Coolier - 新生・東方創想話

蔵の中の女神

2010/06/06 09:21:55
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森の奥の土蔵に、昔幽霊が出ると言われていたそうだ。

その幽霊は、綺麗な顔をした女性なのだそうだ。

そんな噂が出たのは結界が出来て1年も経たない時だった。

僕は、久しぶりにその話を思い出し、その土蔵に足を運ぼうとした。

その土蔵は、そんな噂が出てからは誰も近づかなくなった。

しかし、僕は何度か肝試しの為にその土蔵に足を運んだ事はあった。

しかし、行くたびに視線や不気味な微笑みが見えたような気がしてたまらなかった。

その土蔵に行くのは80年ぶりだが、今はどうなっているのだろうか。




その土蔵は、昔と変わらぬ不気味さを放っていた。

僕は、土蔵の扉に手をかけたが、当然鍵がかかっている。

だがその鍵もさびていて、ちょっと力を入れただけで崩れてしまった。

誰もこの場所に近づかなかった事が分かる。

扉が開くと、そこは倉庫になっていた。

土蔵だからあたりまえか、かなり古い道具が置かれていた。

随分昔に滅びた道具もそろえてあり、どれか持って帰ろうかと思った。

その時、物の影になっていた扉を見つけた

その物をどかそうとするが、他の物がその物を囲んであり、動かすのは難だった。

2時間をかけて物をどかし、

その扉を開けた。

そこには、青白く、美しい顔立ちをしているため、

まるで眠っているかのような女性が居た。



















西暦2579年、霖之助さんが死んだ。

誰かに殺されていた。

私は、その霖之助を殺した妖怪を捕まえた。

殺した理由は、腹が減ったかららしい。

私はその妖怪を容赦なく殺した。

そして妖怪の餌にしたのだ。

だが、私の気持ちが晴れる事はなかった。

私はそれ以来、部屋に閉じこもりがちだった。

だが、幻想郷をまとめている私が鬱状態になっている事で、結界にも影響が及んだ

私の負の成分を含んだ結界は、幻想郷の生物に害を与えていた。

気づけば幻想郷の生物は全て絶えていた

霊夢も魔理沙もかなり昔に亡くなっているため、この異変を食い止められる妖怪も人間も居なかったのだろう。

私は独りぼっちになっていた

この幻想郷で一人、



気づけば、周りの建物には苔が生えていた。

今は西暦何年だろうか。

もう200年くらい経っているのではないだろうか。

私はその長い時間、ただただ座っているだけだった。

皆は塵一つ残らず消えている事が分かった。

今生きているのは、私だけでなく植物も生えている事がわかった。

だが、植物は何も語らない。

私はさびしかった。

霖之助さんをからかっていた時期が懐かしかった。

思い出せば思い出すほど、涙が流れ続けていた。

どうしてこんな目に会うのだろうか。

だが、たとえ妖怪でも半妖でも寿命は来る。

どんなに生きても寿命の端が見えない自分を恨んだ

私は変わり果てた幻想郷の中をただ歩き回る生活が続いた。

43代で絶えてしまった巫女の神社も、もうすでに緑色になっていた

さらに歩いて行くと、香霖堂が見えてきた。

私は、無意識のうちにその香霖堂の中に入っていった。

だが、それは毎日の事だった。

私は、霖之助さんが座っていただろう椅子に腰をかけながら本を読んだ。

7世紀も昔の本だが、私はこの本をずっと読み続けている。

正しくは霖之助さんの日記を読んでいた。

読むごとに、美しい記憶が私の中に入っていく気がしたからだ。

だがその日記も、もう読みつくしてしまった。

それで私はまた憂鬱になってしまった。

そして香霖堂の中を探ってみると、そこには何か電子板があった。

その電子板は、裏面には2559年と書いてあった。

その隣には『日寺旅行』と書いてあった。

なんだろうか?私はその電子板を持つと、電子板の画面から何か数字が出てきた。

≪900年前≫

と表示されていた。

その瞬間、香霖堂が無くなった











辺り一面草だらけだった

私は辺りを見渡すと、幻想郷の中だった。

その幻想郷は、家には苔が生えていない幻想郷だった。

ここは昔の幻想郷

時間旅行と言うのは珍しくもないのだが、私自身は時間を操れない為この世界に来る事が無理であった。

それが現実となっている今は、眼を見開いて確認をしていた

900年前、香霖堂は無かった。

それは当り前の事なんだが、なんだか寂しく思えてきた。

私は町の方に向かってみた。

そこには秋姉妹が宴を広げ、収穫祭をあげていた。

その秋姉妹も若い姿だった。私はここは過去だと実感した。

私は嬉しくなった。

嬉しくて体が痙攣を起こしていた。

だが、その痙攣を無くすように私は立ちあがり、

ふらふらと森の中をさまよっていた。

しばらく歩いていると、人が歩く音が聞こえた。

山の道に銀髪の少年が歩いていた。

その少年は、どこか見覚えがある顔だった。

頭の上に一本立っている毛を見て思い出した

『霖之助さん…………?』

私は、森から抜けその少年時代の霖之助の前に出た。

少年は私を警戒していたが、私はそれを気にしなかった。

ただ自分の本能のままに動いた。

私はとっさに少年時代の霖之助に抱きついた。

懐かしかった。やっと会えた。

霖之助は驚愕し、悲鳴を上げていた。

だが、私は離さなかった。

離れたくなかったのだ。

だが、後ろから誰かに殴られた。

殴られた勢いで私は倒れてしまった。

『おい!!白に何してんだお前!!』

そこに立っていたのは、霧雨魔理沙の子孫だった。

私が霧雨家の人物を認識したのは魔理沙の曾婆の時であった為、

その子孫に面影はなかった。

『霖之助……………。』

私は、再びその少年を呼び掛けた。

『はぁ!?りんのすけって誰だよ!!こいつは白って名前だぞ!!』

白。

それは過去の霖之助のあだ名だと気付いた。

多分、使っているのはこの少女だけだと思うが、

私は、気づけばさらに一発蹴りを入れられていた。

さらに、周りの大人、人間に馴染んでいる妖怪までもが

少年時代の霖之助を守るかのように私に攻撃をしてきた。

しばらく時間が経つと、そこに一人の女性が現れた。

その女性を見た妖怪や大人たちは、一瞬怯んで私への攻撃を止めた

『ここで見ぬ巨大な妖怪の気が気づいたのですが、何か居ませんか?』

その女性は大人や妖怪の群れを避けて、私の顔を見た。

その女性の顔を見て私は驚いた。

その女性は自分の顔だった。

だが過去の幻想郷であるため、会う事は不思議ではないのだが、

過去の私は、私を見て驚いていた。

『あなたは誰ですか?どうして私と同じ顔をしているのかしら?』

過去の私は私に質問をしてきた。

『9世紀後から来た………八雲紫です。』

私は弱々しくそう答えた。

そう言った後、過去の私は私をスキマの中に押し込んだ。








スキマの中では、異常な緊張が届いた。

その中で、過去の私は質問をしてきた

『未来から来た私…………。あなた幻想郷はどうしたの?』

私は、自分の人生を語った。

結界を張った後からここに来るまでの経歴

霖之助が死んでからの私の愚行、幻想郷が滅んだ事

話し終えると、過去の私は難しそうな話をしていた。

『つまり、あなたの居た幻想郷はもう滅んでしまったのね。』

話した事を繰り返しているだけの返事だったが、私はうなづいた。

そう言うと、過去の私は私を悲哀な顔で見ていた。

『この幻想郷から出てきなさい。』

過去の私はそう言った。だが私は無意識に

『嫌』

と答えた。

そう言うと、過去の私は溜息をつきながら話していた。

『私にとってもあなたを見ると辛いのよ。薄汚れた自分なんて見たくもないわ。』

その言葉は私の心をえぐり傷つけたが、私はあきらめなかった。

『それでも私はここに居たいのよ。確かにこんな姿を見るのは嫌かもしれない。でも、やっぱり私は
この里が好き、そしてあの人も………………』

そのあの人の名前を言った時、過去の私は茶を飲みながら答えた

『霖之助…………。白の未来の名前ね。』

過去の私はその茶を乱暴に置いた

『確かに結ばれたいって気持ちは分かるわ。でも、私も結構あの子には好意を持ってるのよ。』

過去の私はそう言うと、悲しそうな顔でこう言った。

『そう思うなら余計この里から出てってほしいの。いつか私、あなたの事殺しちゃうかもしれないから』

だが、それでも私は

『それは………………………嫌』

と反論した。

その言葉を聞いた過去の私は、少し興奮気味で私を脅した

『あなたに寿命がつくわよ。100年の寿命が。そして土蔵の中に一生閉じ込めるわよ。それでもいいの!?』

私は、幻想郷が滅ぶ前に死ぬ事は本望だった。

霖之助さんが居る幻想郷で死ぬ事は、私には喜ばしい事だった。

『どうぞお願いします。』

私は俯きながら、過去の私にそう返事した。

過去の私は少し戸惑っていたが、過去の私はこのスキマの空間に出口を土蔵の中へと通じかした

鉄格子の窓と、机と布団がある全体的に白い部屋だった。

その部屋はまるで刑務所だったが、私は満足だった。

この生きた幻想郷の中で生きていけるのだから

















『お―化けさん、出ておいで。出てきて一緒に遊びましょ』

外に子供のはしゃぎ声が聞こえる。

私は鉄格子から顔を出し、外を覗くとそこには銀髪と一本立った毛が見えた。

『お―化けさん、お―化けさん、一緒に遊びましょ。』

その姿は、まるで天使のようでとても可愛らしい少年だった。

私はそれを見つめると、自然に笑顔になってきた。

微笑ましくもあり、とてもうれしくもあったのだ。

『白ー!!そこで何やってんだよー!!』

向こうで少女の声がした。

『そこにはお化けが居るんだぞー!!食べられちまうぞー!!』

少女がそう言うと、

『大丈夫だよー!!僕は妖怪から襲われないからー!!』

『馬鹿!!こっちが怖えんだよ!!』

そのやりとりを見てると、さらに微笑ましくなった。

『おい…………なんか笑い声が聞こえなかったか?』

少女は怯えていた。

『え?きっとお化けさんが来てくれてたんだよ。』

『馬鹿!!やめろ!!早く離れるぞ!!こんな怖い所!!』

少女がそう言うと、少年をひきづってこの土蔵から離れていった

その時、少年と目が合った

少年の顔は笑顔だった。

私の顔は、笑顔の目から

一粒の涙が流れていた。
どうもはじめまして。
私は切ない話しと1話完結の話を作りたいと思っています。よろしくお願いします。
他のssもできればみてください。⇒http://tekitoukand.nukimi.com/kopipe.html
ND
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コメント



0.1960簡易評価
5.80K-999削除
切ねぇー……。
9.90時空や空間を翔る程度の能力削除
一つ間違えが
>『未来から来た私…………。あなた幻想卿はどうしたの?』
幻想郷だと思われ。

悲しみが永遠と繰り返すと思うと・・・止められない運命なのか
13.70大笠ゆかり削除
 綺麗な作品でした。ありがとうございます。
 生死の境とは何なのか、生きることの定義とは何なのか。そして900年の時をさかのぼり出会った二人の八雲紫。こい願わくば、いつか彼女が「死なない」で生き続けることを欲します。
 愛とは美しい泡沫ものですね。また会いましょう。では。
14.90奇声を発する程度の能力削除
>だが、幻想卿をまとめてる
ここもなってました

切ないなぁ…
24.無評価ND削除
卿を郷に訂正しました。
ご報告ありがとうございます。
28.80名前が無い程度の能力削除
気に入りましたね、とても