Coolier - 新生・東方創想話

春告精

2010/05/18 01:07:57
最終更新
サイズ
6.54KB
ページ数
1
閲覧数
1051
評価数
3/22
POINT
1170
Rate
10.39

分類タグ


「やっぱり歩くと体は温まるわね」
「なぁ霊夢ー。もうそのマフラー必要ないと思うぞ? だって春だし、寒くないじゃないか!」
「萃香の寒くないはあてにならないからなぁ。あなたいっつも薄着じゃない」
「な、失礼な! これでもわたしだって寒い時は寒いんだぞ!」

 ならもっと温かい格好をすればいいのに。まぁ、お酒のせいでいつも体が火照ってるのかもしれないわね。この子。
 とにかく私はマフラーを外して傍らに置く。今は萃香とお散歩をして、立ち寄った湖で一休みしているところだった。そう言えば今日はチルノを見ていないわね。まぁいいわ、もう少し休んでから帰りましょうか。



「アタイーはさいきょーよー♪ だれにもーまけないのー♪」

 今日こそあの大カエルを氷漬けにして、アタイの宝物にするのよ! 絶対負けない! 今日という今日は食べられてあげないんだから!
 って、あれ? なんか落ちてる。
 まだ大カエルも見つかんないし、拾ってみよう! 何かしら!

「なんだろう、これ……」

 ほそ長くて服みたいな何か。これ、どこかで見たことある気がする……

「わかった! あの巫女が首につけてた布だ!」

 天才のアタイにかかればこんなのすぐにわかっちゃう。きっとあの巫女が、さいきょーのアタイにプレゼントしてくれたのね! やっと霊夢もアタイのつよさをみとめたわね!
 霊夢がプレゼントしてくれたってことは……うん! これでアタイのつよさにもみがきがかかるわ! だって、これが霊夢のつよさの一部に違いないモノ! 霊夢はこれでぼうぎょりょく? を上げてたのよ! だからあんなにスイスイ弾幕を避けちゃうんだわ!

「となれば、これを着けたアタイはさいきょーのさいきょーになるのね!」

 これどうやってつけるのかしら? よくわからないけど、首に巻いてた気がする……よいしょ、よいしょ……

「うっ……アツい……」

 なんだか首がアツいわ……でもこれもさいきょーのさいきょーのため。我慢するしかないわ。さいきょーも楽じゃないわね。
 さぁ、これできっと大カエルをたおせる! 待ってなさい! 大カエル!




 今日は天気が良くて、ちょっとつらいわね。もっと涼しいほうがアタイは好きなのに! もう、太陽め、アタイが強いのがにくらしいんだわ。これもさいきょーのしゅくめいね!
 それにしてもいないなぁ、大カエル。アタイがこわくて逃げたんじゃないでしょうね! 十分にありえるわ!

「春ですよー。春ですよー」

 ん? なんか声がする。湖のほとりに座っていたアタイは湖から目を反らして、後ろの森を見てみる。
 もし怪しいヤツなら、アタイのひっさつわざでイチコロだわ!

「春ですよー」

 なんだかピンク色のヤツが森から出てきた! アタイ知ってる、コイツリリーだ! レティから聞いたことある!
 うわ! スゴイ! 何もついてなかった木に花が咲いた! 地面にもお花がいっぱい! スゴイスゴイ! アタイ初めて見た!

「待てぇ!」

 アタイが呼び止めると、リリーはピタッと止まった。

「アンタスゴイ! アタイ、アンタの能力初めて見た! いっつも湖の上にいたから見たことなかったの!」

 リリーはニコニコしてる。あれ? でもなんだか少し顔色がわるい気がする。青白いもの。体もブルブルふるえてるし。まるで冬の人間たちみたいだわ。

「だ、大丈夫?」

 リリーは、こくりとうなづいたけど、でもやっぱり大丈夫そうには見えないわ! 天才のアタイには隠しごとなんてムダなんだから!

「わかった! きっと誰かと弾幕ごっこをしてやられたのね!」

 なんだか首をふっているけど、きっと負けたのがアタイにバレるのが恥ずかしのね! アタイはさいきょーなんだから、そんなの気にしなくていいのに。仕方ない、アタイがなんとかしてあげるわ!

「リリーはきっとぼうぎょりょくが低いのよ! だからこれを上げる!」

 アタイはこんなのなくてもさいきょーだもの! 霊夢にはわるいけど、このぼうぎょりょくはリリーに上げるわ!
 なんだか近づいたら、さらにリリーがふるえてる。さいきょーのアタイが近づくだけでふるえるなんて、リリーもまだまだね、やっぱりこれはリリーがつけるべきなのよ!
 アタイがリリーにぼうぎょりょくを巻いてあげる。

「できたぁ! これでカンペキね! 安心して花を咲かせるといいわ!」

 ちょっと不思議そうな顔をしてるわね。きっとぼうぎょりょくがなんなのか知らないんだわ! だって、アタイは天才だからわかったんだもの!
 リリーは、ぼうぎょりょくを何回か触った。そしてすぐに顔を上げたの。やっぱりアタイの思った通り! ぼうぎょりょくを上げたら震えが止まったわ! 顔色はまだ少しわるいけど、これならすぐ直るにきまってるわ!
 今まで以上に笑顔になってリリーがペコリってしたの。おじぎっていうのかしら? こんなこと感謝されることじゃないわ!

「えへへ、気にしなくていいのよ! だってアタイはさいきょーなんだも、の?」

 リリーがトテトテとかけよってきた。近づくとやっぱりリリーはふるえる。でも近づいてきて、そして、アタイのほっぺにチュッってしてくれたの。

「…………ぁ」

 そうして、リリーはすぐにまた飛んでいった。

「リリー、次は負けちゃだめよー!」

 アタイはなんだかうれしくなって、リリーに向かってそう叫んだ。すると、リリーが止まって、アタイの方をふり向いて、指さした。

「うわぁ! スゴイ!」

 アタイの周りに黄色や白の花がたくさん咲いた。ちっちゃくてかわいい花がいっぱい! スゴイスゴイ! またリリーに会いたいわ! 
 大カエルとの戦いは今度にして、リリーを追いかけちゃおうかな?





「まさかそのままマフラー、忘れてきちゃうとは思わなかったわ」

 境内で私は萃香とお茶を飲んでいた。当然、萃香はお酒ね。まだ花も咲いていないのに、一体何を肴に飲んでいるのかしら。

「肴はもうすぐ咲くさ! なんてったって、今日リリーの声を聞いたからな」
「あら、そうなの? 私は気付かなかったわねぇ」
「霊夢はまだまだだなぁ」

 なにがまだまだなのかしら?

「でも、まだ肌寒いし、本当に来るのかしら?」
「でも確かに声を聞いたからなぁ。きっと来ると思うぞ」
「そうかしら……」

 ちょうど私がそう言った時、遠くから春を告げる声が聞こえてきた。「ほらな?」って萃香がちょっと得意げになっている。

「ホント、これで温かくなるのね」

 寒いのはあんまり好きじゃないから有難いわ。

「春ですよー。春ですよー」

 間延びした温かみのある声が、私達の耳に優しく届く。いいわね、この空気。リリーが持ってきてくれるこの空気。

「お、来るぞ!」

 萃香と同じように私も色のない、木々に目を移す。その木々を縫うようにしてリリーが飛びだしてきた。春を告げながら。
 リリーが通った後、色のなかった寂しい景色が、瞬く間に彩られ、鮮やかに描かれていく。

「ぷはぁ、いいねー、これを見ながら飲むのがわたしの楽しみだ!」

 萃香がそう言うのも納得ね。私もお酒にしておけばよかったわ。

「あれ? おい、霊夢ー。あのリリーがつけてるマフラー」

 萃香が私達の前を通り過ぎていくリリーを指差す。

「あら? あれ私のじゃない」
「なんでリリーが持ってるんだ?」
「私の前を、素通りしていったから届けにきてくれたってわけじゃなさそうね」
「だなぁ」

 スイスイ飛びながら、リリーはたまに私のマフラーを触って、ただでさえにこやかな表情をさらにしあわせそうな笑顔にする。
 それを見てたら、返せなんて言えそうもなくて……

「まぁいいわ。あれはリリーに上げるわよ」
「霊夢、まだ持ってるもんなぁ」
「えぇ、そうね」
「どうだ? 霊夢、一緒に呑まないか?」
「そうね。早速花見とでもいきましょうか」
「賛成だ!」

 わたしは萃香からおちょこを受け取り、中身を一気に飲み干した。
 少しずつ遠ざかっていく、リリーの声を聞きながら。
リリーがかわいすぎて仕方なかったので30分くらいで書いちゃいました。
喋ってる姿は作中になかったので、どう喋るのかがよくわからず、けっきょく「春ですよー」としか言わせられなかったorz
おまけに季節感がないですね。もっと早くに書くべきだった。
とまぁ、後悔だらけですが、すこしでもこう、のほほーんと、なんだかぽわ~んとしていただけたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。ぽわ~ん。
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.890簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
まだ春ですよー(ぽわ~ん)
10.90コチドリ削除
これは良いぽわ~んですねぇ。
このリリーはすごく頭をナデナデしたくなるなるなぁ。
そしてチルノはリリーが春を告げなくても花が咲いているなぁ、……頭に。
12.90名前が無い程度の能力削除
リリー! リリーじゃないか! ほら、アメちゃんあげるからこっちにおいd(