Coolier - 新生・東方創想話

とある玉兎の受難?

2010/07/06 23:00:06
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縁側に座ると、さんさんとした初夏の日差しを感じる。
春先に感じていた冷夏の兆しも全く感じさせない、とても素晴らしい天気だ。
ここは幻想郷の一角、『迷いの竹林』にある永遠亭。
竹林はこの陽気のせいもあってか、ぐんぐんと伸びている。とはいえ、元々竹は成長の早い植物なのでこれが正常といったら正常なのだろうが。
そんな事を考えながらお茶を一口飲む。地上のお茶は月のものと違って不純物が多いが、それらが合わさり、複雑で深みのある味わいを持たせている。
静かな竹林に小鳥のさえずりがかすかに聞こえてくる。そのさえずりが竹林に吸い込まれるように消え、より一層閑寂を引き立てる。
月にいた頃は兵士としての生活が長かったから、今のようににゆっくりと過ごす事はできなかっただろう。
「うどんげー、ちょっとこっちに来て手伝ってくれないかしらー?」
不意に師匠の声が静寂を切り裂く。彼女は八意永琳。月の都では『医学の祖』とまで呼ばれている人物だ。
「はい、只今行きますー!」
声のした方向へ急ぎ足で向かう。…この部屋は確か、彼女の研究室兼実験室だったはずだ。
扉をノックし、「失礼します」と言って中に入る。
中に入ると、思わず「わっ」と驚きの声を漏らしてしまった。なんという試験管の多さだろう。
どの試験管にも念入りに封がされ、日時等が細かく書かれたシールが貼ってある。
「うどんげー、こっちー。」
さらに奥の方から声がする。この部屋には訳の分からないものが多く、ぶつからないように進むのが少々つらい。
「師匠、どうされました?」
彼女が振り向き、唐突に深紅色の試薬の入った試験管を手渡す。
「ちょっとそれ持ってて。」
さらに戸棚の中から数本の試験管を取り出す。どの試薬も青や黄色、黒や緑と毒々しい色をしている。
「これを30mg、それでこれを50mgと…うどんげ、それをここに全部入れて。」
試薬が混ぜられたビーカーの中には、無色の透明な液体が入っていた。そこへ、私の持っている試薬を入れる。
それを入れ終わった瞬間、まるで沸騰したかのようにボコボコと気泡が出て、最終的にはには紅い結晶のようなものだけが底に残っていた。
「あの…師匠?これは何の薬なんですか?」
ああ、これかしら?と彼女が呟く。
「これは若返りの薬よ。まあ、とある古株妖怪に頼まれて作ったんだけど…このまま渡していいものかしらねぇ。」
彼女が心配そうに溜め息をつく。とある古株妖怪…恐らく、というより十中八九八雲紫の依頼だろう。
若作りに余念が無いなぁ…と思っていると、彼女が手早くそれを薬包紙に包む。
大体同じ量を二つに分けて包んでいる。
一つは依頼人に渡すためのもの、もう一つは一応研究用として保管しておくのだろう。
「これでよし、と。私は今から置き薬の点検がてらこれを渡してくるから、てゐと留守番、お願いね。」
薬を彼女愛用のバッグに入れ、もう片方は引き出しの中にしまう。
他に何もすることが無いので彼女を玄関まで見送ることにした。
「じゃあ、行ってくるわね。すぐ戻ると思うから。」
「はい、お気をつけて。」
その時私は、ちょっとしたことに気が付く。あの部屋の戸を閉め忘れたのだ。
ま、あとでいっか、と縁側へと戻る。今日はしばらく師匠がいないからのんびりしよう…


また先程と同じ位置に座り、お茶を飲むでもなく庭を眺めてみる。
すると、輝夜様がいつも世話をしている優曇華が以前よりも大きく育ったような気がした。
この一見すると死んでいるような植物には葉が無いため、『侘び』を追求するとこうなるのだろうか。
私と同じ名前、か…。名前が同じというだけで親近感を持つ事ができるというのはなんとも不思議だ。
そういえば、これって地上の『穢れ』を吸収して成長するんだっけ。
私の記憶が正しければ、確かこの植物の地上の呼び名は『蓬莱の玉の枝』だったはずだ。
一体どれほど美しい枝や花を咲かせるのだろうか。考えただけでわくわくしてくる。
「ごめんくださーい。鈴仙さん、いらっしゃいますかー?」
玄関の方から声がする。誰かが私を訪ねて来たようだ。
「あ、咲夜さん!どうぞあがってください!」
彼女は紅魔館でメイド長を勤めている十六夜咲夜だ。私の特に仲の良い友人のうちの一人だ。
上品な顔立ちと洋風なメイド服が、日本家屋であるここでは彼女だけが取り残されているような、この場所から切り離されたような印象を与える。
「はい、ではお邪魔しますね。」
彼女を縁側へと案内し、いつものように雑談を始める。彼女も誰かの下について働くので、何かと話が合ったり、よく相談をしあったりする。
二人で並んで縁側に座り、取り留めの無い会話を始める。
「それで、お嬢様が『咲夜、お願いだからピーマンを入れるのだけは勘弁してくれないかしら?』と仰られて・・・」
「あー、好き嫌いですか!」
「はい、でもそこがまた御可愛らしくて…」
…咲夜さん、鼻血出てますよ、鼻血。
「あ、これは失礼しました…鈴仙さんのほうはどういった感じなんですか?」
鼻血を拭きながら、彼女が話題の方向を私に変える。
「私ですか?咲夜さんほどではありませんが、こっちは変わった方々が多くて…」
「と、言いますと?」
「師匠は一度部屋に入ったら出てこないし、輝夜様は昼夜が逆転した生活をしているうえに仕事も…」
続けようとした瞬間、背後に気配を感じて振り向くと、そこには輝夜様ご本人がいた。
「うどんげ…ひっく、お茶…持ってきたよぉ…」
まずい、泣かせてしまった。
「あ、ありがとうございます!凄く良い香りですね!とっても美味しそうです!」
「うん…」
襖がぴしゃりという音を立てて閉まるのがなんとも物悲しい。
はぁ…師匠に怒られるぅ…
「あー…お茶をどうぞ。」
一気に場の空気が重くなってしまった。
こういった話は本人に訊かれたらまずいものがほとんどだ。
あーあ、今日に限って日中も起きてるなんて…
そう思ってお茶をすする。…結構味はいいかも?
ほっと一息つくと、同じようにお茶を飲んだ彼女が後ろに倒れる。
え…嘘…まあ、こんな事をするのはあの子だけね。
「しまった!因幡てゐ一生の不覚!」
…やっぱり犯人はてゐね。でも、彼女がこんな危険そうな薬を使うかしら…?
そう思って咲夜さんを見る。手が一瞬ぴくりと動き、だんだん縮み始めた。
え、縮み始めたって…あの『若返りの薬』!?
「へぇー…この薬、こうやって効いてくんだ…」
いつの間にか彼女が私の隣に来て、咲夜さんを眺めていた。
…ほんとに若返ってる。すごい。とにかくすごい薬だ。
「あ、薬はちょっとしか使ってないから安心していいよ。」
あなたのちょっとって一体どれぐらいなのよ…
そう思って溜め息をつくと、彼女が『これだけだって』といった感じで一つまみ分の量をとった仕草をする。
「はぁ…結局、師匠に大目玉を食らうのは確実ね…」
えへへー、と彼女が申し訳なさそうに笑う。そんな顔するぐらいなら最初から薬盛らないでよ…
さて、私は今のうちに覚悟を決めておこうかな…
「ただいまー。」
あ、あれ?ほんとに早くありませんか?そう思っていると、だんだん足音が近くなってきた。
「うどんげー、お留守番のご褒美にお土産を…」
襖を開けた師匠の顔が引きつり、お土産が入っているであろう袋を落とす。
「も、申し訳ありません師匠!私がてゐをもっと良く…」
頭を下げた私の肩に彼女の手が乗る。
「まあ、起きてしまった事は仕方ないわ。…てゐ、後で私の部屋に来なさい。」
あうぅ…と彼女が呟く。まあ、当然の報いだ。
さて、この子をどうするかしら、と師匠が呟く。咲夜さんは「若返り」が終わったらしく、十歳ほどの背丈になっている。
「う…」
どうやら気がついたようだ。サイズの合わない服がするりと肩から落ちる。
「わああ!一体なんなんですかこれは!鈴仙さん、説明してください!」
胸の辺りで服を押さえ、顔を真っ赤にして怒鳴る。…思わず『かわいい』と思ってしまったということを彼女が知ったら怒るだろうか。
「まあ、簡単に言えば貴女はてゐが盛った薬で子供に戻ってしまった、という事ね。」
彼女がきょとんとした表情になる。まあ、急に言われてすぐに理解するというのは難しいだろう。
「…まあ、そこはそれでいいわ。私の代わりは、一体誰が務めてくれるのかしら?」
そう、彼女はメイド長だ。誰にでも代わりが務まるという訳ではないだろう。
師匠が一瞬考えて、きっぱりとこう言い放つ。
「薬の有効期間はすぐ終わるだろうから、それまでうどんげを好きに使っていいわ。」
なるほど…って私!?…まあ、すぐに扉を閉めなかった私も悪いんだし、仕方ないか。
咲夜さんも師匠の申し出に同意したらしく、無言で頷く。
彼女はそろそろ紅魔館に戻らないといけないらしいので、私は自室に戻って着替えなどを急いでまとめる。
さて、これでよし、と。荷物をまとめ終えると、急に師匠が入ってきた。
無言で手帳とペンを私に手渡す。一応記録だけはとってきてくれ、ということなのだろう。
玄関まで見送りに来てくれたてゐに手を振り、紅魔館へと出発する。
…こうして、私は咲夜さんと一緒に紅魔館でしばらくの間働く事になってしまったのだった。


続く~To Be Continued …
こんにちは、G.G.R.と申します。
文才が全く無いというのに何故か投稿してしまった、という感じです^^;
ブログでもある程度は書いてたりしたんですが…やはり通りすがりの方にズバッと評価をしていただきたい、そう思って投稿しました。
なにぶんまだ高校一年の若輩者ですので拙い文章しか書けませんが、自分が持っている全ての力を小説にぶつけ、「面白い」と思っていただけるような文章を書けるように日々切磋琢磨していきたいと思っています。

最後になりますが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
当作品はまだ続きがありますので、後日(できるだけ早めに)うpしたいと考えておりますので宜しく御願い致します。
G.G.R.
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コメント



0.490簡易評価
4.40葉月ヴァンホーテン削除
通りすがってみました。

>続く~To Be Continued …
ふむぅ、とてつもなく続きそうですねw 
それはともかく、言葉の選択が巧くないということと、地の文とセリフが連動していないという弱点が見受けられます。
前者はとにかく本を読めば自然と身に付いてきますが、後者は難しいですね。
自分の書いた文章を音読してみると少しは改善されるかもしれませんよ。
内容に関しては、ありきたりですが、良く言えば王道。私はこういうの好きなので期待して待っております。
11.60へたれ向日葵削除
なかなか面白い作品でした。

気になる点を少々。

優曇華目線の話で、永琳とは師弟関係にある状態なのに、所々で、まるで初めて会うかのような、説明みたいなものが入っていて不自然というか、違和感を感じました。
自然な感じで、今見ている風景を写したり、優曇華になった感じで、いつもと変わらず・・・などと続けたりすれば自然な感じになるかもしれません。

余談ですが、私も高校生ですし、高校一年だから・・・っていうのは甘えにもみえるのでちょっと。
若くても凄い方はたくさんいらっしゃいますからね。

続きがあるのなら、楽しみに待っております。
16.60名前が無い程度の能力削除
ストーリーは好きですが…
鈴仙があっさりしすぎてる気がします。
作られたばかりで、副作用などはっきりしていない薬を飲んだ咲夜が倒れたのに、え…嘘… で終わりは、ちょっと冷たいよ鈴仙さん…
玉兎の受難というより、メイド長の受難な気がしなくもないです。