Coolier - 新生・東方創想話

東方X11

2010/06/30 20:34:51
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東方X戦記



第11話「天空の要塞!震える天人(前編)」
凄く大きい・・・・・・!
空飛ぶ城を近づきながら見た時、天子の第1印象がそれだった。
何せとにかくでかい。銀1色で統一され、中心にはリングが浮いている。上には何か塔みたいのが建ってある。
一体、正体が何なのかは不明だが、只一つ分かった事があった・・・・・・勇者の物かもしれない事が。
もし、そうだったら絶対に許さない。大切な衣玖を殺したあいつらを許す訳にはいかない・・・・・・!
後ろではナズーリンと小傘、一輪が付いて来ている。あまり、面識はないけど星蓮船の住人達でいい奴らしい。
何だか巻き込んでしまったな・・・・・・そう後悔しながら、天子は空飛ぶ城に近づく。すると・・・・・・。
「・・・・・・ん?」
目の前に何やら線が現れると思いきや、パカッと開いたのだ。紫のスキマだな、と天子はホッとするが・・・・・・。
その隙間から空飛ぶ船が現れたのは流石に驚愕した。
「ウェェェッ!何あれ!?敵!?」
「!?あれは・・・・・・!星蓮船!?御主人達が何故ここに!?」
「あ!?そう言えば・・・・・・。」
「何ですか小傘?」
「幻想郷を守ったり、外の世界に行く時に聖さん達に説明するのを忘れちゃった・・・・・・。」
「「あ・・・・・・!?」」
小傘の言葉にナズーリンと一輪は絶句する。その事をすっかり忘れていたのだ!
そんな3人と不思議そうな顔をする天子の前に・・・・・・雷が鳴った。
「さぁ・・・・・・貴方達の罪を数えなさい!!」
寅丸星である。
「・・・・・・星さん、何ですかその自称、「街の涙をぬぐう2色のハンカチ」という半分こ怪人のセリフは?」
「半分こ怪人はないでしょう~?あれは2人で1人の探偵・・・・・・って今はどうでもいいでしょーが!!!」
「「「ひえ~!」」」
仏の顔も3度までとはこの事である。普段、温厚(?)な星も無断で勝手に出かけている3人にもう勘弁出来ないらしい。
「すまん、御主人の事は任せた!」
「あ、ナズーリン逃げるなんて卑怯ですよ!」
「置いてかないで~!」
「あとで白骨拾ってやるから成仏したまえ!」
「尼の私が成仏されるなんてシャレにもなれませんよ!」
慌ててナズーリンが上空へ逃げようとするが・・・・・・。
「逃がしませんよ、ナズーリン!エ゛エーイ!!」、と星はアメフト大会で「すげえジャンプ力だ!」と周りに言われる程のジャンプをした美少年に化けた宇宙人の様なポーズで上空にいるナズーリンを追いかけた!もはや怒りを通り越して何かに覚醒したらしい。
「うわわっ、ご主人!よくもあんなキ○ガイポーズを!?」
「馬鹿にしないでください!もはや貴方達をぶっ飛ばしても、ぶっ飛ばしても!私の怒りは収まりません!」
「何だ、その覇王みたいなセリフは!?御主人、完全に作者に遊ばれているぞ!」
とまぁ、ポカーンとなっている天子を差し置いてト○とジェ○ーの様な追っかけっこの末、遂にナズーリンは捕まった。
「この馬鹿鼠が!御主人の私や聖様に何も言わず、勝手に外の世界へ出かけるなんて!今度という今度は許しませんよ!」
「いたたたたた!痛い!御主人、尻尾は引っ張らないで!尻尾が千切れる!」
「もはや、尻叩きではちっとも反省しそうにないので新しいお仕置きにしました!って黒とは何て破廉恥な!」
「御主人、勝手に見ないでくれ~!」
「「(そろ~)」」
「おや、お二人もそこにいたのですね♪(ニコッ)」」
「「!!??」」
2人が振り向くとそこには笑顔の星がいるが・・・・・・目は完全に笑っていなかった・・・・・・。
「少し・・・・・・頭冷やしましょう♪」
(しばらくお待ちください・・・・・・。)
「取り敢えず、ナズーリン達がご迷惑をおかけしました。」
「は、はぁ・・・・・・。」
星の背後に真白に燃え尽きた状態の小傘、一輪と顔を真っ赤にして尻尾を抑えているナズーリンを見ながら天子は答えた。
「とは言え、ナズーリン達を連れて帰れば、貴方1人では危険でしょう?微力ながらも我々も助太刀します。」
「あ、そう?んじゃ、お言葉に甘えて・・・・・・。」
知らないとはいえ、確かに1人で勇者を倒すのは危険すぎる。ここは一つ、同行させるのが1番だろう。
「あ、自己紹介がまだでしたね?私は虎丸星と言います。因みに、あちらにいらっしゃる方は聖白蓮様で、奥にはムラサ船長、その隣にいるのは鵺です。」
「私は天子。言っとくけど、“てんこ”じゃなくて“てんし”よ。」
「成程、天人は噂しか聞いていませんが、実物は初めてですね・・・・・・宜しくお願いします。」
私はレッドアニマル並か?そう相手に悟られない様に心の中でそう呟いた。あの者達は心を読む者はいないだろう、多分。
「所で、あれが勇者の拠点ですね?」
「らしいわね・・・・・・さっき見たけど、勇者の船があれに近づいたのを見たけど・・・・・・。」
「では、星蓮船で見つからない様に近付きましょう。とりあえずどうぞ。」
そう言われ、天子達は空飛ぶ船、星蓮船に乗り込んだ。少し前、霊夢達が空を飛び回ったのはこれが原因なのか?
「船長、取り敢えず勇者に見つからない様に慎重に進めましょう。」
「了解。面舵35度、目標、飛行物体・・・・・・と、それじゃあ行きますか!」
ムラサの操縦により、星蓮船は真っすぐ空飛ぶ城へと近づいて行った。
果たして、あの空飛ぶ城には何があるのだろうか・・・・・・?



かつて、キリュウは孤独の身だった。
望まれずZに作られ、体を弄られ、失敗作の様に捨てられたクローン少女。その反動なのか、殺戮を好む残虐な性格となっていた。
だが、そんな彼女は今も孤独だった。自分の周りには信頼すべき者がいないのだ。
自分が作り出した他のクローンである勇者達はあまり自分の言う事を聞かず、総帥の地位を狙う者も一部いる。
自分の思い通りに動く機械人形も彼女の心を癒してはくれなかった。
昔も今も自分は永遠に孤独だった。そして、平和に暮らす者達の存在が憎かった。
けれど、どんなに殺戮を楽しんでも残るのは屍のみで、周りには何も残っていないのは分かっていた。
あの1年前、そんな彼女を救ってくれた者がいた。チルノである。
考える事は大の苦手だが、常に真っ直ぐな性格で、純粋な精神を秘めている氷の妖精。
自分に重傷の一撃を与え、自分の魔力を秘めた鎧を身に着けながらも強大な魔力に耐えた彼女。
そして・・・・・・彼女の心も壊れかけていた。親友を失い、力に渇望し、自らの殺人に怯えた彼女。
何とかして彼女を助け出したい。自分の様にしてはいけない。心の底でそう望んで、自らの手中に収まった。
そしてZの死後、自らが総帥となり、北方勇者帝国を設立、チルノも自分に付いて来た。
彼女こそ自分を癒してくれる存在。自分を孤独から救ってくれた者。彼女と自分がいれば、もう何も怖くはない。
「(最強・・・・・・か・・・・・・。)」
Aチルノが何度も目標として言っている言葉を反芻し、キリュウはふっと笑う。全く、穢れを知らない少女だ。
「(そろそろ、わしもこれが終われば殺し合いを止めようかの・・・・・・もう疲れたのじゃ・・・・・・)」
キリュウは知っていた。彼女は純粋故に誰かを殺すのを恐れていた事を。できる事なら自分も殺戮を止めよう。
だが、こんな自分から殺戮を取ったら、何が残る?そうならない為に自分は・・・・・・。
「(彼女の為に練習しなきゃ駄目じゃな・・・・・・。)」
そう思い、キリュウはある物を取り出し、椅子から立ち上がる。この事を知っているのは自分と亜魅だけだ。
「(できれば、あやつらにも聞かせてやりたかったんじゃが・・・・・・。)」
そんな事を思いながら、キリュウはある物・・・・・・三味線を持ってプライベートルームへと移動した。



「ここが入口らしいわね・・・・・・?」
何とか空飛ぶ城の入口らしき所に着いて、天子達は取り敢えず開けようとする。しかし、扉は押しても引いても開きそうにない。
「どれどれ、何処かに・・・・・・む?何だ、これは?」
すると、ナズーリンが棒みたいな物体を発見した。試しに引いてみると・・・・・・。
ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・!大きな地響きと共に扉が開き、中を見ると・・・・・・。
「こ・・・・・・これって!?」
何と、中には大量の財宝があったのだ!
金銀、ルビー、エメラルド、サファイヤにオパール、ダイヤモンド等の宝石を始め、豪華な装飾品、更には貴族が着る様なドレスがこれでもかという程、大量にあったのだ。
「あらあら~?ここは宝庫かしら~?」
「うち(星蓮船)に負けない位の、宝の山です・・・・・・。」
聖は相変わらずだが、星達は絶句している。何せ、これだけの宝の山を目の当たりにしたのだ。無理もない。
「これって勇者とどう関係が?」
「お、恐らく勇者達は外の世界から略奪して、ここに保存しているのでは?」
何とか正気を取り戻して、ムラサが発言する。という事は、ここは空飛ぶ金庫なのか?
「な、何だか分からないけど、ここに勇者が来るならば丁度いいわ・・・・・・待ち伏せして一気に倒す!」
そう発言し、緋想の剣を構える。誰であれ、キリュウの仲間は衣玖の仇。今がチャンスの一つだろう。
だが、このままだと、まだ機械人形と戦っていないムラサと星、聖達を巻きこんでしまう。だから天子はこういう。
「聖・・・・・・私をここまで連れて行ってくれてありがとう・・・・・・あとは私に任せて。」
「・・・・・・どうするの?」
「決まっているでしょ?勇者を倒すのよ。だから、無関係の貴方達はここで下がって。」
「待ってくれ天子!」
「そ、そりゃないよ~!」
「私達は機械人形を倒した事がありますよ!それに星さん達も実力を・・・・・・!」
すかさず、ナズーリン、小傘、一輪が抗議する。
「あんた達は何も知らない!!」
もはや、我慢の限界だった。ありったけの感情を込めて、天子は声を荒げる。
「何も知らないくせにいい気になって!あんなのはまだ、序の口よ!私は知っているわよ・・・・・・あいつらの力を・・・・・・そして恐ろしさも・・・・・・!私達は神様や幽霊も殺せる敵と戦っているのよ!だから、もう誰も巻き込みたくない!誰も死なせたくない!」
「ですが、貴方1人で何ができるというのです!?返り討ちにされますよ!」
星が言うが、天子は耳を貸さない。
「いいわよ!私は1人でも戦う!戦って、戦って・・・・・・1人でも多く、あいつらを道連れにしてやる!」
そう叫んだその時・・・・・・。
「天子さん・・・・・・。」
「何よ・・・・・・!?」
突如、聖に言われ、天子が振り向くと何と彼女は天子にギュッと抱きしめる。
「な・・・・・・何よ!?」
「天子さん、そんな寂しい事は言わないで・・・・・・貴方がどんなに辛いのかは私達には分からないかもしれない・・・・・・けど、そんな事で貴方が死んだら、誰かが悲しむわ・・・・・・。」
「・・・・・・私にはもう誰も信頼できる者はいない・・・・・・衣玖はもういないのよ・・・・・・。」
「違うわ・・・・・・貴方にはいっぱい友達がいる・・・・・・私達やあの赤い巫女さん達が・・・・・・。」
「!?な、何であんな奴の事・・・・・・!?」
そう言って天子は霊夢の事を思い出す。かつて、自分が起こした異変に真っ先に駆けつき、自分をコテンパンにしたあの脇巫女。
だけど、不思議と親近感が湧いてしまう・・・何故か自分は1人だという気持ちがなくなってしまう。
「私達にできるのは少ないけど、きっと貴方達を支えてあげる・・・・・・貴方は決して1人じゃないわよ。」
「・・・・・・聖とかいったわね?私は・・・・・・。」
「辛い事を1人で背負いこもうとするのは駄目よ。今は皆で頑張りましょう・・・・・・ね?」
「・・・・・・そうね、分かった。だけど、私も無理しないから、貴方達も・・・・・・。」
「ええ、分かったわ♪」
しどろもどろに言う天子に対して、聖はニッコリほほ笑む。どうやら、ギクシャクした雰囲気は吹っ飛んだらしい。
何はともあれ、一時はどうなるかと思ったら、次の難題が・・・・・・。
「・・・・・・あれ?」
「どうかしましたか、ムラサ?」
「・・・・・・鵺がいない!?」
「「「えぇっ!?」」」
どうやら、またもや事件が発生したらしい。



「・・・・・・ふん・・・・・・。」
一方その頃、鵺はどこか知らない所で拗ねていた。原因は天子に対する嫉妬だった。
見る限り、威張り屋で強情、我儘きれつ極まりなく、その上、頑固な彼女には今一つ好きになれなかった。
星蓮船の一件以後、鵺は人見知りが激しいので、霊夢とかの新参者に心を許すつもりがない。
トドメとなったのがさっきの状況で、聖がそんな彼女に抱きついた事。あんな天人に抱きつく聖の心情が分からなかった。
「あの天人、嫌い・・・・・・。」
そう呟いてブツブツ歩いていると、
「・・・・・・あれ?あれって・・・・・・?」
よく見ると、人が大勢いるのを発見した。しかし・・・・・・
「・・・・・・さっきの天人・・・・・・・・何か違う・・・・・・変なのもいるし・・・・・・。」
確かに、雰囲気は天子のような雰囲気だ。
だが、体は大人びており、顔は見られないが目の部分にはサングラスらしき薄い色のバイサーをかけていた。おまけに何かうねうねした衣を付けている。髪はロングで青と言うより、少し紫がかかっている。そして周りには見た事のない者達が。
「(あの周りって人形みたい・・・・・・もしかしてあれが噂の機械人形と勇者?)」
始めて見る者達に鵺は戦慄する。あれが敵?何かいまひとつ、釈然としない。
そんな鵺に見られているのに気付かず、勇者らしき女性は何かを探しているらしく、辺りを見回している。
そして・・・・・・。
「・・・・・・これです。」
そう言い、壁のカバーを外して何やら番号を入力すると、何と壁の中から扉が出てきたのだ。
「(こんな仕掛けがあったなんて・・・・・・!?)」
鵺に気付かず、勇者は満足そうに独り言を言う。
「この扉の向こうには例の物が・・・・・・!どうやら、キリュウも旧式の者達もこの天空の要塞に気付いてないようですね・・・・・・何も知らないとは残念です・・・・・・まさか、この要塞が世界を統治する力を持つ兵器を搭載している事を知っているのは私だけですね。」
「・・・・・・なっ!?」
勇者の言葉に鵺は絶句した。世界を統治する力を持つ兵器?よく分からないけど、危険であるのは確かだ。
思わず、声を出したけど少し遠いし、小さな声を出したから大丈夫と思ったら、勇者が振り向いて・・・・・・
「聞きましたね、貴方っ!」
「!?」
何という地獄耳!勇者のバイザー越しの殺気に鵺は思わず、逃げ出す。それを追おうとする機械人形。
「!撃たないで!捕らえるのです!」
鵺の姿を見た勇者は機械人形にそう指示し、一気に超高速で鵺の羽(?)を掴む。
「あう・・・・・・!」
「これは、これは、平安京を騒がせたと言われる妖怪ではありませんか?是非、見せたい物があるのです・・・・・・。」
そう言って、勇者はニヤリと笑った。



捕まった鵺と機械人形を引き連れ、勇者は先頭に立って歩いている。
そして途中にある色違いの床に全員止まり、何やら操作するとその床が下降し始める。謎の仕掛けに驚く鵺。
「・・・・・・これは一体・・・・・・!?」
「要塞の中枢です。城など只の飾りにすぎません、旧式にはそれが分からないのですよ。要塞の力は全てここに結集しています。」
そんな鵺に対し、勇者はまるで知っているかのように説明する。
床の下降が終わり、目の前にまたもや扉が自動に開く。振り返り、勇者は機械人形に指示する。
「・・・・・・貴方達は武器庫に向かいなさい。要塞の装置さえあればそれで強化することは可能でしょう。」
その指示を聞き、動く床で来た道を戻る機械人形。
「ここから先は世界の統治者しか入れない聖域なのですよ。」
「聖域・・・・・・?」
そうして、扉が開いて中を見た勇者と鵺だったが・・・・・・
「・・・・・・!?何ですかこれは!?」
そこには、埃まみれの物体があったのだ。鵺には分からなかったがどうやらコンピュータが大量に並んでいたのだ。
だが、まるで古くから使われなかったかの様に埃が積もり、壁や床などはすでに変色していた。
「まさか、私の予想以上に古い時代に作られていたなんて・・・・・・!?」
驚きつつも埃を払う勇者。何とか調子を取り戻し、バイザーを弄っている。
「一段落したら匠に連絡して、全てリフォームしなくては・・・・・・来なさい、こっちです。」
そうして数時間後、またも古い扉に着いた2人だったが、もはや完全に錆ついているらしい。
「ここもですか!?・・・・・・な、何のこれしき!」
その錆つきに驚きながらも壁の中の物体を開け出し、何やら操作するとまたもや扉が開きだす。
開くとそこには・・・・・・球体の巨大な物体がとてつもなく広い部屋の中央に存在していた。
「ありました!何と・・・見なさい、最古のコンピュータを。素晴らしい・・・・・・数千年前からの眠りから統治者を待っていたのです!」
「数千年前?」
「貴方の様な妖怪にはそんな事には疎いのですね?」
そう言って、勇者はコンピュータを操作し始める。すると、何処からか羽虫が現れ、集り始める。
「っ!は、はわわ・・・にゅふっ!」
その羽虫に気付くと勇者は何やら変な声をあげ、慌てて羽虫を払おうとする。余程の虫嫌いらしい。
それにしても今のセリフは猫か?
「・・・・・・読める・・・・・・読めますよ・・・・・・!」
コンピュータを操作しながら只事じゃない雰囲気を持つ勇者に鵺は恐る恐る尋ねた。
「・・・・・・貴方は一体、誰なの?」
「・・・・・・私にはコードネームがあるのですよ、鵺・・・・・・私の名は永江・真領娘・天玖・・・・・・またの名を天空勇者・天玖です。」
「っ!!」
その長い名前の中に聞き覚えのある言葉が出てきたので、鵺は絶句した。天玖の意味って・・・・・・。
「総領娘は総領の娘、真領娘はそれに次ぐ位を持つ者。そして永江は龍宮の使いの証・・・・・・お分かりですか?私は幻想郷の天人、永江衣玖と比居名天子のクローン、天玖なのです。」
衝撃的な発言に鵺は言葉を失った。『衣玖』という単語は確か、天子が言っていた。
まさか、あの嫌いな天人のクローンが彼女だったなんて・・・・・・。今の彼女はその思いで一杯だった。



「鵺、どこに行ったのだろう?」
「ここは敵地ですし、もしもの事があったら・・・・・・。」
一方、天子達はいなくなった鵺を探しに要塞を歩き回っていた。
幸い、機械人形に出くわす事はなかったが、ここは敵のど真ん中。何が起こるか分からない。
「全く、この忙しい時に何やっているのよ・・・・・・!」
イライラしてブツブツ言いながら天子は鵺の行方を探してみた。その時・・・・・・。
「・・・・・・むむ?」
「どうしました、ナズーリン?」
「この臭い・・・・・・この壁の中から鵺の臭いがするんだ、ご主人。」
「は?どう見たってここ壁よ。」
確かに一見、只の壁に見える。この中に鵺がいるとは信じがたい。
「・・・・・・もしかして、鵺は何かの装置でこの中に?」
「それじゃ、どこかに開く装置が?」
「どこでしょうね~?」
「ああ、もう!そんなんじゃらちが明かないから派手にぶっ壊して入るわよ!」
何時までもこんな所でモタモタしている暇はない。もう我慢の限界だった天子が叫びながら、緋想の剣を構えようとする。
その時・・・・・・
『天子君・・・・・・そんな事をしなくても入れますよ?』
「「「っ!!??」」」
聞きなれない声がどこからか響き、一同は身構える。まさか・・・・・・。
「その声は・・・・・・勇者なの!?出てきなさい!」
天子が叫ぶと同時に、
ゴゴゴゴ・・・・・・
「「「「!?」」」」
突如、辺りが揺れ始める。無論、ここは空飛ぶ城なので地震とは言えないが。
すると、振動と同時に天子達が座っていた床が下降し始め、何と壁だった所から扉が出てきたのだ!
「・・・・・・」
あまりの状況に流石の天子も絶句していた。ずっと扉を凝視している。
『さぁ、何を躊躇うのです?中へお進みください。』
その謎の声に天子は我に返る。
「っ!い、言われなくても入ってやるわよ!皆、行くわよ!」
「天子さん、待って~。」
「と、取り敢えず、聖様に続きましょう。」
「そ、そうね・・・・・・。」
天子を先頭に、聖達も後を追う。どんどん先を進んでいくうちに、何やら広い場所に辿り着く。
「?な、何なのよ、ここ・・・・・・勇者、出てきなさい!」
外の風景も見渡せる展望台の様な場所で天子は叫んだ。その時、
『・・・・・・お静かに!』
そんな声が響くや否や、天井から勇者5号・・・・・・天玖と鵺が現れた。その2人を見て、一同は驚く。
「!?鵺!?」
「何でそんな所に!?」
「って言うか貴方は誰!?」
そう騒ぐ聖達を見下ろしながら、天玖が発言する。
『言葉を慎みなさい。貴方達は今、次期総帥である天空勇者・天玖の前にいるのですよ。』
その言葉に星を始めとする一行は驚くが只一人、天子だけはまるで予想していたかの様子で天玖を睨んでいた。
「名前からして、私と衣玖のクローンのようね・・・・・・!貴方の目的は一体何なの!?」
天子の言葉に答えるかのように不敵な笑みのまま、天玖は続ける。
『これから“要塞”の復活を記念して、貴方達にその力を見せようと思いましてね。』。
そう言って、天玖はある物を取り出す。それはこの時の為に作った、テレキネス装置だった。
細かく言えば、考えるだけでコンピュータ等を動かせる様な物である。
「・・・・・・“要塞”?」
『見せてやりましょう・・・・・・要塞の原子力を!』
そう言って、何やら腕に付けたテレキネス装置で操作する天玖。その時、振動が格段と大きくなり・・・・・・
ビュン!
「「「え・・・・・・?」」」
何やら、自分達がいる床の下にあるらしき物体から巨大な弾幕らしきものが出て来て、下へと落ちる。
その下には・・・・・・人々が何も知らずに生活している街があった。高速に落ちていく光の球。
「「「え・・・・・・?」」」
天子達がその状況を整理しようとすると・・・・・・
凄まじい音と閃光と共に・・・・・・街が消えた。
「「「・・・・・・え・・・・・・!?」」」



「!街が・・・・・・!」
やっと状況に追いついたものの、衝撃的な場面を見て、天子達は絶句した。
「そんな・・・・・・どうして・・・・・・?」
天子の隣には青白い顔で聖が膝をついた。その表情には今までと違い、恐怖と悲しみが入り混じっていた。
無理もない。あそこには外の世界の人間が住んでいたのだ。生きていたのだ。命があったのだ。
それが一瞬にして奪われてしまった。例え関係のない者でもその死に過剰に反応してしまう、それが聖なのだ。
街をふっ飛ばし、奇妙な形の雲を見ている一行に天玖が説明するかのように言う。
「第2次世界大戦で広島と長崎に落とされた原子爆弾の改良型ですよ・・・・・・当時の日本の人間は『ピカ』とも言われていましてね・・・・・・・・・。未だ改良中ですが、全世界は我々、北方勇者帝国に平伏するでしょう・・・・・・最強のショーだと思いません?」
自らの「殺戮」に満足しているらしく、天玖は言葉の出ない状態の鵺の隣でこう告げたのだ。
この言葉で天子はもう我慢の限界だった。
「あんたって人はぁぁぁぁぁ!!」
天子は振り向きざまに緋想の剣を振い、弾幕を放った。しかし・・・その弾幕は天玖の顔に向かったもののすり抜けてしまった。
天子達は知らないが浮かんでいる天玖達は立体映像であり、本人達はコンピュータ室にいるのである。
「!?攻撃が通じない・・・・・・!?」
立体映像だという事に気づかない天子に対し、天玖は苦笑した。
『・・・・・・貴方達の時代遅れと下等な知能には心底、うんざりさせられます・・・・・・』
そう言って天玖は何やら、テレキネス装置で操作しようとしている。それを見た鵺は
『・・・っ!』
何と、彼女は天玖に体当たりして彼女の操作を阻止する。慌てて体制を整える天玖。
『聖、逃げて!』
「鵺ちゃん!?」
そう叫ぶ鵺を天玖は突き飛ばし、
『死になさぁぁぁぁい!!』
天玖が操作した瞬間・・・・・・天子達の床が消滅した。
「「「・・・・・・なっ!?」」」
驚いている間にも落下してしまった天子達。
『はっはっはっはっは・・・・・・』
それを満足そうに見て笑いながら天玖はホログラム装置をOFFにした。



「さて・・・私をあまり怒らせないほうがいいですよ・・・・・・!」
「うっ・・・・・・!」
ホログラム装置を切った天玖は真っ先に鵺の胸倉を掴み、突き飛ばす。
「当分、2人きりでここに住む予定ですからね・・・・・・。」
そう呟くと天玖はモニターを出して外の様子を探る。見るとそこには天子達が映っている。
天子達はあのまま落ち続けたものの何とかして体制を整え、星蓮船に乗り込んだ。
「おやおや、さっさと逃げればいいものを・・・・・・」
そして星蓮船はまっすぐこちらに向かっている。
「ははぁ、私と戦うつもりですか?」
それを見て、鵺は必死に腕を縛っているロープを解こうとする。見た所、彼女はモニターに凝視している。
脱出するには今しかない・・・・・・!



「取り敢えず、あの城が敵の巨大な武器みたいである事は分かった・・・・・・問題は鵺と言う妖怪ね。」
「は、はい、何とかして助けなくては・・・・・・。」
星蓮船で何とか体制を整えた天子達はこれからの状況を整理した。
一つは鵺の救出、そしてもう一つは空飛ぶ城の破壊、である。
勿論、鵺を助け出す事が最優先だが、あの城を放っておくのもいかなかった。
何せ、街一つを消滅させる程の威力を備えているのだ。このままだと、北方勇者帝国の攻略が難しくなる。
「・・・・・・どうやったらあの城に忍び込めるかが問題ね・・・・・・。」
天子がそう考えていると・・・・・・。
「?あれは何かしら?」
ふと、小傘が何かを発見したらしく声を上げる。他の一行もその方向をみると・・・・・・
「っ!?あれは幻想郷を襲った機械人形!?」
「あれが勇者達の配下である機械人形ですね?」
「でも何か変わっていない?」
小傘の言う通り、確かにこちらに向かっているのは勇者の配下である機械人形の大軍であったが、外見が少しスマートになっていた。
背中には翼があり、手には大筒らしき物を持っていた。確か、機械人形は自力では飛べず、空飛ぶ船に運ばれていたが・・・・・・?
「ま、まさか・・・・・・あの天玖の専用機械人形!?」
そう確信して天子は戦慄した。まさかあのクローンにそのような技術があったとは・・・・・・!
そうこう考えている間に空飛ぶ機械人形が攻撃を開始した。手にしているバズーカで星麗船を狙う。
元々、星蓮船は聖達の移動用であり武器と言うものはなく、防御力も紙一重である。
そんな星蓮船がバズーカの直撃を受けたら一たまりもない。慌てて回避しようとするムラサ。
「ちょっと船長!敵の弾幕が近付いているんだけど!」
「近づいている・・・・・・?そうか、機械人形が放っているのはホーミング弾なのか!?」
「あわわ、何とかしてくださいよ~!」
すっかり意気消沈の聖を守るようにして星も慌てて言う。しかし、そうこうしている間にも敵の攻撃は続いていた。



「っ!チルノ、そいつは何者だ!?」
一方、北方勇者帝国本部でも問題が起きていた。お空を始めとする幻想郷の住人達に負けて帰って来たザリク、美優、スィガ、レグリンの前に任務を終えたばかりで謎の人物を連れてきたAチルノが現れたのだ。
「博麗霊夢のクローンかな~?」
「この邪気は・・・・・・只者じゃない、悪そのものだ・・・・・・!」
「本当は誰かさんが化けたのでは?」
口々に言い、警戒する勇者達に対し、Aチルノはこう答えた。
「んと・・・・・・紅姉ちゃんの知り合いっぽい闇の巫女。」



続く

次回:「星蓮船、撃沈!その衝撃な出来事にショックを受けながらも一人、立ち向かう鵺。何とかして天空勇者、天玖を倒そうとする天子。一方、勇者帝国では総帥キリュウの前に闇の巫女、博麗霊牙が現れた!次回、『そして私は・・・震える天人(後篇)』」
少し遅れましたが、お久しぶりですZRXです。
梅雨時で暑い日々が続きますが、皆さんはお元気でしょうか?
次回は天子編の後篇です。
ZRX
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コメント



0.340簡易評価
9.10名前が無い程度の能力削除
帰ってくれwwwwwwwwwwwwwww
10.100名前が無い程度の能力削除
もう辞めたかと思った…
その心意気やよし!!
12.10名前が無い程度の能力削除
ここまで続くと、呆れを通り越して感心するしかなくなるね。

一応、見ないだろうけど、念のため、期待せずに、致命的な誤字報告。
ぬえの名前は平仮名で「ぬえ」であり、漢字じゃねーのですよ。
26.10名前が無い程度の能力削除
帰れw
28.10名前が無い程度の能力削除
さすがZRX氏クオリティwwww
さっさと帰れwwwww
30.100名前が無い程度の能力削除
>梅雨時で暑い日々が続きますが、皆さんはお元気でしょうか?じゃねえよwwww点数やるから帰れwwww