Coolier - 新生・東方創想話

鬼を導くは銀の心

2010/05/08 02:40:49
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悪夢騒動が落ち着き、

霖之助が枕を高くして眠ることができ、早三日が過ぎた。

あの後、紫も本気で反省したのか

神奈子と二人で飲んでいた時に、

ひっそりと涙を流し、呟くように謝っていたという。

元々そこまで怒ってるわけではなかったので、

いつもの紫とのギャップに、霖之助も困っていたらしい。

閑話休題。

その騒動もあってか、

パルスィが珍しく、地上に出ることになった。

店と主人の名は分かったが、

場所までは分からなかったので、

恥ずかしいのを覚悟して、霊夢に聞くことにした。

当然地底にいた妖怪が、急に聞いてくるので、

霊夢も、どこか警戒するような顔付きになる。

そこで、理由を話すと

案の定、彼女は抱腹絶倒とまでは行かないが、

まるで何かを言いたそうに、必死に笑うのを抑えてたのが分かった。

パルスィが立ち去るまでの間、霊夢のニヤニヤが止まらなかったとは本人の談。












「ええっと…あ、あそこのようね」

魔法の森の近くに建ってる家というのは、

数える程でしかない為、比較的簡単に見つけることができる。

店の前まで来るのはいいが、

急に緊張し出して、中々最初の一歩が踏み出せない。

何度も戸を開けようとしては止めの繰り返しで、

帰ろうと思ったのも一度や二度ではない。

そして何度目になるか忘れかけた頃、

戸に手を掛けた、その時。

「店に何か用かな?」

「ひゃう!?」

店の中からではなく、後ろから声が掛けられた。

「パルスィじゃないか。嬉しいね、来てくれるとは。

 まぁここじゃ何だし、入るといい」

今まで嫌われてた自分が、

来たことで嬉しいと言われ、ほんのりとだが頬を赤らめる。

おずおずと霖之助の後を追い、

勘定台の前の椅子に腰を落ち着かせる。

「さて、今日はどういったご用で?」

「あの…この間のお礼を言いたくて…」

お礼と言われ、霖之助の顔が少しだけ傾く。

「お礼を言われるような事をした覚えはないんだが」

「あなたには無くても、私にとってはお礼を言いたくなるようなものだったのよ」

余計にわけが分からなくなったような顔になる霖之助。

「できれば、教えてくれるかい?」

「…あなたは、私が何の妖怪か知ってる?」

質問に質問で返され、呆ける霖之助だったが

質問の意味を捉えると、少し冷めた茶を啜りながら答えた。

「橋姫と聞いている。嫉妬の末に橋に身を投げ、鬼と化した存在ともね」

「ええ、その通りよ。それがいつの話かは忘れたけど…。

 そのせいで、能力も嫉妬を操るなんて…笑えちゃうわよね」

霖之助は何も喋らない。

「私が今までしてきた事と言えば、他人を妬むことばかり。

 男女が仲良く歩いていれば妬み、幸せそうな顔を見たら妬む。

 そのおかげで、地上では忌み嫌われる存在になってしまったわ。

 そりゃ、そうよね。一緒に居ても不愉快になる女なんて、

 私も嫌だわ。ねぇ、あなたもそう思うでしょう?」

霖之助に答えを求めようと、顔を覗きこんでる彼女の顔は、

今にも泣き出しそうであった。

「確かに、嫉妬とは人を不愉快にさせる感情だろう」

自分の事を言われてるようで、より悲しい顔になる彼女。

心のどこかでは、立ち去ろう。そして二度とここには来るまいと思っていた。

「だが、前にも言った通り嫉妬とは羨む感情の裏返しのようなものだ。

 羨むということは、それだけ自分との差を分かり、

 それに少しでも近づきたいという感情でもある。

 それのどこが悪いというんだい?

 僕に言わせてみれば、嫉妬があっての生物だと言っても過言ではないよ」

今度は逆にパルスィが呆けた顔になる。

まるで、今まで自分が信じてきたものが嘘であったかのように。

「…あなたは私を嫌いじゃないの?不愉快にさせないの?」

「では逆に聞こうか。君は不愉快にさせる人を家へ招くかい?」

今まで我慢してきた何かが、どっと溢れる様に涙になって流れ出る。

「ご、ごめんなさいっ、なんかひぐっ、涙が勝手に…」

涙を止めようと一生懸命目を擦るが、治まる気配はない。

いつの間に移動したのか、隣に椅子を持ってきて座った霖之助は、

彼女の頭に軽く手を置き、

「それは君の今までの我慢の量だよ。つらかったんだろうね。

 幸い人もいないし、人通りも少ない。

 ここで、思いっきり泣くといい」

最後に頭を優しく撫でられたことで、彼女の涙の防波堤は決壊した。

「ふ、ふぐううぅうぅうぅうぅうぅぅぅぅううぅぅっ」

それでも、恥ずかしい姿を見せたくないのか、

必死に歯を食いしばって涙を流す。

彼女も無意識になのか、霖之助の胸に顔を寄せ、

泣き顔を見せないようにしている。

霖之助も嫌がる顔一つせず、

彼女が落ち着くまで、ずっと優しく頭を撫でていたそうな。















彼女も少しずつ落ち着きを見せ始め、

時折、嗚咽をする程度だった。

「ごめんなさい。恥ずかしい所を見せちゃったわね」

「何、気にすることはないさ。人だろうと妖怪だろうと涙は流すものさ。

 寧ろ溜め込んでおく方が体に悪いからね。君もどんどん泣くといい」

「赤ん坊じゃないんだから、そんなにどんどんなんて泣けないわ」

すると、霖之助の口の端が少し釣りあがり、

「ほう?では先程僕に必死にしがみ付き、

 泣きじゃくっていた姿を見せてあげればよかったかな?

 あれはどう見ても赤ん坊だったんだが」

「う、うっさいわね。それも私の能力なのよっ」

「赤ん坊になる程度の能力か。今度霊夢や魔理沙に見てもらいたいものだね」

睨みあってた二人だが、

「…私の負けよ、妬ましい。っていつから勝負になったのかしら」

「さぁてね。それより元気が戻ったようで安心したよ」

先程までまるで悪戯っ子のような瞳だったが、

急に穏やかな目になったことで、パルスィも急に赤くなり、

「な、何急に優しくなってんのよ、妬ましい」

赤くなった顔を隠すため、俯いてしまった。

「はて、僕は最初から天使にも負けない慈愛の持ち主だと思うが?」

「それをあなたを知ってる人に言って、何人が同意するかしらね」

赤くなりながらも、上目で霖之助を睨みつける姿に

不愉快はもちろん、怖さだって感じられない。

「さて、暗い話を続けるのも何だし何か見ていくかい?

 僕はその間にお茶を淹れておこう」

そういうと、自分の湯のみを持って奥へと入っていった。

取り残されたパルスィも手持ち無沙汰なので、

店内を見て回るが、大半のものが見たことないものばかりで、

使い方も分からず、頭にクエスチョン・マークが途絶えなかった。

そうしてるうちに、霖之助も淹れ終えたのか

自分のと彼女の2つを持って、中から出てきた。

「何か、気になったものでもあったかな?」

「うーん、これといったものはないわねぇ」

パルスィには見せないように、霖之助の肩が微かに落ちる。

と、同時に霖之助が何か思いついたかのように奥へと引っ込むと、

数分してから、小さい縦長い箱を持ってやってきた。

「それは?」

「この間、これが多く手に入ってね。少し加工したものなんだ。

 君に似合うと思うよ」

と、言って箱は開けて出てきたのは、

綺麗に整えられた宝石のついたネックレスだった。

「ムーンストーンと言ってね。

 大切なものや人を心の中で見失ってしまった時、

 気づかせてくれると言われてるんだ」

「…そう」

自信ありげに喋る霖之助とは対照的に、

パルスィは口数が減っていた。

「宝石には興味なかったかな?」

「い、いやそうじゃなくてね…」

(この人は分かって出してるのかしら…

 この宝石が「恋人達の石」と呼ばれてることに。

 まるで、その…遠まわしな告白じゃないの…)

「でも、宝石を買える程は持ってないわ」

「これはサービスとさせてもらうよ。

 これからもずっと来てもらいたいしね」

初めて「ずっと来てもらいたい」等と言われ、

また少し目に涙が浮かんでくるが、

もう迷惑をかけられないため、必死に涙を乾かそうとする。

「似合うかしら」

顔を赤くしてうつむきながら、呟く。

「君ほどの女性に似合わないものなんて、そうないと思うがね。

 これもサービスだし、つけてあげるよ。

 あっち向いてくれるかい」

言われた通りに、霖之助とは逆の方向を向き、

ネックレスを付けやすいよう、髪を束ね持ち上げる。

ドキドキしながらも、霖之助がつけるのをずっと待つパルスィ。

霖之助が、ネックレスをつけようとすると、

指が首筋に辺り、

「ひんっ」

と、情けない声を挙げてしまった。











「よし、できた」

ネックレスを付け終えると、彼女をこっちに向かせる。

補足だが、ムーンストーン、直訳で月の石となるわけだが、

だからと言って全てが銀色というわけではない。

パルスィがもらったものは、少し青色がかかっていた。

閑話休題。

彼女は恥ずかしながらも、指で宝石を弄くりながら

愛しそうに、見つめる。

その姿からは、橋姫だなんて誰が想像できようか。

「気に入ってもらえたようだね」

サービスとは言え、客に気に入ってもらえれば、

霖之助としても、宝石としても満足だろう。

「ええ、とても気に入ったわ。ありがとう」

「時間も丁度いい頃合だ。送っていこうか?」

「やけに親切ね。でも気持ちだけ受け取っておくわ。

 少なくともあなたよりは強いもの」

魔理沙や霖之助を知ってる者が今の霖之助を知ったら、

どんな反応をするだろうか。

パルスィとしても、この親切が客足を増やすためのものだとは分かってる。

それでも、彼女にとって自分が必要とされてるということが、

何より嬉しかったのだ。

「そうかい。今度からは何か買っていってくれると嬉しいんだが」

「その時は、もっと興味を示すものを揃えることね。期待してるわ」

彼女は優しく微笑むと、そのまま店を出て行ってしまった。

その帰り道。

パルスィは飛びながら、地底を目指していた。

霖之助に泣き顔を見せたことなど、

今にも顔から火を噴出しそうな勢いだったが、

不思議と嫌という感じはしなかった。

「こんな気持ちも何百年ぶりね」

パルスィの心の中では、いつまでも銀の光が絶えず光っていたそうな。
ふむ、珍しくハーレムじゃなかったなぁ。

ども、林檎です。

今回はパルスィのみを挙げてみました。

毎回ハーレムだと飽きる人もいると思うので、

ちょっとシリアス気味に?やってみました。

しかし、この霖之助は綺麗すぎる。

パルスィかわいいよパルスィ(´・ω・`)
白黒林檎
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コメント



0.2110簡易評価
5.100名前が無い程度の能力削除
パルスィフラグですね、わかります
三角関係ヒャッホーイ!!
8.無評価名前が無い程度の能力削除
前回パルスィの話を書いてくれとリクしたらあがってたwwGJ
15.100名前が無い程度の能力削除
次は神奈子と取り合いの話ですね
パルスィかわいいよパルスィ
18.100名前が無い程度の能力削除
ヒャッホーィ!!
きた!パル霖きた!メインパル霖きた!これで勝つる!
また次のパル霖を期待して待ってるんだぜっ
26.100名前が無い程度の能力削除
パルスィが可愛くて2828しました。
51.100名前が無い程度の能力削除
彼の話こそもっと評価されるべきだろ
53.100名前が無い程度の能力削除
普通にいけるいける