その日の宴会は普段よりも騒々しい物で、私も熱気に当てられて酒が進むペースが早い日で―――――。
「なぁ、そろそろスペルカードルールにも新しい風が必要じゃないか?」
各々好き勝手に飲めや食えやの大騒ぎの中、すっかり皆が出来上がって来た頃、ふと隣に座る魔理沙がこんな事を言い出した。
「アリスよ、どう思う?」
「どう思うって言われても」
急に話を振られ、私はグラスを傾けかけた手を止める。
「今まで何度か変則ルールのスペルカード戦があったじゃないか。ここの所スタンダードなルールによる異変が続いていたからな、そろそろ何か新しい動きがあってもいいんじゃないかと思ってな」
「そうねぇ……」
スペルカードルールは何も一つだけに定められているわけではない。
基本的には異変解決者と異変を起こした者(及び巻き込まれた者と巻き込まれにいった者)との一対一での弾幕戦。これは上海スタイルと呼ばれており、これをベースとし、各地方のローカルルールがさらに付け加えられることが多い。スペルカードルール発足当時から親しまれているルールだ。
しかし異変を起こすもの達の中には変わった決闘方法を好む者もいる。
例えば、萃香が起こした宴会の異変。これは黄昏スタイルと呼ばれているルールに則ったものだ。
弾幕の他に体術の使用及び物理的な武器の使用が全面的に解禁されており、肉体言語をフルに駆使するこのルールはインドア派の私にとっては大変疲れるものであった。
異変では無い個人と個人の決闘にはこの黄昏スタイルが主流になりつつあるとかないとか……最近身の回りでもこのルールで派手に殴り合ってる光景を見かける。
ちなみに、天人が起こした異変の際にはこの黄昏スタイルを大幅に改定されたものが採用されている。
「あの時のアリスは靴に何か仕込んでいるとしか思えないぐらい蹴りの威力が冴えてたな」
「失礼ね」
そんなことぐらいで文句を言わないで欲しいわね。
他にも妖精たちを盛大に巻き込んだ「スプライツスタイル」と呼ばれるものや、あの圧迫取材で有名な烏天狗が取材の際一方的に仕掛けてくる「ヒトコトオネガイシマスタイル」がある。
後者は最近になって真似する天狗が一人現れたらしく、被害者が増えているらしいと魔理沙や霊夢から聞いた。
「なぁ何かアイデアだせよ、幻想郷の知恵袋って顔してるだろーアリス」
そう言って魔理沙は私のグラスに溢れそうなぐらいに酒を注ぎこむ。
「誰がおばあちゃんよ誰が」
すかさず私も魔理沙のグラスに限界まで酒を注ぎ込んだ。
お互い、一気にそれを飲み干し、空になったグラスをテーブルに叩きつける。
「……ふぅ」
「……そういえば」
私は、ある異変の事を思い出した。
「いつかの月の異変の時、一緒に解決に向かったじゃない」
「おぉ、そんな事もあったなそういえば」
「あの時のルール、二対一なのか交代で一対一なのかよくわからない事になってたけど……」
魔理沙の被弾に割り込んだり逆に私の被弾に魔理沙が割り込んできたり、いつもは異変を解決する側の霊夢が夜を止めている私たちを退治しにきたり、一度解決したと思ったらもう一度解決に向かうはめになったり……あの夜は歪な満月の光に皆中てられていたのか奇妙なことばかりだったわね、そういえば。
「思えば今まで、こう、チーム戦とかそういうのって無かったような?」
「言われてみればそうだな」
今触れた月の異変の他、春の異変の時に魔理沙が私を倒した後騒霊に三対一を挑まれたと言う話を聞いた。マスタースパークで一掃してやったと嬉しそうに語ってたなぁ、魔理沙。
それと地底から怨霊が沸いて出た異変。霊夢と魔理沙、それぞれに私たち妖怪がサポートすると言う形で擬似的に二対一と言う感じになってたっけ。
でも、複数対複数の戦いは今まで一度も無かった気がする。
「これだけの妖怪がいて、個人的な決闘も増えてきている中、単なる一対一だけのルールに留まっているのは勿体無いんじゃないかしら」
「なるほど、確かに。さすが都会派だな。ほら、もっと飲め飲め」
魔理沙は気を良くしたのか私のグラスめがけて酒瓶を九十度に傾け注ぎ込む。
「褒めても何もでないわよー」
といいつつ私も魔理沙のグラスに同じように注いでやった。
お互い、一気にそれを飲み干し、空になったグラスをテーブルに叩きつける。
「……ふぅ」
「……はぁ」
視界がぐらりと揺れる。何か、手と膝が濡れているが、気にしないでおく。
「今、幻想郷に新しい風を呼び込むとしたら、多人数戦なんじゃないかと思うのよ。月の異変と地底の異変のルールをさらに突き詰めた、2オン2とか、どう?」
「……なんか凄まじいことになる光景が容易に想像できるんだが、面白そうだな」
私の提案に魔理沙は歯を見せて笑った。
2オン2となると、上海スタイル、黄昏スタイル共にただでさえ広範囲を弾幕で埋め尽くすスペルカード戦がカオスになりそうだけど、面白そうだと思うのよね。
例えば私のスペルカードの一つ、「首吊り蓬莱人形」と魔理沙のスペルカード「アステロイドベルト」を組み合わせたら――――避けれるの、これ?
例えば黄昏スタイルで私の「ドールズウォー」と魔理沙の「オーレリーズソーラーシステム」をあわせたら……あ、これは楽しいことになりそう。
私の人形での制圧力と魔理沙の機動力と破壊力が組み合わさったらかなり強力だと思うし。
―――あれ、私ったらなに魔理沙と組む事を前提とした話をしているんだろ、飲みすぎたかな。
でも、月の異変の時には無意識の内に一夜の伝説となったショット、マリス砲(ちなみにどっちの名前が先に来るかで取っ組み合いの末に私が譲歩)を編み出したりしたし、私たちのコンビって最強なのかもしれない。まぁ、妥当な組み合わせよね、私たち。
「ねぇ魔理―――」
「おいパチュリー、お前のロイヤルフレアと私のマスタースパークを組み合わせたらどうなるのっと」
「……マジレスすると決めボム大安定になるわ」
って、ちょっとどうしてそうなるのよ魔理沙。私たち、かつては禁呪の詠唱組と呼ばれていた仲じゃないの。
そんなにパチュリーは具合が良かったというのか(オプション的な意味で)
はっ……もしかして地底の異変の時人形の制御を高速と低速で逆にした事を怒ってるの?あれは高速移動で高火力を保ったまま動き回れる様にした私の粋な計らいだったんだけど余計なお世話過ぎたかしら。
収束したレーザーが近接武器っぽくてかっこいいじゃない。え、駄目?
私が過去を振り返って頭を抱えていると、パチュリーは
「興味深い話ではあるけれど、組むのならそこのパルパルしぃ視線を送ってくる奴が良いと思うわ」
と、私に話を振って来た。
素面の状態ならここで軽口の一つでも叩くところだが、今日の私は酒を入れすぎたようで、
「そうよ」
と魔理沙を不満気に睨み、
「このアリスさんがいるじゃないの、もう」
思いっきり不貞腐れてやった。
「はは、お約束お約束。ただ……」
「何か不満があるって言うの?」
「いや、私から言っても『他を当たりなさい他を』とか言われると思ってなぁ」
あら、私がそんな事、言うに決まってるじゃない。
そしてその後何だかんだで理由をたくさんつけてOK出すに決まってるじゃない。
「なぁに言ってるの。さっき私が提案した様な事があったら、魔理沙が誘いに来る前に私が誘いに行くわよ。誰かと組むとか組まないって話になると魔理沙になるのは間違いないんだから。何故か」
「そういえば、そうだったよな。何故か」
一瞬、お互いの間に沈黙が流れる。
「……どうしてだろうな?」
「……どうしてでしょうね?」
―――――ちょっと熱っぽい。魔理沙の顔もほんのりと赤いし。飲みすぎたわね、これは。
「なんとなく、か?やっぱり」
にも関わらず魔理沙がまた私のグラスを満杯にしてきたので、
「なんとなくでしょうね、やっぱり」
やっぱり私もお返しに魔理沙のグラスを満杯にしてやった。
「まぁさっき提案したルールに乗ってくる奴がいるかどうかは別として」
「別として?」
「多分、強いわよ、私たち。月の異変の時に編み出したマ……アレもあるし」
「あぁ、マ……アレもあるもんな」
人前で呼ぶには少し……いやかなり照れくさいのよね、あの名前は。
「……アレ?」
パチュリーは首を傾げる。
私たちは手元の酒を一気に飲み干し、視線を交し合い、笑った。
「秘密よ」
「秘密だぜ」
「なぁ、そろそろスペルカードルールにも新しい風が必要じゃないか?」
各々好き勝手に飲めや食えやの大騒ぎの中、すっかり皆が出来上がって来た頃、ふと隣に座る魔理沙がこんな事を言い出した。
「アリスよ、どう思う?」
「どう思うって言われても」
急に話を振られ、私はグラスを傾けかけた手を止める。
「今まで何度か変則ルールのスペルカード戦があったじゃないか。ここの所スタンダードなルールによる異変が続いていたからな、そろそろ何か新しい動きがあってもいいんじゃないかと思ってな」
「そうねぇ……」
スペルカードルールは何も一つだけに定められているわけではない。
基本的には異変解決者と異変を起こした者(及び巻き込まれた者と巻き込まれにいった者)との一対一での弾幕戦。これは上海スタイルと呼ばれており、これをベースとし、各地方のローカルルールがさらに付け加えられることが多い。スペルカードルール発足当時から親しまれているルールだ。
しかし異変を起こすもの達の中には変わった決闘方法を好む者もいる。
例えば、萃香が起こした宴会の異変。これは黄昏スタイルと呼ばれているルールに則ったものだ。
弾幕の他に体術の使用及び物理的な武器の使用が全面的に解禁されており、肉体言語をフルに駆使するこのルールはインドア派の私にとっては大変疲れるものであった。
異変では無い個人と個人の決闘にはこの黄昏スタイルが主流になりつつあるとかないとか……最近身の回りでもこのルールで派手に殴り合ってる光景を見かける。
ちなみに、天人が起こした異変の際にはこの黄昏スタイルを大幅に改定されたものが採用されている。
「あの時のアリスは靴に何か仕込んでいるとしか思えないぐらい蹴りの威力が冴えてたな」
「失礼ね」
そんなことぐらいで文句を言わないで欲しいわね。
他にも妖精たちを盛大に巻き込んだ「スプライツスタイル」と呼ばれるものや、あの圧迫取材で有名な烏天狗が取材の際一方的に仕掛けてくる「ヒトコトオネガイシマスタイル」がある。
後者は最近になって真似する天狗が一人現れたらしく、被害者が増えているらしいと魔理沙や霊夢から聞いた。
「なぁ何かアイデアだせよ、幻想郷の知恵袋って顔してるだろーアリス」
そう言って魔理沙は私のグラスに溢れそうなぐらいに酒を注ぎこむ。
「誰がおばあちゃんよ誰が」
すかさず私も魔理沙のグラスに限界まで酒を注ぎ込んだ。
お互い、一気にそれを飲み干し、空になったグラスをテーブルに叩きつける。
「……ふぅ」
「……そういえば」
私は、ある異変の事を思い出した。
「いつかの月の異変の時、一緒に解決に向かったじゃない」
「おぉ、そんな事もあったなそういえば」
「あの時のルール、二対一なのか交代で一対一なのかよくわからない事になってたけど……」
魔理沙の被弾に割り込んだり逆に私の被弾に魔理沙が割り込んできたり、いつもは異変を解決する側の霊夢が夜を止めている私たちを退治しにきたり、一度解決したと思ったらもう一度解決に向かうはめになったり……あの夜は歪な満月の光に皆中てられていたのか奇妙なことばかりだったわね、そういえば。
「思えば今まで、こう、チーム戦とかそういうのって無かったような?」
「言われてみればそうだな」
今触れた月の異変の他、春の異変の時に魔理沙が私を倒した後騒霊に三対一を挑まれたと言う話を聞いた。マスタースパークで一掃してやったと嬉しそうに語ってたなぁ、魔理沙。
それと地底から怨霊が沸いて出た異変。霊夢と魔理沙、それぞれに私たち妖怪がサポートすると言う形で擬似的に二対一と言う感じになってたっけ。
でも、複数対複数の戦いは今まで一度も無かった気がする。
「これだけの妖怪がいて、個人的な決闘も増えてきている中、単なる一対一だけのルールに留まっているのは勿体無いんじゃないかしら」
「なるほど、確かに。さすが都会派だな。ほら、もっと飲め飲め」
魔理沙は気を良くしたのか私のグラスめがけて酒瓶を九十度に傾け注ぎ込む。
「褒めても何もでないわよー」
といいつつ私も魔理沙のグラスに同じように注いでやった。
お互い、一気にそれを飲み干し、空になったグラスをテーブルに叩きつける。
「……ふぅ」
「……はぁ」
視界がぐらりと揺れる。何か、手と膝が濡れているが、気にしないでおく。
「今、幻想郷に新しい風を呼び込むとしたら、多人数戦なんじゃないかと思うのよ。月の異変と地底の異変のルールをさらに突き詰めた、2オン2とか、どう?」
「……なんか凄まじいことになる光景が容易に想像できるんだが、面白そうだな」
私の提案に魔理沙は歯を見せて笑った。
2オン2となると、上海スタイル、黄昏スタイル共にただでさえ広範囲を弾幕で埋め尽くすスペルカード戦がカオスになりそうだけど、面白そうだと思うのよね。
例えば私のスペルカードの一つ、「首吊り蓬莱人形」と魔理沙のスペルカード「アステロイドベルト」を組み合わせたら――――避けれるの、これ?
例えば黄昏スタイルで私の「ドールズウォー」と魔理沙の「オーレリーズソーラーシステム」をあわせたら……あ、これは楽しいことになりそう。
私の人形での制圧力と魔理沙の機動力と破壊力が組み合わさったらかなり強力だと思うし。
―――あれ、私ったらなに魔理沙と組む事を前提とした話をしているんだろ、飲みすぎたかな。
でも、月の異変の時には無意識の内に一夜の伝説となったショット、マリス砲(ちなみにどっちの名前が先に来るかで取っ組み合いの末に私が譲歩)を編み出したりしたし、私たちのコンビって最強なのかもしれない。まぁ、妥当な組み合わせよね、私たち。
「ねぇ魔理―――」
「おいパチュリー、お前のロイヤルフレアと私のマスタースパークを組み合わせたらどうなるのっと」
「……マジレスすると決めボム大安定になるわ」
って、ちょっとどうしてそうなるのよ魔理沙。私たち、かつては禁呪の詠唱組と呼ばれていた仲じゃないの。
そんなにパチュリーは具合が良かったというのか(オプション的な意味で)
はっ……もしかして地底の異変の時人形の制御を高速と低速で逆にした事を怒ってるの?あれは高速移動で高火力を保ったまま動き回れる様にした私の粋な計らいだったんだけど余計なお世話過ぎたかしら。
収束したレーザーが近接武器っぽくてかっこいいじゃない。え、駄目?
私が過去を振り返って頭を抱えていると、パチュリーは
「興味深い話ではあるけれど、組むのならそこのパルパルしぃ視線を送ってくる奴が良いと思うわ」
と、私に話を振って来た。
素面の状態ならここで軽口の一つでも叩くところだが、今日の私は酒を入れすぎたようで、
「そうよ」
と魔理沙を不満気に睨み、
「このアリスさんがいるじゃないの、もう」
思いっきり不貞腐れてやった。
「はは、お約束お約束。ただ……」
「何か不満があるって言うの?」
「いや、私から言っても『他を当たりなさい他を』とか言われると思ってなぁ」
あら、私がそんな事、言うに決まってるじゃない。
そしてその後何だかんだで理由をたくさんつけてOK出すに決まってるじゃない。
「なぁに言ってるの。さっき私が提案した様な事があったら、魔理沙が誘いに来る前に私が誘いに行くわよ。誰かと組むとか組まないって話になると魔理沙になるのは間違いないんだから。何故か」
「そういえば、そうだったよな。何故か」
一瞬、お互いの間に沈黙が流れる。
「……どうしてだろうな?」
「……どうしてでしょうね?」
―――――ちょっと熱っぽい。魔理沙の顔もほんのりと赤いし。飲みすぎたわね、これは。
「なんとなく、か?やっぱり」
にも関わらず魔理沙がまた私のグラスを満杯にしてきたので、
「なんとなくでしょうね、やっぱり」
やっぱり私もお返しに魔理沙のグラスを満杯にしてやった。
「まぁさっき提案したルールに乗ってくる奴がいるかどうかは別として」
「別として?」
「多分、強いわよ、私たち。月の異変の時に編み出したマ……アレもあるし」
「あぁ、マ……アレもあるもんな」
人前で呼ぶには少し……いやかなり照れくさいのよね、あの名前は。
「……アレ?」
パチュリーは首を傾げる。
私たちは手元の酒を一気に飲み干し、視線を交し合い、笑った。
「秘密よ」
「秘密だぜ」
なんとなく、いいなあ・・・
使いましたよ!思いっきり!!
しっとりと酌み交わす、ほろ酔いの二人が、何ともいえずいい感じ。
……ごめん、地霊殿のアリスは苦手だわw
自分は地霊殿アリスしか使わない派。
色々と夢が広がりますねー。
ただ、最後が弱かったかな? マリス砲と上記されているのに、最後で伏せても効果が弱いように思えました。
なぜかって・・・マリアリがおれ・・・ほらアレだよ、アレ。それに、二人の会話には2828してしまう、本当に犬猿の仲なのか疑ってしまうほど仲がいいし、メタ発言してたしww
きっとゲームを一緒にする仲なのでしょう
詠唱組はずっとコンビで組んで欲しいです。もちろん、詠唱組しか使わないけどね!
地? いや、その……ねぇ?
地はアリスばっかり使ってるなあ…
この二人の関係はなんとなく素敵だ
……いえいえ冗談です^^;
ほろ酔いの雰囲気も良く、しっかり楽しませて頂きました