なのです。

「貴方は風祝の巫女なのだと仰いました。けれど私は少し、自然信仰派生の宗教に疎い。申し訳ないのですが、貴方の信仰する神様の事を教えては頂けませんか」
「あ、はい。じゃあも少し詳しく言いますと。私は妖怪の山に少し前に移住した、守矢神社の巫女です。で、八坂神奈子様という風神様の巫女をしていて、風祝というのは風を操るというより、風害を鎮めて人々を災厄から護ったり、恵みの風を呼んで幸をもたらすような役職なんです。あと神社には洩矢諏訪子様という神様もいらっしゃいます。御免なさい、こちらの神様は私もよく解らなくって……あ、でも神奈子様と諏訪子様は以前、大喧嘩したって聞いています。諏訪の神戦って呼ばれて」

 そこまで聞いて、寅さんは右手を顎に当てたまま、左手で私を制しました。やはり肉球は付いていません。

「洩矢に、諏訪。洩矢諏訪子という神様は、何らかの神様を束ねていらっしゃる方ですか」
「あ、はい。けれどそれも、どういった神様なのかよく解らなくって。諏訪子様はよくミシャグジ様と言っているのですが、私は諏訪子様自身の事だと思っています」
「んん、半分当たっていますけれど。失礼ながら貴方はもう少し自身の崇拝する神様について学ぶべきです。……尤も、畑違いも甚だしい私が言うべき事ではありませんし、私も詳しくは存じませんが」
「あ、ううん。御免なさい」

 少し恥ずかしくなって、つい謝りました。けれどよく考えれば余計なお世話です。ちょっと文句を言おうと思って顔を上げて、寅さんの顔を見ました。
 至極真面目な顔をして少し雰囲気が怖かったので、抗議するのは止めにしました。

「貴方は丁未(ていび)の乱というのをご存知ですか。蘇我氏が物部氏を滅ぼしたという」
「……ううん、学校で習ったような気がします。合戦の名前は初めて聞くけど。でもそのお家騒動がどうかしたんですか」
「お家騒動などではありません。あれは歴とした宗教戦争です」

 そうして寅さんは、丁未の乱について話をしてくれました。何だか難しい話かしらんと思いましたが、彼女は私が眠くならないよう配慮して、随分とかいつまんで話をしました。

 丁未の乱。仏道を旨とする蘇我氏が、国神を崇める物部氏を討ったという戦争。これから後に本邦で仏様の教えが広まり、神仏習合や本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)の考え方で定着したのだそうです。ここまでが眠たいお話。
 蘇我氏には厩戸王(うまやどのおう)が付いていました。そうして彼は物部氏を討つため、寅年寅日寅の刻に信貴山に程近い地で白膠(ぬるで)の木に四天王の像を彫り、毘沙門様の加護を得て勝利を収めたという逸話があるそうです。またその乱で散り散りに逃げた物部勢のうち、大連(おおむらじ)の物部守屋を篤く信奉する方々が守屋山に集い、そこに物部守屋神社を建てて彼を祀ったのだそうです。

「私はかつて、信貴山に在を為す虎の妖怪でした。自ら称するのもお恥ずかしいのですが、そこそこ力もあり、彼の山の妖怪を統べる程度に信用もありました。聖はそんな私を見出して、毘沙門天様の弟子にしたのです」
「ああっ、やはり虎の妖怪なんですね。名前といい髪の毛の柄と良い。けれど不思議な縁です。厩戸王の逸話にも寅年寅日寅の刻なんて、寅尽くしな所に寅さんが居たんですねえ」
「さあ、逸話は逸話ですので、真実か否かは判じ得ません。けれど私は恐らく、その逸話から生じたのです」

 寅さんはそう言い、私に笑顔を向けます。けれどその笑顔に、私は感情を見出せませんでした。
 ただ、そこに在る。笑顔とは、そうした表情の事を言うんでしたでしょうか。

「妖怪とは妖しきコトであり、モノではありません。心あるモノが感得するコトで、妖怪は生じます。よく妖怪が人を驚かす質なのは、全く原始的な心の在り方に恐怖の念があるからなのです。そうした理由で言えば、逸話が怪異を為す、という事も有るのです」
「うん……んん、よく解りません……だって寅さんここに居るじゃあないですか。白蓮さんだって寅さんを見出したって」
「それはここが幻想郷だからでしょう。ここの結界は、幻と実体の境界ですから。恐らく記憶や記録も例外では無いのでしょう。……ん、まあそこは今関係ありません。ただそうした逸話があり、私がここに在り、毘沙門天様と関わりがある。そうした話です。けれど勘違いして頂きたくないのは、私はあくまで毘沙門天様の弟子であり、彼の眷属はナズーリンの方なのです」

 寅さんはまた真顔に戻りました。私には、彼女のその真顔の方にこそ人間味……いえ、妖怪味があるように見えました。

「もう一つの伝承もそうして考えれば、物部氏の大連は守屋山に関わりを持ちました。彼の山は諏訪の神体山でしょう」
「ええと、健御名方神(たけみなかたのかみ)と呼ばれる神様です」

 ふふと静かに笑い、寅さんは私を見据えます。それが失笑に聞こえて、思わず私はそっぽを向きました。

「諏訪の地には、元々土着神が居ます。お諏訪様と言うと昨今では今仰られた神様を指すようですが、本来は諏訪のソソウ神と習合したミシャグジ神のようです。それを束ねるのが洩矢神──貴方の知る、洩矢諏訪子様です」


 はっとしました。寅さん──寅丸星が、私に何を言いたいのか。丁未の乱、信貴山の逸話、守屋山の物部守屋神社、お諏訪様──
 私にまず芽生えたのは、怒り。この不埒な妖怪に対する、諏訪子様を貶められたという、決して許されざる怒りの心。

「……あ、貴方はっ……諏訪子様が、物部氏の積年の恨みを、毘沙門天の眷属に対し晴らして……そうして、そうしてあの鼠が怯えていたと……諏訪子様を、諏訪子様の事を悪く言うんですかっ」
「落ち着きなさい」

 至って静かに、寅丸星は振舞う。私の胸の内では、ふつふつと、怒りが滾っている。この妖怪、どうしてやろう。このまま、ここで──

「落ち着きなさい。私は真相など語ってはいません。尤も、今この状況では真相を得られる筈もありません。それを見たのはナズーリンだけなのですから。真相を知らない私達は、落ち着いて状況を観察しなければならない。風祝の貴方にも、是非その流れを読んで頂きたいのです。その貴方が、そのように取り乱しては話になりません。風祝は風の流れを読み、風を鎮めて風を祝(ほ)ぐもの。風祝は穏やかでなくては決して務まらない」

 じっと、寅丸星は私の目を見て語る。明瞭な声で、芯のある声で、私に言葉を紡ぐ。
 そうして私の怒りが、徐々に鎮静していく。その妖怪の言葉に、今の私の怒りを鎮めるような内容は無い。けれど──それが、言霊というもの、なのでしょうか。
 いつしか私の心は、風の凪ぐのを感じました。一陣の清涼な風が私を取り巻くのを感じて、また静かに彼女に目を向けられるようになりました。

「……御免なさい、取り乱してしまいました。恥ずかしいです」
「いいえ、私も良くありませんでした。貴方の信仰する神様を疑うよう仕向けた心は、確かにあります。けれど私は本当の事が知りたいのです。ナズーリンは、私達の大切な家族ですから」

 そうして寅さんはまた、私に笑顔を向けました。今度の笑顔は、感情一杯の眩しいものでした。
 神奈子様のような、諏訪子様のような、優しい優しい笑顔でした。




◇◇◇◇◇◇




 求不得苦(ぐふとくく)。求む処の叶わぬ苦。
 追えど付かず。辿れど着けず。長く遠い道を、いつまで私は歩むのだろう。道に終わりはあるのか。終わり無き道に意味はあるのか。




 一輪を寝かし付けてから、私は彼女の自室の前で聖と別れることにした。けれど聖はそれを笑顔で引き止めた。

「ナズーリン、今夜は一緒に休みませんか」

 先刻の一件のせいか、どうも気乗りがしない。それにやはり、私は聖達から一歩引くべきだと思う。私と彼女達は違うのだから。決して相容れないものが、私と彼女達との間にはあるのだから。
 といってもそれは別に、彼女達が不真面目だとかそういう訳ではない。むしろ彼女達はいつだって、莫迦が付く程真面目な質だ。それはこれまで共に生活をしてきてよく解っている。時に間違った行ないもするが、彼女達は確かに毘沙門天様を本尊とし、仏道をひたむきに歩む清浄な信徒なのだ。
 勿論私も目指す先は同じである。ただ、私の進むべき道は彼女達と同方向にありながら平行線上の……決して交わる事の無い、同じ道なのである。

 私はご主人様の目付役であり、毘沙門天様に帰依する直属の眷属である。ここの皆は、聖に帰依し毘沙門天様を信仰する仏徒である。

「え……いや止した方が良い、迷惑を掛けてしまうよ。私は歯ぎしりが酷いんだ。鼠だから、多分」
「構いませんよ。思いっきり歯ぎしりして下さい。私は身体能力を下げる事も出来るので、耳を遠くすればぐっすり眠れます」
「いやそうじゃなくて」
「久し振りに少しお話がしたいのです。勿論お布団も用意します。少し奮発して客間用のお布団をお出ししましょう。ふかふかの、もふもふです」

 心が揺れる。いや布団の事ではなくて。布団の事もそうだけれど。

 確かに、聖と会うのは久方振りなのだ。それに先刻私が見付かるまでに、随分と迷惑も掛けてしまった。恐らく碌に皆との再会を喜ぶ事も出来なかったろう。私達は良い、聖を救い出す前に十分再会を喜んだのだから。しかしその間も聖はずっと法界に囚われていたのだ。
 明日にはめいめい勝手に聖との再会を喜ぶかも知れないし、下手すると船長あたりが宴会を目論んでいるかも知れない。けれど私は一歩引くべき立場にある。ご主人様の目付役としての、毘沙門天様の眷属としての立場がある。
 そうしてそれは聖も同じである。聖は聖の、帰依される側としての立場がある。

 ……この機を逃せば、聖と個人的に話が出来るのは当分先になるだろう。時が経てば心も移り変わる。聖に心から謝罪する事は出来なくなるかも知れない。それは少し、厭だ。
 体に少しの気怠さはあるが、色々あってよく寝てもいたので私はそれ程疲れていなかった。仮に夜更かしをしたとして、それ程影響も無かろう。だからそれよりも聖の体力である。

「けれど聖は疲れているだろう。聖も私の事を探してくれたと聞いたよ」
「私はいつでも元気一杯です。魔力が……いえ、鍛え方が違います」

 うん、そうだったね。身体能力に至っては心配するだけ無駄だったね。私が莫迦だったよ。本当にこの寺の連中ときたら……

「私と一緒は、お厭でしょうか」

 ……そんな眼差しで見られたら、私が悪者じゃあないか。

「いや、済まなかった。ご好意に甘えることにするよ。私も少しばかり、聖と話をしておきたい」

 少し照れる心地を誤魔化して、私はそう聖に伝えた。聖は満面の笑顔で私に返した。薄暗い聖輦船の廊下にあって、その笑顔は春日のごとく穏やかに輝いていた。




 船長の部屋以外、各人に割り当てられた部屋の作りは大体同じである。装飾品は各々違えどいずれ質素なもので、これといった個性あるものは置いていない。
 あえて言うならば、服装くらいのものだろうか。決められた法衣は法事などでのみ着用を義務付けられ、後は各々が行に集中出来ればどんな格好でも構わないというのが昔からの聖の方針である。御陰で私も窮屈な思いをせず済んでいるが、考えてみれば随分と自由である。妖怪も相手にするとなると、それ位が丁度良いのだろうか。

 ちなみに船長の部屋だけは他と若干異なる。豪華か質素かと問われると、まあ私なら絶対選びたくないから質素、なのだろうか。彼女は庫裏(くり)に寝泊まりをせず、常に操舵室に当たる六畳の板張りの、隙間風の吹く部屋で寝泊まりしている。その真中に据えられた舵輪の装飾は、法輪に似ているからかと思っていたがどうも違うらしい。彼女曰く、少女趣味の究極形なのだそうだ。三千大千世界と相容れない少女趣味というのもあったものである。

「さて少しお話をしましょう。まずはお帰りなさい、ナズーリン。貴方が無事で何よりでした」
「あ、うん。……迷惑を掛けてしまって申し訳ない。聖の救出に向かった筈が、まさか自分が遭難する事になるとは思わなかった。改めて礼を言うよ、有難う。そして私からもだ。お帰りなさい、聖」

 互い、布団の上に正座して頭を下げ合う。聖も私も、今はもう薄鼠色の浴衣を寝間着にして、傍目には対等な見栄えだ。元々聖は、人と妖怪もさる事ながら己も含めて分け隔てるということをしない。それが彼女の流儀であり、信仰における根本義なのだろう。立場さえ今と異なれば、私とてご主人様達と同じく彼女に帰依していたかも知れない。

「私こそ、ご迷惑をお掛けしました。久々の娑婆も良いものですね、随分と空気が澄んでいて心が軽い。魔界はあの通りでしたから。常に気を引き締めていなければ耐えられるものではありません」
「まあそうだろうね。けれど法界は随分と清浄だったのじゃなかったかい。むしろ娑婆よりも居心地は良かったろう」
「いいえ、地続きですからね。封じられた当初は他の魔界と同じです。あの辺りの住民の方々に手伝って頂いて、綺麗に掃除をしたのです。結界の内側なんかは特に念入りに拭き掃除をして、ぴかぴかに」
「呑気な話だねどうも。定めし魔界の住人とも仲良くなったろう。彼等は娑婆へ来たいとは言わなかったのかい」
「ええ、魔界には魔界の営みがあるのでしょう。その代わり私をよく助けて下さった方々は、魔界で教えを広めて下さるそうです。皆良い方々でしたよ。私も私の教えに、いま少し自信を持つことが出来ました」

 仏道において法とは絶対なものである。それは万物の真理であり、存在を意味する。そうした理由から、聖の封印は明らかに最悪の類に入るべき過ぎた罰であった。
 聖は確かに魔道に堕ちた破戒僧であった。理由は知らないし、毘沙門天様からも聞いていない。けれどいずれ過去の事である。私の知る聖は、三宝を敬い仏道を重んじる尼僧だ。過去の因縁を清算して余り有る、徳高き聖者だ。
 ただ、聖は衆生の先を行き過ぎていた。思うに彼女は知らぬ間に仏道の真理を感得し、その第一歩として無意識に妖怪をも平等で無差別である事を説いたのではなかろうか。それはまだ衆生の理解し得ない斬新な教えである。
 果たして聖は衆愚に責められて法界へ封じられた。しかし魔界に堕とすのはやり過ぎだ。それは「魔界に堕ちた法界」という見立てである。詰まるところ聖は、聖の信じる全てを丸ごと「魔界に堕ちた」と宣言されたも同然であった。聖は法界での数百年を、耐え難き苦悩に苛まれ続けたに違い無いのだ。

 しかし聖は、衆生や私達が思う以上にしたたかであった。「魔界に堕ちた法界」においてさえ、聖は仏道の真理の立場を貫き通したのだ。それが聖と時を同じゅうした法界の住人達の姿勢であり、清浄な空間であり、魔界での布教という事実である。
 聖は、強い。元は人の身でありながら、肉体ばかりでなく精神においてさえ、一切のものを遥かに凌駕している。それだのにこうしてまたご主人様達の許へと帰って来た。それはつまり、なお仏道を歩み続ける覚悟が、なお人妖の平等に尽力する覚悟があるということだ。

 私は少し、聖のことを怖くも感じる。

「私の事はそれくらいで。封じられていたとはいえ、生活に支障はありませんでしたから。それよりナズーリン、貴方は本当に大丈夫なのですか」
「ん……な、何がだい」
「聖輦船からはぐれて仕舞った後、貴方に何が起きたのですか」

 聖はそうして、私の目をじっと見つめる。聖に帰依しているわけではない私でも、そうした聖の眼差しに耐えられる程出来た妖怪では無い。いや、むしろ。
 私は正直に、聖に事の次第を説明した。特に祟神が発した言葉は恐怖心と共に私に植え付けられていたので、一言一句余さず伝えた。私に起きた事、聖が私を心配した事。それは正に、彼の祟神の言動に集約されている。

 この時私の心には、明らかに聖を頼りたいと願う部分が存在した。それはともすると、帰依の心であったかも知れない。




「……というわけ。記憶の端々は私にも曖昧だけれど、私は因縁というものに祟られてしまった。情け無い事だ。先刻の客人に対する恐怖心も、多分それなんだと思う」
「そう、ですか」

 しばしの沈黙。私は、私のそれまでの経緯を反芻している。聖の考えていることもまた同じであろう。
 何故かは解らないが私は妖怪の山の湖で溺れて、山に住まう神に助けられた。私を助けた神は実に気さくで大らかで、まるで神も民も友人であるように振舞った。体を休ませて貰い、食事まで馳走になった。神は私の失礼に過ぎる振舞いに対し、腹を立てる事なく私を見ていた。

 私を見ていた。

 そのうちにもう一柱の神が来た。それは幼子みたいな神で、思考や振舞いさえ我侭な幼子のように見えた。けれど彼女もまた、神だった。その神は私が毘沙門天様の眷属である事を知ると、かつての宗教戦争のことを今に持ち出して私を祟った。私が逃げ惑うなか、その神はいつまでも私を見ていた。

 私を見ていた。

「ナズーリン。貴方はその出来事を、どう感じていますか」
「どう、って……恐怖だった、かな。ただ恐ろしかった。宗教戦争の件は、私も知識はあったよ。けれど今になって私が祟られるというのは、何というか……仕方無い事もあるのか知れないが、理不尽な恐ろしさを感じた」

 そう言うと聖は残念そうな顔をして、ふるふると首を横に振った。
 私は何か間違った事を言っただろうか。

「……確かに、宗教戦争というものは愚かしく恐ろしい所業です。宗教は世の中に多くありますが、それ自体は形而上的なものを表現するために便があるのであって、それ自体を崇拝しては意味がありません。
宗教と信仰は異なります。信仰は各々が持つべきものです。万物には万物の信仰がある、それは互いに認め得ざる場合もままあります。けれどそれを否定しては後がありません。それを宗教で括ってしまい、否定し合うこと。それがすなわち宗教戦争なのだと私は思います」
「成程。この場合は神様と仏様との間での戦争ということだね」
「いいえ、取り違えてはいけません。戦争はあくまで、衆生の迷いが生む悲劇です。それは勿論、武神と崇められる神仏も御座しましょう。毘沙門天様もそうですね。ですが神仏は神仏であり、それが何かをもたらす訳ではありません。一切は神仏を崇拝する衆生の信仰がもたらすのです。それは何も戦争に限った事ではありません」

 確かに戦争とは、人々が血で血を洗う愚かな所業である。それを引き起こす要因は多々あれど、幾らそれが聖戦を冠した誇り高きものであれど。どれ程国を憂い民を思う心があれど、戦争など結局は一方が他方を蹂躙するだけの悲劇でしかない。そこに神仏は在るかと言えば……成程、人の手に成る事実ばかりである。
 武器を手にした者が幾ら仏の加護を唱えようと、どれだけ神の御名を謳おうと。人を討ち取るのは結局、人なのである。

 けれど、それならば尚更。

「うん、言いたい事は解った。けれどそれなら、私にはやはり理不尽だ。彼の宗教戦争に、私は直接加担などしていないよ。それを今に持ち出して私に問うのは理不尽とは言わないのかい
「いいえ。私が思うに、衆生と道を同じゅうし、信仰に篤い貴方だからこそ、彼の神様は御自ら問うて下さったのでしょう。貴方はその事をよく心しなければならない。肝要なのは、宗教戦争の事実ではない。貴方の持つ信仰心です」

 益々解らない。聖の言うように、私の持つ信仰心が肝要なのであれば、それこそ余計なお世話というものではないのか。毘沙門天様直々に仰られるのであれば、私とて悪い部分は正す。けれど場違いの神様が、私にどうこう言う筋合いは無いのではないか。
 私は少し苛々してきた。聖の話は間怠っこしい。それが宗教戦争の話だったり、信仰の話だったりと、一貫性が無いように聞こえる。聖は何が言いたいのだろう。これでも私はそこそこ仏道に通じているものと自負しているが、聖の発言はそこにあるような気さえしない。

「よく解らない。はっきりとした答えをくれないか」
「答えは常に己が内にある事を知りなさい」

 きっと顔を上げる聖。その眼差しは鋭く、深い。射竦められるような心地で、私は二の句が継げなくなる。
 じりじりと、空気を歪めて交わる視線。私を責めているのか。私を憐んでいるのか。聖は、何も語らない。ただその双眸で、私に語り掛ける。

 ──私には、それがどうしても聞こえて来ないのだ。私の大きな二つの耳に、何も伝わって来ないのだ。

 ふ、と聖の視線が柔らぐ。表情は固いまま。それは蔑みではなく、私の事を考えてくれている、そうした表情である。

「神様方は、彼の宗教戦争を通して貴方を諫めて下さったのです。私にはそう思えてなりません。ナズーリン、後は貴方がよくそれを心する事です。……さて、もうお休みしましょう。ナズーリン、話してくれて有難う御座います。貴方は良い子です」

 聖は私の頭を二、三度撫でた。先程までの表情とはまるで違う、いつものふやけたような笑顔で。
 それから私と聖は、布団を隣り合わせにして就寝した。布団は確かに、ふかふかのもふもふであった。ただ、私ばかりが固まっていた。




 私はまた、私のそれまでの経緯を反芻していた。そして聖から言われた事を、色々な角度から眺めた。

 聖は彼の神々が、私を諫めたのだという。それは何故だろう。私は彼女達に対し、諫められるような失礼──そういえば確かに随分したような気もする。大体今でさえ彼女達、だなんて考えている。けれどそれは彼女達が許した事では無かったろうか。それに神奈子は言った、神とは民にとって良き友であり、良き理解者であると。それだから──いや違う、のか。
 私は考え違いをしていたかも知れない。良き友であり、良き理解者であるとは、相互の形而下的立場の事ではない。あくまで信仰するうえでの、形而上的なものでなくてはいけないのだ。

 そうならば。私のこれまで取ってきた態度は、随分と不遜極まる愚劣なものであったろう。山での事ばかりではない、私がこの世に生じてからの日々における態度だ。毘沙門天様の眷属と意気がったところで、所詮は鼠。言われた事を言われた通りにしか出来ない、己の無い鼠妖怪──そんな悲しい嘲罵の声が、私の声で、私の頭に響く。
 果たして私には、信仰心などあったのだろうか。私は結局、毘沙門天様の権威を笠に着て、毘沙門天信仰という宗教を盾にして、口ばかり達者になっただけなのではないか。

 ──彼等がどれ程恨みを抱いたか。どれ程憎しみを抱いたか。鼠、お前に解るか。

 祟神の言葉が頭に浮かぶ。聖は、一切は神仏を崇拝する衆生の信仰がもたらすのだと言った。また信仰は各々が持つべきものだと教えてくれた。
 彼の宗教戦争に敗れた一族は、祟神がそれを今日まで忘れずに居る程篤い信仰を伴っていたのに違いない。その善し悪しは解らない。いや、聖の言葉を借りれば、それを否定しては後がないのだ。ただそこには、篤い信仰があったのだろう。宗教を崇めるような偶像崇拝ではない、確かな信仰があったのだろう。
 これまでの私に、それ程篤く、確かな信仰心はあっただろうか。

 悲しくなってくる。私は果たして、毘沙門天様の眷属たる資格などあるだろうか。毘沙門天様の弟子として寺を切り盛りするご主人様の方が、断然相応しい。ご主人様だけではない。聖を慕い、共に仏道を歩む一輪の方が。船長の方が。会った事は無いが、恐らくは法界で聖と道を同じゅうした住人の方が。

 私は、迷ってばかり居たのではないか。歩む道などとうの昔に外れて、だだっ広い樹海に入り、いつまでも同じところをぐるぐると迷っていたのではないか。正道に戻る道を見失って、それを御仏の教えの所為にして、毘沙門天様の与える行の所為にして。いつまでもいつまでも、愚にも付かない痴れ言ばかり並べて、迷っていたのではないか。

 彼の神々は、それに気付いて私を諫めてくれたのか。あの恐ろしき樹海の闇は──私の、今まで迷い続けてきた樹海だったのではないか。

「……っぐ、ふうっ……うえっ……」

 鼻頭を伝い、枕へと涙が落ちる音がして、もう私は堪え切れなくなった。悔しい。恥ずかしい。それでも声は上げられない、上げたくない。聖には気付かれてしまっているだろう、けれど。
 体を丸くして、頭を枕で覆って、声を殺して、泣いた。今の私には、泣くことしか出来ない。泣いてどうなる訳でもないけれど、ただ泣きじゃくることしか出来ない。

 聖は、黙って隣に寝ていた。私に背を向けて、何もせず、黙って隣に居てくれた。聖は今の私に、慰めなど要らない事をよく解っていた。


 私は、聖のようになりたいと思った。




◇◇◇◇◇◇




 五蘊盛苦(ごうんじょうく)。心身、一切の苦。
 私の意思、私の判断は。彼らの意思、彼らの判断は。




 目覚めは、思いの外気持ちの良いものであった。
 けれどやはり昨日は色々あって眠り過ぎた。寝溜めなんてものは都市伝説かと思っていたが、一日二日分くらいは何とかなるものらしい。隣を見るとまだ聖は眠ったままである。私の体内時計も、まだいつもの起床刻限より前を指している。
 私は聖を起こさないよう注意して布団を畳み、自室へ戻って着替えることにした。

 窓越しの外の景色は、まだ暗い。山向こうがかすかに藍から蒼へと移り始めた程度で、小鳥さえ眠っている。雲も幾らか晴れ、合間からちらちらと星の瞬きが見える。朝露が降りたものか、少し湿った冷たい空気が草木の香りを運んでくる。
 着替えを終え自室を出ようとしたところで、壁にいつものロッドと籠が下げられているのに気付いた。籠のなかには何も居ない。そういえば私が放り出された時に一緒だった子はどうしているだろう。そう思うと、少し心配になってきた。もしかしたら、探して貰えなかったかも知れない。そう思いロッドを携え、尻尾に籠を掲げて、一か八かであの子を喚ぶ信号を吹いてみた。

 しばらくの間が空き、のそのそ、ぼとりという音を立てて尻尾の籠にあの子が落ちてきた。まさか怪我でもしているのかと思ったら、腹を向けてぐうぐう寝ている。怪我はしていない。どうもあの時一緒に放り出されたわけでも無く、平穏無事に聖輦船で待機していたようだ。成程よく考えれば動物の警戒心は大変鋭い。船が大揺れするのを見越して、私より先に逃げていたのかも知れない。
 しかしよく寝ている。天井の寝床で寝ていたならそんな無理をして来る必要は無かったのに。そうして見ると手足の爪が渇いた泥で大分汚れていた。赤茶けた色は魔界の土である。

「君達も私を探してくれたのかい。嬉しいなあ。私は愛されているね」

 少しくすぐったい思いをして、私は揺り籠を揺するように尻尾を優しく揺らしながら、船の甲板で朝の空気を胸一杯吸うことにした。


 甲板へ出ると、既に一人の人影があった。遠目だがその緑髪で直ぐに誰かが解った。少し緊張する。けれど、もう昨晩のような恐れは無い。私より早起きの者が居るとは思わなかったから、少し驚いて胸がどきどきしているのだろう、これは。

 彼女は腕だの足だのを振り回し、体を捻ったりして踊っている。雨乞いか何かだろうか。

「うんっ……あ、お早う御座いますナズさん。ナズさんも随分と早起きさんなんですねえ」

 片腕を組んで大きく体を捻ったところで、私に気付いたらしい。踊りを止して私に近付いてくる。

「どうですナズさんも体操なんて。関節のぽきぽきいうのが気持ち良いですよ」

 体操てそんな目的でするものだったかしらん。まあ神様のする事だ、多分正しいのだろう。

「いや私は止しておくよ。お早う神様」
「や、神様だなんて。えへ。早苗で良いです」
「うん、そうかい。では早苗さん、お早う」
「はい、お早う御座います」

 昨晩は色々と考えさせられた。私はもし叶うのならば、これからも仏の道を歩みたい。いずれまた道に迷う事もあるかも知れない。けれど、その時はまた正道へ戻れば良い。いくら恥ずかしい思いをしても。いくら悔しい思いをしても。私は私の道を、正々堂々と歩みたい。間違いは、正せば良いのだと思う。
 仏道に恥じる事なく、己を弁え、礼節を重んじ……ただ、口調の方はなかなか、どうも。直ぐには改善されないものだから、少し許して欲しい。取り敢えずは小さな事から。敬うべき者には、敬称を付けて呼ぼうと思う。

「昨日は大変そうでしたね。もうお加減は良くなりましたか」
「うん、君には失礼な事をしてしまった。それにまだお礼も述べていなかったね。有難う、君が助けてくれなかったら私は今頃どうなっていたか解らない」
「えっ……いえ、いえいえいえいえ。そんな、大した事していないですよう。頭上げてください」

 私は私の誠実にありたいと思う通り、彼女に対し謝礼を述べた。そうして深く辞儀をした。のだが、どうも早苗は大層慌てている。昨日までの彼女の様子を見ていると、そんな慌てるような性格ではないと思ったのだが。

「や、しかし助けて貰った礼のつもりなんだが。どうしたんだい、随分と慌てるね。神に仕える巫女というのは、感謝されるのに慣れてはいないのかい」
「いえ、そうではないんです。ナズさんの気持ちは、とっても伝わりました。ただ、そのう……」

 早苗は、少し落ち込んだような顔をして語尾を曖昧にする。そうして船縁へと歩き、手摺りに腕を突いて幻想郷を一望する。
 向かいにあるのは、妖怪の山。少しずつ夜は明け始めているものの、辺りはまだ暗い。妖怪の山は静まり返り、黒々とした巨大な影を見せている。

「ナズさん、聞いて良いですか」
「うん、何だい」

 私も早苗の隣に立ち、一緒に妖怪の山を見る。その姿は、私にはまだ恐ろしい。けれど不思議と──隣に早苗が居るというだけで、落ち着いて見る事が出来る。私の怯える胸の内を、爽やかに吹き抜けて和ませてくれる風のような、そんな雰囲気を早苗から感じる。

「ナズさん、もしかして妖怪の山で子供っぽい神様に苛められませんでしたか」
「……ううん、済まない。凄く失礼な事を聞くようだが、子供っぽいというのは、どちらの神様の事だろう」
「アッ、御免なさい。ええとですね、大きな帽子を被った子供みたいな格好の神様の方です」
「ああ、うん。祟られたよ」

 二柱の神様を子供っぽいと思うのは、どうやら早苗も同意見のようであった。彼女も苦労しているのだろう、とも思い、彼女の性格だからこそあの二柱と居て務まるのかも知れない、とも思う。

「そう、ですか……寅さんの言う通りだったんですね……その、ナズさん、御免なさいっ」

 子供の悪さを母親が謝るような顔をして、早苗が私に謝罪をする。健気にも見える彼女の必死な辞儀に、私は少し驚いて彼女を見つめた。

「え。や、止してくれ。私に謝る事は無いよ。あれは私が莫迦だったからなんだ。私は山の神様達に対して礼を欠く事をしてしまったんだから」
「いいえ、いいえっ。それにしたって、ナズさんをあんなに怖がらせるなんて許せませんっ。安心してください、帰ったら諏訪子様をこてんこてんにお仕置きしてやりますから」

 勝気な顔をして空恐ろしい事を言う。それは、私の為にお仕置きした事がばれたりしたら、私に火の粉が降り掛かるのじゃあなかろうか。何たって相手は祟神である。

「や、待て、待ってくれ、いいから少し落ち着いてくれ。頼むからそんな事しないでくれないか。その、何だ、困る」
「大丈夫です。私に任せて下さい。後でばっちりナズさんの面前に引っ張り出して土下座させてやります」

 それが困るというのに。山の神様というのは、どうにも頭が痛い御仁ばかりでいけない。さてどうして早苗の正義感とやらを鎮めたものかと、私はあれこれ考えを巡らせた。
 ところへ。

「……あ、朝日です。やあナズさん、朝は気持ちが良いですねっ」

 がっちりと肩を組まれて、頬と頬が重なったまま、卯(う)の方角にある博麗神社のある山を見る。山向こうから、僅かばかり太陽が顔を出していた。
 その欠片のような朝の光が、幻想郷を一度に照らす。山も、樹海も、船も、私達も。瞬く間さえ与える事無く幻想郷は一瞬にして朝を迎え、目映い光で私達を包む。

 夜と、朝の境。そんな物は無いのだと私は知った。時が経てば夜は忽然と朝に変わる。それは樹海を迷って、はたと気付いた時には森を抜け、その広く美しい景色を目の当たりにしたごとく。そうしてから後に、やっと森を抜けられたのだと安堵するごとく。明確な境界なんてものは無い──

 はっとした。それは、突然に感得するものであると教えられた事がある。けれどそんな、私にはまだ迷いばかりが胸の内にある。昨日それを山の神様達に諫められ、聖に諭されたばかりで。だからそれは、魔境なのだと思う。再び朝日と見(まみ)えた事による、幾許かの感動なのだと思う。朝露の湿りと草木香る、清々しく涼やかな空気を胸一杯に吸い込んだ、爽快感なのだと思う。
 この胸の静かな震えは、透き通った高なりは。雲を掻き分けて晴れ渡ったような、明瞭で新鮮な五感の働きは。

「良い朝ですね。法界にも朝日は昇ります。娑婆もやはり同じ事。法の世界に光が満ちる……清々しい朝ですもの。それはそれだけで、十分な切っ掛けにもなるのです」

 少し離れて、聖が日の出を眺めていた。全身に光を浴びて、輝くように。僅かな朝靄を光が通り、彼女をかたどる影にもまた幾条もの光が差して。

「……あ、あの、聖っ」

 私は慌てて聖に駆け寄る。ただ、聖の名を呼びたくて。聖の姿を目にしたくて。聖に、声を掛けて貰いたくて。
 朝露に湿った甲板の上を、危うい足取りで、聖の許へ。

「ナズーリン。貴方は貴方の思う道を進むべきです。己に偽りの無いよう、己に悔いの無いよう。己に遠慮など要りません」

 ぽん、ぽんと、聖は私の頭を撫でた。そうして微笑みかける聖の姿に、私は太陽を見た。

「貴方は、良い子なんですから」




 ──なんて、それだけで終わってくれれば良かったのだ。私はもうそれで御仏の教えを新たにして、毘沙門天様の眷属として考えを改めて、聖輦船の皆と真摯に向き合って。そうしてこれからもご主人様の助けをして、皆で寺を復興して、幻想郷に毘沙門天信仰と、聖の教えを根付かせて。人も妖怪も、皆が平等で無差別で、手を取り合えるこれからに向かって。

 目の前で輝く明星が、有り得ない蛇行運転をして視界から外れた御陰で、この爽やかな気分はぶち壊しだ。

「わぷっ」
「あ、この前見たエイリアン」

 私の視線を塞ぐように、明星が変な紙切れを落としていった。勿論そのままにもしておけず、さっさと剥ぎ取って袖口で顔を拭う。

「えいり……早苗さん、何の事だいそれは」
「あ、いえこちらの話ですから大丈夫です。……ところでそれ、お手紙ですか」
「え、手紙ってこれかい」

 目に少しばかり埃が入ってしまい、私はまぶたをぱちくりさせた。そうして私と聖と早苗とで、その変な紙切れを眺めた。


 紙切れの出だしには大きく骨太に「果たし状」と書かれていた。




~風祝~ 了
後編をお送り致します。筆者の好きな事やり過ぎた感が否めません。何というか御免なさい。
エイリアンって怖いですね。あと膝枕美味しいですね。

あとは補編を残すのみですが、正直申しますと前後編で終了と考えて頂いた方が良いかも知れません。
7/21現在執筆中。筆者が夏の暑さで壊れて蛇行運転を開始しました。方向性は順調に斜め上へ向いています。


毎度の事ながら、拙い文章で読者の皆様には毎度お目汚し失礼致します。
もし何事か思うところあれば、ご意見ご感想を頂けると、筆者が喜んでのたのたします。

其来(それから) ~ ダウザーの小さな大将の場合 前
其来(それから) ~ ダウザーの小さな大将の場合 補

http://mypage.syosetu.com/68221/
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.460簡易評価
8.90コチドリ削除
いと小さき者、汝の名はナズーリン。

正直自分には歴史や宗教、小難しい理屈は分からんのです。
なので、平凡で小心者のナズが、癖はあるけれど優しい奴らから受けたおせっかいのお陰で、
変わるきっかけを掴んだ話という風に解釈しました。

頑張れナズーリン! 俺も君と一緒で迷いっぱなしさ!
9.100山の賢者削除
お?終わりではないと。
ナズーが無事にクリアマインドに達する事が出来て何よりです。
10.100名前が無い程度の能力削除
後編で綺麗に落としてきましたね。
この読後の清涼感はまさに朝日を迎えた心境とでも言うのでしょうか。

補編も楽しみにしています。
11.100名前が無い程度の能力削除
自らの心のあり方で、すべてが変わるのですね。白蓮先生。
俺がお客様としてとまりに行けば
今なら、ナズーリンの涙と匂いが染み付いたお客様用の布団で眠れるんですね。
白蓮さんと隣りあわせで。←↑ここら重要
13.無評価削除
皆様ご感想有難う御座います。

> コチドリ様
趣味丸出しで申し訳御座いません。その解釈、とっても素敵で嬉しいです。
> 山の賢者様
残るは補足ですが、終わりではなかったのです。あんまし無事でも無いですし。
> 10様
お楽しみ頂き有難う御座います。朝日の清々しさは異常。
> 11様
星の秘蔵コレクション認定済です。だからその、何だ、困る(筆者が)。
15.100名前が無い程度の能力削除
某所で紹介されていたので。
すごく面白かったです。難解な話だとは思いましたがすらすら読めました。文章も緩急も良かったです。
キャラクターでは賢こいキャラであるナズーリンが弱っているのにギャップを感じて良かったと思います。神奈子の寛容さや諏訪子の祟神らしさ早苗のどこか明後日の方向に向いてる描写も良かったです。
これから補を読んできます。面白い作品ありがとうございました。
16.無評価名前が無い程度の能力削除
>欲を欠く
ここは欠かないで掻いた方がいいと思います。
17.無評価削除
> 15様
こちらこそ、ご覧頂き有難う御座いました。幻想郷には本当に色々な子が居ますね。楽しいです。
> 16様
ぬわー。誤字指摘有難う御座います。とても助かります。
18.無評価削除
自分で書いておきながら呆けていました。
> 16様
ここ、欲を「欠く」であっていました。星は「欲を欠く」事を良しとしている、と早苗が捉えたという感じです。