Coolier - 新生・東方創想話

しりとり

2010/06/19 11:49:36
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暑い日差しが幻想郷中に溢れる昼下がり。
気温は一日の中で最高となり、子供たちはそんな暑さなど関係無しに外で遊んでいる。
それに対し、大人達は暑い中での畑仕事に専念している。

その頃、神社では、一人の少女、霊夢が暑い暑いと嘆いていた。
傍らには湯のみがあり、微かに湯気が立ち昇っているのが分かる。
足元には大きな桶があり、その中には冷たい水が満たされている。
時折足をばたつかせ、ばちゃばちゃと水が踊る。

空を見上げると、真っ青な空が何処か涼しそうに見える。
霊夢は、向こう側から黒い点がこちらにやってくるのが見えた。

「面倒なのが来るわねぇ、こんなくそ暑い時に」

しばらく待っていると、やがて現れる少女。

「なんでこんな暑いときに来るのよあんたは」
「いいじゃないか。私だって暇だったんだぜ」
「暇なら家でじっとしてなさいな」
「まだ子供だから動き回りたい気分なんですわ」
「……」

魔理沙は霊夢の隣に座る。
妙に笑顔が眩しい魔理沙は、霊夢にとって鬱陶しい他なかった。

「お、お茶があるじゃないか。ちょっともらうぜ」

霊夢の隣にある湯のみを掴むと、何の躊躇いもなく口に運ぶ。
熱いお茶だと言う事も知らずに。

「あっつ!? くそ暑い時とか言ってたくせになんで熱いお茶飲んでんだよ!」
「い、いいじゃない! お茶は熱い方がおいしいのよ!」
「だから暑いままなんじゃないのか!」
「……あ、そうかもしれないわね」
「はぁ?」

全くもって理解ができない魔理沙に対し、マイペースの霊夢。
魔理沙は霊夢の事をよく知っているつもりだ。
だけど、時々訳がわからなくなる。
マイペース過ぎるのも困ったものだと魔理沙は思った。

「それにしても暑いわね。黒い服来たあんたがいるから尚更暑く感じるわ」
「お前の目は節穴か。よく見ろ、白だってあるだろ」
「私だって白あるわよ」
「霊夢の色の事は聞いてないぜ」
「そうね」
「……」

神社に来たのは間違いだったのかもしれないと魔理沙は思った。
言わずもがな、霊夢のペースに合わせていると疲れを増長させる。
しかし、家に帰っても暇なだけだ。
魔理沙は考えに考え、至った結果として出たものは、

「なぁ霊夢。しりとりしようぜ」
「なんで?」
「いや、暇だから。じゃあ、私からな。しりとり」
「燐。あ~ぁ、負けちゃった」
「おい、真面目にやれよ」

真面目にやれって言われてもねぇと手をひらひらさせる霊夢。
ここで魔理沙は考えた。

「そうだなぁ。私にしりとりで勝ったら、里でかき氷買ってやるぜ。これでどうだ?」
「それだけ?」
「じゃあ、お前の好きな和菓子も好きなの一つ買ってやるから」
「やるわ」

なんと単純な脳みそなのだろうかと魔理沙は少しばかり驚く。
しかし、これで暇が潰せると思えば安いものだ。

「じゃあいくぜ。しりとり」
「林檎」
「ごま」
「鞠」
「りす」
「スリ」
「りょうち」
「地理」
「ちょっと待てよ」
「なによ」

ちり、で魔理沙が止めた。

「なんで最後が全部“り”ばっかりなんだよ」
「いいじゃない。勝ちたいんだもん」
「面白みの無いやつだぜ」

霊夢は本当に勝ちたい勝負になるとがめつい。
損する事が嫌いな霊夢は、得がある事には飛びこんでいく。
だからこその、今回の作戦なのだろう。

「まぁ、いいや。それじゃあ、りか」
「狩り」
「りょこう」
「瓜」
「りえき」
「霧」
「りきがく」
「栗」

得意げに最後が“り”の単語を吹っかけてくる霊夢。
それに対し、少し考えながらもそれを返す魔理沙。
しかし、魔理沙には奇策があったのだ。
それを何時使うか、それを魔理沙は見計らっていた。

「りきし」
「尻」
「りく」
「鎖」
「りくつ」
「釣り」
「りんり」
「!?」

霊夢は驚いた表情を見せる。
それもそのはず、“り”で攻撃して“り”で返って来たのだから。
魔理沙の奇策であった。
その策にはまった霊夢は、パニック状態に陥る。

「そ、そんな……。“り”で返してくるなんて……。えっと、あ~、あれよ、利益!」
「もう言ったぜ」
「う、嘘? えっと、それじゃああれよ、えっと~」

顔を歪ませて必死になって考える霊夢をじっと見つめる魔理沙。
その顔は実に嫌らしい笑みで満ちていた。

「そうだ、利口よ。上手い事言ったわね私」
「りこう、だな?それじゃあ続けるぜ。うっかり」
「!?」

これまた驚愕の表情を見せる霊夢。
一度だけでも防御に回ってしまった霊夢は、魔理沙の“り”攻めに陥った。
魔理沙の策は、二重の罠だったのだ。

「そんなの卑怯よ……。えっと、り、り、り~……。りあ、りい、りう」

“り”の後に続くものが無いかと必死に探す霊夢。
それを満足そうに見る魔理沙。

「そ、そうだわ、紫に聞いたあれよ、リサイクル」
「るり」
「くっ……。利子ならどう?」
「しょうり」
「り、よね。り、り……理性!」
「いかり」
「り、リズム!」
「無理」
「うがぁ~!! もう、なんなのよ!」

墓穴を掘った哀れな霊夢を、魔理沙は笑顔で見るほか無い。

「パスは?」
「なしだぜ」
「卑怯よ!」
「まぁ、じっくり考えることだな」
「う~。あ、輪廻!どうよ」

魔理沙は考える。
“ね”の後に“り”がつくものがないかと。
しかしながら、なかなか出てこない。
仕方なく、魔理沙は違うもので返す事にした。

「ねこ」
「氷!どうよ、もう“り”で思いつくものなんてないわ! 諦めなさい!」

そしてこのドヤ顔である。
しかし、それに対して魔理沙は冷静だった。
そう、これすらも策のうちだと言う事を、霊夢は知らなかったのだ。
魔理沙が口をゆっくりと開き、単語を口にした。

「りょうり」

一瞬、何が起こったのか分からなかった。
だけど、これだけははっきりと分かった。
最後が、“り”だということに

「うわぁぁぁぁああああああ!! そんなの無しよ! こんな勝負無かった、最初から勝負なんてなかったのよ!!」
「言い訳はいけないな。とりあえず私の勝ちだな」
「うぅ……」

認めたくないけど、これが現実。
霊夢は素直に負けを受け入れ、黙って頷いた。

「それじゃあ暇もつぶれたし帰らせてもらうぜ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 勝ち逃げするつもり?」
「顔が真っ赤になってるぜ? また今度しりとりしてやるから、そんときにはもうちょっと強くなるんだな。それじゃ、またな」
「え、あ、ちょっとぉ~」

魔理沙は箒に跨り、飛んでいってしまった。

もう魔理沙の姿がすっかり見えなくなった頃。
霊夢は頬にそっと触れる。
確かに頬は熱かった。

「……ちょっと大人気無かったかしら」

霊夢は湯のみに手を伸ばし、口に運ぶ。
中のお茶は、すっかり冷めていた。

「でも、次は絶対に勝つんだから」

お茶は冷めても、霊夢の闘志が冷めることはなかった。
はいどうも、へたれ向日葵です。
今回は、しりとりのお話を書かせていただきました。
友達でも、何らかの単語で攻めてくる人とかいるんですよね~。
だけどそれが墓穴掘ってるなんて本人はわかってないですからね、おぉ、怖い怖い。
本当のしりとりをしているような、そんな風景が伝わるようなら幸いです。

最後まで読んでくださった方々には、最大級の感謝を……。
へたれ向日葵
[email protected]
http://hetarehimawari.blog14.fc2.com/
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コメント



0.1780簡易評価
5.100名前が無い程度の能力削除
霊夢に細かいところで勝利を積み重ねていく魔理沙とな
もう1回やったら魔理沙が負ける気がしてならない
9.100名前が無い程度の能力削除
よきレイマリかな
11.100名前が無い程度の能力削除
攻守が逆転する瞬間にニヤニヤ。
12.100名前が無い程度の能力削除
なにこれかわいい
13.100奇声を発する程度の能力削除
しりとりって案外難しいよねw頭も使うし
良いレイマリでした
15.100ぺ・四潤削除
不測の事態にパニくる霊夢が可愛い。
更に逆転したと思っていたのを見事返された時のうろたえぶりがww
31.90名前が無い程度の能力削除
見てて楽しかったw
37.80ワレモノ中尉削除
霊夢に勝つ魔理沙ってもしかすると初めて見たかもしれません。
負けてやけになる霊夢が可愛かったですw

『ね』で始まって『り』で終わるものといえば
練りきり、寝返り、値切り、眠り、粘り、とかでしょうか。
いざしりとりとなったとき、これらの単語がパッと出るかと言われると自信ないですが(^^;
38.無評価へたれ向日葵削除
>5 様
評価ありがとうございます。
意味も無いような場所で勝っちゃう魔理沙可愛いよ。
魔理沙はきっと次も勝つはずです、フラグじゃありません。

>9 様
評価ありがとうございます。
れいまりよきよき

>11 様
評価ありがとうございます。
実際にしりとりやっててもニヤニヤしちゃいますよね。

>12 様
評価ありがとうございます。
れいまりかわいい

>奇声を発する程度の能力 様
評価ありがとうございます。
やってるとてんぱりますからねw

>ぺ・四潤 様
評価ありがとうございます。
もう皆に霊夢愛されてますね、可愛いです。
かっこいいのもいいけど、女の子な霊夢かわいい!

>31 様
評価ありがとうございます。
楽しい作品に出来あがっていたようでなによりです。

>ワレモノ中尉 様
評価ありがとうございます。
必死になる霊夢かわいいです。

実際にしりとりやって、負けた後とかだとあんな単語あったなぁって思いだします。
やってる時ってなかなか出てこないんですよねぇ。
40.100名前が無い程度の能力削除
しりとりの癖になんでこんなに戦術溢れてるんだw
うむぅ、いいものを読んでしまいました
41.無評価へたれ向日葵削除
>40 様
評価ありがとうございます。
しりとりなら様々なたくさんあるんですよ!
この駆け引きがたまらないんですよね、しりとりは