Coolier - 新生・東方創想話

女神と羽が降る街  第二話

2010/06/25 23:11:01
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幻想郷に戻って来た時は、そこは真昼間だった。

穴の向こうの世界は全くの真夜中だったから。

あそこの世界とは12時間も時差がある事に気付いた。

どこか遠い国なのだろうか?

だが、どうしてあそこにも奇妙な事が常識となっているのだ?

魔理沙と霊夢は僕の事を必死に探していたようで、僕が帰って来た時は

僕に説教をして帰って行った。

僕はまた一人に時間になり、持って帰った本を読んでみた。

だが、全くと言っていいほど本の文字は解読できなかった。

前に読んだ時は全て読めたはずなのに、

だが、これではもう暇は潰せないので、やむを得なく店の本を読んだ。







そして夜がやってきた。

僕が言った通り時差が12時間程だったら、穴の向こうの世界は今は朝の8時辺りだ。

とりあえず今行った方がいいだろう。

下手に遅刻をしたらぎゃーぎゃーうるさそうだからだ。

そういえば、あの少女は外見は違うものの、中身は魔理沙に似ていたような気がした。

口調は少し違うが、

だが、どうでもいい事なのでさっさと草薙の剣を持って穴の中に入っていった。

僕が人間だったら、時差ボケで倒れているかもしれなかった。











穴の向こうの街は、相変わらず羽が降っていた。

女神が降らす、白く美しい羽が。

どこで待ち合わせをするのかはわからなかった。

というよりも昨日、全くその打ち合わせなどしていなかったからだ

とりあえず女神が彫られてある橋の方に向かった。

橋の上から眺める、流れる水が美しいからだ。

水の上に優しく落ちる羽がなんとも幻想的だった。

元々、非現実な村に住んでいる僕だが、この街はより一層幻想的に見えたのだ。

街全体に落ちるこの羽を静かに眺めていると、それを妨害するように少女の大声が聞こえた

『あ――――――!!居た―――――!!!』

それは、昨日会ったばかりの赤い髪の少女だった。

昨日と同じ、短いズボンを穿いている

『なによ!!ずっと一生懸命探してたんだから!』

少女は半ば泣き顔で僕にすがりついていた

『待ち合わせは9時辺りじゃなかったのか。』

『もっと早く来てくれたっていいじゃない!』

少女はしかめっ面で僕から目と同時に首も逸らし、頬を膨らませていた。

その表情を見た僕は、なんとも面白い顔だと笑った。

『ほら!!早く行こう!練習練習!』

そう言って少女は僕の袖を引っ張ってどこか分からない方向に連れていかれた。




たどりついた先はいくつも棒が刺さっている空き地だった。

定期的にならんでいるその棒は、なんとも不気味さを放っていた。

『なんだこれは』

僕が質問すると、彼女は笑顔になっていた

『何回も練習できるようにしたんだよ。』

彼女はそう言いながら、木刀を取りだした。

まさか自分はものすごい力を持っているとでも言いたいのだろうか。

『そうか。その欲を持つ事は感心しよう。』

少女にそう伝えると、少女は嬉しそうな顔をした

『まずは、その木刀で試し切りをしてくれないか』

僕は少女の刀の使い方をよく拝見できるように、試し切りする棒の前に立った

少女は刀を持つと、両手で木刀を持ち、最初の構えをしながら、

片足を上げて、木刀を振り上げて、水平方向に振った。

棒には当たったものの、すぐに元の位置に戻ってしまった。

『どう!?どうだった!?師匠!!』

少女は輝かしい目で僕の顔を見た。

『うんそうだね。野球選手にでもなったらどうだ』

僕は真剣にそう言った。

だが、少女は反発して僕に怒りだした

『私は闘うために刀を振るの!!遊ぶ為じゃないのよ!!』

『その振り方はどうみても野球選手の振り方だ』

そうだ。さっきの打ち方………もとい斬り方は本来とは全く別の使い方だった。

まずは刀の使い方を一から教える必要があるようだ。僕はため息をついた

『まずは刀の持ち方だなが、持ち方が逆だ』

僕がそう教えると、少女は刀の刃の部分を下にして柄の部分を上にして持った

『そう言う意味じゃなくてだな……………』

僕はため息をついた。だが少女は何が間違っているのか分からず、僕に答えを要求してきた。

『右手と左手の位置が逆なんだよ』

僕がそう言った後、少女は持ち替えたのだが、

『かえって持ちにくいわよ。』

と反論してきた

頭が痛くなってきた。

















結局、日が暮れるまで彼女の修行と言う物を教えるはめになった。

だが、少女には疲れると言う表情は無く、僕が終わりと言うと不満の声を言ってきた。

なぜこんなに、こんな刀の修行にこだわるのか、よく分からなかった

そういえば、昨日もサイレンが鳴ったが、今日もなるのではないだろうか。

少女のその事を聞いてみると

『大丈夫よ。いざとなれば師匠が助けてくれるんでしょう?』

そんな約束をした覚えはない。

だが、確かに襲いかかってきたら助けそうだ。

だが、こいつの修行に付き合わされた上、あの化け物をまた退治しなくてはいけないとなると、果たして僕の体が持つかどうか

と言う訳で、今日は修行を止めてさっさと家に帰ることにした。

だが、少女はしつこく僕を帰らせないようにした

『そうだよ。私の家に来ればいいじゃない!私だってまだ習いたい事山ほどあるんだもん!』

少女が明るそうにそう言った。僕は苦虫を噛んだような顔をしてさっさと穴の方角へ歩きだした。

『何よ!!か弱い乙女を一人ほっとくつもり!?』

少女が怒鳴っていたが、僕は聞こえないふりをした。

当然、少女は僕について来た。

僕はため息をつきながらそのまま穴の方角へ歩いた。










そこには穴が無かった。

朝方にはあったはずなのだが、もう無かった

どういう事なのだ!?

僕は穴があった壁を壊そうとしたのだが、

壊してもそこにはただ壊した部分の物質が向こう側を照らしているだけだった。

『どうしたの?師匠?』

少女が心配そうに僕の顔を覗き込んだ。

その時、サイレンが鳴った。

一瞬で少女の顔が強張った。

小さな悲鳴を上げると、僕にしがみついてきた。

どうやら僕は完全にこの世界に閉じ込められたようだ。

空からより一層、落ちてくる羽の量が増えた。

それと一緒に羽ばたく音が聞こえた。

上を見上げると、白い布を被ったシスターのような生物が降りてきた。

だが、そのシスターの顔には口しかなかった。

僕は舌打ちしながら腰につけていた草薙の剣を引き抜いた。

一閃すれれば、その一閃の先の魔物は真っ二つになり、砂になった。

それを見た少女は、感激するように僕の姿を見た。

『いいか。絶対に僕の近くに居てくれよ』

僕はそう言うと、少し離れていた少女は僕の背中を掴んだ

後方から空気を感じた。

振り向くとそこには魔物が飛んで僕の方に向かってきた。

僕はまた一閃を放ち、その魔物を真っ二つにした。向こうに居た魔物も巻き添えを食らった

少女は歓喜の声を上げていた。

『ねぇ!私も師匠みたいにそんな剣触れるかなぁ!?』

僕は何も答えなかった。

何を答えればいいか分からなかったし、今はそれどころではないからだ。

いつの間にか囲まれていたのだ。

前にも魔物、後ろにも魔物が居たのだ。

だが、少女の顔には一切の曇りはなかった

僕が守ってくれると思ってるのだろう。勝手な奴だ

だが、確かに守らなければ後味が悪いな。

『アリア。しゃがんでろ』

そう言えば、今日初めて少女の名前を口に出した。

アリアは僕の言うとおりしゃがんでくれた。

魔物は、じりじりと僕たちの方に向かってきた。

ありがたかった。

容赦なくふるまわせるからだ。

僕は、その剣を持って左足を浮かせ、右足を軸にして回転した。

その瞬間、周りの魔物はどんどん真っ二つになり、全てが砂となった。

少女が顔を上げると、とてもうれしそうな顔をした。

これで状況はようやく落ち着いた。

僕はため息をつくと、またサイレンが鳴った。

これで魔物は襲いかかって来ないだろう。僕は一安心した。

『ありがとうございました!師匠!!』

アリアは嬉しそうに声を張り上げて叫んだ。

また昨日のように銃を向けられるのではないか心配したが、誰も外に顔を出して居ないため、助かった

これで、ようやく夜の空を楽しむ事が出来る。

サイレンの後がめんどくさい為、最初は帰ろうと思ったが

帰れなくなった以上、今はこの青い星の夜空を楽しもうと思った。

いつの間にか、羽は振っていなかった。

『師匠?帰らないの?』

アリアが僕の顔を覗き込んだ。

美しい景色の前に少女の顔が近くに来たのだ、僕はビックリして後ろにのけ反った

だが、すぐに持ち直してアリアの質問を返した。

『ああ。急な事情で帰れなくなってね。』

僕がそう言うと。アリアはだんだん嬉しそうな顔になってきて

『それじゃぁ私の家に来る?』

と質問した。

どこを探しても宿屋が無いこの街では、僕は野宿するはめになるだろう。

そう察した僕は、彼女の提案に渋々賛成した。

するとアリアは小さい子供のようにはしゃぎ、両手を上にあげて走り回っていた。

『それじゃぁ!!それじゃぁ!!早く行きましょう!!』

少女はそう言って僕の手を引いて走った。

体力の無い僕を拷問するように走って行った。














少女の家にたどり着いた。

『ここが私のお家だよ。さぁ!!また修行やろう!!』

アリアの家は、家と言うよりも宮殿に近かった。

この宮殿の中を見て少し戸惑ってしまったが、アリアを見て何か納得した

なるほど、この子をこんなに我がままにしたのはこの家の環境のせいだな。

『どうしたの?師匠』

少女は少し心配そうに僕を見た。

『素晴らしい家だな。君の親は資産家か何かか?』

僕はそう質問すると、少女は笑いだした。

『違う違う!ただ土地だけを無駄に巨大に買って家を作った結果だってば!』

と少女は言った

こんなに巨大な家をこんな少女が作ったのか?

『だから私の家には普通の民家と同じくらいのお金しかないよ。』

と、少女は笑顔で僕の手を引いてどこかへ連れて行こうとした

『ほら!!まずは私の家族を紹介するね!』

アリアはそう言うと、綺麗な扉の前に立って、取っ手を乱暴に回した。

『この人が私のお母さん!!』

アリアが紹介した母親と言うのは、まるで見た目の年齢では僕と変わらないくらいの若い女性だった。

ただ気がかりなのは、アリアと違って髪の色が青色だと言う事だろう。

また、アリアとは対照的で、何もかもが弱々しい雰囲気だった。

『おかえりなさい。アリア』

『ただいま!!』

アリアは元気いっぱいに母親に挨拶をした。

母親も笑顔で対応したのだが、病気がちなのか、か弱く小さな声でささやいて話をしていた。

『その人は誰?』

『この人は私の師匠!!剣を教えてもらってるの!!』

アリアが僕を紹介すると、僕も彼女にお辞儀をした

『アリア、悪いけどお客さんにお茶を持ってきてくれないかしら?』

『はぁい。』

アリアは普通に対応して、この部屋から出ていった。

アリアの母親は、僕に視線を向けて、微笑んで口を開いた。

『どうも、あの子が世話になっています。ご迷惑をおかけしてすみません。』

本当にあの少女の母親とは思えないくらい上品な女性だった。

『いえ………僕の周りにはもっと厄介な人達が居るので気にしていませんよ。』

と返すと、母親は少し寂しそうな顔をした。

『剣術ですか。あの子もそんなにたくましくなりましたね。』

母親は、上の空で語っていた。

『あの子を産んでからもう14年が経ったわねぇ。最初はあの人も死んでから不安だったけど、もう不安がる事はないわね。』

父親は死んでしまったのか。

その事実を知ると、僕は少し寂しい思いになった。

『私があの子を産んだ時は12歳だった。いつの間にかあの子も私が母親になった年を過ぎてしまったわね。』

その言葉を聞いて僕は耳を疑った

12歳でこの人は母親になったのか!?

だが、これがこの世界の常識なのだろうか。

つくづく混乱しそうな常識を目の当たりにして、いつの日にか発狂するだろうか。

『私も、もう長くは無いからね…………。』

『そうですか。まだお若いのに悲しいですね………。』

『いえいえ、もう26年も生きてきましたから。』

26年。あまりにも短すぎると思った

『大丈夫ですよ。弱気にならないでください。その若さならまだまだ生きられますよ。』

元気づけたつもりだが、彼女が元気になる気配はなかった。

だが、くすりと笑ってくれた。それが僕の励ましと関係あるのかは分からないが

『お師匠さん。私が死んであの子が一人になったら、あの子の事よろしくお願いいたしますね。』

『何、無責任な事を言ってるんですか』

僕がそう言うと、アリアがこの部屋に向かって走って来ているのを感じた

『師匠!!お茶を持ってきました!!』

と元気よく扉を開けて、お盆に載せたお茶とお菓子を僕の隣に置いた。

だが、今はこんな物を飲むような雰囲気ではない。気分ではない。

僕はそれを口につけずに、ただじっと床を見た

『師匠?飲まないの?』

アリアは早く飲めと言わんばかりに僕の顔を見ていた。

だが、僕は結局お茶を飲む事はなかった。

僕が立ちあがると、アリアは嬉しそうに僕の手を引いてどこか連れていかれた。

『まだまだ習いたい事はたくさんあるんだよ!!』

どうしてアリアは母親があんな状態だと言うのにこんなに平気でいられるのだろうか

もうあきらめているのか、母親を愛していないのか

できれば後者ではない事を望みたい。

だが、母親を僕に紹介する時点でそんなに嫌っている表情でも無かったが。

でもアリアは、僕にまた何か習おうと輝いた目つきで僕の刀を見た。

早く握って振りまわしてほしいのだろうか。

被害者が出るぞ。僕は心の中でそうつぶやいた

















『香霖?』

店の中にはどこにも香霖は居なかった。

『魔理沙!霖之助さんは居た!?』

霊夢も必死に探しているのだが、どこを探しても見つからない。

店の中には居ないのだろうか。

だが、霊夢が言うには無縁塚にも居ないらしい

『一体どこに行きやがったんだってんだ』

私はそう吐き捨てると、再び店の中を創作することにした。

だが、やっぱりどこにも居なかった。

本棚の後ろ、引き出しの中、トイレの中、マッチ箱の中で至る所は全て調べたが、

香霖らしき人物は見当たらなかった。

『くそっ!!』

誰かにさらわれてしまったのだろうか。

だとすれば大変な事件だ。

紫に相談するべきだろうか。

そう思っているとき、後ろから紫の声がした。

『うわぁぁぁ!!!』

私はビックリして拍子抜けすると、紫が慌てたような表情で私達に確認した

『ねぇ!?霖之助さん知らないかしら!?』

『知らないわよ!!私たちだって探してるんだから!!』

霊夢はそう言うと、紫はため息をついて顔に手をやった。

『おい、何かあったのか?』

嫌な予感がした。

私は聞きたくないと心の中では思っていた。

だが、口が勝手に動いたのだ。

私は、この口を恨んだ。

その時、紫の口が動き出した。

それは、私達にとっては何もかもが恐ろしい答えだった

『霖之助さんの気配が完全に消えたの』

霊夢は膝から崩れ、絶望したかのような表情だった。

『嘘だろ………おい!!!!』

私はそう紫に問うと、紫は首を横に振った

『居るはずだ………どこかに居るはずだ!!!』

私は再び香霖堂の中を調べた。

だが、いくら探しても同じだった。








『香霖…………どこに居るんだよ…………』

いつの間にか、辺りは夜になっていた。

香霖堂の中はぐちゃぐちゃになっていた。

本や商品が散らばっており、本だなも空になっている。

私は体育座りをしながら、部屋の端にうずくまった。

『香霖…………』

私はそうつぶやくと。霊夢が私の肩を叩いた。

『帰ろう。』

弱く、哀しみが混じったその声は、今にも折れそうな声だった。

『大丈夫よ。明日には帰って来るわ。』

と、確信の無い事を言っていた。

だが、私はこの場を動かなかった。



その場では沈黙が続いた。



いきなり消えた香霖堂の店主の事で、頭が混乱している事もあり、

悲しくなっている事も混じっていたのだ。

霊夢と魔理沙は、何も語らず部屋の中でうずくまった。

窓から風が入ると、そこからは寒い風が吹いていた。

『もうすぐ冬ね』

霊夢がそうつぶやくと。また暗い雰囲気がその場に広がった。

魔理沙がため息をつくと、自分に冷たい風が当たっている事を感じた。

そして、顔に何かふわりとしたものがくっついたのを感じた。

それを手に取ってみると

『羽……………?』

白い羽が私の顔に突進してきたのだ。

だが、そんな羽は今はどうでもいいのではないか。

私はため息をついてその羽を放り投げた。

その羽は、ふわりふわりと下に落ちていった。





掛け軸が風で揺れていた。

紙が壁にこすれる音がして、少し不快感を味わった。

最初は無視をしていたが、次第に限界が近づいてきた

『魔理沙、その掛け軸剥がしてくれないかしら?』

霊夢がそう言ったので。私はその掛け軸を剥がした。

剥がした後、何か違和感があった。

何か、白いものがその壁にあった。




私は驚愕した。

『おい霊夢。』

『何よ。』

私は、ミニ八卦炉を壁に向けた。

『何をする気?霖之助さんに怒られるわよ』

霊夢がそう言っていたが、私はそれを無視した。

この壁には、何かが存在すると確信したんだ。




















白い羽が壁に半分埋まっていたのだから
まさかの第二話です。
見どころ……………ないかもしれませんね。すみません。
第三話では多分存在するかもしれませんので、よろしくお願いします
ND
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コメント



0.820簡易評価
8.100ななろく削除
続きキター!!
26歳で寿命••••••転生の術のような短さだ。
これも何かの伏線でしょうかね。むむぅ展開が楽しみです
10.100名前が無い程度の能力削除
連載も面白いですね
18.無評価名前が無い程度の能力削除
これは酷い……。
なんというか、面白い面白くないという次元で語られるレベルですらないよ……。
20.無評価ND削除
まぁ、今回の話は見どころは特にありませんので。仕方ないです
26.100名前が無い程度の能力削除
ありまくりだろjk