Coolier - 新生・東方創想話

寡黙な魔法使い

2010/05/24 14:37:23
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「魔理沙・・・今日は来てくれるかしら?」

私はパチュリー・ノーレッジ。魔法使いであり、この屋敷に主人の友人として住まわせてもらってるの。
魔理沙って言うのはね、魔法使いの人間の女の子なの。

魔法使いには二種類あって、「生まれながらの魔法使い」と「人間が秘術を会得して成る魔法使い」に分かれてるの。私は前者で、魔理沙は後者を目指している人間なの。

私たち魔法使いにとって探究心は必要不可欠なの。新たな知識を求めようとしない魔法使いなんて滅びの道しか残されてないわ。

でも魔理沙は自分の知識をより向上させるためにこの図書館に足繁く通っているの。

私はそんな魔理沙に秘かに想いを寄せてたりする。そんな想いを知ってか知らずか、魔理沙は私にたくさん話しかけてくれるの。楽しそうに話しかけてくれる魔理沙を見ていると私も楽しいし、ずっとこうしていたいって思う。でも私はお喋りが上手にできないから、頷いたり、たまに相槌を入れたりするくらいしかできないの。

魔理沙は話すことが無くなると、本を読み出すわ。

よく読んでいるのは力学についての学術書とか、放出系の魔導書ね。「弾幕はパワーだぜ!」が口癖の彼女らしいって思えるの。

でも、夜になると帰っちゃうの。私は睡眠をほとんど必要としないから、いつまででも本を読み続けられるんだけど、魔理沙はまだ人間だから充分な睡眠が必要なの。

そして大量の本を抱えて持って帰って、自宅で全部読み終わると、またここに来て本を持って帰るっていう繰り返し。

本当は「泊まっていけばいいのに」って言いたいんだけど、内気な性格だからそんな 勇気は出てこないの。もっと魔理沙みたいに強気になれればいいのになぁ。

べ、べつにやましい気持ちとかは無いのよ?ちょっぴりは・・・あるんだけど、移動の時間と手間を考えたら、そっちのほうが効率いいと思うの。そういうことなの!

そういえば魔理沙から見て、私ってどういう風に見えるんだろう?

ずっと本ばっかり読んでて、全然喋らなくて、暗い子だと思われてるのかなぁ・・・

ダメダメ、嫌なイメージしか思い浮かばないわ。

「魔理沙・・・早く会いたいなぁ・・・」

彼女の顔を見れば暗い気分も吹き飛ばしてくれると思う。

この暗く湿った図書館で、ひときわ輝く金髪をなびかせ、その口元からは白い歯がキラリと光る。そんな太陽のような笑顔を見てると私も幸せな気分になってくるの。

あぁ、この笑顔は眩しいわ。さっきまでの暗い気分が一瞬で吹き飛んでしまった。

やっぱり魔理沙の笑顔は私にとって魔法そのものなのよ。

でもこんなに明るい娘に私みたいな暗い女で釣り合うのかしら?

第一、彼女は私のことを女として見てくれているのだろうか。

とっても不安よね。おっといけない、また暗い考えに陥ってしまったわ。

すぐに魔理沙分補充しないと!

「でも魔理沙ってやっぱり可愛いなぁ。顔立ちが整ってて、元気一杯で。眩しいなぁ」

「おいおい、目の前でそんなこと言われると照れるぜ」

輝く笑顔がだんだんと赤みを増してきたわ。照れてる魔理沙も可愛いわよね。

「っ!!!」

え?!魔理沙いつの間に目の前にいたの!

それより、いまの声に出しちゃってたんだ・・・うわぁ、聞かれちゃったじゃない!

どどどどうしようかしら・・・と、とりあえず挨拶しないといけないわね!

「ま、まりしゃ、こここ、こにちわ」

あああ、心の準備が出来てなかったからまともに声にならないわ・・・ちゃんと聞こえたかしら・・・

「こんにちは、パチュリー。今日も外はいい天気だったぜ。」

良かった、ちゃんと伝わってたみたいだ。

「こんな昼間から何暗い顔してたんだ?何か嫌なことでもあったのか?」

魔理沙は目の前の椅子に腰掛けながら聞いてきた。

(魔理沙が私のことをどう思ってるのか心配してたのよ)
なんて言えるわけないわ・・・

とりあえず否定の意味で首を横にふる。

「そっか、なら良かった。パチュリーが悲しそうだと私も悲しいぜ。」

魔理沙に心配してもらえるのは嬉しいかも。

「わ、わたしも・・・」
私も魔理沙が悲しそうだと悲しいわ。

「パチュリーも同じか。そうだよな。だって私たちは友達だからな」

うんうん、と首を縦に振った。

でも、私がなりたいのは本当は友達じゃなくて・・・

ううん、それ以上求めちゃいけないのよ。だって魔理沙はまだ人間だもの・・・

もし魔理沙が秘術を会得することなく老いて天寿を全うしたら・・・

たまにそんな考えが頭をよぎって怖くなるときがあるの。

「どうしたんだパチュリー?やっぱり様子がおかしいぜ。具合でも悪いのか?」

また暗い顔になっていたのかしら。魔理沙の前では笑顔でいたいのに・・・

あれ?がこっちに向かってきたわ。そのまま隣まで来てしまった。

魔理沙の顔が近づいてくる。え?近い、近すぎるわ!

もしかして・・・キス・・・してくれるのかな?

あわわ、心の準備ができてないのにいきなりキスだなんて。

こ、こういうときは目を閉じるのがマナーなのよね、そうよね。

瞼に遮られ、何も見えなくなってしまったわ。

あわわ、どうしよう、魔理沙が今どれくらい近づいたのかわからないじゃないの!

でも、魔理沙の息遣いが聞こえる・・・頬にかかる鼻息がなんだかくすぐったいわ。

もう、すぐ目の前にいるんだ・・・

ああ、まだかしら、さっきからドキドキしっぱなしで胸が弾けそうなのに・・・

コツンって音がした。おでこがぶつかっちゃった?

魔理沙も緊張してて失敗しちゃったのかな?そ、そうよね、だって初めてのキスだもの。

まだ・・・なのかしら・・・?

さっきからおでこが当たったままなんだけど、どうしたのかな?

「熱は、無いみたいだな」

あ・・・熱、測ってたんだ・・・

もう、何よ!期待しちゃったじゃないの!

まぁ、勝手に勘違いしちゃった私も悪いんだけどね・・・

まだドキドキしてる・・・魔理沙はドキドキしたのかしら?

うーん、平然としてるわね・・・わ、私とあんなに顔を近づけても何とも思わないのかしら?ちょっぴり残念よね。

でも、それだけ真剣に心配してくれたんだよね?うん、やっぱり嬉しいわ。

なんだかもう、さっきから心が落ち着かないわ。こういうときは読書が一番よね。

「本、取ってくるわね」

出来るだけ、平静を装ってそれだけいうのが精一杯だった。

そのまま立ち去るように早足で本棚へ向おうとしたけれど、なんと足を躓いてしまった。

「パチュリー危ない!」

すかさず魔理沙が私を助けようと支えてくれた。

でも体勢が悪くて、結局二人とも地面に倒れちゃった。

「魔理沙大丈夫?!重くなかった?!」

魔理沙が庇うように下になってくれたから、私は大丈夫だったけど、その分魔理沙は痛かったはず。

「うん・・・だいじょうぶ」

それにしてはなんだか元気が無いような気がするわ。

「ほんとに?頭とか打ってない?」

「うん・・・本当に、打ってないから」

「それにしては、やけに元気が無いように思えるんだけど。いつもより声が小さいし」

「そう、かな?」

ん~、私の勘違いかしら。本人も大丈夫って言っている訳だし、きっとそうよね。

「魔理沙、助けてくれてありがとう」

魔理沙は「お礼なんていいよ」とでも言うように首を横に振った。そしてそのまま本を取りに向かっていった。

戻ってきた彼女の手には一冊の本しかなかった。いつもなら四、五冊は持ってくるのに。

「あら?今日はそれだけしか読まないのかしら?」

魔理沙はうんうん、と頷いた後、小さな声で言った。

「たくさんもってくるのは、お行儀が悪いから」

まさか魔理沙から『お行儀』なんて言葉が出てくるとは思わなかったわ。

いつもは読むだけ読み散らかして、そのまま帰ってしまうので図書館付き従者の子悪魔が涙目になりながら片付けているというのに・・・

「ん?そういえば、今日はあんまりお喋りしないのね?」

普段ならしばらくお話してから本を取りにいくのに、今日はほとんどお話してないわ。

「そんなこと、ない」

「そんなことあるわよ。いつもなら三時間はお話してるじゃない?」

「うーん・・・」

そういって黙り込む魔理沙はやっぱりいつもらしくなかった。

「パチュリーは、よく喋るようになったね」

か細い声で魔理沙がつぶやいた。

そういえば、そうよね。

なんだか今日は考えていることがすぐに言葉になって出てくるわ。

普段は口下手で、内気な所為もあってあんまり自分から喋ったりしないものね。

だから、いつもは魔理沙が質問して、私が答えることが多いけど今日はまるっきり逆になってる。まるで私が魔理沙で、魔理沙が私みたい。

ええー!まさか、魔理沙と私の性格が入れ替わっちゃったの?!

ぶつかった拍子にお互いの魂が入れ替わるっていう本とかはよく読んだことあるけど、性格だけ入れ替わるなんて珍しい症例ね。

大体は魂が入れ替わって、相手の身体で入れ替わったことを周りにどう誤魔化すかで苦労したりして盛り上がるんだけど、私たちの状況だと身体に異変は感じられないし、ただ性格だけが入れ替わっただけみたい。

「ってなに冷静に分析してるのかしら!」

いきなり大声で叫んでしまった所為で、魔理沙はビクッ!となってしまった。

そうよね。たぶん、いつもの私ならそうなってたわね。

「驚かしちゃってごめんなさい。でも聞いて魔理沙、私たち性格が入れ替わっちゃったみたい!たぶんさっき倒れたときが原因だと思うんだけど、どうしよう!」

私のいきなりの言葉に魔理沙はポカーンとした表情でこちらを見つめた。

うぅ・・・そんな顔で私を見ないで・・・

私だってそんなことをいきなり言われたら唖然としてしまうわよ。

でも状況から察するに、それが一番在り得る状態なんだもの。

「どうしようって言われても・・・」

普通に『性格が入れ替わったらこうしましょう』なんていうマニュアルなんて在るわけがない。それを「どうしよう」なんて聞かれてすぐに答えられるわけがないわよね。

「ご、ごめんね魔理沙。いきなり聞かれて答えられるわけないわよね」

それに対し、首を横に振って応える魔理沙。おそらく「気にしなくていい」の意だろう。

「それでね、このままだとお互い困ると思うの。どうやったら元に戻るか思い浮かばないかしら?」

その答えを探しているのか、いないのか。 魔理沙はじーっとこちらを見つめていた。

「ちょ、ちょっとどうしたのよ魔理沙。私の顔、何かついてる?」

首を横に振る魔理沙。

「えっと、なにか解ったのかしら?」

またも首を横に振る。

「だったら、なんでずっとこっちを見てるの??」

言おうか言うまいか、しばらく悩んでいたようだが、ようやく躊躇いがちにだが魔理沙が口を開いた。

「たくさん喋るパチュリーは、見ていて楽しいわ」

そういって微笑む魔理沙は慈愛に満ちた天使にも見えた。あぁ、癒される・・・

っていうか、この娘はこの一大事にそんなことを考えていたっていうの!

「魔理沙、そんなこと考えてたの?!もっと真剣に考えてよ!ぷんぷん!」

思わずほっぺを膨らませてしまった。

「うーん・・・でも、そんなに困ることでも無いと思う」

「え?そうかしら?」

ちょっと状況を整理してみましょうか。

今、私は魔理沙のような性格、つまり強気で思ったことをすぐに言える性格になってる。

逆に魔理沙は私のようにやや考え込んでしまい、自分からはあんまり喋らない性格になってる。

そこで、問題点となるのは・・・・・・・・・・・

特に、無いわね・・・・・

あれ?別に対策とかしないで、このままでもいいのかしら?

魔理沙は楽しいって言ってるし、私は・・・どうなんだろう。

チラっと魔理沙を見た。

あ、目が合った。

あ、出たわ!天使の微笑み!

なんて可愛らしいのかしら、もう堪らないわ!

普段の魔理沙もいいけど、大人しい魔理沙も良いわね!

なんかこう、抱きしめたくなる愛らしさがあるわ。

こんな魔理沙が見られるなんて思っても見なかったわ。

これはこれでアリね。あぁ~、抱きしめたい抱きしめたい抱きしめたい。

「ま、魔理沙、ちょっと抱きしめてみてもいいかしら?」

わわ!何言っちゃってんのこの口は!思ったことすぐ言っちゃった!

さすがに引くわよね?あれ、でも顔赤くなってるわよ?

コクンって頷いた!おkなのか!抱きしめてもおkなのか!!!!

「い、いいの?」

魔理沙はもう一度頷いた。

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

「じゃ、じゃあ失礼して・・・」

緊張しながら、魔理沙を包み込むように優しく抱きしめた。

さっき倒れたときは状況が状況だけに何も考えていなかったけど、今はそれ自体が目的だからしっかり感触を愉しまないとね、フフフ。

あぁ、ふわっとした感じがするわ。それに魔理沙の髪が鼻にかかってくすぐったいわ。

でもいい匂いがする。いつまでもこうしていたい・・・

「む、むきゅー」

あれ、魔理沙が苦しがってる?

「え?あ、ごめん!強すぎたかしら?」
あまりにも感触が気持ちよすぎて、思わず強く抱きしめちゃったみたい。

慌てて離れて謝ったけど魔理沙はあんまり気にしてないみたい。

むしろさっきより赤くなってる。実は魔理沙も愉しんでいたのかしら?

「あ、ありがとね、変なことに付き合ってくれて」

ううん、と首を振る魔理沙。

でも性格入れ替わったおかげで良いことあったわね。

何事も言ってみるものね。「百聞は一言にしかず」って言うしね。違ったかしら?

この際だから、今まで気になってたけど聞けなかったことを色々聞いてみようかしら。

まずは気になるあのことから聞いてみようかな。

「ところで魔理沙、あのアリスっていう人形師とはどういう関係なのかしら?」

最近、魔理沙はアリスっていう人形を操る魔法使いとちょくちょく会っているのよね。

恋人じゃないことを祈るわ・・・

「友達よ」

意外なほどの即答だった。

「本当に?」

魔理沙は頷いた。

良かったわ。あんな暗そうな女に魔理沙を獲られてたまるもんですか。

でも、そうなると私のことはどう思ってるんだろう・・・

「じゃあ、私のことはどういう風に思ってるの?」

今度は即答はせず、考え込んでいる様子だった。脈アリ?

「パチュリーも・・・ともだち・・・」

そう言うと魔理沙は何か堪えるような顔で目を逸らした。

やっぱり私も友達としてしか見られていないのか・・・残念。

でも少なくともアリスとは何か反応が違うので、全く同じというわけではないようね。

でも、何か気になるわ。

あの顔は私に何かを隠しているっていう顔だもの。

恋する乙女が照れ隠しで「友達」と言っているのとは違う感じがする。

もっと、なにか深刻な事情がありそう。

でも、それを隠すということは言いたくない事なんだろう。ここはあえて触れずに話題を変えたほうが良さそうね。

「魔理沙って、この図書館に来るときってちゃんと玄関から入ってるのかしら?」

「うん。門番が寝てるから普通に入れる」

やっぱりいつも昼寝してるのね、門番は。これはメイド長に報告しないといけないわ。

「廊下とかでメイドに見つかって追い出されたりはしないのかしら?」

「最初は、追い出されそうになったけど、今はパチュリーの友達だからってことで、通してくれる」

それは良かったわ。もし私の魔理沙に粗相をしていたなら、たっぷりとお仕置きしてあげてたところよ。

「理解のあるメイドで良かったわね。ところで魔理沙・・・」

こうして普段は聞けなかったことを次々と聞きながら楽しい時間を過ごしていたところ

ボーン ボーン ボーン ボーン ボーン ボーン ボーン ボーン・・・

時計が夜の八時であること示した。

「あ、ごめんパチュリー、もう帰らないと・・・」

「そ、そうよね、いつもの時間になっちゃったわね・・・」

魔理沙はさっきまで読んでいた本と更に数冊(いつもよりかなり少なめ)を抱えて帰ろうとしていた。

「本、借りていくね」

今日はいつもと違って楽しかった。

魔理沙のことがたくさん聞けて良かったな。

でも・・・別れたくない・・・

「またね、パチュリー」

魔理沙が控えめに手を振り、扉に手をかけた。

「待って!」

扉にかけた手が止まり、魔理沙は振り返った。

いつもはそのまま見送っていたその後姿。

でも今日は違う。言葉で意志を伝えることができる。

今なら言える。勇気を振り絞って言うしかない。

「と、泊まって行きなさい!ずっとここに居ればいいじゃない!」

いきなりの提案に硬直する魔理沙。その表情は一瞬驚きつつも、やがて苦渋に満ちたものに変わっていった。

まるで涙は流さず、心で泣いているようにも見える。

どういうことなんだろう?そんなにもここに泊まるのが嫌なのかしら・・・

「ちょ、魔理沙どうしちゃったの?そんなに泊まるの嫌だった?」

俯きながら否定の仕草をした。

「何か、いけない理由でもあるの?」

今度は肯定を表した。

「理由、聞いてもいい?」

しばらく迷っていたようだが、やがて魔理沙の口が動きだす。だが声は聞こえない。

言葉を紡ごうと必死になるが、声にならないらしい。

だが、やがて絞り出す様な声で語りだす。

「本当は・・・私もずっとここに居たい・・・」

それが出来ない、深い理由があるのだろう。

続く言葉を、何も言わずにじっと待つしか今の私には出来ない。

「でも、ここに居たら・・・魔法使いになれないから・・・」

そんなことないわ、魔法使いになる為の協力なら惜しみはしないのに!

「パチュリーと一緒にいると・・・楽しくて時間があっという間に過ぎていっちゃう」

そうよ、私もあなたと一緒だとすぐに時間を忘れてしまうわ。

「勉強する時間が無くなって・・・私は人間だから歳をとってしまう・・・」

だから移動時間を無くしてここで勉強すればいいのに。

「待って!勉強なら私が教えるわ!なんだって協力する!それじゃだめなの?!」

「それは・・・だめ・・・」

「どうして?何がだめなの?」

私にはこれが最良だと思える。だけどそれはだめだという・・・

「パチュリーと一緒だと・・・集中できない・・・」

「え・・・そんな・・・私が邪魔していただなんて・・・」

愕然としたが、魔理沙の表情は「そうじゃない!」と叫んでいる。

何がなんだか解らない・・・

「目の前にパチュリーが居ると、気になって気になって仕方が無いから・・・だから家で勉強するしかないの・・・」

そ、それはつまり・・・つまるところ・・・

「パチュリーが・・・好きだから!!」

そう叫んだ魔理沙の眼からは今まで堪えていた涙が堰を切ったように溢れだしていた。

ドサドサっと抱えていた本を落とし、両手で顔を覆う魔理沙。

彼女も、苦しんでいたんだ。

「老いて皺だらけになって・・・嫌われたくないから・・・家では必死に勉強していた。でも、どうしても会いたくなるから本を借りるフリして会いに来ていた・・・」

人間の老いに関する恐怖は計り知れないものだろう。

その恐怖と闘いながら、そんなことなど微塵も感じさせずに私と接してくれていたんだ。 改めて魔理沙の精神力の強さに感心した。

でも、今は普通の気の弱い女の子だ。彼女を癒せるのは私しかいない。

だから、ガラス細工を扱うように、そっと抱きしめた。

「私も魔理沙が好きよ。でも、もしあなたが魔法使いになれなかったらって考えたとき、 失ってしまうのが怖かった。だからずっと想いを隠していたの」

魔理沙が私の服をぎゅっと掴んだ。

「お互い、怖くて言い出せてなかったのね」

肩越しに頷いたのがわかった。

「もう怖がらないでいいわ。私はあなたがどんなになっても嫌いになんてならないから。 だから無理しないでいいのよ。困ったことがあったら何でも相談すればいいんだから」
もう一度、今度は強く頷いた。

そしてぎゅっと力を込めて抱きしめたあと、魔理沙は離れた。

「ありがと、パチュリー」

その顔は、すっきりした表情だった。

「じゃあ、帰って勉強するから」

「ええ、寂しくなったら甘えに来ればいいから、頑張るのよ」

うん!と元気よく頷き、本を拾い出した魔理沙。

私は手伝おうと思い、散らばった本を拾い上げ、魔理沙に渡そうとした。

だが、またしても躓いてしまった。

「危ない!」

すかさず魔理沙が私を助けようと支えてくれた。

でも体勢が悪くて、結局二人とも地面に倒れちゃった。

「パチュリー大丈夫か?怪我は無いか?」

私はうん、と頷き返事をした。

「まったく、せっかくの良い雰囲気が台無しじゃないか。でも、そういう所も含めて好きなんだぜ」

わぁ、改めて告白されると恥ずかしくなってきちゃった・・・

「わ、わたしも・・・」

あれ、なんだか上手く喋れない。

もしかして、さっきの拍子に戻っちゃったのかな?

魔理沙もいつもの調子に戻ってるっぽいし・・・

残念なような、これで良かったような・・・複雑な気分ね。

たぶん、魔理沙は私の想いを汲み取ってくれる。

でも、言葉で伝える大切さを学んだから。

今はこの想いを言葉で表す時だから。

私は言葉を紡ぎだす。

「私も、太陽みたいに私を照らしてくれる魔理沙が好き!」
   Happy End
初めまして、初投稿のにょーきです。
1年ほど前から東方SSを書き溜めていたのですが、先日このサイトを見つけたので、投稿させていただきました。うまく載るか心配です。
今作品のコンセプトは「パチュリーの甘いお話」だったのですが、途中ちょっとシリアスな感じになりました。
元気なパチュリーとおとなしい魔理沙のギャップに萌えていただけたら幸いだと思います。それでは。
にょーき
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コメント



0.420簡易評価
3.10名前が無い程度の能力削除
正直言って魔理沙もパチュリーも違和感しか感じませんでした。
6.80名前が無い程度の能力削除
ん~最後駆け足だった感もありますが、2人がかわいいのでこの点数ですw
しかし、キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!ってwww ディスプレイ弁償してくださいw
15.10名前が無い程度の能力削除
なんか違う
19.10名前が無い程度の能力削除
違和感しかしない
20.90名前が無い程度の能力削除
違和感あるけどパッチェさん可愛かったしマリアリに比べると数の少ないマリパチュだしこの点数で。
書き溜めがあるとのことで今後に期待。
21.90名前が無い程度の能力削除
俺は好きだな