まだ寝るつもりだったのに、お昼に起きてしまった。
二度寝をしようと思って目を閉じたのに、なかなか眠れなかった。
仕方なくだるい身体を起こしていつもの服に着替える。
あまりにもぼーっとしていたせいでタンスに足の小指をぶつけてしまった。
そのおかげで完全に目が醒めた。
「……地味に痛いわね」
とりあえず、今から何をしようか。
することがないとつまらない。
咲夜を呼んで紅茶でも飲もうかしら。
「おじょーさまー!」
「……?」
突然、廊下から私を呼ぶ声が聞こえた。
この声は…
私の部屋の扉を開けた人物は
「あれ? 起きてらしたんですか?」
「…美鈴」
「珍しいですね、お嬢様がこんな時間に起きてるなんて」
「目が覚めてしまったから」
「なるほど」
ところで、何故美鈴がここにいるんだろうか?
門番の仕事は?
「ちょっと美鈴?」
「ん? 何ですか?」
「貴方…、仕事はどうしたの?」
「ああ、今は休憩中ですよ」
「…そう」
それなら美鈴が門から離れてるのは納得した。
しかし…、何故ここに来ているのだろう?
「ねぇ、美鈴?」
「はい! なんですか?」
「なんでここにいるのかしら?」
「…お嬢様、そんなこと言っちゃうんですか?」
「な、何よ…」
美鈴の口角が少し上がった。
わかりやすく言うなら、ニヤリ、という表現が一番合っていただろう。
「せっかく愛しの恋人が会いにきたのに」
「ばっ!…なに、言ってんのよ」
「ふふ~ん♪なぁに照れてるんですか?」
「べ、別に照れてないわよ!!」
「そうですか?」
そう。
私、レミリア・スカーレットはこの紅魔館で門番をしている紅 美鈴と付き合っているのだ。
まだ皆には内緒、ということになっているのだが、多分もう皆に気付かれているはず。
「美鈴…」
「どうしました?」
「…暇だわ」
「…私もうすぐ仕事に戻らないといけないんですけど」
「主が暇だって言ってるのよ?」
「主…ですか、それじゃあ私をここに留めるのは難しいですね」
むぅ。
美鈴は何が言いたいんだろう。
主が暇だって言ってるんだから従者である美鈴が言うこと聞かないのは少しお仕置きが必要かしらね。
「私に構ってほしかったら、主としてではなく、レミリア・スカーレットとして頼んでもらわなければ、…ね?」
「ッ!?」
「どうなんですか?」
「…生意気ね」
「あはは♪」
時々、生意気なこの門番だが、結局私はコイツが好きなわけで…。
「…暇だわ、ちょっと構いなさいよ」
「…それは、主としてですか?」
「…いいえ、レミリア・スカーレットとして言ってるわ」
「なるほど。それじゃあ咲夜さんには悪いですが、可愛い可愛い恋人の願いを聞き入れましょう」
「咲夜には私から言っておくわ」
「そうですか? ありがとうございます」
美鈴はそういって私の近くまで歩み寄ってきた。
そのまま私を抱きしめた…、というよりもだっこされてる?
「相変わらずちっちゃいですね、お嬢様」
「アンタが大きすぎなのよ!」
「はいはい、怒らないでくださいよ」
「ちょっと! 降ろしなさいよ!」
「嫌ですよー、っと!」
「きゃあ!?」
いきなりベッドにダイブ。
おかげで「きゃあ」なんて声を出してしまった。
「やっぱ可愛いですね~♪」
「うるさいわよっ!!」
「怒った顔も可愛いですよ♪」
美鈴は調子に乗るとなかなかウザイ。
でも、…嫌いになれない。
これぞ世間一般でいう、惚れた弱みというやつなのだろうか?
「で、なにしてくれるのかしら?」
「え? このまま一緒に夜までぐっすり寝ようかと」
「はあ? 何それ?」
「いやぁ…、私眠いんですよ」
「……貴方がわからない」
「まだ時間はあります。ゆっくり私を知っていってください」
「…しょうがない門番ね」
「………スー、スー、…」
「もう寝たの?」
めんどくさいやつ…。
もういいや、なんか眠くなってきたし。
「私も寝ようかしらね……、おやすみ、めーりん…」
「……むにゃ…、おじょう、さま…」