Coolier - 新生・東方創想話

夜の花火をもう一度

2010/07/19 23:33:57
最終更新
サイズ
25.42KB
ページ数
1
閲覧数
1248
評価数
5/16
POINT
1010
Rate
12.18

分類タグ


駄文です
星ナズの百合です
一つの話としては終わっていますが次回に続くように終わっています
一部悲しくなります
一部文の内容が薄いかもしれません
口調がおかしいです
苦手な方はご注意を


















◆0





最近、ご主人のうっかりが減ってきたね。毘沙門天の代理として昔以上にしっかりしてきているみたいだ。
お陰で私の仕事も減って…楽になってきたよ。特に落とし物を探す回数が減って来たね。
ふむ、長い間監視をし続けてきたからわかるが、本当に立派になった。
聖が居なくなってからのご主人は見ているだけで、……胸が痛くなるほどに可哀相だったと、今頃思えるようになってきたよ。
あの時の私は感情が乏しかったからね。何故そんなに悲しむのか理解できなかった。ま、今ではご主人のお陰で感情が豊かになったけど。
感情を豊かにするために色々なことをしたね。いや、色々なことをしたのはご主人だけだったけど。
主に私をくすぐったり、くすぐったり、くすぐったり……あれ?くすぐられた記憶ぐらいしかない?
ふむ、…くすぐられたこと以外に何か…。そういえば、こうして日記を書いているきっかけは、ご主人が感情表現を豊かにするためとか言って進めてきてたんだっけ?…初めは命令として受け入れたけど……、今では自分から書いてるね。
たまにあとから読み返すと面白くて仕方がない。色々なことが書かれているこの日記。中にはご主人との思い出も書かれているこの日記が。
ふふ、読み返す度に懐かしい記憶が蘇るよ。……本当に懐かしい。
あの頃はまた別の意味で楽しかったね。でも、それ以上に今が楽しいよ。
何も知らない私に色々教えてくれたご主人。今のご主人は本当に昔のご主人とは違う。聖達が復活したこともあるのか、こう~……、見違えた。何度も書くけど立派になったよ。


うん、今ならはっきりと言える。貴女は立派な毘沙門天の代理、私にとって最高のご主人だ。
だからずっと私の傍にいて欲しい。


「…今日の日記はこれぐらいでいいかな。」
私は、書き終えると日記を机の上に置いた。






◆1






太陽が昇ってからまだ間もない時刻。命蓮寺の一室、自身の部屋に私はいます。
始めましての方ははじめまして、私のことを知っている方はお久しぶりです。虎の妖怪、寅丸星です。
今日の私はお勤めも何もないため、空いている時間を利用して、外の世界で【ノート】と呼ばれる物に日記を書いています。実は昨日、疲れてすぐに寝てしまいまして…だから今、朝起きてすぐに昨日の分を書いています。
日記は日記でも交換日記ですね。毎朝お互い日記を交換し、夜になってから読み、今日の出来事を書く。それを私の部下、鼠の妖怪でも在るナズーリンとずっとしています。
昔は巻物でしたが、今は【ノート】などが幻想郷にありますから便利な世の中です。
それにしても、昨日の夜は大変でした。博麗の巫女、霊夢さんが夕食を食べに来ましたから。いえ、別にそれだけなら何も大変なことではありません。ただ、タイミングが悪かったのです。魔理沙さんとアリスさんも聖に会いに来ていました。
あとはご想像通りです。親切な魔理沙さんが他の人妖を集めてくださり、宴会に発展しました。おかげで里に大量の酒を買いに行かされましたよ。少し長くなりますから宴会の内容は割合させていただきますけど。
それにしても、その宴会に彼女、ナズーリンが参加せずにずっと部屋に居たのが気がかりでした。
「やぁご主人。今時間は空いてるかい?」
噂をすれば来ましたね。
「…ナズーリン。入るときはノックをするよう何度も言っていますよね。」
少し怒気を込めて言います。ノックもせずに勝手に部屋へ入ってきましたからね。たまになら仕方がないと思いますけど、ノックをせずに入ってきたのはこれが初めてではないのです。むしろノックをして入ってきた数のほうが数えるほどしかないと思います。この前も、その前も、そのまた前の日も、ナズーリンはノックをせずに、声も掛けずに入ってきています。たまに私が気づくまで見ているときもありますからね。
当の本人は、悪びれた様子もみせないから本気で怒るときも少ないです。最近私を怒らせたできごとで新しいのは、着替え中に襖を開けたこと。もうほとんど裸でしたから本当に恥ずかしかった。そのあと彼女が聖に説教をされたのは言うまでもありません。
「いや、すまないね。ご主人、またノックを忘れていたよ。」
「その言葉、この前も聞きましたよ。……少し、昨日の出来事を日記を書いていますからもう少し待って下さい。」
「いや、本当にすまないね。」
…本気で謝っているのかわかりません。もしかしなくても確信犯でしょうか?そういえば、心なしか私の着替えを見たとき喜んでいたような気が…。いえ、別に構いませんけど。
「……少し待っててください、か。できれば早くしてくれご主人。鼠の寿命は短いよ?
さぁご主人、まだかい?さぁ、まだ終わらないのかい?待ってるときは意外とそわそわするものなんだよご主人?まだかい?むしろ何故今日記を書いているんだい?日記はこの時間帯に交換する約束だよね?そしてまだかい?今日は用事もあるのだよ?」
今の彼女は尻尾を犬のように、忙しそうに振っています。それは可愛いと思いますが、正直な話ですね。
「……うがぁーーーーーー!!!!煩いですよナズーリン!?あともう少しですから落ち着いてください!!」
……少し疲れます。







「里に買い物、ですか?」
「あぁ、そうだよご主人。」
ナズーリンに妨害されながらも日記を書き上げ、無事に交換し合ったあと、今隣で私の肩に顎を乗せながら彼女は言ってきました。少し肩が疲れます。
それにしても買い物ですか。また私を誘うなんて珍しいですね。いつもの彼女なら何も言わず、勝手に一人で行くのに。何故誘ったのか不思議です。
「別に構いませんが、…聖や他の皆も行かれるのですか?」
「いや、誘っていないよ。」
ますますわからなくなってきました。
もしこれが、他の皆も誘っての買い物なら納得できます。彼女は口下手で勘違いされますが、こう見えても優しい。ですから、他の皆も誘っていましたら、きっと気まぐれと称して彼女なりに息抜きとして誘うつもりでしょう、最近忙しかったですから。
もしそれなら本当に不思議ではないのですが。違いましたか。他の方を誘っていない。結果として言えば私と二人だけの買い物になる。まるで、その、で、デートみたいですね。
「不思議で仕方がないかいご主人?…簡単な話だよ。私自身、ご主人と二人きりで行きたいと思っていたから。皆を誘っていないのさ。」
あぅ、このタイミングでそんなことをいいますか貴女は?!ペンデュラムを弄りながら余裕ですね!?本当に…。あぁ、少し文句の一つでも言いたいですが…でもその前に確認を。つ、つまりは
「つまり、二人きり、ですよね?」
「その通り、二人きりだ。…言葉を変えるととデートだ。嫌なら断ってくれても構わないよ。」
「え?えぇ?!だ、大丈夫です!そ、その、まだ心の準備ができてないだけで!!せっかくナズーリンが誘ってくれたわけですから行きましょう、二人きりで!」
デートという単語で私の顔は完全に赤くなったと思います。期待していた通りです。ナズーリンの言葉で心の底から恥ずかしさと嬉しさに満たされます。あぁ、動揺してしまいます。
私は決してナズーリンのことを嫌ってはいません。むしろ好意を寄せています。いつから想いを寄せていたのか、はっきりとはわかりませんがきっかけは覚えています。
初めて出会ったときは彼女のことを無愛想だと思っていました。いくら私が話しかけてもあまり会話らしい会話も続かないほど無愛想でした。
始めはそういう子でしょう、と納得はしましたが、それは違っていました。訳は知りませんがただ感情が乏しいだけのようです。それに気づいたのは、微かでしたが彼女が初めて笑ってくれたときです。お互いを知るために交換日記を始めたときだったと思います。私がダメもとで彼女に進めましたら、『変なご主人だ。命令なら仕方がない。別にいいよ。』と微かに笑ったてくれました。
今思い出してもその微かな笑顔を私は綺麗だと思います。本当に表情を見せない彼女が見せた少しの輝き。
それからというもの、もう一度その笑顔を見るために、それ以上を見るために色々なことしました。くすぐりをメインにして。…それしか思いつかなかっただけですけどね。今と違って何もない時代ですから。
…えぇ、その通りです。私は彼女に魅せられていましたよ。今も昔以上に魅せられてますね。
ですから彼女にデートの誘いをされるということは本当に嬉しいです。あ、今こんなことをしている場合じゃありませんね。準備をしなくては。
「……ふふ、ありがとうご主人。もし断られていたら私一人で寂しく里へ行くところだったよ。ふむ、今日はいい日になりそうだ。」
照れ隠しに笑うナズーリン。私も今日はいい日になると思います。
「私がナズーリンからの誘いを断るわけないですよ。それじゃあ用意しますから少し待っててください。」
「あぁ、わかったよ。なるべく早めに頼むよ。あと転ばないように。」
慌しく部屋を出て行く私の背中に手を振ってくれるナズーリン、本当に可愛いです。さ、彼女を待たせるわけにはいきませんから早く準備しませんとね。






今更ですが、もしこのとき私が彼女を気に掛けていたら違う結末があったのかもしれない。






これは幻想郷で起きたある夏、私とナズーリンの物語です。





◆2





あれから数十分後、命蓮寺の正面口で私を含む、四人の影があります。
二つの影は私とナズーリン、他の二つは、落ち着いた雰囲気を出している聖白蓮、黒髪で、さっきから『ぬぇ~、ぬぇ~。』とぼやいている方がぬえ、この二人の影です。わざわざ時間を割いて私達を見送りに来てくださいました。ありがとうございます、聖、ぬえ。
「いいですか星。何があっても取り乱してはいけません。何かがあれば落ち着いて周りを見なさい。よろしいですね?」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ聖。それではいきましょうかナズーリン。」
「あぁ、…それじゃ行ってくるよ聖。ぬえ。皆にもよろしく伝えといてくれ。」
「……えぇ、気をつけていってらっしゃい。二人とも。」
「お土産買ってこないとぬぇぬぇするからね~。」
…ぬぇぬぇってなんでしょう?
取り合えず、聖たちに挨拶を済ました私達は、体をゆっくりと浮かせ、人里へ向かって飛び始めました。私が前を飛び、ナズーリンが後を飛びます。…あぁ、それにしてもついつい顔がにやけてしまいます。それにつられるかのように彼女も私を見て微笑んでいますね。
「ご主人、そんなにニヤニヤと笑っていると気持ち悪がられるよ。」
え?そんなに気持ち悪い表情をしていまいしたか!?…ち、注意します。ですが、嬉しくてつい顔がにやけてしまいます。
「は、はい。すみません。ですが、嬉しくて自然と顔がにやけてしまいます。まさかナズーリンから誘ってもらえるとは思いませんでしたかね。本当にありがとうございます。」
にやけてしまいます。止まりません。本当に嬉しかったですから。…きっと初デートでもあるからでしょう。
普段勤めで出かけたり、私の用事に付き合っていただき、一緒に行動するときはありますが、本当にデートは初めてです。わくわくが止まりません。
「そんなに喜んで貰えたら私も嬉しいよ。ま、今日はデートだから君が喜ぶだけじゃなく、私も喜ばせておくれよ。」
「はい、任せてください!一緒に楽しみましょう。」
私は後ろを向き、笑顔のまま彼女に微笑みます。何故かナズーリンが固まりましたが、すぐに調子を取り戻すと私の横を通りすぎていきました。どうしたのでしょう?
「…そうだね。一緒に楽しまないといけないね。」
どうやら照れ隠しみたいです。可愛いですね。
「……ご主人、里に着く前に一つお願いがある。」
「はい?なんでしょうか?」
改まってお願いとはなんでしょう?もしかして財布と落としてしまったのでしょうか?それなら少しでしたらお貸しできますが…。
「…もし良ければ今日だけでいいからナズと呼んでくれないかい?」
…財布を落としたわけではないのですね。
後ろを振り向かずにそのまま飛ぶナズーリン。きっと恥ずかしいのでしょう。耳まで赤くしています。心なしか、尻尾を犬みたいに振っているように見えます。二度目ですが、可愛いです。これでノックをするなど、私に対してもう少し礼儀を正してくだされば最高ですね。
少し笑い声を漏らしながらもナズーリンのあとを追いかけ横に並びます。それから彼女の頭を撫で、私なりの言葉で返事を返します。
「…今日だけじゃなく、貴女が望むならずっと傍で呼んであげますよナズ。ですから貴女も私の傍でずっと星と呼んでください。」
「……なんだいご主人。まるでプロポーズみたいだよ。」
あ、本当ですね。プロポーズみたいですね。
「ふふ、そうですね。プロポーズですか。いいですね、それ。」
顔が熱くなります。きっと赤くなっていますね。
「…さっきのことは忘れてくれ。さ、バカ言ってないでさっさと行くよ。ご主人」
「…違いますよナズ?」
「…………さっさと行くよ星。」
ふふ、やはり貴女は素直ですね。こう、距離が縮んだような気がして気持ちいいです。
「少し恥ずかしいけど、こういうのも悪くないね星。」
えぇ、本当にそうですね、ナズ。
―――お陰で風が気持ちよく感じられます。









◆3




「さぁ星。里に着いたね。早速何をしようか。できれば夜まで時間を潰したいところだね。」
私たちは里の近くにある森林に降り立ち、里の中へ入りました。今日はどうやら何かが行われるようで、里の中が慌しくなっています。
「落ち着いてくださいナズ。取り合えず適当に歩き回りましょう?」
「あぁ、すまない星。そうだね、適当に歩き回ろうか。」
やはり彼女は素直ですね。私に対する礼儀以外のことなら素直に従ってくれます。
例えば、他の方への礼儀もたまにできないときがありますが、私がちゃんと注意したら直してくださいました。そのときのナズは本当に素直でしたね。
少し、腑に落ちなかったのは、その他の方々が『いやらしい目で見てすみませんでした。』と謝ってきたことですね。いやらしい目って汚らしいって意味ですよね。…何が言いたいのかいまいちわかりませんでしたが、取り合えず許して差し上げました。まぁ、とにかくナズは素直です。…あれ?そういえば今更ですけど里に来た目的って確か…。
「里に買い物へ来たのですよね。何を買いに来たのですか?」
「ん?あぁ、デートに誘う口実だったから正直な話何も考えていなかったよ。」
やはり素直です。…ふふ、可愛いところが一杯ですね。
「星、顔がにやけていて気持ち悪いよ。」
…失礼いたしました。申し訳ございません。






私たちは今、最近できたふぁみれすと言う飲食店に来ています。店内に人が結構いますよ。時刻は大体昼ごろですから当たり前ですけどね。
あのあと私たちは本当に里を適当に歩き回っただけで特に何もありませんでした。
何かあったとすれば八雲さんたちに会いましたね。宴会でお会いしたことはありますが、実際にお話をするのは初めてで、三人ともお優しい方々でした。ナズが、ずっと終始私の背後に隠れていたのは微笑ましかったですね。きっと猫が恐かったのでしょう。
確か、橙ちゃんだったかかな?終始涎を藍さんに注意されていました。
それにしても暇です。今ナズが里中へ用事ができたとかで席を外しているために暇です。何かないでしょうか?
「あら?お一人かしら?」
おや?この声は…。
「…八雲、紫さん?」
先ほどお会いした八雲紫に再びお会いしました。偶然でしょうか?そんなことを考えていますと紫さんは私の横に腰を降ろしまて話しかけてきます。
「紫でいいわよ。そんなことよりお連れの彼女はどうしたのかしら?」
「ナズーリンでしたら用事を思い出したと言って今少し席を外していますが、どうかなさいましたか?」
「居ないのなら構わないわ。そんなことより、橙が悪いことをしたわね。恐がらせたみたいで。」
「いえ、大丈夫ですよ。気にしないでください。」
貴重な彼女も見れましたしね。
「いえ、そういうわけにはいかないわ。お詫びといっては何だけど、一ついい事を教えてあげましょう。」
そんなに気にしていただかなくても大丈夫ですよ、本当に貴重な彼女を見れて満足でしたから。とは口にはできません。
何故なら、紫さんの顔がすぐ目の前に来たからです。少し顔が熱くなってきます。私に顔を近づけ、私の肩に触れ、甘いにおいが鼻にきます。下手をすると口付けをしてしまうかもしれない距離、緊張して動けません。そこからゆっくりと紫さんは言葉を紡ぎます。怪しい目の色で私を見たまま。
「そうね、えぇ、忠告として聞いて貰ってもいいわ。今日一日彼女から目を離さないことね。理由は最後にわかるわ。決して彼女から目を離さずに、また、彼女から離れないこと。これを守りなさい。」
「え?それはどういう意味ですか?」
いきなり忠告をされましても…、いったいどういう意味でしょうか?少し意味がわかりません。もう少しわかりやすく説明していただけないでしょうか。
「今は何も言えないわ。…ほら、愛しの彼女が来たわよ。」
「え?…あ、ナズーリン、お帰りなさい。」
ナズが息を切らして戻ってきました。戻って着ましたけど、心なしか紫さんを睨んでいます。首飾りになっているペンデュラムも強く握っているみたいです。
「すまないねスキマ妖怪。ご主人の隣は私の特等席だから空けてもらえないだろうか?」
あの、ナズ、怒っていませんか?少し、いえ、物凄く恐いです。…多分今喋ったら私の身が危険になります。この世から消えるかもしれませんね。
「あら?恋人でもないくせにいつからここは貴女の特等席と決まったのかしら?」
少し紫さんの顔が離れます。助か…ってないです。怒っているナズに挑発をする紫さん。お願いですから火に油を注がないでください!!
「私とご主人が出会ったときから決まっていてね。今も特等席なんだ。わかったら退いてくれないかな年増妖怪?」
ナズも挑発しないで!?
「と、とし、年増妖怪。…ふ、ふふ、いいわ。それなら仕方ありませんわ。大人しく去りましょう。」
あぁ、大人の対応をする紫さん。ありがとうございます。…あの、顔が近いですよ?
「置き土産を置いてからね。」
!!!!?!?
「??!!!?私のご主人に何をするスキマ妖怪?!」
「ふふ、ささやかなお返しよ。それじゃあ失礼するわ。」
紫さんに向かってカウンターにある店の椅子を投げるナズ。それでもスキマの中へ逃げるのが早かったらしく、逃げられました。私はそれを見ることしかできませんでした。何故?…頬にき、キスをされて固まっていました。恥ずかしいです。
……恐らく彼女もナズと同じ、わざと悪戯するタイプですね。
「星?!大丈夫かい!?」
あぁ、私の横に来て詰め寄るナズ、大丈夫ですよ。だからそんなに私の肩を揺らさないでください。しゃ、喋れません。
「キス以外にセクハラをされていない?」
「だ、大、丈夫ですから、ゆ、揺らさないで。」
「!?…す、すまない星。気を取り乱してしまった。」
あぁ、ゆらゆらから開放されました。一瞬仏の心理が見えると思いましたよ。
「本当にすまない…。君を一人にするべきではなかった。」
心遣いありがとうございます。…あの、少し気になるのですが。
「…あの、ナズ…?」
「…本当にすまない。」
「いえ、それは構わないのですが。私も悪いですし。」
「…ありがとう。許してもらって助かるよ。」
……………取り合えず頭を撫でときましょう。
「その、ナズ、よろしいでしょうか?」
「…なんだい?」
「抱きつくのは構いませんが、場所を変えませんか?…少し恥ずかしいですから。」
店の方々全員が私たちを見ています。あんなに派手に騒動を起こしましたから仕方がありませんが、これはいただけません。毘沙門天の代理でもある私が修羅場を作り、泣いてる女の子に抱きつかれているとなればもう笑い話にすらなりません。聖に南無三されてしまいます。
「…本当にすまない。」
いえ、構いませんよ。一番の原因は紫さんですから。















ふふ、なかなか面白い二人だったわ。当分はあの二人にもちょっかいを出したいわね。
「紫様、また何かしでかしましたね。」
「…藍。橙と一緒に先に家へ帰るように言ってなかったかしら?」
「はい、確かに言われました。が、紫様の様子がおかしかったために橙と一緒に引き返してきました。…喫茶店で問題を起こしたのは紫様ですね?」
「あら?何故そう思うのかしら?」
「簡単なこと。見ていましたから。」
…気づかなかったわ。優秀すぎる式も考え物ね。ふう、多分知らなくていいことにも気づいているわね。
「…藍。もう気づいているのかしら?小さな異変に。」
幻想郷には直接的な被害はない小さな異変に。
「…始めは気づきませんでしたが、紫様の行動で理解いたしました。恐らくこの異変には巫女は動かないでしょう。」
「えぇ、きっと動かないわ。」
「…お言葉ですが、何故紫様が動かれるのですか?今回は私たちにはどうしようもない。言葉を変えるなら運命と言えるでしょう。ただ見ることしかできない運命に何故関わろうとしたのですか?」
…最後まで見通していると思っていたけど、優秀すぎて周りが見えてないわね藍。
「藍。私は妖怪の賢者として動いただけでしかありません。そしてこれからも先、必要とあれば賢者として動くことがあるでしょう。ですから今日は賢者として動いたのです。」
「紫様、おっしゃっている意味があまりわかりません。話の答えとは思えないのですが。」
ふふ、わからなくしていますもの。当然よ。
「…今日の出来事も、私の行動も未来に必要ってことよ。ま、最後にちゃんとわかるから今は現状だけを理解しておきなさい。」
「…わかりました。取り合えず店の破損は紫様のお小遣いから減らしておきますね。」
…え?今なんていったかしら?空耳かしら?
「今、何かいったかしら?」
「取り合えず店の破損は紫様のお小遣いから減らしておきますね。と言いました」
なんですって?!何故なの藍?!壊したのはあの鼠じゃないの!!?
「待ちなさい藍!!何故私な「紫様が原因ですから。お小遣いと今日の夕食をなしにされたくなければ我慢してください。」…はい。わかりました藍先生。」
…やっぱり優秀な式は考え物だわ。










「…すまなかったね星。私が喫茶店で騒いだばかりに…。」
「いえ、別に構いませんって、気にしていませんから。」
「あぁ、ありがとう。…次からは気をつけるよ。」
次もあったら困りますけどね。
あれから私たちは喫茶店を出て、ナズに連れられながら里の外の山まで来ています。
あのあと喫茶店の騒動のお陰で毘沙門天様が来ていると噂が広まり、騒ぎになりまして。
そのため、別の場所へ逃げては騒ぎに、また逃げては騒ぎに、この繰り返しでした。…変な噂が広まらなければいいですが。
お陰でもう大分暗いです。飛ばずに山まで走ったのは本当に時間を無駄にしてしまっただけだと後悔してしまいます。…手を繋げて嬉しかったのはまた別ですけど。
心なしかナズもそわそわしています。
「星、ちょっと着いてきてくれないかい?」
?…いきなりどうしたのでしょう?こんな山に何かあるのでしょうか?
「いいですけど、どちらに?」
「いや、何、もう少し先にいいいい風景があるんだ。こっちだよ。」
「あの、そんなに強く手を引っ張らなくても付いていきますから。」
ナズが私の手を引き奥へ連れて行きます。飛んではいけないのでしょうか?そんなことを考えていると目的地に着いたみたいです。私の手を離しました。少し残念です。
「ほら、ここの道を抜け出せば…。」
「…凄いです。里が光っています。」
山道を抜けますと、ちょうど里の見渡せる場所に出ました。もう真っ暗な時間ですが、これは…祭りでしょうか。夜なのに里が明るく見えます。本当に、凄く綺麗です。
「どうだいご主人。綺麗な場所だろ。」
近くに腰を降ろすナズ、私も彼女の横に腰を降ろします。
「はい、とても綺麗な場所です。ありがとうございますナズーリン。」
えぇ、本当にいい場所です。こんなところがあるとは知りませんでした。
「ふふ、今日はナズと呼んで貰わないと嫌だよご主人?」
「…そういうナズも、星と呼んでくださらないと泣きますよ?」
「ククッ、それは困るね。いや、失礼したよ星。」
「「ふふ、あははははは。」」
お互い思わず笑ってしまいました。久々かもしれませんね。こんなに二人っきりで笑ったのは。
最近一緒に出かけることも少なかったような気もしますし本当に久しぶりでしたね。これでもし私たちが恋人同士だったら、…いえ、高望みはしてはいけませんね。恐らく彼女は私をお姉さんとして見ているのでしょう。…少し悲しくなります。
「ナズ、今日は本当にありがとうございました。最高の一日ですよ。」
本当に最高の一日です。あとはこのまま帰って、明日からまた同じ一日の繰り返しですね。
私の良そうとは反した言葉が彼女から聞こえます。
「星、最高の一日にするにはまだ早いよ。」
「え?それはどういう」



――――――ぴゅう~~~、バー―――ン、パラパラパラパラ――――



私の言葉は一つの音、花火によって掻き消されました。予想外で固まります。まさか最後の最後でこんなサプライズがあるとは思いませんでした。恐らくここまで計画をしていたのでしょう。驚きです。だから飛ぶ選択肢をせずに時間のかかる山登りを選んで時間稼ぎを。…もし私が断ったらどうするつもりだったのでしょうか。ん?考えていましたら肩に何か重いものが。
「…最後まで少し静かに見ようか星。」
「…はい。」
彼女が私の肩に頭を乗せてきました。…甘えたがり屋ですね。いいですよ。最後までお姉さんとしてがんばりましょう。







花火が始まって何分たったのだろう。少し視界がぼやけてきた。ご主人、いや、星の顔もあまりよく見えない。彼女を感じているのは温もりと声だけでしかない。
あぁ、彼女は私を妹としてしか見ていないだろうな。こんなに愛しているのに彼女は最後まで気づかない。いつも姉妹みたいな態度を取る。もっと踏み込んでもらいたいよ星。もっと構ってもらいたかったよ星。聖たちではなく私を見てもらいたかったよ星。思えば感情をくれたのは星。温もりを教えてくれたのも星。寂しさを教えてくれたのも星。
ふふ、全て君からもらっていたね。本当に名前通り私の『星』だよ。小さいけれど長く輝く『星』だよ。
あぁ、もう花火も終わりそうだね。最後まで残れて良かったよ。それにしても視界がぼやけるだけで苦痛も何もしない。『消える』ということは所詮こんなものか。…ごめんね星。もう生きてる理由が見つからないんだ。本当にごめん。最後に言わせておくれ。



―――――愛してるよご主人。





「え?…ナズーリン。どうしたのですか?」
花火が終わってまもなく、耳元でナズーリンに『愛してるよご主人。』と言われました。
普通なら喜ぶところでしょうが、様子がおかしい。ずっと私の肩に頭を乗せたまま目を閉じていましたが、特に変わったこともないため気づきませんでした。今も何も変わった様子もなく、ただ眠っているだけに見えます。温もりも感じれます。
…あの、ナズーリン?どうしたのですか!?様子がおかしいですよ!!?返事してください!!ナズーリン!!!!!ほら、花火も終わりましたから帰りましょうよ?皆待っていますよ?…ね?
いくら声を掛けても起きてくださいません。嫌なことが頭を過ぎります。最悪の結果を考えてしまいます。まさか、このまま彼女が…。
「…落ち着きなさいよみっともない。」
「?!誰ですか!?」
暗闇の中から人影が二つ見えますそのうちの一つが近づいてきて、もう一つは消えました。二人とも誰かわかりませんが、助かりました。
「お願いです。ナズーリンが、ナズーリンが変なんです。助け、助けてください!!」
「あぁ~、多分もう手遅れだわ。」
…何を言っているのですか?
「よく見て御覧なさい。もう下半身消えてるじゃない。」
月の光に照らされて暗闇から姿を現したのは霊夢さんでした。…そんなことより消えているって…?
「現実を見なさい。もう彼女は妖怪の生命力、精神がなくなっているわ。その証拠に体も維持できなくなって消え始めている。もう手遅れね。」
「そ、そんな、う、嘘です!!」
「嘘じゃないわよ。別に構わないけど、まだ言葉は伝わると思うから現実を受け入れてお別れの言葉でも交わしなさい。協力してあげるから。」
霊夢さんが体の消えていってるナズーリンの頭に触れます。すると彼女は目を開いてくれました、が、消えるスピードが遅くなっただけで止まりません。何故です。何故貴女が消えるのですかナズーリン。
「…ご主人と巫女か、…迷惑をかけるね巫女。」
「私のことはいいからとにかくご主人とやらに何かいってあげなさい。」
嫌です。今の貴女からは何も聞きたくないです。
「ふふ、すまないね。…やぁご主人、最悪の一日にしてしまってすまないね。」
…何をいっているのですかナズーリン。まるで貴女が消えるみたいじゃないですか。
「みたいじゃなくて消えるんだよ。」
「…何故消えるのですか!?私のこと愛してるのならずっと傍に居てくださいよナズーリン…。私もあなたのこと愛してますから。…ね?そうしましょう?ずっとふたりで居ましょうよ?」
そうです。ずっと傍にいましょう。ですから消えないで下さい。
「…もうわかるだろご主人。昨日の時点で私の体は透け始めたりしていたんだ。運命も見てもらったが、消える運命に変わりはないみたいだからね。」 
「…何故話さないのですか、この私に!!?」
そう、何故私に話さないのですか!?
「…最後までいつも通りで居たかったからさ」
もう頭まで消えかけているナズーリンに私は言葉を伝えます。
「…貴女のこと、本当に好きなんですよ。愛しています。…それなのにこんな別れはあんまりです。…。」
これ以上の言葉が浮かびません。沢山伝えたいのに伝えれません。何故ですか。もう今すぐにも消えそうなのに…。
「…ふふ、言いたいことはわかるよ。…そうだね。お互い相思相愛。最高だね。色々すまなかったよ巫女。ご主人を任せる。」
「別に構わないわよ」
「それからご主人。」
…嫌です。お願いですからそれ以上は言わないで下さい。
「――――今までありがとう。」
「ッ!!あ、あれ?れ、霊夢さん。ナズーリンは?」
「…消えたわよ幻想郷から。」
「な、何を言っているのですか?さっきまでそこに…」
―――パチン。
一瞬何が起きたのかわかりませんでしたが、霊夢さんに頬を叩かれました。
「みっともないわよ。…素直に現実を受け入れて泣きなさい。」
「…ご、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんんさい…。」
「…好きなだけ泣きなさい。今はね。」
う、うぅ、な、ナズーリンが、ナズーリンが消えてしまいました。わ、私の目の前で、最愛の人が、消えてしまいました。
何故、何故ですか、何故何もしてくださらないのですか毘沙門天様!!!









そこで私は疲れて眠るまで霊夢さんに泣きついていました。
ラストシーンはいつだってハッピー
という言葉が好きなRekutoです。

気づいたらナズーリンが消えてました。泣きそうです。
こうなったら仕方ありません。星ナズは僕の至宝ですからプライドにかけてハッピーエンドにします。
それにしても、実習が始まる前に間に合ってよかった。

因みに予定では次の次で完結にできたらいいなと思っています。

文章でもっとこうしたらいいよ。ってアドバイスがありましたら是非ください。
(内容が変更される場合があります/その場合随時あとがきに報告します。)

やっぱり星ナズ可愛いよ

山の賢者様>>
アドバイスとご指摘ありがとうございます。一文字空けるのは盲点でした。一度考察しておきます。

以下変更点と報告など
7月20日(火)
―――お陰で風が気持ちよく感じれます。

―――お陰で風が気持ちよく感じられます。
に変更

以下おまけ



橙「…おいしそう。」



ナズ「!!?」




藍「こら、まだ食べてはいけないよ」



星「はは、藍さんは冗談も上手ですね。」


ナズ「(違うよ、彼女らは本気だよ、私にはわかる。)」


橙「食べていい?」



ナズ「!!?」
Rekuto
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.510簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
最高!
4.100名前が無い程度の能力削除
星の口調がどうしようもなく可愛いですw
6.100Ail削除
供給の少ないジャンルキター!
12.100山の賢者削除
これは続きが気になる。
取りあえずハッピーエンドらしいので安心しときます。
 
>>お陰で風が気持ちよく感じれます
「ら」が抜けとりますぜ、旦那。
13.無評価山の賢者削除
>>文章でもっとこうしたらいいよ。ってアドバイスがありましたら是非ください。
地の文は始めに一文字分スペースあけるとか?
15.100アガペ削除
素晴らしい!
ハッピーエンド待ってます!