Coolier - 新生・東方創想話

東奔西走魔理沙

2010/04/29 22:59:36
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 トンテンカン、トンテンカン。
 軽快に響く、金槌の音。

「……」

 チュイイイイイン。
 少し五月蝿くも感じる機械音。

「……っ」

 ギコギコ、ギコギコ。
 やかましいノコギリの音。

「~~~~ッ!」

 ギュイイイイイン。
 騒音を思わせるドリルの音――

「うるせーーーーーっ!」

 ここは、私の家の前だ。

「わわっ、ちょっと魔理沙。大きな声出さないでよ、驚くじゃん」
 怪訝な顔をしてこちらを見つめるにとり。
「アホか! こっちだってお前の作業の雑音やら雑ゴミやらで迷惑してんだよ!」
 さて、二度言うようだがここは私の家の前。
 にとりは何故かそこで朝から何やら怪しい開発(?)をしている。
 いつもの様に、何を造っているかはさっぱりだ。
 なにやら直方体をした機械で、妙なメーターみたいなものやよく分からないボタン等がズラリと並んでいる。
 マジでなんだこれ。
 しかも、私の家の窓の前にどどーんと立っているから日光も遮られているときたもんだ。
 若干家の中がジメジメしてきている。これは死活問題だ。
 つーか何で私の家よりでかいんだこれ。
「だから。早くこれ撤去しろよ!」
 私は正論しか言って無いつもりだが、にとりは
「ふえ? ……なんでそんな事言うのさ……」
 と、ものすごーく寂しそうな顔をして、瞳に涙を浮かべる物だから私もなんか言えなくなる。
 畜生。女の涙ってここまで凶悪だったのか。
「……あー、じゃあさっさと完成させりゃ良いんだろ!?」
 そうだけど、とにとり。
 よし、じゃあチャッチャと完成させてもらおうじゃないか。
「分かった……。じゃあここは騒音が五月蝿くて敵わないから、私はちょっと家を空けるぜ」
 箒に乗って空へと飛び立とうとした時、
「待って! 私の頼みを聞いて!」
 にとりが私を引き止めた。
「な、何だよ」
 さっさとこの騒音地獄から抜け出したいんだが。
「どうしても足りない材料があるんだ! それを取ってき――」
 私は自分なりの最高速を出して逃げたつもりだったが、『おーっと! アームが伸びるぞぉー!』というにとりの謎の掛け声と共に捕まっていた。
 なんだこのアーム……! 逃げ足には自信がある私を捕まえるとは相当だぜ……。
「だーっ! 何が足りないんだよ!?」
 早く完成させろとは思うが、それを手伝う気は毛頭無いのに……。
「……ここにね、隕石のカケラが足りないの」
 にとりはぽっかりと機械にあいている穴を指差して、意味不明な事を言った。
「い、隕石のカケラ……?」
 そうだよ、とにとりは言う。
「あれが無いと……!」
「あれが無いと?」
「何かこう、ビジュアル的にダメじゃない!」
「知るかボケェ!」
 にとりの言い分はこうだ。
 隕石というのは、どうやらキラキラと輝いている物らしい。
 にとりが今造っている機械は、まぁ確かにお世辞にも綺麗とも言えない。
 言ってしまえば、とっても地味なデザインだ。
 だからって、
「隕石なんてある訳無いぜ……」
 そんな地球外の物質がこの幻想郷にある訳無い。
 いくらなんでも常識から離れすぎている。
 そんなもの都合よく手に入る訳が無い。無い無い無い無い。
 進行形で諦めている私に、にとりはチッチッチ、と指を振り言った。
「奇跡でも起きたらあるんじゃない?」
 
 という訳で。

「おーい、早苗ー」
 私はしぶしぶ守矢神社へとやってきていた。
 早苗なら何とかするかもしれない。とかテキトーな事をにとりが言ってた。
 私は知らん。
「あ、魔理沙さん」
 丁度、早苗は境内の石畳を掃き掃除していた。
 毎度毎度、ご苦労な事だ。
「何か御用ですか?」
 私が来た事が意外だったのか、早苗は頭の上に疑問符を浮かべている。
 まぁ、いつも博麗神社に行くしなぁ。
「ああ、いや」
 いきなり『隕石くれ』と言っても無駄だろう。
 多分、頭がおかしい奴だと思われるはずだ。
「んー、まぁ笑わず聞いてくれ……」 
「は、はい」
 ちょっぴり真剣な私に早苗は少し近寄った。
 そして、私は話した。
 にとりが私の目の前で妙な機械を開発(?)している事。
 そして、その開発(?)の際に出る騒音で私が迷惑している事。
 その開発(?)に必要な物が足りないという事。
 それが『隕石のカケラ』である事。
 最後まで、全部話した。
 正直、隕石の件で恥ずかしくて死にそうになった。何だよ隕石って。畜生。
 とにかく、一から説明したから頭がおかしいとは思われないはずだ。
「は、はぁ……」
 早苗も、微妙な顔をしている。
 そりゃそうだろう。隕石だもの。
「つまり、こういうことですよね」
 早苗は人差し指を私に突きつけた。
「あなたのコレクションのため、私に協力して欲しいと!」
「ちげーよ馬鹿野郎ォーーーーーー!」
 早苗は盛大に勘違いしていた。
「いくらなんでも酷いですよ。自分のコレクションのためににとりさんを言い訳に使うなんて」
「だーかーらーっ、ほんとだって! 私が隕石なんか欲しがると思うか!?」
 私が言うと、早苗はうーんと思考を巡らせて、うんと頷いた。
「そりゃあ、あれだけあなたの家に盗品があれば」
「ちょっと待て。何でお前が私の家の中を知ってるんだ?」
 確かに盗ひ――いや、借り物で溢れかえってるが。
「窓から飛び出るほど盗んでおいて何を言ってるんですか」
「落ち着け早苗。あれはな、借り物なんだ。主にパチュリーからの」
「今すぐ借りるという単語を辞書で引いたほうがいいですよ」
 くっ。今日に限って早苗が何か噛み付いてくる。
 このままだと隕石のカケラが手に入らない……。
「もう。私はお掃除で忙しいんですから、早く帰って下さいよ」
「よし、じゃあ最後に一つだけ聞いてくれ」
 何ですか、と早苗。
 もう残された道はこれしか無い気がする。
 手を地面について、四つんばいになって思い切り叫ぶ。
「隕石くれ!」
 どうだ、この私の渾身の土下座――
「嫌です」
「畜生!」

 とりあえず、しばらく守矢神社に行くのはやめようと思った。
 慧音にでも頼んで隠蔽して欲しいくらいの黒歴史があっがっがっがが。


 なんだかんだでやっぱり隕石何か手に入る訳が無かったので、私はにとりの元へと戻った。
 未だに騒音が聞こえるんじゃないかと思いきや、嘘みたいに私の家の前は静かだった。
「おーい、にとりー」
「あ、お帰り魔理沙」
 にとりは地面に座っていた。
「何だ、作業は終わったのか?」
「あ、うん。魔理沙、その様子だと目当てのものは手に入らなかったみたいだね」
「う……。ストレートに言うな。やっぱり無理があるだろ、隕石なんか」
 はぁ、と溜息を吐くとにとりは笑った。
「でもね、魔理沙。隕石よりも良い飾りつけ思いついたんだ」
「また探して来いとか言わないだろうな」
 そんな事無いよ、とにとりは首を横に振り、
「大丈夫、今度の物は身近な物だから」
 にとりは自分の荷物を探り、何かを取り出した。
「よいしょ、っと……」
 そして、その何かをぽっかりと空いていた穴に詰め込んだ。
 随分綺麗に収まっているように思える。
「ほら、これ凄い綺麗だよね!?」
 にとりは瞳を輝かせている。
 おお、そんなに良い物なのか?
 ……私はくたびれ損だったけど、まぁいっか。
 こいつがこんなに笑ってるなら、もう良い。
 後、騒音地獄も終わりだ。
 そんな感慨に浸りながら、私はにとりが指差す飾り付けを見た。

 円を描いた飾り。
 その円の中に正方形が一つ。
 それも、緑色をしている。
「……」

 誰がどこからどう見てもかっぱ巻きだった。

「バッキャローーーーーー!」
 にとりにとって、隕石はかっぱ巻きより下だったようだ。
「わわっ、魔理沙。どうしたのさ?」
「何で隕石よりかっぱ巻きなんだよ!? もう私の苦労要らなかっただろ!?」
 完全に骨折り損だ。
「何さ。いいじゃんかっぱ巻きも!」
「美味いけどな!? ていうか食いもんで遊ぶなっ!」
 ああ、どっと疲れた。
 何かもう欝だ。
「いやいや、魔理沙。折角のプレゼントなんだから、もっと喜んでよ」
「へ?」
 プレゼント……? どういうことだ?
「今日は、魔理沙の誕生日でしょ?」

 にとりに言われて思い出した。
 そっか、今日は私の誕生日だったんだ。
「あ、さては忘れてたね? 自分の誕生日をさ」
 悪戯っぽくにとりは笑う。
「あ、ああ……。そう、だな」
 誕生日を祝ってもらったのは久々かもしれない。
 何年振りか?
 ……コイツはそんな覚え辛い私の誕生日なんか覚えてた訳か。
 全く。
「……ありがと、な」
「ごめんね、材料探させたりして……」
 それはもう良いや。
「ん……。まぁ気にすんな」
 私の為、なんて言われたら怒るに怒れない。
 こいつは私の為に、頑張ってくれたんだしな。
 にとりは頑張りを空回りさせてしまっただけだ。そうだよ。
「ふふっ、魔理沙ってば嬉しそう」
 ちょこん、とにとりは私の鼻をつっつく。
「な、おいやめろよ!」
 驚いて後ずさりする私。それを見て、また笑うにとり。
 くそっ。私はどうしてこんなに弄ばれるんだ?」
「とにかく、早く使ってみてよ!」
「お、おおそうだな!」
 これだけ大きな機械だ。
 何が出来るのか、見物と言うものだ。
「じゃあにとり、使い方を教えてくれ」
 私はワクワクしながらにとりの返答を待つ。
「はい、これ」
 にとりが渡してきたのは鉢植えだった。
 綺麗な向日葵が咲いている。
「ん? これをどうするんだ?」
「飛んで飛んで」
 私はにとりに言われるがままに、鉢植えを持ったまま飛び上がる。
 にとりも私の箒に一緒に乗った。
「機械の上につけて!」
 にとりが言うので、私は機械の上に降り立った。
「どう? 百人乗っても大丈夫なんだよ」
「へぇ、そりゃすごいな」
 って、そんな事はどうでも良いのだ。
 この鉢植えをどうするんだ?
「置いて」
 鉢植えを置く。

「これで、この機械がようやく意味をもったんだよ魔理沙!」

 ……何を言ってるかさっぱりなんだが。
「どういうことなんだぜ?」
「ふふふ」
 にとりは不敵な笑みを浮かべた。
「この機械はね、上に物を置いて使うんだ」
「……え」
 なんだそれ……。
「そ、それ以外の機能は?」
「無いよ?」
 ケロッとした顔で言ってのけるにとり。
「え? 何かこう……、何か出たりしないのか?」
「しないよ?」
 きゃはっ、と笑うにとり。
「いやね、物を置くためだけの物でもデザインに凝ったらいけるんじゃないかって……。アレ? 魔理沙?」

 ……私の一日を返してくれ。
お久しぶりです、早草です。

今回はにとマリに挑戦しました。
……それだけ……(

誤字指摘や感想など、ありましたらドンドンどうぞ。
早草
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コメント



0.520簡易評価
5.70コチドリ削除
面白い。面白いんだが、魔理沙から少女臭が一ミリたりとも感じ取れない。
ラブコメの男性主人公みたい。さらに言うと、タケルちゃんみたい。
6.70名前が無い程度の能力削除
なごんだ
9.80名前が無い程度の能力削除
少女が持ち込む厄介ごとに巻き込まれて理不尽な目に遭う
たしかにラブコメの男性主人公だww

でも何だかんだあっても最後は結局くっつくから
それまでニヨニヨしながら見守ることにしよう
16.100名前が無い程度の能力削除
にとマリ増えろ。
もう一度いう。
にとマリ増えろ。
17.無評価早草削除
コメント、ありがとうございます。

>コチドリ様
少女臭ですか……。
確かに、そうですね^^;
もっと可愛く書けるようになります……!

>6様
ありがとうございます^^

>9様
気付けばラブコメの男性主人公……。ちょっとフクザツな気分です;
まぁ、くっつくから良いか!(黙

>16様
大事な事ですから、何度でも言いましょう。
にとマリ増えろ。(

それではっ。