Coolier - 新生・東方創想話

罪と罰

2010/04/25 16:27:07
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 善良なる人里の民を守護せし事を定めん。
 汝、人々に害成す魔を罰する者なり。
 龍神様より賜いし神力其の身に宿し、魔力秘めたる妖魔を滅する鬼となれ。

 滅するべきは妖魔なり。
 敵を見紛う事なかれ。
 汝は人の為に在る。
                           ――博麗之心得「第二節 聖約」







一.





 彼女は何故自分が逃げなければならないのか判らないまま、死力の限り逃げ惑っていた。頭頂に生える先の尖った耳を、一度澄まして見れば、あの悍しく醜悪な低い怒鳴り声が、鼓膜を劈こうかという恐怖に呑まれながら、細い足を懸命に動かし、草履も履かず、裸足で砂利道を駆けて行き、何時か安全な地に辿り着く事だけを考えて、寒々しい冬の夜空の下を、懸命に駆けずり回る。何故、と誰にともなく恨み言を呟き、月光のみを頼りとして、薄暗い山道をひた走る。

 斯くなる事態になってしまった要因については何一つとしてとんと判らぬ。彼女は人間の年で測れば未だ成人する年にも至らぬ若い娘である。艶やかな黒髪を背中の中程まで伸ばし、新雪と見紛う白き肌に包まれた四肢は、頼りないほど細い。切れ長の目は鋭くも、彼女の有する美に拍車を掛け、すと伸びる鼻梁、小さく可憐な桜色の唇は、大人寂びた淑やかさと、稚児の愛嬌を同時に兼ね揃え、見る者全てに絶世の美女と評されるほど、彼女は美しくあった。

 それなのにも関わらず、彼女はその黒髪を振り乱し、足を赤く染め、手を泥に塗れさせ、身に纏う綺羅さえ構わず茂みから伸びる鋭い梢を厭わぬまま走っている。故に彼女は、一体何故とこの事態を恨まずには居られなかった。

 発端は何であったろう、と考えてみるも、彼女は夜も更け日も跨ぐだろうという時間に叩き起こされ、逃げろとただ叫ばれたばかりである。この大事件と称して過言ではない状況を、対して咀嚼する間もなく、家の中から叩き出されて、ひたすらに山を登れと云われるままに、こうして駆けている。最後に耳にしたのは、低く野蛮な男達の怒鳴り声と、広い家の中から突き刺さるように響く家人の悲鳴ばかりである。彼女が逃げている理由と云えば、それぐらいのものであった。

 彼女の一族は、代々人里に住まいし化け狐の家系である。平時は耳を隠し、尾を隠して、人間として住み易い人里で暮らす事を決め、今では人里以外で暮らす事など考えられぬ。と云うのも彼女らは妖怪と称されるには余りにも力が無かった。同じ妖怪でも、神に近い力を持つ天狗や、数々の伝説を持つ吸血鬼、不死の月人などと比べれば、その実力には雲泥の差がある。戦えば敵うべくもない彼女らの一族は、その一部を除けば人間以外には見えぬ容姿を利用して、人里に住んでいた。が、今ではこうして彼女は追われ、自分を大切に育ててくれた家人達がどうなったかのでさえ判らない。世の理不尽さがこうまで一族を苦しめるのなら、彼女はいっそ神すら恨みたかった。

 その内、彼女の明眸からは一滴の涙が零れ落ちた。一寸先も見えぬ闇の中を、手探りで必死に進んでも、この先に光があるとは到底思えぬ。彼女は何時からか、自分はいずれあの屈強な男達に捉えられ、想像さえ憚られる恐ろしい所業の数々を受けるのだろうと自分の未来を想像しない訳には行かなかった。身心共に疲弊し切った彼女は、最早逃げる事も止めて自ら命を断ってしまおうと思うくらいに、深い絶望の淵に陥っていたのである。

 その時、地面から突き出るようにして埋まっていた小さな岩が、いとも容易く彼女の華奢な足を掬い取った。重心は唐突に揺らぎ、均衡を失った彼女の身体は、やがて硬い地面の上に叩き付けられる。激しい衝撃と共に、彼女の身体を襲ったのは、彼女から希望を根こそぎ奪う足の痛みと、背後から聞こえて来る、あの恐ろしい声の塊であった。痛みを堪えて後ろを振り返れば、そこには松明に灯された焔が、暗闇の彼方で徐々に近付いて来る光景がある。

 足の痛みは想像を絶する。近付く焔は、胸を万力で押し潰されるが如き痛みを与える。長時間走り続けた所為で、叫ぼうとする彼女の喉は、荒い息を吐き出すばかりである。四方八方は木々に囲まれ、自分が通って来た道には、自分が此処を通ったという証を刻むが如く、梢を掻き分けた跡が残されている。揺れる焔を灯した松明の灯りは、恐ろしい喧騒と共に彼女の元へ近付いて来る。――最早、彼女は逃げられぬと悟るより他になかった。

 美しい満月の光が森を淡く照らす中で、美しい女が一人独座する。足には艶めかしい血がぬらりと光る。澄んだ涙は白き頬を流れ行く。糸のように細い黒髪は、漆黒に溶ける事さえ拒絶して、汗の滲んだ女の肌に吸い付いている。げに美しき女の絶望の声は誰彼にも届かぬ。女はやがて、せめて安らかに死ねるように、と神に祈り、その長い睫毛の伸びる瞼を、静かに閉じた。獣さえ鳴く事を憚る静邃なる宵の淵、佇む女は「何故」と呟いた。……





二.





「拝啓 突然の手紙をお許し下さい。同時に如何なる連絡も無く、消息を断った事についてお詫び申し上げます。尚、初めに書き留めておきますが、魔理沙を初めとして、他の誰に対しても、この手紙が霖之助さんの元へ届いた事は、知らせないで貰いたいという事を此処に記します。この手紙とて、軽々と出せる物ではありません。それが霖之助さんの元へ届いているという事は、私の大変な我儘を誰かが受け入れてくれている結果だと思って下さい。

 それが約束出来ないのであれば、何も云わず、今この時点でこの手紙を焼くなり破くなりして下さい。そうして、こうまでこの手紙の存在を抹消したがる私の心境を御察し下さい。この文が少しでも私の必死さを伝えられれば幸いです。尤も聡明で物判りの良い霖之助さんの事なので、実を云えば大して心配はしていません。霖之助さんはきっとこの手紙を、誰にも見せる事無く自らの胸の内に仕舞ってくれるものと信じています。

 さて、前口上が長くなってしまいました。しかし、上に述べた事は云うまでもなく重要な事なので、致し方のない事だと思って下さい。霖之助さんへ絶対の信頼を置いている私でさえ、上の文を書かずにこの手紙を出す事は憚られたのです。つまりは、それほどまでに、この手紙の存在自体が大事件への引き鉄となる可能性を有しているという証拠に他なりません。大変しつこい、且つ厚かましいと思われますでしょうが、どうか上の事項をお守り頂きたく思います。

 この手紙を出すに当たり、私には一つ尋ねたい事があります。今、幻想郷はどうなっているでしょうか?

 幻想郷に住まう私が尋ねるのも妙なようですが、今では仕方のない事となっております。それは既に霖之助さんも御存知なのでしょうが、その理由については余り聞かれたくありません。しかし、この期に及んで私の我儘が受け入れられるとも思い難いので、もしも霖之助さんがその理由を解明しようと云うのなら、私は恥を忍んで、全てを語ります。

 ――これは何時途切れるとも判らない手紙です。時間の猶予は殆ど無いものと思って下さい。決断は速いに越した事はありません。先程は余り聞かれたくないと書きましたが、私自身、真実を話すか話すまいか、どちらを望んでいるのか判断が付かないのです。ともすれば、私はこの胸中にて燻る真実の物語を、いっその事誰かに余す事無く話し尽くしたいとさえ思っているかも知れないのです。

 ただ、仮に霖之助さんが真実を知りたいと望んだ暁には、その事も手紙同様誰にも話さないでいて欲しいのです。今際の際の懇願だと思えば、私の我儘も許されるでしょうか。思えば、霖之助さんには数々の御迷惑をお掛けしたかと思いますが、この手紙を書いている時ほど、それを実感した時はありません。失礼な話となってしまいますが、私が未だ平生の通り日常を過ごしていた頃には、そのような事は微塵も思わなかったのです。平和慣れとでも云うのでしょうか、兎角あの頃の私は、こんな事態に陥るとは想像だにしていなかったのでしょう。

 それでは、余り長く続けるのも御迷惑かと思いますので、今日はこれにて失礼致します。最後に、霖之助さんが手紙を出す場合の注意事項のみ認めて置きます。もし私に宛てて手紙を書くのならば、書き終えた手紙は、誰の目にも付かない場所へ置いておいて下さい。この時、風や獣に攫われないように注意して貰わなければなりません。兎に角、誰かの目に触れる危険性と、不測の事態によって手紙を持ち去られてしまう事を、充分に注意して下さい。そうすれば、私の元へ手紙は届きます。

 では、寒々しい季節ですので、お身体に気を付けてお過ごし下さい。

                                 拝具
                                    博麗霊夢」





三.





 彼は他者から判ずれば人間として著しく欠陥している男である。と云うのも、彼は余りにも危険な思想が常日頃からその胸の内に根付いていて、妖怪という存在自体が許されざるものと思って疑っていないのである。古来、妖怪はその圧倒的な力を用いて、人間を襲い、自らの糧として来たが、今の幻想郷を見れば、人間と一部の妖怪は仲良く共存している。この人里に於いては、半人半獣の妖怪が、人里の守護者としてその地位を確立している。しかし、彼はそれすら許し難い事実として捉えていたのである。歴史に綴られた妖怪達の暴虐非道の数々を、今更になって忘れてしまおうとは、彼から云わせれば言語道断という以外に言葉が出ない。

 が、それでも人間の持つ力が妖怪とは懸け離れている事を、彼は痛いほど熟知しているし、人里の守護者に寄せられている信頼も無論知っている。ただ一人が反旗を翻したとて、周囲の人間からは冷ややかな視線を向けられるばかりである。それだから余計に、彼の妖怪への差別は、腹の底で遣り場のない怒りとなって煮え滾っているのであった。

 妖怪と人間の共存など考えられぬ。何時人間を食料として襲うかも知れぬ相手と、仲良く手を取り合って過ごす未来など想像する事すら悍ましい。彼は日に日にその想いを強くして行った。その内、人里で妖怪を見掛けると、誰彼も気付くくらいに、憎らしげな視線で睥睨するものだから、彼の腹の底で滾る憎悪は、皆が知る所となった。そして、幸運と云うべきか否か、その考えに賛同する者も、少数ながら存在していたのである。

 そんな彼には一つの契機が訪れた。革命と称する訳もない、小さな腹いせの契機である。しかし、彼にとってはそれが千載一遇の契機、天啓だと思われて仕方なかった。この機を逃せば、妖怪を悪しき者と定める機会も二度と訪れぬに違いない。妖怪に好いようにされて、籠絡された馬鹿な人里の民の目を、覚ます事も出来はしないであろう。彼にとってはそれぐらい、その契機は重要なものであった。

 それは人里の外れ近くに建てられた大きな屋敷に住まう人々の事である。そこには息を呑むほど美しい女が居る事を、人里の誰もが知っている。家人全員が布で頭を覆って、季節に関係なく裾の長い打掛を羽織り、慎ましやかに暮らしていて、その内情を知る者と云えば、人里の中を尋ね回っても知る者は居らず、一度注意を向けて見れば、これ以上に無く妖しい家である。彼にとっては幸運な事に、しかしその家人達にとっては不運な事に、彼は見てしまった。偶然風に攫われた布の下に先の尖った耳が、生きているかの如く動いている様を、そして風に遊ばれて翻った打掛の下で動く、黄金の毛並みを持った尾を、彼は確かに目にしたのである。

 その時の彼の中には、凡そ妖怪への差別の感情は湧き上がらなかった。彼の中には、ただ一つ、しめたと云う以外の感情は無かった。それが彼に訪れた契機である。妖怪を淘汰するべきは今と、彼は自ずからなる蔑視の中で感じ取った。そして更に不幸な事に、彼に秘密を暴露してしまった一族の者は、その事に全くと云って好いほど気付かなかったのである。彼らはただ、日常が平和に続くものと信じ、最早形ばかりとなったと思い疑わぬ打掛と頭掛の布を歴史の惰性に任せるがままに着けているだけだった。

 一族の存命に関わるほどの危険な思想を持つ者が、自分達の住まう人里には存在する訳がないと信じ、彼らは平生と変わらぬ日々を続ける。その仮初の平和の影に、殺意と憎悪でぎらりと光る眼光を知る由もない。これから起こるであろう凄惨なる事件の片鱗でさえ、気付く間隙は無く、見知らぬ男の唇が、妖しく吊り上がっていようとは、想像だにしない所であった。

 そして、恐るべき事態は、やがて訪れた。それは彼らの力が最も弱くなる新月の日、誰もが外出を憚る真暗な闇に包まれた時分の事である。無論男は妖怪の生態など知らず、新月の日に彼らの力が弱まるなどという事は、全く以て知り得なかったが、この時運命の風向きは確実に男の元へと吹いていた。図らずも妖怪としての力が最も弱まる日に、彼らは行動を起こしたのである。屋敷の者が寝静まったと思われる時分、巫女の祈りを捧げた札や、退魔の施しを受けた武器を光らせて、凡そ五六人程度の人数で、男を筆頭とした反妖怪勢力は、足音を忍ばせて目標の屋敷へと突入した。

 その残忍極まる所業は、最早腹いせの域を逸脱し、誰彼から判じても何らかの怨恨があったとしか思われぬほど、人の情に欠けていた。一息に突撃した彼らは、三組に分かれ、屋敷の中の部屋という部屋に一斉に押し掛けて、眠りに就く化け狐の一族の者を、或いは刺し、或いは斬り付け、或いは殴打し、あっという間に殺して行った。事情を飲み込む暇など一切なく、無残に殺されて行った者の顔には、一様にして目を見開き、今にも何故と訴えて来そうな表情が張り付いていた。

 残酷な仕打ちは本来どの生物の中にも潜在している残忍性を喚起し、また増長させ留まる事を知らせなかった。飛び散る血飛沫に男達の興奮は連鎖し、武器を振り下ろす腕には更なる力が込められた。唇の端から涎を垂らす者や、余りの快楽に小便を垂れ流す者さえ居た。彼らは最早キチガイと称されても仕方がなかった。実際に、狂っていた者も居たに違いない。それほどその醜悪なる様は、人間と懸け離れていたのである。目的の為の手段は、次第に手段の為の目的と変化して行った。即ち、殺戮を楽しむ殺人狂に男達は変貌を遂げて行った。

 その内に、阿鼻叫喚に包まれた屋敷内の中で、誰かが「逃げろ」と叫んだ声を、男は聞き逃さなかった。男は目の前で涙を流し、血塗れになりながら命を乞う女の額に目掛けて、手斧を振り下ろし、頭蓋を粉砕し、吹き出した血を浴びると、声の聞こえた方へ一目散に駆け出した。他の部屋からは仲間達の笑い声や、泣き叫ぶ女子供の声が聞こえて来る。その浮世に在らざるべき死屍累々たる地獄絵図の中を走り抜けた先には、まだ仲間の誰も手を付けていないと思われる奥座敷の襖が、厳然として佇んでいた。その中から早くと叫ぶ声がする。思わず男は、にやりと歪む口元を抑えられなかった。

 一息に襖を開け放つと、そこには老婆が一人、驚愕に見開いた目で、男の方を振り向く光景があった。そうして、その皺だらけの表情が、次第に恐怖や憎しみなどを織り交ぜた悲愴感の立ち込めた表情に移ろって行く。男はその様が好きで仕方無かった。遂先刻までは安らかに目を閉じて深い眠りに堕ちていた者が、一転して斯様な惨憺極まる悲しげな表情を浮かべる様は、まるで己をこの世の支配者と見紛うかの如き錯覚を受ける。そうして諦めたように眸を伏せる様などは、痛快、爽快、愉快……そんな感情から哄笑を漏らしそうになるほど心地好い。男はもしも時間が許すのなら、この老婆に希望はあるかと問い掛けて見たかった。そうして怒りに醜く歪む老婆の顔を見ながら、その顔面をぐしゃぐしゃにして見たかった。が、今は別の目的がある。男は一度部屋の中を見回した。物の少ない居間を見ると、一つの布団、物云わず鎮座している囲炉裏、壁に掛けられた墨絵、そして開け放たれた窓から、颯々と冷たい風が吹き込んでいる。男はまたも口元を歪めてにやりと笑った。開け放たれた窓は、そこから誰かが逃げたという証左に他ならなかったのである。

 そうして、男がそう気付くや否や、後ろから仲間が恍惚とした表情をして駆け付けた。全員が返り血に身を赤く染めて、ぎらぎらと光る眼光を隠しもせず、そのまま男の横を通り抜けて老婆を叩き殺してやりたいというような表情をしている。が、男がそれを片手で制した。仲間達は不満げにしながらも、その場に立ち止まる。

「誰か逃げ出したろう」

 男は静かに、目の前で逃げる事も出来ずに座る老婆に問うた。老婆は何をも云わぬ。が、噛み締められた唇が、男の問いに対する答えとなった。最早観念したと見えて、老婆は膝に置いた手を握り締め、男達を睨み付ける。そうして、しゃがれた声で、ぽつぽつと恨み言を呟いた。

「我ら一族を根絶やしにせんと望む畜生共め。我らが一体貴様らに何をした。ただ日々を静かに過ごし、出来る限り人目に触れぬよう密かに暮らし、人に害を与えた事もない我らが貴様らに殺されなければならぬ理由は何だ。住み良い土地を求め、郷に従い、平和に過ごして来た我らを大した理由もなく殺戮する貴様らこそ、淘汰されるべき人間ではないか。妖怪故に殺されなければならぬ……人間故に妖怪殺しを許される……そんな規律がこの人里の中に在るならば、貴様ら人間こそ地獄の使者に他ならぬ。覚えて置くが好い。我ら化け狐の一族は、貴様らに受けたこの残忍にして無慈悲な仕打ちを決して忘れぬ。何時の日か輪廻を経て転生した時に、必ずやこの恨み……この無念……この雪辱を晴らしてくれる。好いか! 決して我らを忘れるな! 何時の日か必ず、貴様らに我らと同様の苦しみを与えてくれる!」

 そう叫び散らした老婆は、呆気に取られる男達を目の前にして、一匹の老狐に変化すると、一目散に男に向かって飛び掛かった。が、その剥き出された牙も、最早何の意味もなかった。狂乱に陥った男達は、それを面白がるのみである。飛び掛かって来た老狐は、男の服を少し噛み千切ったばかりで、志半ばのまま男の仲間によって叩き殺されてしまった。

「さあ、逃げた輩を追うぞ。奴らが逃げる所は妖怪の山に違いない。恐らく神々に助けを乞うつもりであろう。そうなっては始末に悪い。この事態は我ら人間の存亡を脅かすべく、今日まで息を潜めて来た化け狐に制裁を加えた形で終わらねばならぬ。余計な事を山の神々に知られては、我らの手には負えない。そうなる前に、逃げ出した輩を見付け出して、殺してしまわねばならぬ。何、妖怪の山とて恐れるな。今の我らならば、恐れるものなど何もない。そうして、逃げ出した輩を殺した時に、漸く念願の妖怪排斥時代が幕を開けるのだ」

 男はそう云って、嘗て老婆であった狐の骸を踏み潰して、開け放たれた窓から飛び出した。それに続いて仲間達が駆け出して行く。行く手には高く聳える妖怪の山の影が、微かに窺える。悲しきかな、男の推測通り、そこを逃げ惑う美しき女を狙って、人情という鎖から解き放たれた狂人達は山狩りを始める。……





四.





「拝啓 お返事頂けた事、誠に感謝致します。お返事の手紙は無事に私の元へ届きました。引き続き、この手紙の遣り取りを続ける気があるのでしたら、同様の手段で私に手紙を送って下さい。

 まず、霖之助さんだけでなく、他の人達に対しても多大なる心配を掛けたであろう事を、お詫び致します。しかしながら、一つ目の質問である「私が何処に居るのか」という問いに対して、私は答える権利を持ち得ません。前回の手紙に書き記した通り、この手紙を霖之助さんに送っている事さえも、第三者に迷惑が掛かる行いである上に、更なる迷惑を重ねる訳には行かないのです。それが迷惑に足る所以も、残念ながらお教えする事は出来ません。斯様な次第なので、さぞかし御不満であろうという事は存じておりますが、どうかご容赦下さい。

 現在の幻想郷の状況に関しては、概ね私の予想の範疇にあるようです。霖之助さんならば、最早私が唐突に消息を絶った理由については、ある程度見当が付いているかと思いますが、その詳細は、霖之助さんの希望に応じて、これから書くか否かを決めたいと考えております。何も霖之助さんが後ろめたさを感じる事はありません。私は、前回の手紙に示したように、この事実を本当は誰かに伝えたかったのかも知れないのです。そのような次第ですので、謝罪の言葉は不要です。むしろ、私の方こそ、謝らなければならない事が、この手紙に書き記せないほど沢山あるのですから。

 霖之助さん自身、何らかの目星が付いているからこそ、真実の物語を聞くべきかどうかお悩みになっているのかと思いますが、恐らく霖之助さんが文言した、「恐ろしい予想」は当たっています。その具体的な推論を目にした訳ではないので、断言は出来かねますが、恐らくは霖之助さんの予想が的中しているのではないかと思います。それでも聞くと申されるのなら、私は全てをお話します。私がわざわざこうした回りくどい方法を選択して、霖之助さんと文通している理由も同時に明かされる事でしょう。

 それから最後の問いに対する答えですが、結論から云うと私自身にもそれは判りません。私自身、経験のない事であるし、この事態を処理すべく活動している人物からも、私の処罰の詳細は何も聞かされていないのです。ただ、何となくではありますが、見当は付いております。私がこれからどうなるのか……それも、霖之助さんが真実を知りたいと願うのなら、恐らく目の前に薄々ながらも私の未来が露見する事と思います。そうした数々の疑問も踏まえて、真実を知りたいのか、否かを決定して下さい。私はそれに応じるばかりです。それ以外の権利は有しておりませんし、出来る状況にも置かれていません。私に出来るのは、何時途絶えるかも知れないこの手紙に、ひたすら文字を綴って行く事だけなのです。

 では、前回の手紙に書いたように、どうか例の約束をお忘れなきようにお願い申し上げます。また、先述しました通り、返事は前回と同様に行って下さい。それでは、この辺りで失礼致します。これから気候も穏やかになって行く事でしょうが、季節の変わり目にこそ病魔は手を伸ばして来るので、充分にお気を付け下さい。
                                   拝具
                                      博麗霊夢」




五.





 人里の守護者である上白沢慧音は、近頃胸に打ち付けられたかの如く感じる不安を、一向に拭えないでいた。世は太平であるにも関わらず、何か悪い予感が心の内に渦巻いている。まるでこれから恐ろしい事態が起こるのではないか……そんな根拠のない懸念を、どうしても打ち払う事が出来なかった。その得体の知れぬ予感を払拭するべく、昼夜を問わずに里の見回りをしてみたり、妖怪の山を彷徨しても、やはり異常は何処にも見られず、悶々とした想いを抱きながら日々を過ごし、そして新月の晩に、彼女は一人思考を巡らしていた。

 満月の晩には、酷く気が滅入る。彼女は今までもそうしていた通り、新月の晩には外出は控え、一人部屋の中で静かに過ごす事に決めている。新月の日は、身体を流れる獣の血が弱まり、何処か感覚が鈍ってしまう。この日ばかりは、彼女は一人の人間でしかなく、妖怪に襲われれば忽ちやられてしまうに違いなかった。故に新月の晩には部屋の中で心を落ち着ける事にしているのである。が、今宵は近来から気になる不安が、彼女の獣の血を大人しくさせなかった。何かしなければならない……何をすれば好いのかも判らぬまま、慧音はそんな心持ちになってしまい、先刻から部屋の隅から隅を往復している。

 理由もなくこんなに不安になるはずがない。慧音はそう思って、自分の記憶を発掘している最中であったが、不安の元凶たる出来事を見付けられないでいる。しかし、何かがあったような気がする。何であったか思い出そうとするも、やはり思い出せない。自らのするべき事があるはずなのにも関わらず、答えは出ない。慧音は次第に苛立ちを募らせ始めた。何かが起こる……最早それは必然の運命にあるように思われる。その上、それが性質の悪い事に、決して好い出来事ではないという確信がある。全て彼女の想像上の妄想に違いなかったが、だからこそ、慧音は苛立ちを隠せなかった。

 その内、このままでは埒が明かないと、慧音は一月前くらいの事を順に思い出して見る事にした。余程些細な事でなければきっと思い出されるに違いない。そう期待しなくては、この煩悶に決着は付けられそうになかった。

 一月前、彼女は何時もと同じように、人里の者と接していたように思われる。それから博麗の巫女が買い物に来た事もある。御阿礼の子が外出するというから、自分が護衛の任に就いた事もあった。それから米泥棒が出たというので、辺りを探していたら、腹を空かせた一匹の狐が、自分の子供に米を喰わせていた事もあった。それから……と考えた所で慧音は回顧を止めると顎に手を当てて、はてと首を傾げた。何か引っ掛かる所がある。米泥棒の事ではなく、もっと些細な事が彼女の思考を止めた。狐、そう狐だ、彼女は心の内でそう思うと同時に、ある一つの出来事を思い出す。

 少し前、レミリア=スカーレットが何の気紛れか、人里に訪れるという話を耳にして、一応警戒しなければなるまいと思って人里を監視していた事があった。彼女は噂通り従者を連れて人里にやって来たが、本当に大した用件はないらしく、ただ人里を見て回っているだけであった。しかし、やがて慧音の視線に気付いたらしく、近寄って来たレミリアと、少し話した記憶がある。何を話したのか……慧音はその内容を思い出す為に心血を注ぐ努力をした。

「何だか不快な視線を感じると思ったら、人里の守護者が何か用かしら?」
「気紛れで何かしないとも限らない妖怪を、放って置く事は出来ないからな」
「随分とまあ、熱心なのね。心配する事無いわ。ただ暇潰しに来ただけよ」
「疑る訳ではないが、一応人里を守る事が私の使命だ。不快かも知れんが、仕方ない事だと思ってくれ」
「私は構わないわよ。私が何か起こしたとしても、貴方に阻止出来るとは思えないけど」
「云ってくれるな。しかし私だって争いたい訳じゃないんだ。そう邪険にしないで欲しい」
「あら御免なさい。そんなつもりはなかったのだけれど……ところで、人里なのに妙なのが居るわね?」
「妙?」
「ええ、ほら、今も私を睨み付けている、あの小娘の事よ。私が何かしたのかしら。それに、人間じゃない」
「ああ……やはりお前達には隠せないか。これは内密にしていて欲しいのだが」
「私がわざわざ相手をしたくなるほど大物でもないでしょう。別にあの子に興味はないわ」
「それなら好いが、あれは人里に住む化け狐の一族だ。人との共存を望み、人里に住まわせて欲しいと頼まれた」
「へえ。だから耳も尾も隠しているのね」
「妖怪であると公表すれば避けられない糾弾もある。それは彼女達が自ら云い出した事だよ」
「御立派な事ね。私からすれば窮屈極まりないように思えるけれど」
「誰もがお前達のように力を持っている訳じゃないんだ。それに、彼女達は本当に気の好い妖怪だ」
「……」
「どうした、何か気になる事でもあったか。睨まれてる事なら、怯えているだけだから勘違いしてくれるな」
「そうじゃないわ。ただ……」
「珍しく歯切れが悪いじゃないか」
「くくく、ああ可哀想に。本当に愚かな種族だよ、人間は」
「何の事だ」
「いいえ、大した事じゃないわ。少なくとも私にとってはね……」

 慧音はそこまで思い出した瞬間、血相を変えて部屋を飛び出した。レミリアの能力を忘れた訳ではなかった。単に自分をからかっているものと思っていたが、そうではなく、レミリアが自分には見えない何か、即ちあの化け狐の一族の運命を見たのなら……何故その結論に行き着けなかったのか、慧音は己の馬鹿さ加減に怒りさえ感じていた。が、幾ら悔やんでも仕方がない。今は彼女らの安否を気遣うのが先決である。が、慧音がそう考えた時、野生の聴覚は里の外れより聞こえて来た甲高い悲鳴の音色を、確かに感じ取った。





六.





「拝啓 霖之助さんの意思は確かに受け取りました。ならば、私は自らの言葉に背く事無く、全てをお話しなければなりません。ですが、その前にお約束下さい。霖之助さんが先の手紙に書いた事についてですが、私の語る真実の物語を見届けた後も、決してそのような行動は起こさないようにして頂きたいのです。私はなるべくしてなったこの結末を、素直に受け入れる事が博麗の巫女として、果たすべき責任だと考えているからです。

 ですから、霖之助さんは私の物語を、心の内に留め、如何なる行動も起こさぬようにして頂きたいのです。真実を知る事を前提として話しているのにも関わらず、甚だ我儘なお願いだとは重々承知しておりますが、それが霖之助さんの為であり、また私の為でもあるのです。霖之助さんの心中は御察ししておりますが、それを約束出来ない限りは、真実をお教えする事は出来かねます。私の我儘から差し出した手紙であるのに、こうしてお願いばかりを申すのは、大変気が引けますが、これは前以て確認しておかなければならない事なのです。どうか、御理解頂けるようにお願い申し上げます。

 ところで、霖之助さんの推察が、思いの外鋭い事に驚きました。まだその正否を答える訳には行きませんが、やはり御聡明な霖之助さんの推理力には感嘆させられます。と同時に、ひやりとさせられます。もしかしたら、霖之助さんが自ずからなる推理に確信を持ち、私の答えを聞かぬまま行動を起こしてしまうのではないか……そんな危惧が、如何なる時も胸の内でざわめいて、私を不安にさせます。どうか軽率な行動は慎んで下さい。これは単なるお願いではなく、忠告の意すら含まれています。生意気な申し出のようですが、私の心中を御察し下さい。霖之助さんならば、恐らく一つの答えが、既に揺るぎないものとなっているのでしょうから。

 それでは、この辺りで失礼致します。しつこいようですが、お返事は前回前々回と同様に行って下さい。また返事など出さなくても構いません。私がお願いして来た事柄から判ずれば、真実を知ったとて、出来る事は何一つありませんし、霖之助さんがこの遣り取りを不毛に思うのであれば、今回限りで手紙の交換は止めにして下さっても、何ら不都合は御座いません。これは、本当に私の我儘を無理矢理通しているのですから、わざわざそれに付き合う必要も無いのです。同情など求めませんし、またされたいとも思いません。故に正直な霖之助さんの心持ちから、判断を下して頂きたいと思います。
                               拝具
                                   博麗霊夢」





七.





 彼女の運命の分岐たる大事件が、平和の続いた幻想郷に起きたのは、妖怪の山の頂きに住まう神々が、彼女を宴会に招いた折の事であった。当初は面倒な思いも無いではなかったが、そこに仕える巫女がどうしてもとせがむものだから、遂に根負けした霊夢は、妖怪の山へ赴く事にしたのである。飯も酒も無償で喰らい飲む事が出来る。足労さえ厭わなければ、至れり尽くせりの大歓迎であるので、霊夢としても悪い誘いではなかったのである。

 ただ、豪放磊落と称して過言でない八坂神奈子と盃を交わすのは非常に疲れるし、それに加えて不羈奔放な行動で悪戯を仕掛ける洩矢諏訪子も居る。行けばあれよと云う間に飲まされて、有無を云わさず酔い潰されるとも判らない。二柱に仕える東風谷早苗は、彼女らと比べれば幾らか常識を弁えた飲み方をするし、臨席した者に無理を云えば注意もするが、それでも一度彼女が酔わされれば最早神奈子と諏訪子の独壇場を制する者はすっかり居なくなってしまう。事実そう云った経験が霊夢にはある為、何となく妖怪の山の頂きで催される宴会は敬遠していたのである。

 が、一度そこに行ってしまえば、後は流れに身体を任せて、飲み食い騒ぐばかりである。途中から霊夢も宴会を素直に楽しむ事にした。後先を考える事は、その場に於いては無粋な行い以外の何物でもない。彼女自身、楽しい一時を過ごしている間に、面倒な考えを起こす程、真面目な性質ではなかったので、賑やかな喧騒に包まれた山の頂きは、平生と比較して随分と騒がしかった。日時が丑三つ時を過ぎる頃には、境内の中は死屍累々たる様相を呈し、宴会の主催者である二柱の神様も、だらしない格好で寝そべっているくらいであった。

 そのくらいの時分になって、漸く今現在の時刻を知るに至った霊夢は、そろそろ帰ろうかと酔いに痛む頭を抑えつつ、ふらふらと宙に漂いながら帰路に着いたのであるが、その時にどうも山の様子がおかしく思われて、一寸降りて歩いてみようと思い付いたのが、事の発端である。鬱蒼と草木の茂る山の裾野に降り立つと、彼女はまず初めの異変として、松明の光を目にした。数人分くらいの松明の焔が、草木に囲まれた暗黒の内で、ゆらゆらと揺らめいている。そうして耳を澄ましてみれば、何やら騒がしい声がする。自分達が発していたであろう楽しげなものではなく、怒気や憎悪といった、兎角悲痛な響きが認められる。霊夢ははてと痛む頭を押さえ押さえ、声のする方へ向かった。

 行く手を阻むが如く伸びる梢や葉を掻き分けながら、ふらふらと覚束ない足取りで、山の斜面を横切るように歩いて行く霊夢は、段々と判然たる言葉を耳にするようになった。未だ酔いに微睡む頼りない頭では、その意味を理解するには至らなかったが、おかしいなという思いは先刻よりも増して、彼女の胸の内より警鐘を鳴らし始める。月の光さえ届かぬ陰鬱な森の中は、酔いさえ醒まして行くかの如く思われる。霊夢は次第に明瞭になって来た意識の内で、こんな言葉を耳にする。

「おい、早くしろ。時間も無いし、愚図愚図していれば何か襲って来るかも知れない」

「待て、待て、中々好い具合なんだ。加えてこんなに美しい顔をしていやがる。もう少し愉しんでも好かろう」

「ふん、すっかり目的を履き違えやがって。これが目的ではないはずだ」

「まあ落ち着け。これもお前の計画に大人しく従ってやった褒美だ。どの道一人では無理な事だったろう」

「それにしても、何て下劣な。崇高な思想は崇高な美学の元に生まれるのだ。これでは品性下劣な悪漢と何も変わらない」

「ああ、畜生、こいつまだ抵抗をしやがるか。諦めろ! 己れは死体でも構いやしないぜ」

「おい、乱暴な真似は慎め。せめて一思いにいかせてやるのが情けだろう」

「情け、情けだって! 今更そんなものがあってたまるか! こいつは己れの腹に酷い引っ掻き傷を付けやがったんだ」

「……」

「悪漢でも何でも構わないが、己れも今少し愉しませて貰うとしよう。こんな機会は滅多に巡って来ない」

「ふん」

 男が五六人、そんな話をしているのが聞こえて来る。そうして、その合間に女の悲鳴とも嬌声とも付かぬくぐもった声が聞こえて来る。時には「この野郎」という怒鳴り声と共に、甲高い張り手の音が響く事もあった。

 霊夢は漸くにして、自分の居る場所よりも先で行われているであろう事が、尋常の沙汰ではない事に気が付いた。それでもまさか、という一抹の希望を拭い去る事は出来なかったが、焦燥を感じ始めた彼女の足取りは、自然と速足になり、やがて走り出す。自分の肌を傷付ける梢や葉にも構わず、一心不乱に足場の悪い山の斜面を駆ける。男の怒鳴り声は未だ鳴り止まぬ。女の声は段々聞こえなくなる。霊夢は自分が想像している最悪の事態に遭遇してくれるなと、心の内で殆ど嘆願と違わぬ思いを抱きながら駆けた。酔いは最早彼女の身体に、何等の障害も与えてはいなかった。

「何を――」

 男達の声が、一間先に聞こえるほどの距離に丁度生えていた葉を押し退けると、霊夢はそう云い掛けながら、開いた口を閉じた。想像を絶する恐ろしい光景が、霊夢の視界に広がる。森閑とした森の、少しばかり開けた場所には、淫気が立ち込め、吐き気さえ催す匂いがする。彼女の五感は、全てその状況を不快だと判ずる。醜い声が鼓膜を舐め付けているかの如く聴こえ……悍ましい匂いが身体の芯まで染み渡り……厭な汗の浮かぶ手が酷く心地悪く……乾いた口中を這いずる舌は無味を感じ……浮世に在るべきでない地獄絵を見る……。

 霊夢は眼だけを動かして、左を見る。乱暴に破かれて、捨て置かれた着物が、無造作に梢へ掛けられている。霊夢は眼だけを動かして右を見る。驚いたように眼を見開いて、ぴくりとも動かぬ男の姿。霊夢は眼だけを動かして、正面を見る。屈強な肉体を有する男が一人、碌に手入れも施されていない髭を伸ばしっ放しにして、大きな腹を剥き出しにした醜い男が一人と、それを取り巻く男が二人……そうして、彼らに組み敷かれる女が一人、虚ろな眼を霊夢に向けながら、紅き血と猛る欲望に汚された唇を震わせて、男達に抑えられる傷付き泥に塗れた華奢且つ嫋娜たる四肢を弱々しく動かし、乱暴に扱われれば容易く砕けそうな危うさを孕む細腰を醜い手に掴まれ、純白を誇っていた肌理の細やかな肌を、醜悪なる男の肌と合わせて、淫虐の行為を身に受け淫従を強いられている。

 美しい顔はふと、安心したかの如く柔らかく緩み、彼女は力なくその麗しき双眸を閉じる。頭頂より生える先の尖った耳も、尻から生えた尾も、全ては力を失った。痣に埋め尽くされた体躯は、男達への抵抗を止め大人しく大地に臥す。刹那の内に、霊夢はこれほどの光景を目にした心持ちがした。世界の時はことごとく遅くなり、男達の叫ぶ声さえ彼女の鼓膜を叩く事はない。ただ、女のか細い「助けて」という声と、その言葉に反して力を失った姿が、焼き付いて眼前から離れない。この男達は何をした? 答えは目の前にある。

 凡そ今までに感じた事のない感情の昂奮を、霊夢は不思議と冷静な思考の中で感じていた。血の気がさっと身体から引いて行き、全ての思考が中断される。筋肉の動きや己の呼吸さえ感じない。ただ、名称の判らない感情が、次第に昂りを増して、彼女を満たして行く。それは暗黒に塗れている。或いは紅に塗れている。視界は真赤に染まり、視線を上げれば、男達が彼女に襲い掛かる。全ては一枚の絵の連続の如くあった。霊夢の体感する世界は、恐らく現実の一秒の十分の一にも満たなかった。百分の一、千分の一……そんな異常な世界の中で静止し続ける霊夢には、最早一片の迷いさえ見られなかった。

 ――ああ、私はこの男達を躊躇いなく殺すだろう。妖怪ではなく、歴々たる人間を、この手で殺めるだろう。……





八.





「……それが事の顛末です。この先に如何なる惨劇が起こったのか、それは語るに及びません。また私の事をよく知り、察しの好い霖之助さんの事ですから、最早そこに何が起こったのかは御理解頂けているものと思います。

 その後、私は暫く放心したまま動けないでいました。男達の骸の上に立ちながら、私は自分が先刻まで何をしていたのか、まるで判らなかったのです。そして、奇しくも、更に云えば皮肉にも、私が我を取り戻したのは、ただ一人生き残った男に声を掛けられた時でした。私はその時の出来事を寸分違わず憶えています。忘れようにも忘れる事は出来ません。当時茫然と立ち尽くしていたのにも関わらず、私は男の言葉を、一字一句間違える事なく記す事が出来るのです。

 その男は云いました。「その出で立ちから察するに、お前は博麗の巫女だな」
 その声音には、これから自分が辿るであろう運命や、仲間達の死骸を見た事による恐怖は微塵も感じられませんでした。ただ、直向きなまでに、その言葉には純粋な憎悪や噴悶の響きが秘められていたように思います。私が無言のまま、その男の方へ向くと男は言葉を続けました。まるで、私が真に憎むべき仇敵であるが如く。

「己れを殺すなら殺すが好い。貴様は最早人ではない。我々人間を殺したお前は、本当に殺さなくてはならぬ我等の天敵を見誤った。妖怪に与する不届き者め。我等の呪詛をその身に刻み、未来永劫苦しみ続けるが好い」

 私には、男が何を云っているのか、今になっても遂に判りませんでした。弱きを助け強きを挫くのが正義の在り方ならば、私のした行いは間違っているとは思えなかったからです。この男達の犠牲になった妖怪の娘は、憐れなまでに弱者であり、この男達こそは、自らの力を奮って弱者を排斥しようとする強者でした。それなのに、誰がこの男の云った事を理解出来ると云うのでしょうか。敵を見誤ったのは、この男達に他なりません。私は今でもそう信じております。

 そうして、私はその男に尋ねました。憎しみの眼差しは、私に何等の恐怖も与える事はなく、自分の発した声が、本当に自分のものなのかどうか判らなくなるほどに、私は冷然たる声音で問いました。

「何故こんな事をした」

 すると、男は薄ら笑いを浮かべながら、喉をくつくつと鳴らしました。まるでキチガイの如く、眼はぎらりと異様な光を放ち、開け放たれた口からは、大きな笑い声が辺りを憚る事なく漏れ、腹を抱えながら男は笑っていました。私はその時にも、不思議で仕様がないという顔をしていたように思います。最早身体中を巡る血液が、氷の如く冷ややかになっていたように思います。だからこそ、私は冷静を保ったまま居られたのかも知れません。

 やがて、男は息をぜえぜえと尽きながら、私を見下すような視線を向けると、語り始めました。

「何故、何故だと。答えはもう出した。お前は敵を見誤っているのだ。何時我等人間に対して脅威になるか知れない存在と、仲良く慣れ合うこの御時世を、己れは憂いているのだ。何時の日か、奴らは必ずその身体に巡る人喰いの血によって理性を失い、我々を襲う。そうなる前に奴らを殺すのは至極当然の正当防衛だろう。それなのにも関わらず、お前は己れの仲間を皆殺しにした挙句、何故と聞く。これが笑わないでいられるものか。妖怪を討ち滅ぼす博麗の巫女が、何たる白痴具合なのか。喰われたから殺すで、人の命が救われるとでも思っているのかどうか知らないが、正しきは殺される前に殺す事だ。貴様等のように悠長な輩が後を絶たぬから、人は妖怪を恐れる。己れはその尻拭いをしてやっただけだろう。貴様等のように力を持っていながら、事件が起こらなければ何も行動を起こさぬ愚かな者の代わりに、力を持たざる者の代表たる我々が、人間の脅威である妖怪を粛清したのだ。何処に疑うべき箇所がある。事実を見据えろ。手段を選ぶな。人が死んでからでは遅過ぎる。これは必然として起こり得る生存競争の片鱗に過ぎぬ。人間か妖怪か、絶滅させた方へ、時代は風向きを変えるのだ。その現実から眼を逸らしているのは、他ならぬ貴様等ではないか。全ての妖怪を排斥したその時、漸く我等は平穏を手に入れる。その事に気付かぬから、貴様等は愚かしいと云うのだ。もう一度胸に手を当てて考えてみるが好い。貴様等が早々に行動しなかった所為で、一体幾人の命が失われたのだ」

 男の問いに、私は答えませんでした。また男の口上の続きも、私は知りません。男は続きを語る事なく、私の手によって憐れな骸と化しました。最早怒りも悲しみも、私の胸中には浮かび上がらず、ただ私の身体が、この男を殺せと命令したのです。地面に頽れた男は、最早何をも語らず、ただ死して尚、醜い光を帯びた眸ばかりが、徒に輝いておりました。そうして、私は漸く男達の凶手に掛けられた女の元へ歩み寄り、その襤褸衣の如き姿態に眼を向けました。

 彼女は既に事切れていて、私が何度声を掛けようとも、その瞼を開く事はありませんでした。私に出来る事と云えば、せめてその身形を整えてやるくらいの事で、私は打ち遣られ、引き裂かれた着物を持って来ると、名さえ知らぬ女に、それを着せてやりました。礼を云われたなら、どんなに救われた事でしょう。彼女がせめて、安らかな顔で、感謝の言葉を私に投げ掛けてくれたなら、私は救われたに違いないのです。

 その後、私は現場に駆け付けた上白沢慧音によって、感謝と謝罪の意を同時に告げられました。私が何故と問うと「汚い役割を押し付けた事と、彼女達の仇を取ってくれたお前に、どうしても告げなければならないと思った」彼女はそう云って、もう帰るようにと、未だ忘我の境で彷徨う私を諭しました。その時に、この恐ろしい事件の犠牲になった彼女の一族は、一人残らず殺されたという話を聞きました。慧音は、この感謝と謝罪は、最早口の無くなった死人の代弁でもあると云いましたが、私はそれでも自分の内に芽生えた迷いを断つ事は出来ずにいました。

 そうして、それを打ち明ける事も出来ませんでした。云えば慧音はきっと優しい言葉で、私は間違っていないと云ったに違いありません。それでは意味がないのです。優しい慧音の言葉を聞いても、私が納得する事は有り得ないのです。

 私は今更ながらに思います。男が云ったように、殺される前に殺すのが正しいのではないか。妖怪を一人残らず排除しようと目論んだ、この男達の存在に気付き、そうして早々に抹殺していれば、彼女達の一族は斯様な酷い仕打ちを受けずに済んだのではないか……既に考えても詮無き事とは判っていながら、私はそう思わずにはいられなかったのです。しかし、人間に害を成した妖怪に天誅を下すのが、博麗の巫女の果たすべき職務だと云うのなら、私には男達を殺す事も出来なければ、何もしていない妖怪達を殺す事も出来ません。私は自分の行いが間違っていない事を、今も信じていると先述しましたが、やはり、未だ迷いはあります。何をすべきだったのか、それが私には判らなくなってしまいました。

 それでも、死んだ彼女は何も云ってはくれません。私の行動を是と認めてくれなければ、非と定めてもくれないのです。私がその場で得たのは、男の呪詛の念ばかりでした。明確に私の行動を否定してみせたのは、その男のみでした。故に私には判らないのです。或いは真の意味で、人間として在った男の云った事こそが、尊重すべき人間的意見だと云うのなら、既に私は人間の範疇より逸脱した者です。自分をどちら側と定める事に、利益などあるべくもない。けれども、私は博麗の巫女であり、妖怪と人間との両の私見から物事を見詰めなければならないと思います。どちらに揺らいでも、博麗の巫女としての資格は失われてしまうように思うのです。

 私が、何故霖之助さん一人に手紙を差し出したのか、その訳はもうお判り頂けたでしょうか。立場がどうこうではなく、存在そのものが人間と妖怪の狭間にある霖之助さんならば、私の懊悩煩悶に答えを出してくれるのではないか……私はそう思い立ったのです。最早それを知ろうが知るまいが、私には何ら関係のない事ではありますが、しかしそれでも私は自分の出した答えに納得したいのです。一人ではどう考えようとも無理でした。

 甚だ御迷惑な話ではありますが、私は誰かに頼る事しか、迷宮に迷い込んだ自分の思考に、終止符を打つ手段を見付ける事が出来なかったのです。その為に霖之助さんに手紙を差し出した次第です。宜しければ、霖之助さんが独自で考え出した意見を、聞かせて欲しく思います。幻想郷に遺した未練は、もうそればかりなのです。

 だからこそ、恥を承知して、迷惑を承知して、私は霖之助さんにお願いを申し上げます。どうか、一時の同情に流された意見ではなく、霖之助さんが思う考えを、教えてくれはしないでしょうか。これが、私の最後のお願いです。無論、霖之助さんに返事を出さねばならない義務はありませんし、私の願いを聞き届ける義務とてありません。面倒だとお思いになるのなら、重ね重ね申し上げました通り、私の事など打ち遣ってくれても構いません。私はどちらにしろ、もう手紙を霖之助さんに差し出す事は致しません。この手紙が、霖之助さんに送る最後の手紙です。故に、返事の来ない事が判っている手紙を出す必要もないのです。それを踏まえた上で、御自分の行動を選択して下さい。

 それでは、非常に長くなってしまい、大変申し訳なく思いますが、これにて失礼致します。これから霖之助さんが、引いては今も幻想郷に生き続ける全ての人々、妖怪達が、末永く御健康な日々を送れますように、お祈り申し上げます。また、今まで数々の迷惑をお掛けして、申し訳御座いませんでした。このような場でお詫びする事をお許し下さい。

 最後に、今まで私のお世話を焼いて下さった霖之助さんへ、感謝の意を込めた別れの字句を送り、この手紙の締め括りと致します。

 さようなら。
                         拝具
                            博麗霊夢」





九.





「拝啓 散々迷い抜いた結果、返事を出す事に決めた。無論これは君の云った通り、差し出されるばかりで返って来る事のない手紙なのかも知れないが、さようならと一方的に別れを切り出されたのでは堪らない。君が戻って来ない事は、これまでに送られて来た手紙の内容を見るに、間違いのない事なのだろうから、この手紙は単なる僕の自己満足の産物でしかないが、それが消えてしまった君の慰藉に成り得るのならば、僕はせめてもの手向けに、この手紙を差し出す。厳しい言葉を眼にする事もあるだろうが、故に混じり気のない純粋な僕の意見だという事を、信じて頂きたい。

 君の身に起こった事、正確に表現すれば、君の起こした行動の経緯は理解した。事件の全容も、君が語ってくれた事で、呑み込めた。後はそこから導き出した僕の考えを連ねるだけではあるが、しかし、折角の別れの手紙なのだから、早々に終わらせるのも勿体ないように思う。なので、色々な事を、悠長に書き出してみようと思うが、どうか面倒を辛抱して、最後までお目通し頂きたい。

 まず、この事件の首謀者たる男の意見についてだが、僕は必ずしもそれが間違っているとは思わない。死に際で君の云う通りの事を語り尽くして死んだ男の様子には、確固たる信念さえ見て取れる。彼のした事は、成程人道の域から外れてはいるが、浮世に生きる生物として、自分より力を持ち、またその力を何時でも行使する事の出来る妖怪は、定めて脅威の存在であろう事も、当然の事実であり、また一昔前までの真実であったに違いはない。

 が、だからと云って、人間に危害を加える力さえ持たぬ弱き妖怪を、斯くも惨たらしい方法で虐殺するのが正しかったのか、と云えば、そうではないと僕は思う。また、弱者を守る義務を負うのが強者とも思わない。何時の世も、弱者は弱者であり、強者は強者である事に変わりはなく、またその関係性が成す悲劇を罪と定める事もしない。突き詰めて云えば、権利とは能力の行使であり、それをどう使おうが、それは当人以外が口の出せるものではない。しかし、この論理を肯定するのなら、強者は何をしても許される。悪逆非道の限りを尽くす強者が居るのなら、聖人君子のような強者が対抗しない限り、弱者に抵抗は出来なくなってしまう。

 そこで必要になるのが規律であり、規律によって保たれるのが秩序である。秩序の乱れた社会は、一様にして悲惨な事件に直面し、いずれ崩壊を迎えてしまう。故に規律が必要になるのであり、それに背いた場合の罰を定めなければならない。また、規律に背いた者に判決を下す役割を担った者なども、更に必要になって来る。それが一般の社会の在り方であるが、この幻想郷に於いては、それが酷く曖昧で、また規律を定める為に存在しなくてはならない絶対的権力機関と云えるものは存在していない。今回の事件が起こるきっかけになったのも、それが原因ではないとは云えないだろう。

 否、上記の通りにしたのでは語弊が生じる。正確には、社会に在るべき仕組みが、極端に単純化されているのではないか、と僕は思う。まず、順を追って説明すると、規律そのものが、権利に依存しているという事実がある。その化身たる者が、博麗の巫女である君だった。君は人間に害を成した妖怪を討伐し、人々に安寧をもたらす存在である。上記の例で云えば規律そのものが君であり、また断罪者たる役割を担うのも君なのだ。君は妖怪が人間を喰らった、或いは殺したという事実に基づいて、その妖怪に罰を与えるべく、彼らを成敗する。しかし、これは人間側の一方的な規律でしかなく、それでは妖怪側の者が確実に不満を抱いてしまう。そこで制定されたのが、スペルカードによる決闘である。

 この画期的且つ斬新な制度が生まれたからこそ、幻想郷は平穏の内に在った。小さな争いはスペルカードによって、円満に解決され、調停者と表現しても好い存在が、人妖の均衡を保つべく、人を食うべからずと呼び掛けた事もあり、両者は互いに干渉を控え(無論その限りではない者も居るが)幻想郷には秩序が生まれたかの如く思われる。しかし、仮に逆の事態が起こったら、という事に関して、我々は全く考慮していなかった。

 即ち、今回の事件がそれである。本来弱者と位置付けられて相違ない人間が、逆に強者と定められている妖怪を駆逐する。君は博麗の巫女として人間を守らなければならぬ立場にあり、また妖怪側に明確な規律はなく、出来る事と云えば同族を殺された事による復讐ばかりだが、一族は皆殺しにされており、それを企てる者も居ない。するとどういう訳か、妖怪を殺した男達を裁く者が居なくなる。これは古来から続く、妖怪は強者、人間は弱者という定義が裏目に出た結果で、本来妖怪に手を出さぬ人間が起こした一種異常な行動からもたらされた不都合でもある。

 もしも、明確な規律として、多々矛盾が生じてしまうが、極端な例を挙げれば「妖怪を殺した者を罰する規律」が存在したなら、君が彼らを裁く事もなく、事件が露見した瞬間に、彼らは裁かれるべくして裁かれたに違いないのだ。しかし、妖怪は強い、という安直な位置付けがそれを許さなかった。また、妖怪は妖怪同士で慣れ合う事も少なく、力を持たぬ弱小一族が殺されたからと云って、今ある秩序を乱そうと動き出す者も沢山は居なかろう。もしかしたなら、誰もそんな行動を起こす者はいないかも知れない。故に、此処で重要になるのは個々の正義なのである。

 今まで穏やかに人間と共存を成して来た、妖怪と云えども人里の一員である彼女等を、妖怪であるからという理由だけで殺し、残酷な仕打ちを重ねた男達の行為を、罪と定めるべきか、それを判ずる物差しが正義である。こういった事件に対して、酷く曖昧な規律に守られた幻想郷では、この正義が非常に重要になって来る。自らの正義に従って善悪を決定し、裁決を下さなければ、幻想郷では如何なる暴虐も許される事になってしまう。が、これは本来色々な正義を持つ者が話し合った結果に基づかなければならないものであり、自分の正義が最も尊重されるべきであるものと断定して、勝手な行動を起こしてはならない。そもそも、正義という定義に確たる基準が存在しないから、ともすれば当人が正義だと思って行った行為も、他者からすれば悪行に違いない可能性も十分に有り得るのである。

 これが明確に現れているのは、君と男の遣り取りであろう。男にとっての正義、そして君にとっての正義は、全く違う。人間の為にと云った男の言葉、君の弱者に対する強者の在り方の認識……どちらも正義には違いない。が、どちらが正しいというのは、一人で決められるものではなく、仕舞には多数が小数を勝る結果となる。もしも男の考えに賛同する者が多数居れば、君の考えた事は瞬く間に淘汰され、罪人と定められるのは君になるだろう。斯くも正義とは曖昧で独立したものであるのだ。規律がなければ誰も男の行動を咎めてはならないし、君の行動とて同様なのである。正義が尊重されるべき概念だとすれば、各々の無法行為は全て正義の名の下に許される。どうすればそれを防ぐ事が出来るのか、此処で登場するのが規律であり、正義の大まかな尺度を取り決めるのも、規律である。

 が、先述したように、人間が妖怪を殺した事に対する罪は定められておらず、更に都合の悪い事に、この事件の首謀者たる男に賛同する者が少なからず存在し、君は博麗の巫女という立場にある人物であった。圧倒的、或いは絶対的と云い換えても好いが、君のように絶大な力を以て秩序を保とうとする存在には、相応の責任が課せられる。察するに、今君はその責任を全うしている時なのだろうと思う。人間を守る為の者が人間を殺しては本末転倒であるし、また君が独断で裁きを敢行したのも一つの事実なのだから、それは至極当然の事なのだろう。

 つまり、客観的にこの事件を見れば、この事件に関わった者が全て死んでしまい、証言者が潰えた時点で、君の行動を真の意味で肯定する事は出来ないのだ。その上、君は今や幻想郷から消え、誰にも別れを告げる事なく失踪してしまった。仮に僕が君を弁護する立場に在ったなら、それは不可能に違いない。君が責任を取って消えたという事実そのものが、最早罪を認める行為に他ならないのだ。そうした事実を踏まえて云えば、君の行いを正しいと云い切る事は到底出来ない。私情を挟まず、そのままこの事件の結末を書き出すなら、君は感情に任せて人間を殺し、またその男達が一族を殺したという証拠はなく、極端な話では全て君の策略だったのではないか、とも考えられるからである。これは僕の推測だが、君の処遇を決めるべく活動していた人物も、僕と同様の事を云ったのではなかろうか。
 
 しかし、決して勘違いしないで頂きたいのは、以上に述べた事柄は僕なりに事件を客観的に見詰めたものであり、僕自身の考えは別にあるという事である。他の誰でもなく、僕に迷いを断ち切って欲しいと云った君の願いを、僕は努めて叶えたいと思っている。それが僕の役目であり、せめてもの餞だという事は、冒頭に記述した通りだが、今尚君が自分を責めているのなら、僕はその苦悩さえ断ち切って遣りたいと思う。君は同情は不要だと云ったが、以下の記述に眼を通しても、それが僕の素直な意見だという事を信じて欲しい。でなければ、僕が臆面もなく本心を曝け出す意味がない。

 まず、結論から云うと、僕は今回の事件を起こした男達の行動は、全く以て的外れだと思う。彼らは妖怪を排斥して、妖怪を恐れる事のない安寧を得ようという思想の元に行動を起こしたらしいが、その行動の着眼点からして間違っているのだ。歴史を紐解けば、何時如何なる時代に於いても、争いは絶えず、そしてその都度人々はあらゆる手段でそれに対処して来た。が、その中で永遠の平和が続いたという事はない。何も世界的に見た争いだけではなく、人間関係に於いてもそれは同様である。幾ら自分の異なる存在を排除しても、決して闘争は絶えないのだ。

 即ち、彼らが選んだ、大袈裟な言葉を用いれば戦争という手段は、その場凌ぎのものでしかなく、それこそ僕らのように長い寿命を有する妖怪から見れば、実に愚かしく意味のない事である。成程戦争は結果が出るのは早いかも知れないが、やはりそれが平和を生み出す事はないのである。強者に打ちのめされた弱者が、不満を抱かない事はないし、強者の立場にある者が、その権力を振るわない事もない。戦争は新たな争いの種を生み出すばかりで、廃絶に至る事は決してないのである。

 ならば、平和を得る為に何をすれば好いのか。それは最初から決まっている。限りなく困難で、実現が不可能に思われる夢物語かも知れないが、完全無欠の平和を得るには、誰もが共存を望む以外に手段はない。皮肉な事に、人との共存を望み、人里に住んでいた彼女ら一族を殺した男達は、平和を得る為に、平和の象徴たる者を殺してしまった。尤も、この意見は偽善者の戯言には違いないので、納得する者も少ないとは承知しているが、僕は平和への道のりは、共生の渇望以外には存在しないと信じている。故に、男達の行いを間違っていると思った。

 だからこそ、君の行動を褒められるものではない。これは部外者である僕だからこそ云える事なので、無礼を承知で此処に書き出すが、君のした事は力に対する力の行使に違いないのだ。あの時、君は第三者に男達を引き渡し、裁決を待つべきであり、それこそが博麗の巫女として重大な責任を負う君の仕事であったはずだ。そうすれば、君が今の事態に陥る事もなかったろう。男達を上回る力を持つ君だからこそ、尚更そうしなければならない。が、これは先に語った通り、この事件に対する客観的な結論である。

 僕の正直な考えを記すと、まず僕は君の正義に敬意を表したいという旨を明らかにしなければならない。あの時、君が彼らに裁きを下したのは、君が自分の正義に従ったからに過ぎない。彼らの行いを許されざるものとし、他の誰でもなく、犠牲になった彼女の助けてという願いを聞き届けて行った、全き正義の裁きであると思う。博麗の巫女としての責任云々ではなく、一人の人間として、君は彼らを裁いたのだ。万人が君を間違っていると咎めようが、僕は君を偉大だと賛美する。

 責任に縛られる人々は数多存在する。その為に多少の犠牲は仕方ないと考える者も、無論居るだろう。しかし、君はそういった人々とは一線を画しているのだ。自身が背負う責任の大きさに怯む事なく、自らの意思で裁きを下した君は、偉大と称して間違いのない素晴らしい人間である。だからこそ、自分の正義に猜疑を持ち出さないで欲しい。僕が君の正義を肯定したように、君も僕が肯定した自分の正義を、揺るがざるものとして、何時までも胸に抱えていて欲しい。今は亡き一族の心境を代弁する事は出来ないが、それ故に、事件に直面した君は、彼女らの為にした事に、疑いを持ってはならないのだ。決して自分のした事が間違いなどと思ってはならないのだ。

 死者は何をも語らない。彼女ら一族の意を汲めるのは、君以外にはもう居ない。だからこそ、誰の意見にも惑わされず、自分の正義を信じ、博麗の巫女という役目に踊らされる事なく、自分の正義に自信を持たねばならない。以上が、事件の全容を知った僕が導き出した考えである。多少話が前後する所も見苦しかったかとも思うが、急いで書いていた所為もあって、文章が乱雑になってしまった事は御容赦頂きたい。

 ところで、今、幻想郷では誰もが君の帰りを待ち望んでいる。香霖堂も、君が来ないと些か騒がしさに欠けるようだ。静寂は嫌いではないが、やはり飽きてしまう。それに代金を払って貰っていない商品もある。だから、このまま消えられては困るのだ。僕の矜持を守る為にも、此処で長くは語らないが、幻想郷に住まう人々の意見を知って欲しいと思う。

 それと、最後に一つ、君に謝らなければならない事がある。君は僕に、差し出された手紙を読んでも、全て胸の内に留めて、誰にも話さず、そして如何なる行動も起こさないで欲しいと云ったが、それを守る事は出来なかった。君の忠告は確かに見届けたが、万が一この行動が僕の存在を危ぶませるとしても、君の正義に殉じるのなら悪くないと思える。それだから、僕は手紙の締め括りとして、君とは違う言葉を用いたいと思う。

 また、何時の日か、君が香霖堂に訪れる事を心待ちにしている。
                            拝具
                                森近霖之助」






















――了
「罪と罰、その在り様。掟と責任に縛られて、兎角生き辛い世の中だけれど、それでも貴方は戻りたいと云うの? 阻みはしない。咎める事もしない。ただもう一度考えて御覧なさい。貴方の心の揺らぎは、決して今回限りのものではない。今後同様の事件が起こるかも判らない。貴方はその事態に再び直面した時に、如何なる行動を選択するのか。それをよく考え、そうして導き出すのが同じ答えならば、貴方は責任を果たした事になる。その時には……方々感謝を云いに回る事ね」
twin
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アウト
9.10名前が無い程度の能力削除
読みづらい
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読んだ後に叫びたくなったのは初めてだ
17.100名前が無い程度の能力削除
面白かった。
22.無評価名前が無い程度の能力削除
この表現はアウトでは。
24.100名前が無い程度の能力削除
こう見ると霊夢って無重力とか評されながらも、いろんな物に思いっきり縛られてますよね。
正義を一本化できないのなら、せめて握手をしながらお互いの足を踏みあう程度の関係くらいは構築したいものです。
まあ肯定者が一人でもいるのなら、その場所へ帰るのも悪くはないかもしれない。そう霊夢が思ってくれるといいですね。
いくら問答しつづけても答えの出ない問題。素晴らしいお話でした。
25.100名前が無い程度の能力削除
どうしろってんだよ……
26.100名前が無い程度の能力削除
あるある、これはあるよ
27.100名前が無い程度の能力削除
問題は、この妖怪が人間女性タイプだったことですよね
これが男性タイプ、もしくは動物型だったら
山に鹿が山ほどいて降りてきて悪さをするから根絶やしにしようというのとどこまで違うといえるのか
この男たちの下劣な行動を正当化するのではありませんよ
ただ、強硬な根絶やし派とだけ見るのなら、姿がこうでなかったらさて?
姿が自分たちと同じでもそういう視点が取れる、というのが人間の特徴でもあるのは
歴史的に本当の人間に対して同じ行動をとったのが証明していますが

いままで考えもしませんでしたが、殺人嗜好者にとっては幻想郷はいいとこかもしれませんね
すごく本物に近い『贋物』があるんですから
ただ、「狩る方」で居続けられるかどうか走りませんが
28.100名前が無い程度の能力削除
読んでみて幻想郷において起こってもおかしくない「闇」を描き切るためにはこの展開は仕方ないと思えました。ただ全年齢対象の場で作中の描写が適切であるかという疑問に対して簡単に首を縦に振ることもできません。点数は私の中の正義にしたがって満点を入れますが、その点ご一考お願いできますでしょうか。次回作も楽しみにしています。
30.100名前が無い程度の能力削除
殺された男たちが可哀想だ、と思う。
自分なりの正義を貫き、そして相反する正義に負けて、一方的に悪にされてしまうほど悲しいことはない。

罪を定めるのは常に規律であり、罰は誰かの正義を裁くものであるならば、規律は常に必要悪でなければならない、と
私は思います。厳然たる、絶対の力を持った必要悪。それが道徳や善であっては、まして賛美されるようなものであっては
ならないでしょう。悪であるという覚悟の下で執行される規律でなければ、常に裁かれるものは傷つかなければならないのです。

それに霖之助が霊夢を賛美した論理は、紛れもなく男たちの間で交わされた言葉なのです。だからそれがどうにも
欺瞞めいて映ってしまう。霊夢が賛美されるべき偉大な存在であるなら、この男たちとて同様なのです。
自分が正義であると信じて疑わない存在を、私はどうしても好きになることができない。それは正しく不寛容の
権化だからです。皮肉にも霖之助が霊夢の正義を賛美したことが、彼自身が望む共存の道を閉ざしてしまうのでは
ないだろうかと、私には思えてならないのです。

本当に、考えさせられる話でした。この点数でもって惜しみない敬意を表します。

誤字報告
>妖怪は妖怪通しで慣れ合う事も少なく
妖怪同士、であるかと思われます。
31.60名前が無い程度の能力削除
人間側を悪く描きすぎててちょっと引きますかね
まあ原作も結構そんな雰囲気ですけど
32.50名前が無い程度の能力削除
これ重大な欠陥あるよね。
男たちは人間じゃないと私は思うんだ。あれはもう害獣じゃない? 故に害獣を駆除して何が悪いの?

男たちにも正義があった?wwww妖怪怖いから先制攻撃は分かるよwwwwでも強姦はなに?wwwwww
私の人間定義ではとてもじゃないけど男たちを人間とは言えないよ。
仮に妖怪を皆殺しにして、次はなんですか? 次は敵になる可能性がある味方(人間)ですか? その次はなんですか?

この作品で考えることなんて何もないよ。
ただのビビリの男が屁理屈こねて正義を騙っただけの話。
っていうか強姦が無ければ男たちの正義っていうか言い分もわかるのに。物の序でに書いたのだとしたら最低だし、男たちの行動としてそれが自然だと思ったのなら、最初から貴方は男たちに正義なんて無いと思ってたんじゃない?

読了後、胸糞悪いわーと思いながら書き殴ってるんで乱文にも程がありますけど、すいません。
37.80名前が無い程度の能力削除
男達が真性馬鹿ってだけでは。
正義は関係無いと思う。

・妖怪を忌み嫌う要因が「理不尽な脅威」であるなら、今回男達がやった事がまさにそれ。自己矛盾している。
・仮に種族闘争として殺害を正当化するなら、全く同じ理屈で妖怪に全滅させられるだけ。巻き込まれる他の人間からすると最悪に傍迷惑。
・妖怪の殺害に関して規律が無い事を男の独断正当化の根拠にするなら、全く同じ理屈で誰かの独断によって事後処理されても文句は言えない。
・男の霊夢批判は、巫女が「何時如何なる条件下でも人間の味方で無ければならない」って決められてる場合しか有効じゃない。

個人的復讐とか純粋な恐怖に駆られての行動なら感情的に理解はできるけど、ぶっちゃけ「むしゃくしゃしてたらカモが居たんでカツアゲした」ってレベルの動機だからなぁ。やっぱ真性馬鹿かと。

霊夢は早く帰ってきて、皆と相談して欠けてる規律を作れば良いと思います。
38.100名前が無い程度の能力削除
無茶苦茶面白かった。即保存した。
39.100名前が無い程度の能力削除
うぅむ…
男の言ってることって「博麗の巫女は人間の味方」って前提で言ってるよなぁ…
巫女の役割には人妖のバランスを保つことも含まれるから、
一概に人間の味方とも言い切れないような。

霊夢が連中を殺してしまったのも自身が女性だからってのも少なからずありそうだな…
40.100名前が無い程度の能力削除
ここのコメント欄の意見も踏まえてこの「作品」の形と捉えさせて頂きました。
この作品が罪と罰、正義や規律に関する問題への提唱を謳うものであるならば幻想郷はまさに打って付けの題材だと思います。
これらの問題は決して単純な問題ではなく、人類の長きに渡る歴史を経て尚解決出来ない諸問題に当て嵌まると考えております。
強いて言うなれば主観と客観の区別がつかず、己の主観こそを全て是とし正義を振りかざして結論を出し断罪へと導き出すその「安直さ」こそがこれらの問題を解決不可に導いていると、「作品」を拝見致しまして考えた次第です。

こういった表現の余地のある幻想郷、素晴らしい文章を創作された作者様を労い、100点をつけさせて頂きます。
42.100名前が無い程度の能力削除
―想起『芥川龍之介の桃太郎』―
44.50名前が無い程度の能力削除
 作品としては満点、しかし東方の二次創作としてはちょっとコメントしづらいね、故に50点

 男連中が実に人間臭くっていいね、37の言うとおり行動の程度が違うだけでこの手の連中は日常にゴロゴロしてるし。
 霊夢は自分の正義に対しても二律背反を感じていたのかも。 男連中は狐達にとっては強者であったかも知れないが霊夢からすれば絶対的に弱者だったからなぁ・・・・。 霖之助の言う通り殺すまでいかず然るべき者に引き渡して裁定を仰げばこんなことにならなかったのかもしれません。

 しかし何故『平和』か…。
 不味い料理があるからこそ美味い料理を評価できる、不幸を知ったからこそ幸福を感じれる、悲しい事を経験するからこそ喜ばしい出来事に出会える…、人間って何事においても相対的にしか物事を感じられない存在なのだから『平和』を求める事は常に『争乱』を招くことを意味しているのにねぇ…。 
 それでも『平和』を渇望するのは欲望という知性の成せる業故か……。
45.100名前が無い程度の能力削除
扱ったテーマや展開の都合上仕方ないとも思いますが、作中の描写の中に全年齢としてはいささか不適切な表現がある以上、タグや冒頭に注意勧告が必要なのではないかと思いました。
それはともかく、
事の顛末に伴う霊夢の起こした行動、霊夢が手紙を出す人物に慧音や妖夢ではなく霖之助を選んだこと、霖之助が霊夢に宛てた返答が、霊夢の問いに対して真摯に向き合い、包み隠さず心情を吐露して物語を締めくくったなど、
題材に対する十分に説得力を持った構成、描写だったと思います。まさに力作でした。
幻想郷で存在するかもしれない「闇」について正面から挑んだすばらしい作品でした。

ただ一点だけ、あとがきでの台詞は誰のものなのでしょうか?紫?映姫?
事件の当事者で生き残っているのは霊夢ただ一人であり、また作中で述べたように、妖怪と人間との「規律」が見直されなければならないとされている以上、第三者である限りそれが誰であろうと霊夢に対してこんな軽はずみな発言ができるような資格は無いという事だけ主張として述べておきます。
46.100名前が無い程度の能力削除
「幻想郷」タグから来ました。
同時期に投稿されたaho氏の「凡人『霧雨魔理沙』」との比較が入ることを先に断っておきます。
向こうでは妖怪と人間とのあり方について、人里の人間の考え方自体が外の世界の我々とは異質なものだという発想で進めていたなか、
本作では、あくまで人里の人間を「人間」として描き、霊夢がもしかしたら直面するかもしれない問題について、逃げ道を作らずありのままの形で描かれていました。
原作の設定から来る矛盾の中でも、なかなかに手を出しにくい題材ではありますが、タイトル通り「罪と罰」を物語の指標とし、弱冠の救いの余地も残したうえで最後まで芯がぶれず一貫していたのは見事でした。
おかげで読者としても様々な角度から読むことができました。
素晴らしい作品です。
47.100名前が無い程度の能力削除
色々考えさせられるなぁ……
強姦とかしちゃった時点で男たちは正義は感じられないけど……
なんていうか、もしこれで人間側が女性で、妖怪側が男とかだったら、どうなのでしょうか?
あくまでifの形になっちゃうんですが……

総じて、面白かったです。
48.100名前が無い程度の能力削除
この場合は強姦とかしてる時点で男達に義はないと思うが
人間が妖怪を殺した場合の規律ってのは考えさせられるモノだと思いました
駆逐や対立でなく共存をするなら必要なモノなんですよね
50.100名前が無い程度の能力削除
表現はセウト。だけど、とにかく面白い。
まさに現実っぽい男たちと、それを罰するのは正義か否か。
自分の中では、無論人間としての規律を脱した男たちに人間を語る資格はないとおもうのだが、
それにためらってしまう霊夢がまさに人間っぽい。
いい作品だった。
51.100名前が無い程度の能力削除
結局、妖怪と人間、違いに目を向け過ぎたのが原因なんだろうがね。かと言っても目をそらさないって選択もあり得ないし。でも霊夢のした事は絶対間違っちゃいないと思う。博麗の巫女としては、人妖を区別しないのが今の幻想郷にとってベストなんだが。
まあ、部落差別やら人種差別でも似た様な事はあったんだし、何時かはこんな確執も無くなると思いたいものだが、ねえ。
53.100名前が無い程度の能力削除
死にたい
54.80名前が無い程度の能力削除
この作品を読んで「人を傷つける正義なんてない」と言うセリフを思い出しました。
理性のタガが外れてリンチや強姦をする男達も、決断をせずに激情のまま殺戮をした霊夢も、
正義と言う言葉を都合良く使う同じ穴のムジナのように見えました。

首謀者の人間だけはただ妖怪を殺す事だけをしていたようなので、人として正しく妖怪を恐れ憎んでいただけなのかも知れませんね。
何が悪かったんだと考えたら、頼まれたからと言って村人に内緒で勝手に妖怪を住まわせた事だと個人的には思います。

いろいろ考えさせられる話をありがとうございました。
56.100名前が無い程度の能力削除
う~ん、永久に結果の出ないであろう問題を巧く表現されていると思います。
脱税犯から垣間見える人間味に正義とは何か自問する主人公を描いた(※俺解釈)
故 伊丹十三監督の映画「マルサの女」を思い出します。
無論「罪」のレベルは全く違いますが…

魔理沙が名誉回復に走り回り各勢力が霊夢捜索部隊を結成、なんて妄想をしてみたり。
58.100miyamo削除
正直に申しますとこの男どもに正義など微塵も感じませんでした。
相手が脅威的な存在であるから先に攻撃する、
そんなのただの被害妄想じゃないですか。
実際に相手が何を考えているのか分からないのに相手が自分たちをいつか攻撃してくるかもしれないからと言う理由で攻撃し、
しかも結果的に自分より弱い存在を標的とし、
あまつさえ強姦などという非人道的な行動をする輩が、
なにを自分たちの行動が正義などと言う戯言をぬかすか。
同族のことを考えた行動なら一番強い存在のところに出向いて勝手に死ねばよかったものを、なぜ真っ先に人との共存を目指したものに手をかけたのか。
所詮こいつらはただの臆病者ですよ。正義の使者でも、ましてや人類にとっての救世主でもなんでもない、
ただの価値観のゆがんだ臆病者です。
霊夢、だからあなたはそこまで責任を感じる必要は無いと思います。
たとえそれが強すぎる力を酷使した、やりすぎな行為であっても、
あなたがした行為は全面的に正しいと思います。
万人があなたを否定しても僕はあなたを支持し続けます。


いままでここまで考えさせられた作品は多分無いと思います。
上では霊夢が全面的に正しいと書き、今でもそう思っていますが、
結局、本当の正義とは何なのでしょうね…。
作品でも他のコメントでもあるように、人には一人一人違う正義があるわけで…。
とても長い文となり本当にすみませんでした。
ただ自分が思ったことを書き連ねたらこれほど長くなってしまいました。
最後に、これほどまでにすばらしい名作を読ませていただいたtwinさん本当にありがとうございました。次回作も楽しみに待っています。
59.80名前が無い程度の能力削除
筆者の文体で書いてるから解りにくくなってる部分もあるかと思うが
基本的には単純な話ですよね、これ。

セーフかアウトで言えばこの程度の表現でアウトとかアホかってレベルかと
強姦はあくまで解りやすい悪行として題材にしたのでしょうしね

幻想郷故に妖怪と人間って関係て描かれてますが、これは別に人と人でも同じ問題ありますし
その場合『先に問題起こした方が裁かれる』のですから別に霊夢はなんら悩む必要もないかと
なにせ妖怪を襲っていた以前に人里、ひいては他大多数の人間の秩序と平和を乱しかねない問題を起こしてた上に
霊夢本人に襲いかかった、そして返り討ち ……何の問題があるのかサッパリです。

そもそも人里で妖怪が手を出してはいけないルールはあったかもしれませんが
妖怪が住んではいけないルールは見た事ないですし、女性型妖怪だった云々を抜きにしても
結局この男たちのした事は裁かれるべき行為でしかない。

本当に問いたいのであれば『人里の外に住まう平和的な妖怪相手に狼藉を働いた人間』にすべきだったかもしれませんね。
60.100名前が無い程度の能力削除
鬼気迫るような話を読ませて頂きました。
霖之助の霊夢の正義に対する了見は絶対的な規律の存在し得ない世界
(それはきっと我々の世界にもいえます)においては正しいのでしょう。
ですが、正しいと思ったことはとても恐ろしく思えました。
常識の地面たる規律が足元の地面が脆いことを意識させるからです。
特に閉鎖的なコミュニティである幻想郷では本当に危ういものなのでしょう。

この作品はそういった足元を強く照らすことをした作品だと思います。
コメント欄で様々な意見が出ているように、読者に様々な思いを抱かせるように語りかけた。
それがこの作品の成功であるのだと思います。
感銘をうけるに値する作品でした。
63.100名前が無い程度の能力削除
幻想ぐらいご都合主義の綺麗なままでいいじゃない。

正義って言葉こそ最大の害悪だと思います。
これほど使い勝手のいい言葉ない、ともね。
67.100名前が無い程度の能力削除
本来弱者である人間が、強者である妖怪に牙を剥く。その結果が外の世界だとするなら、幻想郷における正義の重点は妖怪の側に置かれているのでしょう。
その解消として、人の味方である巫女が居る。なのに、その巫女が妖怪の味方をしてしまった。道徳云々はともかく。
男の正義には欠片も正当性はありませんでしたが、幻想郷における人殺しが妖怪の所業としてイコールで結ばれるなら、言い分には一理あったのかもしれません。それが理解できてしまったから、霊夢は自分が巫女に相応しくないと思い、罰を与えてくれる妖怪の下に向かったのだ、と自分は考えました。
罪を感じているのに、罰が与えられない。それが耐えられなかったかもしれません。
自分の立ち位置を見失ってしまった霊夢が、自分と同じ様に曖昧な位置にある霖之助に意見を求めた心中は、なんとなくですが察する事が出来ました。
最初の手紙で何時文が途切れるかわからないというのも、何時でも自分は罰を受ける覚悟があるという意味かな、と勝手に想像してます。
許される事がこの霊夢には一番辛いことなのかも、という感想も抱きました。そういう意味では、客観的にでも責めてくれた霖之助の言葉は救いになったかも、と霊霖的な妄想をしてみたり。

夜とはいえ、山に部外者が入ったのに天狗はなにしてんだ、という疑問はありましたが、全体的に想像力を働かせることの出来る面白い作品でした。
68.100名前が無い程度の能力削除
意外と読みやすかったし、単純におもしろかった。
70.100名前が無い程度の能力削除
霖之助が記した正義という言葉が印象的でした。
規律を説ける人と妖のハーフでありながら、
規律を捨ててまで裁くべきことがある、
と断言するのは、何かと窮屈な世の中に対して爽やかさともどかしさを感じました。
霊夢に対してだからこそ、言える言葉だな、と。

大いに悩むことができるお話でした。
77.無評価名前が無い程度の能力削除
まぁ、閻魔様に裁いてもらえば?で終わる話
少なくとも善行じゃないしね。お互い
83.40賢者になる程度の能力削除
なんつーか、人間側の行動は非道のものだけど、人間らしいと思う。

いつの世も闘争の中には、ゲスな人間は出て来るし本能的な所なんだろうけど、脅威の排他と言う行動は理解できる。

ただ、人間の方に正義を持たすのならば、もっと何か無いとただの差別集団にしかなりません。KKKのような感じの。

霊夢の葛藤は「博麗の巫女」が原因と言うより、霊夢が「人間」だと言うコトの方が大きいような。
理由は前述のとうり人間側が、差別集団の狂人ばかりに見えと言う点。

また、細かな所に疑問が多くある。

上のコメにもあるように、天狗の警備や慧音の甘さ、命蓮寺という妖怪寺があるのに、妖怪側からの報復は無しと考える人間側の思考の浅さ。

作品としては、深く考えさせられるものでした。

ただ足りないモノが少々多く、全年齢対象としては相応しくない表現もありましたので評価はこれくらいで失礼いたします。
84.無評価賢者になる程度の能力削除
すみません、どうしても書いておきたいものがもう一つだけ。

キチガイや白痴などの差別用語は、やはり使わない方が宜しいかと。

様々な方々が読まれる所ですし、その言葉の意味する方と接点のある方はとても不快に感じると思います。
長々と失礼しました
85.無評価名前が無い程度の能力削除
オリジナルでやれアホ
86.90名前が無い程度の能力削除
面白い作品でした

しかし、男達の行動が『悪』側に傾いて描かれているのが残念でした
この作品のテーマは「互いに相容れない正義」だと私は理解しました。ならば、男達の行動も
純然たる「正義」として描かないと作品としてのバランスが取れないと思います。
霊夢を視点としている以上、仕方の無いことと言えるかもしれませんが…
89.80名前が無い程度の能力削除
強姦殺人をやった犯罪者が警官に射殺されました。
その集団が殺人を犯した理由は、相手の肌の色が違うから。
警官は人を撃ち殺した事に悩み辞職しました。

よく妖怪が人を殺せる云々とは言われますが、実は人間も人を殺せるんです。
だから大事になってくるのが「隣人を愛せよ」という概念で、それは綺麗事ではなく社会が存続するためのお約束なんです。
91.無評価名前が無い程度の能力削除
人間側にも言い分はあって妖怪は人間にとって脅威な存在だから殺すのも分らなくもない、
がしかしそうだとしてもやっていいこと悪いことがあるワケで、強姦とかね。強姦なんて下衆共のやることだし。殺すってこと限れば仕方が無いだろう、妖怪は人間にとって脅威だし
脅威ならそんなことせずに殺ればよかったのにと思う。
92.90名前が無い程度の能力削除
んー・・・妖怪犯して殺したからなんだというのか?
そんな騒ぐような事だろうか。
俺にいわせれば獣姦みたいなもんなんだが・・・

山に入ればいつ喰われてもおかしくなく、それでいて里にはその人喰いが人間の側のような面をして跋扈する。
俺なら発狂するなぁ・・・本当に外の世界の住人で良かった良かった。

幻想郷の妖怪を維持する為の装置としての里の人間、という狂った環境でついに弾けた男の頑張り物語は
結構おもろかったです。
94.90名前が無い程度の能力削除
男達がなー、強姦しちゃってるのはちょっと…
もう自分たちの正義から逸脱しちゃってません?それ
その点だけ気がかりですがすごく読みやすく面白かったです。
95.80名前が無い程度の能力削除
どうしても原作的にほのぼのとした作品が多い中でのこの異彩。
個人的に幽遊白書の仙堂を思い出したw
こういう系は答えなんてない人類の永遠の課題ですかね。人が人である限り。
96.無評価名前が無い程度の能力削除
↑普通に間違ったw仙水でした。スラダンかよw
97.無評価名前が無い程度の能力削除
見た目人間そっくりな存在を思い込みで殺したり挙句の果てに強姦しちゃうあたりが頭悪い。
あ、下半身で動いてるから頭に血がまわらないのか。
101.20名前が無い程度の能力削除
相変わらず回りくどくて読み辛いと感じてしまう俺が駄目なのか
いつも話全体が靄がかってて本題にたどり着くのに苦労する
102.90名前が無い程度の能力削除
幻想郷って博麗の巫女が王様という位置付けの君主制では決してないんだよね
仮にそうなら博麗結界の維持という存在意義のお陰で
下克上や革命なんて起こりえないんだから霊夢としてはどれだけ楽な事か
いっその事、霊夢は博麗の巫女である自分が幻想郷の法律とでも
断言してしまった方が良いのかも知れん
103.30名前が無い程度の能力削除
作者さんはもっと読みやすく書ける人でしょうから
文体についてはワザとなんでしょう。

知恵のついてきた中学生が好きそうなお話ですね。

SSとしてはたいして面白いとは思えませんね。

ついコメントしてしまいたくなる内容なので、無駄に評価が
伸びてる気がしますね。
104.100名前が無い程度の能力削除
閻魔たる映姫様の裁決、が一番有効なんでしょうなぁこういう場合。
人間と妖怪、どっちがどっちを裁いても必ず不公平との声が上がるでしょうし。

あ、とりあえず男達は間違いなく地獄行きですねぇ。
如何なる信念だか正義だかがあったにせよ殺生は重罪ですから、映姫様も属する彼岸の法的に。
しかも計画的犯行な上に強姦までやってますからねぇ。まず無間地獄は不可避でしょうな。
105.100名前が無い程度の能力削除
文章巧し。
地の文も独白も一見すると堅いけど、不思議と読みにくいとは感じない。

首謀者たちに、もっと共感できる動機や切欠があれば良かったのかな。
舞台が舞台だから、恐怖や怒りのピントがどうしてもズレてしまうんだと思う。
106.無評価名前が無い程度の能力削除
これは東方じゃなく、ルワンダやユーゴやダルフールでので起きたような民族浄化のアナロジーでは。
107.無評価時空や空間を翔る程度の能力削除
所詮人間も恐ろしい生き物に過ぎない
皮肉な事にね・・・
112.50名前が無い程度の能力削除
人間達は妖怪の存在を維持する為に幻想郷に閉じこめられてるんだから
それに対して反抗ぐらいしてもいいんじゃない?
妖怪も力の差を利用して人間たくさん殺してるし。

妖怪が一方的に人間を虐げてる世界だよね幻想郷は。
人間を殺したら罰せられるのも妖怪全体の為であって人間の為じゃないし。

人間も妖怪も罪を犯したら紫とか霊夢がお遊びじゃなく即効で本気で殺しに来ますよ、ぐらいの決まりが無いと
妖怪と人間が平和に暮らす事はできないでしょ。
スペカルールで懲らしめても妖怪は人殺しを悔やまないし。
人間が不安に駆られて暴走するのも当たり前ですよね。
113.100名前が無い程度の能力削除
強姦=正義じゃない。と、いわれると必ずしもそうではないような気がします。
結局、これも規律や固定観念(?)とか、上手くいえませんが「そう思うのが一般的」になってしまってるからかと。生物には「基準」というのが必ず必要なんでしょうね。
強姦=普通。世界がこうだったなら正義だったのかも。

ここまではあくまで客観的意見。
私自身、この男たちには嫌悪感MAXです。
正義ってなんなんでしょうね、こんなことを考えると、いつも最終的には「正解なんて無い」という答えになってしまうのでこのへんで。

あ、作品は面白かったですよw
115.30名前が無い程度の能力削除
迂遠で装飾過多。

言いたいことは分かります。自己主張が暑苦しいほどです。
強硬派のくだりを全部削って霖之助と霊夢のやりとりのみにし、想像させたほうが読めたのではないでしょうか。
それでもくどいと思いますけど。
何よりもひどいのがあとがきですべて話が済んでいること。
結局作者の言いたいところがそこにある。

テーマの選択は面白いと思いますが、話はつまらないです。
122.100パレット削除
おもしろかったです!
123.100名前が無い程度の能力削除
自己生存目的以外で生き物を殺す、傷つける、害を与える、これが悪

そして正義とはそれに罰を与える事、常に後にくるもの

男達は悪、霊夢は正義
補足:この定義は人間のためのモノではない
125.100名前が無い程度の能力削除
正義と悪についての話というより、人間と妖怪の境界の話として興味深く読ませてもらいました。
ヒトに近い姿をとり、どうやら「人格」らしきものをもつ幻想郷の妖怪は、それゆえ人間にとって「分からない」。
強い/弱い、調伏する/されるという単純な線が許されない。
そこにはもっと複雑な関係と対話が成り立つ可能性があり、同時に、人間にとっては潜在的な恐怖がある。
その線を揺るがす決定権が妖怪にあると想像を働かせてしまうのは、自然なことだから。
だから「男たち」の行動を私はそれなりに理解します。

眼前の惨状にただただ「怒ってしまった」霊夢は、今後どう身を振るべきか。
自分の殺人を「昇華する」という業の深い道を、映姫様なら「善行」と言ってくれるかもしれません。
この先にあるのは、「コミュニケーション」の物語なのでしょう。
霊夢と半人半妖の霖之助の「手紙のやり取り」で物語を進めたのは慧眼だと思います。
霊夢が破った「博麗之心得」を超えるための「第一歩」に、おそらくになっている。
現代幻想郷の人間と妖怪の複雑な関係性のフロンティアにいる魔理沙・咲夜・早苗といった人間たちが、
それを支えてくれるような物語をおぼろげに想像します。
130.100名前が無い程度の能力削除
男たちがもっと酷い事をしても霖之助の意見は変わらないと思う。
重要なのは行動ではなく思いだが、男たちの行動に疑問を持った。その行動は正義でないし、悪でない。そしてただ素直に霊夢を尊敬する。って霖之助は伝えたかった思いますよ。
134.90名前の無い程度の能力削除
平和ボケしたコメントのなんと多いこと。

東方の二次創作として以前に文学的に優れた作品であると思います。

文章の意味を読もうとせずにただ批判を繰り出す残念な方のことは気にせず、作者様は自信を持って良いと存じます。

このような文学作品は読者の側にも一定の教養が求められるため、読み手を選びます。

教養が足りないことを批判する訳ではありませんが、それを棚にあげ、単に文句ばかりいうのはどうかと思います。

ただ、18禁表現は避けるように規定されていますので、もう少しだけ迂遠な言い回しを用いるべきでしょう。
135.100静かに読み続ける程度の能力削除
ちょっと読み辛い。でも、内容は凄い。
曖昧かつ無数にある正義、それがぶつかり合った結果、とでも言うべきか。
後書きは……、紫様かな?
そして霊夢、戻って来い。霖之助の言ってる事は正しい。もっと多くの人の声を聴け。己で償うのは、それからでも遅くはなかろう?

弱い人間である、という事を理由に、力の無い『本当は弱い』妖狐を駆逐した人間どもよ。お前らが正義を語るな。お前らがやった事は、人食い妖怪と同じ事だ……。
136.100名前が無い程度の能力削除
正義はつまり責任で責任にはなるべく善として振る舞うという責任と
悪意や暴力に媚びるなりうち滅ぼすなり逃げるなりして身を守る責任がある
責任に伴う権利は前者なら立場にあった善のため力を施行することだし後者なら自分が人に悪意や暴力を振るうことである

前者の正義を行うのは大変複雑だし、男達みたいに殆どそのつもりはない後者の正義を行うものに対して弱い

まあ簡単に考えるなら男らは後者の正義を要は感情に従ってムカつくからブチ犯して殺した上に自己正当化したのだから
それにムカついて感情的にブチ殺したのなら適当な理由をつけて堂々と正当化するなりすれば良い

善人として隣人愛を持ち振る舞う責任を放棄したのならあとは正義なんて感情と実力でしかない
それを正当化するゲームでしかない
寧ろ善人としての責任なんて皆が果たしてくれないと自分が暴力の世界の住人として酷く無責任になる

139.100絶望を司る程度の能力削除
もうなんて言ったら良いのか分からない。でももし私がこの場に出くわして自称「正義の味方」さんを即ブチ殺す手段を持っているとするのなら、まったくの慈悲も無しに惨殺しているんじゃないかと思いました。うん、こいつ等が正義なら私は悪でもいいね。
140.100dai削除
正義って一番都合のいい言葉ですよね。 私の正義からすれば、男達のやったことは許されないことだと思います。 貴方の話はいつも考えさせられます。