Coolier - 新生・東方創想話

ある妖狐の水着事情

2010/05/09 16:17:29
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キャラ崩壊が多々あります。お気をつけください。というかギャグ、のつもりです。






ワタクシ、橙はある種の究極の選択を迫られている。
目の前には、それぞれ甲乙付けがたい神秘の宝着が二点。
数々の犠牲、葛藤、困難の末にようやくたどり着いたこの二点。それだけに、両者の間には差はない。
否、差というものではない。対極、相反する二つ。
対極に位置していながら、どちらも最終候補まで生き残ったツワモノ。
さて、どうするべきか。どうするべきなのか。
本当なら、いつもなら自分の主である藍様に尋ねれば一発解決! なのだが、それはできない。
これは自分の主、藍様から直々に頼まれた命令、使命である。
主の期待に応えることができずに何が式神か、なにが妖獣か。
したらば、ここで応えるは式神としての、妖獣としての理。
故に、私は頭を悩ませる。











事は、数刻をさかのぼる。
いつものようにマヨヒガで猫たちの教育をしていた時のこと。
それはちょうど、部下たちに「旋回活殺自在陣」を教えこむのに熱が入っていた最中に藍様が訪れたことから始まった。
いつもの天女のような微笑みの藍様に私は一礼。式神は主に対して絶対服従が原則である、という藍様からの教えはしっかり守っている。とはいっても、これはあくまで心構えであり、あまり縛られるものでもない、とのこと。どの程度守ればいいものだろうか。
藍様が来たため「旋回活殺自在陣」の練習は中断して部下の猫たちに解散を告げた。一時中断の場合、大半の部下はトンずらしてしまうのは目に見えている。
元々は自由奔放な生き物。その程度でへこたれていてはいけない。
解散を告げると、案の定四方八方に散らばっていく部下たちを後に、藍様を家に招いた。
マヨヒガにある私の家は、独り暮らしのため小さく、玄関、台所、居間に縁側とシンプルな造りになっている。藍様を居間に案内し、自分は台所でお茶を用意してから居間へと向かった。
お茶といっても、お湯は沸くまで時間がかかってしまうので、作っておいた麦茶を代わりに入れて持っていく。
実は最近麦茶に凝ってるわけで。大麦も妖怪の山から厳選して収穫したし、水だって気をつけている。調べてみると、水には軟水と硬水に分けられているらしく、麦茶には軟水がいいらしい。さらにこの軟水を一回沸騰させるのがポイント。これだけで大分変わってくる。
いれたての麦茶を持って居間へ。



うん、おいしいね。藍様はそうほめてくれた。
なんで私の家には隠しカメラ設置されていないんだろう。ないものを嘆いても仕方が無いのでしっかりと目に焼き付けておく。目に焼き付けるように集中する。
ここで注意しなくてはいけないのが、藍様にばれないこと。目に焼き付けるために集中しすぎると、目の動脈が生々しく浮きでてしまう。以前そのことで永遠亭に連れて行かれたこともある。
原因がわからないのはプライドが許さない! といって尊大な自尊心の保持のため解剖されかけたりしたからもう勘弁。原因なんてないのに。しいて言うなら、美しすぎる藍様?


「今日は橙に頼みたいことがあってたずねたんだよ。何、難しい事でもないんだが、なにぶん不得意なことでな」


藍様の口から不得意、と弱気な単語が出てきたのは意外です。そして私を頼ってくれたことにはもっと意外です。正直驚きを通り越して昇天しそうです。主に私の藍様成分が。




しかし、藍様からの命令。それもわざわざご足労しての直接のご命令。
普段はあんなに忙しくいつ休んでいるのかもわからない里のアルバイターも真っ青な勤務時間をこなしている藍様が、そんな時間を割いて訪ねてくるなんて。
それは、つまり、その頼みごとの内容とは、きっと、愛の試練。
主従という高き垣根を越える茨の道への第一歩!
しかし私にとっては愛のシンドローム! 恋のファンタジア! 垣根のカタストロフィ!
藍様想って幾数年。
ひと時も、どんな時もどんな場所でも忘れることはありませんでした。
片時も話すことのなかった、My favorite RanSama’s collections。いつもお世話になりました。
この前紫様と交換した藍様の寝顔写真(とっても貴重)は今でも大事に保管しています。
これを手に入れるために、やむ終えず手放したいとしきコレクションたち(具体例:下着4日もの、使用済み。歯ブラシ、使用済み。バスタオル2ヶ月もの、使用済み 他数点)
盗撮すること風のごとく
私物を盗むは火のごとく
モフモフすること林のごとく
夜な夜なお世話になること山のごとく!
想う心は陰のごとく
恋の心は雷のごとし! あ、夜な夜なお世話になれば雷到来でもいいかも。
まあいい。さあ藍様! この橙に何なりとお申し付けくださいませ! 今なら竹取物語の難題だってやってやる!






「実は――――――――――」



















「水着着たい」

紫様が唐突にそういったらしい。それも昼食の準備をしているときに。
水着というのは、人間が湖や川、水のたまった容器の中に入るときに着るもので、下着の強度少し増しなもの。私も数回紫様に勧められてきたことがあった。わざわざそれを着ないと水にも入れないとは、人間とは不憫だとおもう。裸がいやならそのままで入ればいいのに。

それはともかく、紫様が唐突にそういって水着を着たらしい。
紫様らしい、大胆で常識にとらわれない行動だ。見習わなくては。
そうして昼食を食べ終わり、食器を片付けた後居間に戻ると紫様がじ~っと藍様を見つめてきて、次にこういったそうだ。


「今度はあなたの水着姿が見たい」


「いやです。水場でもないのになにが悲しくて肌を露出させなくてはいけないんですか。どこぞの露出狂や変人や紫様じゃありませんし」


こう即答したらしい。すると紫様に


「なら今度プールにでも行きましょう。そこなら水場だし。いっそ橙もつれて行きましょうか、水離れの克服もかねて」


こう切り替えされたそうだ。後は紫様に言いくるめられ、しぶしぶ承諾したらしい。
紫様、GJ!
頭を抱えているところに、雑誌という写真のたくさん載っている本を渡されて明日までにどれをきるのか決めるようにいわれたらしい。
そして、私のところまで来て、藍様が着る水着を選んでほしいといわれたわけだ。

藍様は才色兼備で完璧超人なすごい妖怪である。
しかし、こと自身のことに関しては少し抜けているところがある。これは、藍様の式である私が言うのだから間違いない。
まず、化粧をしたがらない。絶対に自分からはしない。たまに紫様にオモチャにされて化粧をされることはあってもそのときは心底いやそうな顔をする。
そして、おしゃれ意識が薄い。いやそれ以前に興味がない。服だっていつもおんなじ導師服。それ以外持っていない。紫様から聞いた話では、あの導師服も紫様が選んだらしい。それまでは何を着ていたのか聞いてみたが、遠い目をして空を眺め、忘れることにしたの、とつぶやいた。それ以後、その話題には触れないようにした。

私だって一応女の子なのだから、少しは興味があるしかわいいものはかわいいと思う。しかし、藍様は、なんというか、ずれている。うん、絶対にずれている。
そして、そのことを藍様も認識しているからこそ、今回私のところにきたのだ。
たぶん、自分が選んだらとんでもない、それはとんでもないことになるのだろうと察したのだろう。それはそれで見てみたい気もするけど。



「そういう訳だから橙、すまないが自分の水着を選ぶついでに私のも選んでおいてくれないか? 」


「わかりました。明日までですよね。しっかりと藍様に似あうすばらしいものを選んでおきます! 」


「あぁ、そうしてくれ。それじゃあ私は仕事のほうに戻るから。いろいろと邪魔をしてしまったね」


そうして藍様はマヨヒガを後にした。
姿が見えなくなるまで見送った後、自慢の想像力と藍様への溢れんばかりの忠誠心をもって雑誌を手に取った。










そして冒頭に移る。
長い時間をかけてようやく二つまで絞ったのだけれども、そこからが進まない。
どうするべきか。どうしようか。どうすればいいのだろうか。
雑誌を見比べては頭を悩ませること数時間。
何度も何度も脳内では藍様が二つの水着を着た姿が流れている。
だめだ、決められない。どちらも私のハートをエクスタスィーするのには十分な破壊力を兼ね備えている。
いつもなら、わからないことがあれば藍様に聞けば一発なのに。





藍様に、聞く―――













ピキーン!








そうだ! わからないことがあったら他の人に聞けばいいんじゃないか!
今回は、藍様が着る水着を選んでいるのだから、藍様に体格の似た人に聞いて回ればいいんじゃないか!
よく宴会などに来る魑魅魍魎の主の中から藍様に似た体格の人を思い出してみると、思いのほか人数が多い。
紅魔館の門番さん、永遠亭の薬剤師さん、里の守護者さん、守矢神社の神様、地底の鬼さん、核融合の鴉さん、命蓮寺の尼僧さん、死神の小町さん、幽々子様、そして紫様。
そうと決まれば早速聞きにいこう。











ケース1 紅美鈴

「あ、橙ちゃんいらっしゃい。今日はどうしたの? え、私に? この二つのどっちがいいかって? え~とちょっと見せてね~。う~ん、水着って言われてもねぇ、こっちだとあんまり着る機会なんてないからなぁ。そうねぇ、やっぱり着るのが簡単なこっちかな」

「本音は? 」

「たぶんこっちの方だと胸がきつそうで―――って咲夜さん!! 突然ナチュラルに会話に入んないでください! ビックリするじゃないですか」

「そんなに驚かなくてもいいじゃない。それともまた寝てたの? 」

「誰だっていきなり現れたらビックリしますって! 」

「いつものことじゃない。適応能力が低いわね」

「そういう問題じゃないと思いますけど」

「それはさておき、相変わらず憎たらしいほどふくよかな胸ね」

「どうしてさておくんですか。そしてそんないやらしい目で見ないでください。橙ちゃんもいますし教育に良くないと思います」


「年齢的には私のほうが年下でしょ。それに教育とは知りたいという欲求から――――――――始まるのよ」

「わっ! いつの間に! ちょ! やめてください! 服を引きちぎろうとするな! 橙ちゃんも見てるでしょ! 」

「相手の服を引き剥がすときは下着までは剥がさないように注意すること。一気に下着まで剥がしちゃうと後の楽しみがなくなっちゃうからね。それに下着を残したほうが絵的にもいいでしょ。できれば最初は全部剥がさずに少し残すようにするとなおよろしい。また皮膚にも傷をつけないようにするんだけど、相手によっては少しつけたほうが喜ぶ場合もあるから。相手の性癖に合わせて柔軟に対応しましょう。ここテストに出ます」

「何のテストですか咲夜さん! 橙ちゃんもまじめに聞き取らないでいいから! ひゃっ! どこ触ってるんですか! だから服を裂こうとしないでって! 息が荒くなってますよ! ちょ! だから、もう、いい加減にしなさい咲夜!!!!!」



橙はドロンした。必要な情報は聞くことができたし、おつりももらった。いい勉強になった。
今度藍様に聞いてみよう、そして機会を見計らって―――そう決意する橙であった。
ちなみに蛇足だが、その後紅魔館の門の前では所々服の破けた美鈴と正座をさせられた咲夜、という昔懐かしい光景が見られたそうな。テラスではニヤニヤと友人と一緒にその光景を眺める紅い悪魔が優雅に紅茶を楽しんでいました。















ケース2 上白沢慧音 八意永琳
「この二つから、ねぇ」

「随分と極端な二択だな」

紅魔館を後にし、次は慧音を探しに里の寺子屋を訪れてみた橙。中に入ってみると丁度良く永琳と一緒におり、簡単な事情を話してから雑誌を二人に手渡した。
なぜ永琳が慧音のところにいるのかというと、永琳は慧音と里の薬の流通について話し合っていたようでひと段落着いたところに橙が訪れる形となった。
永遠亭の薬は天才八意永琳の名に恥じぬすばらしいものばかりなのだが、そのすべてを里に流通させてしまっては幻想卿のバランスを壊しかねない危険性を含んでいる。永琳もそのことは理解しており、そのため里の守護者でもある慧音とどの程度制限をかけるかを話し合っていた。
簡単に言ってしまえば、どの程度の症状まで助けるかの線引きである。
そんな話し合いをしていたわけで、そのためか二人とも自分で肩を揉んだり眉間をつまんだりといささか疲れ気味である。
イスにもたれ掛かり、机に置いていた眼鏡をかけなおして雑誌を見る慧音。永琳は立ったまま腰に手を当て慧音の見る雑誌を、ややあきれつつ欠伸を織り交ぜながら覗き込んだ。
先ほどまで重要な話し合いをしていただけあって、雑誌の内容とのギャップに飲まれつつも二つを見比べ、そして二人とも同じタイミングで言った。

「「これで」」


二人の指先は、きれいに交差した。
二人ともあら意外、と視線を合わせた。
口火を切ったのは慧音だった。

「藍殿の体型を考えるとやはりこちらのほうがいいのではないか? 確かに、その、少しばかり露出が多い気もするが、水着なのだからある程度は妥協したほうがいいのではないか? 」

慧音の考えは永琳も重々わかっている。水着を着る機会がほとんどないため、経験というよりも理論的に選ぶのならば慧音のほうでいいだろう。しかし、永琳には選べなかった。選ぶわけにはいかなかった。その数限られた経験から学んだ教訓のため、あえてこちらを選んだ。

「あなたなら周りの空気を読んでこちらを選ぶと思ってたわ」

「周り? 」

そこで、仮に水着を着る機会があったとするならば周りには誰がいることになるだろう、と考えてみた。
里の子ども達、妹紅、あとは永遠亭の面々。
パッと思いついたのはこのくらいだろうか。それがどうしてそちらの水着を選ぶことに繋がるのか納得がいかない慧音。
永琳は続けて言う。自分の数限りある経験と選んだ理由を。

「昔ね、姫様と一緒に水浴びをしたことがあったのよ。そのときに姫様の気まぐれで水着を着たのだけれども、そのとき私はそっちの水着みたいなのを選んだわ。そうしたら、それ以来姫様が水浴びを一緒にしなくなり、しばらくの間私とも距離を置いたのよ」

「なんでまたそんな。水浴びのときに何かしたのか? 」

「水浴びが原因じゃないの。考えて見なさい。姫様はこの二つのどっちのほうを着ていたと思う? 」

「そうだな、輝夜なら、たぶんこっちじゃないか」

「あたり。でもね、想像して御覧なさい。こっちの水着を着た私と、この水着を着た姫様。絵的に、かなり姫様幼く見えちゃうでしょ。妬みと屈辱感の込められた熱い視線が、主に胸に来るのよ。それもず~っと。後半は少し涙目みたいだったようだし。こういっては難だけど、妹紅と姫様、体格とか性格とかあんまり大差ないでしょ。さらに言うなら、そっちの水着で里の子ども達と一緒だったら、何人かの子どもにいたずらされるんじゃないかしら? 」

確かに妹紅と姫様は体格、性格が似ている。本人たちは断固として抗議するだろうが、似ている。






シーンが切り替わる。
川沿い、妹紅と一緒に仲良く水浴び。
早速水着に着替える。面倒くさいといいながら着替える妹紅。
そして自分も着替える。
着替え終わっていざ水浴び。
川の手前で立ち止まる妹紅。視線が首から下へ。
徐々に目つきが、怖く、妬ましそうに、少し涙目になる。
そして走り出す。森の中へと。逃走。それも全速力で。
その後家を訪ねても居留守をされ、面会拒絶へ。









「なん・・・・・・・・・・だと・・・・・・」

頭を抱えてうなだれる慧音。肩をたたき慰める永琳。まだ大丈夫、あなたはまだアクシデントを起こしていない。そしてアクシデントはもう起こらない。そう言い聞かせている。


その時、慧音の脳内審議委員No5に電流流れる。

「そうだ永琳! いっそのことこの水着を着せればいいんじゃないか! 私たちがこっちの方を着ていれば反論はできないだろうし! そして、うまくいくことがあればアクシデントも起こるかもしれない! 」

「は! それはグットよ! デォモールトな考えじゃない! 着てみたはいいものの、やっぱり体格的に恥ずかしいようで頬を赤らめ細い腕で胸元を隠すしぐさが目に浮かぶわ―――」

「よし! 早速準備に取り掛かろう! 天狗にアリスに河童にウサギ。早速打ち合わせをしなければ! 」

二人とも、先ほどまでの話し合いでだいぶ疲れがたまっていたようで、若干テンションがおかしなことになっている。疲れをためすぎたため、ここいらで息抜きをしなければいけないらしい。輝夜と妹紅には、その尊い犠牲になってもらうほかないのかもしれない。














ケース3 地霊殿と命連寺

「事情はわかりました。主人のために懸命に頑張るなんてなんてすばらしい。ぜひ協力させていただくわ」

次に訪れたのは最近引っ越してきた命連寺。一人で訪れるのは初めてで、青い頭巾をかぶった門番らしきお姉さんに話すときにカチカチで何を言っているのか伝わらなかった。
いよいよ頭がパニックになったところに、思わぬ助け舟が訪れ今この場にいるわけである。
その思わぬ助け舟とは……

「うちのペットの中だと、そうねぇお空くらいしかいないかしら。私やこいし、お燐でも少し違うだろうし」

地底の地獄の地霊殿が主、古明地さとり。言わずも知れた覚り妖怪の生き残りにして地底でだいぶ偉い人。
その人がどうして命連寺にいるのかはわからなかったが、きっとやんごとなき事情があったのだろう。
それでもいろいろ考えてしまう。元々地底からはあまり出ないだろうし、宴会もたまにしか見ないから多分あってると思う。よほどの事件? 異変? 見た目は紅魔館の吸血鬼見たいに私と同じ、もしかすると私よりも小さく見えるものの、これでも地霊殿の主。その主がわざわざ地上に出てきたのだから―――

「大げさなことでもありませんよ。ただの社会見学です」

にゃう! か、考えていることを読まれた!! ってさっきも読んでもらって説明までしてもらったからすんなり入れたのだけども。
一方、さとりさんは笑みを浮かべている。これでも地上で最も意味嫌われた妖怪なのだが、ピンとこない。私が元々動物だったからだろうか。
そんな笑みままのさとりさんに、私は尋ねる。水着の事を、といいたいのだけどその前にどうしても言っておきたい、言いたいことがあるのでそっちを優先した。

「ところで、どうしてそんな状況なんですか? 」

妹のこいしさんとペットの空さんががっちりと抱きついている。それも私とあったその時から。その時から説明、移動、着席までピタッとくっついて離れない。まるでさとりさんの一部ですと言わんばかりにペッタリ。ちなみにこいしさんが前に、空さんが後ろに抱きついている状態です。

「さて、私たち地底のものは水着を着る機会があまりないのですが。それにお空に選べと言ってもこの子はその手の事は疎いので、代わりに私が選んでみますね。もちろんお空に着せるなら、という前提で考えますのでご安心を」

「スルーされた!! 」

さっきの表情のまま、見事にスルーしたよ! え、なに。もしかして聞いちゃいけなかったの! 聞いちゃまずかったことなの! でもしかたがないじゃないですか。だってあんなに不自然にくっついているのに誰もつっこまないし、まるでいつもの光景、見たいにスルーしてるし。まずかったのかな、言っちゃいけなかったのかな、空気読めてなかったのかな、やっちゃったのかなワタシ!!

「だからそんなに難しく考えなくてもいいですよ。この状況は、もう諦めていますから。それとこいし、無意識を装ってスカートをめくろうとしないの。お空も馬鹿の振りして服の間に手をしのばせないの」

うん、この人、大変なんだな。やっぱり主って大変なんだね。紫様を見ていてもそう思うよ。藍様、私、立派な妖獣になれるよう頑張ります。

「う~ん、私も長い間封印されていたから、こういうのは疎いのよ。本当は村沙やぬえがいると助かるんだけど、あいにく今席を外しているからねぇ。星はどれがいい? 」

「私には縁のないものなので、どちらでも構いません」

聖さんの隣にいるのは寅丸星さん。毘沙門天さまの代理をしている偉い人。雰囲気とか藍様にちょっと似ているきれいなお姉さん。
こういうのを、凛々しく美しい、才色兼備っていうんだろうな。

「ではご主人にはこれなんてどうだろう」

「いえいえ、こっちなんてどうかしら。星の体のラインがうまく生かせるし」

「出来ればもっと肌を露出させてみましょう。これなんてどうです」

「あら、いいじゃない。でももう少しあってもいいんじゃない。ほら、今は見えるか見えないかのギリギリがいい、ていうじゃない」

「それならやはり紐だろう。いつほどけるかわからないハラハラ感とかたまらない。あ、これみたいな」

「うん、いいと思うわ。絶対に星に似合う。絶対に恥ずかしがって顔を赤らめる」

「真っ赤っかになったご主人の背後に忍び寄って、紐を引っ張れば」

「な、なんの話をしているんですか聖、ナズーリン!! こここ、こんな紐見たいなもの、だだだ誰が着るんですいったい!! これじゃあ露出狂じゃないですか!!! 」

前言撤回。こういい人を、黙っていれば才色兼備っていうんだろうな。というかいつの間にか寅丸さんの水着の話になっているし。寅丸さん顔真っ赤っか出し。ちょっと藍様に似ているから、藍様もきっと顔が赤くなるとああなるんだろうか。かわいい。

さとりさんはさとりさんで、選んでくれてはいるもののひっついた二人からの攻撃を払うのに必死でいいアドバイスを聞けなかった。今度機会があったらさとりさんに抱きついてみようかな。聖さんは聖さんで、寅丸さんを真っ赤っかにしていたし。
うん、帰ろう。次だ次。














ケース4 星熊勇儀

守矢神社に行く山中に発見。しかし、かなり出来上がっていたため回避。烏天狗と白狼天狗が犠牲になってたけど、私は悪くない。出来る限りの危険は回避するのが得策である。藍様の教えは偉大だ。












ケース5 守矢神社
「早苗にはこっちが似合うにきまってんだろうがこのロリケロがっぱ! 」

「はっ! これだから熟年ババアの考えはどれもこれも昔臭いステレオタイプなんだよ! 早苗は昔からこっちのタイプを着ていただろうが! そっちがいいに決まってるボケェ!」

「それだとロリ臭く見えるに決まってんだろうが! 自分が合法ロリだからって子孫にまで感染させるなこの病原体! 」

「今はこっちでもかわいいのが沢山なんだよ! それを見ようともしねえてめえのようなやつがいるからこちとら安心して早苗を預けられねえんだこのフェミニスト神代表! 」

「いくら水着がかわいくても早苗のあのふくよかな胸とはアンバランスに決まってんだろうが! それもわかんねーのかこのケロ娘! 」

「結局胸か! 結局お前にとっての早苗は胸なのかこのフェミニスト! てめえがそんなだから一緒にお風呂入るの拒絶されんだよ! 最近早苗からマジな相談されるこっちの身にもなってみろ! 」

「一緒に入ったっていいじゃないか! 神様だもの! 」

「神様でもやっていいことと悪いことあるだろ! 」

「貴様はいいよな!! 早苗と一緒にお風呂に入れてさあ!!!! 」

「お前が早苗の入浴中に乱入してくるからって泣き付かれたんだよ! 本当にやるなよボケぇ!!! 」

「悪いかああああああああああ!!!!!!!!!!」

「悪いわああああああああああ!!!!!!!!!!」


「あ、だから今早苗さんが博麗神社に避難しているのか」















ケース6 幽々子様
幽々子に会いに白玉楼を訪れ、庭師の魂魄妖夢に事情を話す。主である藍や紫とも交流の深い白玉楼なだけにすぐに会うことができた。
庭の縁側に座り、団子をつまんでいた幽々子の傍には竹串がいくつも捨てられていた。
さて、過程はさておいて結果だけを言えば、無駄足に終わってしまった白玉楼の訪問。
理由は幽々子本人が水着に興味が無く、どっちでもいい、妖夢とお揃いでいい、という結論に達したためである。
ちなみに妖夢は、肌の露出が少なくて済む、という理由からこちらの水着を選択。若干幽々子が残念そうにしていた。そんな主の視線に気づかないふりをして庭の掃除に戻る妖夢。
そのいつもの光景に橙は、目の前の普通の日常を目にしながら、無駄足だったものの来てよかった、助かったと胸をなでおろした。

普段通りの日常って、大切なものだと改めて理解し、また少し大人へと成長した橙であった。














ケース7 八雲紫
死神小町には上手く会うことができなかった。どうやら珍しくサボっていないらしい。
そして橙は最後の所へと足を運んだ。
八雲邸、妖怪の賢者八雲紫、藍の主の元へと。



「なるほどねぇ。藍がそんなことを」



一連の経緯とこれまでの結果を紫に伝える。藍は今出かけているため、都合良く紫一人であった。手に持った扇をパタンと閉じ頭を左右に揺らしてはテンポよく頬を扇で叩く。

橙の選んだ二つの水着を見比べながら、この子どうしてこう育っちゃってるのかしら、と橙の将来と藍の教育方針に不安を覚えてしまう。藍の事なので教育方針には欠点などないはず、なのだがいったいどうしたものか。

最も、この橙の成長を一番楽しんでいるのはほかならぬ紫本人であり、不安よりも楽しみの方が数段高い。なのでこのまま放置。

紫は自身の水着は既に用意してはいるが、あまりも沢山ある。そのすべてを藍に着させて遊ぶのも楽しいのだが、式の式に華を持たせるのも主人の心意気。
なのでここは素直に、自分ならどうするか、八雲紫ならこの二つ、「ビキニ」と「スク水」のどちらを選択するのか。


と、この時紫の脳裏に、すばらしい名案がふと舞い降りてきた。そこでは藍は顔をこれでもかというくらい真っ赤にしているではないか。これは、ぜひ見たい。思い立ったが吉日。満面の胡散臭い笑みを浮かべた紫はいった。




「橙、元々は藍だって妖獣、妖怪の前は動物だったのよ。動物は服を着たりしているかしら? 着ていないわよね。藍だって昔はそうよ。今でこそ里にもよく出向くから服を着ているけど、初めのころはそれは嫌がっていたものよ。そんな藍が唯一、服から解放される場所がある。それはお風呂、水浴びね。今回のだって元をただせばただの水浴び。妖獣ではない私にはわからないけど、貴方も藍も同じ妖獣。息抜きの水浴びくらいは、普段我慢していることから解放されてもいいんじゃないかしら。もっとも、橙は水着には興味あるみたいだから着てみたらいいのだけれど、藍はあまり興味が無いみたいでしょ。そんなあのこに無理やり着せるのも、かわいそうと思ってね。つまり―――」

「つまり―――」























「橙、どうして私の分の水着がないんだ? 水着の事は任せてください、と言っていたから当日今の今まで任せていたのだが……」

「はい。この橙、一生懸命考えに考え、いろいろな方の助言や考えを聞き、ある一つの結論に達したんです」

「で、それは一体どんな理論なんだ」

「藍様に水着なんていらない。むしろそのまま裸でもいいんじゃないかなぁ!!!」

「紫様だな。紫様なんだな! 紫様からの意見なんだなそれは!!! それをどうして採用したんだ橙!!!! 」

「その方が藍様も喜ぶっていってました!!! 」

「紫様あああああ!! また橙にあることないこと教え込んで!!!! どうしてくれるんですか! 私水浴びしませんよ!!!! 」

「もう、うるさいわね。私の素晴らしい水着でもみて落ち着きなさい」

「結構浮いてますよ、その水着」

「よいしょっと」

「うわぁ!! どこから水なんて出したんですか!! おかげでびしょびしょじゃないですか!!! 」

「あーら残念。これじゃあ乾くまで大変ねぇ。所でこんなところに私と同じ水着があるんだけど、どうしようかしら。あ、藍はそのまま裸で、真っパで水浴びするんだもんね。橙だって貴方と水浴びするの楽しみにしていたんだからそれを踏みにじる行為なんてするわけないわよね。あぁ、どうしようかしら~この水着~藍にぴったりサイズの~」
……うん、わかってるんだ。こんな時期に投稿するよな話でもないことくらい。
それに、今回いろいろ遊び過ぎて、グダグダしてます。

本当はプチに載せる予定だったのですが、いろいろと勢い任せに書いて行ったら


こうなりました


後悔、は少ししているかも。
今回は、ケース○の所で書き方をいろいろ変えてみました。その時の気分で書きやすいように書いたらああなりました。ワハハ

さて、この話の設定ですが、本当はスク水ではなくワンピースのような型の水着とビキニの二つにしようとしたのですが、面倒になってスク水にしちゃいました。ちなみにビキニはかなりきわどいもので、ゆかりんの水着は、ご想像にお任せします。

補足ですが、お空はお燐とのじゃんけんに勝って、さとりさまの護衛、という名目でひっついています。

え? こいしがいたって? え?



さて、あと美鈴が咲夜さんを育ててたとか、いろいろと自己解釈がありますが、まぁ流してやってください。
あ、それと永遠亭での「天狗にアリスに河童にウサギ」とは、盗撮、水着、いたずら、逃走路遮断そのたもろもろとまぁこんな役割です。


書いていて思ったんですが

末期の橙って、書きやすい。
レイシェン
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コメント



0.1940簡易評価
2.80煉獄削除
水着をどっちにするか……ですか。 色々と人に意見を聞いた結果、藍には水着がない、と。
実際のところ選ぶとしたらワンピース型とか似合いそうですよねぇ。
紅魔館で意見を聞いている場面にニヤニヤしたり、神様二人の言い合いとか面白かったですよ。
7.90名前が無い程度の能力削除
眼福
10.70名前が無い程度の能力削除
壊れた橙がこれほど可愛とは思わなかったぜ。 面白かったがいくつか誤字を発見

見てみた息もするけど。→見てみたい気もするけど。

生き抜きをしなければいけないらしい。→息抜きをしなければいけないらしい。

こちらの水着を洗濯。→こちらの水着を選択。

テンポよく方を扇で叩く。→テンポよく頬を扇で叩く。
13.100名前が無い程度の能力削除
らんしゃまの裸を書く作業に戻りなさい
16.100名前が無い程度の能力削除
末期橙は素晴らしいな
18.100名前が無い程度の能力削除
藍様を貰おうか・・・
23.90名前が無い程度の能力削除
末期橙いいな
うん、末期橙いいな
オレのなかの橙の設定が今決まった
25.無評価名前が無い程度の能力削除
上で既に指摘されている方がいますが、そこで指摘されていないものを。

それはそれで見てみた息もするけど。→見てみたい気もするけど。
方を揉んだり→肩を
ここいらで生き抜きを→息抜きを
そっちが言いに決まって→良いに、いいに
てめえそんなおだから→そんなのだから
普段道理の日常→普段通り
合うことができなかった。→会うことが
すばらしい明暗→名案
29.無評価レイシェン削除
最近、私のSSって間違い探しじゃないのかなぁって自己嫌悪するほどの誤字脱字でした。
指摘してくださった方々、誠にありがとうございました。

感想を書いてくださった方々も大変ありがとうございます
生きる糧になりますよ本当に。

ちなみに私のイメージは海辺に来ても上着だけはきてパラソルの中で橙を眺めている、そんな感じです。
え? 中身はって?


そんなの………想像した水着が何とい言うのかわかりません………
31.80名前が無い程度の能力削除
藍様は競泳水着がいいと思うの


>>29
>何とい言うのか
→何と言うのか

まあ、ホットミルクでも飲んで落ち着いてください。つC口
33.90名前が無い程度の能力削除
紫様の選んだ水着はきっとスリングショット!
スリングショットですよ!
34.100名前が無い程度の能力削除
いい!いいよアリだよこんな八雲一家!
やはり藍様は愛でるべき存在!
その魅力の前では愛も歪んで当然!
40.70名前が無い程度の能力削除
幻想郷の住人たちによる水着談義、
良かったですよ~。
45.100名前が無い程度の能力削除
尻尾の付け根をクリアさせる必要があるからローレグローライズorマイクロなビキニが最適

と雲山は申しております
47.無評価ぺ・四潤削除
今更遅すぎますけど、どうせなので残りも報告しますね。

「片時も話すことのなかった、My favorite RanSama’s collections。」離す
「これを手に入れるために、やむ終えず手放したいとしきコレクションたち」やむを得ず
「そのすべてを里に流通させてしまっては幻想卿のバランスを壊しかねない」幻想郷
「こういっては難だけど、妹紅と姫様、体格とか性格とかあんまり大差ないでしょ」何だけど
「ケース3 地霊殿と命連寺」命蓮寺 他も全部連になってます。
「これでも地上で最も意味嫌われた妖怪なのだが、ピンとこない。」忌み嫌われた
「本当は村沙やぬえがいると助かるんだけど、」村紗
「寅丸さん顔真っ赤っか出し。」だし。
48.80ぺ・四潤削除
常識人な藍様に壊れ橙というのもなかなかいいなww
いや、藍様はあの尻尾がある限りスク水という選択肢が最初から無理だと思うんだがww
しかし、俺はあえてスク水を押そう。
スク水を用意するとだな。藍様が尻尾が邪魔で着られないと言い出すんだ。
そしたら前後逆に着させると水抜き穴から尻尾を出してTバックに。そして胸は生地に余裕の無い背中側が前に来るから胸がぎゅうぎゅうに押し付けられて、大きく開いた胸元からこぼれんばかり。それはまるでアンミラのエプロンの如し。
どうだろう。
59.60楽郷 陸削除
それぞれの掛け合いが面白かった。最初に2つの水着を明記しなかったために、想像しにくかったところがマイナスだった。